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【事件名】営業秘密の不正競争事件(水門開閉機製作)
【年月日】平成19年5月24日
 大阪地裁 平成17年(ワ)第2682号 損害賠償請求事件
 (口頭弁論終結日 平成19年3月22日)

判決
原告 阪神動力機械株式会社
訴訟代理人弁護士 冨島智雄
同 山崎智義
同 坪田園子
被告 株式会社アールエスイー
被告 P1
被告 P2
被告ら訴訟代理人弁護士 藤野季雄
同 藤野智規


主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実
第1 請求
1 被告らは、原告に対し、連帯して1億5415万2000円及び内金1億4775万9000円に対しては次の各日から、内金639万3000円に対しては平成18年12月12日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(1) 被告株式会社アールエスイー及び同P2については平成17年4月2日
(2) 被告P1については平成17年4月6日
第2 事案の概要
1 本件は、原告の元従業員であった被告P2(以下「被告P2」という。)及び同P1(以下「被告P1」という。)が、原告を退職して被告株式会社アールエスイー(以下「被告会社」という。)を設立し、原告と競業行為を行ったことについて、原告が被告らに対し、@被告P2及び被告P1は、原告から示された原告の営業秘密を不正の利益を得る目的で被告会社に開示し(不正競争防止法2条1項7号)、被告会社はその営業秘密を用いて営業活動を行った(同8号)として、不正競争防止法4条に基づき、A被告らは原告の技術上、営業上の情報を利用して、原告に損害を与えながら被告らにおいて不正に利益を得る目的で競業行為を行ったとして、民法709条に基づき、それぞれ連帯して1億5415万2000円の損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払を請求した事案である(不正競争防止法に基づく請求と民法に基づく請求とは選択的併合の関係にある。)。
2 前提事実(証拠の掲記がないものは争いがない)
(1) 当事者
ア 原告は、昭和25年11月13日に設立され、機械器具の製造販売、機械器具設置工事業等を目的とする会社であり、特に水門開閉装置用の減速機の製造販売を行っている。
 原告は本社を大阪に置き、営業部、技術部、製造部、品質保証部から成り、技術部については設計課とシステム課に分かれ、設計課は氷上工場に、システム課は大阪に置かれていた。製造部は大阪と氷上の双方に置かれており、営業部は大阪、東京、仙台、福岡及び名古屋に置かれていた(弁論の全趣旨。)
イ 被告会社は、被告P1らによって平成15年10月29日に設立され、水門開閉装置の減速機の設計、製作及び販売等を目的とする会社である。
 被告P1は、昭和39年に原告に入社し、昭和42年ころ以降は原告の東京営業所及び大阪本社営業部において原告の営業活動に従事していたが、平成15年9月に原告を退職し(退職時は営業部長代理)、現在は被告会社で代表取締役を務めている(乙13 。)
 被告P2は、昭和45年に原告に入社し、技術部設計課及び製造部に所属していたが、平成15年8月に原告を退職し(退職時は製造部次長)、現在は被告会社で取締役を務めている。
(2) 原告の逸注
 原告は、次の各工事における水門開閉機用減速機等を受注することができず、これらの受注は被告会社が獲得した。
ア 株式会社丸島アクアシステム向け
(ア) 水資源機構荒川ダム総合事業所向
 滝沢ダム非常用洪水吐設備工事
(イ) 近畿農政局大和紀伊平野農業利水事業所向
 紀伊平野国営幹線水路等(山田ダム洪水吐ゲート製作据付その1)改修工事
(ウ) 市田川水門急閉装置改造工事
イ 株式会社栗本鐵工所向け
(ア) 水資源機構滝沢ダム取水設備工事向け
(イ) 北海道開発局札幌開発建設部
 平成15〜17年度施工篠津中央二期農業水利事業
 石狩川頭首工門扉外第1期建設工事
(ウ) 第二十津川紀の川農業水利事業
 津風呂ダム取水設備
(エ) エジプトサンコーラ堰
(オ) 岩手県土木部向
 鷹生ダム選択取水工事
3 争点
(1) 不正競争防止法に基づく請求関係
ア 原告が営業秘密として主張する技術上・営業上の情報が不正競争防止法2条6項の「営業秘密」の要件を具備するか。
イ 被告P2及び同P1は、不正の利益を得る等の目的でそれらの「営業秘密」を「開示」したか(不正競争防止法2条1項7号該当性。)
ウ 被告会社は、それらの「営業秘密」を、不正開示行為が介在したことを知って取得し又は使用したか(不正競争防止法2条1項8号該当性。)
(2) 民法に基づく請求関係
エ 被告らの行為が不法行為を構成するか。
(3) 両請求共通
オ 原告の損害額
第3 争点に関する当事者の主張
1 不正競争防止法に基づく請求関係
ア 争点ア(営業秘密性)について
【原告の主張】
(ア) 原告が営業秘密として主張する技術上・営業上の情報は、別紙営業秘密目録記載のとおりである。
(イ) 有用性について
 原告における技術上の情報については、例えば減速機の内部構造を示す組立図、振動、騒音を発生させない歯車の形状、寸法及び組合せ方法等を示す部品図、外気温度変化に対する機械効率のデータ、原告独自のボルトの規格(HAS基準)等、原告が長年の研究、努力の末に他社の追随を許さないほどのノウハウを手に入れたのであり、これらの情報には非常に高い経済的有用性がある。また、これらの技術情報を有しているからこそ、顧客の細かな要望に対応できるたけの図面を作成、製品化でき、他社とのコスト競争が可能となり営業活動ができるのである。
 またメーカーにとってコストの基本となる原価に関する情報、製品の定価と異なる実際の契約ベースの価格を示す価格表、原告の営業部が足で稼いできた情報に基づく受注予定等の営業上の情報については、原告にとって競業他社との競争力を基礎づける重要な情報である。
(ウ) 非公知性について
 別紙営業秘密目録記載の各情報は、第三者に対して公にしてこなかったものであり、非公知性を有する。
(エ) 秘密管理性について
a 別紙営業秘密目録記載の各情報を社員が無闇に持ち出したり又は第三者に開示することが許されないことは、社員としての職務専念義務からも当然導かれるものであり、また退職後も第三者に開示してはならない義務を付随的義務として負っている。
b また、被告P2及び同P1が原告に在籍していた当時の就業規則には、7条2号において「業務上の機密又は公表していない文書事項を、他に漏らしてはならない。」、同10号には、「私用のため会社の物品を使用し、又は製作してはならない。」と定められており、また「会社所有の物品を勝手に会社外に持出し、又は持ち出そうとしたとき」は懲戒解雇事由に当たる旨定められていた。
c 技術上の情報について
 組立図や部品図については、技術部設計課のコンピュータに保存されており、他部署からコンピュータで直接アクセスした上で図面等を閲覧することはできなかった。また部品図については、被告P2が日頃から、社外に出さないよう設計課の従業員に対して口頭で指導しており、全社的にも部外秘の扱いとなっていたが、顧客からの要望により、部長の承諾を得た上で、やむを得ず提出することがあった。また部品図を外注先に渡すときには、営業秘密に属するという趣旨で渡していた。組立図等の図面を配布する場合でも、原告内部の審査、承認システムを経た上でなされていた。
