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【事件名】商標“トータルケア”審決取消事件(2)
【年月日】平成19年6月28日
 知財高裁 平成18年(行ケ)第10545号 審決取消請求事件
 (口頭弁論終結日 平成19年6月14日)

判決
原告 ビーチャムグループピー・エル・シー
訴訟代理人弁護士 武藤佳昭
同 斎藤三義
同 達野大輔
同 中陳道夫
訴訟代理人弁理士 谷口登
被告 特許庁長官中嶋誠
指定代理人 岡田美加
同 山口烈
同 内山進


主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。

事実及び理由
第1 請求
 特許庁が不服2005−9086号事件について平成18年8月11日にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
 本件は、原告が後記商標登録出願をしたところ、拒絶査定を受けたので、これに対する不服の審判請求をしたが、特許庁が請求不成立の審決をしたことから、その取消しを求めた事案である。
第3 当事者の主張
1 請求の原因
(1) 特許庁における手続の経緯
 原告は、平成15年12月19日、下記内容の商標登録出願(商願2003−116792号。以下、下記の構成からなる商標を「本願商標」という。甲1)をしたところ、特許庁は、平成17年2月1日、上記商標登録出願について拒絶査定(甲4)をした。
 そこで原告は、これを不服として審判請求をしたので、特許庁はこれを不服2005−9086号事件として審理した上、平成18年8月11日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は平成18年8月25日原告に送達された。
 記
 (商標) 略
 (指定商品)第3類「歯磨き」
(2) 審決の内容
 審決の内容は、別添審決写しのとおりである。
 その理由の要点は、本願商標は、単に商品の品質、用途を表示するにすぎず、自他商品の識別標識としては認識されないものであるから、商標法(以下「法」という。)3条1項3号に該当する、としたものである。
(3) 審決の取消事由
 しかしながら、以下に述べるとおり、法3条1項3号に該当するとした審決には誤りがあるから、違法として取消しを免れない。
ア 審決が挙げている新聞記事及びインターネット情報によっても、本願商標がその指定商品を取り扱う業界において、単に商品の品質、用途を表示するに過ぎないとの結論を導くことはできない。
(ア) まず、アース製薬の商品「薬用シュミテクトトータルケア」を紹介するインターネットのページ(http://www.kenko.com/product/item/itm_8911340072.html、乙41)については、その商品「薬用シュミテクトトータルケア」は、原告の関連会社であるブロック・ドラッグ・カンパニー・インコーポレーテッドが商標のライセンスを行っているアース製薬株式会社の製品であるため、これはまさに原告からライセンスを受けて販売されている商品を指し示すものとして「トータルケア」の語が使用されている例であって、市場一般において「トータルケア」という言葉が「歯周病を総合的に予防するための歯・歯茎の手入れ」や「歯周病・虫歯・口臭を全体的に防ぐための口腔の手入れ」程の意味合いで使用されていることの証拠とはなり得ない。
(イ) 次に、「ソニッケアーエリート7800プロフェッショナル(トータルケア)」という商品を紹介するインターネットのページ(http://www5a.biglobe.ne.jp/.M2BRAND/set1.html、甲8)については、その内容を見てみると、画面上段において「ソニッケアーエリート7800プロフェッショナル」と名づけられた商品が販売されており、下段において「ソニッケアーエリート7800プロフェッショナル(トータルケア)」と名づけられた商品が販売されている。両者の名称の違いは末尾に「(トータルケア)」がついているか否かの一点だけである。ここで商品説明を見てみると、上段の商品は「ソニッケアーエリート7800プロフェッショナル」という電動歯ブラシ一本が販売されているのに対して、下段の商品は「トータルケアとしてお勧めのセットです。」との説明があり、さらに「セット内容」の説明を見ると、「ソニッケアーエリート7800プロ〜1体、チェックアップ大人用(ソフトペースト)〜1個、ホームジェル〜1個」のセット商品であることが明らかである。
 すなわち、上記ホームページにおいては、「トータルケア」という言葉は、単に電動歯ブラシという商品に、歯磨きペースト及び歯磨きジェルがセットになっていることを示すために使用されているにすぎない。したがって、同ホームページにおける「トータルケア」という言葉の使用をもって、同語が「歯周病を総合的に予防するための歯・歯茎の手入れ」や「歯周病・虫歯・口臭を全体的に防ぐための口腔の手入れ」として使用されていることの証拠とすることはできない。
(ウ) 平成13年(2001年)10月18日朝日新聞(東京夕刊)5頁の記事(乙38)については、「◆歯のトータルケアセット」との記述があるものの、これは「プレゼントマリオン」という見出しの下に書かれた記事である。この「プレゼントマリオン」というのは、株式会社「朝日マリオン21」が、朝日新聞東京本社発行の夕刊マリオン面において、商品情報の提供やプレゼント提供などを行っている紙面である(甲9)。このことから明らかなように、この記事を執筆しているのは、紙面において商品を実際に取り扱っている者ではなく、単にその商品をプレゼントとして読者に提供している者にすぎないから、かかる者が「トータルケア」という語を使用していたとしても、これが「本願指定商品を取り扱う分野」における使用として認めることはできない。
 さらに、同記事の実際の文脈を見てみると、決して「トータルケア」という語が単独で使用されているわけではない。記事において使用されているのは、「トータルケアセット」という単語である。そして、この記事の内容は、サンスターの商品である練り歯磨き、歯ブラシ、そしてフロスの3点セットを50人にプレゼントする、という内容になっている。この記事の内容、そして見出しの単語が「トータルケア」ではなく「トータルケアセット」として表示されていることを考えれば、この記事における「トータルケアセット」という単語は、「ケア用品」の「トータルなセット」という意味において使用されているにすぎないことが明らかである。すなわち、この記事において「トータルケア」の語が、審決の指摘するように、「歯周病を総合的に予防するための歯・歯茎の手入れ」や「歯周病・虫歯・口臭を全体的に防ぐための口腔の手入れ」程の意味合いで使用されているとはいえない。
