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【事件名】「ケイコとマナブ」編集著作権侵害事件(2)
【年月日】平成17年3月29日
 東京高裁 平成16年(ネ)第2327号 著作権侵害差止等請求控訴事件
 (原審・東京地裁平成15年(ワ)第285号)
 (平成16年12月22日 口頭弁論終結)

判決
控訴人 株式会社リクルート
訴訟代理人弁護士 竹田稔
同 末吉亙
同 飯塚卓也
同 川田篤
同 藤本知哉
同 高橋元弘
被控訴人 株式会社プロトコーポレーション
訴訟代理人弁護士 辻巻真
同 辻巻淑子
同 辻巻健太
同 立松直樹
同 岩田香織
同 服部由美


主文
 控訴人の本件控訴及び当審における請求をいずれも棄却する。
 当審における訴訟費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、別紙アイコン一覧表目録1記載のアイコン一覧表を掲載した情報誌を製作、印刷、製本、発売又は頒布してはならない。
3 被控訴人は、別紙アイコン一覧表目録2記載のアイコン一覧表を掲載した情報誌を製作、印刷、製本、発売又は頒布してはならない。
4 被控訴人は、別紙雑誌目録1(1)ないし(24)、同目録2(1)ないし(19)及び同目録3(1)ないし(19)記載の雑誌及びそれらの半製品並びにこれに関する印刷用紙型、亜鉛板、フィルム、版下など印刷用の原版を廃棄せよ。
5 被控訴人は、控訴人に対し、1380万円及びこれに対する平成15年1月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。
7 仮執行宣言
第2 事案の概要
 控訴人は、各種学校等(以下「スクール」という。)及びその講座内容等の情報を掲載した情報誌「ケイコとマナブ」(以下「控訴人情報誌」といい、その首都圏版、関西版及び東海版を総称して「控訴人各情報誌」という。)を編集、発行しており、被控訴人は、これと同様の情報を掲載した情報誌「ヴィー・スクール」(以下「被控訴人情報誌」といい、その首都圏版、関西版及び東海版を総称して「被控訴人各情報誌」という。)を編集、発行している。
 控訴人は、原審において、被控訴人に対し、(1)被控訴人による被控訴人各情報誌の編集、発行は、@控訴人各情報誌平成14年4月号のモノクロで印刷され、広告主から出稿されたスクール情報及び講座情報が掲載された広告記事が分類、配列されて掲載されている部分(以下「分野別モノクロ情報ページ」という。)、A同分野別モノクロ情報ページ中のツメ見出し・カプセル、B同「学べる内容から探せるスーパーINDEX」(以下「スーパーインデックス」という。)、C同スーパーインデックスの大分類・小分類表示、D同「通学アイコン一覧表」(原判決別紙「原告通学アイコン一覧表」記載のもの、以下「控訴人通学アイコン一覧表」という。)及びE同「通信アイコン一覧表」(原判決別紙「原告通信アイコン一覧表」記載のもの)の各編集著作権を侵害すると主張して、原判決別紙情報誌目録1〜6記載の被控訴人各情報誌の製作、印刷、製本、発売及び頒布の差止めを、(2)控訴人通学アイコン一覧表の編集著作権に基づき、原判決別紙アイコン一覧表目録1記載のアイコン一覧表を掲載した情報誌の製作、印刷、製本、発売及び頒布の差止めを、(3)控訴人情報誌東海版、首都圏版及び関西版平成14年4月号の通信アイコン一覧表の編集著作権に基づき、原判決別紙アイコン一覧表目録2記載のアイコン一覧表を掲載した情報誌の製作、印刷、製本、発売及び頒布の差止めを、(4)控訴人情報誌東海版、首都圏版及び関西版同月号の分野別モノクロ情報ページ及びスーパーインデックスの編集著作権並びに上記控訴人通学アイコン一覧表及び通信アイコン一覧表の編集著作権に基づき、原判決別紙雑誌目録1(1)ないし(15)、同目録2(1)ないし(10)及び同目録3(1)ないし(10)記載の雑誌及びそれらの半製品並びにこれに関する印刷用紙型、亜鉛版、フィルム、版下などの印刷用の原版の廃棄を求めるとともに、(5)主位的に、上記各編集著作権の侵害に基づき、予備的に、被控訴人による被控訴人各情報誌の編集、発行は不法行為に当たると主張して、民法709条に基づき、損害賠償として、1380万円及びこれに対する附帯金員の支払を求めた。
