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【事件名】旅行ガイドブックの「空港案内図」事件
【年月日】平成17年5月12日
 東京地裁 平成16年(ワ)第10223号 請負代金等請求事件
 (平成17年2月28日 口頭弁論終結)

判決
原告 有限会社博天社
訴訟代理人弁護士 A
同 B
同 杉浦尚子
同 吉田朋
同 雪丸真吾
同 芹澤繁
同 亀井弘泰
同 清田佳子
被告 株式会社昭文社
訴訟代理人弁護士 C


主文
1 被告は、原告に対し、750万円及びこれに対する平成15年5月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は、第1項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 原告の請求
 主文と同じ
第2 事案の概要
1 本件において、原告は、被告の出版・販売に係る「個人旅行」シリーズと題する国・地域別旅行案内書(以下、「個人旅行」シリーズの書籍を「被告書籍」という。)の第9版を納品し、さらに、被告の出版・販売する旅行ガイドブック「まっぷるマガジン国内版『金沢』」に掲載する写真(以下「本件写真」という。)を被告に売り渡したとして、被告に対し、被告書籍第9版の制作委託契約(以下「本件制作委託契約」という。)及び本件写真の売買契約に基づき、被告書籍第9版の編集等の報酬863万1000円及び本件写真の対価157万5000円の合計1020万6000円のうち未払金750万円及びこれに対する平成15年5月1日(本件制作委託契約上の報酬支払期日の翌日。本件写真の引渡し後の日。)から支払済みまでの商事法定利率年6分に基づく遅延損害金ないし利息(民法575条)の支払を求めている。
 これに対して、被告は、被告書籍第9版の制作委託契約を締結した相手方は原告ではなく、株式会社ケイ・アンド・ビー・パブリッシャーズ(以下「K&B」という。)であった。仮に、上記制作委託契約の締結相手が原告であったとしても、原告が納品した被告書籍第9版に掲載された各地の空港案内図(以下「第9版本件空港案内図」という。)は、株式会社オーエフシー(以下「OFC」という。)の著作権を侵害し又はこれを利用したものであったから債務の本旨に従った履行がなされていないとして、原告の被告書籍第9版の編集等の報酬支払請求権の発生を争い、さらに、仮に、原告が被告書籍第9版の編集等の報酬支払請求権を有していたとしても、原告が制作・納品した被告書籍(被告書籍第9版より前に制作・納品した被告書籍を含む)に掲載された各空港案内図(以下、被告書籍に掲載された空港案内図を、第9版本件空港案内図を含め、「本件空港案内図」と総称する。)が、OFCの著作権を侵害していたために、被告は、OFCに対して解決金750万円を支払わざるを得なかったから、被告は、原告に対して750万円の反対債権(原告と被告との間の支払合意に基づく支払請求権、債務不履行に基づく損害賠償請求権、制作委託契約上の条項に基づく既払報酬返還請求権ないし不法行為を理由とする損害賠償請求権)を有しており、被告は、原告に対し、平成15年10月15日付の書面で、上記債権をもって原告の被告に対する上記未払金債権と対当額で相殺した(甲3)ことにより消滅したとして、原告の請求を争っている。
2 前提となる事実(当事者間に争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定される事実。証拠及び弁論の全趣旨により認定した事実については、該当箇所の末尾に証拠を掲げた。)
(1) 原告は、出版物の企画・編集を業とする有限会社である。
 被告は、主に各種地図・ガイドブック等を中心とした図書の企画・制作・販売を業とする株式会社である。
 K&B(代表取締役、「D」ことE(以下、「D」という。)。)は、出版物の企画・編集及び出版等を業とする株式会社である(乙2)。
(2) 被告は、一般旅行者向けガイドブックである「個人旅行」をシリーズ化して出版することを企画した(被告書籍)。
 被告は、K&Bとの間で、平成6年ころ、被告書籍について、K&Bが被告書籍の企画・構成・デザイン等編集に関連する一切の業務を行い、被告がこれに対して報酬を支払う旨の制作委託契約(以下「本件基本契約」という。)を締結した。
 なお、被告とK&Bは、本件基本契約締結時に、契約書等書面の作成はしなかったが、その後、本件基本契約に関して、平成10年9月1日付「個人旅行」制作・委託等契約書(乙5)、平成14年9月30日付合意書(乙6)が作成された(上記平成10年9月1日付「個人旅行」制作・委託等契約書は、被告びK&Bの間で作成され、平成14年9月30日付合意書は、被告、原告及びK&Bの間で作成された。)。
 K&Bは、本件基本契約に基づいて、対応する各地の空港案内図(本件空港案内図)を作成、掲載して被告書籍を制作し、これを被告に納品した。被告は、遅くとも平成8年ころから、被告書籍を販売した。
 原告は、平成10年ころから、本件基本契約に関与するようになった。
(3) 被告は、平成13年4月20日、原告に対し、被告書籍第9版のうちバリ島、オーストラリア、ニュージーランド等9タイトルについて、報酬863万1000円で企画・編集を発注した(甲1の1ないし9)。
(4) 被告は、同年6月ころ、OFCから、本件空港案内図について、OFCが制作し、著作権を有する「世界の空港案内」シリーズ(以下「OFC書籍」という。)に掲載されている空港案内図(以下「OFC空港案内図」という。)に極めて類似しているとの指摘を受けた。
(5) 原告は、平成15年3月31日、被告に対し、(3)記載の被告書籍第9版を納品した(甲2の2ないし10)。これらの被告書籍には、対応する各地の空港の案内図(第9版本件空港案内図)が掲載されていた。
(6) 原告は、被告に対し、被告出版にかかる旅行ガイドブック「まっぷるマガジン国内版『金沢』」に掲載する写真(本件写真)を、遅くとも平成15年3月31日までに(乙25)、売買代金157万5000円で売り渡した(当事者間においては「売買契約」として争いがないが、乙5及び弁論の全趣旨によれば、被告が原告に対して写真の撮影を委託し、原告が撮影した写真を被告に引き渡す旨の合意がなされたものと推察される。)。
(7) 被告は、平成15年9月25日、OFCとの間で、本件空港案内図に関して、解決金として750万円を支払う旨合意し、同合意に基づいて、同年10月15日、OFCに対し、750万円を支払った(乙19の1、2、20)。
(8) 被告は、原告に対し、上記(3)の報酬金及び(6)の対価の合計1020万6000円のうち270万6000円を支払ったが、残金750万円を支払わない。
3 争点
(1) 原告の被告に対する報酬支払請求権の有無
ア 原告と被告との間で、被告書籍第9版の制作委託契約が締結されたか(争点1)
イ 原告がK&Bから被告書籍第9版の制作に関する報酬債権を譲り受けた事実の存否(争点2)
ウ 原告が被告書籍第9版を納品したことが本件制作委託契約の債務の本旨に従った債務の履行といえるか
(ア) 被告書籍第9版に掲載された第9版本件空港案内図がOFC空港案内図に係るOFCの著作権を侵害しているか(争点3)
(イ) 原告が第9版本件空港案内図の制作に当たって他人の出版物を利用した債務不履行の存否
a 本件制作委託契約上、原告が、著作権侵害に至らない態様であっても他人の出版物を利用してはならない義務を負っていたか(争点4)
b 原告が、第9版本件空港案内図の制作においてOFC空港案内図を利用した事実の存否(争点5)
(2) 被告の原告に対する反対債権の有無
ア 原告と被告との間で被告書籍の出版に関してOFCに対して支払うべき金員を原告が負担する旨の合意があったか(争点6)
イ 債務不履行に基づく損害賠償請求権の有無
(ア) 原告の制作した本件空港案内図がOFC空港案内図に係るOFCの著作権を侵害しているといえるか(争点7)
(イ) 原告が本件空港案内図の制作に当たって他人の出版物を利用した債務不履行の存否
a 本件制作委託契約上、原告が、著作権侵害に至らない態様であっても他人の出版物を利用してはならない義務を負っていたか(争点8)
b 原告が、本件空港案内図の制作においてOFC空港案内図を利用した事実の存否(争点9)
(ウ) 原告の債務不履行による損害の有無及び額(争点10)
(エ) 原告の債務不履行と被告の損害との因果関係の有無(争点11)
ウ 本件基本契約(乙5)第8項第2項イに基づく支払済み報酬返還請求権の有無(争点12) 
エ 原告が本件空港案内図を掲載して被告書籍を制作、納品したことが、被告ないしOFCに対する不法行為に該当するか(争点13)  
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(原告と被告との間で、被告書籍第9版の制作委託契約が締結されたか)
(原告)
 原告と被告は、平成13年4月20日、原告が被告書籍第9版を制作して被告に引き渡し、被告がこれに対する報酬として原告に対し863万1000円を支払う旨の制作委託契約(本件制作委託契約)を締結した。
 被告は、原告との間で本件制作委託契約を締結したことはなく、原告が被告書籍第9版を納品したのは、被告とK&Bとの間で締結された本件基本契約に基づく債務の履行として行われたものであるなどと主張する。
 たしかに、当初は、被告とK&Bとの間で被告書籍について本件基本契約を締結していたが、平成10年ころ、被告の元代表者とK&Bの代表者であるDの個人的関係が悪化したことから、被告は、K&Bに取引関係の終了を要請してきた。これに対し、K&Bは、Dを代表者としない別会社と被告との間で取引関係を継続することを提案し、被告は、これを了承した。このような経緯を経て、同年9月に原告が設立され、同月以降、被告書籍の制作委託等の契約を締結する場合には被告と原告との間でなされるようになったものである。したがって、K&Bと被告との間の本件基本契約は同年9月までには終了している。
 上記のような経緯を経て、原告と被告は、平成13年4月20日に本件制作委託契約を締結し、被告書籍第9版の制作、納品は、同契約上の義務の履行としてなされたものである。
 なお、原告は、被告書籍第9版の制作をK&Bに対して再委託し、被告書籍の制作をK&Bのスタッフに行わせていたが、法律的には、被告と原告、原告とK&Bの間に、それぞれ契約関係が存在するのであって、原告とK&Bが被告との間で、共同受注しているものではない。
 被告は、被告書籍第9版の発注、報酬の支払を、K&Bではなく、原告に対して行っており、被告書籍第9版を被告に対して納品したのは、K&Bではなく、原告である(甲1の1ないし9、2の2ないし10)。平成14年9月30日付の合意書(乙6)に、原告及び被告だけでなく、K&Bも記載されているのは、同合意書が、K&Bが被告書籍シリーズの編集を中止するための確認事項を取り決める目的で作成されたものであったため、被告及び原告だけでなく、原告の下請けであったK&Bの3社で合意書を作成したためである。
(被告) 
 被告は、原告との間で、本件制作委託契約を締結していない。
 原告が、被告書籍第9版を作成して被告に納品したのは、被告とK&Bとの間で平成6年ころ締結された本件基本契約(本件基本契約締結時に書面は作成されなかったが、その後、平成9年3月28日付で「契約基本(覚書)」(乙4)及び平成10年9月1日付で「個人旅行」制作・委託等契約書(乙5)が作成された。)に基づく行為である。
 K&Bは、本件基本契約に基づき、被告書籍37点を制作・納品し、被告は、K&Bに対し、これに対する報酬4億7000万円を支払った。さらに、K&Bは、平成10年9月から平成15年3月までの間に、上記被告書籍37点の改訂合計37点を制作・納品し、被告は、K&Bの入金窓口を引き継いだ原告に対し、これに対する報酬3億8000万円を支払った。
 被告書籍第9版の制作は、上記本件基本契約上のK&Bの義務の履行の一環として、制作・納品されたものである。
 原告は、K&Bと経済的に一体ないし同社の実質的内部部署であり、本件制作委託契約においては、K&Bの共同受注者として契約上の地位に加わった者ないし入金口座名義人である。
 合意書(乙6)には、原告及びK&Bに対する発注である旨明記されている。
 また、被告書籍第9版(平成15年版)の奥付には編集K&B、ディレクターDと記載されており、原告は「編集協力」(乙21の2)、「取材・編集協力」(乙22の2)と記載されているものや、原告について記載のないものまである(乙24の2)。また、被告は、OFCから著作権侵害の警告を受けた後、原告ないしK&Bに対する報酬金の支払期限の延期やOFCに対する支払金の負担について原告ないしK&Bと交渉を行ったが、その際の交渉窓口はK&B代表者Dであり、原告代表者F(K&Bの従業員)は交渉の席に出ていない。このことからも、実質的な契約当事者が原告ではなくK&Bであることが明らかである。
2 争点2(原告がK&Bから被告書籍第9版の制作に関する報酬債権を譲り受けた事実の存否)
(原告)
 仮に、被告の主張するとおり、K&Bが、原告と共に本件制作委託契約の共同受注者であったとしても、K&Bは、原告に対し、本件口頭弁論終結前までに、K&Bの被告に対する本件制作委託契約に基づく報酬請求権その他一切の請求権を譲渡しているから、原告は、被告に対して報酬請求権を有している(甲14、15の2)。
(被告)
 争う。
3 争点3(被告書籍第9版に掲載された第9版本件空港案内図がOFC空港案内図に係るOFCの著作権を侵害しているといえるか)
(被告)
(1) 被告の主張
ア 原告ないしK&Bと被告との間の本件制作委託契約は、民法上の委任契約ないし請負契約の性質を有する無名契約であるところ、原告ないしK&Bは、委任契約上の善管注意義務の内容として、また、上記契約の合意内容に基づいて、被告書籍第9版の制作業務において第三者の著作権を侵害しない義務を負っている。ところが、原告が納品した被告書籍第9版は、OFCの著作権を侵害して作成されたものであったから、原告ないしK&Bには債務不履行がある。
イ OFC空港案内図の著作物性について
 OFC書籍には、奥付に「禁無断転載」と表記され、空港案内図一つ一つにOFCの著作権表示が付されている。また、OFC空港案内図は、次のとおり、だれでも同じ表現に達することができるレベルのものではないから、創作性を有することは明らかである。
@ 空港建物のような巨大建物を図面化していることから、どこまでの部分を表記するか(例えば搭乗口まで表記するか離発着出口部分まで表記するか)という点に作成者の思想が表れる。
A OFC空港案内図においては、施設内の非公表図面や立入禁止部分の情報も盛り込まれている。
B スイスのクローテン空港は、パンフレットや案内図が存在しておらず、OFC空港案内図のうち同空港の案内図については、OFCの担当者が歩幅で距離を測るなどして作成した。
C 日本人利用者の利用頻度の観点から情報の取捨選択を行った上、これらの情報を日本人にわかりやすいように統一した記号で表記しており(例えば、インフォメーション施設を「i」ではなく日本人にわかりやすいように「?」で表記している。)、この点に作成者の思想・個性が表れている。
D 一般客立入禁止部分、一般送迎客が入れる部分、航空券を持った者のみが入れる部分を色分けしており、これは、見送り、待ち合わせを便利にするためのOFC独自の発想の表れである。
E 利用者の進行方向を示す矢印を出発と到着に分けて2色で表記しており、これは、利用者の便宜を図ったものである。また、矢印を記載する位置にも作成者の思想・ノウハウが反映されている。
F 乗継客の便宜のために税関及び入国審査部分をリアルに描いている。
G シリーズの中で全世界の各空港を共通のコンセプトで統一的に表現している。
ウ 依拠性について
 前記イAに記載したとおり、OFC案内図には、施設内の非公表図面や立入禁止部分の情報も盛り込まれており、これらは、OFCが日本航空とグループ関係にあるという関係を利用して入手し得た情報である。また、OFC空港案内図のうちスイスのクローテン空港の案内図については、OFCの担当者が歩幅で距離を測るなどして作成したものである。
 ところが、本件空港案内図にも上記のような情報が記載され、本件空港案内図のうちスイスのクローテン空港の案内図は、OFC空港案内図と寸分違わぬものである。
 原告ないしK&Bは、平成13年6月ころにOFCから著作権侵害の指摘があってから本訴提起前までは、第9版本件空港案内図を含む本件空港案内図の作成に当たって、OFC空港案内図を利用し、採り入れたことを認めていた。
 上記のような事実から、原告ないしK&BがOFC空港案内図に依拠して本件空港案内図を作成したことは、明らかである。
 原告は、本件空港案内図の作成担当者が退職したとして、その作成経緯を明らかにしないが、被告においては、当時の作成担当者は在職していると聞いている。原告は、各本件空港案内図の作成者名、退社時期を明らかにしておらず、仮に退職していたとしても、作成経緯について概要すら主張できないはずはないから、作成経緯に関する原告の主張は信用できない。
エ 類似性について
 第9版本件空港案内図は、3色に色分けされているが、これは、前記イDのOFC案内図が一般客立入禁止部分、一般送迎客が入れる部分、航空券を持った者のみが入れる部分を色分けしていることと共通する。第9版本件空港案内図は前記イEのOFC空港案内図と矢印の記載位置が共通している。
 第9版本件空港案内図は、その他の本件空港案内図と比較して全体を斜めに少し傾斜させており、この点でOFC空港案内図とも異なるが、このようなわずかな改変を加えても、基になる本件空港案内図がOFC空港案内図に類似している以上、これを単に少し斜めにしただけの第9版本件空港案内図についても著作権侵害が成立する。
(2) 原告の主張に対する反論 
 上記Cについて、原告は、国際空港案内図上の有用ないし有益な情報というのは、出発・到着フロアの別、出発・到着ゲート、団体・個人別又は航空会社別チェックインカウンター、乗り継ぎカウンター、出入国審査所、セキュリティーチェック・手荷物検査所、税関、手荷物預かり所・受取所、遺失物取扱所、レストラン、両替所・銀行、電話、トイレ、インフォメーション施設、警察、郵便、免税店等ショップ、喫煙所、ロッカー、医務室、空港駐車場、レンタカー、バス・タクシー・電車乗り場等であり、本件のような旅行者向けの空港案内図であるという機能面・実用面に鑑みれば、自ずと選択の余地は極めて限定されたものとならざるを得ない旨主張する。
 しかし、原告が指摘する施設だけでも24項目あるのであって、この中から、限られたスペースで記載すべき情報を取捨選択するのは簡単な作業ではない。また、同じトイレという項目であっても、空港内に複数存在するトイレのうち、どの箇所のトイレを情報として記載するかという点において、経験則、デザイン上、判断を要する。
 ベルリンのテーゲル空港の案内図についてOFC作成の乙11の1と原告ないしK&B作成の空港案内図(本件空港案内図乙11の3)を比較しても、建物の内部構造やOFC空港案内図を丸写ししつつ、掲載情報の取捨選択は、OFC空港案内図に比して簡略にすぎる。レストランを表記せずに授乳室は表記するなど、取捨選択が場当たり的であり、作成者の思想に大きな違いがある。このように、どの情報を表記するかの選択は原告が主張するように容易なものではない。
 さらに、上記Cのうち情報の表記方法という点については、施設の形状や位置関係の表記は、実際の空港施設の形状や位置関係という客観的事実を表記するものであるから、表記方法の選択の余地は極めて限定される旨主張するが、客観的事実自体が部外者には公表されておらず、判然としない場合もあるし、空港は、巨大で複雑な建物であるから、そのような建物をデザイン的に図面表記すること自体が一定のノウハウを要することである。また、縮小の方法も、縮尺に応じて曲線を直線で表記したり、細かな部分を大まかに表記したりする必要があり(専門用語で「総描」という。)、一般の地図と異なり統一的な縮尺が予め決まっているわけではないから、どの程度の大きさの案内図にするかという点も重要な判断事項である。また、OFC作成図が公表される以前の空港案内図とOFC空港案内図とでは、出来不出来、情報選択の適不適、見やすさ、使いやすさの違いは明らかであって、だれが使っても見やすいという要求は空港案内図作成者が最も頭を悩ませ、見識、個性が表れる重要なポイントである。
 原告は、甲6ないし9の2、11ないし13の2を提出して、OFC空港案内図がありふれたものである旨主張するが、上記各証拠に記載された空港案内図とOFC空港案内図は類似せず、それぞれ個性的である。
 例えばチューリッヒ・クローテン空港(スイス)の案内図について、JTB作成の甲6とOFC作成の乙8の1を比較すると、JTB作成図は、OFC空港案内図ほど建物の細かい形状までは表記していない。さらに、OFC空港案内図には「動く歩道がAとBを結ぶ」「階下にはトランジットラウンジがありショッピングや軽食ができる」「高低差があるので注意」などと説明を付しているがJTB作成図ではそのような説明はない。
 また、ベルリン・テーゲル空港(ドイツ)の案内図について、甲9の1及び2とOFC作成の乙11の1を比較すると、甲9の1及び2は、ドイツ語・英語が併記してあるところ、OFC案内図は日本語で記載されている点で異なる。さらに、甲9の1及び2は情報の取捨選択及び記号化があまりにも詳細にすぎ、一般の利用者には利便性を欠く点でOFC空港案内図と異なっている。
(原告)
(1) 原告の主張
ア OFC空港案内図は、著作物とはいえない。また、第9版本件空港案内図は、OFC空港案内図を一部参考にしたと思われる部分があるとしても、OFC空港案内図に類似していない。したがって、第9版本件空港案内図がOFC空港案内図に係るOFCの著作権を侵害しているとはいえない。
 以下、OFC空港案内図の著作物性、依拠性、類似性について主張する。
イ OFC空港案内図の著作物性について
 一般的に、旅行者ないし旅行業者向けの空港案内図は、その性格上、機能性や実用性が重視され、掲載対象物の収拾選択に一定の制約があり、そこに用いられる略図技法が限定され、創作性が認められる余地が極めて少ない。
 本件においては、OFC書籍平成13年版(乙27の1、2)の各5頁の「マークの説明」部分によれば、OFC空港案内上に選択掲載されている情報は、銀行/両替所、インフォメーション、郵便局/ポスト、電話、レストラン、コーヒーショップ、バー、ギフトショップ、免税店、手荷物預かり、コインロッカー、カート、鉄道/鉄道駅、バス/バス乗り場、バン、タクシー/タクシー乗り場、レンタカー、エレベーター、エスカレーター、男性/女性トイレ、男性トイレ、女性トイレ、授乳室、ハンディキャップ用トイレ、救護室、喫煙室、待合わせポイント、駐車場であり、ごくありふれた情報のみである。マーク以外に、空港案内図上に文字で記載されている情報として手荷物受取所、入国審査、税関、乗り継ぎカウンター等であり、この点でも情報の選択に創作性はない。
 もっとも、OFCは、主として旅行代理店のカウンターにおける業務や、旅行代理店の担当者がツアーに添乗する場合に利用する目的で作成されているため、空港案内図部分以外に点線と赤字で、一般旅行客にまでは必要がないがツアー担当者が知っておいた方がよい情報が掲載されており、その文章部分に情報の取捨選択があるとして創作性が認められる可能性がないとはいえない。しかし、仮に認められるとしてもその限りであるし、本件空港案内図には、上記のような文章部分の情報は掲載されていないから、そもそも、本件においては、当該部分の創作性について検討する必要すらない。
