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【事件名】類似ゲームサイト事件
【年月日】平成19年1月31日
 東京地裁 平成18年(ワ)第13706号 損害賠償請求事件
 (口頭弁論終結日 平成18年11月13日)

判決
原告 X
被告 Y1
被告 Y2


主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 被告らは、原告に対し、それぞれ金300万円を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、「里見学園八剣伝」という名称のウェブサイト(以下「原告サイト」という。)を運営している原告が、「白ノ蓮」という名称のウェブサイト(以下「被告サイト」という。)を運営していた被告らに対し、被告らは、被告サイトに、原告サイト上の記載を複製して、原告の著作権(複製権)を侵害したと主張し、また、被告らは、@原告サイトの構造、シナリオ等を模倣して、被告サイトを作成し、A被告サイトにおいて、原告サイトの世界観を毀損する内容の設定をしたり、本来秘密にしておくべき原告サイトの情報を漏らし、B原告サイトにおいて、被告サイトの広告をし、C原告の名誉を毀損する内容のメールを被告サイトの参加者に対して送信等したが、これらの行為は、それぞれ被告らの共同不法行為を構成すると主張して、民法709条、719条に基づき、慰謝料として金200万円及び逸失利益として金400万円の合計金600万円の損害のうち、一部請求としてそれぞれに対して金300万円の賠償を求めている事案である。
1 争いのない事実等(証拠により認定した事実は、当該証拠番号を末尾に摘示する。)
(1) 原告は、平成17年2月ないし4月ころ、原告サイトを開設し、以降、原告サイトを運営している(甲1、弁論の全趣旨)。
(2) 被告らは、平成18年5月ころ、被告サイトを開設したが、本件訴訟が提起された後、被告サイトを閉鎖した(甲2ないし4、弁論の全趣旨)。
2 争点
(1) 不法行為の成否
(2) 損害額
3 当事者の主張
(1) 争点(1)(不法行為の成否)について
(原告の主張)
ア 原告サイトの内容等
 原告サイトは、プレイ・バイ・ウェブ(PBW)と呼ばれる形式のもので、舞台設定、シナリオ等を創作して一定の世界観を有する仮想世界を構築し、原告サイトに参加した者が、一定のルールの範囲内で自らキャラクターを設定し、原告サイト内に設置された掲示板やチャットルームなどで他のプレイヤーとコミュニケーションを行いながら、仮想世界の住民となって、さまざまなイベントを経験していくことで、出会い、別れ、友情、恋愛、戦い、葛藤、感動などの疑似体験を重ねるというロールプレイングゲームを行えるようにしたものである。具体的には、原告サイトでは、架空の高校である「里見学園」が舞台となっており、参加者は、同高校の生徒であるキャラクターを設定し、同キャラクターとして、原告サイト内で行動をする。原告サイトには、参加者同士が交流を楽しむ無料の「サブPC」と、有料会員制の「メインPC」という2種類のカテゴリーがある。
 原告は、平成17年4月に原告サイトを開設して以来、原告サイトでの告知、リンク集サイトへの登録、有料での広告配信などの活動をし、これにより、原告サイトは、多くの人に認知されるようになり、原告サイトへの参加者は、サブPCには30名ないし60名、メインPCには15名ないし30名となった。
イ 被告らの不法行為
(ア) 複製権侵害
 被告サイトには、「里見学園八剣伝」、「里見学園」、「スクエア」及び「空き教室」という各記載(以下「本件被告記載」と総称する。)があるが、本件被告記載は、原告の著作物である原告サイト上の「里見学園八剣伝」、「里見学園」、「スクエア」及び「空き教室」という各記載(以下「本件原告記載」と総称する。)を複製したものであり、被告らが被告サイトに本件被告記載を掲載したことは、原告著作物の複製権侵害となる。
(イ) 一般不法行為
a 被告らは、被告サイト上に、「里見学園八剣伝」という名称を使用し、参加者が里見学園の生徒としてロールプレイングを行うという原告サイトのゲーム内容と同一の内容のゲームを行えるようにし、被告サイトのトップに、参加者の交流のための掲示板を配置し、また、被告サイトの各種チャットルームには、原告サイトと同じ場所名を使用して、原告サイトの構造を模倣した。
