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【事件名】「ヒートウェイヴ」送信可能化権事件 【年月日】平成19年4月27日 東京地裁 平成18年(ワ)第8752号 送信可能化権確認本訴請求事件、平成18年(ワ)第16229号 反訴請求事件 (口頭弁論終結日 平成19年1月23日) 判決 本訴原告(反訴被告) X1(以下「原告X1」という。) 本訴原告(反訴被告) X2(以下「原告X2」という。) 本訴原告(反訴被告) X3(以下「原告X3」という。) 原告3名訴訟代理人弁護士 吉ヶ江治道 同復代理人弁護士 吉田正彦 本訴被告(反訴原告) 株式会社エピックレコードジャパン(以下「被告」という。) 同訴訟代理人弁護士 熊倉禎男 同 辻居幸一 同 竹内麻子 同 外村玲子 同 水沼淳 主文 1 原告らの本訴請求を棄却する。 2 原告らと被告との間において、被告が、別紙音源目録記載の各音源について、実演家の送信可能化権を有することを確認する。 3 訴訟費用は、本訴反訴を通じ、原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 本訴 原告らが、別紙音源目録記載の各音源(以下「本件音源」という。)について、実演家の送信可能化権を準共有していることを確認する。 2 反訴 主文第2項と同旨 第2 事案の概要 本件は、本件音源について実演をした原告らが、本件音源に関する実演家の送信可能化権は原始的に原告らに帰属し、同権利はレコード会社である被告側との専属実演家契約により被告側に承継されていない旨主張して、原告らが実演家の送信可能化権を有することの確認を求めたのに対して、被告が、反訴として、同専属実演家契約により、送信可能化権を含む実演家の著作隣接権は被告側に譲渡された旨主張して、被告が実演家の送信可能化権を有することの確認を求めた事案である。 1 前提事実 (1) 当事者 ア 原告ら3名は、ロックミュージシャンであり、昭和54年から平成13年3月1日までの間、原告X1がリーダーを務める「A」という名称のロックバンドのメンバーであった。 (争いがない事実、弁論の全趣旨) イ 被告は、著作権及び著作隣接権の取得、管理等を目的とするレコード会社である。 株式会社シービーエス・ソニーグループは、平成3年4月1日に株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントに商号変更した(以下、商号変更前を含め、「SME」という。)。被告は、平成13年10月1日、SMEから新設分割された会社であり、後記本件契約に係る権利義務の一切を承継した。 (争いのない事実、弁論の全趣旨) (2) 本件契約の締結 原告ら、SME及び原告らが所属するB1代表B2(以下「B」という。)は、平成元年9月1日、以下の内容の専属実演家契約を締結した(以下「本件契約」という。)。読みやすさのため、甲、乙、丙をそれぞれB、SME、原告らと置き換えた。 ア 前文 「Bと、SMEと、原告らとは、原告らがSMEの専属実演家として、SMEの為にのみ実演し、SMEがこれを独占的に収録して録音物又は録音・録画物として複製・頒布等を行なうことに関して、以下の通り契約を締結した。」 イ 1条(定義) 「A レコード:蓄音機用音盤、デジタル・オーディオ・ディスク、録音テープ、フォノ・シートその他音を物に固定した一切の物をいう。 B ビデオ:ビデオ・カセット、ビデオ・ディスクその他影像を再生することを目的とする一切の物及び音をもっぱら影像とともに再生することを目的とする一切の物をいう。 F 原盤:実演家の実演、伴奏効果音、背景等を収録したカラオケ・編集済みのテープ(将来開発され得るその他の有体物を含む)で、レコード、ビデオの複製・頒布に適するとSMEが認めた物をいう。」 ウ 2条(目的) 「(1) 原告らは、本契約の有効期間中(更新延長期間を含む。以下同じ)、SMEの専属実演家としてSMEの要請により、SMEのためにのみレコード及びビデオの複製・頒布(貸与・放送・有線放送・上映を含む。以下同じ)を目的とした実演を行なうものとし、Bはこれに積極的に協力する。 (2) SMEは、原告らの実演をSME2 の費用にて独占的に収録して原盤を制作し、これを利用してレコード及びビデオを独占的に複製・頒布することが出来る。」 エ 4条(権利の帰属) 「本契約に基づく原盤に係る一切の権利(原告らの著作隣接権を含む)は、何らの制限なく原始的且つ独占的にSMEに帰属する。 @ この権利には、一切の複製・頒布権及び二次使用料等(著作権法第95条、第95条の2、第97条及び第97条の2他に規定)の徴収権を包含する。 A SMEは、如何なる国に於いても、随時本契約終了後も引続いて、自由に、且つ独占的に当該原盤を利用してレコード及びビデオを複製し、これらに適宜のレーベルを付して頒布することが出来る。 B 前号のレコード及びビデオの種類、数量、価格、発売の時期・方法その他一切の事項について、SMEは自由な判断により決定することが出来る。 C この権利の一部又は全部を、SMEは自由な判断により第三者に譲渡することが出来る。」 オ 6条(実演家印税) 「SMEは、本契約に基づく原盤を使用して発売したレコード及びビデオに関して、以下の定めに従い、原告らの実演家印税(所得税込)を算出し、Bを経由して原告らに支払うものとする。 (1) レコードとして発売した場合 1枚のレコードに、当該原盤のみを使用した場合、レコード1枚につき(税込定価−消費税−ジャケット代)×1% ジャケット代は税込定価の10%とする。但し、シングル・レコード(17p、45R.P.M.)の場合は、ジャケット代の控除を行なわないものとする。 (2) デジタル・オーディオ・ディスク又は特殊なレコード、ビデオとして発売した場合は、SMEの業界慣習に従いSMEが決定する。」 カ 8条(印税計算・支払) 「(1) 本契約に基づく印税は、レ1 コード及びビデオの営業所出庫数量の80%に対して発生するものとする。 (2) SMEは、毎年3月、6月、9月及び12月の各末日をもって印税の計算(円単位以下二桁にて切捨て)を締め、各締切日の翌々月25日に計算明細書を付してB(原告ら)に支払う。 尚、各計算期における支払印税額が金1、000円未満の場合、SMEは翌期に繰越して支払うことが出来るものとする。」 キ 17条(信義則) 「本契約に定めのない事項、又は本契約の条項の解釈等についての疑義を生じた場合は、B・SME・原告ら誠意をもって協議の上、信義に則して解決するものとする。」 ク 19条(特約条項) 「(1) 本契約第6条第2項の規定に拘わらず、ビデオとして発売した場合の原告らの実演家印税(肖像印税を含む)は1.5%とし、ジャケット代は税込定価の10%とする。 (2) 前項の実演家印税の算出・支払方法等は本契約の該規定を準用するものとする。」 (争いのない事実、甲1) (3) 原盤の制作 SMEは、本件契約後、原盤制作費の全額を負担して、原告らの実演に係る本件音源を収録した原盤(以下「本件原盤」という。)を制作し、レコード製作者の著作隣接権を原始取得した。 (乙29、弁論の全趣旨) (4) 原告らの実演家の著作隣接権の取得 原告らは、原告らの実演が録音された本件音源について、実演家の著作隣接権を原始取得した。 (争いのない事実) (5) 音楽事務所の地位の譲渡 原告ら、SME、B及び有限会社ブレスト音楽出版(以下「ブレスト音楽出版」という。)は、平成元年10月16日、Bはブレスト音楽出版に対し本件契約上の地位を譲渡し、他の契約当事者はそれを承認する旨の契約をした。 (争いのない事実) (6) 送信可能化権の創設 平成9年法律第86号による著作権法の改正(以下「平成9年改正」という。)により、実演家及びレコード製作者の送信可能化権を認める規定が創設され(著作権法92条の2、96条の2)、平成10年1月1日施行された。 (7) 本件音源のパソコン向け音源配信の実績 ア 本件音源は、平成15年12月から平成17年12月までの間、インターネットによりパソコン向けに配信された。 イ 被告は、平成18年2月、本件紛争が解決するまで、本件音源の配信を中止することとした。 (争いのない事実、乙24、弁論の全趣旨) 2 争点 本件契約4条の「一切の権利(原告らの著作隣接権を含む)」に、本件契約後に創設された実演家の送信可能化権(著作権法92条の2)が含まれるか。 3 争点に関する当事者の主張 (被告の主張) (1) 本件契約の目的 ア 本件契約の本質 本件契約の本質は、レコード会社がリスクを負担して商品を製造販売する一方、実演家が一切の著作隣接権をレコード会社に譲渡し、その対価として実演家印税を受領するというものである。 イ 本件契約の文言 (ア) 4条柱書 本件契約4条柱書は、「一切の権利(原告らの著作隣接権を含む)」は「何らの制限なく原始的且つ独占的にSMEに帰属する」と規定している。 (イ) 4条1号、2号 本件契約4条は、この権利には「一切の複製・頒布権」を包含すること(1号)、SMEは、「如何なる国に於いても、随時本契約終了後も引続いて、自由に、且つ独占的に当該原盤を利用してレコード及びビデオを複製し、・・・頒布することが出来る。」こと(2号)を規定している。 (ウ 1条2号 本件契約1条2号は、「レコード」とは、「蓄音機用音盤、デジタル・オーディオ・ディスク、録音テープ、フォノ・シートその他音を物に固定した一切の物をいう。」と広く定義している。 (エ) 2条1項 本件契約2条1項は、「頒布」の形態として「放送・有線放送・上映」などの無形利用を含むことを例示しており、有体物の譲渡等に限定していない。 (オ) 2条2項 本件契約2条2項は、SMEが、そのような頒布を目的として、原告らの実演を独占的に収録して原盤を制作し、当該原盤を利用してレコード及びビデオを独占的に複製・頒布できることを規定している。 (カ) 6条、7条 本件契約6条及び7条は、「レコードとして発売した場合」の印税だけでなく、「・・・特殊なレコード・・・として発売した場合」の印税についても規定している。 ウ 本件契約の目的 上記本件契約の本質及び本件契約の条項からすると、本件契約における当事者の目的は、SMEに対し、本件音源に関する著作隣接権の支分権を対象として、これを譲渡ないし許諾することにあるのではなく、SMEが本件音源について発生する一切の権利(実演家の著作隣接権を含む。)の包括的な譲渡を受け、SMEが永久に、自由かつ独占的に当該原盤を利用できることを確保し、他方、原告らは、その対価として実演家印税を受領することにより、当該原盤の利用に対する報酬を得ることにある。 エ まとめ したがって、本件契約においては、将来法改正により成立する送信可能化権を含めて、実演家の著作隣接権の一切がSMEに包括的に譲渡されたと解するのが相当である。 オ 原告らの主張に対する反論 (ア) 後記原告らの主張(1)オ(ア)(解釈の方法)は認める。 (イ) 同(イ)(本件契約4条と他の条項との関係)のうち、柱書は争う。被告は、本件契約4条柱書だけでなく、4条2号、1条2号、2条、6条、7条という他の条項をも参酌して、本件契約について合目的的な解釈をしているものである。 同a(有形的頒布)は認める。ただし、前記のとおり、本件契約2条1項は、「頒布」の形態として「放送・有線放送・上映」を例示し、SMEが無形的な利用を含む「頒布」をすることができることを明示的に定めている。 同b(ジャケット代)は認める。 同c(返品の有無)は認める。 同d(印税率)のうち、(a)及び(b)は認め、(c)は争う。 (ウ)a 同(1)オ(ウ)(当事者の合理的意思)a(合理的意思)のうち、高度の合理性を要する点は争い、その余は認める。 b 同b(予測不可能な権利の譲渡)は否認する。 送信可能化権が本件契約の締結当時、当事者が予想していなかった権利であったとしても、送信可能化権の譲渡が不可能になるわけではない。 c 同c柱書(予測不可能)は否認する。 同c(a)は否認する。 同c(b)のうち、予測不可能である点は否認し、その余は認める。 同c(c)のうち、予測不可能である点は否認し、その余は認める。 d 同d(結論)は争う。 (2) 社会的経済的合理性 ア 対象の限定 本件契約における権利の譲渡対象である音源は、本件原盤に収録された音源に限定されている。 イ 実演家印税の帰属とその合理性 (ア) 被告の音源配信についての実演家印税の計算方法 a 被告は、音源配信につき、次の計算式で実演家印税を算定している。 (税込価格−消費税)×(印税率×80%)×ダウンロード数 b 税込価格とは、ダウンロード1回当たりの税込価格をいい、フル音源配信の場合は210円程度、一部分の音源の配信の場合は105円程度となる。 c 本件契約の印税率は、CD等の販売の場合と同じ1%である。 d サーバー等の設備投資、各種技術に関わる費用等のインフラ整備等、音源配信サービスの普及、市場形成に当たりSMEが投資した費用を回収するため、印税率に80%を乗じ、20%を配信控除している。 (イ) 印税率の合理性 a 実演家印税は、通常1〜2%であり、リスクの大きい音楽産業における業界標準として長年にわたり是認されている。 b この印税率は、インターネットによるパソコン向けの配信でも同一に適用されることが慣習として確立している。 (ウ) 現在の契約書雛型 a SMEは、平成9年改正後、専属実演家契約書の雛型にインターネットによる音源配信に関する規定を明記している(乙66)。 b 原告らに対し音源配信に関して支払われた実演家印税の計算方法は、上記改訂後の専属実演家契約書の雛型に規定した計算方法と同一である。 (エ) 平成18年文化審議会著作権分科会報告書 a 平成18年1月の文化審議会著作権分科会報告書(乙54)には、「未知の利用方法が利用契約の対象に含まれていると解すべきかどうかの判断にあたっては、著作権者が・・・十分な対価を得ていると評価されるか否かが重要となろう。」「・・・利用の対価の決定方法として、利用者が取得する収益に比例した方法が採られている場合には・・・それほど問題は生じないと思われる。」(133頁)と記載されている。 b 原告らはダウンロード数に応じて合意した印税率による実演家印税を継続的に受領しているのであるから、十分な対価を得ていると認められる。 ウ リスクの負担 (ア) 本件契約において、レコード会社であるSMEは、自らのリスクで原盤を製造販売し、利益が出た場合にはそれを得られる反面、損失が生じた場合にそれを負担するリスクを負っている。 (イ) インターネット等を介した音源配信事業を開始するためには多大な設備の構築及び維持管理費用が必要であり、SMEは、そのようなリスクを負った上で事業を開始した(乙101〜104)。 エ 送信可能化権の実体 (ア) パソコン向けダウンロード型音源配信、パソコン向け以外のダウンロード型音源配信、非ダウンロード型音源配信のいずれの形態の音源配信においても、サーバーに音源を複製した上で音源配信が行われており、サーバーに音源を複製しないで音源配信をすることは、現実にはあり得ない。 (イ) このような現状にかんがみれば、実演家の送信可能化権は、実質的にみれば録音・録画権や複製権の対象範囲を変えるものではなく、いわば録音・録画権や複製権に付随するものであり、実演家の送信可能化権のみを取り上げてその帰属を論ずる実質的意味はない。 