 掲載対象とした空港施設の表記方法については、施設の形状や位置関係の表記は、実際の空港施設の形状や位置関係という客観的事実を表記するものであるから、表記方法の選択の余地は極めて限定される。旅行者の便宜を考慮するという観点から、例えば、複雑な形状の施設については単純化したり、旅行者に関係のない施設は省略するなどの簡略化が行われることも多く、簡略化の方法において選択の余地がなくはないが、極めて限られた範囲であり、簡略化の方法は、多くの空港案内図に共通する。また、当該施設がどのような施設であるかを示す表記については、一般読者が見て当該施設の種類を容易に想起させることが必要なものであるから、だれでも理解できるありふれたマークが用いられるのが通常であり、選択の余地も極めて限定的でだれもが考えるようなありふれたものとなることは明らかである。
 本件におけるOFC空港案内図については、建物の構造を真上から見た見取り図であり、建造物の表現としてはごくありふれた表現であって創作性はない。また、前記したマークの表記、マーク以外の手荷物受取所等の文字で記載されている情報も、ごくありふれた表記であり創作性がないことは明らかである。
ウ 依拠性について
 原告は、被告書籍の制作をK&Bに下請けさせていたところ、K&Bにおいては、空港ごとに各担当者が空港案内図の制作を担当していたが、現在その多くが同社を退社しているため、作成経緯の詳細は現段階においては明らかでない。
エ 類似性について
 仮に、OFC空港案内図に著作物性があると評価される場合にも、空港案内図は、前記のとおり、旅行者向けという性質上、情報の取捨選択、表記方法の工夫の余地はごく限られたものであるから、複製と評価できるのは、それがデットコピーに該当する場合のみである。
 そして、本件においては、細部を検討するまでもなく、本件空港案内図がOFC空港案内図のデットコピーでないことは一見して明らかである。
 そもそも、被告の主張は、何度読み返してみても、OFC空港案内図の創作性の主張と、OFC空港案内図と第9版本件空港案内図の類似性の主張の関連性が不明である。両者の類似点として主張している部分とOFC空港案内図の創作性のある部分として主張している部分とに共通性がないことからすると、著作権侵害に関する類否の主張ではなく、著作権侵害とは無関係に、他社のものを模倣しない旨の契約上の義務が存在していたことを前提として、創作性のない部分についての共通点を主張しているものと解釈せざるを得ない。
(2) 被告の主張に対する反論
 被告は、OFC空港案内図が著作物であることの根拠として、次の点を主張する。
@ 空港建物のような巨大建物を図面化していることから、どこまでの部分を表記するか(例えば搭乗口まで表記するか離発着出口部分まで表記するか)という点に作成者の思想が表れる。
A OFC空港案内図においては、施設内の非公表図面や立入禁止部分の情報も盛り込まれている。
B スイスのクローテン空港は、パンフレットや案内図が存在しておらず、OFC空港案内図のうち同空港の案内図については、OFCの担当者が歩幅で距離を測るなどして作成した。
C 日本人利用者の利用頻度の観点から情報の取捨選択を行った上、これらの情報を日本人にわかりやすいように統一した記号で表記しており(例えば、インフォメーション施設を「i」ではなく日本人にわかりやすいように「?」で表記している。)、この点に作成者の思想・個性が表れている。
D 一般客立入禁止部分、一般送迎客が入れる部分、航空券を持った者のみが入れる部分を色分けしており、これは、見送り、待ち合わせを便利にするためのOFC独自の発想の表れである。
E 利用者の進行方向を示す矢印を出発と到着に分けて2色で表記しており、これは、利用者の便宜を図ったものである。また、矢印を記載する位置にも作成者の思想・ノウハウが反映されている。
 しかし、上記@については、本件のような旅行者向けの空港案内図である以上、空港施設全体を表記する必要はもとよりなく、旅行者の便宜に資するように必要十分な範囲で建物の一部を表示することは至極当然のことであって、何もOFC空港案内図に限ったことではない。現に、他の旅行ガイドにおける空港案内図においても、空間的・場所的表記対象部分の選択は、OFC空港案内図と極めて類似したものになっている(甲6ないし9の2、11ないし13の2)。
 上記A及びBについては、情報入手ルートの独自性は直接は創作性の有無を左右するものではない。また、本件のような空港案内図は、多かれ少なかれ空港自体(空港運営会社、空港ビル管理会社等)が作成配布している案内図を基にしているのであり、その情報ソースに独自性は認められない。
 上記Cについては、空港案内図上にどのような情報を盛り込むかという点に関しては、一応選択の余地はあるが、本件のような旅行者向けの空港案内図であるという機能面・実用面に鑑みれば、自ずと選択の余地は極めて限定されたものとならざるを得ない。国際空港案内図上の有用ないし有益な情報というのは、出発・到着フロアの別、出発・到着ゲート、団体・個人別又は航空会社別チェックインカウンター、乗り継ぎカウンター、出入国審査所、セキュリティーチェック・手荷物検査所、税関、手荷物預かり所・受取所、レストラン、両替所・銀行、電話、トイレ、インフォメーション施設、郵便、免税店等ショップ、喫煙所、ロッカー、医務室、空港駐車場、バス・タクシー・電車乗り場等であって、限定されたものである。現に、他の旅行ガイドにおける空港案内図においても、上記の施設情報の一部を部分的に省略しているものの、掲載情報の多くはいずれの空港案内図も共通している(甲6ないし9の2、11ないし13の2)。
 上記D及びEについては、海外国際空港を利用する旅行者は、複雑な手続を一定の順番で行う必要があるから、旅行者が、このような一連の手続の流れを把握できるように何らかの工夫を施すことはごく一般的に行われていることである。そして、その工夫の方法として、出国、入国別に進むべき順路を矢印で表示すること、旅行者が手続を行うための区域や利用し得る施設部分とそれ以外の部分を色分けするなどは広く一般的に行われていることである。
 被告は、チューリッヒ・クローテン空港におけるJTB作成図とOFC空港案内図、ベルリン・テーゲル空港における他社作成図とOFC空港案内図を比較して詳細さが異なる旨主張するが、より詳細であるが故に創作性があるという主張は成り立たないし、より簡略化することについては、前記@ないしDで述べたとおりである。また、被告は、チューリッヒ・クローテン空港におけるJTBの作成図とOFC作成図を詳細に比較して、OFC空港案内図には「動く歩道がAとBを結ぶ」「階下にはトランジットラウンジがありショッピングや軽食ができる」「高低差があるので注意」などと説明を付しているがJTB作成図ではそのような説明はないと主張する。仮にこのような説明書部分に創作性が認められたとしても、本件空港案内図にはそのような説明書はないから、創作性のある部分について模倣・複製がないということになる。
 なお、被告は、OFC空港案内図と第9版本件空港案内図を比較して、前者がいかに優れているかを縷々述べて、そういった創作的レベルの違いこそ創作性がある所以であると主張するが、仮に被告のいうとおりであるとすれば、第9版本件空港案内図は、OFC空港案内図の創作的部分を再現していないことになり、被告自ら、第9版本件空港案内図が、OFC空港案内図の複製ではないことを認めているようなものである。
4 争点4(本件制作委託契約上、原告が、著作権侵害に至らない態様であっても他人の出版物を利用してはならない義務を負っていたか)
(被告)
 原告ないしK&Bと被告との間の本件制作委託契約は、民法上の委任契約又は請負契約の性質を有する無名契約であるところ、原告ないしK&Bは、委任契約上の善管注意義務の内容として、被告書籍第9版の制作業務において、仮に著作権侵害に当たらないとしても、他人の出版物を複製・模倣しない義務を負っている。著作権侵害に当たらなければ複製・模倣・他者の労力のただ乗りを許容するような契約はあり得ない。
 本件基本契約上、被告が原告ないしK&Bに対して、被告書籍シリーズの制作の報酬として支払う金額は、総額8億4000万円であり、他人の出版物を安易に書き写して制作するのではなく、現地取材を行って案内図等を自社制作することを内容とした契約であることは明らかである。
 また、原告ないしK&Bは、本件基本契約上、原告ないしK&Bが上記のような義務を負うことについて確認的に平成14年9月30日付の合意書(乙6)を作成し、被告との間で、被告書籍の制作において、他の著作物の著作権を侵害したり、他の著作物の掲載情報を使用したりしない旨合意している。
(原告)
 本件制作委託契約上、原告が、著作権侵害に至らない態様であっても他人の出版物を利用してはならない義務を負っていたことはない。
 原告代理人弁護士らと被告代理人は、平成15年7月ころから、OFCに対する対応について意見を交換していたが、この際、被告代理人弁護士が、原告及びK&Bが委任契約上の善管注意義務の内容として、被告書籍第9版の制作業務において、仮に著作権侵害に当たらないとしても、他人の出版物を複製・模倣しない義務を負っており、原告が行った被告書籍第9版の納品が契約上の債務に違反している旨の主張は一切していない。
5 争点5(原告が、第9版本件空港案内図の制作においてOFC空港案内図を利用した事実の存否)
(被告)
 前記3被告主張部分の(1)ウのとおり、原告が納品した被告書籍第9版に掲載された第9版本件空港案内図は、OFC書籍を模倣して作成されたものであったから、原告ないしK&Bには債務不履行がある。
(原告)
 前記3原告主張部分の(1)ウのとおりである。
6 争点6(原告と被告との間で被告書籍の出版に関してOFCに対して支払うべき金員を原告が負担する旨の合意があったか)
(被告)
 被告は、原告ないしK&Bを代表していたDとの間で、OFCとの紛争が解決するまで上記支払期限を延期した上、OFCに対して支払うべき損害額は原告ないしK&Bが負担する旨の合意をした。
 原告、K&B及び被告は、平成13年6月ころ、OFCから著作権侵害である旨の警告を受けたことから、原告ないしK&Bに対し、事実調査、反論資料の提供を求めていたが、原告及びK&Bの交渉窓口であったDは、OFC空港案内図の無断使用を認め、反論のための資料を被告に提供しなかった。平成14年9月30日には、上記三者間で、「OFC著作権侵害問題の解決につき、原告及びK&Bは被告の求めに応じて必要な協力を行う」旨の合意をしたが、それでもK&Bないし原告から、有用な反論資料が提出されることはなかった。
 そこで、被告は、原告ないしK&Bに対し、OFCとの紛争が解決するまで上記支払期限を延期した上、OFCに対して支払うべき損害額は原告ないしK&Bが負担すること、すなわち、原告ないしK&Bの報酬から相殺することについて了解を求め、原告ないしK&Bを代表していたDは、平成15年3月24日及び31日の話合いの席で、被告担当者Gに対し、OFC空港案内図とほぼ類似しているものについては、その責任を認めて陳謝し、請求の支払を負担すると約束した。また、OFCの空港案内図と一部類似するものについては、今後、法律専門家を交えて判断した上、その結論に従い、支払うことを了承した(乙25)。 
 原告ないしK&Bの交渉窓口であったDは、被告担当者Gが作成した書面の、次のように記載された部分に「OK」「D」と了解のサインをした。 「空港案内図の著作権侵害の度合い等を改めて洗い直す準備をお願い致します。つきましては、その支払い額が確定する間、2003年3月末支払い分を保留させて頂くようにお願い致します。」
 「法務専門家による再審では、改めて空港案内図作成状況説明、資料提示などのご協力、同業他社への事例調べ、JALグループ等への働きかけなどの解決にご尽力頂けることと、再審による支払い額確定のご負担について、両社で交わしを作成させて頂くことをお願い申し上げます。」
 上記の書面でDが了解した内容は@OFCに対する著作権侵害を認めた上、その度合いについて再検討すること、A支払額確定までの間、被告が、原告ないしK&Bに対して支払うべき報酬の支払を保留すること、B支払額確定の負担について原告ないしK&Bと被告との間で文書を交わすことである。
 このことから、原告ないしK&Bの交渉窓口であるDと被告との間では、原告ないしK&Bが、OFCに対する損害賠償金を全額負担することが合意されており、支払金額が確定した後、両社間で文書を作成することになっていたことが明らかである。
 そして、OFCとの紛争は解決し、被告はOFCに対し損害金として750万円を支払った。
 上記合意によれば、同750万円は原告が負担すべきものであるから、被告は原告に対して750万円の支払請求権を有する。
(原告)
 原告は、被告との間で、OFCとの紛争が解決するまで支払期限を延期する旨の合意をしたことはなく、OFCに対して支払うべき損害額は原告ないしK&Bが負担する旨の合意をしたこともない。
 被告の主張は、OFC空港案内図が著作物であるか否かに関係なく、もっぱら被告とOFCのみで取り決めた額を、その交渉に何ら関与していない原告が全額負担する旨の合意があったという趣旨に読めるが、このような一見して理不尽で、かつ、原告に一方的に不利益な合意をすることはあり得ないことである。
 原告ないしK&B担当者Dは、平成15年3月24日及び31日の話合いの席で、被告担当者Gに対し、OFC空港案内図とほぼ類似しているものは、その責任を認めて陳謝し、請求の支払を負担すると約束し、OFCの空港案内図と一部類似するものについては、今度、OFCと法律専門家を交えて判断した上、その結論に従い、支払うことを了承した旨主張する。上記「ほぼ類似」「一部類似」の意味が明らかではないが、著作権侵害の成否にかかわらずという趣旨であれば、原告はそのような合意をしていない。原告は、上記話合いにおいて、法的に著作権侵害と認められた場合にはK&Bの責めに帰すべき支払義務を負担する旨の意思を表示したにすぎない。そして、Dは、被告担当者Gに対し、著作権侵害と認められるか否かの判断については、弁護士をたてて判断を仰ぐこと、弁護士については、原告及びK&Bの顧問弁護士が著作権に詳しいことから、本件については、全面的に原告及びK&Bの顧問弁護士に任せてほしい旨を伝え、被告担当者Gは「よろしくお願いします」と述べて、これを了承した。
 また、被告は、原告ないしK&Bの交渉窓口であったDが、被告担当者Gが作成した書面(乙26)の次の(1)(2)の記載部分に「OK」「D」とのサインをしたことをもって、@OFCに対する著作権侵害を認めた上、その度合いについて再検討すること、A支払額確定までの間、被告が、原告ないしK&Bに対して支払うべき報酬の支払を保留すること、B支払額確定の負担について原告ないしK&Bと被告との間で文書を交わすことを合意した旨主張する。
(1) 「空港案内図の著作権侵害の度合い等を改めて洗い直す準備をお願い致します。つきましては、その支払い額が確定する間、2003年3月末支払い分を保留させて頂くようにお願い致します。」
(2) 「法務専門家による再審では、改めて空港案内図作成状況説明、資料提示などのご協力、同業他社への事例調べ、JALグループ等への働きかけなどの解決にご尽力頂けることと、再審による支払い額確定のご負担について、両社で交わしを作成させて頂くことをお願い申し上げます。」
 しかし、上記@については、上記書面に「著作権侵害の度合い等」という表現があるからといって、原告がOFC空港案内図の著作物性を前提としていたという解釈になる理由が不明である。前述のとおり、原告及び被告担当者Gは、著作権侵害に該当するかどうか明らかにするために専門家である弁護士の判断に委ねようとしていたのに、素人の間で、著作物性があるかといった専門的判断が確定しており、それを前提に話合いがなされていたという結論は到底許されるべきではないし、合理的解釈とはかけ離れている。
 また、上記Aについては、そもそも、乙26の上記(1)の記載部分には「OK」の記載が無く、Gの陳述書(乙25)には、上記話合い部分について「3月末請求の822万円についてはOFCの件解決まで支払いの延期を申し入れましたが、」Dは「請求、支払いについてはお願いしますと懇願して」いた旨記載されているのであって、被告の主張が事実に基づかないことが明らかである。
 上記Bについては、Dが、弁護士による専門的・客観的な判断の結果、仮に著作権侵害があるとされ、賠償金の支払義務が生じた場合には、原告・被告間で改めて相談の上、各々の内部負担額を決めるという趣旨と認識していたにすぎない。
 Dは、原告及びK&Bの代理人弁護士A、同B(以下「A弁護士」、「B弁護士」といい、両者を併せて「A弁護士ら」という。)に対し、OFCに対して金銭を支払う義務があるか否か意見を求め、原告代理人A弁護士らが、著作物ではないとの反論が可能である旨示唆したところ、A弁護士らにC弁護士との交渉を依頼した。A弁護士らは、被告代理人弁護士C(以下「C弁護士」という。)と面談して著作権侵害に当たらない旨説得を試みたが、C弁護士は納得しなかった。このような経緯で、A弁護士らが、C弁護士に対して、著作権侵害には当たらず、OFCから具体的事実について説明を受けるべきである旨のファックスを送信したところ、被告は、その後、A弁護士らに連絡しないまま、OFCに対して750万円を支払ったものである。
7 争点7(原告の制作した本件空港案内図がOFC空港案内図に係るOFCの著作権を侵害しているといえるか)
 下記のほか、別紙「空港案内図対比表」の「被告の主張」「原告の主張」欄記載のとおりである。
(被告)
 第9版本件空港案内図以外の被告書籍は、案内図全体が少し斜めに傾いていない点を除いて第9版本件空港案内図と同様であるから、前記3の第9版本件空港案内図がOFC空港案内図に係るOFCの著作権を侵害しているのと同様に、本件空港案内図は、いずれもOFC空港案内図に係るOFCの著作権を侵害している。
(原告)
 前記3の原告の主張のとおり、本件空港案内図は、いずれもOFC空港案内図に係るOFCの著作権を侵害していない。
8 争点8(本件制作委託契約上、原告が、著作権侵害に至らない態様であっても他人の出版物を利用してはならない義務を負っていたか)
(被告)
 前記4の被告の主張のとおり、原告は、本件基本契約上、著作権侵害に至らない態様であっても他人の出版物を利用してはならない義務を負っていた。
(原告)
 前記4の原告の主張における本件制作委託契約と同様、原告は、本件基本契約上、著作権侵害に至らない態様であっても他人の出版物を利用してはならない義務を負っていたものではない。
 なお、原告が、被告と本件制作委託契約を締結したのは平成10年9月以降であるから、同月より前には原告は、本件基本契約上の義務を負っていないことは当然である。
9 争点9(原告が、本件空港案内図の制作においてOFC空港案内図を利用した事実の存否)
(被告)
 前記5の第9版本件空港案内図に関する被告の主張と同様である。
(原告)
 前記5の第9版本件空港案内図に関する原告の主張と同様である。
10 争点10(原告の債務不履行による損害の有無及び額)
(被告)
 OFCは、OFC空港案内図を使用許諾する場合、空港全体図1つにつき1万2000円、ターミナル図のうち基本図1セットにつき3万6000円、追加図1図につき6000円の使用許諾料を得ている(乙17)。
 そして、被告書籍の平成8年版から平成14年版までのうち別紙「OFC作成一覧表」の「昭文社『個人旅行』掲載空港図」の「書籍名」欄記載の各書籍に掲載された本件空港案内図は、同一覧表「対象図数」欄記載のとおり、空港全体図7図、ターミナル図のうち基本図38セット、追加図4図についてOFC空港案内図に係るOFCの著作権を侵害しているから、原告ないしK&Bの著作権侵害行為ないし複製・模倣行為によって、OFCに合計1366万2000円の損害を与えた(ただし、上記各書籍に掲載された本件空港案内図のうち、別紙「空港案内図対比表」の「空港名」欄に記載のない空港に係る空港案内図については、複製・模倣とまでは断定できない等の理由で本件訴訟では損害賠償請求の対象から除外する。)。なお、原告が設立されたのは平成10年9月であり、上記一覧表の平成8年から平成10年9月までの間の著作権侵害ないし複製行為は、原告ではなくK&Bによってなされたものであるというべきであるが、上記一覧表によれば、平成10年9月以降に限った著作権侵害ないし複製行為によっても、被告は、750万円を超える損害を被っている。また、原告は、K&Bの契約上の地位を引き継いでいるものというべきであるから、債権・債務の発生原因をともに承継しているものである。
 さらに、原告ないしK&Bは、OFCとの交渉中であったにもかかわらず、被告書籍第9版(平成15年版)についても、OFC空港案内図を複製・模倣した本件空港案内図を掲載して被告に納品したために、さらに、OFCに対し、実施料相当額である74万4000円の損害を与え、原告ないしK&Bの納品した被告書籍により、被告はOFCに対して合計1440万6000円の損害を与えた。
(原告)
 被告の主張は争う。
11 争点11(原告の債務不履行と被告の損害との因果関係の有無)
(原告)
 仮に著作権侵害と評価されることがあっても、被告は、OFC空港案内図の著作物性について十分な検討、理解をしないままOFCのいうがままに賠償金を支払ったのであるから、著作権侵害に関して、被告がOFCに支払った金員と原告の行為には因果関係はない。本件訴訟において、被告は、OFC空港案内図の著作物性については、OFCによる適切な主張立証が必要であるなどと主張しているが、これは、被告自らは、OFC空港案内図の著作物性について十分な検討をしていなかったことの証左である。
 また、債務不履行に基づく損害の主張については、被告とOFCとの交渉段階において、被告がOFC空港案内図の著作物性について適切な主張立証ができないのであれば、原告に十分な反論の機会を与えるべきであり、また、原告の方からOFCと直接交渉したい旨申し入れていた。それにもかかわらず、被告は、これを拒絶してOFCに対して賠償金を支払い、原告において、被告に無用な金員を支払わないように対処する機会を奪った。
 したがって、仮に債務不履行があったと評価される場合であっても、原告の債務不履行と被告の損害との間には因果関係がない。
(被告)
 原告ないしK&Bが、被告との間の契約上の債務の履行において、他人の著作権を侵害したり、著作権侵害とはいえないまでも違法行為を行なった場合には、当該著作権侵害ないし違法行為を原因として被告に相当額の損害が生じた以上、原告ないしK&Bは、当該損害を賠償すべきである。
 原告は、被告が、OFC空港案内図の著作物性について十分に検討しないままOFCに対して750万円を支払ったのであるから、原告の被告書籍制作行為と被告の750万円の出損との間に因果関係はない旨主張する。
 しかし、原告及びK&Bに対し、再三にわたり、事実関係の調査と反論資料の提供を求めて説明の機会を与えたにもかかわらず、原告ないしK&Bが、OFC空港案内図を複製・模倣したことを認め、反論材料を提供できなかったために、上記金額を前提に交渉せざるを得なかったものであり、被告の検討が不十分であったということはない。
 被告は、OFCに対して賠償金を支払うか否かにつき可能な範囲で協議したが、K&BのHから、被告担当者Gに対し、平成15年7月24日に、被告の立てた弁護士の能力についての評価を依頼者である被告に直接伝えたり、影響力を有する人物の名前を出して揺さぶりをかけるような、不必要かつ背信的で、強迫的な内容のメールを送ってきたことから、これ以上原告ないしK&Bと信頼関係を前提とした交渉はできないと考え、原告ないしK&Bとの交渉を打ち切って、OFCに対して750万円を支払ったものである。
