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【事件名】次世代インターホンシステムの著作権侵害事件 【年月日】平成18年2月10日 東京地裁 平成16年(ワ)第14468号 損害賠償等請求事件 (口頭弁論終結日 平成17年12月2日) 判決 原告 ネツトブレーン株式会社 原告補助参加人 A 原告補助参加人 B 原告補助参加人 C 原告補助参加人3名訴訟代理人弁護士 佐々木亮 同 梅田和尊 被告 松下電器産業株式会社 同訴訟代理人弁護士 桃尾重明 同 内藤順也 同 向宣明 同訴訟復代理人弁護士 大堀徳人 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は、参加によって生じた費用は原告補助参加人らの負担とし、その余は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、原告に対し、金5億円及びこれに対する平成15年12月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、別紙被告著作物目録記載の著作物を使用し、又は第三者にその使用を許諾してはならない。 第2 事案の概要 1 前提事実 (1) 当事者 原告は、コンピューター及び関連機器の設計、導入、運用に関するコンサルティング及び販売並びにコンピューターのソフトウェアの輸入、開発及び販売等を目的とする株式会社である。 被告は、電気・通信・電子及び照明機械器具の製造、販売等を目的とする株式会社である。 (争いのない事実) (2) 本件システム ア 被告は、従来のインターホンを機能高度化した次世代インターホンシステム(以下「本件システム」という。)の開発を企画した。 イ 本件システムは、大別すると、@各住戸に設置される端末、A各マンションの共同玄関、管理人室等に設置される機器類、Bリモートコントロールセンターに設置される機器類から成り、これらがインターネットで接続され、多くのソフトウェアを利用して運用される。 ウ 被告は、システム又は端末機名を「Addetto」として本件システムの販売を開始し、平成14年11月に竣工した東京ツインパークスを初めとする別紙「共通ライブラリ入れ替え実施日」1ないし24記載のマンション等に本件システムを販売した。なお、他のマンション等に本件システムが販売されたと認めるに足りる証拠はない。 (争いのない事実、甲4、19、乙29) (3) 共通ライブラリ ア 本件使用許諾契約 被告は、平成14年10月ころ、原告との間で、本件システムのM-Navi端末ソフトウェアの共通ライブラリ部分(以下「原告ライブラリ」という。)につき、以下の内容の使用許諾契約(以下「本件使用許諾契約」という。)を締結した(甲6)。 【使用許諾契約書】 第1条 ライセンス料 …被告は原告に、別途使用許諾契約条件書に基づき所定のライセンス料を支払うものとします。… 第2条 ライセンスの許諾 1 使用許諾 本契約書は原告は被告に以下の権利を許諾します。 被告は、M-Navi端末に、原告ライブラリのコピーをインストールして使用することができます。コピーし使用する端末の台数は1ライセンスにつき1台とします。 2 再頒布 被告は、原告ライブラリをコピーをしたM-Naviハードウェアを販売することが出来ます。… 第6条 著作権・無体財産権 原告ライブラリ…、付属のマニュアル等文書、および原告ライブラリの複製物についての権限及び著作権は、原告が有するもので、原告ライブラリは著作権法及び国際条約の規定によって保護されています。従って、被告は原告ライブラリを他の著作物と同様に扱わなければなりません。ならびに、被告の社内における開発・テスト・修理・交換・バックアップ用の目的以外のコピー作成は出来ません。… 第14条 有効期限 本契約の有効期限は2002年4月1日から2003年3月31日までとします。但し、期間満了の3ヶ月前までに原告および被告のいずれからも同契約の内容の変更、または同契約の終了、もしくは修正する由の申し出がないときは、同契約は同一条件で更に1年間継続するものとし、以後もこの例によるものとします。 【使用許諾契約条件書】 (1) ライセンスの許諾 1 原告は、原告ライブラリのライセンスを被告に許諾し、被告は、被告の製作するM-Navi端末に原告ライブラリをインストール後、販売、提供するため、原告にライセンス料を支払うものとします。 原告ライブラリは、原告が被告に使用許諾するものであり、原告ライブラリの所有権・著作権・無体財産権等の権利は原告に帰属します。… (2) ライセンス料 被告は原告に下記のライセンス料を支払うものとします。 M-Navi端末1台あたり @3、000円 のライセンス料 被告は原告に、上記のライセンス料を出荷数に応じて支払うことにします。… (争いのない事実) イ 原告ライブラリ (ア) 証拠(甲6、73、82、乙27ないし29)によれば、原告ライブラリの構成項目は、別紙被告著作物目録2記載のとおりであること、原告ライブラリに実装されている共通関数には、インターネットから取得し得るものやLinux標準関数等から取得可能なものも用いられているが、原告が独自に開発した本件システム端末固有の関数も使用し、これら関数群を取りまとめて原告ライブラリが作成されていることが認められ、さらに、本件使用許諾契約において、原告ライブラリの著作権が原告に帰属することが合意されていることからすると、原告ライブラリはプログラムの著作物として保護されるものと認めるべきである。 (イ) 被告は、別紙「共通ライブラリ入れ替え実施日」1ないし10記載のマンション等に原告ライブラリを導入した。 (争いのない事実) (ウ) 原告は、別紙「共通ライブラリ入れ替え実施日」11ないし24記載のマンション等及びその後に竣工したマンション等にも原告ライブラリが導入されている旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。 ウ 被告ライブラリ 被告は、平成16年1月上旬ころ、日本シー・エー・ディー株式会社(以下「日本CAD」という。)に対し、原告ライブラリに代替すべきライブラリの開発を依頼した。これを受けて、日本CADは、同年2月中旬から3月上旬にかけて、代替ライブラリの開発を行い、被告が著作権を有する本件システムのアプリケーションソフトウェア(以下「本件アプリケーション」という。)との結合テスト及び必要な修正等を行った上で、被告に納品した(以下、この代替ライブラリを「被告ライブラリ」という。)。被告は、同年3月中旬以降、本件システムを設置したすべてのマンション等につき、被告ライブラリを導入し、既に原告ライブラリを導入したマンション等については被告ライブラリと入れ替えた(なお、別紙「共通ライブラリ入れ替え実施日」2記載の新見市への被告ライブラリ導入日は「2003年3月15日」とされているが、「2004年3月15日」の明らかな誤記と認められる。)。 したがって、被告ライブラリが、別紙被告著作物目録1のうちの共通ライブラリ部分に該当する。 (乙27ないし29、弁論の全趣旨) エ 他のシステムでの使用 原告は、別紙被告著作物目録2で、被告が他の名称で使用しているシステムにインストールされている共通ライブラリ部分の使用差止等を求めているが、前記ウと同様に、被告ライブラリが、別紙被告著作物目録2の共通ライブラリ部分に該当する。 原告は、被告が他の名称で使用しているシステムを具体的に摘示していないことなどからすると、別紙被告著作物目録2記載の被告ライブラリの使用差止等請求は、侵害予防請求であると考えられるところ、上記ウの事実によれば、被告が、今後、他の名称で売り出す次世代インターホンシステムに被告ライブラリを組み込むおそれが認められる。 (4) 原告運用保守ソフト ア 原告は、被告は別紙被告著作物目録1のうち本件システムに関する運用・保守機能を備えたソフトウェア部分(以下「被告運用保守ソフト」という。)を使用していると主張している。さらに、原告は、別紙被告著作物目録3で、被告が他の名称で使用しているシステムにインストールされている被告運用保守ソフトの使用差止等を求めている。 イ 原告は、被告運用保守ソフトの使用差止等を求める前提として、原告が著作権を有する運用保守ソフトの内容を主張すべきところ、原告は、後記本件保守契約に基づき原告が運用保守を行っていた際に使用していた運用保守ソフト(以下「原告運用保守ソフト」という。)の著作権に基づく請求である旨主張し、辛うじて請求の特定は行っているが、請求原因レベルで必要な原告運用保守ソフトをファイル名で特定し、かつ、その内容を開示することをしていない。 その結果、原告運用保守ソフトが著作物性を有するか否かの点の判断ができないし、原告運用保守ソフトと被告運用保守ソフトとの類似性の判断を行うこともできない。 (5) 本件保守契約 原告は、平成14年12月27日ころ、被告との間で、本件システムの保守業務について、以下の内容の保守契約を締結した(甲7の1。以下「本件保守契約」という。)。 【保守契約書】 第4条(本件システムの保守業務) 原告は、以下に示す本件システムの保守業務を行う。 @ 本件システムに係る障害発生時の連絡受付 原告は、本件システムに係る被告または顧客…から連絡のあった問題を識別し、解決できるよう電話・FAX・Eメール・リモートメンテナンスによる本件システムの保守作業…を行う。なお、電話・FAX・Eメール・リモートメンテナンスによる保守作業の受付は「要綱6」の保守業務受付時間に行うものとする。… 第6条(本件システムの保守業務の保守料金) 被告が原告に支払う本件システムの保守業務の保守料金は「要綱8」に記載の通りとする。 第14条(有効期間) 本件保守契約の有効期間は、「要綱10」に記載の通りとする。 【要綱】 6 保守業務受付時間 24時間/日 365日/年(但し被告が定める日を除く) 8 保守料金 月額 5、000、000円(消費税別) 10 有効期間 平成14年12月1日〜平成15年11月30日 但し、期間満了の1カ月前までに被告原告いずれからも本件保守契約を終了もしくは修正の意思表示がない場合、原告から被告に対し文書で通知することにより同契約は1年間延長され、以後も同様とする。但しその通知の際、実態に合わせた業務内容、体制、費用などの見直しについて、被告原告協議するものとする。 (争いのない事実) (6) 本件一括購入契約 原告と被告は、平成15年8月15日、原告ライブラリ2866ライブラリにつき、その使用権を対価840万円(1ライブラリ当たり2930円)で被告が一括購入する旨の「M-NAVI ライブラリー使用許諾一括購入に関する覚書」を締結した。同年9月18日には、原告ライブラリ348ライブラリが同一条件でこれに追加された(以下、これらを併せて「本件一括購入契約」という。)。 (争いのない事実) (7) 本件保守契約の終了 原告と被告は、本件保守契約の更新に当たり、主として更新後の保守料金額につき協議したが、合意に至らなかった。このため、被告は、原告に対し、平成15年10月29日、同年11月30日をもって本件保守契約を終了させる旨の意思表示をした。 (争いのない事実) 2 争点 (1) 請求の概要 本件における第1の請求は、本件システムの開発・運用に関する原告・被告間の後記本件事業スキームの合意に基づき、被告は、原告が本件システムの開発・運用に当たり費やした各種開発費・作業費等を回収するまで本件事業スキームを実現し、原告による開発費等の回収を妨害しない債務を負うにもかかわらず、被告が本件保守契約を破棄して原告の開発費等の回収を妨害するなどしたとして、債務不履行(本件事業スキームの合意違反)又は不法行為に基づく損害賠償(一部請求)及び遅延損害金の支払を求めたものである。 本件における第2の請求は、被告が被告ライブラリ及び被告運用保守ソフトを使用するなどして原告が原告ライブラリ及び原告運用保守ソフトにつき有する著作権(複製権又は翻案権)を侵害していると主張して、上記原告著作権に基づき、被告ライブラリ(別紙被告著作物目録1の一部及び同目録2)及び被告運用保守ソフト(別紙被告著作物目録1の一部及び同目録3)の使用差止等を求めるとともに、被告ライブラリ(原告ライブラリそのものの使用を含む。)及び被告運用保守ソフト(原告運用保守ソフトそのものの使用を含む。)の使用が不法行為又は債務不履行(本件事業スキームの合意違反)に当たるとして、損害賠償(一部請求)及び遅延損害金の支払を求め、さらに、被告が後記本件ノウハウを使用する行為は不法行為又は債務不履行(本件事業スキームの合意違反)に当たると主張して、損害賠償(一部請求)及び遅延損害金の支払を求めた事案である。 (2) 被告運用保守ソフトに関する請求 本件における第2の請求のうち、被告運用保守ソフト(別紙被告著作物目録1の一部及び同目録3)の使用差止等を求める部分、並びに被告運用保守ソフトの使用等に基づく不法行為又は債務不履行(本件事業スキームの合意違反)の損害賠償請求は、前提事実(4)のとおり、原告運用保守ソフトが著作物性を有するか否かの点の判断ができないし、原告運用保守ソフトと被告運用保守ソフトとの類似性の判断を行うこともできないから、その余の点について判断するまでもなく、理由がない(なお、原告は、別紙被告著作物目録1のかっこ内において、被告運用保守ソフトの使用差止等に加え、印刷物等の差止等を求めているが、この請求は、侵害の停止又は予防に必要な措置として請求されているものと認められる。)。 (3) その余の請求についての争点 原告のその余の請求についての争点は、次のとおりである。 ア 本件事業スキームの合意の成否 イ 被告ライブラリと原告ライブラリとの類似性の有無及び依拠の有無 ウ 本件ノウハウの使用の有無及び侵害態様 エ 損害 3 争点に関する当事者の主張 (1) 本件事業スキームの合意の成否 ア 原告の主張 (ア) 本件事業スキームの合意 a 原告と被告とは、平成12年8月ころ、本件システムの開発・運用に関する原告・被告間の事業スキームとして、以下の内容を合意した(以下、この事業スキームを「本件事業スキーム」という。)。その結果、被告は、原告に対し、原告が本件システム端末の新規開発費、本件システムの初期開発費等を回収するまで、本件事業スキームを実現し、原告による前記開発費等の回収を妨害しない債務を負担した。 @ 本件システム端末の新規開発費は原告が負担することとし、この費用は端末が販売されるごとのロイヤルティで回収すること。本件システム端末製造に関わる統括責任は原告にあること。 A 初期の段階で原告の資金ひっ迫が予想されることから、原告の資本増強に被告が協力すること。 B 運用・保守機能は原告の負担で開発することとし、運用・保守機能に関わる開発費、システムの基本設計費等については、リモートによる運用・保守業務を原告が担当することにより、将来稼動端末数が増えた段階の収益で回収すること。 C 営業は、多くのマンション商材を有する被告が担当することとし、原告は全面的に協力すること。 D アプリケーション開発は、被告から原告への請負契約とすること。 E 稼動端末数が増えた段階でのコンテンツ系ビジネスへの展開等は被告が行うこと。 b 原告と被告は、本件事業スキームのうち@について、同年10月ころ、ロイヤルティ単価を本件システム端末1台当たり5000円とし、1万台を上限とすることを合意した。 c 原告と被告は、本件事業スキームのうちBについて、平成13年8月ころ、本件システムのリモートによる運用・保守業務について、契約期間を最低でも3年以上とすること、本件システム端末1台当たりの保守費は月額500円とすることを合意した。 