また、本件のような事案において、原告らに実演家の送信可能化権の帰属を認めると、権利の帰属及び許諾は、極めて複雑となる。 オ 原告らの主張に対する反論 (ア) 後記原告らの主張(2)オ(ア)(十分な対価の重要性)は認める。 (イ) 同(イ)(CD等との違い)aは否認する。 前記のとおり、SMEは、インターネットによるパソコン向けの音源配信のために専用システムを構築し、継続的なサーバー等の維持、管理に多大な費用を費やしている。 (ウ) 同(ウ)(単価、ダウンロード数の減少)は否認する。 音源配信1曲当たりの価格はCD等の1曲当たりの価格に比べて著しく安いものではない。したがって、その価格に基づいて算定される実演家印税も音源配信の方が著しく安いということはない。むしろ、CDでは購入に踏み切らなかったユーザーも音源配信により購入することもあるから、音源配信によって実演家の収入が激減するという事態は考えられない。 (エ) 同(エ)(増加利益の分配)は否認する。 SMEは、インターネット音源配信によるすべての売上げについて印税を支払っており、購入しやすくなった増加利益を原告らにも十分還元している。 (3) 予測可能性 ア 昭和61年法律第64号による著作権法の改正(以下「昭和61年改正」という。)で、「有線送信権」が認められたが(23条、92条)、これにはインタラクティブ送信に係る権利が含まれていた。 イ 平成9年改正の著作権法で創設された「送信可能化権」は、「有線送信権」の代替的な権利として認められたものであり、既存の権利と性格の完全に異なる権利ではない。 ウ したがって、実演家の送信可能化権は、本件契約の締結当時、予測可能な権利だったものである。 (4) 業界慣行 ア 業界における音源配信の位置付け (ア) 現在、パソコン向け及び携帯電話向けの音源配信サービスは、従来のCDの販売と同様に広い範囲の音源をカバーしており、市場規模から見ても、平成16年におけるパソコン向け及び携帯電話向け音源配信サービスの合計額は1149億円であり、CDの販売の売上額の約2割以上に相当する。また、通常は、CD発売と同時に「着うたフル」等の配信が開始される。 (イ) このような現状からすると、現在の音楽業界においては、音源配信サービスは、従来のCDの市場を補完する重要な商品市場として欠かせない存在となっている。 (ウ) また、リスナーの立場から商品を見れば、CD等と配信された音楽とで実質的な相違はないから、CD等の販売と音楽の配信とで、実演家に対する取扱いを変える合理性はない。 イ 業界の慣行 専属実演家契約が著作権法改正により送信可能化権が創設される前に締結されたか改正後に締結されたかを問わず、レコード会社は、実演家の送信可能化権を含む一切の著作隣接権を保有し、原盤の利用については実演家印税を支払うという慣行が、長年にわたり業界において確立されている(乙32〜48、50)。 (5) 原告らのその他の主張に対する反論 ア 著作権法の弱者保護の理念 (ア) 後記原告らの主張(5)ア(ア)(弱者保護の理念)は否認する。 すべての専属実演家契約について著作権者が構造的な弱者であるとの前提で法律上特別な扱いをすることは、現状に合致しない。 (イ) 同(イ)(実演家は弱者)は否認する。 本件契約解釈において、SMEが強者であり、原告らが弱者であるとの前提の下に解釈することは誤りである。 原告らの主張するレコード会社と実演家の力関係は、レコード制作及びその製造販売に係る膨大な制作費宣伝広告、 費、製造販売、管理費用等の負担を無視した偏った主張にすぎない。 レコード会社であるSMEは包括的な帰属を受けた一切の権利に基づきレコード等の商品を自らのリスクで製造販売し、レコード等の商品の製造販売による利益や損失の一切を負うものであり、一切の権利の包括的帰属に将来の支分権が含まれると解することに社会的経済的合理性が認められる。 イ 実演家に係る貸与報酬請求権の創設時の意識 (ア) 後記原告らの主張(5)イ(ア)(貸与報酬請求権の行使)は認める。 (イ) 同(イ)(レコード会社の意識)は否認する。 貸与報酬請求権等について、本件契約には記載されていないが、現在の専属実演家契約書の雛型(乙66)の6条2項には、以下のとおり記載されている。 「前項第3号の規定に拘わらず、実演家の権利のうち、以下各号のいずれかに属する権利であって、著作権法の規定に基づいて、社団法人日本芸能実演家団体協議会のみが指定団体として権利行使すべきものは、丙(注:実演家)がこれを保有することができます。 @ 著作権法第95条第1項に基づく二次使用料請求権。 A 著作権法第95条の3第3項に基づく貸与報酬請求権。 B ・・・」 これらの請求権は、社団法人日本芸能実演家団体協議会が指定団体として行使するものであることから、レコード会社としては、実演家のためにこれを行使しないものとしているものであり、新たに創設された実演家に留保される権利であることを理由としてレコード会社が権利を行使しないというものではない。 (6) まとめ 本件契約に基づき実演家の送信可能化権を含む実演家の著作隣接権の一切がSMEに包括的に帰属すると解するのが、本件契約の条項に合致し、当事者の目的に適合し、社会的経済的合理性も有する。 (原告らの主張) (1) 本件契約の目的 ア 本件契約の本質 被告の主張(1)アは否認する。 イ 本件契約の文言 同(1)イのうち、被告の解釈部分は争う。 ウ 本件契約の目的 同(1)ウは否認する。 原告らの側からみれば、本件契約における条件の下では、自己にとって不利益で相手方にとってのみ一方的に有利な権利まで、すべて譲渡しようとするはずがなく、SMEからみても、譲り受けることに合理性がない権利まで譲り受けることができると期待するはずはない。 したがって、本件契約の目的は、社会的経済的合理性から決定しなければならない。 エ まとめ 同(1)エは争う。 オ 原告らの主張 (ア) 解釈の方法 契約を解釈するに当たって、どのような文言が使用されているかは重要な問題であるが、文言を字義どおりに解釈することが、@当該契約の他の条項との関係で矛盾を生じないか、A当事者の合理的意思に反しないか、Bそのような解釈をすることによって社会的経済的な合理性を保持できるかどうかなどの観点から検討すべきである。 原告らの著作隣接権がSMEに移転すれば、原告らの権利は印税支払請求権だけになる。問題は、送信可能化権を印税請求権だけに転化させることが当事者の意思に合致するのか、また、合理的といえるのかどうかである。 (イ) 本件契約4条と他の条項との関係 本件契約は、複製頒布の方法として、レコードやビデオ、CDなどの有形的な手段を対象としており、インターネットによる楽曲の配信のような無形的な手段を対象としていない。すなわち、 a 有形的頒布 SMEが有する権利の内容や印税について定めた規定は、いずれも「レコード」や「ビデオ」と記載している(4条以下)。 b ジャケット代 (a) 印税の計算方法を定めた規定a (6条)は、ジャケット代を控除することとなっている。 (b) しかし、インターネットによる楽曲の配信の場合、ジャケット代又はそれに相当するパッケージ代はない。 c 返品の有無 (a) 印税は、レコード及びビデオの営業所出荷数量の80%に対して発生する旨の規定(8条)がある。これは、レコードやビデオの場合には、商品の返品が起こり得るために置かれた規定であり、返品の数量を20%程度と見積っている。 (b) しかし、インターネットによる楽曲の配信の場合、返品は起こり得ない。 