 さらに、原告は、被告が、OFCの言いなりに支払ったなどと主張するが、被告は、OFCとの交渉において、請求額が1440万円であったにもかかわらず、約半額の750万円まで減額交渉を行い、OFCからの出版差止め及び書店からの回収請求を断固として拒否したものであって、原告の上記主張は根拠がない。
 なお、原告ないしK&Bは、OFCとの問題について交渉中であった平成15年4月に、これまでの本件空港案内図を斜めに傾斜させただけの空港案内図を掲載した被告書籍を納品し、被告はこれを販売した。しかし、OFCは、被告書籍第9版(平成15年版)に掲載された上記本件空港案内図もOFCの著作権を侵害しているとして態度を硬化させた。OFCとの交渉中に、原告ないしK&Bが再度OFCの著作物を改変する行為を行ったことも重要な要因の一つになって被告はOFCとの合意及び解決金の支払という状況に追い込まれることになった。
12 争点12(本件基本契約(乙5)第8項第2項イに基づく支払済み報酬返還請求権の有無)
(被告)
 本件基本契約上、原告ないしK&Bが著作権侵害を行なったときは、被告は、交付した報酬全額を返還請求できる旨の合意があった(乙5第8項、第2項イ号)。
 そして、原告ないしK&Bは、前記のとおり、被告書籍の制作にあたって、OFCの著作権を侵害しているから、被告は、原告ないしK&Bとの本件基本契約を解除した上、原告ないしK&Bが受領済みの報酬全額の返還を請求する。被告は、原告ないしK&Bに対する同債権を自働債権として、原告の本訴請求権と750万円の範囲で相殺する。
(原告)
 乙5に係る契約が被告と原告との間に適用されるとしても、被告が主張するように、被告が原告に対して交付した報酬全額の返還請求権を有するのは、原告が著作権侵害を行なったときであって、前記7の原告の主張部分記載のとおり、原告は著作権侵害をしていない。
13 争点13(原告が本件空港案内図を掲載して被告書籍を制作、納品したことが、被告ないしOFCに対する不法行為に該当するか)
(被告)
 著作権法の趣旨は、他人の創作にただ乗りして時間とコストを節約し、利益を得ようとする者を許さないということにある。このような著作権法の趣旨を推し進めていく場合、仮に著作物ではないものであっても、法的保護に値する利益を侵害している場合には一般不法行為が成立し得る。
 本件において、OFCは、世界中の主要空港につき案内図(OFC空港案内図)を独自に作製して創作的要素によって商品価値を高め、これを用いて1冊の本(OFC書籍)を出版し、あるいは、同案内図を有償で使用許諾することによって営業を行っているのであるから、原告ないしK&Bが、上記案内図を複製又は模倣して空港案内図を作成して、他社に納品して多額の報酬を受領する行為は、本来であれば、OFCが適法に取得できる使用許諾料を取得できなくさせるものであり、また、OFC書籍の商品価値を低下させるものであってOFCに対する不法行為を構成するといえる。
 そして、被告は、被告書籍の出版元として、OFCに対して、原告のOFCに対する不法行為に基づく損害賠償金750万円を支払ったから、原告に対して750万円を求償する権利を有する。
(原告)
 被告は、著作権侵害が認められないとしても、法的保護に値する利益が侵害されている場合には、一般不法行為が成立し得ると主張する。
 一般論としてはそのとおりであるが、一般に市場における競争は本来自由であることに照らせば、著作権侵害に該当しないような行為については、当該行為がことさらに相手方に損害を与えることのみを目的としてなされたような特段の事情が存在しない限り、民法上の一般不法行為を構成することはないというべきである。
 本件においては、原告がOFCに損害を与えることのみを目的としたような事情は一切存在せず、そもそも、OFC空港案内図と本件空港案内図は、旅行者向け空港案内図という性質上必然的に共通する類似点が存在するにすぎない。これらの事情に照らせば、本件において一般不法行為が成立しないことは明らかである。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(原告と被告との間で、被告書籍第9版の制作委託契約が締結されたか)
(1) 証拠(甲1の1ないし9)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、平成13年4月20日、原告に対して被告書籍第9版の制作を発注していることが認められ、証拠(甲2の1ないし10)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、原告から平成15年3月31日、被告書籍第9版の制作に対する報酬を請求され、原告に上記報酬の一部を支払った事実が認められる。他方、被告書籍第9版の制作委託契約が、被告の主張するとおり、K&Bと被告ないしK&Bと原告と被告との間で締結されたものであったとすれば、被告がK&Bに対して上記報酬の一部を支払ったか、あるいは被告とK&Bとの間で報酬の支払をめぐってのやりとりが行われた事実が当然認められるべきところ、本件においては、そのような事情の存在をうかがわせる証拠はない。
 以上によれば、被告書籍第9版の制作委託契約(本件制作委託契約)は、遅くとも平成13年4月20日までの間に、原告と被告との間で締結されたものと認めるのが相当である。
(2) たしかに、本件制作委託契約締結後に同契約等に関して作成された平成14年9月30日付合意書(乙6)には、原告のみならずK&Bも受注者として記載されている。しかし、同合意書は、被告書籍第9版の制作委託契約(本件制作委託契約)のみならず、マガジン海外版、マガジン箱根平成15年版の仕様変更分等の制作委託、従前の被告書籍に掲載された写真や記事に関する今後の使用についての取決め等を含むものであり、少なくとも平成10年ころまではK&Bが被告書籍の制作を委託されていたこと、被告書籍第9版に関しては原告がK&Bに制作を再委託していること(弁論の全趣旨)に照らせば、同合意書に受注者としてK&Bも記載されていることをもって、上記認定事実を覆すには足りない。
 また、被告は、被告書籍第9版の奥付の記載や本件訴訟に至る経緯において、K&Bの代表者であるDが交渉に当たっていた事実を指摘するが、いずれも上記認定事実を覆すには足りない。
 なお、被告書籍第9版の制作委託契約上の報酬支払期日は、平成15年4月末日とされている(甲2の1)。
(3) 以上のとおり、被告書籍第9版の制作委託契約(本件制作委託契約)は、原告と被告との間で締結されたものと認めるのが相当である。  
2 争点3(被告書籍第9版に掲載された第9版本件空港案内図がOFC空港案内図に係るOFCの著作権を侵害しているといえるか)
(1) OFC空港案内図の著作物性
ア 著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう(著作権法2条1項1号)。本件で問題となっている空港案内図は、実際に存在する建築物の構造を描写の対象とするものである。実際に存在する建築物の構造を描写の対象とする間取り図、案内図等の図面等であっても、採り上げる情報の選択や具体的な表現方法に作成者の個性が表れており、この点において作成者の思想又は感情が創作的に表現されている場合には、著作物に該当するということができる。
 もっとも、空港案内図は、実際に存在する建築物である空港建物等を主な描写対象としているというだけでなく、空港利用者に対して実際に空港施設を利用する上で有用な情報を提供することを目的とするものであって、空港利用者の実用に供するという性質上、選択される情報の範囲が自ずと定まり、表現方法についても、機能性を重視して、客観的事実に忠実に、線引き、枠取り、文字やアイコンによる簡略化した施設名称の記載等の方法で作成されるのが一般的であるから、情報の取捨選択や表現方法の選択の幅は狭く、作成者の創作的な表現を付加する余地は少ないというべきである。
イ 本件において、第9版本件空港案内図のうち証拠として提出されているものは4つあるが、当該空港案内図の描写対象となっている空港は、@チューリッヒ・クローテン空港(乙21の1)、Aマドリッド・バラハス国際空港(乙22の1)、Bバルセロナ・プラット国際空港(乙23)及びCベルリン・テーゲル国際空港(乙24の1)の4空港である。
 上記4空港に対応するOFC空港案内図は、@乙8の1(チューリッヒ・クローテン空港。OFC書籍平成8年版に掲載)、A乙9の1(マドリッド・バラハス国際空港。OFC書籍平成8年版に掲載)、B乙10の1(バルセロナ・プラット国際空港。OFC書籍平成8年版に掲載)、C乙11の1(ベルリン・テーゲル国際空港OFC書籍平成8年版に掲載)の4つである(以下、上記4つのOFC空港案内図を、「第9版対応OFC空港案内図」という。)。
 そこで、以下、第9版対応OFC空港案内図の著作物性について検討する。
ウ 証拠(乙51、52)によれば、OFCから第9版OFC空港案内図の制作委託を受けた株式会社ワークショップ21の従業員であったI(以下「I」という。)は、概ね次のような手順で第9版対応OFC空港案内図を作成したものと認められる。
(ア) 資料収集
 各国の在日観光局、各空港の管理会社、日本空港の関連会社等から収集した資料及び現地を取材して、簡単な略図を作成し、写真を撮影する。
(イ) 表示する区画及び構成の決定
 渡航者の便宜と紙面のスペースの観点から、ターミナル内のうちどの区画を図面化するかを決定する。空港建物は、3次元の構造物で、通常のビルと異なり、各階が同じ大きさのフロアとは限らず、中2階、中3階、ベランダ状のフロアが存在していたり、それらのフロアがエスカレーターや階段で接続されているなど複雑な構造物となっていることが多い。このため、まず、空港建物をどのように分割し、どの区画とどの区画を合わせて1枚の図面として表すかを決定する。
(ウ) 表示する情報の選択
 図面化することが決定した区画内にある施設等の中から渡航者に必要と思われる施設、必要のない施設(利用頻度の低い階段やエレベーター、渡航者が利用する通路の反対側にあるショップ等)を選別し、後者については表示しない。なお、OFC書籍平成8年度版からは、海外旅行客の増加に伴い、乗り継ぎの必要が高まるであろうと考えて、取材先各空港の乗り継ぎカウンターの場所及びそこまでの経路に関する情報を重点的に掲載することにした。
 電話ボックス、トイレ、両替所等空港内に必ず設置されている施設については、比較的利用頻度の高そうな電話ボックス、トイレ、両替所のみを表記した。
 渡航者が探すことはまずないと考えられる待合室、ベンチ、搭乗ゲートはほぼすべて省略した。また、柱、壁の厚み等も省略した。
(エ) 表示方法について
 記載対象とする施設のうち、渡航者に必要なものは強調して表示するようにした。また、手荷物受取所と税関の間の通路が狭い場合には、意図的に手荷物受取所及び税関の設備を大きく表示するなどした(ホーチミン空港、ホノルル空港。逆に、意図的に税関の設備の数を減らすとともに小さく表示して通路が広いことを示したのがデンパサール空港。)。
(オ) 客観的事実以外の情報の表示について
 実際の施設に存在するものではないが、渡航者が各空港で受けるべき手続の流れに沿って動線を記載した。各空港において、渡航者が受けるべき手続の流れは異なっており(例えば、モスクワのシェレメチェボ空港においては、搭乗の際にまず税関検査を受けてから空港会社のカウンターでチェックイン手続を行なう。乙52の別紙6。)、このような動線も綿密な調査に基づいて行なった。
 同じく、渡航者の立入が禁止されているエリアと立入可能なエリアを色分けして表示した。各空港の立入禁止とするか否かの基準は必ずしも一定しておらず、いずれに分類するかについて、独自に判断した(例えば、アメリカのように航空券を持っていなくてもゲートまで立入ることができる場合に、ゲートまでの区画を立入禁止とするか否かは、迷うところであったが、Iは、立入可能区画として色を表示した。)。
エ 証拠(甲6、7の1、2、11、12、乙8の1、9の1、10の1、11の1、乙51、57、58)及び弁論の全趣旨によれば、第9版対応OFC空港案内図の概要は、概ね次のとおりである。
(ア) チューリッヒ・クローテン空港のOFC空港案内図(乙8の1)
 ターミナル、駐車場、オペレーションセンター及び敷地内道路等各種空港敷地内設備のうち、ターミナル部分を、ターミナルA及びBの各1階部分、ターミナルBの3階部分、ターミナルA及びBの各2階部分の3つのフロア図に分けて図面化して、3階部分の図を1階部分と2階部分との間に配置し、実際の空港の形状に忠実な形状を直線による枠囲みで表示したものである。
 ターミナル内のフロアについては、一般客の立入禁止区域、一般客の立入可能区域及び一般客には関係のない区域に色分けし、それぞれに黄緑色、白色、灰色を配色している。
 主な施設は枠で囲んで水色に配色して表示するか、枠で囲まずに所在場所付近に、文字(日本語と英語の併記)又はアイコンで施設の名称を記載して表示している。掲載された施設は、トイレ、レストラン、薬屋、売店、新聞スタンド、育児室、チェックインカウンター、乗継ぎカウンター、出発バス・ゲート、手荷物受取所、税関、遺失物取扱所、両替所、ホテル予約、手荷物一時預所、花屋、コインロッカー、公衆電話、ホテルバス乗り場、警察、出国審査、入国審査、セキュリティチェック、免税手続所等である。
 フロア部分には、出発客の順路が灰色の矢印で記載されており、到着客の順路が青色の矢印で記載されている。
(イ) マドリッド・バラハス空港のOFC空港案内図(乙9の1)
 国際線ターミナル、国内線ターミナル、駐車場、敷地内道路等各種空港敷地内設備のうち、国際線ターミナル部分を、1階部分、2階部分の2つのフロア図に分けて、実際の空港の形状に忠実な形状を直線ないし弧線による枠囲みで表示したものである。
 ターミナル内のフロアについては、一般客の立入禁止区域、一般客の立入可能区域及び一般客には関係のない区域に色分けし、それぞれに黄緑色、白色、灰色を配色している。
 主な施設は枠で囲んで水色に配色して表示するか、枠で囲まずに所在場所付近に、文字(日本語と英語の併記)又はアイコンで施設の名称を記載して表示している。掲載された施設は、トイレ、レストラン、売店、チケッティングカウンター、チェックインカウンター、乗り継ぎカウンター、手荷物受取所、税関、両替所、レンタカー、手荷物一時預所、ホテル案内、スペイン国鉄チケット売り場、出国審査、入国審査、セキュリティチェック、インフォメーション等である。
 フロア部分には、出発客の順路が灰色の矢印で記載されており、到着客の順路が青色の矢印で記載されている。
(ウ) バルセロナ・プラット空港のOFC空港案内図(乙10の1)
 ターミナル、駐車場、敷地内道路等各種空港敷地内設備のうち、ターミナル部分を、1階部分、2階部分の2つのフロア図に分けて、実際の空港の形状に忠実な形状を直線による枠囲みで表示したものである。
 ターミナル内のフロアについては、一般客の立入禁止区域、一般客の立入可能区域及び一般客には関係のない区域に色分けし、それぞれに黄緑色、白色、灰色を配色している。
 主な施設は枠で囲んで水色に配色して表示するか、枠で囲まずに所在場所付近に、文字(日本語と英語の併記)又はアイコンで施設の名称を記載して表示している。掲載された施設は、トイレ、レストラン、本屋、売店、育児室、チケッティング・チェックインカウンター、乗り継ぎカウンター、手荷物受取所、税関、両替所、レンタカー、出国審査、入国審査、セキュリティチェック、待合室、動く歩道、エスカレーター等である。
 フロア部分には、出発客の順路が灰色の矢印で記載されており、到着客の順路が青色の矢印で記載されている。
(エ) ベルリン・テーゲル空港のOFC空港案内図(乙11の1)
 ターミナル、駐車場、敷地内道路等各種空港敷地内設備のうち、ターミナル1階部分のフロア図を、実際の空港の形状に忠実な形状を直線による枠囲みで表示したものである。
 ターミナル内のフロアについては、一般客の立入禁止区域、一般客の立入可能区域及び一般客には関係のない区域に色分けし、それぞれに黄緑色、白色、灰色を配色している。
 主な施設は枠で囲んで水色に配色して表示するか、枠で囲まずに所在場所付近に、文字(日本語と英語の併記)又はアイコンで施設の名称を記載して表示している。掲載された施設は、トイレ、レストラン、育児室、売店、警察、手荷物受取所、両替所、遺失物保管所、公衆電話、授乳室、バスチケット販売所等である。
 フロア部分には、出発客の順路が灰色の矢印で記載されており、到着客の順路が青色の矢印で記載されている。
オ 上記イ、ウ記載の認定事実によれば、第9版対応OFC空港案内図は、@ターミナル部分をどのように区分して図にするか(ただし、チューリッヒ・クローテン空港以外は、単に1階部分、2階部分に分けるか、1階部分のみを記載するものであって、この点に創作性は認められない。チューリッヒ・クローテン空港については、建物構造が比較的複雑なことから、どのように区分して図面化するかは選択の余地があるものの、OFC空港案内図においては、1階部分、2階部分、3階部分に区分したにすぎず、この点に関する創作性は、限定的な範囲においてのみ認め得るものというべきである。)、Aフロア内施設又はフロア部分の色分けをどのようにするか(ただし、フロア部分を色分けする手法は、原告、OFC以外の者による空港案内図でも多く採用されている一般的な手法であり(甲8の1、2、9の1、2、12、乙51)、フロア内の施設を色分けする手法も、原告、OFC以外の者による空港案内図でも採用されている手法であるから(甲6、7の1、2)、区分けの仕方、具体的な色遣い等について個性が表れるとしても、この点に関する創作性は、限定的な範囲においてのみ認め得るものというべきである。)、Bいかなる施設を掲載するか(ただし、第9版対応OFC空港案内図において掲載された施設は、いずれも、空港利用者が利用する頻度が高いであろうことが予想される施設であって、見やすさ、レイアウトとの関係で、掲載するか否かに選択の余地はあるものの、この点に関する創作性は、限定的な範囲においてのみ認め得るものというべきである。)、C利用客の順路を出発客、到着客毎に色分けして表示している点(ただし、利用客の順路を矢印で表示すること自体は、原告、OFC以外の者による空港案内図でも多く採用されている一般的な手法であり、これを出発客、到着客毎に色分けする手法もよく用いられるものであるから(甲6、7の1、2、8の1、2、12、乙51、乙58)、この点に関する創作性は、限定的な範囲においてのみ認め得るものというべきである。)及びD上記@ないしCを総合した結果としての見やすさの点において創作性を認めることができるから、一応、著作物に当たるものと認めることができる。
(2) 第9版本件空港案内図が第9版対応OFC空港案内図の著作権を侵害しているといえるか
ア 第9版本件空港案内図が第9版対応OFC空港案内図に係るOFCの著作権を侵害しているというためには、第9版本件空港案内図の制作者がOFC空港案内図に接し、これに依拠して第9版本件空港案内図を制作したことのほかに、その結果制作された第9版本件空港案内図が、第9版対応OFC空港案内図に類似し、第9版本件空港案内図を見る者が第9版対応OFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るものであることを要する。
 そこで、以下、第9版本件空港案内図と第9版対応OFC空港案内図の依拠性及び類似性について判断する。 
イ 依拠性について
 原告は、本件空港案内図の作成に当たって、OFC空港案内図を参考にしたことを認めており、本件空港案内図の作成経緯について有効な主張、立証をしないから、弁論の全趣旨によれば、原告から委託を受けたK&Bは、本件空港案内図の作成に当たっては、OFC空港案内図を参照したものと認められ、第9版本件空港案内図の作成においても、第9版対応OFC空港案内図を参照したものと認められる。したがって、第9版本件空港案内図から、第9版対応OFC空港案内図における創作的表現部分についての特徴を感得し得る場合には、依拠性を認めることができる。
ウ 類似性について
 そこで、次に、上記(1)において認定した第9版対応OFC空港案内図の内容及びその創作的表現部分等との対比において、第9版本件空港案内図が第9版対応OFC空港案内図に類似し、第9版本件空港案内図を見る者が第9版対応OFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るものであることを要するかどうかを、検討する。
(ア) チューリッヒ・クローテン空港の第9版本件空港案内図(乙21の1)について((ア)において、「本件空港案内図」というときは上記空港案内図を指し、「OFC空港案内図」というときはこれに対応する第9版対応OFC空港案内図を指す。)
a 本件空港案内図の内容
 本件空港案内図は、ターミナル、駐車場、オペレーションセンター、敷地内道路等各種空港敷地内設備のうち、ターミナル部分1階に隣接されている部分を、ターミナルA及びBの1階部分及び敷地内道路の一部、ターミナルA及びBの2階部分、ターミナルBの3階部分の3つのフロア図に分けて図面化し、1階部分、2階部分、3階部分を順番に並べ、実際の空港の形状に忠実な形状を直線による枠囲みで、右斜め上の方向から見た角度で斜めに表示したものである。
 ターミナル内のフロアについては、一般客の立入禁止区域、一般客の立入可能区域及び一般客には関係のない区域に色分けし、それぞれに桃色、肌色、黄色を配色している。
 主な施設は枠で囲んで紫色又は黄緑色に配色して表示するか、枠で囲まずに所在場所付近に、文字(日本語)又はアイコンで施設の名称を記載して表示している。掲載された施設は、手荷物受取所、税関、ホテル予約、手荷物一時預所、チェックインカウンター、乗り継ぎカウンター、警察、薬局、トイレ、レストラン、売店、バス・ゲート、遺失物取扱所、両替所、旅行代理店KUONI、公衆電話、ホテルバス乗り場、出国審査、入国審査、免税手続所、有料テラス、携帯電話レンタル等である。
 フロア部分では、出発客の順路が緑色の矢印で記載されており、到着客の順路が赤色の矢印で記載されている。
b OFC空港案内図との共通部分
@ ターミナル、駐車場、オペレーションセンター、敷地内道路等各種空港敷地内設備のうち、ターミナル部分を主として描写の対象としている。
A ターミナル部分を、ターミナルA及びBの各1階部分、ターミナルA及びBの各2階部分、ターミナルBの3階部分の3つのフロア図に分けて図面化している。
B 実際の空港の形状に忠実な形状を直線による枠囲みで表示している。
C ターミナル内のフロアについて、一般客の立入禁止区域、一般客の立入可能区域及び一般客には関係のない区域に色分けしている。
D 手荷物受取所、税関、ホテル予約、手荷物一時預所、チェックインカウンター、乗り継ぎカウンター、警察、薬局、トイレ、レストラン、売店、出発バス・ゲート、遺失物取扱所、両替所、公衆電話、ホテルバス乗り場、出国審査、入国審査、免税手続所が掲載されている。
E Dの情報を、文字又はアイコンによって表示している。
F 出発客の順路と出発客の順路を色分けしている。
c OFC空港案内図との相違部分
@ OFC空港案内図では敷地内道路は記載されていないのに対し、本件空港案内図は、敷地内道路のうちターミナル部分1階に隣接されている部分を、ターミナルA及びBの1階部分の図面の中に記載している。
A OFC空港案内図は、3階部分の図を1階部分と2階部分との間に配置しているのに対し、本件空港案内図は、1階部分、2階部分、3階部分の順番に配置している。
B OFC空港案内図は、空港ターミナルを真上から見た角度で記載しているが、本件空港案内図は、右斜め上の方向から見た角度で斜めに表示している。
C ターミナル内のフロアの色分けの色が、OFC空港案内図では黄緑色、灰色、白色であるが、本件空港案内図では桃色、黄色、肌色である。