 また、原告は、被告らに、里見学園の生徒から特定の人物を探り出すという原告サイトの未公開のシナリオ(里見学園の生徒から特定の人物を探し出すというもの。)を教えたが、被告らは、このシナリオを被告サイトにおいても使用した。
 さらに、被告らは、このように、原告サイトとまぎらわしい被告サイトを作成しながら、被告サイトが原告サイトとは関連するものではないことを参加者に明らかにする措置をとらなかった。
 被告らの上記各行為(以下「被告行為@」という。)は、いずれも不法行為を構成する。
b 被告らは、被告サイトにおいて、被告らのキャラクターを万能に設定したり、共存し得ないキャラクターを安易に共存させる等して、原告サイトのゲームの世界観を無茶苦茶に毀損し、また、本来秘匿しておかなければならない原告サイトのシナリオに関する情報(原告サイト内の架空の高校「白峰学院」の母体である架空の財閥系グループ会社「白峰グループ」において、遺伝子工学やクローン技術などを用いた動物実験を行い、自然界に存在する動物を本来とは異なる姿に変えてしまうような研究を行っているというもの。同情報は、本来であれば、原告サイトの第2期において明かされる予定のものであった。)を漏らした。
 被告サイトの参加者は原告サイトの参加者が大半であり、この参加者は、原告サイトと被告サイトを明確に分別していなかったことから、被告サイトの安易で整合性がとれない内容に接し、原告サイトに失望し、原告サイトに対する批判をするようになった。また、原告サイトにおいては、ちりばめられた情報からプレイヤー自身が謎を解いていくことがゲームの醍醐味となっており、原告サイトの上記情報を漏らすことは、原告サイトに甚大な被害を及ぼす。
 被告らの上記各行為(以下「被告行為A」という。)は、いずれも不法行為を構成する。
c 被告らは、原告サイト内の掲示板やチャットルームにおいて、原告サイトの参加者に対し、被告サイトのイベントを告知して、被告サイトへの参加者を集めた。
 被告らの上記行為(以下「被告行為B」という。)は、不法行為を構成する。
d 原告は、平成18年6月24日、被告らに対して、被告サイトを閉鎖するよう申し入れたところ、被告らは、同月27日、被告サイトの参加者に対し、「原告より、海賊版であり、盗作であり、これ以上のイベントを進めるのは認めないと、法的手段をもってでも止めると言われ、私としても、そう言われては諦めるしかありませんでした。皆様に迷惑をお掛けしました事、迷惑を掛ける訳にはいかない事を踏まえまして、責任をもって、白ノ蓮を閉鎖させて頂きます。」と記載したメール(以下「本件メール」という。)を送信した。このため、本件メールを受け取った被告サイトの参加者は、原告を非難するメールを原告に数通送信してきた。
 被告らが本件メールを送信した行為(以下「被告行為C」という。)は、原告の社会的信用を低下させ、原告の名誉を毀損するものであり、不法行為を構成する。
(被告らの認否)
 原告が原告サイトを運営していること、被告らが、原告サイトにプレイヤーとして参加していたことは認める。
 原告主張に係る複製権侵害、不法行為の成否については否認する。
 被告Y1は、平成17年、原告に対し、原告サイトにおける同被告のキャラクターを主人公にしたイベントを開催したいと申し出たところ、原告は、原告サイトのパロディとして被告サイトの開設を許諾したものである。
(2) 争点(2)(損害)について
(原告の主張)
ア 原告が、被告らの前記(1)イ(イ)の行為により被った精神的苦痛を慰謝するには、金200万円が相当である。
 また、被告らの前記(1)イの行為により、原告は、平成18年5月から同年6月までの間、イラストや漫画執筆の仕事を行えなくなった。その逸失利益は、金300万円である。
 さらに、被告らの前記(1)イの行為により、原告サイトの有料会員数が減少するとともに、原告は、小説としての出版を予定していた「里見学園八剣伝」の出版を断念せざるを得なくなった。その逸失利益は、金100万円である。
イ このように、原告は、被告らの前記(1)イの行為により、合計金600万円の損害を被ったが、原告は、被告らそれぞれに対し、各金300万円の損害金の支払を求める。