 上記図面や各種データ(機械効率のデータを除く)は、すべてがデータとしてコンピュータに保存されているわけではないが、紙媒体としてはすべて保管されており、両者とも設計課に在籍した者でないと閲覧をすることは困難であった。なお、古い設計図書については書庫に施錠して保管しており、設計課の棚には最近のもののみが保管されていた。
 機械効率のデータについては、従業員において守秘義務を課されているうえ、被告らが指摘するダム・堰施設技術協会の基準には掲載されていない膨大な量のデータが原告に蓄積されていて、設計課に在籍していた者でなければその保管場所は基本的には知らないものであった。このデータについては、顧客に対しても提出せず、計算書のみを提出している。
 原告独自のボルトの規格(HAS基準)は、被告らが主張するようなJIS規格と同じものではなく、原告の技術上の情報の根幹をなすものであり、顧客の要望があったとしても提出しない機密の扱いであり、従業員において社外に持ち出すことは厳禁であった。またこれについては、原告の技術部設計課の従業員が一冊ずつファイルを持ち、各自の責任において保管するよう原告において指導を徹底している。
d 営業上の情報について
 得意先元帳については、各担当者において責任をもって保管していた。受注実績表及び受注予測表については、各営業所ごとに作成し、毎月の営業会議ごとにデータの更新を行っていた。これら文書は、いずれも原告の社内文書であり、当然に外部への持出しは禁止されており、第三者への漏洩は禁止されていた。特に受注予定表については、受注予想メーカー及び受注予想金額等について第三者に漏洩を防ぐため、その取扱いに注意するよう指導していた。
 受注予定については、特に受注可能性のランクは原告の営業部の従業員が足で稼いできた、競業他社に打ち勝つための貴重な情報であり、外部に情報を漏らすことのないよう指導を徹底していた。
 各部品の価格表については、官庁用の定価表と実際の契約ベースでの価格表(ゲートメーカー用)の2種類があるが、後者については、原告の競争力確保のため、営業担当者において積み上げてきた貴重な情報が背景にあることから、顧客には提出すべきものではなく、原告の従業員に対してその旨徹底している。また、価格表については、原告の営業部の従業員が一冊ずつファイルを持っているが、各自の責任において保管するよう原告において指導を徹底している。
 製造原価実績表については、営業所から製番別の原価実績表は閲覧することができたが、それより詳細なものについては閲覧不可能であった。また、これらが第三者に漏洩すれば原告の手の内をすべて明らかにされてしまうのであるから、社外への持出しは厳禁であった。
 確かに原告においては、営業部と製造部との間では基本的に情報が共有されていたが、相互の部署の従業員において、他部署の情報を閲覧するためにはパスワードが必要であった。したがって、両部以外の従業員については、パスワードを教えてもらわない限り、営業部や製造部の情報を見ることはできなかった。
【被告らの主張】
(ア) 別紙営業秘密目録記載の各文書に記載された情報が不正競争防止法
 2条4項の「営業秘密」の要件を充足することについては争う。
(イ) 存否について
a 技術上の情報について
 軸受の強度計算(寿命計算)に関するデータについては、甲第24号証のようなものの存在を知らないが、水門開閉機用減速機以外のものであれば組立図等と共に保存されて存在していた。
b 営業上の情報について
 得意先元帳については、甲第16号証のようなものの存在を知らないが、@原告の営業部の各担当者が、担当している顧客分について作成していた「覚書」、A平成14年ころ、原告において、顧客の与信管理が問題となった際、原告の営業部の各担当者が顧客名・改善前の取引条件・改善後の取引条件を列挙したものをまとめ、コピーして各営業担当者に配布したものは存在していた。
 受注実績については、甲第17号証のようなものの存在を知らないが、原告の営業部の事務担当者が機種別に作成し、エンドユーザー、形式、仕様、 数量が記載された「納入実績」は存在していた(甲31)。
 受注予定表・受注予測一覧表は、甲第18号証のようなものの存在を知らないが、甲第19号証のようなものは存在していた。
 価格表については、甲第20号証に類似する「製品ごとの価格表」は存在していた。
 製造原価実績表の存在は認める。
(ウ) 有用性について
a 技術上の情報について
 組立図については、減速機の設計等には社団法人ダム・堰施設技術協会の発行図書に掲載されている技術的データで十分であるから、有用性がない。
 部品図は、顧客に配布される組立図のデータから容易に作成することができるから、有用性がない。
 歯車の強度計算に関するデータは、公刊されている「ゲート用開閉装置(機械式)設計要領(案)」記載の計算式に公知の係数を乗じて作成できるものであるから、有用性がない。
 軸受の強度計算に関するデータは、メーカーのパンフレットを見れば行うことができるから、有用性がない。
 ヒーターの能力計算のデータ(甲25)は、その計算式を国際化(SI単位化)したものが「ゲート用開閉装置(機械式)設計要領(案)」に掲載されており、有用性がない。
 機械効率のデータは、既に「ゲート用開閉装置(機械式)設計要領(案)」に掲載されており、有用性がない。
b 営業上の情報について
 原告主張の得意先元帳については、@顧客情報は水門鉄管協会のホームページにおいて名称、住所等は公開されていること、A取引条件は顧客が変われば変わるもので、新規契約時に決定されるものであること、B担当者も人事異動によって変わり、また問い合わせをすればすぐに分かることであること、C売値も、被告らは減速機メーカーに見積りをさせて経費を見込んで売値を決めているため、被告らにとっては何の意味もないこと、D支払期日も被告らにとっては何の意味もないことから、有用性がない。
 受注実績表は、ここ2、3年の鋼材等の価格高騰により過去の受注金額は何の参考にもならないのが現状である上、被告らは減速機メーカーに見積りをさせて経費を見込んで売値を決めているため、被告らにとっては何の有用性もない。
 受注予測表は、そもそも予測にすぎないから、有用性がない。
 製品ごとの価格は、上記のような被告らの売値の決め方からすると何らの有用性もない。
 製造原価実績表も、上記のような被告らの売値の決め方からすると何らの有用性もない。
(エ) 非公知性について
a 技術上の情報について
 機械効率のデータ、歯車の強度計算に関するデータ、ヒーターの能力計算に関するデータは、「ダム堰施設技術協会」に提供され、平成12年8月には「ゲート用開閉装置(機械式)設計要領(案)」に掲載されて公知となっている。また、軸受の寿命計算に関するデータも、軸受等のメーカーがパンフレットに記載して配布しているほか、専門書にも記載されており、公知となっている。
 原告が主張するHAS規格ボルト穴径、ザクリ径の基準は、原告独自の基準ではなく、1985年改正前のJIS規格B1001−1960の基準に依拠して作成したものであり、公知である。
b 営業上の情報について
 「受注予測」等は、官公庁の発注の見通し、入札公告及び入札結果はインターネットで公表されているため、公知となっている。
(オ) 秘密管理性について
a 被告P2及び同P1が原告主張の守秘義務を負うことについては争う。
