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【事件名】環境調査報告書の職務著作事件
【年月日】平成22年2月18日
 東京地裁 平成20年(ワ)第7142号 著作権侵害差止等請求事件
 (口頭弁論終結日 平成21年11月27日)

判決
原告 A
同訴訟代理人弁護士 西村武彦
同 堀田千津子
同 小川晶露
同 川岸弘樹
被告 国立大学法人北見工業大学
同訴訟代理人弁護士 伊藤昌博


主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 被告は、別紙研究報告書目録記載4ないし9の各研究報告書を発行し、又は頒布してはならない。
2 被告は、その占有する別紙研究報告書目録記載4ないし9の各研究報告書を廃棄せよ。
3 被告は、原告に対し、金1100万円及びこれに対する平成20年4月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、被告(北見工業大学)の准教授である原告が、北見市や常呂川水系環境保全対策協議会(以下「協議会」という。また、北見市及び協議会、あるいは、北見市又は協議会を「北見市等」という。)との間の共同研究に係る別紙研究報告書目録記載1ないし3の各平成15年度研究報告書に関する著作権及び著作者人格権を有するとして、被告が、同目録記載4ないし6の各平成16年度研究報告書及び同目録記載7ないし9の各平成17年度報告書を作成させ、「国立大学法人北見工業大学」の名義で印刷発行し、北見市等へ頒布した行為が、原告の著作権(複製権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害する行為である旨主張して、被告に対し、著作権法112条1項、2項に基づき、同目録記載4ないし9の各研究報告書の発行又は頒布の差止めを求めるとともに、同各研究報告書の廃棄を求め、併せて、民法709条に基づき、著作者人格権(同一性保持権)侵害による損害賠償として1100万円(慰謝料1000万円及び弁護士費用相当損害金100万円)の支払を求め、同目録記載1ないし3の各研究報告書に著作物性が認められない場合に備え、予備的に、被告が同目録記載4ないし9の各研究報告書を作成・発行した行為は著しく反社会的な行為であり、不法行為を構成するとして、民法709条に基づき、損害賠償として1100万円の支払を求める事案である。
1 前提となる事実等(認定事実については末尾に証拠を掲記する。)
(1)当事者
ア 原告は、国立大学法人北見工業大学(被告)において、准教授として勤務する研究者であり、その専攻は、環境分析化学、環境水質工学及び無機化学である。
イ 被告は、国立大学法人である(なお、平成16年4月1日の国立大学法人としての設立の前後を問わず、国立大学北見工業大学を含め「被告」という。また、国立大学法人北見工業大学と国立大学北見工業大学とを特に区別せず「北見工業大学」ということがある。)。
(2)被告と北見市との間における共同研究契約の締結等
ア 北見市環境調査研究(甲1、4、乙5、弁論の全趣旨)
(ア)被告と北見市とは、平成5年4月15日、おおむね下記の要領の共同研究を実施することを内容とする共同研究契約を締結した(乙5)。
 記
@ 研究題目
 公害防止調査研究
A 研究目的及び内容
 北見市における大気、水質、騒音振動、悪臭に係わる公害防止調査研究をより専門的な角度から実施し、結果の解析評価から公害防止対策の一層の推進を図る。
B 研究実施場所
 北見工業大学(以上、第1条)
C 研究期間
 平成5年4月15日から平成6年3月31日まで(第2条)
D 共同研究に従事する者
 被告及び北見市は、以下の者を本共同研究に参加させるものとする。(第3条)
区分 氏名 所属部局・職名
被告
 
A(原告)
化学システム工学科 助教授
化学システム工学科 教務職員
北見市 環境衛生課公害係 技術吏員
E 共同研究に要する経費
 被告が経常経費等として6万8000円を、北見市が直接経費として521万1800円を、それぞれ負担する。(第4条)
(イ)平成5年以降においても、被告と北見市とは、継続して、北見市環境調査研究に係る共同研究を実施した。原告は、平成5年度から平成15年度まで、被告からの参加者として上記共同研究に参加し、研究代表者を務めた。
(ウ)なお、被告と北見市とが、平成15年5月2日に締結した共同研究契約における、平成15年度の共同研究の要領はおおむね下記のとおりである(甲1)。
 記
@ 研究題目
 北見市環境調査研究
A 研究目的及び内容
 北見市における大気、水質、騒音振動、悪臭、ダイオキシン類に係わる環境調査研究を、より専門的な角度から実施し、結果の解析評価から環境保全対策の一層の推進を図る。
B 研究実施場所
 北見工業大学(以上、第1条)
C 研究期間
 平成15年5月2日から平成16年3月31日まで(第2条)
D 共同研究に従事する者
 被告及び北見市は、以下の者を本共同研究の研究担当者として参加させる(なお、原告は研究代表者である。)。
区分 氏名 所属部局・職名(本研究における役割)
被告
 
A(原告)
化学システム工学科 助教授(環境調査、データ解析評価)
化学システム工学科助手(環境調査、データ解析評価)
北見市 環境緑化部環境課 環境保全担当(データ解析評価)
 被告は、北見市の研究担当者のうち被告の研究実施場所において本共同研究に従事させる者を民間等共同研究員として受け入れるものとする。(第3条)
E 実績報告書の作成
 被告及び北見市とは、双方協力して、本共同研究の実施期間中に得られた研究成果について報告書を、本共同研究完了後にとりまとめる。(第4条)
F 研究経費の負担
 北見市が直接経費として1100万0662円を負担する。(第5条)
G 研究成果の取扱い
 被告及び北見市は、本共同研究によって得られた研究成果(研究期間が複数年度にわたる場合は当該年度に得られた研究成果)について、秘密保持の義務を遵守した上で開示、発表若しくは公開することができる。ただし、公表の時期・方法などについては、被告と北見市とが協議の上、定める。(第19条)
(エ)上記共同研究においては、毎年度ごとに研究報告書が作成されている。
 平成15年度の北見市環境調査研究に係る研究報告書は、別紙研究報告書目録記載1の報告書(甲4。以下「本件北見市環境調査報告書」という。)である。
イ 常呂川水系水質調査研究(甲3、6、乙9、弁論の全趣旨)
(ア)被告と協議会(常呂川水系環境保全対策協議会)とは、平成5年5月12日、おおむね下記の要領の共同研究を実施することを内容とする共同研究契約を締結した(乙9)。
 記
@ 研究題目
 常呂川水系水質調査研究
A 研究目的及び内容
 常呂川水系の広域的な水質等の調査をより専門的な角度から実施し、結果の解析評価から関係自治体による常呂川水系全域にわたる総合的な環境保全対策の推進を図る。
B 研究実施場所
 北見工業大学(以上、第1条)
C 研究期間
 平成5年5月12日から平成6年3月31日まで(第2条)
D 共同研究に従事する者
 被告及び協議会は、以下の者を本共同研究に参加させるものとする。(第3条)
区分 氏名 所属部局・職名
被告
 
A(原告)
化学システム工学科 助教授
化学システム工学科 教務職員
協議会 常呂川水系環境保全対策協議会
E 共同研究に要する経費
 被告が経常経費等として4万6000円を、協議会が直接経費として518万8110円を、それぞれ負担する。(第4条)
(イ)平成5年以降においても、被告と協議会とは、継続して、常呂川水系水質調査研究に係る共同研究を実施した。原告は、平成5年度から平成15年度まで、被告からの参加者として上記共同研究に参加し、研究代表者を務めた。
(ウ)なお、被告と協議会とが、平成15年5月13日に締結した共同研究契約における、平成15年度の共同研究の要領はおおむね下記のとおりである(甲3)。
 記
@ 研究題目
 常呂川水系水質調査研究
A 研究目的及び内容
 常呂川水系の広域的な水質等の調査を、より専門的な角度から実施し、結果の解析評価から関係自治体による常呂川水系全域にわたる総合的な環境保全対策の推進を図る。
B 研究実施場所
 北見工業大学(以上、第1条)
C 研究期間
 平成15年5月13日から平成16年3月31日まで(第2条)
D 共同研究に従事する者
 被告及び協議会は、以下の者を本共同研究の研究担当者として参加させる(なお、原告は研究代表者である。)。
区分 氏名 所属部局・職名(本研究における役割)
被告
 
A(原告)
化学システム工学科 助教授(環境調査、データ解析評価)
化学システム工学科助手(環境調査、データ解析評価)
協議会 環境緑化部環境課環境保全担当(データ解析評価)
 被告は、北見市の研究担当者のうち被告の研究実施場所において本共同研究に従事させる者を民間等共同研究員として受け入れるものとする。(第3条)
E 実績報告書の作成
 被告及び協議会とは、双方協力して、本共同研究の実施期間中に得られた研究成果について報告書を、本共同研究完了後にとりまとめる。(第4条)
F 研究経費の負担
 協議会が直接経費として544万0050円を負担する。(第5条)
G 研究成果の取扱い
 被告及び協議会は、本共同研究によって得られた研究成果(研究期間が複数年度にわたる場合は当該年度に得られた研究成果)について、秘密保持の義務を遵守した上で開示、発表若しくは公開することができる。ただし、公表の時期・方法などについては、被告と協議会とが協議の上、定める。(第19条)
(エ)上記共同研究においては、毎年度ごとに研究報告書が作成されている。
 平成15年度の常呂川水系水質調査研究に係る研究報告書は、別紙研究報告書目録記載3の報告書(甲6。以下「本件常呂川水系水質調査報告書」という。)である。
ウ 北見市一般廃棄物処理に関する環境調査並びにごみ質調査、作業環境調査(甲2、5、弁論の全趣旨)