(被告らの認否)
 争う。
第3 当裁判所の判断
1 事実認定
 前記争いのない事実等、証拠(甲1ないし4)並びに弁論の全趣旨によれば次の各事実が認められる。
(1) 原告は、平成17年4月ころ、原告サイトを開設し、以降、原告サイトを運営している。
 原告サイトの構造は、架空の高校である里見学園を舞台として、原告により設定されたシナリオの下に、原告サイトに参加した者が、一定のルールの範囲内で、自ら上記里見学園の生徒であるキャラクターを設定し、そのキャラクターとして、原告サイト内に設置された掲示板やチャットルームなどで他のプレイヤーとコミュニケーションをとっていくというものである。
 原告サイトの名称は、「里見学園八剣伝」であり、原告サイト上には、「里見学園八剣伝」や「里見学園」の記載がある。また、原告サイトに設置されたチャットルームには、「里見スクエアA B」、「空き教室」、「屋上」、「第2図書館」、「体育館裏」等の表題のものがある。
 原告は、「X1」という名称を自らを示すハンドルネームとして用いていた。
(2) 被告らは、原告サイトにプレイヤーとして参加していたところ、Y1は、原告に対し、同被告の登録したキャラクターである「Z」を主人公にしたパロディ・イベント(サイト)の開設を申し出た。原告サイトのようなゲームサイトにおいては、プレイヤーが登録したキャラクターを主とし、当該ゲームの設定環境を利用して、オリジナルのゲームシナリオとは独立した独自のストーリーを展開するパロディ・イベント(サイト)が開設される場合があり、原告としても、当該パロディ・イベントの具体的内容は把握していなかったものの、その開設を許諾した。
 そこで、被告らは、平成18年5月ころ、原告サイトのパロディ版として被告サイトを開設した。
 被告サイトの構造は、架空の高校である里見学園を舞台として、被告らにより設定されたシナリオの下に、被告サイトに参加した者が、一定のルールの範囲内で、自ら上記里見学園の生徒であるキャラクターを設定し、そのキャラクターとして、被告サイト内に設置された掲示板やチャットルームなどで他のプレイヤーとコミュニケーションを形成していくというものである。
 被告サイトの名称は、「白ノ蓮」であり、Y1自身を示すハンドルネームは、「D」である。被告サイトには、「ここは、D個人イベント用PBWです。里見生徒の皆様が居ますがパロディであり里見本シナリオとは一切関係ありません」、「此処は個人的なイベント場です。」、「里見学園八剣伝の管理人の方に決して質問等はしないで下さい」、「此処は里見の世界観を使った完全パロディの物語です」、「此処で起きた出来事等は、里見では話さない様にまたPC達は完全に忘れてる様にして下さい」、「向こうとコチラの情報は迷惑となりますのでごちゃ混ぜに通さない様お願いします」、「*Specialthanks!*組織メンバーの皆様及び、その親御様PBW:里見学園八剣伝及び、参加して下さった皆様」等の記載がある。また、被告サイトに設置されたチャットルームには、「スクエア」、「空き教室」、「丘」、「裏路地」等の表題のものがある。
(3) 原告は、被告サイトが原告サイトを模倣したもので、被告サイトの存在は原告サイトの運営に支障を来すものと考え、原告サイトのスタッフである「E」(ハンドルネーム)を通じて、平成18年6月24日午後2時52分、Y1に対し、被告サイトを閉鎖することを求めるメールを送信した。同メールには、「この度は、貴殿が主催されていますイベントについてお話がありメールいたしました。単刀直入に申し上げます。即刻、主催されているイベントの中止を要請いたします。そのイベントは、我々、製作者側の立場からして到底、許可できるものではありません。加え、こちらのサイト運営に影響が出ております。里見のサイトやコミュニティを使い、イベントの告知や勧誘は、マクドナルドの店の前で、モスバーガーのクーポン券を配るのと同じ位のマナー違反です。尚、メッセンジャーなどを使い、『里見学園の裏イベント』というような他の参加者に誤解を招かせる行為は、詐称ともいえます。実際に、そちらのイベントを我々、製作者側が容認したイベントと勘違いされていらっしゃる方がいらっしゃいました。この行為は、営業妨害に該当するものであり、即イベントの中止が見られぬ場合、法的手段を足らざるを得ません。PBWを作りたいのであれば、我々の作ったコミュニティを使わず、ご自分でオリジナルの物を作り、ご自分でコミュニティを作って下さい。ご自分のサイトや、リンク集など集客の場は幾らでもあるはずです。」との記載がある。