b 原告主張の就業規則が存在していたことは認める。しかし、就業規則に定める「業務上の機密」が具体的に何を指すのか等、何ら具体的な説明が従業員に対してはなされていない。
c 原告主張の営業秘密には、「秘密」という表示が全くなく、また原告は従業員との間で秘密保持に関する契約の締結や宣誓書の提出をさせていない。従業員が退社するときも同様である。
 また原告は、顧客に対して原告主張の営業秘密を渡すときにも、顧客との間で何ら秘密保持契約を締結していない。
d 技術上の情報について
 組立図は、手書図面とCAD図面の2種類があった。手書図面は、「部品図」と図面目録と共に、スキャナーで読み取り、原告の技術部設計課のコンピューターに保存されていたが、これに対しては、誰でも閲覧をすることができ、また各営業所の各営業担当者のパソコンからも自由に閲覧ができ、その管理については何らの指導もなかった。CAD図面は「部品図」、「歯車の強度計算に関するデータ」、「軸受の強度計算に関するデータ(水門開閉機用減速機以外についてのもの)」、「ヒーターの能力計算に関するデータ」と共に、製作番号ごとに、セットで、データ及び紙媒体の双方で保存されていた。上記のうち、データは、原告の技術部設計課のコンピュータに保管されていたが、設計課の職員であれば自由にプリントアウトでき、原則としてその処分等には何らの指導もなく、設計課にいけば誰でも同データの閲覧をすることができ、各営業所の営業担当職員のパソコンからもアクセスすることができた。また、上記のうちの紙媒体は、製作番号ごとにファイルされて技術部設計課のオープンの棚に並べられており、誰でも見ることができ、誰でもコピーすることができた。さらに、これら組立図は、顧客に対し、紙媒体又はデータで見積時や納入時に何らの制約なく配布しており、その配布については何らの指導もなかった。
 部品図についても、その保存態様及び保管状態は組立図と同じであった。被告P2は、顧客から提供の要求があった場合には上司に相談するよう部下に指導していたことはあるが、実際は顧客の要望があれば配布していた。また原告は、部品図を外注先に配布しており、その際に秘密保持契約を締結することはなかった。
 歯車の強度計算に関するデータは、組立図と共に保管されており、その保管状況は組立図と同じで、顧客から求めがあれば何らの制約なく配布していた。
 被告が認識している軸受の強度計算に関するデータ、及びヒーターの能力計算に関するデータの保管状況は、組立図と同じである。
 機械効率のデータは、紙媒体として、原告の技術部設計課の鍵のかかっていないロッカーに保管されており、誰でも見ることができ、誰でもコピーすることができた。
e 営業上の情報について
 被告らが認識している得意先元帳は、各営業担当者が各人の机の上に置いてあり、誰でも見られる状態であり、また原告から管理上の注意を受けていたことはない。
 被告らが認識している納入実績は、営業部のオープンの棚に何冊ずつかがあり、誰でも見ることができ、誰でもコピーすることができ、原告からその管理について何らの指導もなかった。
 受注予定(甲19)も、原告からその管理について何らの指導もなく、各営業担当者はコピーしたものを机の上に置いており、誰でも見られる状態であった。
 被告らが認識する製品ごとの価格表は、コピーして営業担当者に配布し、各営業担当者はそれを机の上に置いており、誰でも見られる状態であり、原告からその管理について何らの指導もなかった。
 製造原価実績表は、原告の製造部のサーバーに保存されていたが、製造部にいけば誰でもそこにあるパソコンから閲覧することができ、パスワードは不要であった。また、各営業所の営業担当者は、各人のパソコンから原告製造部のサーバーにアクセスして、パスワードなしに閲覧することができた。また原告からは管理について何らの指導もなかった。
 原告のボルトの規格は、紙媒体として、原告の技術部設計課の鍵のかかっていないロッカーに保管されていて、誰でも閲覧でき、コピーすることができた。また、その管理については何らの指導もなく、各従業員はそれを机の上等に置いており、誰でも見られる状態であった。
イ 争点イ及びウ(営業秘密の不正開示、使用)について
【原告の主張】
 被告P2及び同P1は、永年原告に勤務し、原告が築き上げた技術面、営業面のノウハウに間近に接してきた。同被告らは、別紙営業秘密目録記載の各文書に記載された営業秘密を無断で持ち出して使用し、あるいは被告会社に対してこれを開示した上で、水門開閉機用減速機、歯車等の図面を作成し、被告会社については、これら原告の営業秘密を用いて営業活動を行ったものであり、しかも被告らにおいては原告に確実に損害を与えながら、被告らにおいて不正に利益を得る目的を有していたことは明らかであるから、被告P2及び同P1の行為は不正競争防止法2条1項7号に、被告会社の行為は同8号に該当する。
 被告らのこれら行為を窺わせる事情は次のとおりである。
(ア) 組立図の酷似
 被告会社は、平成16年1月26日、株式会社丸島アクアシステムに対し、「ABDFDH−1040形差動歯車減速機」の組立図(甲5の1)を提出したが、これは、被告P2が原告在職時に作成した原告製品の「SDFQRG−1040B形」の減速機の組立図(甲5の2)と酷似している。すなわち、両者は、@減速機の内部構造における軸受け部分の軸間距離がほとんど同一であること、Aカサ歯車について原告製品と全く同一規格のものがあること、Bボルトの穴径について原告独自の基準(HAS基準)に基づいていること、C歯車防錆用のウイングポンプの形状、配管レイアウトが類似していること、D両図面の製品の外径、寸法が極めて類似していることからして、被告の組立図は原告の組立図の技術情報を利用したものである。
(イ) 部品図の同一
 原告は、平成16年8月18日、マガリバ歯車の図面(甲7の1)について、取引先のユニコ商会から、「株式会社オージックが、株式会社大阪減速機製作所から入手した図面だが、原告のものではないのか。」と指摘を受けた。同部品図は、株式会社大阪減速機製作所が被告会社の外注先であることからして、被告会社が作成したものであることが明らかであるが、同図面は、原告のDF−150形の歯車の部品図(甲7の2)と同一である。
(ウ) その他の類似図面
 株式会社栗本鐵工所に対し、4種類の組立図(甲8の1、甲9の1ないし4、甲10の1、甲14の1)が提出されているが、これらはそれぞれ、被告P2が原告在職中に作成したQBG−555E形の図面(甲8の2)、QBG−989E形の図面(甲9の2)、QRG576形の図面(甲10の2)、QBG−1105E形の図面(甲14の2)と、製品の形状、外径や原告独自のボルト規格の使用の点で類似しており、前記3種類の組立図はいずれも被告会社の作成に係るものであると窺われる。
 また、被告会社は、平成15年9月26日、WK−37のクラッチボックス(切換装置)の図面を作成しているが(甲13の1 、これは原告)製品のKG−37形の図面(甲13の2)と形状、製品外観の寸法、軸間距離の点でいずれも同一であり、原告の図面をそのまま模倣したものである。
(エ) 部品図の流出