 原判決は、上記(1)@は、個々の具体的な広告記事を素材としてとらえた場合には、編集著作物に該当するが、被控訴人各情報誌は、控訴人の編集著作権を侵害するものではなく、上記(1)@〜Cの編集体系自体、D及びEは、編集著作物ということはできず、また、被控訴人に不法行為に該当する行為も認められないとして、控訴人の請求をいずれも棄却した。
 控訴人は、当審において、原判決別紙情報誌目録1〜6記載の各情報誌の製作、印刷、製本、発売及び頒布の差止請求に係る訴えの取下げ並びに著作権侵害を主張する控訴人各情報誌の著作物及び被控訴人情報誌の著作物の一部変更を伴う請求の追加、交換的変更及び減縮をした上、被控訴人に対し、@控訴人通学アイコン一覧表の編集著作権に基づき、本判決別紙アイコン一覧表目録1記載のアイコン一覧表を掲載した情報誌の製作、印刷、製本、発売及び頒布の差止め(控訴の趣旨2)を、A控訴人情報誌首都圏版及び関西版平成14年6月号の通信アイコン一覧表(本判決別紙「原告通信アイコン一覧表」記載のもの、以下「控訴人通信アイコン一覧表」という。)の編集著作権に基づき、本判決別紙アイコン一覧表目録2記載のアイコン一覧表を掲載した情報誌の製作、印刷、製本、発売及び頒布の差止め(同3)を、B控訴人情報誌東海版同年4月号の分野別モノクロ情報ページ及びスーパーインデックスの編集著作権並びに上記控訴人通学アイコン一覧表及び控訴人通信アイコン一覧表の編集著作権に基づき、別紙雑誌目録1(1)ないし(24)、同目録2(1)ないし(19)及び同目録3(1)ないし(19)記載の雑誌及びそれらの半製品並びにこれに関する印刷用紙型、亜鉛板、フィルム、版下など印刷用の原版の廃棄(同4)を求めるとともに、C主位的に、上記各編集著作権の侵害に基づき、予備的に、被控訴人による被控訴人各情報誌の編集、発行は不法行為に当たると主張して、民法709条に基づき、損害賠償として、1380万円及びこれに対する附帯金員の支払(同5)を求めている。
1 前提となる事実
(1) 控訴人は、控訴人各情報誌のほか、「就職ジャーナル」、「B−ing(ビーイング)」、「とらばーゆ」、「ガテン」、「フロムエー」、「仕事の教室」、「住宅情報」、「住宅情報賃貸版」、「AB・ROAD(エイビーロード)」、「じゃらん」、「カーセンサー」、「ゼクシィ」等の情報誌の発行及びWebサイト「ISIZE(イサイズ)」(以下「控訴人サイト」という。)等のインターネットによる情報提供サービスを行っており、被控訴人は、被控訴人各情報誌等の図書、新聞、一般印刷物の印刷及び販売並びに広告宣伝業務等を行っている。
(2) 控訴人は、平成2年2月7日、趣味や仕事等の様々な分野にわたるスクール情報(スクールの名称、所在地等の情報をいい、以下「スクール情報」という。)及びその講座情報(スクールの講座内容、日時、費用等の情報をいい、以下「講座情報」といい、「スクール情報」と併せて「スクール・講座情報」という。)等を編集、収録した月刊誌として、控訴人情報誌を創刊し、平成5年3月2日に控訴人情報誌関西版を、平成7年3月2日に控訴人情報誌東海版を順次創刊し、現在、控訴人各情報誌のほか、控訴人情報誌北海道版及び控訴人情報誌九州版を、毎月発行している。
ア 控訴人各情報誌には、モノクロで印刷され、控訴人の広告主から出稿されたスクール・講座情報が掲載された広告記事が分類、配列されて掲載されている分野別モノクロ情報ページがある。分野別モノクロ情報ページに掲載される通学講座の広告記事は、@スクール名、A住所、B最寄駅、Cスクールの特徴を示すアイコン(「スクール別便利ポイント」)、D講座内容を表す分類指標(以下「カプセル」という。)、E講座の特徴を示すアイコン(開講時間、受講制度、レベル、講師に関する事項等、講座・コース独自の特長及びメリットに関する「特長アイコン」〔以下「特長アイコン」という。〕と、受講料の支払方法及び割引に関する特長及びメリットに関する「○得情報アイコン」〔以下「○得情報アイコン」という。〕がある。)、F資料請求番号、Gコース名、H講座開講日時・費用、I入学金・受講料の割引を示すマーク、Jコース内容、Kスクール情報、L地図、M交通案内及びフリースペースから構成され、各要素の配置場所は、定型的に決められている。