D 施設部分が紫色と黄緑色に色分けされている。
E 情報を示す文字について、OFC空港案内図は日本語と英語を併記しているが、本件空港案内図は日本語のみである。また、本件空港案内図の文字の方が大きく、フロア部分の枠線に比して太字で濃く表示されている。
F OFC空港案内図には新聞スタンド、育児室、セキュリティチェック、花屋、コインロッカーが掲載されているが本件空港案内図には掲載されていない。
G 本件空港案内図には、有料テラス、旅行代理店KUONI、携帯電話レンタルが掲載されているが、OFC空港案内図には掲載されていない。
H 矢印の位置、色が異なる。
d 著作権侵害の成否
 本件空港案内図とOFC空港案内図は、ターミナル部分をどのように区分して図面化するかという点で、前記b@Aの共通点を有するが、かかる手法は、空港案内図を作成する際の極めて一般的な手法であり、この点をもって第9版対応OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴ということはできない。むしろ、上記両空港案内図は、前記c@ABの相違点を有しており、特に前記cAの点においては、OFC空港案内図独自の工夫とみられる点を備えていないということができる。
 上記両空港案内図は、フロア及びフロア内施設の具体的な表現方法という点で、前記bBCの共通点を有しているが、同Bの手法は、空港案内図を作成する際の極めて一般的な手法であり、同Cの手法は、前記(1)オ記載のとおり、OFC以外の者による空港案内図でも多く採用されている一般的な手法であり、この点をもってOFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とはいうことはできない。むしろ、上記両空港案内図は、前記cCDEの相違点を有しており、殊に、第9版本件空港案内図の方が、施設の名称を表示する文字が大きく、フロア部分の枠線に比して太字で濃い点において、見やすさや与える印象に差異を生じている。
 上記両空港案内図は、施設情報の選択という点で、前記bDの共通点を有するが、これらの掲載情報は、いずれも創作的表現部分における特徴とはいえない。むしろ、上記両空港案内図は、前記cFGの点で相違点を有している。
 上記両空港案内図は、前記bFの点で共通点を有するが、この手法は、前記(1)オ記載のとおり、よく用いられる手法であるから、この点をもってOFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とはいえない。
 前記bEの点については、そもそも創作性が認められない。
 また、上記両空港案内図は、前記cHの点で相違している。
 そうすると、上記両空港案内図は、共通している部分については、空港案内図を作成する際によく用いられる一般的な手法であって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とは言い難く、むしろ、施設名称の具体的表記方法や全体の配色等によって、異なる印象を与えるものであるから、本件空港案内図を見る者がOFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
(イ) マドリッド・バラハス空港の第9版本件空港案内図(乙22の1)について((イ)において、「本件空港案内図」というときは上記空港案内図を指し、「OFC空港案内図」というときはこれに対応する第9版対応OFC空港案内図を指す。)
a 本件空港案内図の内容
 国際線ターミナル、国内線ターミナル、駐車場、敷地内道路等各種空港敷地内設備のうち、国際線ターミナル部分を、1階部分、2階部分の2つのフロア図に分けて、実際の空港の形状に忠実な形状を直線ないし弧線による枠囲みで、右斜め上の方向から見た角度で斜めに表示したものである。
 ターミナル内のフロアについては、一般客の立入禁止区域、一般客の立入可能区域に色分けし、それぞれに桃色、肌色を配色している。
 主な施設は枠で囲んで紫色又は黄緑色に配色して表示するか、枠で囲まずに所在場所付近に、文字(日本語)又はアイコンで施設の名称を記載して表示している。掲載された施設は、トイレ、チェックインカウンター、手荷物受取所、税関、両替所、レンタカー、ホテル案内、スペイン国鉄(レンフェ)チケット売り場、出国審査、入国審査、セキュリティチェック、インフォメーション、ATM、イベリア航空インフォメーション、遺失物取扱所等である。
 フロア部分には、矢印の記載はない。
b OFC空港案内図との共通部分
@ ターミナル、駐車場、オペレーションセンター、敷地内道路等各種空港敷地内設備のうち、ターミナル部分を描写の対象としている。
A 国際線ターミナル部分を、1階部分、2階部分の2つのフロア図に分けている。
B 実際の空港の形状に忠実な形状を直線ないし弧線による枠囲みで表示している。
C ターミナル内のフロアについて、一般客の立入禁止区域、一般客の立入可能区域に色分けしている。
D トイレ、チェックインカウンター、手荷物受取所、税関、両替所、レンタカー、ホテル案内、スペイン国鉄(レンフェ)チケット売り場、入国審査、セキュリティチェック、インフォメーションが掲載されている。
E Dの情報を、文字又はアイコンによって表示している。
c OFC空港案内図との相違部分
@ OFC空港案内図は、空港ターミナルを真上から見た角度で記載しているが、本件空港案内図は、右斜め上の方向から見た角度で斜めに表示している。
A ターミナル内のフロアの色分けの色が、OFC空港案内図では黄緑色、灰色、白色であるが、本件空港案内図では桃色、肌色である。
B OFC空港案内図では、施設部分の配色は水色であるが、本件空港案内図は、施設部分が紫色と黄緑色に色分けされている。
C 情報を示す文字について、OFC空港案内図は日本語と英語を併記しているが、本件空港案内図は日本語のみである。また、本件空港案内図の文字の方が大きく、フロア部分の枠線に比して太字で濃く表示されている。
D OFC空港案内図にはレストラン、本屋、売店、育児室、チケッティングカウンター、乗り継ぎカウンター、手荷物一時預所、が掲載されているが本件空港案内図には掲載されていない。
E 本件空港案内図には、ATM、イベリア航空のインフォメーション、遺失物取扱所が掲載されているが、OFC空港案内図には掲載されていない。
F OFC空港案内図には出発客の順路を到着客の順路を色分けした矢印が記載されているが、本件空港案内図には記載されていない。
d 著作権侵害の成否
 本件空港案内図とOFC空港案内図は、ターミナル部分をどのように区分して図面化するかという点で、前記b@Aの共通点を有するが、かかる手法は、空港案内図を作成する際の極めて一般的な手法であり、この点をもってOFC空港案内図の創作的表現部分における特徴ということはできない。むしろ、上記両空港案内図は、前記c@の相違点を有している。
 上記両空港案内図は、フロア及びフロア内施設の具体的な表現方法という点で、前記bBCの共通点を有しているが、同Bの手法は、空港案内図を作成する際の極めて一般的な手法であり、同Cの手法は、前記(1)オ記載のとおり、OFC以外の者による空港案内図でも多く採用されている一般的な手法であり、この点をもってOFC空港案内図の創作的表現部分における特徴ということはできない。むしろ、上記両空港案内図は、前記cABCの相違点を有しており、殊に、第9版本件空港案内図の方が、施設の名称を表示する文字が大きく、フロア部分の枠線に比して太字で濃い点において、見やすさや与える印象に差異を生じている。
 上記両空港案内図は、施設情報の選択という点で、前記bDの共通点を有するが、これらの掲載情報は、いずれも創作的表現部分における特徴とはいえない。むしろ、上記両空港案内図は、前記cDEの点で相違点を有している。
 前記bEの点については、そもそも創作性が認められない。
 また、上記空港案内図は、前記cFの相違点がある。
 そうすると、上記両空港案内図は、共通している部分については、空港案内図を作成する際によく用いられる一般的な手法であって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とは言い難く、むしろ、施設名称の具体的表記方法や全体の配色等によって、異なる印象を与えるものであるから、本件空港案内図を見る者がOFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
(ウ) バルセロナ・プラット空港の第9版本件空港案内図(乙23)について((ウ)において、「本件空港案内図」というときは上記空港案内図を指し、「OFC空港案内図」というときはこれに対応する第9版対応OFC空港案内図を指す。)
a 本件空港案内図の内容
 ターミナル、駐車場、敷地内道路等各種空港敷地内設備のうち、ターミナル1階部分及びこれに隣接する敷地内道路を、一つのフロア図として、実際の空港の形状に忠実な形状を直線による枠囲みで、右斜め上の方向から見た角度で斜めに表示したものである。
 ターミナル内のフロアについては、一般客の立入禁止区域、一般客の立入可能区域に色分けし、それぞれに桃色、肌色を配色している。
 主な施設は枠で囲んで紫色又は黄緑色に配色して表示するか、枠で囲まずに所在場所付近に、文字(日本語)又はアイコンで施設の名称を記載して表示している。掲載された施設は、トイレ、カフェ、チェックインカウンター、手荷物受取所、税関、両替所、レンタカー、エスカレーター、ATM、レンフェ乗場、各インフォメーションの内容等である。
 フロア部分には、出発客、到着客の順路を示す矢印は表示されていない。
b OFC空港案内図との共通部分
@ ターミナル、駐車場、オペレーションセンター、敷地内道路等各種空港敷地内設備のうち、ターミナル部分及びこれに隣接する敷地内道路部分を描写の対象としている。
A ターミナル部分のうち1階部分を、図面化している。
B 実際の空港の形状に忠実な形状を直線による枠囲みで表示している。
C ターミナル内のフロアについて、一般客の立入禁止区域、一般客の立入可能区域に色分けしている。
D トイレ、チェックインカウンター、手荷物受取所、税関、両替所、レンタカー、インフォメーションが掲載されている。
E Dの情報を、文字又はアイコンによって表示している。
c OFC空港案内図との相違部分
@ OFC空港案内図は、1階部分、2階部分を掲載しているのに対し、本件空港案内図は、1階部分のみ掲載している。
A OFC空港案内図は、空港ターミナルを真上から見た角度で記載しているが、本件空港案内図は、右斜め上の方向から見た角度で斜めに表示している。
B ターミナル内のフロアの色分けの色が、OFC空港案内図では黄緑色、灰色、白色であるが、本件空港案内図では桃色、肌色である。
C OFC空港案内図では施設部分が水色なのに対し、本件空港案内図は施設部分が紫色と黄緑色である。
D 情報を示す文字について、OFC空港案内図は日本語と英語を併記しているが、本件空港案内図は日本語のみである。また、本件空港案内図の文字の方が大きく、フロア部分の枠線に比して太字で濃く表示されている。
E OFC空港案内図には1階部分の図の中に、売店、出国審査が掲載されているが、本件空港案内図には掲載されていない。
F 本件空港案内図には、カフェ、ATM、レンフェ乗場、各インフォメーションの種類が掲載されているが、OFC空港案内図の1階部分には掲載されていない。
G OFC空港案内図には、利用者の順路を示す矢印が表示されているが、本件空港案内図には、レンフェ乗場方向に矢印が表示されているのみである。
d 著作権侵害の成否
 本件空港案内図とOFC空港案内図は、ターミナル部分をどのように区分して図面化するかという点で、前記b@Aの共通点を有するが、かかる手法は、空港案内図を作成する際の極めて一般的な手法であり、この点をもってOFC空港案内図の創作的表現部分における特徴ということはできない。むしろ、上記両空港案内図は、前記c@Aの相違点を有している。
 上記両空港案内図は、フロア及びフロア内施設の具体的な表現方法という点で、前記bBCの共通点を有しているが、同Bの手法は、空港案内図を作成する際の極めて一般的な手法であり、同Cの手法は、前記(1)オ記載のとおり、OFC以外の者による空港案内図でも多く採用されている一般的な手法であり、この点をもってOFC空港案内図の創作的表現部分における特徴ということはできない。むしろ、上記両空港案内図は、前記cBCDの相違点を有しており、殊に、第9版本件空港案内図の方が、施設の名称を表示する文字が大きく、フロア部分の枠線に比して太字で濃い点において、見やすさや与える印象に差異を生じている。
 上記両空港案内図は、施設情報の選択という点で、前記bDの共通点を有するが、これらの掲載情報は、いずれもOFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とはいえない。むしろ、上記両空港案内図は、前記cEFの点で相違点を有している。
 前記bEの点については、そもそも創作性が認められない。
 また、上記両空港案内図は、前記cGの点で相違している。
 そうすると、上記両空港案内図は、共通している部分については、空港案内図を作成する際によく用いられる一般的な手法であって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とは言い難く、むしろ、施設名称の具体的表記方法や全体の配色等によって、異なる印象を与えるものであるから、本件空港案内図を見る者がOFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
(エ) ベルリン・テーゲル空港の第9版本件空港案内図(乙24の1)について((エ)において、「本件空港案内図」というときは上記空港案内図を指し、「OFC空港案内図」というときはこれに対応する第9版対応OFC空港案内図を指す。)
a 本件空港案内図の内容
 ターミナル、駐車場、敷地内道路等各種空港敷地内設備のうち、ターミナル1階部分のフロア図を、実際の空港の形状に忠実な形状を直線による枠囲みで、右斜め上の方向から見た角度で斜めに表示したものである。
 ターミナル内のフロアについては、一般客の立入禁止区域、一般客の立入可能区域に色分けし、それぞれに桃色、肌色を配色している。
 主な施設は枠で囲んで紫色又は黄緑色に配色して表示するか、枠で囲まずに所在場所付近に、文字(日本語)又はアイコンで施設の名称を記載して表示している。掲載された施設は、トイレ、カフェ、両替所、税払戻し、インフォメーション等である。
 フロア部分には、利用客の順路を示す矢印が2カ所記載されているのみである。
b OFC空港案内図との共通部分
@ ターミナル、駐車場、オペレーションセンター、敷地内道路等各種空港敷地内設備のうち、ターミナル1階部分を描写の対象としている。
A ターミナル部分のうち1階部分を、図面化している。
B 実際の空港の形状に忠実な形状を直線による枠囲みで表示している。
C ターミナル内のフロアについて、一般客の立入禁止区域、一般客の立入可能区域に色分けしている。
D トイレ、インフォメーションが掲載されている。
E Dの情報を、文字又はアイコンによって表示している。
c OFC空港案内図との相違部分
@ OFC空港案内図は、空港ターミナルを真上から見た角度で記載しているが、本件空港案内図は、右斜め上の方向から見た角度で斜めに表示している。
A ターミナル内のフロアの色分けの色が、OFC空港案内図では黄緑色、灰色、白色であるが、本件空港案内図では桃色、肌色である。
B OFC空港案内図では施設部分が水色なのに対し、本件空港案内図は施設部分が紫色と黄緑色である。
C 情報を示す文字について、OFC空港案内図は日本語と英語を併記しているが、本件空港案内図は日本語のみである。また、本件空港案内図の文字の方が大きく、フロア部分の枠線に比して太字で濃く表示されている。
D OFC空港案内図には1階部分の図の中に、売店、手荷物一時預所、遺失物保管場所、レストラン、育児室、警察、バスチケット販売所が掲載されているが、本件空港案内図には掲載されていない。
E 本件空港案内図には、カフェ、税払戻しが掲載されているが、OFC空港案内図の1階部分には掲載されていない。
F OFC空港案内図には、利用者の順路を示す矢印が表示されているが、本件空港案内図には、16ないし19番ゲート方向及びその他一箇所に矢印が表示されているのみである。
d 著作権侵害の成否
 本件空港案内図とOFC空港案内図は、ターミナル部分をどのように区分して図面化するかという点で、前記b@Aの共通点を有するが、かかる手法は、空港案内図を作成する際の極めて一般的な手法であり、この点をもってOFC空港案内図の創作的表現部分における特徴ということはできない。むしろ、上記両空港案内図は、前記c@の相違点を有している。
 上記両空港案内図は、フロア及びフロア内施設の具体的な表現方法という点で、前記bBCの共通点を有しているが、同Bの手法は、空港案内図を作成する際の極めて一般的な手法であり、同Cの手法は、前記(1)オ記載のとおり、OFC以外の者による空港案内図でも多く採用されている一般的な手法であり、この点をもってOFC空港案内図の創作的表現部分における特徴ということはできない。むしろ、上記両空港案内図は、前記cABCの相違点を有しており、殊に、第9版本件空港案内図の方が、施設の名称を表示する文字が大きく、フロア部分の枠線に比して太字で濃い点において、見やすさや与える印象に差異を生じている。
 上記両空港案内図は、施設情報の選択という点で、前記bDの共通点を有するが、これらの掲載情報は、いずれもOFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とはいえない。むしろ、上記両空港案内図は、前記cDEの点で相違点を有している。
 前記bEの点については、そもそも創作性が認められない。
 また、上記両空港案内図は、前記cFの点で相違している。
 そうすると、上記両空港案内図は、共通している部分については、空港案内図を作成する際によく用いられる一般的な手法であって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とは言い難く、むしろ、施設名称の具体的表記方法や全体の配色等によって、異なる印象を与えるものであるから、本件空港案内図を見る者がOFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
エ 小括
 以上によれば、第9版本件空港案内図が第9版対応OFC空港案内図に係るOFCの著作権を侵害しているということはできない。
 よって、原告が被告書籍第9版の制作に当たりOFC空港案内図に係るOFCの著作権を侵害したとして、債務の本旨に従った履行がなされていないとする被告の主張は、理由がない。
3 争点4(本件制作委託契約上、原告が、著作権侵害に至らない態様であっても他人の出版物を利用してはならない義務を負っていたか)
(1) 被告は、上記の義務が、委任契約上の善管注意義務の内容として、書籍の制作委託契約上、当然に生じる一般的義務であると主張するので、まず、この点について判断する。
 一般に、旅行案内書の制作は、可能な限り数多くの資料を収集して分析、検討して行なうのが通常であるから(このことは、OFCの制作担当者の報告書からもうかがえる。乙52。)、旅行案内書の制作委託契約上、制作受託者が、著作権侵害に至らない態様であっても他人の出版物を使用しない義務を当然に負うものとはいえない。
(2) 次に、本件制作委託契約上、著作権侵害に至らない態様であっても他人の出版物を使用しない旨の合意があったか否かにつき判断する。
ア 証拠(甲1の1ないし9、2の2ないし10、10、乙4、5、6)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(ア) 被告は、一般旅行者向けガイドブックである「個人旅行」をシリーズ化して出版することを企画した(被告書籍)。
(イ) 被告は、K&Bとの間で、平成6年ころ、被告書籍について、K&Bが被告書籍の企画・構成・デザイン等編集に関連する一切の業務を行い、被告がこれに対して報酬を支払う旨の制作委託契約(本件基本契約)を締結した。
 K&Bは、本件基本契約に基づいて、本件空港案内図を作成、掲載して被告書籍を制作、納品し、被告は、遅くとも平成8年ころから、被告書籍を販売した。
(ウ) 被告とK&Bは、平成9年3月28日、本件基本契約等において、被告がK&Bに対して支払うべき報酬額について覚書きを作成した(乙4)。当該覚書きには、被告書籍の再版について「取材は2年目から原則として毎年行い(3年目から反映)、年額とする」旨の記載がある。
(エ) 被告とK&Bは、平成10年9月1日付で、被告書籍のうちハワイ、グアム、サイパン等42タイトルについて、制作委託に関する契約書を作成した(乙5)。
 同契約書には、K&Bの債務の内容として、初版については、「取材、企画・編集」等の記載がなされ、再版・改訂版制作については、「被告は、本書の再版・改訂版の企画・構成・デザイン・編集等、編集制作に関連する一切の業務をK&Bに委託する」旨の記載がなされた。上記初版の「取材」については、注意書きとして、「交通費、宿泊費、資料代、入場料など必要経費を含む。また、K&Bは、取材したデータの名称、所在地等別途様式に基づいたチェックをし、その時点において最新かつ正確な物件リストを作成、また被告の指示した地図へのプロット作業を施すものとする。」旨の記載がなされた(乙5)。
(オ) 被告は、従来、K&Bに委託していた被告書籍の制作を、その後、K&Bの関連会社である原告に委託することとし、平成13年4月20日、原告に対し、被告書籍第9版のうちバリ島、オーストラリア、ニュージーランド等9タイトルについて、報酬863万1000円で企画・編集を発注した(甲1の1ないし9)。原告は、K&Bに対し、被告書籍第9版の制作を委託した。
(カ) 被告は、同年6月ころ、OFCから、OFC書籍に掲載されているOFC空港案内図に極めて類似しているとの指摘を受けた。
(キ) K&Bは、原告の下請として被告書籍の制作を行なっていたが、K&Bと被告の関係は円満ではなかった。Dは、平成14年ころ、被告書籍の制作業務を継続し難いと考え、原告、被告と話合い、同年限りで被告書籍に関する契約を終了させたいと考えるようになった(甲10)。
(ク) 原告、K&B及び被告は、平成14年9月30日、被告書籍、まっぷるマガジン等の被告出版物に関し、次のとおり合意書を作成した(乙6)。
a 被告の原告及びK&Bへの今後の発注内容は次のとおりとする。
@ 被告書籍平成15年ないし平成16年版「ハワイ・韓国・サイパン等」26点の再版
A マガジン国内版平成15ないし平成16年版「伊豆箱根・金沢」2点
b 原告及びK&Bは、被告出版物の再版等の制作にあたって、他人の著作物の著作権を侵害したり、他の著作物の掲載情報を使用したりしないものとする。
c 既に制作した商品及び上記の今後制作する商品について、マガジンの販売期限を次年度版出版までとし、被告書籍は、平成15年4月以降は増刷せず、平成16年4月以降休刊していく。
d 被告は、今後、被告書籍及び海外マガジンに使用された写真及び記事を使用しない。被告は、今後、国内マガジンに使用された写真及び記事を使用する場合は、原告に対し、1巻につき150万円を支払う。原告及びK&Bは、被告出版物に使用した写真を他社の出版物に記載ないし転用しない。
e 原告及びK&Bは、OFC著作権侵害問題の解決につき、被告の求めに応じて必要な協力を行う。
(ケ) 原告は、平成15年3月31日、被告に対し、前記(オ)記載の被告書籍第9版を完成させて納品し(甲2の2ないし10)、被告は、被告書籍第9版を出版した。