 原告の元従業員であるP3(平成16年4月28日退職。現在、被告会社に在籍。以下「P3」という。)が使用していた原告のパソコンを調査したところ、岩手県土木部の鷹生ダム向けの部品図が、同パソコンから外部に送信されていたことが判明した。同パソコンには、電子メールで送受信されたファイルが保存されるフォルダ内に、平成15年9月1日の更新日付の部品図ファイルのバックアップファイルが保存されており、更新後のファイルは保存されていなかったが、@部品図は本来外部に提出されるものではなく、その作成を外注する必要もないこと、また、見積書提出(上記ダム関係では平成15年9月11日)前に部品図を外注先に作成させることは皆無であること、Aいくつかの図面には正式な製作番号や図番が示されていないこと、B原告に残っている前記ダム向けの最新図面の日時は9月1日以前のものが多数あり、上記更新に係る更新ファイルは原告社内に存在しないこと、C製品「KG−37・110形ギアケース」のバックアップファイル(甲38の1)には、溶接記号が記載されているが、原告では同形のギアケースは鋳物に流し込んで製造するため溶接は不要であり、同ファイルは原告の社外で製造させるためのものであると窺われること、D前記ダム向け工事の減速機の希望納期は平成15年11月13日であり、通常、減速機の製造を行うためには、納期から逆算して2.5か月から3か月前に発注を行わなければならないところであるのに、同年10月29日に設立された被告会社が受注しており、これは周到な準備をした上でなければ不可能であること、からして、P3は、被告らと共謀の上で、原告の部品図を持ち出して被告会社の営業に利用しようとし、その後にそれを実現したものである。
(オ) パンフレットにおける機械効率のデータの掲載
 被告会社においては、その切換装置のパンフレット(甲48及び49)において機械効率のデータを多数掲載しているが、被告会社は冷凍装置付きの負荷試験装置を保有しておらず、またダム堰施設技術協会が開示している機械効率のデータは原告が保有するものの一部にすぎず、さらに原告では機械効率のデータを機密として取り扱っていることからすると、被告P2ないし被告P1において無断で原告の機械効率のデータを持ち出して、これを使用・開示していることは確実である。
 また被告会社の平行軸、直交軸減速機のパンフレットで(甲50)は、「起動効率は周囲温度、負荷率によって変化しますので、御相談下さい。」と記載しているが、これは、減速機の起動効率は、いくつかの要素によって数値が左右されることから、切換装置のようにグラフで表示することが難しいためである。逆にいえば、被告会社においては、顧客が希望する細かな諸条件に対応できるだけのデータを持ち合わせているからこそ相談に応じることができるのであるが、被告P2らの退職から被告会社の設立まで間がないことからすると、被告らにおいてそのような細かな試験データを採取する時間的な余裕があるはずがないから、被告P2及び被告P1において原告の機械効率のデータを持ち出して、これを使用・開示していることは確実である。
【被告らの主張】
 原告の主張は否認する。
(ア) 組立図の酷似について
 甲第5号証の1の図面は被告P2が作成したが、同被告は注文仕様書に従い、ダム・堰施設技術基準に基づいて独自に作成したものであり、原告の技術情報を使用したものではない。
 軸受け部分の軸間距離については、甲第5号証の2の図面も被告P2が作成したものであるから、内容の似た注文仕様書に基づいて、同一人が同一設計思想でダム・堰施設技術基準に基づいて作成すれば、各軸の軸受け等がほとんど同一になるのは当然である。
 カサ歯車の規格については、原告においてそのシリーズ化をしたのは被告P2であり、同被告はその記憶に基づいて使用したものである。
 ボルトの穴径については、前記のとおり原告の独自の基準ではない。
 歯車防錆用のウイングポンプの形状、配管レイアウト、製品の外径や寸法が類似しているのも、同一人が同一設計思想で作成すれば類似するのは当然である。
(イ) 部品図の同一について
 被告らは甲第7号証の1の部品図を作成していない。被告会社は、同部品図に基づく部品を使用した機械を設計・製作しておらず、また、その部品を使用した組立図を株式会社大阪減速機製作所に渡したこともない。
(ウ) その他の類似図面について
 被告会社が株式会社栗本鐵工所に提出した4種類の組立図は、それぞれ乙第7号証及び乙第8号証の1ないし4の各図面であるが、これらは被告P2が注文仕様書に従い、ダム・堰施設技術基準に基づいて独自に作成したものであり、原告の技術情報を使用したものではない。
 上記のとおり、内容の似た注文仕様書に基づいて、同一人が同一設計思想でダム・堰施設技術基準に基づいて作成すれば、各軸の軸受け等がほとんど同一になるのは当然である。また、種々の点で原告製品の図面と異なっている。
(エ) 部品図の流出について
 P3が使用していたパソコンに原告主張のファイルが保存されていたことについては知らず、被告らが共謀して原告の部品図を流出させたことは否認する。
 当時、原告では、組立図や部品図の作成を藤丸設計事務所に外注していたが、外注先が新たに作成した組立図や部品図の送信を受けて受信したときは、従前のファイルは更新されてバックアップファイルが作成される。このような図面作成の外注は、正式の受注前に営業担当者が行うこともあった。そして、外注先が作成した図面を受信する時点では、正式に承認される前の図面であるから、正式な図番は付されていない。また、甲第38号証の1に係るギアケースは、原告の「KG−37・110形ギアケース(甲38の2)とは寸法が異なっており、原告において」も鋳物がなく、溶接が必要なものであった。
 また、被告会社が鷹生ダム向け工事の受注内示を受けたのは平成15年11月5日であり、実際の納期は平成16年1月30日であった。
 さらに、そもそも同ダム向けに被告会社が作成した図面は乙第16号証に係るものであり、これは多くの点で甲第38号証の1と異なっている。被告会社は、仕様書に基づき、独自に図面を作成したものである。
(オ) パンフレットにおける機械効率のデータの掲載について
 減速機等の機械効率は、歯車の噛み合い摩擦による損失、軸受けの転がりによる摩擦損失、オイルシールの滑り摩擦抵抗による損失、潤滑油の歯車による攪拌損失等によって異なるものであるところ、被告会社の製品は、原告の製品とそれらの点のほか、種々の点で異なっており、そのため、被告会社のパンフレット(甲48、49)に記載された切換装置(MK型、MYK型)の機械効率も、原告のパンフレット(甲1)に記載された対応する切換装置(KG型、SMDFC型)の機械効率と異なっている。このように原告の機械効率のデータを被告会社の製品に利用することはできないのであり、被告P2らが原告のデータを持ち出したことはない。
 また、被告会社の機械効率のデータは、被告P2がおおよその見当をつけて作成したものであるが、同被告は原告の製品についても同様にして作成していた。
2 民法に基づく請求関係−争点エ(不法行為の成否)について
【原告の主張】
 仮に原告が主張する営業秘密が不正競争防止法2条4項に定める要件を充足しないとしても、被告らにおいては、原告の重要な技術上、営業上の情報を持ち出して減速機等の図面を作成し、もともと原告の顧客であった企業に営業活動を行った上で、これら企業から受注したのである。このような態様で競業活動を行うことは、もはや自由競争の範囲を逸脱するものであり、被告らには不法行為が成立する。
【被告らの主張】
 原告の主張は争う。
3 両請求共通−争点オ(損害額)について
【原告の主張】
 原告は、被告らの不正競争行為又は不法行為により、前記前提事実(2)記載の各工事向けの受注機会を逸し、それにより合計1億5415万2000円の損害を被った。
【被告らの主張】
 争う。