d 印税率 (a) レコードやCDは、原盤を制作するための費用だけでなく、レコードやCDという「物」を製造する費用、運送費、人件費、保険料等の経費がかかる。 (b) これに対し、インターネットによる配信の場合には、「物」を製造するための費用や運送費、人件費、保険料等の費用はかからない。そのこともあって、インターネットによる配信について視聴者が支払う費用は、レコードやCDの価格に比べると、安い。 (c) したがって、レコードやCDの場合と、インターネットによる配信の場合とでは、実演家に支払うべき印税率は、当然異なるべきである。 (ウ) 当事者の合理的意思 a 当事者の意思に合致するという場合、SMEだけでなく原告らの意思にも合致していなければならないし、意思は合理的なものでなければならない。 本件契約を締結した当時、送信可能化権は著作権法上存在していなかったのであるから、送信可能化権が合意の対象に含まれているというためには、よほど高度の合理性が認められなければならない。 b 契約時点で予測することが不可能な権利については、両当事者の合理的な意思として、譲渡されなかったものと認めるのが相当である。 c 本件契約の締結当時、インターネットによる音源配信は、両当事者にとって予測不可能であった。 (a) 予測が可能であれば、本件契約の中にそれを窺わせる文言が含まれていたはずであるが、本件契約にこれを窺わせる文言はなく、本件契約の条項からすると、音源を有体物に固定して頒布することしか予定していないことが明らかである。 (b) 本件契約の締結時点で、ネット配信をビジネスとして展開することは予想不可能であった。 一 本件契約の締結当時、旧電電公社のINS構想やキャプテンシステム、ニフティサーブ内における「MIDIフォーラム」によって音源配信が既に始まっていたが、当時の技術水準では、楽曲のようなデータ量の過大なものを配信することは現実的ではなかった。 二 ネット配信が事業化されたのは、平成11年末ころであり、本件契約が締結されてから、10年も経過した後であって、この10年間におけるコンピュータ技術、特にインターネット関連技術の発展はめざましいものがある。 (c) また、ネット配信は、これまでの形態による楽曲の提供と比較すると、以下の特色を持っており、このような形態で楽曲が提供されることは、本件契約の締結当時には予測が不可能な技術であった。 一 CD等と異なり、ネット配信の場合には商品を買いに行く必要がなく、コンピュータ又は携帯電話の操作により居ながらにして楽曲を入手することができる。 二 配信できる楽曲が整備された後は、在庫がなく商品が手に入らないという事態がない。 三 有線放送の場合と異なり、楽曲が流されるのを待つ必要がなく、直ちに楽曲を楽しむことができる。 四 CD等の中の一曲だけをダウンロードすることができる。 d したがって、実演家の送信可能化権が本件契約の対象となっていると解釈することは、当事者の合理的意思に反する。 (2) 社会的経済的合理性 ア 対象の限定 被告の主張(2)アは認める。 イ 実演家印税の帰属とその合理性 (ア)a 同イ(ア)(計算方法)a〜cは認める。 b 同dは不知。 (イ) 同イ(イ)(印税率の合理性)のうち、a(業界標準)は不知、b(音源配信の場合の慣習)は否認する。 (ウ) 同イ(ウ)(現在の契約書雛型)は不知。 (エ) 同イ(エ)(平成18年著作権分科会報告書)のうち、a(報告書の内容)は認め、b(十分な対価)は否認する。 ウ リスクの負担 (ア) 同ウ(ア)(レコード会社のリスク負担)は認める。 (イ) 同(イ)(音源配信開始に当たっての設備投資等)は認める。 エ 送信可能化権の実体 (ア) 同エ(ア)(複製の不可避性)は不知。 (イ) 同(イ)(付随性)は否認する。 オ 原告らの主張 (ア) 契約当時未知の利用方法が専属実演家契約の対象に含まれていると解すべきかどうかの判断に当たっては、著作権者が専属実演家契約に基づく著作物の利用について、十分な対価を得ていると評価されるか否かが重要である。 (イ)a 前記のとおり、ネット配信の場合には、製造や運搬、保管のコストが不要になるから、全体としてのコストは低廉になるにもかかわらず、実演家に対してレコードやCDの場合と同一の割合による印税しか支払わないことには、合理性がない。 b 被告は、SMEはインターネットによるパソコン向けの音源配信のために専用システムを構築し、継続的なサーバー等の維持、管理に多大な費用を費やしている旨主張する。 しかし、システム構築のための初期投下費用が巨額であるとしても、いったん構築された後にシステムを維持するための費用は比較的低廉なはずであり、さらに、サーバー等の設備投資、各種技術に関わる費用等はすべての楽曲に共通のものであり、各楽曲当たりの費用は低廉なものに収まるはずである。 また、CDを販売する場合、サーバー等の設備投資、各種技術に関わる費用等のインフラ整備は要しない代わりに、原盤やCDを制作製造するためのコストや運送料、保険料などの費用がかかるのであり、これらを勘案して印税率が定められている。ネット配信の場合、サーバー等の設備投資等の投下費用は、印税率を定める際に既に考慮されており、さらに80%を乗ずるのは、二重計上である。 (ウ) 原告らの側からみると、ネット配信の場合には、単価が安くなる上に、ダウンロードすることによって販売される楽曲の総数が少なくなるから、CDやレコードと同じ割合の印税しか支払われないとすれば、実演家に対して支払われる印税の総額は極端に少なくなる。楽曲の販売価格が激減する場合には、印税率を大きくすることによってしか、実演家が生活できるに足りる印税を確保することはできない。 (エ) ネット配信という新しい利用方法よって増加利益が生じているのであるから、衡平の観点から、実演家にここに生じた増加利益の一部を自己に帰属せしめる機会が与えられなければならない。それは、実演家の送信可能化権はレコード会社に移転していないという形で処理するのが最も端的である。 (3) 予測可能性 ア 被告の主張(3)ア(昭和61年改正)は認める。 イ 同イ(平成9年改正)は否認する。 ウ 同ウ(まとめ)は否認する。 平成9年改正前の著作権法が定めていた有線送信権が働くのは、生演奏及び無許諾で固定された実演だけであった。平成9年改正により、送信可能化権が、CD等の生演奏及び無許諾で固定された実演以外の音源についての有線によるインタラクティブ送信と、有線以外の方法によるインタラクティブ送信に関する権利を含むものとして創設されたものである。 (4) 業界慣行 ア 業界における音源配信の位置付け (ア) 被告の主張(4)ア(ア)(音源配信サービスの市場規模)は不知。 (イ) 同(イ)(CD市場の補完)は不知。 (ウ) 同(ウ)(CD等との相違の不存在)は争う。 イ 業界の慣行 同(4)イは不知。 仮にそのような慣行があるとしても、実演家を支配するレコード会社が力で押し付けているにすぎない。 (5) 原告らのその他の主張 ア 著作権法の弱者保護の理念 (ア) 著作権法は、弱者保護の理念が流れており、契約解釈に当たり弱者の権利を不当に侵害することのないようにしなければならない。 (イ) 圧倒的多数の事例において実演家は弱者であり、レコード会社は強者である。本件契約は、被告に一方的に有利で原告らにとって不利益な多数の規定があり、原告らが弱者であり被告が強者であることは明らかである。 借地借家契約や消費者金融における金銭消費貸借契約の問題点は、借り主や借り手の側で契約内容を決定したり選んだりすることができず、貸し主や貸し手の側が提案する契約内容を受諾するかしないかの自由しかないところに問題があるのであり、そのため契約文言の形式的な内容で当該契約を律することが正義に反する場合があるとされているものである。