(ア)被告と北見市とは、平成13年、北見市一般廃棄物処理に関する環境調査並びにごみ質調査、作業環境調査に係る共同研究を実施することを内容とする共同研究契約を締結した。
(イ)平成13年以降においても、被告と北見市とは、継続して、上記共同研究を実施した。
 原告は、平成13年度から平成15年度まで、被告からの参加者として上記共同研究に参加し、研究代表者を務めた。
(ウ)なお、被告と北見市とが、平成15年5月2日に締結した共同研究契約における、平成15年度の共同研究の要領はおおむね下記のとおりである(甲2)。
 記
@ 研究題目
 北見市一般廃棄物処理に関する環境調査並びにごみ質調査、作業環境調査
A 研究目的及び内容
 北見市廃棄物処理場及び旧処理場汚水処理施設における排水等の環境調査並びにごみ質調査、作業環境調査等を行い、より専門的な解析評価を加えることにより施設の適正運営を図り、環境等への負荷を最小化することを目的とする。
B 研究実施場所
 北見工業大学及び北見市(以上、第1条)
C 研究期間
 平成15年5月2日から平成16年3月31日まで(第2条)
D 共同研究に従事する者
 被告及び北見市は、以下の者を本共同研究の研究担当者として参加させる(なお、原告は研究代表者である。)。(第3条)
区分 氏名 所属部局・職名(本研究における役割)
被告


 
A(原告)


 
化学システム工学科助教授
 (サンプリング業務、分析業務、分析結果報告、データ解析評価、最終報告書作成)
化学システム工学科 助教授
 (サンプリング業務、分析業務、分析結果報告、データ解析評価、最終報告書作成)
北見市




 





 
環境緑化部廃棄物処理場 管理担当係長
 (サンプリング業務、データ解析)
環境緑化部廃棄物処理場 主任
 (サンプリング業務、データ解析)
環境緑化部廃棄物処理場 技術吏員
 (サンプリング業務、データ解析)
E 実績報告書の作成
 被告及び北見市とは、双方協力して、本共同研究の実施期間中に得られた研究成果について報告書を、本共同研究完了後にとりまとめる。(第4条)
F 研究経費の負担
 北見市が直接経費として1116万1500円を負担する。(第5条)
G 研究成果の取扱い
 被告及び北見市は、本共同研究によって得られた研究成果(研究期間が複数年度にわたる場合は当該年度に得られた研究成果)について、秘密保持の義務を遵守した上で開示、発表若しくは公開することができる。ただし、公表の時期・方法などについては、被告と北見市とが協議の上、定める。(第19条)
(エ)上記共同研究においては、毎年度ごとに研究報告書が作成されている。
 平成15年度の北見市一般廃棄物処理に関する環境調査並びにごみ質調査、作業環境調査に係る研究報告書は、別紙研究報告書目録記載2の報告書(甲5。以下「本件北見市一般廃棄物処理に関する環境調査等報告書」という。また、本件北見市環境調査報告書及び本件常呂川水系水質調査報告書と併せて、「本件各平成15年度報告書」という。また、上記アないしウの共同研究を併せて、「本件各共同研究」という。)である。
(3)平成16年度及び平成17年度の本件各共同研究に係る報告書(甲8ないし13、弁論の全趣旨)
ア 原告は、被告から、平成17年3月17日付けで停職4月の懲戒処分を受け、それ以降、本件各共同研究に参加することができなくなった。
 なお、原告は、被告に対し、上記懲戒処分が無効であるとして、訴訟を提起し、同訴訟において、上記懲戒処分を停職2月とすること等を内容とする和解が成立している。
イ 原告が本件各共同研究に参加することができなくなった以降においても、原告以外の被告の教員が参加して本件各共同研究が継続的に実施され、平成16年度、平成17年度の本件各共同研究に係る研究報告書として、別紙研究報告書目録記載4ないし9の各報告書(甲8ないし13。以下、同目録記載4ないし6の各報告書を併せて、「本件各平成16年度報告書」といい、同目録記載7ないし9の各報告書を併せて、「本件各平成17年度報告書」という。)が作成された。
2 争点
(1)原告が本件各平成15年度報告書の著作者であるか否か(著作権法15条1項の適用の有無)(争点1)
(2)著作権(複製権)及び著作者人格権(同一性保持権)侵害の成否(争点2)
(3)差止め及び廃棄の必要性(争点3)
(4)著作者人格権侵害による損害額(争点4)
(5)不法行為の成否及び損害額(争点5)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(原告が本件各平成15年度報告書の著作者であるか否か・著作権法15条1項の適用の有無)について
〔原告の主張〕
(1)本件各平成15年度報告書のうち、「結果の解析および考察」や「まとめ」欄の各記載(具体的には、甲4の27頁ないし31頁の「結果の解析および考察」、45頁ないし47頁の「結果の解析および考察」、62頁ないし63頁の「まとめ」、85頁ないし88頁の「結果の解析および考察」、104頁ないし106頁の「結果の解析および考察」、119頁ないし122頁の「解析と考察」、甲5の59頁ないし62頁の「解析と考察」、甲6の33頁ないし37頁の「結果の解析及び考察」、103頁ないし107頁の「まとめ」の各記載。以下、同部分を「本件考察部分」という。)は、原告の長年にわたる研究活動及び研究成果に裏打ちされた高度な科学的判断及び学識経験に基づいて、原告が、環境科学研究者の見地から、独自の意見ないし思想を表明した部分であり、数多く存在し得た表現方法の中から、特に選択して表現した部分である。
 また、特に、本件常呂川水系水質調査報告書(甲6)の103頁ないし107頁の「まとめ」の記載は、原告が、環境科学の専門家の立場から、行政や地域に対して、常呂川の水質改善を求めて積極的な提言を行った部分であり、原告の研究者としての良心や感情が独創的に表現された部分である。
 したがって、本件考察部分は創作性(著作物性)を有する。
 そして、調査実験やデータ採取の結果を記した本件各平成15年度報告書のうち本件考察部分以外の部分は、本件考察部分と不可分一体の関係にあるから、本件各平成15年度報告書は全体として著作物性を有するというべきである。
(2)本件各平成15年度報告書は、以下の点に照らし、原告の単独著作物であるというべきである。
ア 本件各共同研究は、北見市環境緑化部環境課が、環境分析化学、環境水質工学及び無機化学等の分野における第一人者であり、研究能力や研究実績のある原告に対して依頼要請することにより開始されたものである。
イ 本件各共同研究における研究内容及び研究方針は、原告が、それまでの研究成果及び学識に基づき決定し、これを実行したものである。
ウ 本件各共同研究は、原告の指揮監督の下に行われており、原告以外の参加者は、単に原告の指示・指導に従って、データを集積し、編集作業等を行ったにすぎない。
 すなわち、北見市環境緑化部環境課の人員(例えば、本件北見市環境調査報告書の「まえがき」記載の人員)は、報告書の執筆に当たって、主として、そのレイアウト等の編集に関与したにすぎない。また、同人員が報告書の記述の下書きをすることはあっても、それは、本件考察部分以外の創作性のない部分についてにすぎない。そして、同記述についても、原告がその責任において、加筆修正をするなどして最終的に確認している。
 原告以外の被告からの参加者(例えば、本件北見市環境調査報告書の「まえがき」記載の人員)についても、原告の指揮監督の下に、データ集積やデータの入力作業を行ったにすぎない。また、同人員が報告書の記述の下書きをすることはあっても、それは、本件考察部分以外の創作性のない部分についてにすぎない。そして、同記述についても、原告がその責任において、加筆修正をするなどして最終的に確認している。
エ 本件各平成15年度報告書の枢要な部分である本件考察部分を執筆したのは、専ら原告であり、原告以外の者は関与していない。
(3)職務著作規定(著作権法15条1項)の適用は無いこと
 原告は、被告に雇用された職員であるものの、以下のとおり、本件各平成15年度報告書について著作権法15条1項の規定が適用されることはない。
ア 本件各平成15年度報告書の創作は被告の発意に基づくものではないこと
(ア)本件各共同研究は、北見市等が、環境科学者の第一人者である原告の個人的資質及び実績等に対する信用に依拠して、大学である被告ではなく、研究者である原告に対して要請し、原告が北見市等の要請を受諾したことにより、実施されたものである。
 被告の地域共同研究センターは、平成5年当時、実体がないに等しい状態にあった(甲25参照)。
(イ)平成15年度の本件各共同研究に係る契約書(甲1ないし3)は、原告が被告に所属する関係上、事務的・便宜的な目的で作成されたにすぎない。
 原告は、本件各共同研究を行うに当たって、被告内部の承認や決裁を受けたことはないし、その必要もなかった。被告から、原告に対し、職務命令書等が発せられたこともない。
 被告の学内審議機関による受入れ決定は、実際には、北見市議会による予算編成の後に、研究代表者や選定業者等のすべてが整った上で、書類上、形式的に行う手続にすぎない。北見工業大学共同研究取扱規定(乙1の1)にあるとおり、学内審議といっても、それは、受入れ決定を行うか否かという受動的判断をするにすぎず、大学(被告)が率先して研究を企画立案することは予定されていない。また、書類不備等の形式面を理由とする場合を除き、学内審議により受入れが否決されたこともない。
(ウ)以上のとおり、本件各平成15年度報告書の作成は、被告の発意に基づくものではない。
イ 本件各平成15年度報告書は被告の業務に従事する者が職務上作成したものではないこと
(ア)大学における研究者には、学問の自由(憲法23条)、表現の自由(憲法21条)による独立性が保障されており、研究者は大学の手足となって研究活動を行うものではなく、大学から研究内容につき指揮監督を受ける関係にもない。