(エ) 「歯周病のトータルケアができるラインアップをご用意し…」という記述のある、サンスター株式会社の商品「G・U・M」を紹介するインターネットのページ(http://www.teamgum.net/ins/ins_02/ins_02_01/ins_02_01_010.html、乙39)及び「殺菌力が持続し、歯周病・ムシ歯・口臭をトータルケアするハミガキ」という記述のある、ライオン株式会社の商品「ミクロクリーンライオン」を紹介するインターネットのページ(http://www.lion.co.jp/ja/seihin/brand/038/01.htm、乙4の1)は、歯磨きを取り扱う会社により開設、運営されているものであり、その中に確かに「トータルケア」という言葉が使用されている。しかし、これらのウェブサイトが製作されたのは、ごく最近になってからである。このことは、インターネットのウェブサイトのデータを過去に遡って確認することのできるサービスを提供している、「ウェイバック・マシン」というウェブサイトから明らかである(甲10)。すなわち、サンスター株式会社の商品「G・U・M」を紹介するインターネットのページ(http://www.teamgum.net/ins/ins_02/ins_02_01/ins_02_01_010.html)は、平成17年10月23日に初めて公開されたものであり(甲12)、ライオン株式会社の商品「ミクロクリーンライオン」を紹介するインターネットのページ(ただし、「http://www.lion.co.jp/ja/seihin/brand/038/01.htm」のURLでは何らの結果も表示されなかったので、「http://www.lion.co.jp/ja/seihin/brand/」で検索した)は、平成18年4月11日になって初めてこのページが作成されたことがわかる(甲13〜15)。
(オ) 以上の(ア)〜(エ)によれば、「トータルケア」の文字が、「歯周病を総合的に予防するための歯・歯茎の手入れ」や「歯周病・虫歯・口臭を全体的に防ぐための口腔の手入れ」程の意味合いを想起するとも思えるような使用をされているものは、上記(エ)の2つのホームページのみであり、しかも、これらのインターネットのページは、いずれも非常に新しいものである。また、「ソニッケアーエリート7800プロフェッショナル(トータルケア)」という商品を紹介するインターネットのページ及び「◆歯のトータルケアセット」との記述がある平成13年(2001年)10月18日朝日新聞(東京夕刊)5頁の記事(乙38)においては、いずれも、上記の意味合いとは異なる意味を有するものとして「トータルケア」の文字が使用されている。したがって、「トータルケア」の文字が「歯周病を総合的に予防するための歯・歯茎の手入れ」や「歯周病・虫歯・口臭を全体的に防ぐための口腔の手入れ」程の意味合いで使用されているのが「実情」であると結論付ける審決は、十分な客観的根拠を持つものではない。
 そうすると、本願商標からは、その指定商品との関係において、「歯周病を総合的に予防するための歯・歯茎の手入れ」や「歯周病・虫歯・口臭を全体的に防ぐための口腔の手入れ」といった意味合いを暗示させることがあったとしても、一義的に当該商品の品質を直接的かつ具体的に表示するものとして認識されるものとまでは認められないというべきであるから、本願商標は十分に自他商品識別力を有するものである。
イ(ア) 被告は、「TOTAL」、「トータル」の語は、「@合計。総計。総額。A全体的。総合的。」を意味する語として、いずれも我が国において親しまれている英語又は外来語といえるところ、特に「トータル」の語の後に他の語を結合して用いるときは、例えば「トータルプラン」、「トータルファッション」、「トータルルック」、「トータルコミュニケーション」等の用例のように、「全体的。総合的。」の意味合いをもって使用されることが多い、また「CARE」、「ケア」の語も、「@介護。世話。A手入れ。」を意味する語として、特に本願商標の指定商品「歯磨き」や化粧品関連分野において親しまれて使用されている語であって、「デンタルケア」(歯の手入れ)、「オーラルケア」(歯や口内の手入れ)、「スキンケア」(肌の手入れ)、「ヘアケア」(髪の手入れ)等の用例のように、他の語に続けて用いる場合は「手入れ」の意味合いの語として広く使用されている、したがって、「TOTALCARE」及び「トータルケア」の語は、我が国においては、一般的に「総合的(全体的)な手入れ」という意味合いで使用され、かつ、認識されているというべきであると主張する。
 しかし、カタカナ語辞典(Infoseek「マルチ辞書〔提供:三省堂〕」のホームページ〔甲16の1、2〕)によると、「トータルファッション」、「トータルルック」の語の意味は、ともに「服ばかりでなく、帽子・靴・カバン・アクセサリーなども合わせて、全体に一貫性をもたせた装い。」とあり、単に、「全体的、総合的」といった意味合いで「トータル」の語が用いられていない。「トータルファッション」、「トータルルック」の語は、単に、「トータル」と「ファッション」又は「ルック」の語を結合させたものとみるべきでなく、「全体として一貫性をもたせた装い」という別の意味をもった一体不可分な語というべきである。また、「トータルコミュニケーション」の語の意味は、カタカナ語辞典(Infoseek「マルチ辞書〔提供:三省堂〕のホームページ」〔甲16の3〕)によれば、「伝達の効率を高めるために、あらゆるコミュニケーション手段を統合しようという考え方。聴覚障害者とのコミュニケーションや企業コミュニケーションについていわれる。」とあり、「トータル」の語が、単に、「全体的、総合的」という意味合いでは用いられてはいない。「トータルコミュニケーション」の語も、「トータル」と「コミュニケーション」を結合させた語ではなく、全体として別の意味をもった一体不可分の語というべきである。そうとすると、「全体的、総合的」という意味合いで「トータル」の語が用いられている例として被告が挙げたもののうち正当なものは、「トータルプラン」だけである。これだけで、「トータル」の語の後に他の語を結合して用いるときは、「全体的。総合的。」の意味合いをもって「トータル」の語が使用されていることが多い、と考えることはあまりにも無理がある。
 次に「ケア」の語についてであるが、確かに、「デンタルケア」(歯の手入れ)、「オーラルケア」(歯や口内の手入れ)、「スキンケア」(肌の手入れ)、「ヘアケア」(髪の手入れ)のような場合は、「ケア」の語は、「手入れ」の意味合いの語として使用されている。しかしながら、これらのたった5つの例が存在するだけで、「ケア」の語が他の語に続けて用いる場合は、「手入れ」の意味合いの語として広く使用されていると考えるのはあまりにも強引である。しかも、たとえば、「アフタケア」の語は、カタカナ語辞典(Infoseek「マルチ辞書」〔提供:三省堂〕のホームページ〔甲16の4〕)によると、「〔1〕病後保護、病後、または回復期看者の健康管理、あるいは社会・経済的救護、結核患者などの社会復帰をはやめるための、体力に応じた職業補導など。〔2〕商品の売り込み先への販売後のサービス、〔3〕後の面倒までみること」とあり、この場合は、「ケア」の語は、「手入れ」の意味合いでは使用されているとは到底いえない。
 以上のように、「トータル」及び、「ケア」の語が、各々「全体的、総合的」、「手入れ」の意味合いを有する語として広く使用されているとはいえないことからすれば、「TOTALCARE」及び「トータルケア」の語自体が、一般的に「総合的(全体的)な手入れ」という意味合いで使用されて、かつ、認識されている、ということもできない。しかも、カタカナ語辞典(Infoseek「マルチ辞書」〔提供:三省堂〕のホームページ〔甲16の5〕)に、「トータルケア」とは「全人的医療。病気の治療だけでなく、生活の質や精神面にまで医療活動を及ぼすもの。」とあることも併せ考慮すれば、「TOTALCARE」及び「トータルケア」の語が有する意味合いに関する被告の主張は失当である。
(イ) 被告は、後記3(2)ア、イに記載するように、「トータルケア」の語が「総合的(全体的)な手入れ」の意味を有する語として、本願商標の指定商品「歯磨き」、及び、これと同様に一般の消費者を需要者とし比較的「歯磨き」と関連性を有すると思われる商品及び役務の分野において使用されていることを示すために、多数のホームページを証拠として提出する(乙3〜31)。