この点では、借地借家契約等と専属実演家契約の間に違いはなく、契約内容の押し付けの問題は本件契約において大きいといえる。この実態を前提とすれば、本件契約の解釈に当たって、被告に有利な規定である4条柱書の文言を、更に被告に有利に拡張的に解釈することは許されない。 イ 実演家に係る貸与報酬請求権の創設時の意識 (ア) 昭和59年改正により創設された実演家の貸与報酬請求権については、各実演家がその所属するプロダクションや団体に委任し、これらの団体が実演家著作隣接権センターに委任して行使し、実演家が貸与報酬等を取得している。 (イ) 上記改正により規定された貸与報酬請求権がレコード会社に帰属するのであれば、レコード会社が自ら行使するか、実演家著作隣接権センターに委任して行使するはずである。レコード会社が権利行使をしていないのは、実演家もレコード会社も、新たに創設された権利が実演家に留保されるという意識を有していたことを意味する。 (6) まとめ 被告の主張(6)は否認する。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 (1) 本件契約の条項 平成元年9月1日に締結された本件契約の条項は、前提事実(2)のとおりである。 (2) 我が国における音源配信サービスの展開 ア 音源配信の経過 (ア)a 我が国におけるデジタル化された音源等の配信は、昭和54年に旧電電公社が発表したINS(Information Network System)構想において提示された。 b 昭和59年に、キャプテン端末により文字、画像などの音声以外の情報の送受信が家庭でも行われるようになり、パソコンの利用者の増加に伴い、昭和60年以降、次々と大手事業者の商用ネットワークが誕生し、パソコン通信が盛んに行われるようになった。昭和60年に「アスキーネット」、昭和61年に「PC−VAN」、昭和62年に「ニフティサーブ」がそれぞれ開始された。 c 昭和61年ころには、パソコンソフト自動販売機「TAKERU」がパソコンショップ等に設置され、BGMとして音楽データを含んだ「ザナドゥ」などのゲームソフトのデータが配信されるようになった。 d 平成元年ころには、ニフティサーブ内で発足した「MIDIフォーラム」で、MIDIデータファイルの配信サービスが行われるようになり、会員は、配信されたデータとMIDI音源機器を用いて、音楽を視聴することができるようになった。 e そして、平成4年ころには、通信カラオケ「JOYSOUND」が発売され、音源配信が開始された。 f 昭和60年9月の著作権審議会第7小委員会(データベース及びニューメディア関係)の報告書(乙81)には、「・・・キャプテンは、メロディーの音高、音長、楽器の種類などの情報をコード化してセンターから端末に送り、端末に内蔵されているシンセサイザーによって出力するメロディー表現が可能なので既存の音楽の著作物が使用されることが考えられる。」(37頁)との記載がある。 (イ) パソコン向け音源配信サービス a SMEは、音楽の違法ダウンロードに対抗し、著作権等を保護するため、多額の資金を投与して、ソニー株式会社とマイクロソフト株式会社の協力の下、平成11年12月20日、インターネットを通じた著作権保護を施したパソコン向け有料音源配信サービスを、「bitmusic」という名称で開始した。 その後、レコード会社が次々とパソコン向け音源配信ビジネスに参入した。平成12年4月、SMEを含むレコード会社11社及びソニーコミュニケーションネットワーク株式会社の共同出資で、株式会社レーベルゲートが設立され、「レーベルゲート」という名称でパソコン向け有料音源配信サービスが開始された。 レーベルゲートは、平成16年4月1日、東芝EMIとワーナーミュージックジャパンが参入し、名称を「mora」に変更してリニューアルされ、日本の大手レコード会社による音源配信が実現した。 その後も、総合ポータルサイト運営事業者が音源配信サービスを開始し、平成17年8月には、米国アップル社の子会社であるアイチューンズ株式会社が「iTunesMusic Store」の名称で音源配信サービスを開始した。 b 「iTunes Music Store」においてダウンロード可能な音源数は、約100万曲、上記「mora」においてダウンロード可能な音源数は、約50万曲であり、音源配信サービスは、従来のCDの販売と同様、広い範囲の音源をカバーしている。 (ウ) 携帯電話向け音源配信サービス a 平成11年2月、エヌ・ティ・ティ・ドコモの「i-mode」において、MIDI音源(いわゆる着信メロディ)を利用した音源配信サービスが開始された。平成12年11月には、DDIポケットが、平成13年1月には、エヌ・ティ・ティ・ドコモが、それぞれPHS端末向けのCDなどの音源配信サービスを開始した。 そして、平成14年12月から、SMEが、CD等の音源をそのまま利用し、携帯電話の着信音として設定可能な音源配信サービスである「着うた」のサービスを開始し、平成16年11月には、KDDIの携帯端末向けにCD等の音源の一曲全部を配信できる音源配信サービス「着うたフル」のサービスが開始された。平成17年8月にはボーダフォンの携帯端末向けの「着うたフル」のサービスが、平成18年6月には、エヌ・ティ・ティ・ドコモの携帯端末向けの「着うたフル」のサービスが始まった。 b 携帯電話向け音源配信サービスは、パソコン向け音源配信サービスに比べて、安易な手続で行える課金システムが確立されており、再生端末である携帯電話自体に通信機能を有しているため、ユーザーが利用しやすく、パソコン向け音源配信サービスよりも広く一般に浸透しており、KDDIの携帯端末による「着うたフル」の累計ダウンロード数は、平成17年6月には1000万曲を突破した。 c SMEは、平成14年1月1日以降、携帯電話による着うたサービスについて、それがCD及びパソコン配信等のフルサイズの音源を販売するプロモート的なサービスであると捉え、原盤印税及び実演家印税に加えて、新たにプロダクションや実演家等に対し「プロモート印、 税」を支払うこととし、その後、その対象を着うたメドレー等に拡大してきた。 プロモート印税は、SMEがすべての制作費を負担した原盤については、(税込価格−消費税)×3%であり、当分の間、配信控除として各印税率に80%を乗じて印税を算出するものとされている。 (以上、乙55〜61、64、68〜80、95〜97、101〜104) イ 音源配信サービスの売上げ等 平成13年以降、CDレンタルを含むCD等の売上げは漸減しており、平成16年における売上げは合計5202億円であり、平成13年の売上げ合計5934億円の約88%であった。 これに対して、パソコン向け音源配信の売上げは、平成13年以降急増しており、平成16年の売上額は50億円(うち、MIDIデータ配信を除く音源配信サービスの売上げは36億円)で、平成13年の売上げ合計16億円(同5億円)の約3倍、MIDI音源を除いた音源配信サービスの売上げは約7倍以上に拡大した。 また、携帯電話向けの音源配信の売上額も、平成13年以降急増しており、平成16年の売上額は合計1099億円で、平成13年の売上げ合計503億円の2倍以上に拡大している。 (乙55、56、64) ウ 音源配信サービスの位置付け (ア) パソコン向け及び携帯電話向け音源配信サービスは、従来のCD等の販売と同様に、広い範囲の音源をカバーしており、市場規模からみても、平成16年のパソコン向け及び携帯電話向けの音源配信サービスの売上額の合計は1149億円であり、同年のCD等の売上額5202億円の約2割に相当する。 (乙56、64) (イ) 平成17年12月のJETROの調査レポートである「産業レポート日本の音楽配信産業の動向(2005年12月)」には、「要旨:近年の音楽ソフト市場は、音楽CD販売の退潮が続く一方、インターネット向け音楽配信の市場規模が着実に拡大しつつある。音楽配信市場拡大の背景には、インターネット音楽配信プロバイダーや携帯電話向け配信プロバイダーを経由する新たな流通構造の確立がある。音楽配信ビジネスの特徴は、商材であるコンテンツがDRM(デジタル著作権管理)によって保護されるため、配信プラットフォームによって継続的に収益を得ることが可能となる点にある。」と記載されている。 (乙55) (3) 音楽業界における慣行 ア 原盤(マスターテープ)を制作した者が著作権法上のレコード製作者となり、レコード製作者の著作隣接権を有すると考えられるところ、原盤の制作費用として、スタジオミュージシャンの報酬、スタジオ使用料、編集室使用料、エンジニア料、編曲料、写譜料、楽器使用料などが必要である。 原盤制作費用の負担方法として、@すべてレコード会社が負担する形態、Aレコード会社とアーティスト所属事務所(プロダクション)が負担割合に基づき共同して負担する形態、Bすべてプロダクションが負担する形態の3つがある。そして、レコード会社の著作隣接権は、@の場合はレコード会社が有し、Aの場合は負担割合に応じてレコード会社とプロダクションが準共有し、Bの場合はプロダクションが有することになる。 レコード会社、プロダクション及び実演家の間で、@の場合は専属実演家契約、Aの場合は共同制作原盤譲渡契約、Bの場合は原盤独占譲渡契約と呼ばれる契約が締結されることが多く、レコード会社が原盤に関するレコード製作者及び実演家の著作隣接権等の一切の権利を取得し、実演家には実演家印税を、プロダクションには負担割合に応じた原盤印税を支払うという内容となっている。 (乙32〜48、62、64、82〜94、98、99、105) イ 実演家印税は、通常、レコードやCD等の小売価格からジャケット代を控除し、出荷控除を経た後の枚数を乗じた金額の1〜2%程度である。 出荷控除とは、返品によりレコードの出荷数が必ずしも売上数と一致しないため、出荷数から一定の減額をすることで、実際の売上数を擬制するためのものであるとされている。 (乙62、64) ウ(ア) SMEは、平成9年改正を受けて、専属実演家契約書の雛型を次のとおり改訂した。 a 1条8号において「レコード等:収録物のうち、第三者への提供又は第三者による利用を目的として製作される物をいいます。レコード等には、実演が収録された、コンパクト・ディスク・・・、ハードディスク、公衆送信用記録媒体、並びに、将来開発され得るその他の物を含みますが、これらには限定されません。」と規定した。 b 1条11号において「利用行為:・・・(B)レコード等に収録された実演を送信その他の方法によって第三者に提供して、第三者に実演を再生させ得るようにする行為をいいます。」と定義して、インターネットを介した音源配信の利用行為が含まれることを明記し、SMEがこれらの利用行為を行うことができること、被告が著作権法に基づく実演家の権利を独占的に保有することを規定した。 c 別紙の1.A.(8)において、インターネットを介した音源配信により販売した場合の実演家印税の算定について、レコードやCDを販売した場合の印税率に配信控除として80%を乗じて印税を算出するものとし、ジャケット代の控除を行わず、印税は販売数量の100%に対して発生する旨を規定した。 (イ) 被告は、パソコン向けの音源配信について、平成9年改正前に締結された専属実演家契約についても、次のとおり、平成9年改正を受けて改訂された専属実演家契約書と同様の計算式で算出した実演家印税を支払っている。 (税込価格−消費税)×(印税率×80%)×ダウンロード数 アルバム配信の単価は1000円(税抜価格)、シングル配信の単価は200円(税抜価格)であり、印税率はCD等と同じ1%とされている。 (ウ) 被告は、配信控除の理由として、サーバー等の設備投資、各種技術に関わる費用等のインフラ整備等、音源配信サービスの普及、市場形成に当たりSMEが投資した費用を回収するためであると説明している。 (争いのない事実、乙28、66、67、弁論の全趣旨) エ 音楽業界では、平成9年改正前に締結された専属実演家契約についても、原盤に収録された音源について実演家の送信可能化権を含む著作隣接権はレコード会社に譲渡されたものとして取扱われており、原告X1が平成17年9月15日付けの申入書をもって本件音源の配信について契約も許諾もしていない旨申し入れるまで、実演家の送信可能化権の譲渡自体については、実演家等から異議が出されたことはなかった。 (乙19、32〜48、弁論の全趣旨) オ (ア パソコン向けの音源配信の場合に実演家に支払われる実演家印税の算出方法について、被告が提出した他のレコード会社の陳述書中には、CD等と同一の印税率を適用して実演家印税を支払っている旨の記載があるが、大部分のレコード会社の回答には「原則として」との留保が付されており、ジャケット代の控除や出荷控除がCD等の場合と同様にあるか、配信控除があるか、並びに他の名目での実演家又はプロダクションに対する支払があるかについては、記載はない。 (乙82〜94、98、99、105)。 (イ) なお、当裁判所は、原告らの申出により、上記陳述書を提出したレコード会社の大部分を含むレコード会社に対し、音源配信の場合の実演家印税の算定方法とCD等の販売により支払われる実演家印税との差異について調査嘱託を行ったが、どのレコード会社からも回答はなかった。 (記録上明らかな事実) カ「着うた」サービスにおける印税率について、安藤和宏著「よくわかる音楽著作権ビジネス基礎編3rd Edition」(甲4)には、「・・・レコード会社はプロダクションや音楽制作者などに支払う印税について、レコードなどのパッケージ商品と同じ印税率と計算式を採用することを提案し、強く主張している。 これはレコード会社が音楽配信をパッケージ商品と同様に音楽の販売方法の一形態と捉えており、従来の収益を確保したい旨を示している。これに対しては、音楽配信にかかるコストはパッケージ商品とまったく異なるものであり、従来の印税率や計算式を適用するのは妥当ではないと、アーティストやプロダクション、原盤制作者は猛反発している。JASRACもレコード会社のこの主張を受け入れず、ダウンロード販売についてはレコードよりも高い料率である販売価格の7.7%としている(レコード、音楽テープ、CDの著作権使用料は小売価格の6%)。」(295頁)との記載がある。 (甲4) なお、「着うた」につき、SMEが実演家印税等の他にプロモート印税をプロダクションや実演家等に対し支払っていることは、前記のとおりである。 (4) 送信可能化権の立法経緯 ア 昭和61年改正前の規定 昭和61年改正前の著作権法では、実演家の著作隣接権として、@録音権及び録画権(91条1項)、A放送権及び有線放送権(92条1項)、B貸与権(95条の2第1項)、C二次使用料を受ける権利(95条1項)、D報酬を受ける権利(95条の2第3項)が認められていた(89条1項)。 放送とは「公衆によって直接受信、 されることを目的として無線通信の送信を行なうことをいう。」(2条1項8号)、有線放送とは、「公衆によって直接受信されることを目的として有線電気通信の送信・・・を行なうことをいう。」(2条1項17号)と定義され、「公衆」には、「特定かつ多数の者を含むものとする。」(2条5項)とされていた。 この「有線放送」の中には、一斉型の送信のみでなく、公衆の求めに応じて個々に情報を送るリクエスト型の送信も含むものと解釈されていた。 