 上記メールを受信したY1は、同日午後10時54分、原告サイト管理者に対して、被告サイトの閉鎖を拒む旨のメールを送信したが、その後、原告から上記と同様のメールが更に送信されたこともあって、被告サイトを閉鎖することにし、同月27日午後8時41分、被告サイトを閉鎖する旨のメール(本件メール)を、被告サイトの参加者等に送信した。本件メールには、「皆様、白ノに来て頂き有り難うございましたこの度、これ以上の運営は困難と考え白ノ蓮は閉鎖致します事を決定致しました少しの間でしたが、大変楽しい思いをさせて頂きました自分の力が至らなかった事、皆様にご迷惑をおかけしましたこと心より深くお詫び申し上げます白ノの事でありますが海賊版であり、盗作でありこれ以上のイベントを進めるのは認めないと法的手段をもってでも止めると言われ私としても、そう言われては諦めるしかありませんでした皆様に迷惑をお掛けしました事、迷惑を掛ける訳にいかない事を踏まえまして責任もって、白ノを閉鎖させて頂きます」との記載がある。
2 争点(1)(不法行為の成否)について
(1) 複製権侵害の有無について
 前記1(1)及び(2)のとおり、原告サイトには本件原告記載があり、被告サイト上には本件被告記載がある。
 そこで、被告らが被告サイト上に本件被告記載を掲載したことが、本件原告記載を複製したものとして、原告の著作物に対する複製権侵害となるか否かについて、検討する(なお、原告は、原告サイト上のその他の記載についての著作権侵害を主張するものではない。)。
ア 著作権法による保護の対象となる著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」であることが必要であり、「創作的に表現したもの」というためには、当該作品が、厳密な意味で、独創性の発揮されたものであることまでは求められないが、作成者の何らかの個性が表現されているという意味で創作性があることが必要とされるところ、文章表現による作品において、ごく短かい表現、又は平凡で、ありふれた表現については、作成者の個性が現れておらず、創作的に表現されたものということはできない。
 以上を前提に、本件原告記載(「里見学園八剣伝」、「里見学園」、「スクエア」及び「空き教室」)の創作性の有無について検討するに、本件原告記載は、いずれも、一単語又は二、三の単語を組み合わせたごく短い表現であり、かつ、平凡で、ありふれた表現であるから、創作性が認められないことは明らかである。
 なお、仮に、本件原告記載中の「里見学園八剣伝」及び「里見学園」の各記載に何らかの創作性があるものと解しても、原告は、前記1(2)で認定したとおり、被告らに対し、「里見学園八剣伝」という名称の原告サイトのパロディ・イベント(サイト)の開設を許諾したものであるから、被告サイトにおける上記各記載の使用が、複製権の侵害となるものでないことも明らかである。
イ したがって、原告の複製権侵害に係る主張は理由がない。
(2) 一般不法行為の成否について
ア 被告行為@について
(ア) まず、被告行為@のうち、被告らが原告サイトの内容ないし構造を模倣した被告サイトを開設したという点について検討するに、前記1で認定したとおり、原告サイト及び被告サイトとも、架空の高校である里見学園を舞台に、ウェブサイトに参加した者が、一定のルールの範囲内で、自ら上記里見学園の生徒であるキャラクターを設定し、そのキャラクターとして、ウェブサイト内に設置された掲示板やチャットルームなどで他のプレイヤーとコミュニケーションをとっていくという構造のサイトと認められる。そして、被告らが、被告サイトにおいて、上記構造を採用したのは、原告の許諾を受けて、原告サイトのパロディ版という趣旨で被告サイトを開設したためである。