 しかし、これらの各ホームページを上記ア(エ)に記載した「ウェイバック・マシン」というウェブサイトを使って、過去にそれぞれ該当するURLに被告が各乙号証として挙げたホームページが存在したかどうか検索した(甲17の1〜5、18〜28、29の1〜6、30〜3、 2、33の1〜2、34の1〜4、35の1〜4、36、37の1〜40、3839の1〜2、40の1〜5、41の1〜2、42の1〜6、43の1〜2、44の1〜2、45、46)ところ、乙3〜31のうち乙4の1、15、27、28を除いた各ホームページについては、過去に存在していたことを発見することができなかったものであるから、それらが実際に存在していたと認めることはできないし、仮にそれらのホームページが存在していたことがあったとしても、各乙号証からは、審決日よりも後に存在していたことのみが認められるものである。そうすると、乙3〜31のうち乙4の1、15、27、28を除いた各ホームページは、本願商標が法3条1項3号に該当することの証拠とすることはできない。
(ウ) 被告は、審決時(平成18年8月11日)において、当該商標が指定商品の原材料又は品質を表すものと取引者、需要者に広く認識されている場合はもとより、将来を含め、取引者、需要者にその商品の原材料又は品質を表すものと認識される可能性があると主張する。しかし、審決取消訴訟は審決が違法かどうかを判断するものであるから、「取引者、需要者にその商品の原材料又は品質を表すものと認識される可能性」が本願商標にあるかどうかの判断は、審決時を基準に判断すべきである。そうすると、本件各証拠のうち、本願商標が法3条1項3号に該当するかどうかを判断するために使用できるのは、上記(イ)のとおり乙4の1、15、27、28のわずか4証拠のみである。このような事情の下では、本願商標は、「総合的(全体的)な手入れ」の意味合いを有するものとして取引者・需要者に認識される可能性があるとはいえない。
2 請求原因に対する認否
 請求原因(1)、(2)の各事実は認めるが、同(3)は争う。
3 被告の反論
 審決の認定判断は正当であり、原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
(1) まず本願商標は、前記のとおり「TOTALCARE」の欧文字と「トータルケア」の片仮名文字を二段に書してなるものであるところ、これらは、それぞれ、「TOTAL」と「CARE」、「トータル」と「ケア」の語を連綴したものと容易に看取される。
 そして、その構成中の「TOTAL」、「トータル」の語は「@合計。総計。総額。A全体的。総合的。」(広辞苑第5版〔乙1〕)を意味する語として、いずれも、我が国において親しまれている英語又は外来語といえるところ、特に「トータル」の語の後に他の語を結合して用いるときは、例えば、「トータルプラン」、「トータルファッション」、「トータルルック」、「トータルコミュニケーション」等の用例のように「全体的。総合的。」の意味合いをもって使用されることが多い。
 また、「CARE」「ケア」の語にあっても、「@介護。世話。A手入れ。」(広辞苑第5版〔乙2〕)を意味する語として、我が国において親しまれて使用されている語であって、特に、本願商標の指定商品「歯磨き」や化粧品関連分野では「デンタルケア」(歯の手入れ)、「オーラルケア」(歯や口内の手入れ)、「スキンケア」(肌の手入れ)、「ヘアケア」(髪の手入れ)のように、他の語に続けて用いる場合は「手入れ」の意味合いの語として広く使用されているものである。
 そうすると、「TOTALCARE」及び「トータルケア」の語自体は、我が国においては、一般的に、「総合的(全体的)な手入れ」という意味合いで使用され、かつ、認識されているものというべきである。
 そして、「トータルケア」の語が、実際に上記意味合いの語として、本願商標の指定商品「歯磨き」及びこれと同様に一般の消費者を需要者とし、比較的、「歯磨き」と関連性を有すると思われる商品及び役務の分野において使用されていることは、次の(2)ア、イで示すとおりである。
(2) 「トータルケア」の語の使用の事実
ア 本願商標の指定商品「歯磨き」における使用
(ア) 「ケンコーコム株式会社」のホームページにおいて、「『薬用シュミテクトトータルケア110g』は、歯がしみるのを防ぎながら、歯周病、歯肉炎、口臭、ムシ歯の発生および進行を予防し、お口を清潔に保つ、トータルケア用の薬用ハミガキです。」との記載(http://www.kenko.com/product/groupwords/gw_102546.html〔乙3〕)。
(イ) 「ライオン株式会社」のホームページにおける製品情報に「ミクロクリーンライオン 殺菌力が持続し、歯周病・ムシ歯・口臭をトータルケアするハミガキ」との記載(http://www.lion.co.jp/ja/seihin/brand/038/01.htm〔乙4の1〕)及び「【楽天市場】コスメボックス」のホームページにおいて、商品のチューブ本体に付された「歯周病・むし歯・口臭をトータルケア」の文字及び「歯周病・むし歯・口臭をトータルケア!」の記載(http://item.rakuten.co.jp/cosmebox/j4903301720065/〔乙4の2〕)。
(ウ) 「ライオン株式会社」のホームページにおける製品情報に、「デンターシステマEXライオン 歯周病に加え、口臭、ムシ歯までトータルケアできる薬用歯周病予防ハミガキ」との記載(http://www.lion.co.jp/ja/seihin/brand/023/11.htm〔乙5の1〕)、「ライオン、歯周病ケア洗口液など発売」の見出しのもと、「ライオンは、歯周病に対応した洗口液「デンターシステマデンタルリンス(ノンアルコールタイプ)」、歯みがき「デンターシステマEX ライオン」を九月六日に発売する。歯周病ケアに口臭や虫歯予防機能を付加したトータルケア製品の投入で、他社製品との差別化を図る。・・・歯周病ケアの意識は、ここ数年で顕著に高まっており、四十−五十代では七六%が気にしているという(同社調べ。歯周病対応だけでなく、口臭や虫歯予防ができるトータルケア)製品を投入することで、高まるニーズに応える。」との記載(2006.08.03 化学工業日報4頁〔乙5の2〕)及び「【楽天市場】コスメボックス」のホームページにおいて、商品のチューブ本体及び本体に貼付された宣伝シールに付された「トータルケア」の文字と「歯周病を予防してさらに口臭・ムシ歯までトータルケア!!」の記載(http://item.rakuten.co.jp/cosmebox/j4903301043478/〔乙5の3〕)。
(エ) 「ライオン株式会社」のホームページにおける製品情報に、「デントヘルス薬用ハミガキSP 3つのアプローチで歯槽膿漏・歯肉炎を防ぎ、さらに気になる口臭・ムシ歯・歯のくすみまでトータルケアする薬用ハミガキ」との記載(http://www.lion.co.jp/ja/seihin/brand/024/04.htm〔乙6の1〕)、「薬用ハミガキSP 90g[医薬部外品]」のチューブ本体表面と外箱に「口臭・ムシ歯・歯のくすみまで防ぐトータルケア歯みがき」との記載(http://denthealth.lion.co.jp/sp/〔乙6の2〕)及び「ライオン、歯周病をケアする薬用歯磨き発売(インフォメーション)」の見出しのもと、「ライオンは、歯周病など歯ぐきのトラブルや口臭、虫歯、歯のくすみなどをトータルケアする薬用歯磨き『デントヘルス 薬用ハミガキSP』を発売した。同製品は、IPMP(イソプロピルメチルフェノール)、イプシロン−アミノカプロン酸、酢酸トコフェノールの三つの有効成分が歯槽膿漏、歯肉炎を予防する。また、フッ素やポリリン酸ナトリウムも配合したことで、虫歯や歯のくすみなどトータルケアできる歯磨きに仕上げた。」との記事(2006.11.10 化学工業日報 4頁〔乙6の3〕)。