イ また、控訴人各情報誌の通信講座の広告記事は、@カプセル、A費用、B標準期間、C講座名、D資料請求番号、E講座のポイント、F講座の内容、G添削回数等、H特長アイコン・○得情報アイコンの表示(「ここに注目!」欄)、I教材紹介、Jスクール名、K写真、L受講のポイントや体験談の掲載欄、Mプロファイルカプセル等から構成され、各要素の配置場所は、定型的に決められている。
ウ さらに、控訴人各情報誌には、スーパーインデックス、通学アイコン一覧表及び通信アイコン一覧表が掲載されている。
(3) 被控訴人は、平成14年8月26日、スクール・講座情報等を掲載した月刊誌として、被控訴人情報誌東海版を創刊し、その後、平成15年1月25日に被控訴人情報誌首都圏版及び被控訴人情報誌関西版を創刊し、現在、被控訴人各情報誌を、毎月発行している。
ア 被控訴人各情報誌には、被控訴人の広告主から出稿されたスクール・講座情報が掲載された広告記事が分類、配列されて掲載されている部分(以下「カテゴリー別スクール情報ページ」という。)がある。カテゴリー別スクール情報ページに掲載される通学講座の広告記事は、@スクール名、A住所、B最寄駅、Cスクールの特徴を示すアイコン(「おすすめチェック」)、Dカプセル、E講座の特徴を示すアイコン(「講座選びのポイント」、「○得ポイント」)、F資料請求番号、Gコース名、H講座開講日時・費用、I入学金・受講料の割引を示すマーク、Jコース内容、Kスクール情報、L地図、M交通案内及びフリースペースからなる。
イ また、被控訴人各情報誌の通信講座の広告記事は、@カプセル、A費用、B標準期間、C講座名、D資料請求番号、E講座のポイント、F講座の内容、G添削回数等、H通信講座情報アイコン・通信講座情報とくとくアイコンの表示(「Check」)、I教材紹介、Jスクール名、K写真、L受講のポイントや体験談の掲載欄、Mプロファイルカプセル等からなる。
ウ さらに、被控訴人各情報誌には、カテゴリー別インデックス、「VeeSchool スクール情報の見方・読み方・使い方」の「Vee Schoolならスクールの各種サービスや講座特典の魅力が一目でわかる!」と題する一覧表(以下「被控訴人通学アイコン一覧表」という。)、「通信講座情報アイコン一覧」及び「通信講座情報トクトクアイコン一覧」(以下、併せて「被控訴人通信アイコン一覧表」という。)が掲載されいている。
2 控訴人の主張
2−1 訴えの変更に対する異議について
 控訴人は、当審において、著作権侵害を主張する控訴人各情報誌の著作物及び被控訴人情報誌の著作物の一部変更を伴う訴えの追加的、交換的変更をしたが、訴え変更に係る請求は、当初の請求と請求の基礎が同一であり、かつ、著しく訴訟手続を遅滞させるものではない。
2−2 著作権侵害及び不法行為の成否
(1) 各著作物の編集著作物該当性及び被控訴人による著作権侵害
(1-1) 分野別モノクロ情報ページ
ア 分野別モノクロ情報ページの編集著作物該当性
(ア) 控訴人各情報誌が掲載対象とするスクール・講座情報は、多種多様であるため、読者が興味を持つスクール・講座情報を容易に検索するには、平成2年の控訴人情報誌創刊前、一定の分類、配列方針を定める必要があったが、スクール・講座情報を掲載する雑誌ないしこれに類する媒体やその他参考とすべきものは、一切存在しなかった。そこで、控訴人は、スクール・講座情報の分類、配列方針を独自に定め、上記創刊当初から工夫を凝らした結果、控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12。なお、甲54は、その通学アイコン一覧表、甲66は、その分野別モノクロ情報ページ、甲68は、そのスーパーインデックスである。以下、書証番号は、甲12のみを付記する。)のスクール・講座情報の分類、配列方針は、概略次のようなものとなっている。
a 多数の講座内容を表す分類指標としてカプセルを設定(控訴人情報誌東海版平成14年4月号におけるカプセルの種類は866である。)する。カプセルは、@読者の視点から、詳細になりすぎず、かつ、概括的になりすぎないように細分化し、Aカプセルの表記は、社会的に浸透している言葉を選び、Bカプセルの文言は、商標権侵害とならないようにし、C読者保護の観点から不相当な表記でないかをチェックして、選定する。
