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【事件名】ろうそく広告「油煙90%カット」事件(2)
【年月日】平成17年4月28日
 大阪高裁 平成16年(ネ)第2208号 不正競争行為差止等請求控訴事件
 (原審・大阪地裁平成14年(ワ)第8337号)
 (口頭弁論終結 平成17年2月10日)

判決
控訴人兼被控訴人(1審原告) カメヤマ株式会社(以下「原告」という。)
同訴訟代理人弁護士 櫻林正己
同 楠井嘉行
同 川端康成
同 西澤博
同 赤木邦男
同 加藤明子
同 今井潔
同 中西正洋
控訴人兼被控訴人(1審被告) 株式会社日本香堂(以下「被告」という。)
同訴訟代理人弁護士 浅岡輝彦
同 三森仁
同 中久保満昭


主文
1 原告の控訴に基づき、原判決主文第3項及び第4項を、次のとおり変更する。
(1) 被告は、原告に対し、713万1259円及びこれに対する平成14年9月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
2 被告の控訴を棄却する。
3 訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを2分し、その1を原告の、その余を被告の各負担とする。
4 この判決の主文第1項(1)のうち、原判決の認容額を超えて支払を命ずる部分は、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨等
1 原告
(1) 原判決第3項ないし第5項を次のとおり変更する。
(2) 被告は、原告に対し、3000万円及びこれに対する平成14年9月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3) 被告は、原告に対し、日本経済新聞(全国版)及び読売新聞(全国版)並びに原判決別紙謝罪広告対象業界紙目録記載の業界紙の各最終面に、原判決別紙謝罪広告目録記載の謝罪広告を、同目録記載の要領で各1回掲載せよ。
(4) 訴訟費用は、第1、2審とも被告の負担とする。
(5) 仮執行宣言
2 被告
(1) 原判決中、被告敗訴部分を取り消す。
(2) 原告の請求をいずれも棄却する。
(3) 訴訟費用は、第1、2審とも原告の負担とする。
第2 事案の概要
1 本件は、ろうそくの製造・販売業者である原告が、被告に対し、被告がその販売するろうそくに、燃焼時に発生するすすの量が90%減少している、火を消したときに生じるにおいが50%減少しているなどという表示をしていることは、不正競争防止法2条1項13号(品質等誤認表示)及び同項14号(営業誹謗行為)に該当すると主張して、@同法3条1項に基づき、上記の表示をし、又は上記の表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示すること(以下「譲渡等」という。)の差止め、A同条2項に基づく上記表示の廃棄、B同法4条に基づく損害賠償3000万円の支払、C同法7条に基づく謝罪広告の掲載を求めた事案である。
 原審は、上記表示は同法2条1項13号(品質等誤認表示)に該当するが、同項14号(営業誹謗行為)には該当しないとした上で、原告の請求のうち、@上記の表示をし、又は上記の表示をした商品の譲渡等の差止め、A上記表示の廃棄、B損害賠償300万円の請求を認容し、その余の請求をいずれも棄却した。
 これに対し、原告及び被告が、各敗訴部分につきそれぞれ控訴を提起した。(以下、原判決引用部分中、「別紙」とあるのを、いずれも「原判決別紙」と読み替える。)
2 前提事実
 当事者間に争いのない事実並びに各項に掲げた証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実は、原判決3頁9行目から7頁1行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
 ただし、3頁22行目及び4頁2行目の各「という。)」の次にそれぞれ「。」を加え、3頁末行の「消した時」を「消したとき」と改め、4頁15行目末尾の次に「なお、被告旧商品、被告新商品及び被告新々商品は、付された表示は異なるが、製品内容は同一である。」を加え、6頁2行目及び同4行目の各「上記新聞広告」をいずれも「上記各新聞広告」と改め、同14行目の括弧書き部分を削る。
3 争点
(1) 被告新商品の燃焼時に発生するすすの量が90%減少しているということは虚偽であるか。
(2) 原判決別紙被告表示目録記載8の表示は虚偽であるか。
(3) 被告新商品の火を消したときに発生する消しにおいが50%減少しているということは虚偽であるか。