第4 当裁判所の判断
1 争点ア(営業秘密性)について
(1) 技術上の情報について
ア 組立図について
(ア) 証拠(後掲書証、証人P4、同P5、被告P2本人)によれば、次の事実が認められる。
 組立図とは、水門開閉機用減速機の全体を示す図面であるが、これには手書図面(甲8の2、甲9の2)とCAD図面(甲5の2、甲6、甲10の2、甲13の2、甲14の2)があった。
 このうち手書図面は、スキャナーによって電子情報化して、原告の技術部設計課のサーバーに設定された図面管理システムに保存されており、営業担当の職員も各人のパソコンから自由にアクセスして閲覧することができた。
 また、CAD図面は、紙媒体と電子データの双方の態様で保存されていた。このうち紙媒体は、製品の製番ごとに他の関係書類(部品図等)と共に袋に入れて無施錠の棚に保管され、設計課の従業員だけでなく、他の部署の者でも、閲覧しコピーすることができた。また電子データは、部品図等と共にサーバーに保存されており、技術部設計課の職員は堂サーバーに自由にアクセスしてこれを閲覧することができ、また営業担当の職員のうちの特定の者もアクセスすることができた。
 これらの組立図については、営業秘密である旨の表示はなく、また原告内部で管理上の注意がされたこともなかった。
 組立図は、見積り時に顧客に対して交付することもあり、また、納入時には納入仕様書と共に当然に顧客に交付していた。このときには、顧客との間で秘密保持契約を締結したり、組立図が営業秘密である旨の注意を促すことはなかった。
(イ) 以上の事実によれば、組立図については、原告において、それにアクセスすることを許された従業員に対し、それが社外に漏洩してはならない秘密である旨を認識させる措置を講じていたとは認められないから、不正競争防止法上の営業秘密の要件としての秘密管理性を欠くというべきである。
(ウ) なおこの点について原告は、就業規則において、「業務上の機密又は公表していない文書事項を他に漏らしてはならない。」(7条2号)、「私用のため会社の物品を使用し、又は製作してはならない。」(同10号)と定められており、また、「会社所有の物品を勝手に会社外に持出し、又は持ち出そうとしたとき」は懲戒解雇事由に当たる旨定められていたこと(この事実には争いがない)を指摘する。
 しかし、原告の社内には、技術上・営業上の情報のほか、総務・人事・会計上の情報など、大小さまざまの無数の情報が存在するのであって、そのような中で、上記7条2号のように、単に「業務上の機密」というだけではどれがそれに当たるのか明確でないし、また単に「公表していない文書事項」と定めるのみでは、原告が真に秘密として秘匿しようとする情報以外にも膨大なものが含まれることから、ある技術上・営業上の情報にアクセスを許された者にとって、それが漏らしてはならない秘密に属するのか否かを認識させる措置を講じていたとはいえない。またこのことは、上記10号や懲戒解雇事由に定めるような「会社の物品」の私的使用や持ち出しを一般的に禁止することについても同様である。
 したがって、原告の就業規則を根拠として、秘密管理性を認めることはできない。
(エ) また原告は、原告の従業員には在職中も退職後も原告主張の営業秘密を外部に漏洩してはならない義務を負う点を主張する。
 しかし、不正競争防止法上の営業秘密の要件としての秘密管理性が認められるためには、ある技術上・営業上の情報にアクセスを許された者にとって、それが漏らしてはならない秘密に属するのか否かを認識させる措置を講じていたことが必要なのであって、従業員が労働契約上、使用者の営業秘密を保持すべき義務を一般的に負っているとしても、それによってただちに特定の技術上・営業上の情報について使用者が秘密管理しているとはいえない。
イ 部品図について
(ア) 証拠(後掲書証、証人P4、原告代表者本人、同P5、被告P2本人)によれば、次の事実が認められる。
 部品図(例として甲7の2)は、水門開閉機用減速機を構成する各部品の図面であり、製品全体の図面である組立図では判明しない各部品の正確な寸法が記載されている点に意味がある。
 部品図にも手書図面とCAD図面があり、それぞれ前記組立図と同様に保存されており、閲覧状況も同様であり、営業秘密である旨の表示がされていない点も同様である。
 部品図は、当然には顧客に交付しない扱いとされ、製品のクレーム対応等のために顧客から求められたときには、設計課の責任者である被告P2の了解を得ることとされていた。原告に4年余り勤務したP5の場合、被告P2の了解を得て顧客に部品図を交付したことは数回程度であり、被告P2に了解を求めて断られたことはなかった。そして、原告から顧客に部品図を渡す際には、特に秘密保持について契約を締結したり、部品図が営業秘密である旨の注意を促すことはなかった。
 他方、原告が部品を外注するために外注先に部品図を交付するときには、それが営業秘密であるとの前提で交付していた。
 なお、組立図のCAD図面の電子データには各部品の寸法のデータも記録されているから、CAD図面の電子データに記載されている情報は部品図と同じものであるといえる。そして被告らは、原告では組立図のCAD図面の電子データも顧客に交付していたと主張するが、この事実を認めるに足りる証拠はない。
(イ) 以上の事実によれば、原告においては、部品図は、顧客の求めがあった場合でも当然には交付せず、責任者である被告P2の了解を得るようにしていたのであるから、部品図を秘密とする旨を社内的に認識させる措置をとっていたというべきであり、秘密管理性を認めることができる。
 これに対し被告らは、原告では部品図の管理について何ら注意がなされたなかったと主張するが、上記のような措置をもって管理をしていたというに妨げはない。
 また前記認定のとおり原告は、顧客に部品図を交付する際には特段の秘密保持措置をとっているわけではない。しかし、交付を受けた顧客(水門メーカー等)が、自社の施工納入した製品に使用された部品の図面をむやみに他に開示するとは考え難いところであるから、原告において前記のような社内的な秘密管理措置がとられている以上、顧客との関係で特段の秘密保持措置が講じられていなかったからといって、部品図を秘密とする旨を従業員が認識できなかったとはいえない。この点は、何らの了解なく当然に顧客に交付することが認められていた組立図では、部品図を秘密とする旨を従業員が認識できなかったと考えられることと異なるところである。
(ウ) そして、弁論の全趣旨によれば、部品図には各部品の寸法が記載されていることから、それに基づいて特定の型番の水門開閉機用減速機の歯車等を製造することができるほか、歯車の寸法比を知り得るという点で有用性が認められ、また部品図が公知のものでないことは明らかである。
(エ) したがって、部品図は不正競争防止法上の「営業秘密」であるといえる。
ウ 機械効率のデータについて
(ア) 証拠(後掲書証、証人P4、被告P2本人)によれば次の事実が認められる。
 機械効率のデータ(例として甲26の各号)は、各減速機及び切換装置について、使用潤滑油、温度、負荷率等の条件が変化した場合に機械効率がどのように変化するかを示したデータであり、これにより、減速機等を作動させるに当たって、より適切かつ効率的な電力を得るよう水門を設計することができる。その一部は、公刊されている「ゲート用開閉装置(機械式)設計要領(案)」(甲27)に掲載されているほか、原告のカタログ(甲1)にも掲載されている。