b カプセルを一定の方針に従い、ツメ見出しごとに分類(控訴人各情報誌平成14年4月号におけるツメ見出しの種類は19である。)し、ツメ見出しの設定に当たっては、読者ニーズに配慮しつつ、収録される情報量に偏りが出ないよう、ツメをできるだけ細分化する。受注したスクール広告は、当該講座がカプセルのいずれに該当するかにつき判断し、当該カプセルが分類されるツメ見出しに合わせて配列し、分野別モノクロ情報ページに掲載する。
 上記a、bのように、控訴人各情報誌の分野別モノクロ情報ページにおいては、あらかじめスクール・講座情報を分類、配列する体系を設定し、スクール・講座情報をその体系に沿って、分野別モノクロ情報ページに分類、配列するといった一連の過程に、創作的行為が含まれている。このように設定されたツメ見出しとカプセルによる分類、配列体系は、控訴人情報誌東海版平成14年4月号に採用され、当該地域での広告主から受注したスクール・講座情報を、当該分類、配列体系に基づいて、各分野別モノクロ情報ページにおいて分類、配列している。
 したがって、控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページは、そのスクール・講座情報の分類、配列に創作性があり、素材をスクール・講座情報とする編集著作物として、著作権法上の保護を受けるものというべきであり、かつ、素材を分類、配列体系の項目である「学ぶ内容」とする編集著作物として、著作権法上の保護を受けるものというべきである。
(イ) 編集体系を構成する個々の分類項目は、著作権法12条1項の素材ということができる。著作権法は、著作権として複製権のみならず翻案権も認めており、具体的表現でない内面的な表現も保護範囲に含まれることを認めているから、その保護範囲は、外面的な表現のみに限定されるものではなく、内面的な領域まで及んでいる。この理は、編集著作物においても妥当し、編集著作物においても翻案権が認められている以上、編集著作物の表現も編集物の内面的な領域にまで及ぶこととなる。
 表現という基準は、規範的なものであり、編集著作物の編集体系であっても、それが内面的・抽象的であるというだけで直ちに表現ではないとして保護対象から除外することは許されない。著作権法は、「著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする」(同法1条)ところ、文化の世界は、特許法の規律する技術の世界とは異なり、多様性の世界であるから、著作権法は、特許法のようにその保護要件として新規性や進歩性を要求することなく、創作者各自が、自らの個性や独自性を発揮し、多様な表現を生み出すことを要請している。したがって、著作権の保護をどこまで認めるべきかは、著作権法の目的から、どのような創作活動にインセンティブを与えることが、結果として作品の豊富化、多様化を促進することになるかという観点から決せられるべきこととなり、このような観点からすると、著作権法における表現とは、創作者の個性、多様性が発揮される領域、すなわち、創作の幅のある領域ということができ、これを編集著作物に当てはめると、具体的・外形的に印刷されていない編集体系であっても、選択又は配列の幅のある領域に属するものであれば、内面的・抽象的な編集体系であっても、表現として保護される。そして、編集著作物における表現は、素材の選択又は配列によって構成されるから、編集著作物の表現(保護範囲)を形作る選択又は配列の対象となる素材も、編集著作物の外面的表現を構成する生の具体的な素材(本件でいうスクール・講座情報)に限られず、編集物の内面的な構成要素も、それが当該編集物の創作過程において編集者(著作者)の積極的な選択又は配列の対象となっている限り、素材としてとらえることができる。編集物の創作過程において、編集者が積極的に選択又は配列の対象とするのは、編集物の外面的表現を構成する生の素材に限られず、編集者が選択又は配列を行う際にどのような要素に着目するかは、編集物によって大きく異なっている。