(4) 被告が、その販売するろうそく及びその広告に原判決別紙被告表示目録記載の各表示をすること又はその各表示をした商品を譲渡等することは、商品若しくはその広告に商品の品質について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡等する行為(不正競争防止法2条1項13号)に当たるか。
(5) 被告が、その販売するろうそく及びその広告に原判決別紙被告表示目録記載の各表示をすること又はその各表示をした商品を譲渡等することは、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為(不正競争防止法2条1項14号)に当たるか。
(6) 原告の被った損害額
(7) 差止め、謝罪広告の必要性
第3 争点に関する当事者の主張
 次のとおり付加、訂正等するほか、原判決7頁19行目から30頁19行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
1 9頁21行目の「乙32実験」を「乙第32号証記載の実験(以下「乙32実験」という。)」と、10頁13行目の「ろうろく」を「ろうそく」と各改め、同25行目の「カット率」の前に「すすの量の」を加える。
2 11頁15行目の「被告は」の次及び同16行目の「先立ち」の次にそれぞれ「、」を加え、同23行目の「カットすると否と」を「カットしたか否か」と改め、12頁末行の「完全燃焼に近い状態で実験を行えば、」を削る。
3 16頁3行目から4行目にかけての「乙第32号証記載の実験(以下「乙32実験」という。)」を「乙32実験」と改め、17頁14行目の「被告が」の次に「原審において」を加え、18頁20行目の「生じた時」を「生じたとき」と改める。
4 20頁6行目の「補集できず」を「捕集できず」と、同9行目の「採られていない」を「とられていない」と各改める。
5 21頁19行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。
 「キ 乙44実験
 被告は、株式会社島津総合分析試験センター(以下「島津」という。)に依頼して、乙第44号証記載の消しにおい測定実験(以下「乙44実験」という。)を行った。
 しかし、乙44実験においては、サンプルの採取を島津が行っていないという問題がある。
 また、ろうそくの消しにおいは、パラフィンの蒸発成分及びその酸化物質が主要成分であり、硫化水素、硫黄及びアンモニアの分子を構成する硫黄(S)や窒素(N)はごく微量しか含まれていないはずであるのに、乙44実験によれば、硫化水素系、硫黄系、アンモニアのにおいが高濃度に測定されていることからすれば、使用した測定装置がろうそくの消しにおいの測定には不相当なものであったと考えられる。
 さらに、乙44実験の結果が正しいとしても、測定されたにおいは炭化水素系のにおいよりもアルデヒド系又はエステル系のにおいに類似しているのであるから、炭化水素系のにおいの減少率だけではなく、全体のにおいを比較すべきであって、そうすれば消しにおいは1割しか減少していない。」
6 21頁20行目冒頭の「キ」を「ク」と改める。
7 26頁末行末尾の次に改行して、次のとおり加える。
 「カ 乙44実験
 乙44実験は、においの質を「硫化水素」、「硫黄系」、「アンモニア」、「アミン系」、「有機酸系」、「アルデヒド系」、「エステル系」、「芳香族系」及び「炭化水素系」の九つに区分し、それぞれの質のにおいごとに、においの強度を臭気指数相当値として機械的に数値化したものである。
 ろうそくの消しにおいは、炭化水素系に属するパラフィン類の気化したにおいであるところ、乙44実験の結果によれば、パラフィン類の属する「炭化水素系」のにおいの臭気指数相当値は、50%強カットされている。」
8 27頁1行目冒頭の「カ」を「キ」と、28頁4行目の「油煙」を「すす」と各改める。
9 29頁19行目から同24行目までを、次のとおり改める。
 「(1) 原告の主張
 ア 無形損害 3000万円
 被告の不正競争防止法2条1項13号及び同項14号に該当する不正競争行為により、原告は信用を毀損され、営業上の損害を受けた。
 被告の上記不正競争行為は、従来のろうそくにおいて問題とされていた、すすが出ること、消したときに特有のにおいがすることを大幅に解消したとするものであり、被告新商品を取引者及び需要者に販売するに際し、強いアピール力を有することは明らかである。
 被告は、テレビ、業界紙、店頭展示等で強力な宣伝を行い、取引者及び需要者に対し、被告新商品は従来商品に比較して格段に優れた性能を有する商品であり、原告の商品を中心とする従来商品は性能が劣った劣悪品であるという誤解を生じさせたものであるから、原告は、被告の不正競争行為により多大な信用損害を受けた。