 このデータは、原告の技術部設計課の無施錠の棚にファイルされて保管されており、設計課の従業員であれば誰でも閲覧することができ、営業秘密であるとの表示もなかった。
 被告P2は、平成13年10月ころまで技術部設計課長であったが、このデータについては顧客から求められても交付せず、その際には、当該顧客向けの特定の製品についての、温度や負荷の条件に応じた機械効率の計算式(例として乙17。ここでは上記データから特定の負荷率と温度と使用潤滑油の条件下での機械の起動効率を読み取った値が使用されている。)を交付していた。また、P4は、原告の取引先である酒井鉄工所で水門の設計業務をしていた平成9年ころ、水門の設計のために、酒井鉄工所に対する原告側の窓口であった被告P2に対して機械効率のデータを求めたところ、機密を理由に拒絶されたことがある。
(イ) 以上の事実によれば、機械効率のデータは、データが保管されている技術部設計課の長である被告P2において顧客から求められても提出しない扱いとしており、部下にも同様の扱いをさせていたと推認されるから、秘密管理性を有するといえる。
 そして、このデータは、少なくとも同一の水門や切換装置に関する限り、顧客が水門を設計するに当たり必要なデータを提供する基礎となるという有用性を有するものであり、また前記「ゲート用開閉装置(機械式)設計要領(案」や原告のカタログに掲載されていないデータを含)むものであるから、それらに掲載されていないデータについては非公知性もある。
 したがって、それら非公知の機械効率のデータは不正競争防止法上の「営業秘密」に当たる。
エ 歯車の強度計算に関するデータについて
(ア) 証人P4の証言によれば、このデータは、公刊されている「ゲート用開閉装置(機械式)設計要領(案)」に基づいて計算することができることが認められるから、秘密にしておく必要性が低いものであったといえる。
 また被告P2本人の供述によれば、このデータは紙媒体の組立図と共に保管されており、閲覧状況も同様であったこと、これに営業秘密である旨の表示はなく、また原告内部で管理上の注意がされたこともなかったことが認められる。
(イ) これによれば、このデータについては、原告において、それにアクセスすることを許された従業員に対して秘密である旨を認識させる措置を講じていたとは認められないから、秘密管理性を欠くというべきである。
 以上より、本データは、不正競争防止法上の「営業秘密」に当たらない。
オ ヒーターの能力計算に関するデータについて
(ア) 証人P4の証言によれば、このデータは、公刊されている「ゲート用開閉装置(機械式)設計要領(案)」に基づいて計算することができることが認められるから、秘密にしておく必要性が低いものであったといえる。
 また被告P2本人の供述によれば、このデータの保管・管理状況は歯車の強度計算に関するデータと同様であったことが認められる。
(イ) これによれば、このデータについては、原告において、それにアクセスすることを許された従業員に対して秘密である旨を認識させる措置を講じていたとは認められないから、秘密管理性を欠くというべきである。
 以上より、本データは、不正競争防止法上の「営業秘密」に当たらない。
カ 軸受けの寿命計算に関するデータについて
 証拠(乙13、証人P4の証言)によれば、本データは、軸受メーカーのカタログから計算できることが認められる。したがって、本データは、非公知性の要件を充足せず、「営業秘密」に当たらない。
キ 原告独自のボルトの規格について
(ア) 証拠(後掲書証、証人P4、被告P2本人)によれば、次の事実が認められる。
 これは、ボルトに対するすき間穴の径についての規格であり、原告で使用している規格(甲11)は、同文書中の「ボルト穴径」の欄に「JISB1001」との記載があるが、同文書に記載された数値には同JIS規格(1985年改正前のものとして甲30)と異なる点もある。
 この原告の内部規格は「HAS」と呼ばれており、技術部設計課の、従業員は、ファイルに綴じたものを1冊ずつ所持していた。
 この管理について、証人P4は、機密であり顧客にも提出できないと証言する。しかし、被告P2本人は、同規格はずっと上記JIS規格と同じだと思っており、外部に教えても構わないものだと供述しており、この供述に照らし証人P4の前記証言は直ちに採用できない。
(イ) 以上の事実によれば、原告のボルト規格については、原告においてそれにアクセスすることを許された従業員に対して秘密である旨を認識させる措置を講じていたとは認めるに足りないから、秘密管理性を欠くというべきである。
(2) 営業上の情報について
ア 得意先元帳について
(ア) 証拠(後掲書証、原告代表者本人、証人P5、被告P1本人兼被告会社代表者本人[以下単に「被告P1本人」という。])によれば、次の事実が認められる。
 得意先元帳(甲16)は、売掛金の管理のために作成されるもので、経理課が作成し、保管している。P5や被告P1ら営業担当者は、このような得意先元帳を見たことはなかったが、他方、営業部では、各営業担当者が、自己が受け持つ顧客について、各種の情報をまとめた資料を作成し、各担当者の机の上に置くなどしており、これについて特に管理上の注意はなかった。
(イ) 以上の事実によれば、そもそも得意先元帳の管理状況は明らかでないうえ、それと同様の情報が記載されている各営業担当者作成の資料については、特段の管理上の注意はなかったわけである。したがって、得意先元帳(及びそこに記載された情報)について、それにアクセスすることを許された従業員に対して秘密である旨を認識させる措置を講じていたとは認めるに足りないから、秘密管理性を欠くというべきである。
イ 受注実績表について
 これは、原告において、いつ、どの工事に、どの顧客との間で、どの製品を幾らの売値で受注したかを示す一覧表である(甲17)。
 これについての管理状況は明らかでないが、どの工事にどの製品を納入したかという納入実績(甲31)については、原告代表者自身が秘密でないと供述していること、また各製品の実際の価格表は次に述べるとおり秘密管理性を有しないと認められることからすると、この受注実績表についてもそれにアクセスすることを許された従業員に対して秘密である旨を認識させる措置を講じていなかったと推認される。
 したがって、受注実績表については、秘密管理性を欠くというべきである。
ウ 受注予定表・受注予測一覧表について
 証拠(後掲書証、証人P5、被告P1本人)によれば、これは、どの工事案件について、何月ころにどの型番の製品の受注ができるかを予測したものであり、その確実度に応じてランク付けもなされている(甲18、19)こと、原告の営業部では、各営業所の営業担当者が毎月大阪の本社に集まって受注予定をまとめ、このコピーを各営業担当者に配布していたことが認められる。
 この管理状況については、原告代表者の陳述書(甲28)には、第三者に漏洩することを防ぐため、特にその取扱いに注意するよう指導していたという記載がある。しかし、証人P5及び被告P1の陳述書(乙12、13)には、各営業担当者はコピーしたものを机の上等に置いており、管理について原告からは何らの指導もなかったと記載されており、この記載に照らすと、原告代表者の陳述書の上記記載は直ちに採用できない。
 そうすると、受注予定表・受注予測一覧表については、それにアクセスすることを許された従業員に対して秘密である旨を認識させる措置を講じていたとは認めるに足りないから、秘密管理性を欠くというべきである。