 そもそも、本件各共同研究のような学外機関から依頼された研究の担当者になることやその研究に係る報告書を作成することは、大学内における研究者の通常の職務の範囲外の事柄である(北見工業大学共同研究取扱規定(乙1の1)1条2項参照)。原告は、本件各共同研究を行うにつき、被告から、特別手当の支給等給与面での待遇を受けたことはないことも、これを裏付けるものである。
(イ)法令等は、国が各地方公共団体に対して、環境政策の一環として、一般的かつ抽象的な範囲で一定の環境基準を遵守し、環境調査を行うべき努力義務を規定したにすぎず、各地方公共団体が、具体的にどのような時期に、どのような場所で、どのような方法で環境調査を行うべきか等については規定していない。
 本件各共同研究において、原告は、環境科学者の立場から、専門的知見に基づいて研究を体系的に構成し、共同研究の責任者の立場から、調査測定の具体的な時期、場所、方法、機材、精度、調査業者の選定等について一切の指示命令を行った。
 被告は、本件各共同研究の経費を一切負担していない。研究経費は、原告が、その研究者としての個人的資質や研究実績による対外的信用により獲得し、管理していたものである。被告は、北見市等から原告への研究経費の入金の窓口にすぎない。
(ウ)本件各共同研究は、平成4年度以前に北見市が行っていた、単なるデータの採取等の範囲に止まるものではない。原告は、本件各共同研究において、採取された具体的なデータを環境科学者としての専門的知見により分析し、報告書にまとめて従前の北見市の調査にはない本件考察部分を記述し、北見市や常呂川における地域特有の問題点を指摘して地域行政に対して提言をも行っている。この点において、平成4年度以前に行われていた北見市の調査と、平成5年度以降の原告による本件各共同研究とは、質的に全く異なるものであるといえる。しかも、本件各共同研究における調査項目や調査場所等は、平成4年以前の北見市による調査と比較しても、多数の点で変更・追加・削除等がされており、両者は量的・質的に異なるものであって、類似性や継続性は認められない。
ウ 本件各平成15年度報告書は被告の名義で公表されたものではないこと
 本件各平成15年度報告書には、表紙のすぐ後の頁に、執筆者たる原告の氏名が表記されている。執筆者たる研究者の氏名が報告書に明記されている以上、たとえ表紙に被告(大学)の名称が記載されていたとしても、社会的・学術的評価としては、報告書に対する対外的な信用と責任は、執筆者である研究者に向けられるものであって、本件各平成15年度報告書が被告の名義の下で公表されたものであるとはいえない。
 本件各平成15年度報告書の表紙には、「北見工業大学化学システム工学科環境科学研究室」と記載されており、表紙の記載は、単に原告の所属を示したにすぎないと見るべきである。
エ 作成時の契約、勤務規則その他に別段の定めがないとはいえないこと
 被告の職務発明規程(甲7)は、「発明等」の定義の中に、プログラム著作物及びデータベース著作物が含まれることを明示しつつ(2条)、それ以外の著作物を「発明等」から除外している。これは、一般著作物の著作権が研究者に帰属することを前提とした規定であるといえ、「契約等に別段の定め」がある場合に該当する。
〔被告の主張〕
(1)本件各平成15年度報告書について著作物性が肯定されるとしても、これら報告書は、以下のとおり、いずれも著作権法15条1項所定の法人著作に該当し、被告が著作者となる。
ア 被告の発意に基づくものであること
(ア)本件各平成15年度報告書は、被告の発意に基づき作成されたものである。本件各共同研究は、「北見工業大学共同研究取扱規程」(乙1の1。以下「被告規程」という。)に基づき実施されたものである。具体的には、北見市等の長が所定の申込書の提出をもって被告の学長に共同研究の申込みをし(7条1項)、学長は北見市等の長からの申込書を受理し、研究代表者である原告に共同研究計画書を提出させた(同条2項)。そして、被告の学長は、審議機関の議を経た上で、文部省と協議して、共同研究の受入れを決定した(8条)。すなわち、被告の学長は、この受入れ決定をもって、被告が北見市等との間で申込書及び共同研究計画書に記載の内容の共同研究を行うことを決定しているのである。その後、被告は、北見市等との間で、共同研究に係る契約書を作成し、共同研究契約を締結することにより、共同研究の遂行が被告の北見市等に対する義務となった。
 本件各共同研究は、環境調査であり、当該調査結果を記載した報告書(本件各平成15年度報告書)が共同研究の成果物となる。本件各共同研究についての報告書(本件各平成15年度報告書)は、共同研究を行った結果を北見市等に報告するために、北見市等からの求めで共同研究契約に基づき作成されるものであるから、被告の学長が本件各共同研究の受入れを決定したということは、申込書及び共同研究計画書に記載された調査内容の結果を記載した報告書の作成を決定したということを意味する。
 したがって、本件各平成15年度報告書の創作についての意思決定は、使用者たる被告の判断で行われたものである。
 なお、共同研究の成果については、学長が共同研究による研究成果を公表する場合は、公表時期及び方法について、民間機関等との間で適切に定めるとされており(被告規程13条)、共同研究の成果を公表する権限が学長に帰属するものとされていることからも、本件各共同研究に係る報告書の作成が被告の発意によるものであることが裏付けられる。
(イ)北見市環境調査研究や常呂川水系水質調査研究は、北見市が、従前、公害対策基本法(後に、環境基本法)や北見市環境保全条例(後に、北見市環境基本条例)などに基づき、独自に行っていた環境調査である。
 平成4年6月に協議会が発足して従前の環境調査の一部について調査主体の枠組みが変化した(常呂川水系の水質調査のうち、北見市内小河川については北見市が調査を継続し、その他の常呂川水系については、協議会が行うことになった)ことや被告が同年4月に地域共同研究センターを設置したことを契機に、北見市環境調査研究については北見市と被告との共同研究として、常呂川水系水質調査研究については協議会と被告との共同研究として、それぞれ行うようになったものである。
 また、北見市一般廃棄物処理に関する環境調査並びにごみ質調査、作業環境調査は、北見市が、一般廃棄物処理施設であるクリーンライフセンターを開設、稼働するに当たり、廃棄物の処理及び清掃に関する法律などの関係法令で定められた調査を行い、あるいは、施設の運転・維持管理上必要な環境調査等を行うため、既に、北見市環境調査研究や常呂川水系水質調査研究を共同して行っていた被告との間で、共同研究を行うことにしたものである。
 以上の経緯からも明らかなように、本件各共同研究は、被告の地域共同研究センターにおける活動の中で開始されたものであり、原告の個人的資質や実績等に依拠して開始されたものではない。北見市等にとっては、高度研究教育機関として高い対外的信用力を有する被告と共同研究を行い、共同研究の成果として報告書を被告から受領し、これを公表することによって、調査結果に高い信頼性が認められるということに意義があったのである。北見市等は、原告と共同研究を行うために、被告との間で共同研究を行った訳ではない。このことは、原告が本件各共同研究の参加者ではなくなった平成16年度以降も本件各共同研究が継続して行われており、共同研究に係る報告書も被告名義で作成公表されていることからも明らかである。
イ 被告の業務に従事する者が職務上作成したものであること
(ア)本件各平成15年度報告書は、原告を含む複数の者が関与して作成されたものである(本件各平成15年度報告書の執筆は、研究担当者において分担して行われた。)。
 被告と原告との間には雇用関係があり、原告は、被告の「業務に従事する者」である。
 そして、被告の学長が、北見市等の長から共同研究の申込書の提出を受け、原告に共同研究計画書を提出させ、審議機関の議を経た上で、文部省と協議して共同研究の受入れを決定した時点をもって、被告の学長において、原告を本件各共同研究の研究代表者に選定したといえる。
 原告は、被告による選定行為に基づいて本件各共同研究の研究代表者に就任し、共同研究に係る業務を遂行したのであり、当該業務の遂行として作成された本件各平成15年度報告書は職務上作成されたものである。
(イ)被告は、北見市等に対し、北見市等との間の共同研究契約に基づき、契約内容に従った環境調査を行い、その結果を記載した報告書を作成する義務を負っていた。
 本件各共同研究は、環境調査であり、調査の内容(調査項目や測定方法)も、北見市等の行政上の必要性から、環境省(又は旧環境庁)等による告示や法令等の定める環境基準や測定方法に依拠し、あるいは、北見市が従前から行っていた調査内容に依拠して、北見市により定められた枠組みの範囲内において行われるものである。被告は、共同研究契約に基づき、北見市により定められた枠組みに沿う内容の調査研究を行う義務を負っていたのであり、原告と被告との関係についていえば、被告において研究内容を決定していたと評価されることになる。
(ウ)原告は、被告に雇用され、その職務上本件各共同研究に従事する研究代表者として、被告が北見市等に対して負っている義務を具体的に遂行すべき義務を被告に対して負っていたのであり、実際に、原告は、その職務上、本件各共同研究に従事し、本件各平成15年度報告書を作成した。
(エ)なお、本件においては、原告が専門性を有する大学教員であったため、本件各共同研究に係る原告の業務及び権限の範囲もある程度広範であったのであり、被告が原告に対して有する指揮監督権限も包括的なものであった。しかしながら、職務著作の要件を判断する上での使用者の被用者に対する指揮監督権限については、被用者が専門性を有している場合には、包括的なもので足りるというべきである。
ウ 被告が被告の名義で公表したものであること
 本件各平成15年度報告書は、別紙研究報告書目録記載1ないし3のとおり、「北見工業大学地域共同研究センター北見工業大学化学システム工学科環境科学研究室」との名義(甲4、6)又は「北見工業大学地域共同センター北見工業大学化学システム工学科環境科学研究室」との名義(甲5)で公表された。