d 原告と被告は、本件事業スキームのうち@について、平成14年10月ころ、本件システム端末製造メーカーの変更等の事情を踏まえてその内容を変更することとし、本件使用許諾契約を締結した。 e 原告と被告は、本件事業スキームのうちBについて、平成14年12月27日ころ、本件システム端末の販売状況等の事情を踏まえてその内容を変更することとし、本件保守契約を締結した。 (イ) 債務不履行 被告は、前記のとおり平成15年10月29日に本件保守契約を更新しない旨を通知し、原告を本件事業スキームから排除した。 (ウ) 不法行為 被告は、本件事業スキームが破壊されれば原告が損害を被ることを知りながら、前記のとおり平成15年10月29日に本件保守契約を更新しない旨を通知し、原告を本件事業スキームから排除した。 イ 被告の主張 (ア) 原告の主張(ア)(本件事業スキームの合意)aないしcは否認する。同dのうち、本件使用許諾契約が締結されたことは認め、その余は否認する。同eのうち、本件保守契約が締結されたことは認め、その余は否認する。 (イ) 同(イ)(債務不履行)及び(ウ)(不法行為)は否認する。 (2) 被告ライブラリと原告ライブラリとの類似性の有無及び依拠の有無、並びに本件ノウハウの使用の有無及び侵害態様 ア 原告の主張 (ア) 原告の被侵害利益 a 原告ライブラリの著作権 前提事実(3)イのとおり、原告は、原告ライブラリにつき、著作権を有する。 b 本件ノウハウ 原告は、本件システムの基本設計(本件システム端末を含む。)、システム全般に対するコンサルティング業務、端末製造メーカー変更に伴う引継作業及びその後の端末ハードウェア不具合に関する各種調査作業、運用・保守機能の開発作業等を行っており、これによる本件システム全般に関する蓄積された以下の内容のノウハウを有する(以下、このノウハウを「本件ノウハウ」という。)。 @ システム構築に関するもの ・ 大規模システム構築に関するノウハウ ・ リアルタイム処理に関するノウハウ ・ データベース構成に関するノウハウ ・ 分散処理(負荷分散、機能分散)に関するノウハウ ・ 高信頼度構成に関するノウハウ ・ システム最適化に関するノウハウ ・ 運用・保守手法に関するノウハウ A 通信に関するもの ・ 24時間稼動システムに関するノウハウ ・ トラフィック制御に関するノウハウ ・ IP電話システム構築に関するノウハウ ・ LAN構築に関するノウハウ ・ リモートによる制御技術に関するノウハウ ・ リモートによる運用・保守に関するノウハウ B 海外メーカーとの交渉ノウハウ (イ) 原告ライブラリについての複製権又は翻案権侵害 被告ライブラリは、原告ライブラリの違法なリバースエンジニアリングにより作成されたものであり、原告ライブラリに類似し、原告ライブラリに依拠して作成されたものであるから、原告が原告ライブラリにつき有する複製権又は翻案権を侵害する。 (ウ) 本件ノウハウの使用 被告は、別紙「共通ライブラリ入れ替え実施日」1ないし24記載のマンション等及びその後に竣工したマンション等に本件システムを設置し、本件ノウハウを使用している。 (エ) 不法行為 被告は、被告ライブラリが原告の著作権を侵害して作成されたものであることを知りながら、被告ライブラリをマンション等に導入し、また、その使用権原がないことを知りながら、本件ノウハウを使用している。 (オ) 債務不履行 被告が被告ライブラリを導入する行為及び本件ノウハウを使用する行為は、本件事業スキームの合意に違反する行為である。 (カ) 使用権原 a 認否 後記被告の主張(カ)a(有効期間内の出荷)は、原告において明らかに争わない。 b 本件使用許諾契約の錯誤無効 (a) 原告は、本件使用許諾契約の締結に当たり、本件事業スキームの下で、引き続き本件システムの運用・保守業務に係る受託費とライセンス料により本件システム開発費等が回収されることを前提とした。 (b) 被告による本件保守契約の破棄は、この前提を覆す行為であり、本件使用許諾契約締結についての原告の意思表示には、法律行為の要素に錯誤があり、無効である。 c 本件使用許諾契約の詐欺取消し (a) 前記b(a)に同じ。 (b) 原告は、被告の上記詐欺行為により、本件使用許諾契約を締結する旨の意思表示をした。 (c) 原告は、被告に対し、平成15年12月3日、本件使用許諾契約を詐欺を理由に取り消す旨の意思表示をした。 d 本件一括購入契約の詐欺取消し (a) 被告は、本件保守契約を破棄する意図を秘して、本件一括購入契約を締結したのであり、かかる被告の行為は、原告をして錯誤に陥らしめる詐欺行為である。 (b) 原告は、被告の上記詐欺行為により、本件一括購入契約を締結する旨の意思表示をした。 (c) 原告は、被告に対し、平成15年12月3日、本件一括購入契約を詐欺を理由に取り消す旨の意思表示をした。 イ 被告の主張 (ア) 原告の主張(ア)b(本件ノウハウ)は否認する。 (イ) 同(イ)(複製権侵害等)は否認する。 被告は、被告ライブラリを作成するに当たり、原告ライブラリのオブジェクトコードについては一切内容の解析を行っていない。被告は、被告が著作権を有する本件アプリケーションと原告ライブラリとのリンクを外し、基本的に本件アプリケーションが必要とする関数を揃えようとしてインターフェース情報の確認を行ったにとどまり、原告ライブラリ全体に置き換え得るものを実装しようとしたものではない。また、被告ライブラリの作成に当たり、原告ライブラリに含まれる関数の一部にいくつかの引数を与えて処理結果を確認しているが、インターフェース条件やどのような計算結果が得られるかといった情報は、ライブラリの利用者に製品仕様情報として当然開示されるべき情報である。 (ウ) 同(ウ)(本件ノウハウの使用)のうち、被告は、別紙「共通ライブラリ入れ替え実施日」1ないし24記載のマンション等に本件システムを設置したことは認め、その余は否認する。 (エ) 同(エ)(不法行為)は否認する。 (オ) 同(オ)(債務不履行)は否認する。 (カ) 使用権原 a 別紙「共通ライブラリ入れ替え実施日」1ないし10記載のマンション等に導入された原告ライブラリをインストールしたM-Navi端末等は、本件使用許諾契約の更新後の有効期間内である平成16年3月31日までに出荷された。 b 原告の主張(カ)b(本件使用許諾契約の錯誤無効)は否認する。 同c(本件使用許諾契約の詐欺取消し)のうち、(c)(取消しの意思表示)は認め、その余は否認する。 同d(本件一括購入契約の詐欺取消し)のうち、(c)(取消しの意思表示)は認め、その余は否認する。 (3) 損害 ア 原告の主張 原告は、@本件事業スキームの合意違反の債務不履行又は不法行為、並びにA原告ライブラリの著作権侵害及び本件ノウハウの無断使用の不法行為又は債務不履行により、次の損害を被った。原告は、その一部請求として、5億円の支払を求める。 (ア) 回収不能な開発費及び作業費 1億4927万9000円 原告の平成9年9月期から平成16年9月期までの決算概況は、以下のとおりである。 │ │売 上 高 │経 常 損 益 │ │第6期(平成9年9月期) │76,699,000 │ 3,106,000 │ │第7期(平成10年9月期) │74,658,000 │ 1,328,000 │ │第8期(平成11年9月期) │109,046,000 │ 5,607,000 │ │第9期(平成12年9月期) │134,321,000 │ ▲7,340,000 │ │第10期(平成13年9月期) │99,535,000 │ ▲44,595,000 │ │第11期(平成14年9月期) │171,754,000 │ ▲823,000 │ │第12期(平成15年9月期) │126,848,000 │ ▲20,856,000 │ │第13期(平成16年9月期) │107,051,000 │ ▲75,665,000 │ │第9期〜第13期までの経常損失の合計 │▲149,279,000 │ (単位:円) 原告は、本件事業スキームにより負担した本件システム開発費等を回収することができず、1億4927万9000円の損害を受けた。 (イ) ライセンス料相当分の逸失利益 7466万4000円 本件事業スキームの合意が破棄されなければ、原告は、被告戦略会議「マンション・ナビゲーター・システム拡販に向けての戦略」(甲33)で提示された2万9510端末につき、8853万円のライセンス料を得ることができた(3,000円/端末×29,510端末=88,530,000円)。 既払分1386万5640円を差し引くと、7466万4000円となる。 (ウ) 本件保守契約の破棄による逸失利益 2億6000万円 本件事業スキームの合意に従い、本件保守契約が破棄されなければ、原告は、次の保守代金を得ることができた。 計画3年目 8466万円(6000円×1万4110端末) 計画4年目 1億7706万円(6000円×2万9510端末) (エ) 懲罰的慰謝料 1億2000万円 原告ライブラリの著作権、原告運用保守ソフトの著作権及び本件ノウハウの故意侵害並びに本件保守契約の破棄により、原告の精神的な苦痛は計り知れないものであり、懲罰的慰謝料を求める。 この金額には、平成16年4月以降の原告ライブラリの著作権侵害、原告運用保守ソフトの著作権侵害及び本件ノウハウの使用料相当の損害を含むものとする。 (オ) 弁護士費用 5000万円 イ 被告の主張 原告の主張は否認する。 第3 争点についての当裁判所の判断 1 本件事業スキームの合意の成否について (1) 裁判所の認定した事実 前提事実、証拠(各項に挙示したもの)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ア 被告は、平成11年11月ころ、長谷工コーポレーション(以下「長谷工」という。)から同社施工のマンションにおいて使用される次世代インターホンシステムの開発の引合いを受けたことから、本件システムの開発に関する検討を開始した。当初、被告は、グループ会社内での開発を検討したが、平成12年3月、被告の当該プロジェクト担当者であるD(以下「D」という。)が当時の原告代表取締役E(以下「E」という。)を訪れ、原告に対し、本件システムの開発の検討を依頼した。 (争いのない事実) イ 原告は、台湾メーカーとの協議を踏まえ、同年7月ころ、被告に対し「インターネットマンション確認書」(甲19)と題する書面を提出した。同書面には、「保守作業等分担」として被告が機器の障害保守を、原告がシステムのリモート定期保守及びソフトウェアの障害保守を担当すること、「想定フォーメーション」として被告が販売・設計を、原告がソフト製作・調達・保守を、台湾メーカーがハード製造を担当することが提案されているほか、「費用から見た考察」として、「開発費用に関しては、現在ISP及びPHS提供会社との間で、資金提供について交渉が可能なステータスにあります…。」、「NB社(原告)としても、ライセンス費の並用…によるソフトウェア開発も可能と考えています。」と記載されている。 これに対し、被告側からは、同月31日、Dが、Eに対し、スケジュールがタイトになっていることから遅くとも翌週には提案を詰めたいこと、コストが厳しいため共同玄関機の開発も検討を進めておいてほしいことなどを伝えるとともに、担当技術者が、Eに対し、本件システム端末は新規にハードウェアから製作するものか否かといった技術的事項を質問した。 (甲19、20、68、73、証人D(乙33を含む。以下、同じ。)) ウ 以後、長谷工向け本件システムに関する原告と被告との打合せがしばしば実施され、また、被告と長谷工との打合せにも、原告が同行するようになった。その際、EとDとの間では、原告と被告とを「事業パートナー」と称し、将来的には、被告が本件システムの営業・販売を担当し、原告は、本件システム端末の調達を行うとともに、利益を上乗せしてこれを被告に販売する形での取引に発展することが想定されていた。 (甲21の1ないし4、31の1ないし3、52、73、証人D) エ こうした原告、長谷工等との打合せ等を踏まえ、被告は、同年12月末ころ、台湾メーカーの製作による本件システム端末の試験用機を長谷工に納入した。長谷工は、これを受けて、平成13年1月9日、東芝及び被告と共同でマンション居住者向けの情報配信システムを開発したこと、平成13年度に約5000戸のシステム導入を目指すことなどを報道機関に発表した。 (争いのない事実、甲5の1及び2) オ 本件システムのプロジェクトを進めるに当たり、原告は、本件システム端末の新規開発費及び本件システムの初期開発費を支出していたが、このために財務状況がひっ迫しつつあった。また、原告と被告間の権利義務関係は曖昧なままになっていた。そこで、原告と被告は、同年2月1日、取引基本契約(乙1)を締結し、その上で、原告は、同年4月27日、被告との間で、原告が本件システムに関するシステム分析、システム設計(ハードウェア設計を含む。)、プログラミング及び結合テストの実施を請け負い、請負代金額を2000万円(税別)とする内容の請負契約(以下「本件システム設計等請負契約」という。)を締結し、同年5月15日、被告に対し、システム分析書、システム製作仕様書、プログラム(ロードモジュール)、プログラム(ソースコード)、試験項目表及び検査報告書を納品し、2100万円の支払を受けた。 (争いのない事実、甲68、乙3の1ないし5、13ないし15、17、証人D) カ 原告は、このような状況を踏まえ、被告に対し、本件システム端末等の開発、設計、製造及び販売等につき、台湾メーカーも含めた三者間契約を締結するべく「協定書」と題する書面(甲74の1)を提示した。しかし、Dは、被告の署名者として被告を代表する権限のないDの名前が記載されていたこと、及び発注開始後1年間の製造委託数量が5000台と定められていたことから、同書面に対する署名を拒否した。 そのため、原告は、同年3月29日ころ、台湾メーカーとの間で、被告を除いた二者契約として、製造委託契約を締結した。 (甲74の1及び2、乙31、証人D、原告代表者(甲68、75を含む。以下、同じ。)) キ しかし、台湾メーカーとの間で決済通貨、発注台数の確約といった契約条件の最終的な合意に至らなかったことから、被告は、同年5月ころ、本件システム端末の製造メーカーを被告と取引関係のある中島オールプリシジョン株式会社(以下「中島オール」という。)に変更することとした。原告は、これを受けて、中島オールに対し、本件システム端末の基本設計に関わる技術移転を行った。 (甲22、51の1ないし16、乙32) ク Eは、平成13年8月ころ、Dに対し、「リモートセンター保守に関して(要望)」と題する書面(甲32)を提出した。同書面には、原告の要望として、原告が基幹的なビジネスとして位置づけているのがリモートセンター構想であること、システム運転管理機構を開発した原告が直接的にリモートでの保守を行うことで、迅速確実な保守サービスを顧客に提供し得ること、設備投資、要員確保等の費用回収を考えた場合、リモートセンター体制を構築するには、長期間(最低で3年以上)での業務委託の継続が前提となることなどが提示された。 (甲32、証人D) ケ 原告は、プロジェクトを進行させるのに必要な財務基盤の確保・安定化のため、平成13年2月及び3月に合計1億円の増資を行ったが、更なる資本増強の必要から、同年9月、被告の子会社である株式会社ピンチェンジから3000万円の出資を受けた。 また、Dは、その後も原告の資金需要を満たすために、原告に対する投資を促すべくベンチャーキャピタルに働きかけるなどした。 (争いのない事実、甲26の1ないし3、27、55の1ないし3) コ 被告は、同年11月ころ、マンション「東京ツインパークス」(別紙「共通ライブラリ入れ替え実施日」1)への本件システムの導入を受注したが、これに合わせて、原告、被告及び中島オールは、原告ライブラリの使用許諾契約の締結交渉を進めた。