 そうすると、原告サイト上の具体的表現と同一ないし類似の表現を使用する場合には別途著作権などの侵害が考え得るとしても、そうではなく、単に、原告サイトの上記のような構造と同様の構造のウェブサイトを開設することは、ことさら原告に損害を与えることを目的としたり、そのような態様で行うといった特段の事情が存在しない限り、不法行為を構成するものではないというべきである。そして、本件においては、被告らが原告サイトの上記構造と同様の構造の被告サイトを開設することが不法行為を構成するといえるまでの特段の事情の存在を認めることはできない。
 したがって、被告らが、原告サイトの上記構造と同様の構造の被告サイトを開設することは不法行為を構成するものではなく、この点に関する原告の主張は理由がない。
(イ) 次に、被告行為@のうち、被告らが原告サイトのシナリオを模倣したという点については、必ずしもその内容が明確でない上、本件全証拠によるも、同事実を認めるに足りないから、この点に関する原告の主張は理由がない。
(ウ) さらに、被告行為@のうち、被告サイトには、原告サイトとは関連するものでない旨の明記がないという点については、前記1(2)で認定した被告サイトの記載内容からすれば、被告サイトにおいては、被告サイトが原告サイトのパロディであって、原告サイトとは直接関連しないY1個人のものである旨が明記されているというべきであるから、この点に関する原告の主張は理由がない。
イ 被告行為Aについて
(ア) まず、被告行為Aのうち、被告サイトにおいて、被告らのキャラクターを万能に設定し、共存し得ないキャラクターを安易に共存させたという点について、原告は、原告サイトの参加者の多くが、被告サイトと原告サイトとを混同し、それらの者が、原告サイトにおける内容と整合性のとれない被告サイトの内容に接して、原告サイトに失望したり、同サイトを批判したりしている旨主張する。
 しかし、被告らが、原告の許諾を受けて原告サイトのパロディとして自ら開設した被告サイトにおいて、同サイトに登場させるキャラクターの性質や能力を設定することは、それが原告に損害を与えるような目的、態様において行われるといった事情がないのであれば、原則として、自由になし得ることであると解される。そして、被告らの前記行為について、このような事情を認めるに足りる証拠はないから、被告らの前記行為が不法行為を構成するということはできない。
 また、原告は、被告サイトにおいては、前記1(2)のとおり、被告サイトが原告サイトのパロディであって同サイトとは直接関連しないものであることが明記されているのであるから、仮に、被告サイトと原告サイトとを混同した参加者がいたとしても、それは、被告らの前記行為に基づくものということはできない。
 したがって、原告のこの点に関する主張はいずれも理由がない。
(イ) 次に、被告行為Aのうち、本来秘匿しておかなければならない原告サイトのシナリオに関する情報を漏らしたという点については、本件全証拠によっても、同事実を認めるに足りないから、原告のこの点に関する主張は理由がない。
ウ 被告行為Bについて
 ウェブサイトの掲示板やチャットルーム等に、他のウェブサイトの広告を書き込むことは、当該ウェブサイトにおいて、そのような書き込みが明確に禁止されているか、あるいは、当該書き込みの内容が社会的相当性を逸脱している等の特段の事情のない限り、不法行為を構成することはないというべきであるところ、本件証拠上、上記のような特段の事情は認められないから、被告行為Bが不法行為を構成するということはできない。
したがって、原告のこの点に関する主張は理由がない。
エ 被告行為Cについて
 本件メールの記載内容及び本件メールを送信するに至った事情は、前記1で認定したとおりであり、本件メールのうち、原告が違法として指摘する部分は、被告サイトを閉鎖するに至った理由を事実のとおり記載したものであるところ、その表現内容及び表現方法からすれば、本件メールが原告の社会的信用を低下させたり、名誉を毀損する性質のものでないことが明らかである。
したがって、被告行為Cが不法行為を構成するということはできず、
 原告のこの点に関する主張は理由がない。
第4 結論
 以上のとおりであり、その余の点について判断するまでもなく、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判長裁判官 清水節
 裁判官 山田真紀
 裁判官 佐野信
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