(オ) 「サンスター株式会社」のホームページにおいて、「トータルケアで歯周病菌とたたかうG・U・M」との記載(http://www.sunstar.com/7.0_press/2006details/2006_0929_02.html〔乙7の1〕)及び「従来は『対処療法』が中心であった中で、『原因療法』こそが、歯周病の予防に効果的であるという考え方のもと、歯周病のトータルケアができるラインアップをご用意し、一人一人に合ったオーラルケアをサポートしています。」との記載(http://www.teamgum.net/brand/2_1.html〔乙7の2〕)。
(カ) 「株式会社ドクターシーラボ」のホームページにおいて、「歯と歯ぐきの健康を1本でトータルケア。5つの効果で美しい白い歯へAQUA−WHITE 薬用アクアホワイト・・・歯の5大トラブルにアプローチ。これ1本でトータルケア『歯周病を予防したい』『歯の黄ばみを防ぎたい』など、口内のトラブルは様々。そこで1本でトータルケアができる、オールインワンタイプの薬用ハミガキ剤が誕生しました。」との記載(http://www.ci-labo.com/shopping/product/00002902/〔乙8〕)。
(キ) 「YAHOO!ショッピング」の「Happy Family」のホームページにおいて、「歯槽膿漏・歯肉炎の予防♪プラークコントロール・歯石クリーニングまでトータルケア!!歯周病知らずの新型はみがき【薬用PPD】…薬用PPDは歯周病(歯槽膿漏)・歯周炎の予防という効果に加え、口臭防止及び健康なピンクの歯茎を目指す、トータルオーラルケア製品です。」との記載(http://store.yahoo.co.jp/happy/bbf5bcfec9.html〔乙9〕)。
(ク) 「株式会社ニーム」のホームページにおいて、商品のチューブ本体に付された「Total care」の文字と「商品名 NEEM Active Toothpaste 200g入り(ニーム歯磨き粉)・・・商品説明 ニームの特性である抗菌が、天然作用として働きます。ニームの豊な天然成分が含まれた『ニームアクティブトータルケア』は虫歯、歯茎の炎症、歯周病の予防として効果的です。独自の処方で配合されたミントが爽やかな息を長く保ちます。丈夫な歯と歯茎の為に、毎日ニームアクティブトータルケアで歯をみがきましょう。」との記載(http://www.e-na.co.jp/neem/product/index.asp?prd_id=1001〔乙10〕)。
(ケ) 「歯のエステ ティース・アイ」のホームページにおいて、「歯石屋くんシリーズの”歯石取りセット” 歯ンディ」の見出しのもと、「キャップがコップになる専用ケースの中には、5つの機能グッズがセットに!歯と歯の間に溜まった歯石や歯の表面に付着した茶渋の除去など、トータルケアにお役立て頂けます。」との記載(http://www.teeth-ai.com/goods_sonota.htm〔乙11〕)。
イ 一般消費者を需要者とする商品・役務分野における使用
(ア) 「ロッテ健康産業株式会社」のホームページにおいて、「クール&クリーン マウススプレーEX ハーブミント お口のトータルケアに、キシリトール配合」との記載(http://www.lottekenko.co.jp/products/goods/lineup1_01.html〔乙12〕)。
(イ) 「佐藤製薬株式会社」のホームページにおいて、「アセスシリーズは、『アセス』をはじめ、さわやかなミント味で女性におすすめの『アセスL』や、小児用医薬品歯磨き『アセスジュニア』、コンパクトで携帯に便利なマウスウォッシュ『アセス液』や歯ブラシなどのラインナップがありますが、より歯周病をトータルケアできるブランドとしてアピールできるように、従来の『内服用アセス』をリニューアルし、『アセス錠』として発売いたします。」との記載(http://www.sato-seiyaku.co.jp/top/company/news/2006/060317_1.html〔乙13〕)。
(ウ) 「ネットウエイ健康市場」のホームページにおいて、「ブラウン電動ハブラシD18565」の見出しのもと、「1本1本しっかり磨き、トータルケアを実現したい方に。『ブラウン オーラルB プロフェッショナルケア8000 D18565』は3Dパルスアクションが歯の1本1本まできめ細かくしっかり磨く。さらに3つのブラシでト−タルにオーラルケア!…3つのブラシでトータルにオーラルケアが可能です。フレキシソフトブラシ歯垢除去に!…プロフェッショナルホワイトブラシホワイトニングに!…舌フレッシュナー口臭予防に!」との記載(http://www.net-way.co.jp/braun_procare.html〔乙14〕)。
(エ) 「あひる天国(株式会社ステップワールド)」のホームページにおいて、「トータルケア3ピース電動歯ブラシ」に、「歯のトータルケアをするならこの電動歯ブラシで!3つのヘッドがあなたの歯を清潔に保ちます!」との記載(http://www.duck.ne.jp/pitem/43480849〔乙15〕)。
(オ) 「南青山インプラントセンター(佐藤歯科医院)」のホームページにおいて、「インプラント治療、審美セラミック修復、ホワイトニング、歯周病治療、かみ合わせ治療など…あなたのお口のトータルケアは、私たちにお任せください。」との記載(http://www.implant-center.ne.jp/〔乙16〕)。
(カ) 「紀尾井町プラザクリニック」のホームページにおいて、「ブライト・スマイル トータルケア プログラム 基本的な治療手順」の見出しのもと、「1. クリーニング…2. カラーチェック1…3. ブライトスマイル…4. カラーチェック2…5. フッ素塗布」との記載(http://www.kdp.jp/sinbi/0200.html〔乙17〕)。
(キ) 「医療法人社団友和会」のホームページにおいて、「歯って…こんなにツルツルだったの!?」の見出しのもと、「完璧を目指すなら…完璧を目指すのなら、トータルケアがお勧めです。…予防クリーニング、そしてポケット洗浄に加え、唾液チェックを実施し、専門家が丁寧にお口全般の健康相談&アドバイスをいたします。」との記載(http://www.youwakai.org/prev.html〔乙18〕)。
(ク) 「ゆうデンタルオフィス」のホームページにおいて、「抜歯をしない矯正治療、虫歯予防プログラム、P.M.T.C.(歯のクリーニング)、ホワイトニング等、美しい口元のためのトータルケアを導入しています。」との記載(http://www.youdent.com/〔乙19〕)。
(ケ) 「fd Clinic」のホームページにおいて、「OBCは藤見歯科医院を併設していますので、歯の美容はもちろんのことトータルケアをご提供いたします。…1.歯の悩みカウンセリング…2.エアフロー…3.P.M.T.C(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)…4.ホワイトニング(ポリッシャー含む)…5.フッ素コーティング…」との記載(http://www.fdclinic.com/obc.html〔乙20〕)。
(コ) 「(社)柏歯科医師会附属歯科介護支援センター」のパンフレットにおいて、「口腔内トータルケア(歯周病予防)が大切!」との記載(http://members3.jcom.home.ne.jp/gokkuncho/kda_kaigo/20060317-1.pdf〔乙21〕)。