情報誌の編集物においては、素材の持つ巧拙や表現の独創性よりも、むしろ、各記事が取り扱う出来事やテーマの話題性・テーマ性に着目して、素材の選択又は配列が行われ、このような場合における素材は、出来事やテーマという、より抽象的なレベルでとらえることができ、ある編集著作物を構成する素材を、どのレベルまで抽象化してとらえることができるかは、編集者が、実際に何に着目して編集活動を行ったかという観点から決せられなければならない。殊に、その素材の表現自体が代替的である事実的編集物の編集著作物及びその著作権の範囲をとらえるに当たっては、生の事実にとどまらず、より抽象化したレベルでとらえることが可能であるから、情報誌のような編集著作物において、編集体系を表現としてとらえれば、その編集体系を構成する抽象的な分類項目のような要素は、それ自体が素材として位置付けられる。
 控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)の分野別モノクロ情報ページ(106頁〜234頁)においては、大分類としてのツメ見出しの設定、小分類としてのカプセルの設定、及び大分類・小分類を関連付けるという手法により、その体系を構築しており、スーパーインデックス(78頁〜85頁)においても、同様の体系を構築しているが、このような大分類、小分類及びその関連付けにより構築される編集体系は、その選択配列の幅が非常に広く、他方、受注する広告のスクール・講座情報の配列は、受注した以上、原則として掲載しなければならないので、選択の幅はなく、あらかじめ詳細に設定された編集体系に従って、自動的、機械的に配列されるので、配列に幅があるとはいい難い。したがって、事実的編集物である控訴人各情報誌において、選択、配列に幅のある部分は、編集体系であり、それが表現としてとらえられ、その編集体系を構成する分類項目が、素材となるというべきである。
イ 被控訴人による著作権侵害
(ア) 事実的編集物である控訴人各情報誌において、選択、配列に幅のある編集体系を表現としてとらえ、その編集体系を構成する分類項目を素材としてとらえた場合、控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)の分野別モノクロ情報ページ(106頁〜234頁)において、ツメ見出しとカプセルによる分類配列体系が表現であり、これを構成する学ぶ内容(カプセルあるいは小分類とイコールとなるものである。)が素材となるものである。そして、素材を、抽象的に学ぶ内容としてとらえれば、別のスクールの講座や同一スクールの別講座であっても、学ぶ内容が同じであれば、同一の素材として認識されるから、控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページにおける編集著作物の著作権が侵害されているか否かは、同一スクールの同一講座で比較するのではなく、同じ学ぶ内容が、同じカプセル(小分類)、ツメ見出し(大分類)に分類、配列されているかを判断すれば足り、スクール・講座情報の具体的な表現や詳細な内容はもとより、当該講座が開講されているスクールや具体的な講座名が一致している必要はなく、また、控訴人情報誌と被控訴人情報誌の各号の対応関係も必要ないというべきである。
(イ) 控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)の分野別モノクロ情報ページ(106頁〜234頁)と被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号(甲1〜3)のカテゴリー別スクール情報ページ(甲1の173頁〜267頁、甲2の133頁〜224頁、甲3の125頁〜199頁)について、分野別モノクロ情報ページにおいて分類、配列されているスクール・講座情報の種類、すなわち、カプセル名に標記されている学ぶ内容の種類とカテゴリー別スクール情報ページに掲載されている学ぶ内容であるスクール・講座情報を比較すると、その多くが一致し、かつ、その分類、配列も一致するのであって、被控訴人各情報誌のカテゴリー別スクール情報ページの当該一致部分において、控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページの編集著作物の創作性は、十分表現され、その創作的な表現が再製されている。上記各被控訴人情報誌のカテゴリー別スクール情報ページにおいては、控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページに掲載されていない学ぶ内容及びそれに対応する小分類(カプセル)があるが、当該不一致部分に被控訴人の創作性はない。