 上記は被告の部門(部署)の表記であり、被告名義での公表にほかならない。
エ 報告書作成時の契約や勤務規則等に別段の定めがないこと
 本件各平成15年度報告書に関し、著作権法15条1項の規定にかかわらず、被用者である原告を著作者とする旨の別段の定めはない。
(2)職務著作ではないとの原告の主張に対する反論
ア 本件各平成15年度報告書は、被告と北見市等との間の共同研究契約に基づく、被告から北見市等に対する報告書であり、学術論文ではない。
 本件各共同研究は、環境調査であり、発明、発見等を目的とする研究とは異なり、投下した費用に対応する調査結果が作成されることが必要とされ、被告は、共同研究契約に基づき、北見市等に対して、適正な調査報告書を作成、提出すべき義務を負っていた。
 そして、本件各共同研究の遂行にあたっては、調査の大部分が業務委託により実施され、その他の部分についても、共同研究に携わる共同研究者の組織的活動として調査が実施された。また、本件各共同研究に係る報告書も、共同研究者の組織的作業により作成された。
 以上のとおり、本件各共同研究、あるいはその報告書の作成は、特定の研究者個人による研究活動に依存するものではない。
 なお、本件各共同研究に係る調査研究は、北見市等の行政上の要請から、将来にわたり継続して行われることが予定されているものである。この点においても、本件各共同研究が特定の研究者個人の資質等に依拠して行われるようなものではないことが明らかである。
イ 本件各共同研究は、北見市等が行政としての必要性から法令等に基づいて研究内容の枠組みを決定し、原告は、この枠組みの中で、共同研究代表者として、本件各共同研究に従事した。原告が本件各共同研究の内容について一定の裁量権を有していたとしても、北見市等の定める上記枠組みの範囲内でのことである。
 本件各共同研究における具体的な調査内容の決定について原告の意見が反映されることがあったり、あるいは、原告が従前の調査内容を検証して改善を図ることがあったりしたとしても、これは、北見市等と被告との間の共同研究契約に基づき、被告の担当者として本件各共同研究に従事した原告が自己の職務を遂行したということにほかならない。
ウ 本件各共同研究にかかる経費は、被告と北見市等との間の共同研究契約に基づき、その大部分を、北見市等が負担している。被告は、北見市等との間の共同研究契約に基づき、共同研究の目的に従った適切な報告書を作成し、北見市等に提出する義務を負っている。
 仮に、本件各共同研究の成果物である報告書(本件各平成15年度報告書)に係る著作権が、被告ではなく、原告に帰属する場合には、被告のみならず、多額の費用を負担した北見市等においても、本件各共同研究の成果物たる報告書を自由に使用することができないことになってしまい、不当である。
2 争点2(著作権及び著作者人格権侵害の成否)について
〔原告の主張〕
(1)著作権侵害について
ア 被告は、原告に替わってB(以下「B」という。)を本件各共同研究における責任者に任命し、Bに本件各平成16年度報告書及び本件各平成17年度報告書を作成させ、これらの報告書を「国立大学法人北見工業大学」の名義で印刷発行し、北見市や他の大学へ頒布した。
イ 本件各平成16年度報告書及び本件各平成17年度報告書は、本件各平成15年度報告書と、調査結果のデータにわずかな相違がある点を除き、目次、表、グラフ、レイアウト、項目、番号、表題、文章に至るまでほとんど同じ内容となっている。
 また、本件各平成16年度報告書及び本件各平成17年度報告書の「結果の解析および考察」や「まとめ」欄の各記載は、別紙研究報告書対照表@ないしBのとおり、本件各平成15年度報告書の本件考察部分の記載をほぼ引き写したものとなっている。
ウ 以上のとおり、本件各平成16年度報告書及び本件各平成17年度報告書は、本件各平成15年度報告書の複製物である。
 そして、本件各平成16年度報告書及び本件各平成17年度報告書が本件各平成15年度報告書に酷似していることに照らせば、本件各平成16年度報告書及び本件各平成17年度報告書は、本件各平成15年度報告書に依拠して作成されたものであることが明らかである。
 したがって、被告が本件各平成16年度報告書及び本件各平成17年度報告書を発行し、頒布する行為は、本件各平成15年度報告書に係る原告の著作権(複製権)を侵害する行為である。
(2)著作者人格権侵害について
 本件各平成16年度報告書及び本件各平成17年度報告書の「結果の解析および考察」や「まとめ」欄の各記載は、別紙研究報告書対照表@ないしBのとおり、著作者である原告の意に反して、本件各平成15年度報告書の本件考察部分の記載を改変等したものである。
 被告による上記改変等の行為は、本件各平成15年度報告書に係る原告の著作者人格権(同一性保持権)を侵害する行為である。
〔被告の主張〕
(1)原告の主張は否認ないし争う。
 なお、本件各平成16年度報告書及び本件各平成17年度報告書と本件各平成15年度報告書とが類似性を有することは認める。しかしながら、本件各共同研究は、同じ研究目的及び内容に従って毎年継続的に行われてきたものであり、各年度の報告書の内容が類似しているのは、むしろ当然のことである。
(2)本件各平成15年度報告書の別紙研究報告書対照表@ないしB記載の各部分には、著作物性(創作性)がない。
 これらの記述部分は、いずれも、事象や用語等についてのありふれた説明や、あるいは、データから当然に導かれる事実等についてのありふれた説明であって、創作性が認められない部分である。
3 争点3(差止め及び廃棄の必要性)について
〔原告の主張〕
(1)被告は、本件各平成16年度報告書及び本件各平成17年度報告書を発行し、北見市や他の大学に頒布した。
 原告は、被告に対し、著作権法112条1項に基づき、上記行為の差止請求権を有する。
(2)被告は、現在においても、本件各平成16年度報告書及び本件各平成17年度報告書を北見工業大学内等に所有保管している。
 原告は、被告に対し、著作権法112条2項に基づき、その占有する本件各平成16年度報告書及び本件各平成17年度報告書の廃棄請求権を有する。
〔被告の主張〕
 被告が、本件各平成16年度報告書及び本件各平成17年度報告書を保有していることは認め、その余は否認ないし争う。
4 争点4(著作者人格権侵害による損害額)について
〔原告の主張〕
(1)被告は、故意又は過失により、本件各平成15年度報告書に係る原告の著作者人格権(同一性保持権)を侵害した。
 したがって、被告は、原告に対し、上記不法行為により原告が被った損害を賠償すべき義務を負う。
(2)損害額
ア 慰謝料
 原告は、被告による著作者人格権(同一性保持権)侵害により、甚大な精神的苦痛を被った。
 原告の精神的苦痛に対する慰謝料額は、1000万円を下らない。
イ 弁護士費用
 原告は、本件訴訟の遂行を原告代理人弁護士らに委任した。原告が負担を余儀なくされた弁護士費用のうち、被告の不法行為と相当因果関係のある額は100万円である。
(3)以上によれば、原告は、被告に対し、不法行為に基づき、1100万円の損害賠償請求権を有する。
〔被告の主張〕
 原告の主張は否認ないし争う。
5 争点5(不法行為の成否及び損害額)について
〔原告の主張〕
 仮に、本件各平成15年度報告書に著作物性が認められず、本件各平成15年度報告書に係る原告の著作者人格権侵害に基づく損害賠償請求が認められないとしても、被告が本件各平成16年度報告書及び本件各平成17年度報告書を作成・発行した行為は、法が許容する複製行為の範囲を超えた、著しく反社会的な行為であるといえ、なお民法709条の不法行為を構成する特段の事情があるというべきである。
 したがって、被告は、原告に対し、上記不法行為により、原告が被った損害として金1100万円を賠償すべき義務を負う。
〔被告の主張〕
 原告の主張は否認ないし争う。
第4 当裁判所の判断
1 前提となる事実等に証拠(甲1ないし6、8ないし13、18、乙1の1ないし4、乙2ないし9、17、18)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
(1)被告(北見工業大学)は、国立大学と民間機関等との共同研究制度の創設に伴い、昭和60年2月に「北見工業大学共同研究取扱規程」(被告規程)を定めた(なお、乙1の2ないし4のとおり、被告規程(乙1の1)は、その後、数回の一部改正を経ている)。
 被告規程には、次の定めがある。
@ 第1条(趣旨)
 この規程は、北見工業大学(以下「本学」という。)における民間機関等との共同研究の取扱いについて必要な事項を定める。(1項)民間機関等との共同研究は、本学の教育研究上有意義であり、かつ、本来の教育研究に支障を来すおそれがないと認められる場合に限り、行うものとする。(2項)
A 第2条(定義)
 この規程において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 民間機関等民間等外部の機関をいう。
二 共同研究本学において、民間機関等から研究者及び研究経費等を受け入れて、本学の教官が当該民間機関等の研究者と共通の課題につき共同して行う研究をいう。
三 民間等共同研究員民間機関等において、現に研究業務に従事しており、共同研究のために在職のまま本学に派遣される者をいう。
四 研究代表者本学の共同研究組織を代表し、研究計画の取りまとめを行うとともに、研究の推進に関し責任をもつ本学の教官をいう。
B 第3条(審議機関)
 共同研究を適切に遂行するために、共同研究の受入れ等実施に必要な事項を審議する審議機関を置くものとする。(1項)
C 第5条(経費負担)
 本学は、共同研究の遂行上必要な本学の施設及び設備を供するとともに、当該施設及び設備の維持管理に必要な経常経費等を負担するものとする。(1項)
 民間機関等は、共同研究遂行のために必要となる謝金、旅費及び消耗品費等の直接的な経費(以下「直接経費」という。)を負担するものとする。(2項)
 本学は、前項の規定にかかわらず、必要に応じ、予算の範囲内において直接経費の一部を負担することができるものとする。(3項)