エ 価格表について
 証拠(後掲書証、原告代表者、証人P5、被告P1)によれば、これは、原告の標準品について価格を記載したものである(甲20)が、官公庁向けの定価を記載した表と、ゲートメーカー向けの実際の販売価格を記載した表の2種類があり、定価表についてはゲートメーカー等に配布していた。
 他方、実際の販売価格表については、原告代表者は配布しておらず、各営業担当者に責任を持って管理するよう指導していたと供述する。しかし、被告P1本人は、これもゲートメーカーに配布しており、各営業担当者に対して特に管理上の注意はなかったと供述しており、この供述に照らすと原告代表者の前記供述は直ちに採用できない。
 そうすると、価格表については、それにアクセスすることを許された従業員に対して秘密である旨を認識させる措置を講じていたとは認めるに足りないから、秘密管理性を欠くというべきである。
オ 製造原価実績表について
(ア) 証拠(後掲書証、原告代表者、証人P5、被告P1)によれば、次の事実が認められる。
 これは、原告が過去に納品した製品の原価を、製番ごとに部品品目別に記載し(製番別原価実績表。甲21)、さらにその部品品目について、原価費目ごとに原価を記載したものである(品目No別原価リスト。甲22 。)
 製番別原価実績表は、製造部のコンピュータの中に電子データとして保管されているほか、紙媒体のものが製造部の無施錠の棚に置かれており、営業担当者であるP5や被告P1も見積りのためなどに閲覧したことがある。なお営業担当者が製造原価実績表を閲覧することについて、原告代表者の陳述書(甲28)にはパスワードが必要であったとの記載があるが、他方、被告P1の陳述書(乙13)には、各営業所の営業担当者は各人のパソコンから製造部のサーバーにアクセスして閲覧することができたと記載されており、この記載に照らして、原告代表者の陳述書の上記記載は直ちに採用できない。
 また、品目No別原価リストについては、営業担当者であったP5も被告P1も見たことがないと供述しており、その管理状況は明らかでない。
(イ) 以上の事実からすると、価格表については、それにアクセスすることを許された従業員に対して秘密である旨を認識させる措置を講じていたとは認めるに足りないから、秘密管理性を欠くというべきである。
 ところで、原告代表者は、その陳述書(甲28)において、これら製造原価実績表が外部に持ち出され、第三者に知れることになれば、原告の手の内をすべて明らかにされてしまうものであり、社外への持ち出しは厳禁であると述べる(他の文書についても同趣旨の記載がある。)そして、確かに一般に企業における製造原価は、当該企業の競争力の程度及び内容を知ることができる点で、営業上の重要な情報であり、その性質上、競業企業に知られてはならない情報であるとはいえる。
 しかし、不正競争防止法上、保護されるべき「営業秘密」たるための要件として秘密管理性が求められるのは、企業内の技術上又は営業上の情報について、単に当該企業がそれを秘密にしようという意図を有しているだけでは足りず、当該企業内において、当該企業のそのような意図を客観的に認識することができるだけの措置がとられていることを求める趣旨である。したがって、ある技術上・営業上の情報が、その一般的な性質としては営業秘密として扱われるにふさわしい重要性を有するものであり、世間一般の企業では外部に開示されていないようなものであるとしても、当該企業においてそれが「営業秘密」としての保護を受けるためには、それを営業秘密として管理するための何らかの措置をとっていることが必要となるのである。そして、本件では、前記のとおり、原告においてそのような措置がとられているとは認めるに足りず、それが営業上の重要な情報であることから直ちに何らかの管理措置がとられているはずであるということもできないから、秘密管理性を欠くというべきである。
(3) まとめ
 以上より、原告主張の営業秘密のうち、その営業秘密性が認められるのは、部品図と機械効率のデータに限られる。
 次に、これらについて、被告らによる開示・使用行為の有無を検討する。
2 争点イ及びウ(営業秘密の不正開示、使用)について
(1) 部品図について
ア(ア) 証拠(乙4、6、被告P2本人)及び弁論の全趣旨によれば、水門開閉機用減速機について部品図等の設計がされる過程は次のとおりであることが認められる。
@ 顧客から注文仕様書を入手する。
A 注文仕様書により、ゲートの使用目的、用途を把握し、仕様書の出力、回転数、減速比等からおおよその形式(歯車の配列)や各軸径の中心距離を決め、その合計によりサイズを決定する。各軸径の中心距離から、各歯車の歯幅を決める。
B 歯車強度計算により速比を決める。各速比及び各中心距離から、各歯車のモジュール・歯数を決める。
C 各歯車から、各軸のトルク計算をし、各軸径を決める。各軸径から各軸受を決める。
D 歯車、軸径、軸受を図面に反映させて、組立図を完成させる。
E 組立図のデータをオートCAD図面に表示する。
F 上記表示より、平面図以外を消去する。
G 寸法線の消去、差動歯車部分のコピー、軸部分の消去、不要な線の消去や不足する線の追加を行う。
H キーミゾ等の追加、寸法、φ及び寸法公差、仕上げ記号、歯車仕様等を記入し、部品図を完成させる。寸法はCADによって入力できる。
(イ) 上記事実によれば、特定の水門開閉機用減速機を設計するには、まず顧客からの注文仕様があり、それに基づいて組立図が作成され、組立図に基づいて部品図が作成されることが認められる。そうだとすると、顧客からの注文仕様は各減速機ごとに異なるから、必然的に組立図も異なり、これに伴い部品図も異なるものとなる。したがって、特定の水門開閉機用減速機について作成された部品図は、当該減速機については重要な意味を持ち、それ故に原告では当然には顧客に交付しない扱いとされているけれども、別の水門開閉機用減速機については、直ちにそれがなければ設計が困難であるとか、それをそのまま使用して設計がごく容易にできるとか、というものではないものと推認される。
(ウ) 以上の事実に照らせば、被告会社において単に水門開閉機用減速機を製造販売しているということから、その製造販売する減速機の同一性にかかわりなく、直ちに被告らが原告の部品図を開示し、使用したと認めることはできないところ、本件においては、上記減速機の同一性を認めるに足りる証拠は提出されていない。
イ 原告は、被告会社の外注先である株式会社大阪減速機製作所を出元とするマガリバ歯車の部品図(甲7の1)を入手したところ、原告のDF−150形の歯車の部品図(甲7の2)と同一であったと主張する。
 しかしこれに対し被告らは、上記部品図(甲7の1)の部品図を作成したことや、同部品図に基づく部品図を使用した機械を設計・製作したことを否認しており、この主張を覆すに足りる証拠はない。
 したがって、上記部品図(甲7の1)を被告らが作成したことは認めるに足りないから、同部品図の存在をもって、被告らが原告の部品図を開示し、使用したとは認められない。
ウ 次に原告は、原告の元従業員で、退職後に被告に入社したP3が原告で使用していたコンピュータから、岩手県土木部の鷹生ダム向けの原告の部品図が流出して、被告らに開示、使用されたと主張し、その痕跡の例としてギアケースに関する部品図(甲38の1)を挙げる。