 したがって、被控訴人が、カテゴリー別スクール情報ページを掲載した被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号を編集、発行した行為は、控訴人の編集著作物の複製権を侵害する。
(ウ) 仮に、上記各被控訴人情報誌のカテゴリー別スクール情報ページ部分において、スクール・講座情報の分類、配列に被控訴人の創作性があるとしても、上記一致部分において控訴人の編集著作物の表現上の本質的特徴を感得することができるから、被控訴人が、カテゴリー別スクール情報ページを掲載した被控訴人各情報誌を編集、発行する行為は、控訴人の翻案権を侵害しているというべきである。
(エ) また、控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)の分野別モノクロ情報ページ(106頁〜234頁)における素材が、特定のスクール講座の広告記事であるとしても、そこに掲載される広告の広告主と、被控訴人情報誌東海版各号のカテゴリー別スクール情報ページに掲載される広告の広告主は、多くが一致し、当該広告に係る分類も一致するから、重複する範囲で控訴人の編集著作物を再製しているということができる。被控訴人が、被控訴人情報誌東海版の対象とする地域を、控訴人情報誌東海版と同一の東海地方に設定していること、控訴人情報誌東海版と被控訴人情報誌東海版に共通する広告主が非常に多く、当該地方におけるスクールの存在を調査する資料が控訴人情報誌東海版以外にはほとんど存在しないことに照らせば、被控訴人は、控訴人情報誌東海版に掲載されている広告主を見て、その広告主を対象に営業を行っていることは明らかであるから、素材であるスクール・講座情報に関する依拠性も明らかである。
 したがって、素材を上記のように具体的にとらえたとしても、被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号(甲1〜3)のカテゴリー別スクール情報ページ(甲1の173頁〜267頁、甲2の133頁〜224頁、甲3の125頁〜199頁)は、控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページの著作権を侵害しているというべきである。
(1-2) 分野別モノクロ情報ページ中のツメ見出し・カプセル
ア ツメ見出し・カプセルの編集著作物該当性
 控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)においては、毎号その講座情報が入れ替わるにもかかわらず、同一の利便性を維持する必要性から、あらかじめ当該情報の分類、配列体系を詳細かつ具体的に設定し、この分類、配列体系は、控訴人各情報誌の分野別モノクロ情報ページ中のツメ見出し、カプセルとしてそれぞれ表現され、それ自体、独立の編集著作物として保護される得る性質を備えており、上記(1-1)アの見解に立てば、素材であるカプセルを分類、配列するツメ見出しを設定する一連の行為に創作性を認めることができるから、上記ツメ見出し・カプセルの分類、配列体系は、全体として編集著作物に該当するというべきであり、控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページ中のツメ見出し・カプセルは、編集著作物として著作権法上の保護を受けるものというべきである。
イ 被控訴人による著作権侵害
(ア) ツメ見出し・カプセルの分類、配列体系を編集著作物としてとらえれば、著作権侵害の判断においては、控訴人情報誌と被控訴人情報誌の各号の対応関係は必要ないというべきである。