イ 昭和61年改正 (ア) 昭和61年改正により、「有線送信」という上位概念を創設して、「公衆によって直接受信されることを目的として有線電気通信の送信・・・を行うこと」を「有線送信」と定義し(2条1項17号)、「有線放送」を「有線送信のうち、公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行うもの」に限定した(2条1項9号の2)。 これは、当時のキャプテンシステム等のビデオテックス、データベースのオンラインサービスなどの新しい形態の送信の発展に伴い、従前は解釈により「有線放送」に含まれるものとされていたリクエスト型の送信(インタラクティブ送信、オンデマンド型の送信ともいう。)が著作権法の対象となることを明らかにしたものである。 当時、無線による送信については、リクエスト型の送信の実態がなかったため、「有線」と同様の整理が行われなかった。その結果、有線と無線では概念構成が異なることになり、「放送」は、「公衆によって直接受信されることを目的として無線通信の送信を行なうこと」と定義され、一斉型の送信のほか、理論上リクエスト型の送信を包含し、「有線送信」と対になる概念であった。 (イ) 昭和61年改正の結果、実演家の著作隣接権は、@録音権及び録画権(91条)、A放送権及び有線送信権(92条1項)、B貸与権(95条の2第1項)、C二次使用料を受ける権利(95条1項)、D報酬を受ける権利(95条の2第3項)を含むこととなった(89条1項)。 このうち、実演家の放送権及び有線送信権は、@放送される実演を有線放送する場合、A許諾を得た録音物、録画物を用いて放送又は有線送信する場合には及ばないものと規定された(92条2項)。 ウ 平成9年改正 (ア) 平成9年改正により「公衆、 送信」という上位概念が創設され、無線、有線を問わず「公衆によって直接受信されることを目的として・・・送信・・・を行うこと」を「公衆送信」というと定義された(2条1項7号の2)。そして、公衆送信のうち、無線、有線を問わず、公衆からのアクセスに応じて自動的に送信するというリクエスト型の送信(インタラクティブ送信)を意味する「自動公衆送信」(2条1項9号の4)の概念が創設され、「放送」及び「有線放送」は、一斉型の送信の場合に限定された。 これは、情報伝達技術が発達するに伴い、パソコンを携帯電話に接続して送受信を行ったり、送受信の途中で通信衛星を利用する送受信形態が出現するなど、有線と無線とを併用する送信形態も出現することとなり、有線と無線とを区別する必然性が乏しくなってきたこと、平成8年12月に採択された「著作権に関する世界知的所有権機関条約」(以下「WIPO著作権条約」という。)及び「実演家及びレコード製作者に関する世界知的財産所有権機関条約」(以下「WIPO実演・レコード条約」という。乙49)11条及び18条においても有線と無線とを区別していないことから、公衆に対する送信全体を示す概念として「公衆送信」という定義を創設し、「有線送信」の概念を廃止し、無線、有線を問わず、公衆からのアクセスに応じて自動的に送信するというリクエスト型の送信を意味する「自動公衆送信」(2条1項9号の4)の概念を創設したものである。 (イ) 送信可能化権の創設 a 「送信可能化」とは、「サーバー」や「ホストコンピュータ」のような送信用コンピュータに記録されていたり入力されている情報を、ネットワークを通じて「インタラクティブ送信」できるようにするための行為を行うこと、すなわち、ネットワークへのアップロード行為をいう(2条1項9号の5)。 平成9年改正の結果、実演家は、著作隣接権として、@録音権及び録画権(91条1項)、A放送権及び有線放送権(92条1項)、B貸与権(95条の2第1項)、C二次使用料を受ける権利(95条1項)、D報酬を受ける権利(95条の2第3項)のほか、Eその実演を送信可能化する権利を専有する(92条の2第1項)ものとされた(89条1項)。 b 従来インタラクティブ、「送信」の形態は、データベースのオンラインサービスやキャプテンサービスのように、特定の情報発信元から、その発信元と情報の供給に関する契約を締結した限られた供給先に向けて行われる形態が中心であったので、著作者等の側で、いつ、どこから、誰に向けて自分の著作物が送信されたかが比較的容易に確認することが可能であった。しかし、インターネットのような巨大なネットワークが登場し、自分の著作物がどこからどのような経路をたどってどこの端末機器に送信されたかを確認することが、実際問題として非常に困難となった。また、平成8年12月に採択された「WIPO実演・レコード条約」は、実演家及びレコード製作者には送信行為そのものには許諾権及び報酬請求権を与えずに、その前段階の行為である送信可能化について許諾権を与えるという考え方を採っていた。 そこで、著作者等のネットワーク上における権利保護を実効あるものにするため、「送信可能化権」を創設し、自動公衆送信が実際に行われていてもいなくても、ネットワーク上にアップロードされてさえいれば、著作者等がその著作権に関して権利行使ができるようにしたものである。 また、従前の有線送信権にはインタラクティブ送信の場合が含まれていたものの、この権利が働くのは「生実演」及び「無許諾で固定された実演」のみであり、実演家の許諾を得た録音物を用いた送信については、実演家の有線送信権は及ばないものと規定されていたが、平成9年改正により、有線送信の場合に制約されていた実演家の許諾を得た録音物を用いた有線送信についても、実演家の送信可能化権が及ぶことになった。 2 判断 (1) 本件契約の解釈 本件契約4条の「一切の権利(原告らの著作隣接権を含む)」に実演家の送信可能化権が含まれるか否かについては、契約の解釈の手法に則り、@本件契約の文言、各条項の関係、A契約締結当時における音源配信に関する状況、B契約締結当時における著作権法の規定、C業界の慣行、D対価の相当性等の諸事情を総合的に考慮して判断するのが相当である。 (2) 本件契約の文言等 ア 前記認定のとおり、本件契約は、前文が示すとおり、原告らがSMEの専属実演家として、SMEのためにのみ実演し、SMEがこれを独占的に収録して録音物等として複製・頒布等を行うことに関して締結されたものである。そして、本件契約の2条(目的)、4条(権利の帰属)は、この前文を具体化した規定であり、SMEは原告らの実演をSMEの費用で独占的に収録して原盤を制作し、これを利用してレコード及びビデオを独占的に複製・頒布することができる旨定め(2条)、SMEは、本件原盤に係る一切の権利は、何らの制限なくSMEに帰属し、一切の権利には原告らの著作隣接権が含まれることを明記し、SMEが、いかなる国においても、契約終了後も引き続いて自由にかつ独占的に本件原盤を利用してレコード及びビデオを複製頒布することができる旨が定められ、将来にわたって、SMEが、本件契約に基づく複製、頒布権を有することとされ(4条)、原告らに何らかの著作隣接権が留保されることを窺わせる記載はない。 なお、本件契約4条は、「原始的且つ独占的にSMEに帰属する。」と規定しているが、この定めは、合理的に解釈すれば、原告らが原始的に取得した権利を譲渡されることを定めたものと解すべきである。 イ 原告らは、本件契約は有体物を利用した頒布に限定されている旨主張する。確かに、本件契約の権利の内容や印税について定めた条項には、「レコード」や「ビデオ」と記載されており、印税の計算方法を定めた規定(6条)は、ジャケット代を控除することとなっている。 しかし、「レコード」は、「蓄音機用音盤、デジタル・オーディオ・ディスク、録音テープ、フォノ・シートその他音を物に固定した一切の物をいう。」