(サ) 「ピジョン株式会社」の「ニュースリリース2004年9月9日」において、「『親子で乳歯ケア』シリーズは、次の12アイテムに増えたラインナップで、0歳からの初めての歯みがきと仕上げみがき、乳歯のトータルケアをサポートしていきます。」との記載(http://www.pigeon.co.jp/release/book04_09_09.htm〔乙22〕)。
(シ) 「ロート製薬株式会社」のホームページにおいて、「花粉対策トータルケアアルガード」の見出しのもと、「花粉対策のトータルケアにアルガード…アルガードにはつらい症状をやわらげるなど様々な製品がラインナップされています」との記載(http://www.alguard.jp/〔乙23の1〕)及び「ロート製薬の花粉対策トータルケア」との新聞広告(2007.03.05 朝日新聞朝刊〔乙23の2〕)。
(ス) 「ゼファーマ株式会社」のホームページにおいて、「マキロンS」の見出しのもと、「キズのトータルケアを考えた新処方 塩化ベンゼトニウム 殺菌消毒作用で、きずの化膿を防ぎます。アラントイン 組織修復作用で、きずの修復を助けます。マレイン酸クロルフェニラミン抗炎症作用で、炎症を抑え、不快なかゆみを鎮めます。」との記載(http://www.zepharma.com/products/pro140.html〔乙24〕)。
(セ) 「薬事日報ウェブサイト」(2006年12月22日)において、「患部に貼る口内炎治療薬、スイッチOTC『アフタッチA』佐藤製薬」の見出しのもと、「佐藤製薬では歯科口腔用剤のトップブランドとして『アセス』シリーズがあり、『アフタッチA』の新発売により、口内炎の治療から歯肉炎・歯槽膿漏まで対応する製品群が充実した。『口腔内のトータルケアはセルフメディケーションでは重要で、今後もラインナップ充実を図っていく』とする。」との記載(http://www.yakuji.co.jp/entry1896.html〔乙25〕)。
(ソ) 「ロート製薬、目のトータルケア2製品を発売」の見出しのもと、「ロート製薬はきょう十六日から、一般用目薬『キュアラ アイドロップス』とジェルタイプの目元専用化粧品『キュアラ アイエリアジェル』の二品目を、目のトータルケアを目的にした新ブランド商品“キュアラ・シリーズ”として発売する。」との記事(1999.03.16 化学工業日報5頁〔乙26〕)。
(タ) 「女性の健康ジャーナル」のホームページにおいて、「株式会社カネボウ化粧品では、加齢による『肌の形状変化』と『肌の色変化』など肌のトータルケアを目指す高機能薬用クリーム『DEW EX セルアシスト(医薬部外品)』…」との記載(http://www.kenkou-j.com/jkj/news041129-02.html〔乙27〕)。
(チ) 「まめちぽショッピングモール」のホームページにおいて、ドクターシーラボの化粧品に「クレンジングからポイント集中パックまで、トータルケアの『アクネレスシリーズ』」との記載(http://beansmaterial.com/shop/akuneless.html〔乙28〕)。
(ツ) 「<特集>アトピー対策<サンスター>敏感肌・乾燥肌用化粧品」の見出しのもと、「洗浄・保湿・保護のトータルケア『アトマイルド』…」との記事(1997.10.13 Pharmaweek 10頁〔乙29〕)。
(テ) 「オンラインショッピングはぴねすくらぶ」のホームページにおいて、「『洗う・補う・深める』のトータルケアオリエンタルビューティHCトータルセット」との記載(http://www.e-hapi.com/item/s_000000004199.php〔乙30〕)。
(ト) 「net横丁 壱番館SHOP」のホームページにおいて、「簡単スピーディーにネイルをトータルケア!トータルネイルケアセット…爪表面のお手入れ、爪の整形、マメのお手入れなど、これ一台でトータルにケアできます。」との記載(http://www.netyokocho.jp/ichibankanshop/goods/neirukea/〔乙31〕)。
(3)  本願商標が法3条1項3号に該当すること
 本願商標の指定商品「歯磨き」に係る歯に関する分野においては、歯の健康を守るために歯周病、虫歯、歯石、口臭等への対策が必要であり、個々のトラブル(症状)のみに対応する商品だけでなく、上記のような様々なトラブルに対し総合的に作用し、効果を発揮することを特徴とする商品が製造、販売されているところである。また、そのための方法も、「(1)『歯磨き』自体に、歯周病、虫歯、口臭等を防ぐ成分が複合的に配合され、総合的に歯(口腔)に関するトラブルを解消していこうとするもの」及び「(2)歯磨き、歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロス、デンタルリンス等を組み合わせて複合的に使用することにより、上記必要な対策に対する総合的な効果を高めていこうとするもの」があり、これらのことを強調して宣伝広告されている実情があることは、上記(2)アの各事例からも明らかである。そうすると、本願商標を構成する「TOTALCARE」及び「トータルケア」の語は、前記(1)のとおり、「総合的(トータル)な手入れ(ケア)」の意味合いを一般に認識させるものというべきであり、上記のような「歯磨き」に係る商品の特徴及び「トータルケア」の語が使用されている事実を併せ考慮すれば、これを本願商標の指定商品「歯磨き」に使用した場合には、これに接する需要者は、「総合的(トータル)な手入れ(ケア)」の意味合いに加えて、「歯周病、虫歯、口臭等に対する総合的(トータル)な手入れ(ケア)」「歯や歯茎の総合的(トータル)な手入れ(ケア)」のような意味合いを容易に理解するというべきであり、そのために使用する商品であると認識するものというべきである。
 したがって、本願商標は、単に商品の品質、用途を表示するにとどまり、自他商品の識別標識としては認識されないというべきであるから、本願商標が法3条1項3号に該当するとした審決の判断に誤りはない。
(4) 加えて、審決時において、当該商標が指定商品の原材料又は品質を表すものと取引者、需要者に広く認識されている場合はもとより、将来を含め、取引者、需要者にその商品の原材料又は品質を表すものと認識される可能性があり、これを特定人に独占使用させることが公益上適当でないと判断されるときには、その商標は、法3条1項3号に該当すると解するのが相当である。しかるに、本願商標の指定商品「歯磨き」のように特定の商品に限定されている場合は、当該商品に限ってみれば、製造するメーカー等も限られ、当該業界における「トータルケア」の語の実際の使用の事実がそれほど多くないとしても、本願商標の指定商品の需要者である一般消費者層は、前記(2)イに挙げるように、本願商標の指定商品「歯磨き」以外の商品についても、「トータルケア」の語が「複合的、総合的な用途、効果等に対応した手入れ(ケア)をすること」の意味合いを表す語として、広く使用されている事実に接していることからすれば、本願商標「TOTALCARE」「トータルケア」に接する本願商標の指定商品「歯磨き」の需要者は、当然に、該商品が「複合的、総合的な用途、効果等に対応した手入れ(ケア)をすること」に対応するものとして、認識するというべきである。
第4 当裁判所の判断
1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯)、(2)(審決の内容)の各事実は、いずれも当事者間に争いがない。
2 取消事由(法3条1項3号該当性判断の誤り)の有無