D 第7条(受入手続)
 共同研究の申込みをしようとする民間機関等の長は、所定の申込書を学長に提出しなければならない。(1項)
 学長は、前項の申込書を受理したときは、研究代表者に所定の共同研究計画書を提出させるものとする。(2項)
E 第8条(受入決定)
 学長は、前条第2項の共同研究計画書を受理したときは、審議機関の議を経た上、文部省と協議して、当該共同研究の受入れについて決定するものとする。
F 第9条(決定通知)
 学長は、共同研究の受入れを決定したときは、研究代表者、民間機関等の長及び契約担当官に対し、所定の文書により通知する。
G 第10条(契約の締結)
 契約担当官は、前条の通知を受けたときは、所定の契約書により民間機関等の長と速やかに契約を締結しなければならない。(1項)
 契約担当官は、前項の規定により当該契約を締結したときは、学長にその旨を報告するものとする。(2項)
H 第11条(中止又は期間延長)
 研究代表者は、当該共同研究の中止又はその期間を延長する必要が生じたときは、あらかじめ民間機関等の長と協議の上、学長にその旨を申し出なければならない。(1項)
 前項に規定する申出があったときは、第8条から第10条までの規程を準用する。
I 第12条(完了報告)
 研究代表者は、当該共同研究が完了したときは、所定の報告書により学長に報告しなければならない。(1項)
 学長は、前項の報告を受けたときは、その旨を審議機関及び契約担当官に通知するものとする。(2項)
J 第13条(研究成果の公表)
 学長は、共同研究による研究成果を公表する場合は、公表時期及び方法について、民間機関等との間で適切に定めるものとする。
(2)北見市環境調査研究の受入れ等
ア 北見市(北見市長)は、原告の内諾を得た上で、被告規程に基づき、平成5年4月1日付けで、被告(北見工業大学)の学長にあてて、以下の内容の共同研究申請書(乙2)を提出した。
@ 研究題目公害防止調査研究
A 研究の目的及び内容
 北見市における大気、水質、騒音振動、悪臭に係わる公害防止調査研究をより専門的な角度から実施し、結果の解析評価から公害防止対策の一層の推進を図る。
B 研究期間平成5年4月15日から平成6年3月31日まで
C 大学における研究担当者
 研究代表者 原告(所属・職 化学システム工学科助教授
 現在の専門 環境化学 分離分析化学
 役割分担 環境調査 データ解析評価)
 研究分担者 B(所属・職 化学システム工学科教務職員
 現在の専門 環境化学 分離分析化学
 役割分担 環境調査 データ解析評価)
D 派遣を予定している民間等共同研究員
 C(所属機関等 北見市衛生部環境衛生課公害係技術吏員
 現在の専門 環境保全
 役割分担 データ解析評価)
 なお、上記Cは、北見工業大学環境工学科を卒業した経歴を有する。
E 民間機関等が負担する直接経費及び共同研究員費の額
 直接経費の合計521万1800円(他に、共同研究員費として41万2000円)
イ 原告は、被告規程に基づき、平成5年4月1日付けで、被告(北見工業大学)の学長にあてて、上記共同研究申請書と同じ内容を記載した共同研究計画書(乙3)を提出した。
ウ 被告は、平成5年4月14日、学長その他の委員の出席する総務委員会において、上記共同研究の受入れを承認した(乙4)。
エ そこで、被告と北見市とは、平成5年4月15日、上記共同研究申請書及び共同研究計画書の内容に従い、北見市公害防止調査研究を実施することを内容とする共同研究契約(乙5)を締結した。
オ 平成5年以降においても、被告と北見市とは、継続して、北見市環境調査研究に係る共同研究を実施しており、原告は、平成5年度から平成15年度まで、被告における研究担当者として共同研究に参加し、研究代表者を務めた。
(3)常呂川水系水質調査研究の受入れ等
ア 協議会(協議会会長)は、原告の内諾を得た上で、被告規程に基づき、平成5年4月26日付けで、被告(北見工業大学)の学長にあてて、以下の内容の共同研究申請書(乙6)を提出した。なお、協議会は、常呂川水系関係自治体(1市5町)による常呂川の総合的な環境保全対策の推進を主な事業内容とする。
@ 研究題目常呂川水系水質調査研究
A 研究の目的及び内容
 常呂川水系の広域的な水質等の調査をより専門的な角度から実施し結果の解析評価から関係自治体による常呂川水系全域にわたる総合的な環境保全対策の推進を図る。
B 研究期間平成5年5月13日から平成6年3月31日まで
C 大学における研究担当者
 研究代表者 原告(所属・職 化学システム工学科助教授
 現在の専門 分析化学 分離化学
 役割分担 環境調査 データ解析評価)
 研究分担者 B(所属・職 化学システム工学科教務職員
 現在の専門 分析化学 分離化学
 役割分担 環境調査 データ解析評価)
D 派遣を予定している民間等共同研究員
 E(所属機関等 常呂川水系環境保全対策協議会(北見市衛生部環境衛生課公害係)
 現在の専門 環境保全
 役割分担 データ解析評価)
 なお、上記Eは、北見工業大学工学化学科を卒業した経歴を有する。
E 民間機関等が負担する直接経費及び共同研究員費の額
 直接経費の合計518万8110円(他に、共同研究員費として41万2000円)
イ 原告は、被告規程に基づき、平成5年4月26日付けで、被告(北見工業大学)の学長にあてて、上記共同研究申請書と同じ内容を記載した共同研究計画書(乙7)を提出した。
ウ 被告は、平成5年5月12日、学長その他の委員の出席する総務委員会において、上記共同研究の受入れを承認した(乙8)。
エ そこで、被告と協議会とは、平成5年5月12日、上記共同研究申請書及び共同研究計画書の内容に従い、常呂川水系水質調査研究を実施することを内容とする共同研究契約(乙9)を締結した(ただし、同契約においては、研究期間の始期が、平成5年5月12日となっている。)。
オ 平成5年以降においても、被告と協議会とは、継続して、常呂川水系水質調査研究に係る共同研究を実施しており、原告は、平成5年度から平成15年度まで、被告における研究担当者として共同研究に参加し、研究代表者を務めた。
(4)北見市一般廃棄物処理に関する環境調査並びにごみ質調査、作業環境調査の受入れ等
ア 被告は、平成13年ころ、被告規程所定の手続に則り、北見市の北見市一般廃棄物処理に関する環境調査並びにごみ質調査、作業環境調査に係る共同研究の申請(なお、北見市は原告の内諾を得て申請をしている。)の受入れを承認し、北見市との間で、上記調査に係る共同研究を実施することを内容とする共同研究契約を締結した。
イ 平成13年以降においても、被告と北見市とは、継続して、上記共同研究を実施しており、原告は、平成13年度から平成15年度まで、被告における研究担当者として共同研究に参加し、研究代表者を務めた。
(5)平成15年度の本件各共同研究に係る契約の内容等
ア 被告と北見市とは、平成15年度の北見市環境調査研究に関し、平成15年5月2日、共同研究契約(甲1)を締結した。
 上記共同研究契約の要領は、前提となる事実等(2)ア(ウ)記載のとおりであるほか、契約書(甲1)には以下の内容の約定がある。
@ 第6条(研究経費の納付)
 北見市は、研究料及び北見市に係る直接経費を北見工業大学大学歳入徴収官の発する納入告知書により、当該納入告知書に定める納付期限までに納付しなければならない。(1項)
A 第8条(施設・設備の提供等)
 被告は、被告に係る施設(北見工業大学工学部)を本共同研究の用に供するものとする。(1項)
B 第9条(研究の中止又は期間の延長)
 天災その他研究遂行上やむを得ない事由があるときは、被告及び北見市協議の上本共同研究を中止し、又は研究期間を延長することができる。この場合において、被告又は北見市はその責を負わないものとする。
C 第10条(研究の完了又は中止等に伴う研究経費等の取扱い)
 本共同研究を完了し、又は前条の規定により、本共同研究を中止した場合において、第6条1項の規定により納付された研究経費(研究料を除く。)の額に不用が生じた場合は、北見市は被告に不用となった額の返還を請求できる。被告は北見市からの返還請求があった場合、これに応じなければならない。(1項)
D 第18条(秘密の保持)
 被告及び北見市は、本共同研究の実施に当たり、相手方より開示若しくは提供を受け又は知り得た技術上及び営業上の一切の情報について、研究担当者以外に開示・漏洩してはならない。また、被告及び北見市は、相手方より開示を受けた情報に関する秘密について、当該研究担当者がその所属を離れた後も含め保持する義務を、当該研究担当者に対し負わせるものとする。(以下略)(1項)
E 第20条(研究協力者の参加及び協力)
 被告、北見市のいずれかが、共同研究遂行上、研究担当者以外の者の参加ないし協力を得ることが必要と認めた場合、相手方の同意を得た上で、当該研究担当者以外の者を研究協力者として本共同研究に参加させることができる。(1項)
 研究担当者以外の者が研究協力者となるに当たっては、当該研究担当者以外の者を研究協力者に加えるよう相手方に同意を求めた被告又は北見市は、研究協力者となる者に本契約内容を遵守させなければならない。(2項)
F 第21条(契約の解除)
 被告及び北見市は、次の各号のいずれかに該当し、催告に対し是正されないときは本契約を解除することができるものとする。
一 相手方が本契約の履行に関し、不正又は不当の行為をしたとき
二 相手方が本契約に違反したとき(2項)
G 第22条(損害賠償)
 被告又は北見市は、前条に掲げる事由及び被告、北見市、研究担当者又は研究協力者が故意又は重大な過失によって相手方に損害を与えたときには、その損害を賠償しなければならない。
イ 被告と協議会とは、平成15年度の常呂川水系水質調査研究に関し、平成15年5月13日、共同研究契約(甲3)を締結した。
 上記共同研究契約の要領は、前提となる事実等(2)イ(ウ)記載のとおりであるほか、契約書(甲3)には、上記ア@ないしGと同内容の約定がある(ただし、北見市を協議会と読み替える。)。