 しかし、被告会社において同工事のために作成されたギヤケースの部品図(乙16)と、上記P3が使用していたパソコンに残されていたバックアップ中のギヤケースの部品図(甲38の1)との間には、別紙「ギアケースの部品図の相違点」のとおり、多数の相違点があることが認められる。仮に被告らが原告の部品図を持ち出し、又は原告の部品図を利用して作成した部品図(甲38の1)を元に上記工事における部品図を作成したのだとすれば、そうまでして持ち出した部品図である以上、それをそのまま使用するか又は若干のみ修正した部品図を作成するにとどまるはずである。しかし、実際には、上記両部品図の間には、上記別表のような多数の相違点が存するのであって、このことからすると、P3が使用していたパソコンに残されていた痕跡をもってしては、被告らにおいて、前記工事に係る原告の部品図を開示、使用したとは認めるに足りない。
エ また原告は、被告会社の組立図と原告の組立図が、軸間距離、歯車の規格、ボルトの穴径、製品の外観や寸法等の点で類似していることも主張するが、前記のとおり部品図の有用性は、各部品の寸法が正確に記載されている点にあるから、被告会社の組立図が上記原告主張の諸点において原告の組立図と類似しているからといって、直ちに被告会社が原告の部品図を模倣したと推認することはできない。
オ 以上によれば、原告が主張する諸事由に基づいて被告らが原告の部品図を開示、使用したと推認することはできず、また他にそのことを認めるに足りる証拠もない。
 したがって、被告らにおいて原告の部品図を開示、使用したとは認められない。
(2) 機械効率のデータについて
ア まず原告は、被告会社の切換装置のパンフレット(甲48、49)において機械効率のデータが掲載されていることから、被告P2らが原告の機械効率のデータを持ち出したことは確実であると主張する。
 しかし、原告は、持ち出されて使用されたとする自己保有のデータについてすら何ら明らかにするところがないから、被告会社のパンフレットに掲載されている上記データが、原告が保有する非公知のデータを使用して作成されたものか否かについては、全く明らかでないというべきである。
 かえって、証拠(甲1、48及び49)及び弁論の全趣旨によれば、@甲第48号証に記載されている被告会社の電動・手動切換装置(MK型)に対応する原告の切換装置はKG型であり、その機械効率のデータは原告のパンフレットに記載されていること(甲1の5頁、A甲第49号証に)記載されている被告会社の主モータ・予備モータ切換装置(MYK型)に対応する原告の切換装置はSMDFG型であり、その機械効率のデータは原告のパンフレットに記載されていること(甲1の46頁、Bそれら両)製品は寸法も構造も大きく異なっており、機械効率のデータの数値も異なっていることが認められる。したがって、原告の有するKG型及びSMDFG型の機械効率のデータは、そのままではこれに対応する被告会社の製品に流用することができないことは明らかであるから、被告会社のパンフレットに掲載されている前記データが原告のデータに基づいて作成されたと認めることはできない。
 なお、仮に被告会社のデータが原告の上記パンフレット(甲1)記載のデータに基づいて作成されたものだとしても、原告の上記データはパンフレットに記載されて公知となっているものであるから、それによって被告らが原告の「営業秘密」を不正に使用したともいえない。
 したがって、被告会社の切換装置のパンフレットの記載から、被告P2らが原告らの「営業秘密」に属する非公知の機械効率のデータを不正に使用したと推認することはできない。
イ また原告は、被告会社の平行軸、直交軸減速機のパンフレット(甲50)において、「起動効率は周囲温度、負荷率によって変化しますので、御相談下さい。」と記載されていることから、被告P2らは、原告の減速機のデータを持ち出して利用することにより、顧客が希望する細かな諸条件に対応できていると主張する。
 しかし、ここでも原告は、持ち出されて利用されているはずだとする自己保有の機械効率のデータがどのようなものであるかについて何ら明らかにするところがなく(甲第26号証で示されているのは、BW型の減速機のデータであり、同型はウォーム減速機であって(甲1の89頁、平行)軸、直交軸減速機ではない、また被告会社が顧客に対して機械効率計。)算を提供するに当たって、どのような起動効率の値を使用したのかについても全く明らかでない。したがって、被告らが使用する数値が原告のデータと同一又は類似なのか否かも不明であるから、被告P2らが原告のデータを持ち出してこれを利用していることについては、それを推認するに足りる証拠はないというべきである。
ウ 以上によれば、原告が主張する諸事由に基づいて被告らが原告の機械効率のデータを開示、使用したと推認することはできず、また他にそのことを認めるに足りる証拠もない。
 したがって、被告らにおいて原告の機械効率のデータを開示、使用したとは認められない。
(3) 以上によれば、原告の不正競争防止法に基づく請求は理由がない。
3 争点エ(不法行為の成否)について
 市場における競争行為は、営業活動の自由の下、本来自由に行われるべきものであるが、ある事業者が保有する技術上・営業上の情報を他の事業者が競争上利用する場合には、その情報の内容・性質や利用行為の態様如何によっては、当該情報の保有者との関係で、公正な自由競争の範囲を逸脱すると評価すべき場合がある。不正競争防止法は、このような観点から、どのような技術上・営業上の情報が「営業秘密」として保護されるべきものか、またそれをどのように利用する行為が「不正競争行為」として規制されるべきものかを定めたものであって、同法のこのような趣旨に照らせば、たとえ他の事業者の保有する技術上・営業上の情報を利用して競争行為を行う場合であっても、当該情報が不正競争防止法による保護を受けず、又はその利用行為が同法が規制する対象とならない場合には、当該行為がことさら情報の保有者に損害を与えることのみを目的としてなされた一種の営業妨害行為としての性質のみを有し、市場における競争行為の一環として見ることができないといった特段の事情の存しない限り、民法709条の一般不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。
 しかるところ、本件においては被告らにおいて上記のような特段の事情が存することを認めるに足りる証拠はない。
 したがって、民法709条の一般不法行為を理由とする原告の請求も理由がない。
4 まとめ
 よって、原告の本件請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第26民事部
 裁判長裁判官 山田知司
 裁判官 高松宏之
 裁判官 村上誠子


(別紙) 営業秘密目録(括弧内はサンプルの書証番号である)。
1 技術上の情報
(1) 減速機の組立図(甲5の2、甲6、甲8の2、甲9の2、甲10の2、甲13の2、甲14の2)
(2) 歯車や軸の部品図(甲7の2)
(3) 機械効率のデータ(甲26の各号)
(4) 歯車の強度計算に関するデータ(甲23)
(5) ヒーターの能力計算に関するデータ(甲25)
(6) 軸受けの寿命計算に関するデータ(甲24)
(7) 原告独自のボルトの規格(甲11)
2 営業上の情報
(1) 得意先元帳(甲16)
(2) 受注実績表(甲17)
(3) 受注予定表・受注予測一覧表(甲18、甲19)
(4) 価格表(甲20)
(5) 製造原価実績表(甲21、甲22)
line
 
日本ユニ著作権センター
http://jucc.sakura.ne.jp/