(1) 法3条1項3号が、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状(包装の形状を含む。)、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は商標登録を受けることができない旨規定する趣旨は、このような商標は、商品の産地、販売地その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解される(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決・裁判集民事126号507頁〔判例時報927号233頁〕参照。この趣旨に照らせば、当該商標が指定商品の品質、用途等を表すもの)として審決時に取引者、需要者に広く認識されている場合はもとより、将来を含め、取引者、需要者にその商品の品質、用途等を表すものと認識される可能性があって、これを特定人に独占使用させることが公益上適当でないと判断されるときは、その商標は、同号に該当すると解するのが相当である。
(2) 本願商標の構成は、前記第3の1(1)に記載したとおり、「TOTALCARE」及び「トータルケア」の文字を二段に併記して成り、その指定商品は第3類「歯磨き」であるところ、その構成中の「TOTAL」「トータル」の語は「@合計。総計。総額。A全体的。総合的」を意味する英語由来の外来語であり(広辞苑第5版。乙1 、同じく「CARE」「ケア」の語)も「@介護。世話。A手入れ」を意味する英語由来の外来語である(広辞苑第5版。乙2)であるから、本願商標である「TOTALCARE」及び「トータルケア」の語は、我が国においては、「総合的な手入れ」という意味合いで使用され、かつ認識されるものと認められる。そして、この本願商標が指定商品である「歯磨き」に使用されると、審決も述べるように、これに接する取引者、需要者は、「歯周病・虫歯・口臭等を全体的に防ぐための口腔の手入れ」のために使用する商品である程の意味合いを理解するにとどまると認めるのが相当であるから、結局、本願商標は、単に商品の品質、用途を表示するにすぎず、自他商品の識別標識としては認識されないというべきである。
(3) 一方、原告は、本願商標である「TOTALCARE」ないし「トータルケア」について、具体的な使用例に基づいて主張しているので、上記(1)(2)の説示について改めて検討することとする。
 証拠(甲3、乙3、4の1、2、5の1〜3、6の1〜3、7の1、2、8〜22、23の1、2、24〜31)及び弁論の全趣旨によれば、「TOTALCARE 」、「トータルケア」の使用例について、以下のとおり認められる。
ア 本願商標の指定商品「歯磨き」への使用例について
(ア) 平成13年10月18日付け朝日新聞(東京夕刊)5頁に、「プレゼント マリオン」の見出しの下、「◆歯のトータルケアセット サンスターが、歯周病に伴う様々な症状に着目したG・U・M(ガム)シリーズの3点セット(写真、1530円)を50人に。歯がしみる人向けの練り歯磨き「デンタルペーストセンシティブ」、超コンパクトヘッドで、硬さが普通の歯ブラシ「デンタルブラシ 超・先端極細毛」、テープ状の薄いフロスを手に巻き付けずに、約60回張りかえられる「イージースルーフロッサー」」との記事が掲載されている(乙38)。
(イ) 「歯周病菌とたたかうG・U・M」と記載のあるホームページに、「従来は「対処療法」が中心であった中で「原因療法」こそが、歯周、病の予防に効果的であるという考え方のもと、歯周病のトータルケアができるラインアップをご用意し、一人一人に合ったオーラルケアをサポートしています。」と記載されている(http://www.teamgum.net/ins/ins_02/ins_02_01/ins_02_01_010.html。乙39)。
(ウ) 「ミクロクリーンライオン」と記載のあるホームページに、「殺菌力が持続し、歯周病・ムシ歯・口臭をトータルケアするハミガキ」と記載されている(http://www.lion.co.jp/ja/seihin/brand/038/01.htm。乙4の1、40)。
(エ) 「薬用シュミテクトトータルケア110g」と記載のあるホームページに、商品説明文として、「「薬用シュミテクトトータルケア110g」は、歯がしみるのを防ぎながら、歯周病、歯肉炎、口臭、ムシ歯の発生および進行を予防し、お口を清潔に保つ、トータルケア用の薬用ハミガキです。」と記載されている(http://www.kenko.com/product/item/itm_8911340072.html。乙41)。
(オ) 「ソニッケアーエリート7800プロフェッショナル(トータルケア)」と記載のあるホームページに、「トータルケアとしてお勧めのセットです。歯磨き剤は、口腔内に成分が広がりやすく泡立ちの少ないチェックアップ(ソフトペースト)。そして、歯を丈夫にして予防効果の高いホームジェルとお2人でご使用したり、予備として替えブラシを、お付けしましたセットです。(より予防効果求める方にはお勧めです。)」と記載されている(http://www5a.biglobe.ne.jp/.M2BRAND/set1.html。甲8、乙42)。
(カ) 上記(ア)〜(オ)のほかにも、本願商標の指定商品「歯磨き」につき、「トータルケア」の語が、「歯磨き」自体に歯周病・虫歯・口臭等を防ぐ成分が複合的に配合され総合的に歯(口腔)に関するトラブルを解消していこうとするとの意味で、又は、歯磨き・歯ブラシ・歯間ブラシ・デンタルフロス・デンタルリンス等を組み合わせて複合的に使用することにより上記対策に対する総合的な効果を高めていこうとすることの意味で使用されたホームページが、多数存在する(乙3、4の1、2、5の1〜3、6の1〜3、7の1、2、8〜11)。
イ 「歯磨き」以外についても、歯ブラシ、マウススプレー、歯科治療、爪の手入れ等について、「トータルケア」の語が、「全体的(総合的)な手入れ」の意味で使用された各ホームページが多数存在する(乙12〜22、23の1、2、24〜31)。
ウ そうすると、本願商標は、その指定商品「歯磨き」の取引者や、需要者たる一般消費者が接する機会が多いと考えられるホームページにおいて上記ア(カ)の意味で使用され、また「歯磨き」と関係が近い商品、役務のホームページにおいても「全体的(総合的)な手入れ」の意味で使用されていると認められる。したがって、本願商標は、当該指定商品との関係上、その商品の特性そのものを記述するに止まるものであって、それ以上に、特定の者によって製造販売されたことを明らかにするという出所表示機能を果たしにくいものであり、また、このような商標については、その使用の機会を当該商品を製造販売する多くの事業者に開放しておくことが適当であって、その中の一部の事業者に当該商標の商標登録を許し当該商標の使用を独占させるのは公益上望ましくないというべきである。
(4) 原告の主張に対する補足的説明
ア 原告は、審決が挙げている新聞記事及びインターネット情報によっても、本願商標がその指定商品を取り扱う業界において、単に商品の品質、用途を表示するに過ぎないとの結論に至ることはできないと主張するが、以下の(ア)〜(オ)に説示するとおり、採用することができない。
(ア) 原告は、アース製薬の商品「薬用シュミテクトトータルケア」を紹介するインターネットのページ(http://www.kenko.com/product/item/itm_8911340072.html、乙41)については、原告の関連会社からライセンスを受けて販売されている商品を指し示すものとして「トータルケア」の語が使用されている例であって、市場一般において「トータルケア」という言葉が「歯周病を総合的に予防するための歯・歯茎の手入れ」や「歯周病・虫歯・口臭を全体的に防ぐための口腔の手入れ」程の意味合いで使用されていることの証拠とはなり得ないと主張する。