ウ 被告と北見市とは、北見市一般廃棄物処理に関する環境調査並びにごみ質調査、作業環境調査に関し、平成15年5月2日、共同研究契約(甲2)を締結した。
 上記共同研究契約の要領は、前提となる事実等(2)ウ(ウ)記載のとおりであるほか、契約書(甲2)には、上記ア@ないしGとほぼ同内容の約定がある(第6条には研究料に関する言及がない点、第8条1項が「被告及び北見市は、それぞれの施設(被告については北見工業大学工学部、北見市については北見市)を本共同研究の用に供する」ものと規定されている点が異なるのみである。)。
(6)平成15年度の北見市環境調査研究に係る研究報告書
ア 本件北見市環境調査報告書(甲4)は、上記(5)アの共同研究契約の約定(第4条)に基づき作成されたものである。
イ 報告書(甲4)の表題は「平成15年度北見市環境調査研究報告書」である。同報告書の表紙上部中央には上記表題が記載され、下部中央には、「北見工業大学地域共同研究センター」「北見工業大学化学システム工学科環境科学研究室」と上下二段で記載されている。
ウ 報告書(甲4)の「まえがき」中には、「本調査は北見市より北見工業大学地域共同研究センターに委託された北見市環境調査を本学化学システム工学科環境科学研究室と北見市との共同研究(調査)として行ったもので、本年度はその11年目である。」との記載がある。
 また、末尾には、次のとおりの記載がある。
 「本共同研究の研究メンバーは下記の通りである。
  北見工業大学化学システム工学科環境科学研究室
   助教授 A(共同研究代表)
   助手 B
  北見市環境緑化部環境課
   係長 E
   技術吏員 K
   事務吏員 F
   事務吏員 D  」
エ 報告書(甲4)は、全体で133頁あり、大気環境調査、市内小河川水質調査、騒音振動調査、臭気調査、ダイオキシン類調査の5項目から構成されている。
 大気環境調査は、おおむね、@調査の概要(調査項目、調査地点、調査回数等)、A調査結果(データの記載)、B結果の解析及び考察(27頁ないし30頁)、C資料(環境庁大気保全局長通知の内容の紹介)から構成される。
 市内小河川水質調査は、おおむね、@調査の概要(調査項目、調査地点、調査回数、調査分析方法等)、A調査結果(データの記載)、B結果の解析及び考察(45頁ないし47頁)、C河川ごとのまとめ(62頁ないし63頁)から構成される。
 騒音振動調査は、おおむね、@調査の概要(調査項目、調査地点、調査及び評価の方法)、A調査結果(データの記載)、B結果の解析及び考察(85頁ないし88頁)、C資料(自動車交通騒音・振動に係る基準等の紹介)から構成される。
 臭気調査は、おおむね、@調査の概要(調査目的、調査方法、調査地点等)、A調査結果(データの記載)、B結果の解析及び考察(104頁ないし106頁)から構成される。
 ダイオキシン類調査は、おおむね、@「ダイオキシン類」についての説明、A調査の概要(調査項目、調査日時、調査地点)、B調査結果(データの記載)、C解析と考察(119頁ないし126頁)から構成される。
オ 本件北見市環境調査報告書(甲4)の具体的な執筆経過は、判然としない部分もあるものの、本件考察部分以外の調査結果等の記述及び本件考察部分の記述のいずれについても、原告のほか北見市の研究員やBも具体的な執筆行為を行ったものと認められる(甲18、乙17、弁論の全趣旨)。
 なお、本件北見市環境調査報告書(甲4)の目次及び本文中には、執筆分担者の表示はない。
(7)平成15年度の常呂川水系水質調査研究に係る研究報告書
ア 本件常呂川水系水質調査報告書(甲6)は、上記(5)イの共同研究契約の約定(第4条)に基づき作成されたものである。
イ 報告書(甲6)の表題は「平成15年度常呂川水系環境保全対策協議会常呂川水系水質調査報告書」である。同報告書の表紙の上部中央には上記表題が記載され、下部中央には、「北見工業大学地域共同研究センター」「北見工業大学化学システム工学科環境科学研究室」と上下二段で記載されている。
ウ 報告書(甲6)の「まえがき」中には、「本調査は常呂川流域の一市五町、北見市、留辺蘂町、置戸町、訓子府町、端野町および常呂町により設けられた常呂川水系環境保全対策協議会より北見工業大学地域共同研究センターに委託された同水系水質調査を協議会と本学化学システム工学科環境科学研究室との共同研究(調査)として行ったものであり、本年度は11年目である。」との記載がある。
 また、末尾には、「共同研究代表A」との記載がある。
エ 報告書(甲6)は、全体で131頁あり、おおむね、@調査の概要(調査の方針、調査組織、調査項目、調査地点、調査回数、調査分析方法等)、A調査結果(データの記載)、B結果の解析及び考察(35頁ないし37頁、83頁ないし85頁)、C常呂川水系における汚濁機構に関する考察、Dまとめ(105頁ないし107頁)、E資料(常呂川水系流量年図、日降水量図)から構成される。
 また、上記Cの常呂川水系における汚濁機構に関する考察は、分析方法、実験結果(データの記載)、考察(95頁ないし98頁)等から構成される。
オ 常呂川水系水質調査報告書(甲6)の具体的な執筆経過は、判然としない部分もあるものの、本件考察部分以外の調査結果等の記述及び本件考察部分の記述のいずれについても、原告のほか北見市の研究員やBも具体的な執筆行為を行ったものと認められる(甲18、乙17、弁論の全趣旨)。
 常呂川水系水質調査報告書(甲6)の目次及び本文中には、執筆分担者の表示はない。
(8)平成15年度の北見市一般廃棄物処理に関する環境調査並びにごみ質調査、作業環境調査に係る報告書
ア 本件北見市一般廃棄物処理に関する環境調査等報告書(甲5)は、上記(5)ウの共同研究契約の約定(第4条)に基づき作成されたものである。
イ 報告書(甲5)の表題は「北見市一般廃棄物処理に関する環境調査並びにごみ質調査、作業環境調査共同研究」である。同報告書の表紙の上部中央には上記表題が記載され、下部中央には、「北見工業大学地域共同センター」「北見工業大学化学システム工学科環境科学研究室」と上下二段で記載されている。
ウ 報告書(甲5)の「はじめに」中には、「本研究は北見市がこれらの施設からの有害物質発生を抑制し、大気、水、地下水など環境汚染を未然防止すること、および廃棄物処理プロセスにおける作業安全管理を図ることを目的として北見工業大学地域共同研究センターに委託し、本学化学システム工学科環境科学研究室と北見市環境緑化部廃棄物処理場との共同研究として行ったものである。」との記載がある。
 また、「はじめに」の末尾には、「北見工業大学化学システム工学科環境科学研究室共同研究代表者A」との記載がある。
エ 報告書(甲5)は、全体で62頁あり、おおむね、@調査の概要(組織、調査項目、頻度、測定方法、調査場所等)、A調査結果(データの記載)、B解析と考察(59頁ないし62頁)から構成される。
 なお、報告書(甲5)の末尾には「まとめ」が掲載されており、その末尾には、「北見工業大学化学システム工学科環境科学研究室共同研究代表者A」との記載がある。
オ 本件北見市一般廃棄物処理に関する環境調査等報告書(甲5)の具体的な執筆経過は、判然としない部分もあるものの、本件考察部分以外の調査結果等の記述は、原告のほか北見市の研究員が行い、本件考察部分の記述は原告が行ったものと認められる(甲18、弁論の全趣旨)。
 本件北見市一般廃棄物処理に関する環境調査等報告書(甲5)の目次及び本文中には、執筆分担者の表示はない。
(9)平成16年度以降の本件各共同研究
ア 原告が本件各共同研究に参加することができなくなった以降においても、原告以外の被告の教員が参加して本件各共同研究が継続的に実施され、平成16年度の本件各共同研究に係る研究報告書として本件各平成16年度報告書(甲8ないし10)、平成17年度の本件各共同研究に係る研究報告書として本件各平成17年度報告書(甲11ないし13)が作成された。
イ 本件各平成16年度報告書(甲8ないし10)の表紙の記載等
(ア)平成16年度の北見市環境調査研究の報告書(甲8)の表題は「平成16年度北見市環境調査研究報告書T 北見市環境調査研究報告書U」である。同報告書の表紙下部中央には、「国立大学法人北見工業大学」と記載されている。
(イ)平成16年度の北見市一般廃棄物処理に関する環境調査並びにごみ質調査、作業環境調査の報告書(甲9)の表題は、「北見市一般廃棄物処理に関する環境調査並びにごみ質調査共同研究」である。同報告書の表紙下部中央には、「北見工業大学」と記載されている。
 なお、同報告書の「調査の概要」との項目中には、「本調査は北見市と北見工業大学との共同研究として行った。」との記載がある(3頁)。
(ウ)平成16年度の常呂川水系水質調査研究の報告書(甲10)の表題は「平成16年度常呂川水系環境保全対策協議会常呂川水系水質調査報告書」である。同報告書の表紙下部中央には、「国立大学法人北見工業大学」と記載されている。
ウ 本件各平成17年度報告書(甲11ないし13)の表紙の記載等
(ア)平成17年度の北見市環境調査研究の報告書(甲11)の表題は「平成17年度北見市環境調査研究報告書」である。同報告書の表紙下部中央には、「国立大学法人北見工業大学」と記載されている。
 なお、同報告書の末尾には、「本報告書は、北見市と北見工業大学との間で平成17年度に実施された共同研究『北見市環境調査研究』の成果をまとめたものである。共同研究は、北見工業大学オホーツク地域環境保全研究推進センター長・L教授を代表とし、同センター・M助教授、N助教授を担当者として実施され、本報告書が上梓された。」と記載されている。
(イ)平成17年度の北見市一般廃棄物処理に関する環境調査並びにごみ質調査、作業環境調査の報告書(甲12)の表題は、「北見市一般廃棄物処理に関する環境調査並びにごみ質調査共同研究報告書」である。同報告書の表紙下部中央には、「国立大学法人北見工業大学」と記載されている。