と広く定義されており(1条2号)、「頒布」の形態も「放送・有線放送・上映」などの無形利用を含むことが例示され、有体物の譲渡等に限定されていないこと(2条1項)からすると、本件契約がその対象を有体物を利用した頒布に限っていると解することはできない。 ウ また、原告らは、本件契約締結当時、送信可能化権は法定されていなかったのであるから、譲渡の対象となり得ない旨主張する。 まず、将来法改正により法定される権利であっても、契約の対象とすることは可能である。しかも、我が国著作権法は、各支分権を例示とせず、限定列挙としたため、新たな利用形態の出現に対応して頻繁に法改正を必要とする。したがって、我が国著作権法の下では、将来法定される支分権を譲渡の対象とすることの必要性は極めて高いものである。よって、原告らの上記主張は、採用することができない。 (3) 本件契約の締結時における音源配信に関する状況 前記認定のとおり、違法ダウンロードに対抗するために著作権保護を施したビジネスとしてのパソコン向け音源配信サービスが開始されたのは、平成11年末ころであるが、本件契約が締結された平成元年には、既に旧電電公社のINS構想によるデジタル化された音源の配信は提示されており、キャプテン端末による送受信が開始され、ニフティサーブ内の「MIDIフォーラム」における音楽の配信やBGMとして音楽の配信を含んだゲームソフトのデータの配信などが開始されており、著作権審議会の小委員会の報告書においても将来における音源配信の可能性についての示唆があるなど、音源配信の萌芽はすでに芽生えていたものである。 したがって、本件契約が締結された平成元年の時点で、近い将来、デジタル化された音声情報がパソコン通信等により配信されることを予測することは、被告はもちろん原告らにとっても、十分可能であったと認められる。 (4) 本件契約の締結当時における著作権法の規定 前記認定のとおり、平成9年改正により、従前有線の場合に制約されていた実演家の許諾を得た録音物を用いた有線送信についても、実演家の送信可能化権が及ぶことになり、権利として強固なものとなったが、本件契約の締結前である昭和61年改正時から、著作権法は、インタラクティブ送信について、有線送信権として認知及び保護を開始していたものである。 (5) 業界の慣行 前記認定のとおり、音楽業界においては、平成9年改正が施行される以前に締結された専属実演家契約であっても、実演家の送信可能化権を含む著作隣接権は、すべてレコード会社に帰属し、その対価として売上げに応じて実演家印税が支払われるという慣行が確立していたものである。 (6) 対価の相当性 ア 前提事実(2)のとおり、本件契約6条2項は「デジタル・オーディオ・ディスク又は特殊なレコード、ビデオとして発売した場合は、SMEの業界慣習に従いSMEが決定する。」、17条は「本契約に定めのない事項、又は本契約の条項の解釈等についての疑義を生じた場合は、B・SME・原告ら誠意をもって協議の上、信義に則して解決するものとする。」と規定していることからすると、本件契約6条2項は、音源配信を含む新たな頒布形態について、SMEによる一方的な実演家印税額の決定を認めているものではなく、新たな頒布形態の特殊性等に応じた相当な率による実演家印税が支払われるべきことを規定しているものと解される。 したがって、本件契約が定めている音源配信に対する印税率が低いものと認めることはできない。 イ なお、前記認定のとおり、被告が現在採用している音源配信についての実演家印税の計算方法は、 (税込価格−消費税)×(印税率1%×80%)×ダウンロード数 というものであり、税込価格は、フル音源配信の場合は210円程度であり、サーバー等の設備投資、音源配信サービスの市場形成等に当たりSMEが投資した費用を回収するため、印税率に80%を乗じているというものである。 しかし、レコード会社は、リスクを負担して商品を製造販売するからこそ、実演家に対しては、比較的低い率での実演家印税の支払を許容されているといわなければならないのであって、サーバー等の設備投資、音源配信サービスの市場形成等に当たりSMEが投資した費用の一部を実演家に負担させることができるか否か、負担させるとしても、80%を乗じることが相当か否かについては、疑問の余地があるといわなければならない。 さらに、CD等に比べて音源配信の単価が低いこと、前記のとおり、「着うた」等の携帯電話向けの音源配信サービスについて、SMEは実演家に対して実演家印税の他にプロモート印税を支払っていることを考慮すると、今後とも音源配信のシェアが増加し、CD等のシェアが減少することが予想される状況の中で、従来のCD等について定めた算定方法や印税率がそのまま妥当するかについては、疑問が残る。 (7) その他の原告らの主張に対する検討 ア 原告らは、実演家は経済的弱者であり、弱者保護の観点から本件契約の条項を解釈すべきである旨主張する。 しかし、実演家が経済的弱者であるとしても、前記認定のとおり、専属実演家契約の性質からすると、レコード会社に原盤に対する排他的な支配権を確保させ、原盤の自由かつ独占的な利用を可能とすること自体には合理性があるものである。しかも、経済的弱者であるとの事情は、本件契約6条2項が相当な実演家印税率を規定していると解するに当たり、十分考慮されているものである。 よって、原告らの上記主張は、採用することができない。 イ 実演家に係る貸与報酬請求権の創設時の意識 原告らは、昭和59年の法改正により新たに創設された実演家の貸与報酬請求権について、実演家が、指定団体を通じて権利を行使し、貸与報酬等を取得しているのは、実演家もレコード会社も、新たに創設された権利が実演家に留保されるという意識を有していたことを意味する旨主張する。 しかし、前提事実(2)のとおり、本件契約4条@には、貸与報酬請求権(95条の2、現行95条の3)は被告に帰属する旨明記されていたし、証拠(乙66)によれば、現在の専属実演家契約書の雛型(乙66)の6条2項には、「前項第3号の規定に拘わらず、実演家の権利のうち、以下各号のいずれかに属する権利であって、著作権法の規定に基づいて、社団法人日本芸能実演家団体協議会のみが指定団体として権利行使すべきものは、丙(注:実演家)がこれを保有することができます。 @ 著作権法第95条第1項に基づく二次使用料請求権。 A 著作権法第95条の3第3項に基づく貸与報酬請求権。 B ・・・」と規定され、新しく創設された権利であるからではなく、権利の性質に応じて帰属が定められていることが認められるから、実演家の貸与報酬請求権は新たに創設された権利であるから実演家に留保されるという意識があったものと認めることはできない。 よって、原告らの上記主張は、採用することができない (8) まとめ 以上の事情を総合的に考慮すると、本件音源についての実演家の送信可能化権も、本件契約4条柱書の「一切の権利(原告らの著作隣接権を含む)」に含まれ、平成10年1月1日に著作権法92条の2が施行された時点で、原告らが原始的に取得すると同時に、SMEに対して譲渡され、その後、被告に承継されたものというべきである。 3 結論 よって、原告らの本訴請求は理由がなく、被告の反訴請求は理由があるので、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 市川正巳 裁判官 大竹優子 裁判官 杉浦正樹は転勤のため署名押印することができない。 裁判長裁判官 市川正巳 (別紙)音源目録
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