 しかし、たとえこの薬用ハミガキが原告の関連会社からライセンスを受けて販売されているものであったとしても、同薬用ハミガキを取り扱う会社が、ホームページという一般消費者が接する媒体において、「…歯がしみるのを防ぎながら、歯周病、歯肉炎、口臭、ムシ歯の発生および進行を予防し、お口を清潔に保つ、トータルケア用の薬用ハミガキです。」のように、商品名ではなく「歯周病・虫歯・口臭を全体的に防ぐための口腔の手入れ」程の意味合いで「トータルケア」の語を使用して宣伝していることに変わりはない。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(イ) 次に原告は、「トータルケアとしてお勧めのセットです。」という記述のある「ソニッケアーエリート7800プロフェッショナル(トータルケア)」という商品を紹介するインターネットのページ(http://www5a.biglobe.ne.jp/.M2BRAND/set1.html、甲8)においては、「トータルケア」という言葉は、単に電動歯ブラシという商品に、歯磨きペースト及び歯磨きジェルがセットになっていることを示すために使用されているにすぎないと主張する。
 しかし、同ホームページ(甲8)を見ると、まず「健康で美しい歯と歯ぐきのために」、「予防として、大切なのは歯磨きで食べかす(歯垢)・汚れしっかり落とし、ミュータンス菌による酸で歯を溶かされない丈夫な歯つくることです。」と記載され、「ソニッケアーエリート7800プロフェッショナル」については「手磨き後の、仕上げ磨きでも人気です。…」と記載されているのに対し、「ソニッケアーエリート7800プロフェッショナル(トータルケア)」については、「トータルケアとしてお勧めのセットです。歯磨き剤は、口腔内に成分が広がりやすく泡立ちの少ないチェックアップ(ソフトペースト)。そして、歯を丈夫にして予防効果の高いホームジェルとお2人でご使用したり、予備として替えブラシを、お付けしましたセットです。(より予防効果求める方にはお勧めです。)」と記載されている。これらを見れば、同ホームページにおいて「トータルケア」の語は、単に電動歯ブラシという商品に、歯磨きペースト及び歯磨きジェルがセットになっていることを示すためだけでなく、「歯周病・虫歯・口臭を全体的に防ぐための口腔の手入れ」程の意味合いで使用されているというべきである。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(ウ) 次に原告は、「◆歯のトータルケアセット」との記述がある、平成13年(2001年)10月18日付け朝日新聞(東京夕刊)5頁の記事については、記事執筆者が商品を実際に取り扱っている者ではなく単にその商品をプレゼントとして読者に提供している者にすぎないと認められる(乙38)から、かかる者が「トータルケア」という語を使用していたとしても、これが「本願指定商品を取り扱う分野」における使用として認めることはできないし、同記事の実際の文脈を見ても、この記事における「トータルケアセット」という単語は、「ケア用品」の「トータルなセット」という意味において使用されているにすぎないことが明らかであると主張する。
 しかし、上記記事には、「◆歯のトータルケアセット サンスターが、歯周病に伴う様々な症状に着目したG・U・M(ガム)シリーズの3点セット(写真、1530円)を50人に。…」とあるから、「トータルケアセット」と記載はあっても、「セット」はあくまで歯周病に伴う様々な症状に着目したものとして位置づけられていることが明らかである。したがって、「トータルケアセット」という単語が「ケア用品」の「トータルなセット」という意味において使用されているにすぎないとはいえず、その内容自体からして、「トータルケア」の語が「歯周病を総合的に予防するための歯・歯茎の手入れ」程の意味合いで使用されていることが明らかである。また、仮に記事執筆者が商品をプレゼントとして読者に提供している者であったとしても、上記記事は新聞一般紙という一般消費者向けの媒体に掲載されたものであって、その「トータルケア」の語義、用法を見ても、本願商標の指定商品「歯磨き」の需要者である一般消費者の認識と異なっているものとは認められないから、これが「本願指定商品を取り扱う分野」における使用として認められないことになるとはいえない。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(エ) 次に原告は、「歯周病のトータルケアができるラインアップをご用意し…」という記述のある、サンスター株式会社の商品「G・U・M」を紹介するインターネットのページ(http://www.teamgum.net/ins/ins_02/ins_02_01/ins_02_01_010.html。乙39)は、平成17年10月23日に初めて公開されたものであり(甲10、12)、「殺菌力が持続し、歯周病・ムシ歯・口臭をトータルケアするハミガキ」という記述のある、ライオン株式会社の商品「ミクロクリーンライオン」を紹介するインターネットのページ(http://www.lion.co.jp/ja/seihin/brand/038/01.htm。乙4の1、40)は、平成18年4月11日に初めて作成されたものである(甲10、13〜15)と主張する。
 しかし、上記原告の主張を前提としても、審決時(平成18年8月11日)に「トータルケア」の語が、「歯磨き」自体の宣伝広告を行うホームページにおいて、「歯磨き」自体に歯周病、虫歯、口臭等を防ぐ成分が複合的に配合され、総合的に歯(口腔)に関するトラブルを解消していこうとすることの意味で、又は、歯磨き、歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロス、デンタルリンス等を組み合わせて複合的に使用することにより、上記必要な対策に対する総合的な効果を高めていこうとすることの意味で、審決時までに既に約4か月又は約10か月の間使用されていることが明らかであるところ、ホームページの一般消費者に与える広告宣伝力の強さに鑑みれば、上記各ホームページは本願商標がその指定商品「歯磨き」との関係上その商品の特性そのものを記述するに止まることの十分な裏付けになり得るというべきである。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(オ) 次に原告は、本願商標からは、その指定商品との関係において、「歯周病を総合的に予防するための歯・歯茎の手入れ」や「歯周病・虫歯・口臭を全体的に防ぐための口腔の手入れ」といった意味合いを暗示させることがあったとしても、一義的に当該商品の品質を直接的かつ具体的に表示するものとして認識されるものとまでは認められないと主張する。しかし、上記(2)ア(ア)〜(カ)の認定に照らし、「トータルケア」の語は、各ホームページや新聞記事において、単に上記の意味合いを暗示させるような使用に止まらず、上記の意味合いを直接的かつ具体的に表示するような用法で使用されていることが明らかというべきであるから、原告の上記主張は採用することができない。
イ(ア) 次に原告は、カタカナ語辞典(Infoseek「マルチ辞書」〔提供:三省堂〕のホームページ〔甲16の1〜3〕)によれば、「トータルファッション」、「トータルルック」、「トータルコミュニケーション」においては、「トータル」の語が、単に「全体的、総合的」という意味合いでは用いられてはおらず、「全体的、総合的」という意味合いで「トータル」の語が用いられている例として正当なものは「トータルプラン」だけであるから、これだけで、「トータル」の語の後に他の語を結合して用いるときは「全体的。総合的。」の意味合いをもって「トータル」の語が使用されていることが多いと考えることには無理があると主張する。