当初、被告が中島オールを介して原告に対しライセンス料を支払う方向で調整が進められたが、現金決済とするか手形決済とするかで折り合いがつかず、最終的に、本件使用許諾契約が締結された。 (甲23の1ないし5、24の1ないし5、原告代表者) サ 被告は、平成14年4月11日、「マンション・ナビゲーター・システム 拡販に向けての戦略」と題する戦略会議を行った。その際配布された資料(甲33)には、運用・保守を原告が分担することが記載された。 同会議において、被告システム営業本部の部長F(以下「F」という。)から、リモートによる運用・保守業務につき被告グループ内での対応ができない理由について質問がされた。 (争いのない事実、甲33) シ 原告と被告は、その後、東京ツインパークスについての保守契約に関する打合せを実施したが、原告は、施主側も交えた打合せの議事録(甲34の4)において、同年7月8日の原告・被告間での事前調整において気になる点として、Fが原告がカスタマーセンター業務を行うことに何かにつけて反対し、被告グループ内で行うべきであるとの意見であること、東京ツインパークスについては原告主導とすることで納得してもらっているが、今後においては留意が必要であることなどを記載した。 また、同月22日に実施された原告と被告との打合せにおいても、Fは、保守の件についてDの後任担当者であるG及び原告代表取締役H(以下「H」という。)からのヒアリングを要望した。 Hは、同日の打合せを踏まえた同日付け被告側担当者あてメールにおいて、「初期の赤字リスクだけNB(原告)で被り、いつでもMTS殿(被告)に移管できる構造は改めて協議させて頂きたいと存じます。」、「いずれにしましてもMTS殿との連携は不可欠と認識しております。初期立上げ期の赤字部分の補填と事業が軌道にのった段階での利益配分を含めて協議させて頂ければ、柔軟な対応も可能かと存じます。」と記載した。 (甲34の4、35、36の1) ス 東京ツインパークスについての施主側との保守契約締結交渉が進展するのに合わせ、原告は、被告との間で、保守契約の締結交渉を進め、同年10月24日ころ、被告に対し、「カスタマーセンター構築とリモート保守について」(甲38の1)及び「カスタマーセンター業務委託契約骨子」(甲38の2)と題する書面を要望書として提出した。同文書には、以下の記載が含まれる。 【カスタマーセンター構築とリモート保守について】 ・ 「平成12年夏頃、松下電器殿より弊社にて開発可能かどうかの打診があり、…大枠の合意が形成された。この時点でMナビ端末の基本設計に関わる開発費は、リモート保守による月額固定の保守費で弊社は回収することの大枠の合意がなされております(その後、ロイヤルティも追加)。」 ・ 「M-Naviプロジェクトにおいて、稼動後のリモート保守サービスは、弊社の基幹的サービスとして極めて重要な位置付けとして捉えております。」 ・ 「弊社単独で上記のリモート保守及びお客様からの案内・問合せを含めた24時間365日の運用・保守体制を構築するには、これまでの開発費、設備投資、要員確保等の費用回収を考慮すると、長期間(最低でも5年間)での事業継続が前提となります。」 【カスタマーセンター業務委託契約骨子】 ・ 「@ 契約期間:最低5年間又は保守費6千万円/年(1万端末稼動時点と想定)の収入が見込めるまで。1年毎の自動更新。」 ・ 「A 契約解除条項:上記@項を満たす以前に解約する場合は、残期間の保守費相当額を甲(被告)は乙(原告)に支払う。」 (甲38の1及び2、原告代表者) セ その後も、原告と被告は、保守契約の締結に向けて、保守料金、支払条件及び有効期間の取扱いを中心に交渉を継続し、最終的に、前提事実(5)のとおり、契約期間を1年とし、期間満了の1か月前までに終了等の意思表示がない場合に更新されること(逆に言えば、1か月前までに終了等の意思表示をすれば、自由に更新を拒絶することができること)を内容とする本件保守契約を締結した。 (争いのない事実、甲39、40の1および2、41の1及び2、42、43) ソ 本件システムは、平成14年12月1日から東京ツインパークスにおいて稼動を開始したが、稼動開始直後から継続的に不具合が発生し、原告及び被告はその対応に追われることとなった。やがて、原告と被告との間で、このような不具合の調査作業費用の負担のあり方が問題となり、平成15年4月25日や同年6月ころ、費用分担の問題にとどまらず今後の運用・保守業務の体制をも協議事項とする打合せを実施したが、具体的な解決策を合意するには至らなかった。 (甲46、47、57の1ないし18、69、原告代表者) タ 原告と被告は、本件保守契約の更新に向けた交渉を開始し、平成15年10月3日実施の打合せの際、被告は、原告に対し、保守料金を1年当たり1000万円とすることで対応可能か否かを打診した。他方、原告は、この際、このプロジェクトは被告が販売及びコンテンツビジネスを、原告が開発及びカスタマーセンター業務を担当するとのビジネスフォーメーションでスタートし、原告は長期的なカスタマーセンター業務運営により発生する利益によって開発段階での経費負担や各種支援業務での経費負担を相殺していくことが確認されており、このため、開発段階での経費等については、将来的な相殺を見越し、被告に請求しない形を取ってきたことなどを説明するとともに、被告による前記打診に対しては、現体制を継続するためには合計で年間5000万円程度の売上げが必要になるとして、受諾不可能である旨を回答した。結局、この打合せにおいては、原告に対する運用・保守業務の委託を終了せざるを得ないことで双方の認識が一致した。 同月21日、原告と被告とは再び打合せの機会を持ち、被告は、前回提示された条件での受託の可否を再度原告に打診したが、原告は、改めて受諾不可能である旨回答した。 このような経過を経て、被告は、同月29日実施の打合せの際、原告に対し、本件保守契約を終了させる旨の意思表示を行った。 被告は、同年11月21日、原告に対し、本件システムの開発保守に関して専任1名の体制とすることを要請したが、原告は、同月26日、被告が指定した業務範囲全部を1名でカバーすることは到底不可能である旨回答した。 (争いのない事実、甲8ないし14、49の1及び2、乙20、原告代表者) (2) 検討 ア 以上の事実によれば、本件システムのプロジェクト立上げ当初、原告と被告の担当者レベルでは、プロジェクトが順調に展開された場合、被告が本件システムの営業・販売を担当し、原告は、本件システム端末の調達を行い、利益を上乗せしてこれを被告に販売するとともに、本件システムのリモート保守を受託するという取引に発展することがプロジェクトの方向性として想定されていたことが認められる。また、その後も、その時々の状況に応じて軌道修正しながらも、原告・被告の各担当者は上記の方向性に基づいてプロジェクトを進捗・展開させたことが認められ、本件使用許諾契約及び本件保守契約はその一環として位置づけられるということができる。 イ しかしながら、本件事業スキームの合意が成立したことを示す覚書等の文書は存在しないし、また、被告の担当者であったDは被告を代表する権限を有しなかったところ、本件事業スキームを合意するについての被告社内の決裁手続が行われたとの事情も認められない。さらに、その後の本件使用許諾契約及び本件保守契約の締結に至る経緯、とりわけ、本件保守契約の締結に至るまでは、原告が被告に対し、飽くまで要望として本件システムの運用・保守業務を受託することを提案していたこと(前記(1)ク、シ、ス)、被告は、台湾メーカーによる発注台数の確約をできないことを理由の一つとして「協定書」の締結を拒否したこと(前記(1)カ)、原告と被告は、保守契約の締結に向けて交渉を継続し、長期間での契約を望む原告の要望にもかかわらず、契約期間を1年とし、期間満了の1か月前までに終了の意思表示があれば更新されないことを内容とする本件保守契約を締結したこと(前記(1)シないしセ)にかんがみると、本件事業スキームの合意の存在を認めることはできないといわなければならない。 