イ(ア) 本件制作委託契約締結時における合意内容について
 上記認定事実によれば、被告とK&Bとの間で、平成9年3月28日に、被告書籍の再版について、2年目から原則として取材を毎年行い、3年目から反映する旨の合意がなされ、平成10年9月1日に、少なくとも初版における取材とは、交通費、宿泊費、資料代、入場料など必要経費を伴う現地取材を意味することを確認していることが認められる。
 また、上記認定事実によれば、原告と被告との間の本件制作委託契約においては、被告とK&Bとの間の合意内容が引き継がれているものと認められるから、本件制作委託契約においても、少なくとも初版については、現地取材を行ない、2年目からも原則として取材を行ない、3年目以降の再版に反映することが合意されていたものと認められる。
 しかしながら、現地取材を行なうことと、制作受託者が著作権侵害に至らない態様であっても他人の出版物を使用しない義務を負うこととは、同内容ではなく、上記事実から、被告主張の義務を原告に負わせる旨の合意があったとは認められない。
 その他、本件制作委託契約締結時までに、被告が主張するような著作権侵害に至らない態様であっても他人の出版物を使用しない義務を原告に負わせる旨の合意がなされたことをうかがわせる事情は存在しない。
(イ) 乙6の合意書に係る合意内容(前記ア(ク))について
 原告及び被告は、平成13年4月20日に、本件制作委託契約を締結した後の平成14年9月30日、原告、被告及びK&Bの間で、前記ア(ク)記載のとおり、被告書籍、まっぷるマガジン等の被告出版物に関し、合意書を作成し、同合意書には、「被告出版物の再版等の制作にあたって、他人の著作物の著作権を侵害したり、他の著作物の掲載情報を使用したりすることをしないものとする」旨記載された。
 上記合意書は、被告がOFCから被告書籍について前記ア(カ)の指摘を受けた後に作成されたものであり、被告書籍のOFCとの問題を意識して作成されたものであることは明らかである。
 もっとも、前記のとおり、旅行案内書の制作は、通常、数多くの資料を収集して、これを分析・検討して行なわれるものであり、本件においては、次のような事情が認められることに鑑みれば、上記合意の趣旨を文言どおり、著作権侵害に当たらないような態様であっても「他人の著作物の掲載情報を使用」しない旨の合意があったとは解し得ない。
 すなわち、上記合意書が作成された経緯に関するDの陳述書(甲10)によれば、Dは、上記記載部分を著作権侵害をしないという当たり前のことを確認的に記載したものと認識していたことが認められ、弁論の全趣旨からは、被告も上記記載が確認的なものであったと認識していたことが認められる。また、上記合意書作成後、原告は、従前の本件空港案内図を右斜め上の角度から見たように変更を加えた第9版本件空港案内図を掲載した被告書籍第9版を制作して被告に納品したが、被告は、異議を述べることもなくこれを受領して出版している(弁論の全趣旨)。さらに、仮に、「著作権侵害に当たらないような態様であっても、他人の著作物の掲載情報を使用しない」という制作業務の遂行に極めて重大な影響を与える合意内容であるとすれば、制作業務の遂行の際に生じる費用や報酬等について何らかの取決めがなされてしかるべきところ、そのような事情はうかがわれない。
 そうすると、乙6に係る合意書の上記文言部分の合意内容は、「被告書籍の制作において、第三者の著作権を侵害するなど第三者に損害を与える行為をしない」という程度の趣旨であったというべきであり、原告と被告との間で、著作権侵害に当たらない態様であっても他人の著作物を使用しない旨の合意がなされたものとは認められない。
ウ 以上のとおり、本件制作委託契約上、原告と被告との間で、著作権侵害に至らない態様であっても他人の出版物を使用しない旨の合意があったとは認められない。
(3) 小括
 以上のとおり、委任契約上、一般的に、著作権侵害に至らない態様であっても他人の出版物を使用しない義務が生じるとはいえず、本件制作委託契約上、著作権侵害に至らない態様であっても他人の出版物を使用しない旨の合意があったとも認められないから、本件制作委託契約上、原告が、著作権侵害に至らない態様であっても他人の出版物を使用しない義務を負っていたと認めることはできない。
 よって、原告が被告書籍第9版の制作に当たり、第9版対応OFC空港案内図を参考としたことをもって、債務の本旨に従った履行がなされていない旨の被告の主張は理由がない。 
4 争点6(原告と被告との間で被告書籍の出版に関してOFCに対して支払うべき金員を原告が負担する旨の合意があったか)
(1) 証拠(甲2の2ないし10、5、20、乙18(各枝番号)、19(各枝番号)、26、54、55、56)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
ア 被告従業員Gは、平成15年3月24日及び31日、Dと面談し、同月28日付で、Dに対し、概ね次のような内容の書面を提示し、Dは、このうちb、cの部分に「OK」と記載した(乙26)。
a 被告は、OFCに対し、OFCの要望を受け入れることはせずに法務専門家に委ねる旨の最終回答を行った。平成15年3月末に請求のあった被告書籍第9版に関する822万円について、OFCに対する支払額が確定するまで支払を保留させて頂きたい(なお、当該部分には「今後先方法務専門家から改めてのご連絡以降となりますが、空港案内図の著作権侵害の度合い等を改めて洗い直す準備をお願い致します。」との記載がある。)。
b 法務専門家による再検討では本件空港案内図作成状況の説明や資料提供等解決にご尽力頂きたい。再検討によって支払額が確定した場合には負担部分について両社で書面を作成させて頂きたい。
c 被告書籍8点及び「個人旅行会話」3点につき増刷決定した。イラク戦争のため、印刷製本時期を見合わせた上、時期を見計らって速やかに印刷製本して頂きたい。
 Gは、Dに対し、上記面談の際、口頭で、本件書籍第9版の報酬の支払延期を申入れたところ、Dは、法律専門家を交えた話合いで決定した支払うべき額については文書を作成した上必ず支払うので、本件書籍第9版の報酬は支払うよう要請した。また、本件写真の代金についても支払うよう要請した。
イ 原告は、平成15年3月31日、被告に対し、被告書籍第9版を納品した(甲2の2ないし10)。これらの被告書籍には、空港案内図(第9版本件空港案内図)が掲載されていた。
 原告は、被告に対し、遅くとも同日までに、被告出版にかかる旅行ガイドブック「まっぷるマガジン国内版『金沢』」に掲載する写真(本件写真)を売買代金157万5000円で売り渡した。
ウ OFCは、平成15年5月8日、内容証明郵便で、被告に対し、概ね次のような内容の通知をした(乙18の1、2)。
 「被告書籍のうち、トルコ、インドネシア等20冊に掲載されている本件空港案内図が、OFC書籍に掲載されているOFC空港案内図(31空港分)を複製ないし一部改変したものであり、被告は、これまでの交渉経緯において、そのことを認めているにもかかわらず、上記本件空港案内図を掲載した被告書籍の販売を継続している。直ちに販売を中止して書店等から回収するとともに、実施料相当額である1366万2000円を支払うよう求める。また、被告は、被告書籍第9版においては、OFC空港案内図を複製ないし一部改変したものではない空港案内図を掲載する旨約束したにも関わらず、被告書籍第9版のうち10冊に掲載されている第9版本件空港案内図は、OFC空港案内図の複製又はごく一部を改変したものである。直ちに販売を中止して書店等から回収するとともに、実施料相当額である74万4000円を支払うよう求める。」
エ Dは、OFCから上記のような請求があった旨の連絡を受け、原告及びK&Bの代理人弁護士A、同B(以下「A弁護士」、「B弁護士」といい、両者を併せて「A弁護士ら」という。)に意見を求めたところ、B弁護士は、著作権侵害に当たらない旨の見解を示した。
 Dは、C弁護士と面談し、上記B弁護士の見解を伝えると共に、今後は、A弁護士らと協議してほしい旨述べた。
オ(ア) C弁護士は、平成15年7月3日付書面で、A弁護士らに対し、面談を申し込み(乙54)、この面談において、A弁護士らは著作権侵害に当たらない旨の見解を述べたが、C弁護士はこの見解に同意しなかった。
 C弁護士は、上記面談後の同年7月13日、A弁護士らに対し、概ね次のような内容の書面をファックス送信した(甲4)。
 「A弁護士らは、先日の面談の際、空港内略図に著作物性がない旨の見解を示され、この点について、双方検討することになっていた。その後の見解を文書で示していただきたい。当方は、OFCから『独自の考えによる情報の取捨選択、見やすい表記方法に基づいて作成した』旨の主張を受けており、これを明確に覆す材料を有していない。他方、DはOFC空港案内図を参考にしたことを認めながら、独自の調査で本件空港案内図を作成したことを証明する資料を提出できないから、Dの主張は説得的でない。A弁護士らが、Dに対し、著作権侵害がないという説得的な主張や証拠を、提示しない場合には、D側の著作権侵害を前提とする解決をせざるを得ない。」
(イ) K&B従業員であるHは、同年7月24日、被告従業員Gに対し、概ね次のような内容のメールを送信した(乙55)。
 「K&Bの顧問弁護士らから、『C弁護士が、著作権侵害にならない旨の解釈を理解しないため、いくら話をしても結局振出しにもどってしまい進展しない。地図の出版を主体とする被告の弁護士としての適正が危惧される。』旨の報告を受けています。被告の方は、C弁護士からどのような報告を受けているでしょうか。この件について、Dは、J(被告の創業者兼大株主、現最高顧問)に直接説明することも辞さないと述べておりますので、ご報告致します。」
(ウ) A弁護士らは、同年7月29日付で、C弁護士に対し、上記同年7月13日付けのファックス文書に対して概ね次のような内容の書面を送った(甲5)。
 「当方は、OFC空港案内図には著作物性がないと判断しており、この点について新たに検討すべき事項を有していない。貴職は、OFCが『独自の考えによる情報の取捨選択、見やすい表記方法に基づいて作成した』と主張していることを根拠に、OFC空港案内図が著作物であると判断されているようであるが、OFCは作成経緯に関する具体的な事実を示していない。著作物性の判断は、具体的な認定に基づいて行うべきものである。OFC空港案内図に記載されている情報はいずれも当然に記載されるべき事項であり、創作性があるとは思えないが、C弁護士が、OFCの主張の方が説得的と考える具体的事実をお示しいただきたい。なお、K&Bは、各空港作成のマップを元に現地調査をしており、マップがない場合は略図を作成するなどしている。各空港会社は、ビル建設の際には自ら案内図を作成して顧客に配布するのが通常であり、OFCがそのような資料を利用することなしにOFC案内図を作成しているとは思えないから、この点についてもOFCから具体的な説明を受けるべきである。」
(エ) C弁護士、被告従業員K及びGは、話合いを行い、原告ないしK&B、A弁護士らは交渉相手として信頼できないとの結論に至り、Dと平成13年6月から協議しているにもかかわらず、反証材料の提供がないなどとして、DないしA弁護士らとの協議をうち切ることにした(乙56)。
(オ) 被告は、OFCとの間で、平成15年9月25日、本件空港案内図に関して、次のような内容を含む合意をし(乙19の各枝番)、同年10月15日、OFCに対して750万円を支払った。
a 被告は、OFCに対して、750万円を支払う。
b 被告は、被告書籍の出版を平成15年限りとし、今後増刷しない
c OFCは、被告が被告書籍平成15年版(被告書籍第9版)を販売することにつき異議を述べない。
(2) 上記認定事実によれば、被告が原告の支払額負担の合意の根拠として指摘する乙26には、「再検討によって支払額が確定した場合には負担部分について両社で書面を作成させて頂きたい。」と記載されており、当該書面の文面からは、法律専門家の話し合いによってOFCに対する支払額が確定した後に、原告と被告との間で双方の負担部分について書面を作成するという趣旨に解釈されるのであって、被告が主張するように、被告とOFCとの話合いによってOFCに対する支払額が確定した後に当該金額を全額原告が負担するという意味に解することはできない。
 また、上記認定のとおり、A弁護士らは、OFCに対する著作権侵害はない旨強く主張しており、C弁護士に対してその旨説得している途中であったにもかかわらず、被告側の一方的な判断で原告との話合いを打ち切り、A弁護士らを除外してOFCに対する支払額を決定したのであるから、原告が、当該金額全額を支払う旨の合意があったとは到底認められない。
 したがって、原告と被告との間で被告書籍の出版に関してOFCに対して支払うべき金員を原告が負担する旨の合意があったということはできない。
 なお、被告は、本件制作委託契約上の代金支払時期を延期する旨の合意があった旨主張するが、前記(1)ア記載の事実によれば、Dは、Gからの支払期限延期の申出を承諾していないから、代金支払期限を延期する旨の合意があったとは認められない。 
5 争点7(原告の制作した本件空港案内図がOFC空港案内図に係るOFCの著作権を侵害しているといえるか)
 別紙「空港案内図対比表」の「当裁判所の判断」欄記載のとおりであり、原告の制作した本件空港案内図がOFC空港案内図に係るOFCの著作権を侵害しているとは、認められない。
6 争点8(本件制作委託契約上、原告が、著作権侵害に至らない態様であっても他人の出版物を利用してはならない義務を負っていたか)
 前記3記載のとおり、原告が著作権侵害に至らない態様であっても他人の出版物を利用してはならない義務を負っていたと認めるに足りる事実はない。
7 争点12(本件基本契約(乙5)第8項第2項イに基づく支払済み報酬返還請求権の有無)
 本件基本契約(乙5)第8項第2項には次の記載がある。
 「甲(K&B)が下記事項に該当するとき、乙(被告)は前記の方法でこの契約を解除し、甲は直ちに既に受領した対価全額と取材した写真や資料等すべてを乙に引渡し、さらに乙の損害を賠償するものとします。イ)本書が他人の著作権を侵害しているとき。」
 もっとも、被告書籍に掲載された本件空港案内図がOFC空港案内図に係るOFCの著作権を侵害しないことは前記5記載のとおりであるから、被告は、本件基本契約(乙5)第8項第2項イに基づく支払済み報酬返還請求権を有しない。
8 争点13(原告が本件空港案内図を掲載して被告書籍を制作、納品したことが、被告ないしOFCに対する不法行為に該当するか)
 一般論としては、著作権等の権利に該当しない場合であっても法的保護に値する利益については、それを侵害する行為が一般不法行為に該当する場合がないとは言えない。もっとも、一般に市場における競争は本来自由であるべきこと、表現活動の自由は最大限保障されなければならないことに照らせば、著作権侵害に該当しないような表現行為については、当該表現行為がことさらに相手方に損害を与えることのみを目的としてなされたような特段の事情が存在しない限り、民法上の一般不法行為に該当しないというべきである。
 これを本件についてみるに、原告が、ことさらにOFCに損害を与えることのみを目的として本件空港案内図を制作したということはできないから、原告が本件空港案内図を制作した行為が一般不法行為に該当するということはできない。
9 結論
 本件において、原告は、本件制作委託契約及び本件写真の使用権設定契約に基づき、被告書籍第9版の編集等の報酬863万1000円及び本件写真の対価157万5000円の合計1020万6000円のうち未払金750万円及びこれに対する平成15年5月1日(本件制作委託契約上の報酬支払期日の翌日。本件写真を引渡し後の日)から支払済みまでの商事法定利率年6分に基づく遅延損害金ないし利息(民法575条)の支払を求めているところ、上記によれば、本件制作委託契約につき、被告がその請求を争う理由として掲げる主張(契約当事者の相違、契約上の債務の本旨に従った履行の否定)は、いずれも理由がなく、原告は本件制作委託契約及び本件写真の売買契約(ないしは制作委託契約)に基づく債務を履行しているものと認められるから、被告に対する上記未払金750万円の支払請求権が存在し、これらの債務は商行為によって生じた債務(商法514条)に該当するから、上記期日後について商事法定利率年6分の割合による遅延損害金ないし利息が発生しているものというべきである。そして、上記によれば、上記未払金支払債務について被告が主張する相殺の抗弁については、被告が反対債権として主張する債権の発生を認めることはできない。
 そうすると、その余の点について判断するまでもなく、上記未払金750万円及びこれに対する平成15年5月1日から支払済みまでの年6分の割合による金員の支払を求める原告の本件請求は理由がある。
 よって、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第46部
 裁判長裁判官 三村量一
 裁判官 鈴木千帆
 裁判官 吉川泉


別紙 空港案内図対比表
※ 同一空港欄の上段部分がOFC空港案内図の著作物性に関する記載で下段部分がOFC空港案内図と本件空港案内図の類似性に関する記載である。
空港名 被告の主張 原告の主張 当裁判所の判断
サンディエゴ国際空港・乙28の 1・2 建物の切り取り方、建物構造の簡略化の仕方、ショップ等の情報の取捨選択に優れている。
カウンターの表記を各航空会社別にしている点で独創性がある。
進路を矢印で表記し、建物内部を色分けするという独自の工夫がある。 詳細な注記コメントが記載されている点でも独自性がある。
被告は、建物の切り取り方に創作性があると主張するが、旅行者が必要な建物の構造部分には取捨選択の余地はなく創作性があるとはいえない。簡略化の仕方にも創作性はない。掲載情報についても、トイレ、カフェ、レストラン、本屋等ごくありふれた情報であり、この点においても創作性はない。
被告は、カウンターを各航空会社別に記載している点を主張するが、対応する本件空港案内図では、各航空会社毎の記載はしていない。
なお、被告は、詳細な注記コメントが記載されている点を指摘するが、対応する本件空港案内図ではコメントの記載はない。
@ターミナル部分をどのように区分して図にするかについては、選択の余地があるが、サンディエゴ国際空港については、全体図が明らかでなく、OFC空港案内図のように東ターミナル1階部分、西ターミナル1階部分、西ターミナル2階部分の3つに区分して図面化することに創作性が認められるか否か明らかでない。仮に、建物構造が複雑で、どのように区分して図面化するかに創作性を認める余地があるとしても、チューリッヒ・クローテン空港と同様、この点に関する創作性は限定的な範囲においてのみ認め得る。Aフロア内施設又はフロア部分の色分けをどのようにするか、Bいかなる施設を掲載するか、C(OFC空港案内図が矢印を色分けしているかどうかは証拠上不明であるが、仮に色分けしているとしても。以下同じ。)利用客の順路を出発客、到着客毎に色分けして表示している点、D上記@ないしCを総合した結果としての見やすさの点において創作性を認めることができるから、著作物に当たる。ただし、本文に記載したとおり、これらの点についての創作性は限定された範囲においてのみ認め得る。
2つあるターミナルのうち、東ターミナルの1階部分、西ターミナルの1、2階部分を図面化している点で一致している。全体のデザイン・イメージがほとんど同じである。
電話、バス・タクシーの表示場所、ホテル案内、レンタカー、本屋、バー等細かい情報の取捨選択がほとんど同じであり、手荷物受取所のターンテーブルの形状が同じである。
矢印の記載位置、建物の色分け区分、壁面の囲いの凹凸、道路部分のカーブが極めて類似している。
本件空港案内図には、OFC空港案内図にはない東ターミナル1階出発到着ゲート部分が丸く図面化されており、西ターミナルの2階出発部分がゲートの先まで記載されている点でもOFC空港案内図と異なっている。
しかも、本件空港案内図は、OFC空港案内図に比べて著しく簡略化されており、各フロア毎の建物内の仕切は原告の判断で不要と思われる部分を全て除外してシンプルになっている。
進路の矢印化や建物の色分けもいずれも旅行者向け空港案内図という性質に付随する範囲内のものである。なお、矢印の位置、チェックインカウンター内部の形状等の表記は完全に一致しているわけではない。
むしろ、本件空港案内図には、工事中施設情報がなく、チェックインカウンターが各航空会社別になっていない点、イスの所在が表記されていない点、施設情報の選択の点で対応するOFC空港案内図と異なっており、選択した施設情報の表記方法においてもトイレ、バー、ショップ、レストラン等の表記方法においても異なる。
本件空港案内図とOFC空港案内図は、2つあるターミナルのうち、東ターミナルの1階部分、西ターミナルの1、2階部分を図面化している点で共通するが、かかる手法がOFC空港案内図の創作的表現部分における特徴ということはできない。むしろ、上記両空港案内図は、本件空港案内図には、OFC空港案内図にはない東ターミナル1階出発到着ゲート部分が丸く図面化されており、西ターミナルの2階出発部分がゲートの先まで記載されている点で相違点を有している。
上記両空港案内図は、フロア及びフロア内施設の具体的な表現方法という点で、手荷物受取所の表記が、長細い楕円形か、円に近い図形か、楕円形が左側に傾いている、楕円及び円の個数の点で共通点を有しているが、同空港の手荷物受取所がそのような構造であるとすれば、一致することは当然であるところ、同空港の客観的な構造は明らかでない。
 上記空港案内図は、掲載情報の選択という点で、電話、バス・タクシーの表示場所、ホテル案内、レンタカー、本屋、バー等が掲載されているという共点で共通するが、これらの掲載情報は、空港案内図において一般的に掲載される情報であるといえる。OFC空港案内図には、本件空港案内図にはないチェックインカウンター内の各航空会社毎に区別、イス、工事中の施設が記載されている点で相違している。これに加えて、本件空港案内図の方が、施設の名称を表示する文字が大きく、フロア部分の枠線に比して太字で濃いことも相俟って、見やすさや与える印象に差異を生じている。
上記両空港案内図は、出発客の順路と到着客の順路を色分けしている点で共通するが、この手法は、本文記載のとおり、よく用いられる手法であるから、この点をもって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とはいえない。
そうすると、上記両空港案内図は、共通している部分については、空港案内図を作成する際によく用いられる一般的な手法であって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とは言い難く、むしろ、施設名称の具体的表記方法や全体の配色等によって、異なる印象を与えるものであるから、本件空港案内図が、OFC空港案内図の創作的表現における本質的特徴を感得し得る程度に類似しているということはできない。
サンフランシスコ国際空港・乙29の1・2 本文に掲載された主張に加えて、同空港の案内図においては、特に、ターミナル内のどの部分を切り取って表記するかの判断が重要であり、その点も含めてデフォルメしてデザインした点にOFC空港案内図の創作性がある。 本文に掲載された主張のとおり、OFC空港案内図に創作性はない。
被告は、ターミナル内のどの部分を切り取って表記するかの判断が重要であり、その点も含めてデフォルメしてデザインした点にOFC空港案内図の創作性があると主張するが、セントラルターミナルの形状が両案内図のとおりなのであるから、セントラルターミナルのうち旅行者が異動する場所を切り取って通常の方法で表記すれば共通になるのは当然であって創作性はない。