 なお、同報告書の「調査の概要」との項目中には、「本調査は北見市と北見工業大学との共同研究として行った。」との記載がある(3頁)。
 また、同報告書の末尾には、「本報告書は、北見市と北見工業大学との間で平成17年度に実施された共同研究『北見市一般廃棄物処理に関する環境調査並びにごみ質調査』の成果をまとめたものである。共同研究は、北見工業大学オホーツク地域環境保全研究推進センター長・L教授を代表とし、同センター・O助教授を担当者として実施され、本報告書が上梓された。」と記載されている。
(ウ)平成17年度の常呂川水系水質調査研究の報告書(甲13)の表題は「平成17年度常呂川水系環境保全対策協議会常呂川水系水質調査報告書」である。同報告書の表紙下部中央には、「国立大学法人北見工業大学」と記載されている。
 なお、同報告書の末尾には、「本報告書は、常呂川水系環境保全対策協議会と北見工業大学との間で平成17年度に実施された共同研究『常呂川水系水質調査研究』の成果をまとめたものである。共同研究は、北見工業大学オホーツク地域環境保全研究推進センター長・L教授を代表とし、同センター・P助教授を担当者として実施され、本報告書が上梓された。」と記載されている。
2 争点1(原告が本件各平成15年度報告書の著作者であるか否か・著作権法15条1項の適用の有無)について
(1)原告は、被告により、本件各平成15年度報告書に係る著作権(複製権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害されたと主張するのに対し、被告は、本件各平成15年度報告書には著作権法15条1項が適用されるから、原告は本件各平成15年度報告書に係る著作権及び著作者人格権を有しないと主張する。
 そこで、本件各平成15年度報告書について著作権法15条1項が適用されるか否か、すなわち、本件各平成15年度報告書が同項の定める要件である、@法人その他使用者(法人等)の発意に基づくこと、A法人等の業務に従事する者が職務上作成したものであること、B法人等が自己の著作の名義の下に公表するものであること、C作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがないこと、の各要件を充足するか否かについて検討する。
(2)法人その他使用者(法人等)の発意に基づくこと
ア 前提となる事実等及び前記1で認定した事実によれば、本件各共同研究は、北見市等からの共同研究の申請を受けて被告内部における意思決定を経た後、被告と北見市等との間で締結された各共同研究契約に基づき実施されたものであること、本件各平成15年度報告書は、これらの共同研究契約における「被告及び北見市(又は協議会)とは、双方協力して、本共同研究の実施期間中に得られた研究成果について報告書を、本共同研究終了後にとりまとめる」との約定(4条)に基づき契約上の義務の履行として作成されたものであることが認められる。
 上記事実に照らせば、本件各平成15年度報告書の作成は、被告(使用者)の判断にかかっていたもの、すなわち、被告の発意に基づくものということができる。
イ 原告は、本件各共同研究は、北見市等が、専ら原告の個人的資質及び実績等に対する信用に依拠して、研究者である原告に対して要請し、原告が北見市等の要請を受諾したことにより実施されたものであって、本件各共同研究の実施(本件各平成15年度報告書の作成)は被告の発意に基づくものとは認められない旨主張する。
 この点、証拠(甲18)によれば、北見市の担当者は、被告に対して共同研究の申込みをする以前に、原告から共同研究への参加の内諾を得ていたものと認められる。しかしながら、法人等の発意に基づくとは、著作物作成の意思が直接又は間接に使用者の判断にかかっていることを意味し、上記ア記載の事実に照らせば、本件各共同研究の実施(本件各平成15年度報告書の作成)は、被告の判断(被告内部における意思決定及び北見市等との契約の締結)にかかっているものといえるのであり、原告が事前に共同研究への参加を内諾していたとの事実は、上記判断を左右するものではない。
 原告は、本件各共同研究は、専ら原告の個人的資質や実績等に依拠して実施されたものである旨主張するものの、本件各共同研究がいずれも北見市(又は常呂川水系)の環境調査研究であることに照らすと、原告を研究代表者として本件各共同研究が行われたのは、原告の個人的資質や実績を評価したことによる面があることは否定し得ないものの、それのみならず、原告が北見市所在の国立大学である北見工業大学に所属していたことにも依拠するものと考えられる。実際、原告は平成15年度までしか本件各共同研究に参加していないにもかかわらず、平成16年度以降も被告と北見市等との間で本件各共同研究が継続して行われている。
 原告の上記主張は採用することができない。
ウ また、原告は、平成15年度の本件各共同研究に係る契約書(甲1ないし3)は、原告が被告に所属する関係上、事務的・便宜的な目的で作成されたにすぎないとも主張する。
 しかしながら、前記1で認定したとおり、被告は、北見市等との共同研究契約(甲1ないし3)に基づき、実績報告書の作成(4条)のほか、施設・設備の提供(8条)、共同研究を中止した場合の北見市等への研究経費の返還(10条)、秘密の保持(18条)、北見市等への損害賠償(22条)等の契約上の責任を負うに至っており、これらの契約締結が、事務的・便宜的なものであったとはいえない。
 原告の上記主張は採用することができない。
(3)法人等の業務に従事する者が職務上作成したものであること
ア 前提となる事実等及び前記1で認定した事実によれば、原告と被告との間(ただし、平成16年4月1日の法人化以前は国立大学北見工業大学(国)との間)には雇用関係があったこと、原告が平成15年度の本件各共同研究に研究担当者として参加し、研究代表者を務めたのは、被告が北見市等との間の各共同研究契約に基づき、原告を研究担当者として本件各共同研究に参加させる旨を約定したことによるものであること、被告は、上記各契約上の義務として、本件各共同研究の終了後に、北見市等と協力して共同研究の実施期間中に得られた研究成果についての報告書をとりまとめる義務を負っており(4条)、原告は、被告の研究担当者として、上記約定に基づき本件各平成15年度報告書を作成したことが認められる。
 上記事実に照らせば、本件各平成15年度報告書は、被告(ただし、平成16年4月1日の法人化以前は国立大学北見工業大学(国))の業務に従事する者が、職務上作成したものであるということができる。
イ なお、原告は、大学における研究者には、学問の自由や表現の自由が憲法上保障されており、大学から研究内容につき指揮監督を受ける関係にはなかった、学外機関から依頼された研究の担当者になることやその研究に係る報告書を作成することは、大学内における研究者の通常の職務の範囲外の事柄である等と主張する。
 しかしながら、前提となる事実等及び前記1で認定した事実によれば、原告は、被告に対し、自ら各共同研究計画書を提出して(なお、被告規程7条は、被告の学長は、民間機関等の長から共同研究の申込書を受理したときは、研究代表者に所定の共同研究計画書を提出させるものとする、と定めており、同計画書の提出はこの定めに基づく手続として行われたものと認められる。)、被告が北見市等との共同研究の受入れを承認し、北見市等との間で共同研究契約を締結した場合には、同契約の内容に則って、共同研究に参加する旨を申し入れたこと、被告は、北見市等から提出された各共同研究申請書(研究の目的及び内容や研究の要領等は、原告が被告に提出した各共同研究計画書の内容と同一である。)に基づいて、北見市等との間で、研究目的及び内容、研究実施場所や研究期間、共同研究に従事する者や役割、研究経費の負担、実績報告書の作成や研究成果の取扱い等について定めた各共同研究契約を締結し、これら契約に基づく義務を負担したこと、被告は、原告からの共同研究への参加の申入れを受けて、原告を被告の研究担当者として本件各共同研究に参加させたことが認められる。また、被告規程12条によれば、被告と民間機関等との共同研究を実施した場合において、当該共同研究が完了したときは、研究代表者は、所定の報告書により学長に報告しなければならないとされている。
 これらの事実や被告規程の内容等に照らせば、被告は、北見市等との間で締結した各共同研究契約の範囲内において原告が共同研究を実施するように、原告を指揮監督し、原告は、被告から上記の指揮監督を受けていたというべきである(なお、本件において、上記指揮監督関係があったからといって、原被告間において学問の自由等の侵害の問題が生じることはないことは上に述べたところから明らかである。)。
 そして、上記事実に照らせば、原告が共同研究に参加する旨を申し入れ、被告がこれを受けて原告を被告の研究担当者として本件各共同研究に参加させたことにより、原告が本件各共同研究に従事し、北見市等との間の共同研究契約に基づき、実績報告書を作成することは、被告に所属する研究者としての原告の職務の内容となっていたというべきである。
 よって、原告の上記主張は採用することができない。
 なお、その他原告は縷々主張するものの、いずれも上記アの判断を左右するものではない。
(4)法人等が自己の著作の名義の下に公表するものであること
ア 本件北見市環境調査報告書(甲4)について
 本件北見市環境調査報告書(甲4)の表紙の上部中央には「平成15年度北見市環境調査研究報告書」と表題が記載されており、下部中央には「北見工業大学地域共同研究センター」「北見工業大学化学システム工学科環境科学研究室」と上下二段で記載されていること、同報告書の目次及び本文中には執筆分担者の表示等はないこと、同報告書の「まえがき」中には、「本調査は北見市より北見工業大学地域共同研究センターに委託された北見市環境調査を本学化学システム工学科環境科学研究室と北見市との共同研究(調査)として行ったもので、本年度はその11年目である。」との記載があることは、前記1認定のとおりである。