ウ したがって、被告が本件保守契約を破棄して原告の開発費等の回収を妨害したことが本件事業スキームの合意違反の債務不履行又は不法行為であることを理由とする原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。 2 被告ライブラリと原告ライブラリとの類似性の有無及び依拠の有無、並びに本件ノウハウの使用の有無及び侵害態様について (1) 本件ノウハウの侵害の有無 原告の主張する本件ノウハウは、その内容自体具体的なものではない。しかも、原告被告間の業務委託基本契約書(乙2)33条1項によれば、本件ノウハウに対する権利が被告に移転していると解する余地がある(それ以前の取引基本契約書(乙1)18条にも、同旨の規定がある。)。仮に上記基本契約書の条項が適用されないとしても、本件ノウハウは、本件システム設計等請負契約(前記1(1)オ)に従いその成果物が被告に引き渡されることに伴って被告に開示され、本件システムの運用に際し被告によって使用されることが予定されているものである。 さらに、本件ノウハウの侵害の態様が公序良俗に反する態様のものである点の主張もない(本件システム等の開発に要した費用のうち、本件システム設計等請負契約に基づく支払等によって回収できなかった部分を原告がリモートによる運用・保守業務を担当することにより回収することを予定していたところ、原告の費用回収前に被告が本件保守契約を破棄したためその回収ができなかったというだけでは、本件ノウハウの侵害の態様が公序良俗に反するものと認めることはできない。)。 したがって、被告が現在本件システムを運用することによって本件ノウハウを使用していることが不法行為法上違法であると認めることはできない。 また、前記のとおり、本件事業スキームの合意は認められないから、本件ノウハウの侵害につき、本件事業スキームの合意違反の債務不履行も認められない。 よって、本件ノウハウの侵害について不法行為又は債務不履行(本件事業スキームの合意違反)をいう原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。 (2) 原告ライブラリの著作権侵害の有無 ア 原告ライブラリそのものの使用等について (ア) 本件使用許諾契約に基づく使用 前提事実(3)ア(本件使用許諾契約)及び(6)(本件一括購入契約)、並びに当事者間に争いのない争点に関する当事者の主張(2)イ(カ)a(有効期間内の出荷)の事実によれば、別紙「共通ライブラリ入れ替え実施日」1ないし10記載のマンション等で使用されるM-Navi端末等への原告ライブラリのインストールは、本件使用許諾契約による許諾に基づくものである。 (イ) 本件使用許諾契約の詐欺取消等の主張について a 本件使用許諾契約の錯誤無効について 本件使用許諾契約の錯誤無効に関する原告の主張は、原告・被告間で本件事業スキームの合意が成立したことが前提とされているところ、前記1(2)に説示のとおり、本件事業スキームの合意の成立は認められない。 原告が目論見として有していた本件事業スキームないしこれに類する事業計画は、本件使用許諾契約締結の動機として位置付けられるものであるところ、原告が本件使用許諾契約の締結に際し、このような目論見を意思表示の内容として被告に表示したことを認めるに足りる証拠はない。 よって、本件使用許諾契約の錯誤無効をいう原告の主張は、理由がない。 b 本件使用許諾契約の詐欺取消しについて 本件使用許諾契約の詐欺取消しに関する原告の主張も、原告・被告間で本件事業スキームの合意が成立したことが前提とされているところ、前記1(2)に説示のとおり、本件事業スキームの合意の成立は認められない。 しかも、被告が平成15年10月に本件保守契約を延長しなかったこと(前記1(1)タ)や、平成14年12月に、長期契約を求める原告の要望を受け入れずに、契約期間を1年とし、期間満了の1か月前までに終了等の意思表示があれば更新されないことを内容とする本件保守契約を締結したこと(前記1(1)セ)から、平成14年4月の本件使用許諾契約締結の時に、被告が、原告が目論見として有していた事業計画に沿わない行為をする意図を有していたものと認めることはできず、他に、本件使用許諾契約締結当時、被告がそのような意図を有していたことを推認させる事情は認められない。 したがって、本件使用許諾契約の締結に当たって被告が詐欺の意図を有していたことも、欺罔行為を行ったことも認められず、本件使用許諾契約の詐欺取消しをいう原告の主張は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。 c 本件一括購入契約の詐欺取消しについて 前提事実及び前記1(1)に説示した事実によれば、本件一括購入契約の締結当時、被告担当者は、本件保守契約を破棄する意図があったとまで認定することはできないが、2年目の保守代金についての原告との交渉がまとまらないため本件保守契約が更新されず、原告との関係が悪化する事態に備え、本件一括購入契約を結んだ可能性が高いことが認められる。 しかしながら、本件一括購入契約の交渉に当たり、被告担当者に本件保守契約の保守代金の減額を申し入れる意図を有していることや、保守代金の価格交渉が難航する可能性が高いことを原告に告知する信義則上の義務があったものと認めることはできないから、本件一括購入契約の詐欺取消しをいう原告の主張は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。 (ウ) まとめ よって、原告ライブラリそのものの使用が不法行為又は債務不履行(本件事業スキームの合意違反)に当たることを理由とする原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。 イ 被告ライブラリの使用について (ア) 事実認定 前提事実、証拠(各項に挙示したもの)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 a 日本CADによる被告ライブラリの開発は、@被告ライブラリに実装する関数名、引数、戻り値の特定と、A特定された関数の処理内容の推測及び実装の2段階で行われた。具体的には以下のとおりである。 @ 被告ライブラリに実装する関数名、引数、戻り値の特定(別紙「関数の特定方法種別一覧」参照) @−1 本件アプリケーションが必要とする関数について 本件アプリケーションの実行形式を得るためには、本件アプリケーションのソースコードに加え、共通ライブラリと呼ばれる3つのファイル(「libmnavicom.a」「libsvrcom.a」「libnbcom.a」)とリンクさせることが必要となるところ、この3つのファイルをリンクさせるためのリンクオプション(-lmnavicom、-lsvrcom、-lnbcom)を指定しない場合、それぞれのファイルで提供される関数群がリンクされないため、コンパイラは必要な関数が見つからない旨のエラーを出力することになる。このエラーメッセージから、本件アプリケーションが必要としている関数の名称、すなわち本件システムの共通ライブラリにて実装されている関数の名称を特定することが可能となる。 このような作業により、日本CADは、40の関数について名称の特定を行い、また、一般に、アプリケーションソフトウェアのソースコード外で定義された関数をアプリケーションソフトウェア側から利用する場合には、同ソースコードのどこかに、外部参照の宣言又は関数のプロトタイプ宣言がされていることから、関数名を用いて本件アプリケーションのソースコードを検索することにより、引数及び戻り値の特定を行った(別紙「関数の特定方法種別一覧」のパターンA)。 @−2 ライブラリ内で必要となる関数について ライブラリ作成の過程において、インターネットから取得したソースを基に作成されている関数がある。この関数には、その内部で更に関数を使用しているものがあり、それらの関数を実装しないままでコンパイル作業を行った場合、@−1と同様に、エラーメッセージが表示されることから、必要な関数の名称を特定し得る。その引数及び戻り値についても、@−1と同様に特定が可能である。このような作業により、日本CADは、8つの関数について、関数名、引数及び戻り値の特定を行った(別紙「関数の特定方法種別一覧」のパターンB)。 また、原告ライブラリにおいて、本件アプリケーションが必要とする関数を特定する作業により得られた関数の内部で更に機能分割を行い、機能ごとに別の関数を独自に定義し、呼び出すように実装した事例が13存在した。これらについては、名称、引数、戻り値及びその処理内容のすべてについて、原告が独自に定義したものであることから、それ以上の特定作業は行わなかった(別紙「関数の特定方法種別一覧」のパターンC)。 @−3 その他の関数について @−1及び@−2に含まれない4関数のうち、err_ret()、err_dump()、err_msg()については、err_sys()、err_quit()などをインターネットから検索、取得した際、同じファイル内に存在しており、また、本件アプリケーションのソースコード中のプロトタイプ宣言にも同じ名前の関数が存在することから、念のため実装した。他方、Write()は、同ソースコードを確認したところ、関数Write()のプロトタイプ宣言の記述が存在したことから、念のため実装した。 このような作業により、日本CADは、これら4関数について関数名、引数及び戻り値の型の特定を行った(別紙「関数の特定方法種別一覧」のパターンD)。 A 特定された関数の処理内容の推測及び実装 A−1 同一名称の関数をインターネットから取得しての実装(17関数) 名称が特定された関数のうち17関数については、インターネット上で公開されているものを利用した。なお、インターネット上に公開されているソースプログラムではそのまま適用できない場合には、実装時に必要に応じて変更を行った。 A−2 Linux標準C関数又はLinux標準システムコールからの推測(15関数) 名称が特定された関数のうち15関数については、Linux標準C関数及びLinux標準システムコールのラッパー関数であると推測し、関数の実装としては、該当の標準C関数又はシステムコールを呼び出し、それらの処理が失敗した場合にはエラーを出力するという処理を実装した。 A−3 テスト用データベースプログラムを作成し、各関数への割当を推測(7関数) 本件アプリケーションでは、MySQLというフリーソフトウェアのデータベースプログラム(以下「MySQL」という。)を利用して、各マンションの端末情報等の管理が行われているところ、MySQLでは、アプリケーションからデータベースへアクセスするための関数群が提供されており、アプリケーションからは、通常、それらの関数を利用してデータベースを操作することになる。これらの関数は、一定の手順でMySQLの呼出しを行うことから、そのような手順を踏むテストプログラムを作成することで、MySQLを操作できることが確認できる。 そこで、Db_xxx()という名称の7関数について、それぞれ個別に検討を行い、MySQL呼出手順の各関数の割当について推測を行った上、推測して作成したDb_xxx()関数について、原告ライブラリと同じ条件で動作させた場合に同じ結果を得ることができるかどうかを確認する作業を行い、必要に応じて同一の結果が得られるように修正を行った。 A−4 テストプログラムに原告ライブラリをリンクし、その動作から内容を推測(13関数) NB等で始まる13関数については、 @ 関数名からの内容の推測、 A アプリケーションからの呼び出され方からの推測(個々の関数は無関係ではなく、お互いに関連しながらいくつかの関数が集まって一連の処理を完結するため、ある関数の前後にはその関数に関連する処理が記述されているのが通常であることを利用したもの)、 B 原告ライブラリの動作からの推測(関数の具体的な動作を知るために、原告ライブラリを動作させる簡単なテストプログラムを作成し、引数に様々な値を入れ、実行結果を確認することで、その関数の具体的動作の推測を行うもの) といった方法を用いて処理内容を推測し、作成した。 A−5 これら関数内で使用する関数として独自に実装(13関数) 別紙「関数の特定方法種別一覧」のパターンCの13関数についても、上記A−4と同様の方法で処理内容を推測し、作成した。 (甲73、82、乙27ないし29) b 原告ライブラリと被告ライブラリとの対比 原告ライブラリは、236個の関数から成るのに対し、被告ライブラリは、65個の関数から成る。 (甲6、82) また、プログラムの構成自体も、原告ライブラリに存在せず、被告ライブラリに独自に実装されている関数が少なからず存在する。 (甲73添付の陳述書の別紙「当社保有ライブラリと代替ライブラリの差異について」) (イ) 検討 a 以上の事実によれば、被告は、被告ライブラリの開発に当たり、本件アプリケーションの解析を通じて原告ライブラリに求められる機能、すなわちライブラリを構成すべき関数や両プログラムのインターフェース条件を明らかにすることができることを利用して、本件アプリケーションを解析することによって本件アプリケーションを機能させるために被告ライブラリに実装されるべき必要な関数の特定を行ったものであり、原告ライブラリそのものの解析を行ったものではない。 関数の実装についても、被告ライブラリを構成する65個の関数のうち、前記A−1ないしA−3の39個の関数は、既存の公開されている関数をそのまま又は一部修正して採用したものである。A−4及びA−5の関数は、特定された関数の処理内容の推測及び実装の段階で、原告ライブラリにテストプログラムをリンクさせているが、インプットとアウトプットとからブラックボックス(原告ライブラリの関数)での処理内容を推測したにすぎず、原告ライブラリのソースコード又はオブジェクトコード自体を知り得たものではない。 さらに、原告ライブラリは236個の関数から成るのに対し、被告ライブラリは65個の関数から成り、原告ライブラリに存在せず、被告ライブラリに独自に実装されている関数が少なからず存在するとの相違点が見られる。 b これらの点にかんがみると、被告ライブラリが原著作物である原告ライブラリの創作的な表現を再生していると認めることはできないし、また、被告ライブラリの開発行為が原告ライブラリに依拠して行われたものと認めることもできない。 c これに対し、原告は、原告ライブラリによる処理結果としての出力情報を調査解析して被告ライブラリが作成されたことをもって、違法なリバースエンジニアリングである旨主張する。しかしながら、原告ライブラリへの入力と出力との関係を調査解析して得られるものは、当該関数が実現している機能であり、それは、飽くまでアイデアにすぎないものとして著作権法上保護されないものといわざるを得ない。よって、この点に関する原告の主張は採用することができない。 (ウ) まとめ 以上によれば、原告が原告ライブラリにつき有する著作権(複製権又は翻案権)に基づき、被告ライブラリ(別紙被告著作物目録1の一部及び同目録2)の使用差止等、及び被告ライブラリの使用が不法行為又は債務不履行(本件事業スキームの合意違反)に当たることを理由とする損害賠償請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない(なお、原告は、別紙被告著作物目録1のかっこ内において、被告ライブラリの使用差止等に加え、印刷物等の差止等を求めているが、この請求は、侵害の停止又は予防に必要な措置として請求されているものと認められる。)