@ターミナル部分をどのように区分して図にするか(建物構造が比較的複雑なことから、どのように区分して図面化するかは選択の余地があるものの、OFC空港案内図においては、国内線ターミナルと国際線ターミナルのうち、日本人旅行客の利用が多いと考えられる国際線ターミナル部分を1階部分、2階部分に区分したにすぎず、この点に関する創作性は限定された範囲でのみ認め得る。)、Aフロア内施設又はフロア部分の色分けをどのようにするか、Bいかなる施設を掲載するか、C利用客の順路を出発客、到着客毎に色分けして表示している点、D上記@ないしCを総合した結果としての見やすさの点において創作性を認めることができるから、著作物に当たる。ただし、本文に記載したとおり、これらの点についての創作性は限定された範囲でのみ認め得る。
広大な空港建物のうち、図面化した部分が一致している。
壁面の囲いの凹凸が一致している。
掲載情報の取捨選択が全く同じである。両空港案内図には第2次審査所、保険、新聞スタンドの情報が掲載されているが、本件空港案内図のような小さな案内図においてこのような詳細な情報を掲載しているのは不自然である。
矢印の位置や曲り方が全く一致している。
被告が主張する類似点は、いずれも旅行者向け空港案内図という性質に付随する範囲内のものにすぎない。
本件空港案内図は、OFC案内図に比べて、一般旅行者の便宜のために空港建物施設の配置・形状をより簡略化して記載している。また、矢印の記載位置が完全に一致しているわけではない。
むしろ、本件空港案内図には、OFC空港案内図には記載されていない情報(例えば1階到着ロビーの両替所、カフェ、2階出発ロビーのシャトルバスの具体名「サムトランス乗場」等)も記載されている点で異なる。
本件空港案内図とOFC空港案内図は、国内線ターミナルと国際線ターミナルのうち、日本人旅行客の利用が多いと考えられる国際線ターミナル部分を1階部分、2階部分に区分した点で共通するが、かかる手法がOFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
上記両空港案内図は、フロア及びフロア内施設の具体的な表現方法において、概ね共通しているが、OFC空港案内図は、1階部分の到着ロビー内や2階部分の出発ロビー内、チェックインカウンターの裏側のトイレ近辺の各所に存在する壁を表記しているのに対し、本件空港案内図は係る詳細な記載をしていないという相違点がある。
上記空港案内図は、掲載情報の選択という点で、国内線手荷物受取所、入国審査、税関、到着ロビー、両替、国内線チェックインカウンター、免税店、セキュリティチェック、ショップ、レストラン、インフォメーション、出発ロビー、電話、トイレ、保険、新聞スタンド等掲載されているという共通点を有する。これらの掲載情報のうち、保険及び新聞スタンドについては、一般的に空港案内図に記載される情報とはいえないが、上記掲載情報をもって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とは言い難い。これ以外の上記掲載情報は、空港案内図において一般的に掲載される情報であるといえる。OFC空港案内図には、本件空港案内図にはないレンタカーの情報が掲載されている。また、上記各情報の表記方法についても、アイコンを用いるか、文字で表記するか等で異なっている。これに加えて、本件空港案内図の方が、施設の名称を表示する文字が大きく、フロア部分の枠線に比して太字で濃いことも相俟って、見やすさや与える印象に差異を生じている。
上記両空港案内図は、出発客の順路と到着客の順路を色分けしている点で共通するが、この手法は、本文記載のとおり、よく用いられる手法であるから、この点をもって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とはいえない。
そうすると、上記両空港案内図は、共通している部分については、空港案内図を作成する際によく用いられる一般的な手法がほとんどであり、必ずしも一般的とはいえない保険、新聞スタンドの情報も掲載されているものの、OFC空港案内図の創作的部分における特徴とは言い難く、むしろ、施設名称の具体的表記方法や全体の配色等によって、異なる印象を与えるものであるから、本件空港案内図が、OFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
NYジョン・F・ケネディ国際空港・乙31の1・2 本文に掲載された主張に加え、矢印が建物の左側にしか記載されていない点が特徴的である。これは、日本人旅行客がよく使う、日本航空、全日空が左側のターミナルに到着するためにこのように記載したものである。 本文に掲載された主張のとおり、OFC空港案内図に創作性はない。
被告は、矢印が左側にしかない点をもって創作性があると主張するが、日本人旅行客向けの案内図である以上、日本人が頻繁に通行する部分に→を記載するのは当然であり、この点に創作性はない。JALが平成15年8月19日現在インターネットに掲載しているターミナル4の案内図においても、左側のみに矢印が表記されている(甲16)。
@ターミナル部分をどのように区分して図にするか(建物構造が比較的複雑なことから、どのように区分して図面化するかは選択の余地があるものの、OFC空港案内図においては、国内線ターミナルと国際線ターミナルのうち、日本人旅行客の利用が多いと考えられる国際線ターミナル部分を1階部分、2階部分に区分したにすぎず、この点に関する創作性は限定された範囲でのみ認め得る。)、Aフロア内施設又はフロア部分の色分けをどのようにするか、Bいかなる施設を掲載するか、C利用客の順路を出発客、到着客毎に色分けして表示している点、D上記@ないしCを総合した結果としての見やすさの点において創作性を認めることができるから、著作物に当たる。ただし、本文に記載したとおり、これらの点についての創作性は限定された範囲でのみ認め得る。
どの建物をどこまで掲載するかの判断、その建物全体の形状及び内部の仕切方が同一である。
手荷物受取所のターンテーブルは、OFCがデフォルメしてデザイン化したものであるのに、形が一致している。
掲載情報は、各ゲートの番号を記載する点を含めてほぼ同一であり、「ニューススタンド」、「到着案内ボード」の表記まで一致している。
矢印の位置及び個数が一致している。
本件空港案内図は、OFC空港案内図より簡略化されており、建物全体の形状及び内部仕切方が同一であるとはいえない。各航空会社のラウンジの間仕切りは同一であるが、事実を記載したものであって、創作性はない。
手荷物受取所のターンテーブルは、実際の形状を略図化したにすぎず、OFCにおよるデフォルメではない。
各ゲートの番号について、OFC空港案内図には9ないし12、16ないし29、32ないし35が一つずつ記載されているが、本件空港案内図では、16ないし22、23ないし29をまとめて表記しているだけで、その他のゲートは表記していない。その他の掲載情報も異なっている。 
本件空港案内図とOFC空港案内図は、国内線ターミナルと国際線ターミナルのうち、日本人旅行客の利用が多いと考えられる国際線ターミナル部分を1階部分、2階部分に区分した点で共通するが、かかる手法がOFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
両空港案内図は、フロア及びフロア内施設の具体的な表現方法において、概ね共通しているが、本件空港案内図は、1階部分の建物の外枠をより簡略化しており、建物内の施設間の間仕切りの仕方や手荷物受取所の施設の形状も細部で異なっている。2階部分も、建物内の施設間の間仕切りの仕方が細部で異なっている。
上記空港案内図は、掲載情報の選択について、手荷物受取所、入国審査、税関、セキュリティチェック、レストラン、インフォメーション、ショップ、ニューススタンド、到着案内ボード、ゲート、各航空会社ラウンジ、ホテル・観光・交通案内、両替所等が掲載されているという共通点を有する。これらの掲載情報のうち、到着案内ボード及び新聞スタンドについては、一般的に空港案内図に記載される情報とはいえないが、上記掲載情報をもって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とは言い難い。これ以外の上記掲載情報は、空港案内図において一般的に掲載される情報であるといえる。OFC空港案内図には、本件空港案内図にはない接続手荷物預カウンター、マンハッタン行きバス乗場、教会、歯科、バー、保険の情報が掲載されている。
また、上記各情報の表記方法についても、アイコンを用いるか、文字で表記するか、「各航空会社ラウンジ」と表示して各航空会社の名称を記載しない方法と、各航空会社のイニシャルのみを羅列する方法等で異なっている。これに加えて、本件空港案内図の方が、施設の名称を表示する文字が大きく、フロア部分の枠線に比して太字で濃いことも相俟って、見やすさや与える印象に差異を生じている。
上記両空港案内図は、出発客の順路と到着客の順路を色分けしている点で共通するが、この手法は、本文記載のとおり、よく用いられる手法であるから、この点をもって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とはいえない。
そうすると、上記両空港案内図は、共通している部分については、空港案内図を作成する際によく用いられる一般的な手法がほとんどであり、必ずしも一般的とはいえない到着案内ボード、新聞スタンドの情報も掲載されているものの、OFC空港案内図の創作的部分における特徴とは言い難く、むしろ、施設名称の具体的表記方法や全体の配色等によって、異なる印象を与えるものであるから、本件空港案内図が、OFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
ロサンゼルス国際空港・乙33の1・2 巨大な空港内部をどのように切り取り、どこまで表記するか、どのようにデザインするかが重要であるところ、OFC空港案内図では、搭乗ゲートまで動く歩道を利用すること、到着の場合も2階の動く歩道を通ってエスカレータで1階に降りることがわかりやすく記載されている点に特徴がある。 本文に掲載された主張のとおり、OFC空港案内図に創作性はない。
被告は、動く歩道が記載されている点を指摘するが、かかる記載をしたことで、「わかりやすく記載」されているということはできない。
@ターミナル部分をどのように区分して図にするか(建物構造が比較的複雑なことから、どのように区分して図面化するかは選択の余地があるものの、OFC空港案内図においては、国内線ターミナルと国際線ターミナルのうち、日本人旅行客の利用が多いと考えられる国際線ターミナル到着部分(1階及び2階の一部)出発部分(2階部分)に区分したにすぎず、この点に関する創作性は限定された範囲でのみ認め得る。)、Aフロア内施設又はフロア部分の色分けをどのようにするか、Bいかなる施設を掲載するか、C利用客の順路を出発客、到着客毎に色分けして表示している点、D上記@ないしCを総合した結果としての見やすさの点において創作性を認めることができるから、著作物に当たる。ただし、本文に記載したとおり、これらの点についての創作性は限定された範囲でのみ認め得る。
本件空港案内図は、わかりにくい印象を受ける。OFC空港案内図とほぼ同じ図面を90℃回転させていることにその理由がある。
本件空港案内図の1階部分は掲載情報が少なく、税関事務所、トランジット手荷物預所という特殊なものを含め、掲載したものはOFCの表記と共通している。
2階部分は、X線検査という情報も含めて掲載情報が共通している。
本件空港案内図には動く歩道は掲載されていないから類似していない。
本件空港案内図には、OFC空港案内図には記載されていない、LAXシャトルバス乗場、レンタカー会社送迎シャトル乗場、シャトル・ヴァン・エアポートバス乗場などの具体的表記がなされている。
→の位置、施設の配置・形状の略図法も異なる。選択した施設情報の表記方法も異なる。
本件空港案内図とOFC空港案内図は、国内線ターミナルと国際線ターミナルのうち、日本人旅行客の利用が多いと考えられる国際線ターミナル部分を図面化した点で共通するが、かかる手法がOFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。むしろ、両空港案内図は、図面化するについて、到着部分、出発部分で区分するか(OFC空港案内図)、1階部分、2階部分で区分するか(本件空港案内図)、南コンコースゲートを記載するか否かで異なっている。
両空港案内図は、フロア及びフロア内施設の具体的な表現方法において、概ね共通しているが、OFC空港案内図は、建物内の施設間の間仕切りの仕方(例えば接続案内カウンター、2階出発ロビー内)が異なっている。
上記空港案内図は、掲載情報の選択という点で、手荷受取所、国内線手荷物受取所、トランジット手荷物預所、入国審査、税関、チェックインカウンター、インフォメーション、免税店、両替所、バー、トイレ等が掲載されているという共点で共通する。これらの掲載情報は、空港案内図において一般的に掲載される情報であるといえる。むしろ、OFC空港案内図には、本件空港案内図にはない2階出発部分南コンコースゲートと反対側のセキュリティーチェック、2階バス乗場、接続案内所の情報が掲載されている。逆に、本件空港案内図には、OFC空港案内図にはないLAXシャトルバス乗場が掲載されている。
また、上記各情報の表記方法についても、アイコンを用いるか、文字で表記するか、同一の施設の名称についてもどのように表記するか等で異なっている。これに加えて、本件空港案内図の方が、施設の名称を表示する文字が大きく、フロア部分の枠線に比して太字で濃いことも相俟って、見やすさや与える印象に差異を生じているといえる。
上記両空港案内図は、出発客の順路と到着客の順路を色分けしている点で共通するが、この手法は、本文記載のとおり、よく用いられる手法であるから、この点をもって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とはいえない。
そうすると、上記両空港案内図は、共通している部分については、空港案内図を作成する際によく用いられる一般的な手法がほとんどであり、OFC空港案内図の創作的部分における特徴とは言い難く、むしろ、施設名称の具体的表記方法や全体の配色等によって、異なる印象を与えるものであるから、本件空港案内図が、OFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。 
トロント国際空港・乙34の1・2 原告ないしK&BがOFC空港案内図を模倣しているのは、OFC空港案内図に創作性があるからであり、この点からもOFC空港案内図に創作性があることがわかる。また、世界中のさまざまな空港を統一的な表現で作成していることも創作性判断の重要なポイントである。 被告は、当該空港に係るOFC空港案内図の創作性について一切主張することなく、概括的な主張しかしない。
被告の主張は、創作性の主張とはいえない。
@ターミナル部分をどのように区分して図にするか(建物構造が比較的複雑なことから、どのように区分して図面化するかは選択の余地があるものの、OFC空港案内図においては、国内線ターミナルと国際線ターミナルのうち、日本人旅行客の利用が多いと考えられる国際線ターミナル部分を1階部分、2階部分に区分したにすぎず、この点に関する創作性は限定された範囲でのみ認め得る。)、Aフロア内施設又はフロア部分の色分けをどのようにするか、Bいかなる施設を掲載するか、C利用客の順路を出発客、到着客毎に色分けして表示している点、D上記@ないしCを総合した結果としての見やすさの点において創作性を認めることができるから、著作物に当たる。ただし、本文に記載したとおり、これらの点についての創作性は限定された範囲でのみ認め得る。
ターミナルの選択、建物部分の切り取り方、建物内部の間仕切り形状、掲載情報の詳細さなどほとんどすべての要素で極めて類似している。
掲載情報としても、カート置場、案内板、到着案内ボード、ゲート番号等、必ずしも一般的でない情報が掲載されている点でも一致する。
ただし、図面の精度、精巧さにおいて、OFC空港案内図の方が優れていることもわかる。
本件空港案内図には、OFC空港案内図にない、2階国内線到着ゲートからのエスカレーター(1階部分)、2階部分におけるカナダ国内線ゲート、アメリカ線ゲートの情報が記載されている。また、OFC空港案内図では、2階中央部分にセキュリティーチェックの記載がないため、この部分を通って搭乗ゲートへいけることがわからないが、本件空港案内図は、上記セキュリティーチェックを掲載している点で相違する。
また、共通で掲載されている情報についても、アイコンで表示するか文字で表示するか等、その表示方法が異なっている。
本件空港案内図とOFC空港案内図は、国内線ターミナルと国際線ターミナルのうち、日本人旅行客の利用が多いと考えられる国際線ターミナル部分を1階部分、2階部分に区分した点で共通するが、かかる手法がOFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
上記両空港案内図は、フロア及びフロア内施設の具体的な表現方法において、概ね共通している。
上記空港案内図は、掲載情報の選択について、カフェテリア、チェックインカウンター、セキュリティチェック、レストラン、ショップ、バー、両替所、ゲート、案内板、税関、トイレ、エレベーター、バス乗場、タクシー乗場、航空会社オフィス、レンタカー、手荷物受取所、1階部分の公衆電話等が掲載されているという共通点を有する。これらの掲載情報のうち、到着案内ボードは必ずしも一般的な掲載情報とはいえないが、その他の掲載情報は、空港案内図において一般的に掲載される情報であるといえる。OFC空港案内図には、本件空港案内図にはない2階部分の公衆電話が掲載されている。逆に、本件空港案内図には、OFC空港案内図にはないショップの具体名(ハロッズ)が掲載されている。
また、上記各情報の表記方法についても、アイコンを用いるか、文字で表記するか等で異なっている。これに加えて、本件空港案内図の方が、施設の名称を表示する文字が大きく、フロア部分の枠線に比して太字で濃いことも相俟って、見やすさや与える印象に差異を生じている。
上記両空港案内図は、出発客の順路と到着客の順路を色分けしている点で共通するが、この手法は、本文記載のとおり、よく用いられる手法であるから、この点をもって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とはいえない。
そうすると、上記両空港案内図は、共通している部分については、空港案内図を作成する際によく用いられる一般的な手法がほとんどであり、OFC空港案内図の創作的部分における特徴とは言い難く、むしろ、施設名称の具体的表記方法や全体の配色等によって、異なる印象を与えるものであるから、必ずしも一般的とはいえない。到着ボードの情報が掲載されている点で共通していたとしても、本件空港案内図が、OFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
ガトウィック国際空港・乙36の1・2 本文に掲載された主張と同様である。原告ないしK&Bは、OFC空港案内図が創作的で優れているからこそ真似したいと考えたものと思われる。 本文に掲載された主張のとおり、OFC空港案内図に創作性はない。 @ターミナル部分をどのように区分して図にするかについて、創作性を認める余地があるが、OFC空港案内図は、ターミナル部分を1階、2階、3階に区分し、南ターミナルについては、日本人利用者に関係する3階部分のみを図面化するものであって、この点に創作性は認められない。Aフロア内施設又はフロア部分の色分けをどのようにするか、Bいかなる施設を掲載するか、C利用客の順路を出発客、到着客毎に色分けして表示している点、D上記@ないしCを総合した結果としての見やすさの点において創作性を認めることができるから、著作物に当たる。ただし、本文に記載したとおり、これらの点についての創作性は限定された範囲でのみ認め得る。
南ターミナルについて、3階部分を切り取っている点で共通する。建物内部の仕切、掲載情報についても、国鉄乗場へ等の細かい表記を含めてほぼ同じである。
北ターミナルについては、3階、2階、1階を図面化している点で共通であり、階がかわるごとに建物形状が変わるという特徴の表現もほぼ同一である。
掲載情報については、北ターミナルの3階部分について、OFC空港案内図は、本件空港案内図より精度が優れている。本件空港案内図にのみ掲載されている情報はない。2階部分について、到着口から入国審査までの建物内部通路の形状が細部まで同じである。1階部分について、本件空港案内図は、OFC空港案内図と異なり、関係者以外立入禁止部分の記載がないが、その余の記載は類似している。特に、到着ロビーの仕切部の角が丸みを帯びているところまで一致している。
南ターミナルについても北ターミナルについても、本件空港案内図は、OFC空港案内図に比べて空港建物部分の実際の形状、配置をより簡略化して記載している。被告は、北ターミナル2階の建物内の通路の形状が同じであると主張するが、客観的形状がそうである以上、同じ表記になることは十分あり得ることである。
掲載情報についても、本件空港案内図には、OFC空港案内図にはない、北ターミナル1階のインフォメーション、北ターミナル2階の南ターミナル行モノレール乗場等の情報が掲載されている。
矢印の位置も異なる。
本件空港案内図とOFC空港案内図は、南ターミナルのうち3階部分と北ターミナルの各階部分をそれぞれ図面化している点で共通するが(ただし、北ターミナル1階部分については、本件空港案内図は、OFC空港案内図より狭い範囲のみを図面化しているという相違点がある。)、前記のとおり、かかる区分の仕方に創作性は認められないのであって、このような共通点をもってOFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
フロア及びフロア内施設の表現においては、どの区分を表現するかという選択は概ね共通しているが、具体的表現方法においては、南ターミナル部分の出発ロビーの形状、レストランとバーとの間の仕切枠の有無、税関施設の形状、チェックインカウンターの形状、国鉄バス乗場につながる通路入り口部分の形状が異なっており、北ターミナル3階部分のゲート入り口部分の形状、出国審査部分の形状、旅行代理店カウンターの形状等が異なっており、同ターミナル2階部分は、出発ゲート部分の形状、到着通路入り口部分の形状、ショッピングモール部分の各種間仕切り、モノレール乗場へつながる部分の形状、掲載範囲が異なり、同ターミナル1階部分については、税関施設の形状、到着ロビー内施設の具体的表現方法が相違している。
掲載情報の選択については免税店、出発ロビー、レストラン、手荷物受取所、税関、エスカレーター、レンタカー、手荷物預所、両替所、チェックインカウンター、航空会社カウンター、国鉄乗場通路入り口、バス予約、出国審査、セキュリティチェック、レストラン、入国審査、ショッピングモール、カフェ、トイレ、遺失物取扱所、ホテル予約が掲載されているという点で共通する。これらの掲載情報は、空港案内図において一般的に掲載される情報であるといえる。逆に、OFC空港案内図には、本件空港案内図にはないサテライトゲート入り口、出発案内板、本屋、到着便案内、南ターミナルの遺失物取扱所、公衆電話(以上南ターミナル部分)、バー、公衆電話、旅行代理店カウンター、チェックインカウンター同士の間にあるセキュリティーチェック(以上北ターミナル3階部分)、バー、ショップ、ゲームセンター、国鉄、キオスク、公衆電話(以上同ターミナル2階部分)、両替所、ショップ、バス券売場(以上同ターミナル1階部分)等が掲載されている点で異なり、本件空港案内図には、OFC空港案内図にない、北ターミナル1階のインフォメーション施設が掲載されている点で異なっている。
