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【事件名】「キューピー」著作権侵害事件D(ローズオニール)(2)
【年月日】平成18年1月31日
 知財高裁 平成17年(ネ)第10113号 損害賠償等請求控訴事件
 (原審・東京地裁平成17年(ワ)第7875号)
 (口頭弁論終結日 平成17年12月5日)

判決
控訴人 X株式会社
被控訴人 株式会社ローズオニール キューピー・インターナショナル
同訴訟代理人弁護士 山本隆司
同 井奈波朋子
同 木坂尚文
同 田場眞理子


主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴人の当審で拡張した請求を棄却する。
3 控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を次の限度で取り消す。
 被控訴人は、控訴人に対し、10万円を支払え。
2 被控訴人は、控訴人に対し、上記10万円に対する平成17年11月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(当審での請求拡張部分)。
3 訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。
第2 事案の概要
1 事案の要旨
 本件は、ローズ・オニールの著作に係るキューピーについての著作権を取得したとする控訴人が、被控訴人において控訴人の同著作権を侵害した旨主張して、被控訴人に対し、不法行為に基づき、一部請求として、損害金6億円のうち1000万円の支払を請求した事案である。
 原判決は、控訴人の上記請求を棄却したところ、控訴人は、原判決のうち10万円の支払請求を棄却した部分を不服として本件控訴を提起した。
 また、控訴人は、当審において、上記10万円に対する控訴状送達の日の翌日である平成17年11月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を新たに求めた(請求の拡張)。
2 争いのない事実等及び当事者の主張等
 次のとおり当審における当事者双方の主張の要点を付加するほか、原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要等」の1、3に記載のとおりであるから、これを引用する(但し、原判決1頁22行目の「1 争いのない事実等」の次に「(後記(1)の事実は弁論の全趣旨により認められ、後記(2)の事実は当事者間に争いがない。)」を加える。)。
3 当審における控訴人の主張の要点
(1) ローズ・オニールの著作に係るキューピーについての著作権の被控訴人に対する譲渡は、不正な方法により行われたものであるから、無効である。
(2) 控訴人は、司法機関を利用しつつ不当な利益を追求するような目的を全く有しておらず、あくまでも被控訴人の不正を明確にしたいだけである。そのような誤解を避けるため、不服申立の対象を、原判決のうち10万円の支払請求に係る部分に限定した。なお、控訴人は、平成17年3月16日にローズ・オニールの著作に係るキューピーについての著作権を取得したが、被控訴人が権利を主張するため、日本国内での商品化事業を行うことができず、得るべき収入を失ったものである。
4 当審における被控訴人の反論の要点
 控訴人の主張はすべて争う。
第3 当裁判所の判断
 当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないと判断する。その理由は、次のとおり補正付加するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決の補正
(1) 原判決7頁24〜25行目の「我が国の著作権法及び商標法において認められるキューピーの全ての権利」を「『キューピー』の作品、商品に関する我が国における著作権及び商標権その他日本法に基づくすべての権利」に改める。
(2) 同8頁10〜11行目の「著作物を認めるに足りる」を「著作物を特定するに足りる」に、同頁19〜20行目の「本件訴えの目的等」を「控訴人のいう本件訴えの目的(前記第2の3(3)ウ)等」に、それぞれ改める。
(3) 同11頁4行目の「したと主張するものの、」を「したが、」に、同頁7〜10行目を「(エ) 本件契約に係る譲渡代金の支払は、譲渡対象の権利が我が国の判決により認められ、その判決が確定してから6か月以内に支払うこととされていた。」に、同頁23行目の「被告」を「被控訴人代表者」に、それぞれ改める。
2 当審における控訴人の主張に対する判断
(1) 控訴人は、ローズ・オニールの著作に係るキューピーについての著作権の被控訴人に対する譲渡は、不正な方法により行われたものであるから、無効である旨主張する。
 しかしながら、前記引用に係る原判決説示のとおり、@控訴人が主張する被控訴人の著作権侵害行為は、控訴人が著作権の譲渡を受けたと主張する時点よりも前の行為であること、A控訴人は、自己の主張に係る著作物及び当該著作物に係る著作権の侵害行為を特定していないこと、B控訴人の請求が権利の濫用に当たることからすれば、いずれにしても、控訴人の本訴請求に理由がないことは明らかである。そして、このことは、キューピーに係る著作権の被控訴人への譲渡が無効であるか否かとは無関係である。したがって、控訴人の上記主張は、本件の結論を何ら左右しない事項をいうものにすぎず、本件において、控訴人の主張する上記の点を判断する必要はないというべきである。
(2) 控訴人は、あくまでも被控訴人の不正を明確にしたいだけであって、司法機関を利用しつつ不当な利益を追求するような目的を全く有しておらず、そのような誤解を避けるため、不服申立の対象を、原判決のうち10万円の支払請求に係る部分に限定した旨主張する。
 しかしながら、前記引用に係る原判決認定のとおり、@被控訴人代表者が、ローズ・オニールの著作に係るキューピーについての著作権の侵害行為を行って利益を得ていたと指摘する判決があったこと、A控訴人は、上記著作権の我が国における保護期間が満了するまで残り2か月にも満たない時点で、JESCO社から上記著作権を譲り受ける旨の契約を締結したものであるが、その譲渡代金の支払は、譲渡対象の権利が我が国の判決により認められることを前提とするなど、不自然な契約内容であること、B控訴人は、上記譲り受けからわずか1か月後に本件訴えを提起していること、C控訴人がローズ・オニールの著作物を利用した事実を認めるに足りないこと等の事情に照らせば、控訴人による上記著作権の取得は、上記著作権を業として利用しようとするものではなく、上記判決で指摘された被控訴人代表者の利益を損害金名目で取得しようとの意図に基づくものと推認されてもやむを得ないというべきであり、控訴人の本訴請求は著作権法の趣旨に反し権利の濫用として許されないものといわざるを得ない。控訴人は、被控訴人に対して全部で6億円の損害金支払請求権を有していることを前提に、その一部請求として1000万円の支払を訴求していたものであるから、控訴人が、原判決に対する不服申立の対象を、10万円の支払請求に係る部分に限定したことは、上記推認を何ら左右するものではない。なお、控訴人は、被控訴人が権利を主張するため、日本国内での商品化事業を行うことができず、得るべき収入を失った旨主張しているが、本件全証拠を検討しても、控訴人が、上記著作権の取得後、これを利用した商品化事業に具体的に着手するなどしたことを窺わせる証拠はなく、控訴人の上記主張は、具体的な裏付けを欠き、採用することができない。
3 結論
 以上によれば、控訴人の被控訴人に対する損害金支払請求は理由がなく、これを棄却すべきものとした原判決は相当であるから、控訴人の本件控訴を棄却することとし、また、控訴人の当審において拡張した請求(遅延損害金部分)も理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第3部
 裁判長裁判官 佐藤久夫
 裁判官 嶋末和秀
 裁判官 沖中康人
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日本ユニ著作権センター
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