 ろうそくの販売総額は推計で年額約75億円であり、このうち原告が約35億円、被告が約4億円を占めているところ、このような数十億円単位の事業における事業利益を拡大するための信用毀損行為における損害額は3000万円を下らない。
 また、そうでないとしても、被告は、虚偽の広告により被告新商品の販売数量を増加させたものであり、被告新商品の販売数量増加分のうち原告の商品の占有率(約50ないし60%)に相当する部分は、原告の営業上の損害というべきである。
 イ 有形損害(当審において追加) 1557万2320円
 (ア) 原告社員の交通費 53万9200円
 (イ) 実験のための原告社員の人件費 292万0658円
 (ウ) 打合せ及び裁判のための原告社員の人件費 294万円
 (エ) 環境保全事業団への実験委託費 150万4146円
 (オ) 機材費 3万6960円
 (カ) 調査活動費 54万1203円
 (キ) ろうそく購入費 9万0153円
 (ク) 弁護士費用 700万円
 ウ 原告は、前記ア及びイの合計4557万2320円の内金として3000万円を請求する。
 (2) 被告の主張
 ア 被告新商品について行われてきた、すすの量が90%減少している、消しにおいが50%減少しているという趣旨の表示は、前記5(2)のとおり、被告従来商品と比較したものであり、原告の商品と比較したものではないから、原告の信用を毀損するものではなく、原告に営業上の損害が生じることはない。
 また、被告新商品が販売されていた期間について、原告の商品の市場占有率が減少していたわけではないから、この点からも原告には営業上の損害も生じていない。
 イ 原告の主張する有形損害は、訴訟追行費用であり、被告の行為と相当因果関係を有しない。」
10 30頁1行目の「未だに」を「いまだに」と改め、同18行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。
 「 なお、仮に、被告新商品の燃焼時に発生するすすの量が90%減少していること及び消しにおいが50%減少していることが虚偽であるとしても、原判決別紙被告表示目録3のうち、「ススが出にくくなって、お部屋を汚しません。」という表示部分、同目録4のうち、「ローソクを消した時、嫌なにおいがしません。」という表示部分、同目録6のうち、「また、ローソクを消したとき、特有のにおいが少ない新機能ローソクです。」という表示部分及び同目録7のうち「お部屋の空気もすっきりとさわやかにする、画期的なローソクです。」という表示部分は、具体的なすすの量や消しにおいのカット率に言及しておらず虚偽ではないから、これらの部分まで差し止める必要性はない。」
第4 当裁判所の判断
1 次のとおり付加、訂正等するほか、原判決30頁21行目から55頁10行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 37頁2行目の「被告の」の次及び同6行目の「実験方法を、」の次にいずれも「原審」を、38頁23行目、同25行目、41頁21行目から22行目にかけて、同23行目、同24行目、同末行及び42頁19行目から20行目の各「パラフィン」の次に、いずれも「類」を各加える。
(2) 41頁4行目、同18行目、42頁4行目及び45頁1行目の各「上記」をいずれも「前記」と改め、同末行の「消しにおい」の次に「の強弱」を、46頁1行目の「蒸気圧は、」の前に「弁論の全趣旨によれば、」を各加え、47頁23行目の「目視できる」を「目視でき、消しにおいも感じられる」と改める。
(3) 48頁22行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。
 「(6) 乙44実験
 被告は、ろうそくの消しにおいは、気化したパラフィン類のにおいであるところ、乙44実験の結果によれば、パラフィン類の属する炭化水素系のにおいの臭気指数相当値は、50%強カットされていると主張する。
 しかしながら、乙第44号証によれば、乙44実験でサンプルとされた気体のにおいの類似度について見ると、被告従来商品においては、炭化水素系は9.2%であるところ、アルデヒド系は35.0%、エステル系は12.6%、アンモニアは12.1%、有機酸系は10.8%であり、被告新商品においては、炭化水素系は12.8%であるところ、アルデヒド系は27.5%、エステル系は27.5%、有機酸系は11.4%、アンモニアは10.5%であることが認められる。
 そうすると、乙44実験のサンプルとされた気体のにおいは、炭化水素系に属する気化したパラフィン類のにおいよりも、むしろアルデヒド系やエステル系のにおいに近いものと考えられるが、上記実験結果は、ろうそくの消しにおいの大半は気化したパラフィン類のにおいであることと明らかに矛盾しており、このことからすれば、乙44実験の結果は、信用性が低いものであるといわざるを得ない。