 表紙下部中央の「北見工業大学地域共同研究センター」「北見工業大学化学システム工学科環境科学研究室」との記載は、その記載部位や「まえがき」に記載された報告書の位置付け等に照らし、報告書の著作名義を記載したものであると認められる。そして、北見工業大学地域共同研究センター及び北見工業大学化学システム工学科環境科学研究室は、いずれも、北見工業大学(被告)を構成する部門(部署)、あるいは、これらの下部組織であるから、本件北見市環境調査報告書(甲4)は、被告の著作名義の下に公表したものであるといえる。
 なお、報告書の「まえがき」には、他の研究担当者の氏名の表示とともに、原告の氏名が表示されているものの、これは、その直前に「本共同研究の研究メンバーは下記の通りである。」と記載されているように、平成15年度の北見市環境調査研究の研究担当者を紹介する記載にすぎず、報告書の著作名義を記載したものであると認めることはできない。
イ 本件常呂川水系水質調査報告書(甲6)について
 本件常呂川水系水質調査報告書(甲6)の表紙の上部中央には「平成15年度常呂川水系環境保全対策協議会常呂川水系水質調査報告書」と表題が記載されており、下部中央には「北見工業大学地域共同研究センター」「北見工業大学化学システム工学科環境科学研究室」と上下二段で記載されていること、同報告書の目次及び本文中には執筆分担者の表示等はないこと、同報告書の「まえがき」中には、「本調査は(中略)常呂川水系環境保全対策協議会より北見工業大学地域共同研究センターに委託された同水系水質調査を協議会と本学化学システム工学科環境科学研究室との共同研究(調査)として行ったものであり、本年度は11年目である。」との記載があることは、前記1認定のとおりである。
 表紙下部中央の「北見工業大学地域共同研究センター」「北見工業大学化学システム工学科環境科学研究室」との記載は、その記載部位や「まえがき」に記載された報告書の位置付け等に照らし、報告書の著作名義を記載したものであると認められる。そして、北見工業大学地域共同研究センター及び北見工業大学化学システム工学科環境科学研究室は、いずれも、北見工業大学(被告)を構成する部門(部署)、あるいは、これらの下部組織であるから、本件常呂川水系水質調査報告書(甲6)は、被告の著作名義の下に公表したものであるといえる。
 なお、報告書の「まえがき」の末尾には原告の氏名が表示されているものの、「まえがき」の末尾の表示であることや「共同研究代表」との肩書きに続いて表示されていることに照らせば、上記原告の氏名表示をもって、報告書全体の著作名義を記載したものであると認めることはできない。
ウ 本件北見市一般廃棄物処理に関する環境調査等報告書(甲5)について
 本件北見市一般廃棄物処理に関する環境調査等報告書(甲5)の表紙の上部中央には「北見市一般廃棄物処理に関する環境調査並びにごみ質調査、作業環境調査共同研究」と表題が記載されており、下部中央には「北見工業大学地域共同センター」「北見工業大学化学システム工学科環境科学研究室」と上下二段で記載されていること、同報告書の目次及び本文中には執筆分担者の表示等はないこと、同報告書の「はじめに」中には、「本研究は北見市がこれらの施設からの有害物質発生を抑制し、大気、水、地下水など環境汚染を未然防止すること、および廃棄物処理プロセスにおける作業安全管理を図ることを目的として北見工業大学地域共同研究センターに委託し、本学化学システム工学科環境科学研究室と北見市環境緑化部廃棄物処理場との共同研究として行ったものである。」との記載があることは、前記1認定のとおりである。
 表紙下部中央の「北見工業大学地域共同センター」「北見工業大学化学システム工学科環境科学研究室」との記載は、その記載部位や「まえがき」に記載された報告書の上記位置付け等に照らし、報告書の著作名義を記載したものであると認められる。そして、北見工業大学地域共同センター(地域共同研究センターのこと)及び北見工業大学化学システム工学科環境科学研究室は、いずれも、北見工業大学(被告)を構成する部門(部署)、あるいは、これらの下部組織であるから、本件北見市一般廃棄物処理に関する環境調査等報告書(甲5)は、被告の著作名義の下に公表したものであるといえる。
 なお、報告書の「まえがき」の末尾、「まとめ」の末尾には、それぞれ原告の氏名が表示されているものの、「まえがき」や「まとめ」の末尾の表示であることや「共同研究代表者」との肩書きに続いて表示されていることに照らせば、上記原告の氏名表示をもって、報告書全体の著作名義を記載したものであると認めることはできない。
(5)作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがないこと
ア 原告は、被告の「国立大学法人北見工業大学職務発明規程」(平成16年4月1日)(甲7)の第2条の「発明等」の定義の中に、プログラム著作物及びデータベース著作物が含まれることを明示しながら、それ以外の著作物を「発明等」から除外しているから、上記規程は、一般著作物の著作権が研究者に帰属することを前提とした規定であるといえ、上記「別段の定め」に該当する旨主張する。
 しかしながら、同規程(甲7)は、国立大学法人北見工業大学の職員等が行った発明等の取扱いについて規定し、その発明者の権利を保護することにより、発明等の奨励及び研究意欲の向上を図ることを目的とするものであり(1条)、プログラムの著作物及びデータベースの著作物について(2条一オ)、被告は職務発明等にかかる知的財産権の全部又は一部を承継し、これを所有するものとすることや特別の事情がある場合には職員等に帰属させることができる旨を定めるものである(6条)。
 同規程は、上記目的の下に、著作権法15条によれば、権利の承継を経るまでもなく、被告が著作者として著作権を有することになるものについて、プログラムの著作物やデータベースの著作物の性質に鑑みて、これら著作物については、特に、特許法等の規定する「発明」(特許法35条においては、職務発明について特許を受ける権利若しくは特許権は原始的に従業者に帰属する。)に含め、職員等が著作者となり、被告は職員等から著作権の承継を受けるものとしたものであると解される。したがって、同規程は、プログラムの著作物やデータベースの著作物については、上記「別段の定め」に当たると言い得ても、これら以外の著作物については、何ら規定していないと言わざるを得ない。
 よって、原告の上記主張は採用できない。
イ 他に、被告において、本件各平成15年度報告書が作成された時に、契約、勤務規則その他に、著作権法15条1項の適用を排して、研究者個人を著作者とする旨の定めがあったことを認めるに足る証拠はない。
(6)以上によれば、(単独著作か共同著作かはさておき)原告の作成した本件各平成15年度報告書については、著作権法15条1項が適用されるものと認められる。
 したがって、原告は本件各平成15年度報告書に係る著作権及び著作者人格権を有しないから、その余の点について判断するまでもなく、原告の著作権及び著作者人格権侵害に基づく請求はいずれも理由がない。
3 争点5(不法行為の成否及び損害額)について
 原告は、本件各平成15年度報告書に係る原告の著作者人格権侵害に基づく損害賠償請求が認められない場合に備え、予備的に、被告が本件各平成16年度報告書及び本件各平成17年度報告書を作成・発行した行為は、著しく反社会的な行為であり、民法709条の不法行為を構成する旨主張する。
 しかしながら、前記のとおり、原告の作成した本件各平成15年度報告書については、著作権法15条1項が適用され、原告は上記各報告書に係る著作権及び著作者人格権を有しないのであり、他に、被告が本件各平成16年度報告書及び本件各平成17年度報告書を作成・発行した行為について、不法行為を基礎付けるに足る違法性を有すると評価すべき事情は証拠上見当たらないから、被告の上記行為が原告に対する不法行為を構成するということはできない。
 したがって、その余の点について判断するまでもなく、原告の上記請求も理由がない。
4 以上によれば、原告の本訴請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第47部
 裁判長裁判官 阿部正幸
 裁判官 柵木澄子
 裁判官 舟橋伸行


(別紙)研究報告書目録
1 報告書名 「平成15年度北見市環境調査研究報告書」
 表紙記載 北見工業大学地域共同研究センター
        北見工業大学化学システム工学科環境科学研究室
2 報告書名 「北見市一般廃棄物処理に関する環境調査並びにごみ質調査、作業環境調査共同研究」
 発行年月 平成17年1月
 表紙記載 北見工業大学地域共同センター
        北見工業大学化学システム工学科環境科学研究室
3 報告書名 「平成15年度常呂川水系環境保全対策協議会常呂川水系水質調査報告書」
 表紙記載 北見工業大学地域共同研究センター
        北見工業大学化学システム工学科環境科学研究室
4 報告書名 「平成16年度北見市環境調査研究報告書T 北見市環境調査研究報告書U」
 表紙記載 国立大学法人北見工業大学
5 報告書名 「北見市一般廃棄物処理に関する環境調査並びにごみ質調査共同研究」
 発行年月 平成17年6月
 表紙記載 北見工業大学
6 報告書名 「平成16年度常呂川水系環境保全対策協議会常呂川水系水質調査報告書」
 表紙記載 国立大学法人北見工業大学
7 報告書名 「平成17年度北見市環境調査研究報告書」
 表紙記載 国立大学法人北見工業大学
8 報告書名 「平成17年度北見市一般廃棄物処理に関する環境調査並びにごみ質調査共同研究報告書」
 表紙記載 国立大学法人北見工業大学
9 報告書名「平成17年度常呂川水系環境保全対策協議会常呂川水系水質調査報告書」
 表紙記載 国立大学法人北見工業大学

以上
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日本ユニ著作権センター
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