また、上記各情報の表記方法についても、アイコンを用いるか、文字で表記するか等で異なっている。
これに加えて、本件空港案内図の方が、施設の名称を表示する文字が大きく、フロア部分の枠線に比して太字で濃いことも相俟って、見やすさや与える印象に差異を生じている。
上記両空港案内図は、出発客の順路と到着客の順路を記載する点で共通するが、この手法は、本文記載のとおり、よく用いられる手法であるから、この点をもって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とはいえない上、OFC空港案内図は、施設内の随所にかかる矢印が記載されているのに対し、本件空港案内図は、掲載されているフロア部分から出入りするポイントにのみ矢印を記載している点で異なっている。
そうすると、上記両空港案内図は、共通している部分については、空港案内図を作成する際によく用いられる一般的な手法がほとんどであり、OFC空港案内図の創作的部分における特徴とは言い難く、むしろ、施設名称の具体的表記方法や全体の配色等によって、異なる印象を与えるものであるから、本件空港案内図が、OFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。 
チューリッヒ・クローテン空港乙8の1・2 OFC空港に関する他の空港案内図と異なり、医務室、キオスクの所在場所を掲載している。
デフォルメ化してデザイン化する点に作成者の個性・思想・創作性が反映されている。
OFC空港案内図は簡略図ではあるが、デフォルメ化してデザイン化されているとはいえない。 本判決第4、2(1)に記載したとおりである。
建物の切り取り方、構造、寸法が同一である。医務室、キオスクの所在場所が掲載されている点で一致している。矢印の位置及び曲げる位置が一致している。 本件空港案内図は、OFC空港案内図に比べて空港建物施設の配置・形状をより簡略化して記載している点で一致しない。OFC空港案内図は、1階到着部分の「immigrations」を「出国審査」と表記しているが、本件空港案内図では「入国審査」と表記している。 本判決第4、2(2)ウ(ア)に記載したとおりである。
ジュネーブ・コアントラン空港・乙37の1 ・ 2 本文に掲載された主張と同様である。原告ないしK&Bは、OFC空港案内図が創作的で優れており、完成度が高いからこそ、矢印の位置まで真似したいと考えたものと思われる。 本文に掲載された主張のとおり、OFC空港案内図に創作性はない。 @ターミナル部分をどのように区分して図にするか(建物構造が比較的複雑なことから、どのように区分して図面化するかは選択の余地があるものの、OFC空港案内図においては、国内線ターミナルと国際線ターミナルのうち、日本人旅行客の利用が多いと考えられるターミナル部分のうち国際線部分とフレンチセクター部分を選択して、1階、2階、3階に区分したにすぎず、この点に関する創作性は限定された範囲でのみ認め得る。)、Aフロア内施設又はフロア部分の色分けをどのようにするか、Bいかなる施設を掲載するか、C利用客の順路を出発客、到着客毎に色分けして表示している点、D上記@ないしCを総合した結果としての見やすさの点において創作性を認めることができるから、著作物に当たる。ただし、本文に記載したとおり、これらの点についての創作性は限定された範囲でのみ認め得る。
ターミナル中の切り取り部分、3階建ての建物内部構造が凹凸まで詳細に一致している。
図面の並べ方は、本件空港案内図は、3階出発、2階チェックイン、1階到着の順に並べている点でOFC空港案内図と異なるが、旅行者の利便性からすれば、到着部分を先に記載する方が望ましい。
1階部分について、建物の形状や内部の仕切方が同一である。掲載情報についても2階のチェックイン・ロビーへ、ミート・ポイント等細かな掲載情報の取捨選択も同一である。
矢印の位置も一致している。
2階部分については、建物内部のパーテーション、細かい曲がり角が一致している。掲載情報はフレンチセクターラウンジ、エールフランスカウンター等の細かい情報が一致しており、表記の仕方も「2階 チェックイン/フレンチセクター」という表記が同じである。
3階部分については、建物の凹凸や、「免税申告所」という掲載情報の表記方法が同一である。
1階到着部分の掲載情報について、本件空港案内図は、OFC空港案内図と異なり、インフォメーションを旅行案内と空港案内に区別して表記し、長距離バス乗場を記載している点で相違している。
2階部分については、本件空港案内図は、OFC空港案内図と異なり、到着口、搭乗ゲートの番号、10番/18番バス停留所等の情報が明示されている。
3階部分について、本件空港案内図は、OFC空港案内図と異なり、ゲート51ないし59、インフォメーション施設の情報を掲載している。また、免税申告所下部の郵便、両替施設の並び順を逆に表示している。
矢印の位置、数も異なる。
本件空港案内図とOFC空港案内図は、国内線ターミナルと国際線ターミナルのうち、日本人旅行客の利用が多いと考えられるターミナル部分のうち国際線部分とフレンチセクター部分を選択して、1階、2階、3階に区分した点で共通するが、かかる手法がOFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
上記両空港案内図は、フロア及びフロア内施設の具体的な表現方法において、概ね共通している。
掲載情報の選択について、入国審査、手荷物受取所、遺失物取扱所、税関、ミーティング・ポイント、カフェ、トイレ、インフォメーション、レンタカー、ショップ、バー、両替、(1階部分)、フレンチセクターラウンジ、チェックインカウンター、エールフランスカウンター、空港会社カウンター、エスカレーター、バス停、フランス入国審査(2階部分)、免税店、ゲート通路、警察、免税申告所、出国審査、ショップ、等が掲載されているという共点で共通する。これらの掲載情報は、空港案内図において一般的に掲載される情報である。OFC空港案内図には、本件空港案内図にはない入国審査場付近の遺失物取扱所、ホテル予約、ロビー中央部付近のレンタカー(以上1階部分)、ロビー左側部分の航空カウンター、エスカレーター右側のチェックインカウンター、チケッティングカウンター、警察(以上2階部分)、美容院(3階部分)が掲載されている点で異なり、本件空港案内図には、OFC空港案内図にない1階部分の空港案内所、2階部分の税関、3階部分のインフォメーション等が記載されている点で異なる。
また、上記各情報の表記方法についても、アイコンを用いるか、文字で表記するか等で異なっている。これに加えて、本件空港案内図の方が、施設の名称を表示する文字が大きく、フロア部分の枠線に比して太字で濃いことも相俟って、見やすさや与える印象に差異を生じている。
上記両空港案内図は、出発客の順路と到着客の順路を矢印で示す点で共通するが、この手法は、本文記載のとおり、よく用いられる手法であるから、この点をもって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とはいえない。
そうすると、上記両空港案内図は、共通している部分については、空港案内図を作成する際によく用いられる一般的な手法がほとんどであり、OFC空港案内図の創作的部分における特徴とは言い難く、むしろ、施設名称の具体的表記方法や全体の配色等によって、異なる印象を与えるものであるから、本件空港案内図が、OFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
マドリッド・バラハス国際空港・乙9の1・2 本文に記載した特徴を備えている。 本文に記載したとおり、著作物性を有しない。 本判決第4、2(1)に記載したとおり
建物部分の切り取り方、建物の特殊な形状の表記、内部のパーテーションについて表示が一致している。掲載情報の詳細さに違いがあるが、レンフェ(スペイン国鉄)営業所等特殊な記載が一致している。 本件空港案内図は、OFC空港案内図に比べて空港建物施設の配置・形状をより簡略化して記載している点で一致しない。また、掲載施設情報の種類及び表記方法において異なる。例えば、1階到着部分では、OFC空港案内図にはないインフォメーション、遺失物取扱所を記載し、インフォメーションについては、個々のインフォメーションの内容まで記載している。2階部分については、OFC空港案内図と異なり、各チェックインカウンターを航空会社毎に記載している。またOFC空港案内図にはないトイレを3つ記載している。 本判決第4、2(2)ウ(イ)に記載したとおり
バルセロナ・プラット国際空港・乙10の1・2 本文に記載した特徴を備えている。 本文に記載したとおり、著作物性を有しない。 本判決第4、2(1)に記載したとおり
建物部分の切り取り方、ギザギザになった部分等建物の特殊な形状の表記が一致している。掲載情報の詳細さに違いがあるが、国内線、国際線の分け目に線を引いた点が一致している。 本件空港案内図は、OFC空港案内図に比べて空港建物施設の配置・形状をより簡略化して記載している点で一致しない。掲載情報の選択及び表記も異なっている。例えば、OFC空港案内図には掲載されていないATM、レンフェ乗場への連絡、観光情報、空港情報の別(いずれも1階部分)が表記されている。 本判決第4、2(2)ウ(ウ)に記載したとおり
フランクフルト国際空港・乙39の1・2 本文に掲載された主張と同様である。原告ないしK&Bは、OFC空港案内図が創作的で優れており、完成度が高いからこそ、真似したいと考えたものと思われる。 本文に記載したとおり、著作物性を有しない。 @ターミナル部分をどのように区分して図にするか(建物構造が比較的複雑なことから、どのように区分して図面化するかは選択の余地があるものの、OFC空港案内図においては、ターミナル1を1階、2階に区分し、ターミナル2を2階と3階に区分したに過ぎず、この点に関する創作性は限定された範囲でのみ認め得る。)、Aフロア内施設又はフロア部分の色分けをどのようにするか、Bいかなる施設を掲載するか、C利用客の順路を出発客、到着客毎に色分けして表示している点、D上記@ないしCを総合した結果としての見やすさの点において創作性を認めることができるから、著作物に当たる。ただし、本文に記載したとおり、これらの点についての創作性は限定された範囲でのみ認め得る。
同空港は、空港建物が複数存在し、かつ多層階にわたる複雑な建物であるにもかかわらず、OFC空港案内図と本件空港案内図は、建物の切り取り方、特殊な形状、寸法が全く同一である。ターミナル中央部分から左側に伸びている別ターミナル(スカイライン)へのモノレールの表記も一致している。
フロアの記載方法について、ターミナル2の2階出発・到着図では、下方の建物外周及び建物内フロアの枠取り、ターンテーブル及び搭乗連絡口の形状が同一である。同ターミナルの3階出発図では、下図が丸写しであり、搭乗口番号も全て一致している。ターミナル1の2階出発について、切り取り部分が同一である。建物内のフロア部分においても、OFCが巧妙にデザインしたチェックイン・カウンターの独特の形状が一致している。
掲載情報については、詳細さに明らかな違いがあるが、医務室をはじめ、本件空港案内図に掲載された情報は、全てOFC空港案内図に掲載されている。
矢印の位置が一致している。
たしかに、空港建物や建物内部施設の形状に関する簡略方法および程度は近似している。しかし、ターミナル1に関しては、本件空港案内図及びOFC空港案内図以外にも、形状、寸法において酷似しているものが存在しており(甲17の1)、ターミナル2においても、同様である(甲17の2)。同一の空港案内図を描けば形状と寸法が酷似するのは当然である。
掲載情報に関しても、本件空港案内図は、OFC空港案内図と異なり、必要最小限の情報のみを掲載している。表記方法についても、OFC空港案内図は、インフォメーション、トイレ、両替所、ショップ等をアイコンで表記しているのに対し、インフォメーション以外はアイコンを用いずに文字で表記し、インフォメーションのアイコンも異なっているという点で相違する。
本件空港案内図とOFC空港案内図は、ターミナル1を1階、2階に区分し、ターミナル2を2階と3階に区分してそれぞれ図面化している点で共通するが、このような共通点をもってOFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
フロア及びフロア内施設の表現においては、どの区分を表現するかという選択は概ね共通している。
掲載情報の選択については、両替、出国審査、免税店、入国審査、インフォメーション、セキュリティチェック、出入国審査、チェックインカウンター、医務室(ターミナル1の2階部分)、国際線手荷物受取所、税関、遺失物取扱所、レンタカー、鉄道チケット予約(同ターミナル1階部分)、入国審査、本屋、ホテル案内(ターミナル2の2階部分)、出国審査、免税店、レンタカー(ターミナル2の3階部分)が掲載されているという点で共通する。これらの掲載情報のうち、鉄道チケット予約については、一般的に空港案内図に記載される情報とはいえないが、その他の掲載情報は、空港案内図において一般的に掲載される情報である。逆に、OFC空港案内図には、本件空港案内図にはない授乳室、出国審査場付近のショップ、レストラン、セキュリティチェック、免税払戻金受取所、税関付近のショップ、バス乗場、トイレ、薬売店、床屋、ロビー左側のセキュリティチェック、手荷物一時預所、レストラン、カフェ(ターミナル1の2階部分)、トイレ、授乳室、ミートポイント、レストラン、バス乗場、タクシー乗場(同ターミナル1階部分)、コンビニ、ギフトショップ、トイレ、展示会案内(ターミナル2の2階部分)、セキュリティチェック(同ターミナル3階部分)が掲載されている点で異なっている。
 また、上記各情報の表記方法についても、アイコンを用いるか、文字で表記するか等で異なっている。
これに加えて、本件空港案内図の方が、施設の名称を表示する文字が大きく、フロア部分の枠線に比して太字で濃いことも相俟って、見やすさや与える印象に差異を生じている。
上記両空港案内図は、出発客の順路と到着客の順路を矢印で示す点で共通するが、この手法は、本文記載のとおり、よく用いられる手法であるから、この点をもって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とはいえない。
そうすると、上記両空港案内図は、共通している部分については、空港案内図を作成する際によく用いられる一般的な手法がほとんどであり、必ずしも一般的とは言えない鉄道チケット予約の情報も掲載されているものの、OFC空港案内図の創作的部分における特徴とは言い難く、むしろ、施設名称の具体的表記方法や全体の配色等によって、異なる印象を与えるものであるから、本件空港案内図が、OFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
ミュンヘン・フランツ・ヨーゼフ・シュトラウス空港・乙40の1・2 OFC空港案内図は、巨大なターミナルのどの部分が日本人旅行者に必要かという視点から出発し、建物の切り取り方、建物の形状や内部のデザイン、特徴的かつ詳細な掲載情報の取捨選択、矢印、色分け、コメントによる補足説明等の諸要素で旅行客の見やすさ・便利性を高めている。 本文に記載したとおり、著作物性を有しない。 @ターミナル部分をどのように区分して図にするか(建物構造が比較的複雑なことから、どのように区分して図面化するかは選択の余地があるが、日本人旅行客が頻繁に利用する部分を掲載するのが通常であるから、この点に関する創作性は限定された範囲でのみ認め得る。)、Aフロア内施設又はフロア部分の色分けをどのようにするか、Bいかなる施設を掲載するか、C利用客の順路を出発客、到着客毎に表示している点、D上記@ないしCを総合した結果としての見やすさの点において創作性を認めることができるから、著作物に当たる。ただし、本文に記載したとおり、これらの点についての創作性は限定された範囲でのみ認め得る。
本件空港案内図は、OFC空港案内図の建物内部の仕切等の下図を複製している。
掲載情報についてもほぼデット・コピーであり、鉄道の駅名部分をみるとSバーンという駅名のみが掲載されている。また「路線バス案内板」「旅行代理店」(いずれも中央ホール)、「動く歩道」(Sバーン駅)などの指摘は、OFC案内図のとおりである。
また、矢印の位置もほぼ同じである。
JTBのホームページに掲載されている地図(甲18)も、形状、寸法、切り取り部分はほぼ同一である。 本件空港案内図とOFC空港案内図は、ターミナルのモジュールCの2階部分、ターミナルの1階中央ホール部分、Sバーン駅付近に区分し、それぞれ図面化している点で共通するが、前記のとおり、日本人旅行客が頻繁に利用する部分を掲載するのは一般的な手法である。また、OFC空港案内図は、ターミナルE部分をも図面化しているが、本件空港案内図は図面化しておらず、Sバーン駅付近のどの範囲まで図面化するかという点でも異なっている。
フロア及びフロア内施設の表現においては、どの区分を表現するかという選択は概ね共通している。
掲載情報の選択については、出発ロビー、セキュリティチェック、チェックインカウンター、出国審査、入国審査、手荷物受取所、税関、免税店、チケットカウンター(モジュールC2階部分)、遺失物取扱所、手荷物預り所、免税店、両替、路線バス案内板、旅行代理店(中央ホール部分)、エスカレーター、動く歩道、カフェ、エレベーター、Sバーン駅(Sバーン駅付近部分)が掲載されているという点で共通する。これらの掲載情報は、空港案内図において一般的に掲載される情報であるといえる。むしろ、OFC空港案内図には、本件空港案内図にはない、トイレ、公衆電話、動く歩道(モジュールC2階部分)、カフェ、エレベーター、郵便局、ミーティングポイント、レストラン、動く歩道(中央ホール部分)、公衆電話(Sバーン駅付近)が掲載されている点で異なっている。
また、上記各情報の表記方法についても、アイコンを用いるか、文字で表記するか等で異なっている。
これに加えて、本件空港案内図の方が、施設の名称を表示する文字が少なく、フロア部分の枠線に比して太字で濃いことも相俟って、見やすさや与える印象に差異を生じている。
上記両空港案内図は、出発客の順路と到着客の順路を矢印で示す点で共通するが、この手法は、本文記載のとおり、よく用いられる手法であるから、この点をもって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とはいえない。
そうすると、上記両空港案内図は、共通している部分については、空港案内図を作成する際によく用いられる一般的な手法がほとんどであり、OFC空港案内図の創作的部分における特徴とは言い難く、むしろ、施設名称の具体的表記方法や全体の配色等によって、異なる印象を与えるものであるから、本件空港案内図が、OFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
ベルリン・テーゲル国際空港 ・乙11の1・2 建物の切り取り方、建物の形状や内部のデザイン、詳細な掲載情報の取捨選択、矢印や色分け、コメント等に創作性がある。 本文に記載したとおり、著作物性を有しない。 本判決第4、2(1)に記載したとおり
建物部分の切り取り方、建物の特殊な形状の表記、内部のパーテーションまで一致している。掲載情報については、甲9の1によれば、OFC空港案内図に掲載された場所以外にもトイレは存在し、かつ各トイレに授乳室が存在するにもかかわらず、授乳室やトイレの表記が一致している。ホテル予約電話、駐車場(P)の位置、矢印の位置が一致している。 当該空港は、形状が特徴的であるため、だれが書いても形状や位置関係は同じになる。したがって、空港建物や建物内部施設の客観的な形状及び位置関係が同じになるのは当然のことである。掲載施設情報については、本件空港案内図は、旅行者に必要最小限の情報のみをシンプルに選択しており、表記方法も異なっている。 本判決第4、2(2)ウ(エ)に記載したとおり
ムンバイ・サハール国際空港・乙42の1・2 工事中の部分が多いことから、OFC空港案内図は、比較的簡潔な記載内容になっているが、建物部分の切り取り方、建物内部をデフォルメしたデザイン、掲載情報の選択、旅行客の便宜を考えた2種類の矢印、親切な説明コメント等を総合的に判断すれば、同様に著作物性が認められる。 本文に記載したとおり、著作物性を有しない。 @ターミナル部分をどのように区分して図にするかについて創作性の認められる余地があるが、OFC空港案内図においては、ターミナルのうち日本人旅行客の利用が多いと考えられる部分を1階、2階、3階に区分して図面化したに過ぎず、この点に関する創作性は認められない。Aフロア内施設又はフロア部分の色分けをどのようにするか、Bいかなる施設を掲載するか、C利用客の順路を出発客、到着客毎に色分けして表示している点、D上記@ないしCを総合した結果としての見やすさの点において創作性を認めることができるから、著作物に当たる。ただし、本文に記載したとおり、これらの点についての創作性は限定された範囲でのみ認め得る。
ターミナル全体からどの部分の建物を切り取るという点で同一である。
掲載情報については、空港関係者以外は立入禁止の部分まで同一である。掲載情報の表現方法については、手荷物受取所のターンテーブルの形状、入国審査官用ブースの形状、数が同一である。
矢印の位置、曲げ方がほぼ一致している。
掲載情報について、原告空港案内図には、OFC空港案内図には記載されていない、バー(3階出発)、両替(1階到着)、施設の間仕切り(3階出発)、セキュリティーチェック(3階出発)が掲載されている。
掲載情報の表記方法が異なることはこれまでの主張のとおりである。
本件空港案内図とOFC空港案内図は、ターミナルのうち、日本人旅行客の利用が多いと考えられる部分を1階、2階、3階に区分した点で共通点を有するが、前記のとおり、かかる区分に創作性は認められないから、OFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
上記両空港案内図は、フロア及びフロア内施設の具体的な表現方法において、概ね共通している。
掲載情報の選択について、税関、出国審査、チェックインカウンター、トイレ、両替、エスカレーター、郵便局(3階部分)、トイレ、バー、ショップ、エスカレーター(2階部分)、エレベーター、トイレ、入国審査、手荷物受取所、税関、公衆電話、両替、インフォメーション(1階部分)が掲載されているという共通点を有する。これらの掲載情報は、空港案内図において一般的に掲載される情報である。OFC空港案内図には、本件空港案内図にはない3階部分左側のバー、1階部分のカフェが掲載されている点で異なり、本件空港案内図には、OFC空港案内図にない3階部分のセキュリティチェックが記載されている点で異なる。
また、上記各情報の表記方法についても、アイコンを用いるか、文字で表記するか等で異なっている。これに加えて、本件空港案内図の方が、施設の名称を表示する文字が少なく、フロア部分の枠線に比して太字で濃いことも相俟って、見やすさや与える印象に差異を生じているといえる。
上記両空港案内図は、出発客の順路と到着客の順路を矢印で示す点で共通するが、この手法は、本文記載のとおり、よく用いられる手法であるから、この点をもって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とはいえない。