 なお、乙44実験の結果を前提としても、臭気指数相当値(全体としてのにおいの強度を臭気指数相当の値で示したもの)は、被告従来商品が36.3、被告新商品が31.7であり、被告新商品の消しにおいは、被告従来商品と比較して約13%減少したにとどまることが認められる。
 以上によれば、乙44実験の結果をもって、直ちに被告新商品の消しにおいが50%減少していると認めることはできない。」
(4) 48頁23行目冒頭の「(6)」を「(7)」と、50頁25行目の「告知若しくは流布すること」を「告知し、又は流布する行為」と各改め、51頁12行目の「第39号証」の次に「、第53ないし第58号証、乙第41号証の1ないし3、第42号証」を加える。
(5) 53頁17行目の「告知し又は流布すること」を「告知し、又は流布する行為」と、同20行目から54頁14行目までを、次のとおり各改める。
 「(1) 以上によれば、被告は、故意又は過失により、不正競争行為を行ったことは明らかであるから、これにより原告が被った以下の(2)ないし(4)の損害(合計713万1259円)を賠償すべき責任を有する。
 (2) 信用毀損に係る損害 0円
 被告がその販売するろうそく及びその広告に原判決別紙被告表示目録記載1ないし4、6ないし8の表示をすること又はその各表示をした商品を譲渡等することは、前記5(3)のとおり、競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為(同項14号。以下「営業誹謗行為」という。)には当たらない。
 また、被告の行為は、前記4(3)のとおり、商品又はその広告に商品の品質について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡等する行為(不正競争防止法2条1項13号。以下「品質等誤認表示」という。)に当たるが、このことから直ちに原告の信用が毀損されたということはできない(被告のした品質等誤認表示が、一般消費者にとって、原告の商品の品質が劣っているという趣旨に受け取られるものでないことは、前記5(2)イのとおりである。)。
 したがって、原告の信用の毀損に係る損害が発生したとは認められない。
 (3) 営業上の損害 300万円
 ア 前記基礎となる事実(2)のとおり、原告の商品と被告新商品は競争関係にある。また、前記5(2)イのとおり、神棚、仏壇用ろうそく市場における原告の商品の占有率は、約50ないし60%である。
 イ 前記4のとおり、被告は、被告新商品はすすの量が90%、消しにおいが50%減少しているなどと品質等誤認表示をしたものであるから、一般消費者は、被告新商品は被告従来商品に比べてすすの量が90%、消しにおいが50%減少していると信じて被告新商品を購入し、これと競合する原告の商品を購入しないという消費行動をとることがあるものと推認され、これを覆すに足りる証拠はない。
 なお、原判決別紙被告表示目録記載1ないし4、6ないし8の表示は、被告新商品と原告の商品とを直接比較するものではないけれども、上記表示は、少なくとも、これを見た一般消費者に対し、被告新商品は上記表示に記載された品質を持つ優れた商品であるという認識を与えることは明らかであるから、上記の認識を持っていなければ被告新商品以外の商品(原告の商品を含む。)を購入したであろう消費者が、上記の認識を持ったがゆえに、被告新商品を選択し購入するということは十分に考えられるので、上記表示が被告新商品と原告の商品とを直接比較するものではないことは、上記推認を覆す事情には当たらない。
 してみると、被告の不正競争行為により、原告に営業上の損害が生じたことが認められる。
 ウ しかしながら、前記表示により、どの程度の消費者が原告の商品ではなく被告新商品を購入し、原告が幾らの損害を受けたかについては、これを認定するに足りる的確な証拠がなく(原告提出に係る各陳述書(甲第9号証及び第42号証)中、原告が3000万円に相当する営業上の損害を受けたとする部分は、直ちに採用することができない。)、原告の営業上の損害は、その額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難なものであるといえる。
 したがって、不正競争防止法6条の3に基づき、弁論の全趣旨及び証拠調べの結果(特に、被告の品質等誤認表示の態様、原告の商品の占有率)を考慮して、原告の損害額は300万円であると認めるのが相当である。
 (なお、甲第42号証、第53号証ないし第58号証によれば、被告新商品の発売後、原告の市場占有率が低下したことが認められなくもないが、その低下割合はせいぜい1%程度にすぎない上、前記1(5)、4(1)ア(イ)のとおり、被告新商品は、そのカット率はともかく、ある程度はすすが減少していることがうかがわれ、また、部屋の空気を爽やかにする効果があるため、消費者がこれらの被告新商品の特長を考慮して被告新商品を選択したことも十分に考えられることからすれば、上記占有率の低下分全額が、被告の品質等誤認表示により生じた損害であるということまではできない。)