。 3 結論 以上によれば、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法61条、66条後段、65条1項本文を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 市川正巳 裁判官 杉浦正樹 裁判官 ョ晋一 被告著作物目録 1 被告が端末機名「Addetto」の商品名でマンション居住者のエンドユーザーに提供している、M-Naviシステムで使用している共通ライブラリ部分及び同システムに関する運用・保守機能を備えたソフトウェア(但し、コンピューターソフトウェアに関連した媒体、印刷物(マニュアルなどの文書)、及び「オンライン」または電子文書、さらにソフトウェアのアップデート・アドオンコンポーネント・Webサービス・追加機能も含まれる。)。 2 被告が上記1と同種の用途に供するために他の名称で使用しているシステムにインストールされている以下の項目から構成される共通ライブラリ部分。 共通ライブラリ部分の構成項目は以下のとおり。 (1) ソケット通信用Wrapper関数 TCP/IP用ソケット通信の接続、切断、ポートリスニング等の数十種類のWrapper用関数の集合であり、基本的にプラットホーム依存を吸収することと、標準関数にエラー処理などを追加している。 (2) プロセス&スレッド制御用Wrapper関数 プロセスの作成、制御、同期等に関わる数十種類のWrapper用関数の集合であり、基本的にプラットホーム依存を吸収することと、標準関数にエラー処理などを追加している。 (3) UNIX関数のWrapper関数 I/O制御や低レベルRead、Write、メモリ制御、シグナル制御等UNIX用の約50種類からなるWrapper用関数の集合であり、基本的にプラットホーム依存を吸収することと、標準関数にエラー処理などを追加している。 (4) MySQLデータベースアクセス用Wrapper関数 MySQLデータベースの標準C言語インターフェース関数をアプリケーションから使い易くするため、用意したWrapper関数であり、エラー処理をもつことと、インターフェースを統一することで信頼性を高めている。 (5) 汎用ライブラリ関数 日付処理や設定ファイルの読み書き、文字列制御、簡易メール送信機能等の汎用的な関数インターフェースを提供する。 (6) メッセージ通信用の自動テンプレート作成プログラム M-Navi、Server、IF-Server(共同玄関機)間のメッセージフォーマットをテキスト形式で定義したファイルから通信用プログラムのHeaderファイルとプログラムテンプレートを自動生成するプログラムで、プログラム作成効率の向上と共通コード化することで信頼性向上に役立てている。 3 被告が上記1と同種の用途に供するために他の名称で使用しているシステムにインストールされている以下の項目から構成される同システムに関する運用・保守機能を備えたソフトウェア。 運用・保守機能の構成項目は以下のとおり。 (1) 各種情報管理機能 @ マンション名検索項目情報管理 マンション名の検索に必要な情報の登録・更新・削除を行う。 管理項目:マンション名、施主名、住所 A マンション住人検索項目情報管理 マンション住人の検索に必要な情報の登録・更新・削除を行う。 管理項目:マンション名、部屋番号、住人名(世帯主)、Tel番号、M-Naviの台数、家族の人数、M-Naviメールアドレス、障害通知回数 B マンションの各機器検索項目情報管理 マンションのM-Navi、M-Server、共同玄関機、宅配ロッカー、ベルボーイ、管理人用PCの検索に必要な情報の登録・更新・削除を行う。 管理項目 M-Navi:マンション名、Term ID、IPアドレス、Macアドレス、シリアルナンバー、配置される部屋番号、親機/副親機種別、セグメント内のM-ServerのTerm ID M-Server:マンション名、Term ID、IPアドレス、Macアドレス、シリアルナンバー 共同玄関機:マンション名、Term ID、IPアドレス、Macアドレス、シリアルナンバー、配置位置、セグメント内のM-SeverのTerm ID 卓配ロッカー:マンション名、Term ID、IPアドレス、Macアドレス、シリアルナンバー、セグメント内のM-ServerのTerm ID ベルボーイ:マンション名、Term ID、IPアドレス、Macアドレス、シリアルナンバー、セグメント内のM-ServerのTerm ID 管理人用PC:マンション名、Term ID、IPアドレス、Macアドレス、シリアルナンバー C バージョン情報管理/バージョンアップ指示 各マンションの各機器のソフトウェア・バージョン情報の登録・更新・削除を行う。バージョンアップに必要な実行ファイルを送り、バージョンアップを行う。 管理項目:マンション名、Term ID、セグメント内のM-ServerのTerm ID、IPアドレス、現在のバージョン、過去のバージョン(一つ前のバージョン)、現在稼動中のバージョン、バージョンアップ実行ファイル、最終バージョンアップ日時 D 地域情報ホームページ情報管理 マンション毎の地域情報のURLの登録・更新を行う。 管理項目:マンション名、URL E 定型電話帳情報管理 マンション毎の定型電話帳の項目の登録・更新・削除を行う。 管理項目:マンション名、場所およびTel番号 F ITV情報管理項目 マンション毎のITVのURLとITVが映す場所の登録・更新・削除を行う。 管理項目:マンション名、ITVが映す場所(施設)、URL G M-Naviメールアドレス情報管理 M-Naviのメールアドレスの登録・更新を行う。登録は初期設置時、更新は依頼を受けた時に行う。 管理項目:マンション名、部屋番号、Term ID、IPアドレス、M-Naviメールアドレス H 共同玄関機の暗証番号管理 各マンションの各部屋毎に共同玄関機の暗証番号の管理を行う。 管理項目:マンション名、部屋番号、共同玄関機暗証番号、現在の暗証番号、共同玄関機のTerm ID、共同玄関機のIPアドレス、新しい暗証番号の登録・更新を行う。 I ネットワーク情報管理 ネットワーク機器のIPアドレスを管理する。 管理項目:マンション名、部屋番号、Term ID、IPアドレス J 施設情報項目 施設名の登録・更新・削除を行う。 管理項目:マンション名、施設名 K 施設予約方法管理 各施設の予約方法の登録・更新・削除を行う。 管理項目:マンション名、予約開始日、予約終了日、予約可能日、予約開始時間、予約終了時間、予約項目(先着、抽選、会員) L 施設予約管理 各施設の予約の登録・削除を行う。 管理項目:マンション名、施設名、予約状態 (2) 日常的な遠隔・運用保守機能 @ バックアップデータ取得 M-Serverに記録されている各住戸のデータを定期的にバックアップを取る。 バックアップを取る項目:回覧板情報、スケジュール、来訪者履歴(画像なし)、データベース、Logファイル等を予定する。 A Logファイル取得 Logファイルを定期的に取得して保存を行う。 Logファイルの保存期間:1週間 B Logファイル表示 M-ServerからLogファイルを転送して、表示する。 管理項目:Term ID、IPアドレス (3) 障害対応機能 @ 診断指示 概要障害があると思われるM-Naviに診断通知を出す。また、その診断結果を表示する。 表示・登録項目:Term ID、IPアドレス A M-Navi、共同玄関機の再立ち上げ指示 M-Navi、共同玄関機に再立ち上げを指示する。 |
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