そうすると、上記両空港案内図は、共通している部分については、空港案内図を作成する際によく用いられる一般的な手法がほとんどであり、OFC空港案内図の創作的部分における特徴とは言い難く、むしろ、施設名称の具体的表記方法や全体の配色等によって、異なる印象を与えるものであるから、本件空港案内図が、OFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
ジャカルタ・スカルノ・ハッタ国際空港・乙43の1・2・3 当該空港全体は、巨大かつ複雑な構造になっており、そのような空港全体からどの部分を切り取って地図にするかという点に作成者の個性が表れる。
また掲載情報の詳細さや建物内部のデフォルメしたデザイン、旅行客の便宜を考えた2種類の矢印、親切な説明コメント等には、作成者の個性が表れており、著作物性が認められる。
本文に記載したとおり、著作物性を有しない。 @ターミナル部分をどのように区分して図にするか(建物構造が比較的複雑なことから、どのように区分して図面化するかは選択の余地があるが、OFC空港案内図は、日本人旅行客が頻繁に利用する国際線ターミナルの出発ゲート入口手前部分までを1階、2階に区分して図面化したにすぎないからこの点に関する創作性は限定された範囲でのみ認め得る。)、Aフロア内施設又はフロア部分の色分けをどのようにするか、Bいかなる施設を掲載するか、C利用客の順路を出発客、到着客毎に色分けして表示している点、D上記@ないしCを総合した結果としての見やすさの点において創作性を認めることができるから、著作物に当たる。ただし、本文に記載したとおり、これらの点についての創作性は限定された範囲でのみ認め得る。
巨大かつ複雑な構造の空港全体の中から、国際線ターミナルDE部分の通路状の部分をクローズアップし、コテージ風のゲートは省略して地図にする部分が一致している。
掲載情報についても、トイレ、売店の一般的な情報から出発案内板、ダムリ社のバス乗場等の特殊な表記までほぼ同一である。
上表の表記方法も、建物内部をデフォルメしてデザインした形状、空港会社のバック・オフィス部分まで一致している。
矢印の位置も一致している。
本件空港案内図は、OFC空港案内図に比べて、建物施設の実際の形状、配置をより簡略化して記載している。
掲載情報についても、マクドナルド(1階、2階)、シルバーバード・タクシー・カウンター(1階)、ホテル案内(1階)、手荷物預所(1階)等の施設情報の表記方法が異なる。
掲載情報の表記方法が異なることも、これまで述べてきたところと同様である。
本件空港案内図とOFC空港案内図は、国際線ターミナルの出発・到着ゲート入口手前部分までを1階、2階に区分して図面化している点で共通するが、このような共通点をもってOFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
フロア及びフロア内施設の具体的表現においては、OFC空港案内図は、施設間の間仕切り枠を詳細に表示しているが、本件空港案内図は、同間仕切り枠を大幅に省略し、施設のまとまり毎に枠をとっている点で異なる。
掲載情報の選択については、出発案内板、免税店、売店、トイレ、チェックインカウンター、両替、薬局、セキュリティチェック、カフェ、エスカレーター、バー、公衆電話(以上2階部分)、トランジットカウンター、入国審査、トイレ、バー、公衆電話、両替、インフォメーション、レンタカー、税関、手荷物受取所、遺失物手荷物受取所、レンタカー、バス乗場、タクシー乗場(以上1階部分)等が掲載されているという点で共通する。これらの掲載情報は、空港案内図において一般的に掲載される情報であるといえる。むしろ、OFC空港案内図には、本件空港案内図にはないJASラウンジ、エアラインサービスカウンター、エアラインオフィス、化粧品、ラウンジ(以上2階部分)、ショップ、庭園、エレベーター等が掲載されている点で異なっている。
また、上記各情報の具体的表記方法についても、アイコンを用いるか、文字で表記するか等で異なっている。
これに加えて、本件空港案内図の方が、施設の名称を表示する文字が少なく、フロア部分の枠線に比して太字で濃いことも相俟って、見やすさや与える印象に差異を生じている。
上記両空港案内図は、出発客の順路と到着客の順路を矢印で示す点で共通するが、この手法は、本文記載のとおり、よく用いられる手法であるから、この点をもって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とはいえない。
そうすると、上記両空港案内図は、共通している部分については、空港案内図を作成する際によく用いられる一般的な手法がほとんどであり、OFC空港案内図の創作的部分における特徴とは言い難く、むしろ、施設名称の具体的表記方法や全体の配色等によって、異なる印象を与えるものであるから、本件空港案内図が、OFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
ケアンズ国際空港・乙45の1・2 本文に掲載したとおり、OFC空港案内図には著作物性が認められる。 本文に記載したとおり、著作物性を有しない。 @ターミナル部分をどのように区分して図にするかについて創作性が認められる余地があるが、OFC空港案内図は、国際線ターミナルを1階部分、2階部分に区分して図面化したというにすぎないから、この点に創作性は認められない。Aフロア内施設又はフロア部分の色分けをどのようにするか、Bいかなる施設を掲載するか、C利用客の順路を出発客、到着客毎に色分けして表示している点、D上記@ないしCを総合した結果としての見やすさの点において創作性を認めることができるから、著作物に当たる。ただし、本文に記載したとおり、これらの点についての創作性は限定された範囲でのみ認め得る。
ターミナルのうちどの部分を地図にするかという点で一致している。もっとも、OFC空港案内図と本件空港案内図の上下左右の縮尺は異なっている。建物部分の具体的表現方法については、OFC空港案内図は、1階到着部分を2階出発部分の上に配置しているが本件空港案内図では逆にしている。日本人旅行客にとっては、到着階を上に表示するOFC空港案内図の方が親切である。
掲載情報が一致している上、説明コメント部分も一致しているものがある。OFC空港案内図で「同便で乗り継ぎの場合は、この通路係員が案内をしている」と記載されている部分に本件空港案内図では「同便乗り継ぎの場合はこの通路で係員の案内がある」と記載されている。
掲載情報の表記方法についても、手荷物受取所のターンテーブルの形状や数、入国審査、税関のブースの数が一致している。また、1階到着図面については、右下にタクシー乗場を独立して表記する点や「団体用バス停」という表記、エレベーターのアイコン、右下到着口に弧を表記する点も一致している。本来見えない立入禁止部分の間仕切りが一致している。
2階出発図面については、キャプテンクラブラウンジという特殊な情報を掲載する点や出国税支払所という特殊な表記が一致しており、立入禁止部分を含めた建物形状が一致している。また、本件空港案内図のシリーズには、通常記載されていないゲート2.2A、ゲート3.3A、ゲート4.4Aの表記も同一である。
たしかに、空港建物や建物内部施設の形状に関する簡略方法および程度は近似している。しかし、本件空港案内図及びOFC空港案内図以外にも、形状、寸法において酷似しているものが存在しており(甲17の1)、本件空港案内図のターミナルにおいても同様である。同一の空港案内図を描けば形状と寸法が酷似するのは当然である。
掲載情報に関しても、本件空港案内図は、OFC空港案内図と異なり、必要最小限の情報のみを掲載している。具体的表記方法も相違する。
本件空港案内図とOFC空港案内図は、国際線ターミナルを1階部分、2階部分に区分して図面化した点で共通するが、前記のとおり、この部分に創作性は認められないのであって、上記のような共通点をもってOFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
フロア及びフロア内施設の表現においては、概ね共通するが、本件空港案内図は、施設間の細かい間仕切りを省略して表示しており、外枠についても細かい凹凸を省略している点で異なっている。
掲載情報の選択については、公衆電話、バー、ショップ、両替、セキュリティチェック、免税店、トイレ、キャプテンクラブラウンジ、レストラン、出発ロビー、出国審査、エレベーター、出国税支払所(以上2階部分)、免税店、入国審査、手荷物受取所、税関、団体用バス停、トイレ、医務室、チェックインカウンター、出発ホール、レンタカー、郵便局、到着ホール、タクシー乗場(1階部分)が掲載されているという点で共通する。これらの掲載情報のうち、キャプテン・クラブ・ラウンジについては、一般的に空港案内図に記載される情報とはいえないが、その他の掲載情報は、空港案内図において一般的に掲載される情報であるといえる。むしろ、OFC空港案内図には、本件空港案内図にはない、無料タクシー電話、有料カード置き場、事務所が掲載されている点で異なっている。
また、上記各情報の表記方法についても、アイコンを用いるか、文字で表記するか等で異なっている。
これに加えて、本件空港案内図の方が、施設の名称を表示する文字が少なく、フロア部分の枠線に比して太字で濃いことも相俟って、見やすさや与える印象に差異を生じている。
上記両空港案内図は、出発客の順路と到着客の順路を矢印で示す点で共通するが、この手法は、本文記載のとおり、よく用いられる手法であるから、この点をもって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とはいえない。
そうすると、上記両空港案内図は、共通している部分については、空港案内図を作成する際によく用いられる一般的な手法がほとんどであり、必ずしも一般的とは言えないキャプテン・クラブ・ラウンジの情報も掲載されているものの、OFC空港案内図の創作的部分における特徴とは言い難く、むしろ、施設名称の具体的表記方法や全体の配色等によって、異なる印象を与えるものであるから、本件空港案内図が、OFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
シンガポール・チャンギ国際空港・乙48の1・2 本文に記載したとおり、著作物性を有する。
OFC空港案内図と本件空港案内図を見比べると、OFC空港案内図の方が見やすい。一覧性は、利用者にとって重要であり、本件空港案内図のように小さな数字やアルファベットを探してその都度注記を見るというのは不便である。このように、作成者の考えや能力によってずいぶん使いやすさに相違が生じるものである。
また、OFC空港案内図と本件空港案内図は、掲載情報の取捨選択という点でも作成者の個性が異なっている。
本文に記載したとおり、著作物性を有しない。 @ターミナル部分をどのように区分して図にするか(建物構造が比較的複雑なことから、どのように区分して図面化するかは選択の余地があるが、OFC空港案内図はターミナル1の部分を1階と2階に区分したというものであるから、この点に関する創作性は限定された範囲でのみ認め得る。)。Aフロア内施設又はフロア部分の色分けをどのようにするか、Bいかなる施設を掲載するか、C利用客の順路を出発客、到着客毎に色分けして表示している点、D上記@ないしCを総合した結果としての見やすさの点において創作性を認めることができるから、著作物に当たる。ただし、本文に記載したとおり、これらの点についての創作性は限定された範囲でのみ認め得る。
巨大かつ複雑なターミナルの一部の切り取り方及び内部のデザインが完全に同一である。例えば、2階図面において、各ゲートへの連絡部を波形で記載している点や細かな通路も同一である。
掲載情報については、本件空港案内図の方が詳細ではあるが、この点をもって、類似性が否定されるものではない。
矢印は、位置、曲がり具合ともに一致している。
たしかに、空港建物や建物内部施設の客観的構造及び位置関係に関する簡略方法及び程度は類似しているが、JTBの空港案内図も酷似している(甲19の1、2)。
表現方法においては、本件空港案内図は、OFC空港案内図に比べて空港建物施設の実際の配置・形状をより簡略化して記載しており完全には一致しない。
掲載情報については、本件空港案内図の方がOFC空港案内図より詳細であり、その表現方法も異なっている。
本件空港案内図とOFC空港案内図は、ターミナル1を1階、2階に区分し、それぞれ図面化している点で共通するが、このような共通点をもってOFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
フロア及びフロア内施設の表現においては、どの区分を表現するかという選択は概ね共通しているが、本件空港案内図は、施設間の細かい間仕切りを省略して表示する部分があり、細かい施設については、施設の外枠線そのものを省略している部分がある(例えば、1階部分左下のショップ、1階部分乗り継ぎカウンター上の施設、2階部分略扇形のバー施設等。)。
掲載情報の選択については、トイレ、到着ホール、入国審査、手荷物受取所、免税店、カフェ、税関、両替、マクドナルド、入国審査/検疫、タクシー乗場、出迎えロビー、ホテル予約カウンター、荷物一時預かり所(以上1階部分)、西フィンガー、トイレ、出国審査、チェックインカウンター、セキュリティチェック、スカイトレイン乗場、東フィンガー、出発ホール、両替所、バー、郵便、医療センター、別送品申込みカウンター、インフォメーション、美容室(以上2階部分)が掲載されているという点で共通する。これらの掲載情報のうち、美容院については、一般的に空港案内図に記載される情報とはいえないが、その他の掲載情報は、空港案内図において一般的に掲載される情報であるといえる。むしろ、本件空港案内図には、OFC空港案内図にない、ナイトストップ/トランジットカウンター、遺失物カウンター、エアポート・サービスカウンター、トランジット・ホテル、フィットネスセンター、ミーティングサービス(以上1階部分)、ドラッグストア、トランジットホテル、保税倉庫、荷物一時預かりカウンター、車両呼び出しサービス、無料市内観光カウンター、キッズ・プレイ・コーナー、消費税還付申込みカウンター(以上2階部分)が掲載されている点で異なっている。
また、上記各情報の表記方法についても、アイコンを用いるか、文字で表記するか、図面には記号を付し、図面外で、記号の順に施設情報を記載する等で異なっている。
これに加えて、本件空港案内図の方が、施設の名称を表示する文字が、フロア部分の枠線に使用されていない黒を使用していることも相俟って、見やすさや与える印象に差異を生じているといえる。
上記両空港案内図は、出発客の順路と到着客の順路を矢印で示す点で共通するが、この手法は、本文記載のとおり、よく用いられる手法であるから、この点をもって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とはいえない。
そうすると、上記両空港案内図は、共通している部分については、空港案内図を作成する際によく用いられる一般的な手法がほとんどであり、必ずしも一般的とは言えない美容院の情報も掲載されているものの、OFC空港案内図の創作的部分における特徴とは言い難く、むしろ、施設名称の具体的表記方法や全体の配色等によって、異なる印象を与えるものであるから、本件空港案内図が、OFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
上海虹橋国際空港・乙49の1・2・3 建物の切り取り方、建物の形状や内部のデザイン、詳細な掲載情報の取捨選択、矢印や色分け、コメント等に創作性がある。 本文に記載したとおり、著作物性を有しない。 @ターミナル部分をどのように区分して図にするか(建物構造が比較的複雑なことから、どのように区分して図面化するかは選択の余地があるが、OFC空港案内図は、国際線ターミナルを1階、2階に区分してその一部を図面化したものであるから、この点に関する創作性は限定された範囲でのみ認め得る。)、Aフロア内施設又はフロア部分の色分けをどのようにするか、Bいかなる施設を掲載するか、C利用客の順路を出発客、到着客毎に色分けして表示している点、D上記@ないしCを総合した結果としての見やすさの点において創作性を認めることができるから、著作物に当たる。ただし、本文に記載したとおり、これらの点についての創作性は限定された範囲でのみ認め得る。
建物の切り取り方、外壁の凹凸のデフォルメの仕方が一致している。1階到着部分の図面と2階出発部分の図面の配置が逆になっているという違いがある。OFC空港案内図のように1階到着部分を上に配置する方が、日本人旅行客には便宜であり、本件空港案内図は不親切である。
建物内部施設の表現方法についても、1階手荷物受取所のターンテーブルの形状及び数が同一である。
掲載情報についても、本件空港案内図は、全てOFC空港案内図に掲載されている。
空港建物や建物内部施設の形状及び位置関係の表現方法は、異なっている。例えば、1階到着部分の図面については、本件空港案内図は、OFC空港案内図より実際の配置、形状を簡略化して記載しており、完全には一致しない。2階出発部分の図面については、両替所や出発案内板の表現方法が異なる。
掲載情報については、2階部分の手荷物一時預所は、本件空港案内図には記載されているが、OFC空港案内図には記載されていない。
本件空港案内図とOFC空港案内図は、国際線ターミナルを1階、2階に区分してその一部を図面化したものである点で共通するが、このような共通点をもってOFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
 フロア及びフロア内施設の表現においては、どの区分を表現するかという選択は概ね共通しているが、本件空港案内図は、施設間の細かい間仕切りを省略して施設のかたまり毎に外枠だけを記載する部分がほとんどであり、細かい施設については、施設の外枠線そのものを省略している部分がある(例えば、1、2階部分下側のH型の施設、2階部分のチェックインカウンターの陰の施設群、セキュリティカウンターとチェックインカウンターの間の円形の施設、2階部分スタンドバーの形状、1階部分ホテル案内所の形状等)。
掲載情報の選択については、エスカレーター、ショップ、両替所、ファーストクラスラウンジ、セキュリティチェック、チェックインカウンター、税関・エックス線検査、出国審査、レストラン、出発案内板、郵便、国際線空港使用料支払所(以上2階部分)、ビザカウンター、手荷物受取所、入国審査、検疫、遺失物取扱所、トイレ、両替所、インフォメーション、エックス線検査、タクシー案内、ホテル案内(以上1階部分)が掲載されているという点で共通する。これらの掲載情報は、空港案内図において一般的に掲載される情報であるといえる。逆に、OFC空港案内図には、本件空港案内図にはない日本食、バー、待合室、フェンス、3階に通じる階段(以上2階部分)、カート、公安室、レストラン(以上1階部分)が掲載されている点で異なっている。
また、上記各情報の表記方法についても、アイコンを用いるか、文字で表記するか等で異なっている。
これに加えて、本件空港案内図の方が、施設の名称を表示する文字が大きく、フロア部分の枠線に比して太字で濃いことも相俟って、見やすさや与える印象に差異を生じている。
上記両空港案内図は、出発客の順路と到着客の順路を矢印で示す点で共通するが、この手法は、本文記載のとおり、よく用いられる手法であるから、この点をもって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とはいえない。
そうすると、上記両空港案内図は、共通している部分については、空港案内図を作成する際によく用いられる一般的な手法がほとんどであり、OFC空港案内図の創作的部分における特徴とは言い難く、むしろ、施設名称の具体的表記方法や全体の配色等によって、異なる印象を与えるものであるから、本件空港案内図が、OFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
マカオ国際空港・乙50の1・2 建物の切り取り方、建物の形状や内部のデザイン、詳細な掲載情報の取捨選択、矢印や色分け、コメント等に創作性がある。 本文に記載したとおり、著作物性を有しない。 @ターミナル部分をどのように区分して図にするかについて創作性を認める余地があるものの、OFC空港案内図は、ターミナル部分を1階部分、2階部分に区分して図面化したにすぎないから、この部分に創作性を認めることはできない。Aフロア内施設又はフロア部分の色分けをどのようにするか、Bいかなる施設を掲載するか、C利用客の順路を出発客、到着客毎に色分けして表示している点、D上記@ないしCを総合した結果としての見やすさの点において創作性を認めることができるから、著作物に当たる。ただし、本文に記載したとおり、これらの点についての創作性は限定された範囲でのみ認め得る。
建物の切り取り方が同じである。手荷物受取所のターンテーブルの形状及び数等の内部のデフォルメしたデザインも似通っている。掲載情報の取捨選択や矢印も類似している。 原告が主張する類似点は、いずれも旅行者向け空港案内図という性質に附随する範囲内のものにすぎない。本件空港案内図にはOFC案内図には記載のない施設情報が掲載されるなどの相違点がある。例えば、エスカレーターの行き先を「3階ラウンジフロア」「1階到着フロアへ」などと明示し、1階南側駐車場入り口付近のショップ、レストラン、ラウンジ等を具体的に表記している。 本件空港案内図とOFC空港案内図は、ターミナル部分を1階部分、2階部分に区分して図面化した点で共通するが、前記のとおり、この部分に創作性を認めることはできないから、このような共通点をもってOFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
フロア及びフロア内施設の表現においては、どの区分を表現するかという選択は概ね共通している。
掲載情報の選択については、ゲート、ショップ、レストラン、チェックインカウンター、両替、トイレ、エスカレーター、出国カード記入デスク、エックス線チェック、郵便局、出国審査(以上2階部分)、手荷物受取所、入国審査、税関、ラウンジ、トイレ、両替、インフォメーション、ショップ(以上1階部分)が掲載されているという点で共通する。これらの掲載情報のうち、出国カード記入デスクについては、一般的に空港案内図に記載される情報とはいえないが、その他の掲載情報は、空港案内図において一般的に掲載される情報であるといえる。逆に、OFC空港案内図には、本件空港案内図にはないエレベーター、公衆電話、カフェが掲載されている点で異なっている。
 また、上記各情報の表記方法についても、アイコンを用いるか、文字で表記するか等で異なっている。
これに加えて、本件空港案内図の方が、施設の名称を表示する文字が大きく、フロア部分の枠線に比して太字で濃いことも相俟って、見やすさや与える印象に差異を生じている。
上記両空港案内図は、出発客の順路と到着客の順路を矢印で示す点で共通するが、この手法は、本文記載のとおり、よく用いられる手法であるから、この点をもって、OFC空港案内図の創作的表現部分における特徴とはいえない。
そうすると、上記両空港案内図は、共通している部分については、空港案内図を作成する際によく用いられる一般的な手法がほとんどであり、必ずしも一般的とは言えない出国カード記入デスクの情報も掲載されているものの、OFC空港案内図の創作的部分における特徴とは言い難く、むしろ、施設名称の具体的表記方法や全体の配色等によって、異なる印象を与えるものであるから、本件空港案内図が、OFC空港案内図の創作的表現における特徴を感得し得るということはできない。
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