 (4) 有形損害 413万1259円
 ア 人件費 150万円
 甲第59号証の1・2、第61ないし第63号証、第69号証及び弁論の全趣旨によれば、原告は、被告の不正競争行為に関する調査、実験等を行い、人件費を支出したことが認められるところ、このうち150万円の範囲において、被告の不正競争行為の存在を立証するために要した費用として、被告の不正競争行為との間の相当因果関係を認める(なお、裁判所への出頭に要した旅費等については、訴訟費用の負担の裁判により決すべきことであるので(民事訴訟費用等に関する法律2条参照)、ここでは考慮しない。)。
 イ 環境保全事業団への実験委託費 150万4146円
 甲第59号証の1、第60号証、第70ないし第72号証の各1・2及び弁論の全趣旨によれば、原告は、環境保全事業団に対し、実験委託費として150万4146円を支払ったことが認められ、これは、被告の不正競争行為の存在を立証するために要した費用というのが相当である。
 ウ 機材費 3万6960円
 甲第38号証、第60号証、第73号証の1・2及び弁論の全趣旨によれば、原告は、オリックス・レンテック株式会社に対し、電子天秤レンタル料等として3万6960円を支払ったことが認められ、これは、被告の不正競争行為の存在を立証するために要した費用というのが相当である。
 エ 調査活動費 0円
 甲第59号証の1、第69号証及び弁論の全趣旨によれば、原告は、営業担当従業員に命じて、被告商品が量販店等で販売されている状況について調査させたことが認められるが、上記調査は通常の営業活動の中ですることも可能なものであり、原告が上記調査のために別途費用を支出すべき必要性が存在したとは認めるに足りない。
 オ ローソク購入費 9万0153円
 甲59号証の1・3、第69号証及び弁論の全趣旨によれば、原告は、被告商品を購入するために9万0153円を支払ったことが認められ、これは、被告の不正競争行為の存在を立証するために要した費用というのが相当である。
 カ 弁護士費用 100万円
 本件訴訟の難易度、認容額など諸般の事情を総合的に考慮し、原告が本件訴訟の提起追行のために支出した弁護士費用のうち、100万円の範囲において、被告の不正競争行為との間の相当因果関係を認める。」
(6) 54頁17行目の「弁論の全趣旨」の前に、「甲49号証の1、第50号証、第75号証、乙第38号証及び」を、同18行目の「被告新商品は」の次に「一部の」を各加え、同19行目の「ポップ等は」を「ポップ等も、一部の」と改める。
(7) 55頁1行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。
 「 被告は、原判決別紙被告表示目録3、4、6及び7のうち、具体的なすすの量や消しにおいのカット率に言及していない部分は、虚偽ではないから差止めの必要性はない旨主張する。
 しかしながら、原判決別紙被告表示目録3、4、6及び7は、前記認定のとおり虚偽と認められる内容を含んでいる以上、全体として不正競争防止法2条1項13号にいう品質等誤認表示に該当することは明らかである。被告の主張は、採用することができない(もちろん、被告において、上記各表示のうち虚偽とは認められない部分のみを使用することは差し支えない。)。」
(8) 55頁8行目の「当たらないこと、」から同9行目の「などに照らし、」までを、「当たらず、原告の営業上の信用が害されたとは認めるに足りないので、」と改める。
2 その他、原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照らし、原審及び当審で提出、援用された全証拠を改めて精査しても、当審及び当審の引用する原審の認定、判断を覆すほどのものはない。
3 以上によれば、原告の請求は、@原判決被告表示目録1ないし4、6ないし8の各表示をすること又は上記の表示をした商品を譲渡等することの差止め、A上記表示の廃棄並びにB損害賠償713万1259円及びこれに対する不正競争行為の後である平成14年9月3日(訴状送達の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。
 よって、原告の控訴に基づき原判決主文第3項及び第4項を変更し、被告の控訴を棄却することとして、主文のとおり判決する。

大阪高等裁判所第8民事部
 裁判長裁判官 竹原俊一
 裁判官 小野洋一
 裁判官 中村心
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