 しかし、原告が指摘するカタカナ語辞典(甲16の1〜3)に単に「全体的、総合的」という意味合いではない用法が掲載されているとしても、「トータル」という語が「全体的、総合的」という意味合いで頻繁に用いられる日常語に近い単語である(広辞苑第五版〔乙1〕)ことに変わりはないから、一般消費者において、「トータルファッション」、「トータルルック」、「トータルコミュニケーション」という語における「トータル」の語を「全体的、総合的」という意味合いで使用したり認識したりしないとまではいえないし、かかる「トータル」の日常語としての語義を踏まえつつ、前記(2)ア(ア)〜(カ)、イに記載したような具体的な使用状況も併せて総合判断すれば「トータル」の語の後に他の語を、結合して用いるときは、「全体的。総合的。」の意味合いをもって「トータル」の語が使用されていることが多いと十分認めることができる。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(イ) 次に原告は、「ケア」の語について、「デンタルケア」(歯の手入れ)、「オーラルケア」(歯や口内の手入れ)、「スキンケア」(肌の手入れ)、「ヘアケア」(髪の手入れ)のような例が存在するだけで、「ケア」の語が他の語に続けて用いる場合は、「手入れ」の意味合いの語として広く使用されていると考えるのはあまりにも強引である、「アフタケア」の語は、前記カタカナ語辞典(甲16の4)によると、「〔1〕病後保護、病後、または回復期看者の健康管理、あるいは社会・経済的救護、結核患者などの社会復帰をはやめるための、体力に応じた職業補導など。〔2〕商品の売り込み先への販売後のサービス。〔3〕…後の面倒までみること。」とあり、この場合は、「ケア」の語は、「手入れ」の意味合いで使用されているとは到底いえないと主張する。
 しかし、原告が指摘するカタカナ語辞典(甲16の4)に、「アフタケア」の「ケア」について厳密には「手入れ」の意味合いで使用されていないと見られる記載がなされていたとしても、「ケア」という語は「手入れ」という意味合いで頻繁に用いられる日常語に近い単語であって(広辞苑第五版〔乙2〕)、上記記載もさらに検討すれば、それぞれの意味には「手入れ」の意味が基礎にあるものと理解することが可能である。そして、「デンタルケア」(歯の手入れ)、「オーラルケア」(歯や口内の手入れ)、「スキンケア(肌の手入れ)、「ヘアケア」(髪の手入れ)等における「ケア」の使用例や前記(2)ア(ア)〜(カ)、イに記載したような「トータルケア」の語の具体的な使用状況を併せ考慮すれば、「ケア」の語が他の語に続けて用いる場合は、「手入れ」の意味合いの語として広く使用されていると十分に認めることができる。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(ウ) 次に原告は「トータル」及び「ケア」の語が、各々、「全体的、総合的」、「手入れ」の意味合いを有する語として広く使用されているとはいえないことからすれば、「TOTALCARE」及び「トータルケア」の語自体が、一般的に「総合的な手入れ」という意味合いで使用され、かつ、認識されている、ということもできないと主張するが、上記(ア)、(イ)の説示に照らし、原告のかかる主張は失当である。
(エ) 次に原告は、前記カタカナ語辞典(甲16の5)によると、「トータルケア」の語は、「全人的医療。病気の治療だけでなく、生活の質や精神面にまで医療活動を及ぼすもの」の意味であると主張するが、「トータルケア」の語に上記の語義があることを前提としたとしても、上記(ア)、(イ)に説示したように「トータル」の語や「ケア」の語が「全体的(総合的)な」「手入れ」の意味合いで頻繁に用いられる日常語に近い単語であることに変わりはなく、上記(2)ウの説示を左右するものとはいえない。
ウ 次に原告は、被告が証拠として提出した多数のホームページ(乙3、4の1、2、5の1〜3、6の1〜3、7の1、2、8〜22、23の1、2、24〜31)を「ウェイバック・マシン」というウェブサイト(甲10)を使って、過去にそれぞれ該当するURLに被告が各乙号証として挙げたホームページが存在したかどうか検索した(甲17の1〜5、18〜28、29の1〜6、30〜32、33の1〜2、34の1〜4、35の1〜4、36、37の1〜40、38、39の1〜2、40の1〜5、41の1〜2、42の1〜6、43の1〜2、44の1〜2、45、46)ところ、そのほとんどが、各ホームページが過去に存在していたことを発見することができなかったものであるから、それらが実際に存在していたと認めることはできないし、仮にそれらのホームページが存在していたことがあったとしても、各乙号証からは、審決日よりも後に存在していたことのみが認められるから、乙3〜31のうち乙4の1、15、27、28を除いた各ホームページは、本願商標が法3条1項3号に該当することの証拠とすることはできないと主張する。
 しかし、乙3、4の1、2、5の1〜3、6の1〜3、7の1、2、8〜22、23の1、2、24〜31の各ホームページの外観や体裁等において現実に存在したホームページとして特に不自然なところがないことに照らせば、「ウェイバック・マシン」というある特定のウェブサイト(甲10)を使用した結果、過去にそれぞれ該当するURLに被告が各乙号証として挙げたホームページが存在したことが確認できなかったからと言って、それだけで当然にこれらが現実に存在したホームページであることまで否定できるとはいえない。
 また、乙4の1、15、27、28の各ホームページは、原告の主張によっても、審決日(平成18年8月11日)において存在していたものである。さらに、その他の各ホームページ(乙3、4の2、5の1〜3、6の1〜3、7の1、2、8〜14、16〜22、23の1、2、24〜26、29〜31)がたとえ上記審決日の後に閲覧できる状態になったものであるとしても、記述的商標であるか否かについては現実にその表示が審決時において特定商品に使用されている事実は必要とされないと考えるべきである上、審決日の時点のみならず審決日の後においてもこれだけ多数のホームページが閲覧できる状態になっており、審決日の後に、一般消費者の認識における「トータルケア」の語義や用法に変化があったことを認めるに足りる証拠もないのであるから、上記各ホームページも、審決時において、その将来に取引者、需要者にその商品の原材料又は品質を表すものと認識される可能性が認められることを裏付けるものというべきである。
 以上によれば、原告の上記主張は採用することができない。
エ さらに原告は、審決取消訴訟は審決が違法かどうかを判断するものであるから、「取引者、需要者にその商品の原材料又は品質を表すものと認識される可能性」が本願商標にあるかどうかの判断は、審決時を基準に判断すべきであり、本件各証拠のうち、本願商標が法3条1項3号に該当するかどうかを判断するために使用できるのは、上記(イ)のとおり乙4の1、15、27、28のみであると主張するが、かかる主張が採用できないことは、上記ウに説示したとおりである。
3 結論
 以上によれば、本願商標が法3条1項3号に該当するとした審決の判断に誤りはない。
 よって、原告の本訴請求は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部
 裁判長裁判官 中野哲弘
 裁判官 森義之
 裁判官 田中孝一
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