 控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)の分野別モノクロ情報ページ(106頁〜234頁)の小分類であるカプセルと被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号(甲1〜3)のカテゴリー別スクール情報ページ(甲1の173頁〜267頁、甲2の133頁〜224頁、甲3の125頁〜199頁)の学ぶ内容を示す分類について比較すると、その多くが、大分類(ツメ見出し)による分類に至るまで一致するのであって、上記各被控訴人情報誌のカテゴリー別スクール情報ページに掲載される小分類と大分類(ツメ見出し)の当該一致部分において、控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページにおけるツメ見出し・カプセルの編集著作物の創作性は、十分表現され、その創作的な表現が再製されている。上記各被控訴人情報誌のカテゴリー別スクール情報ページの小分類には、控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページにない小分類(カプセル)があるが、当該不一致部分に被控訴人の創作性はない。
 したがって、被控訴人が、被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号(甲1〜3)のカテゴリー別スクール情報ページ(甲1の173頁〜267頁、甲2の133頁〜224頁、甲3の125頁〜199頁)において、小分類・大分類を表示した被控訴人各情報誌各号を編集、発行した行為は、控訴人各情報誌のツメ見出し・カプセルの編集著作物についての控訴人の複製権を侵害する。
(イ) 仮に、被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号(甲1〜3)のカテゴリー別スクール情報ページ(甲1の173頁〜267頁、甲2の133頁〜224頁、甲3の125頁〜199頁)に掲載されている小分類において、講座情報の分類・配列に被控訴人の創作性があるとしても、上記一致部分において控訴人の編集著作物の表現上の本質的特徴を感得することができるから、被控訴人が、上記各被控訴人情報誌のカテゴリー別スクール情報ページにおいて、小分類・大分類を表示した被控訴人各情報誌各号を編集、発行した行為は、控訴人の翻案権を侵害しているというべきである。
(1-3) スーパーインデックス
ア スーパーインデックスの編集著作物該当性
 控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)には、スーパーインデックス(78頁〜85頁)が掲載され、スーパーインデックスにおいては、読者が常設ツメ及び特集ツメに収録されている講座情報を比較検討し、かつ、容易にその掲載ページを検索できるようにするため、スクール・講座情報を、次のような工夫により、分類、配列して、掲載している。
(ア) 平成2年以来、控訴人各情報誌に掲載されたスクール・講座の広告記事及びそれらを分類する指標である小分類(カプセル)にどのような種類があるのかを、広く調査する。
(イ) 収集した広告記事に対応する講座内容を示す指標である小分類は、小分類を読者の視点から、詳細になりすぎず、かつ概括的になりすぎないよう細分化し、小分類の表記は、社会的に浸透している言葉を選び、小分類の文言が商標権侵害とならない言葉で表現し、読者保護の観点から不相当な表記でないかをチェックする等の観点から、種類を限定する。
(ウ) 上記(イ)で取捨選択した小分類を基に、それらをまとめる大分類(絶対分野)を設定する。大分類の設定に当たっては、読者のニーズに配慮しつつ、ツメ見出しよりも細分化し、検索の利便性を追求する。
(エ) 上記(ウ)で設定した分類の体系を基に、控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)以降に掲載される各スクールの有する講座の内容に応じて小分類を割り当てるとともに、当該小分類を割り当てた講座を有するスクール名を小分類名下に記載する。さらに、大分類名下に、当該小分類名を記載してインデックスを作成する。
 上記(1-1)アの見解に立てば、素材である分類項目を分類、配列する一連の行為に創作性を認めることができるから、大分類・小分類による分類、配列体系は、全体として編集著作物に該当するというべきであり、控訴人情報誌東海版平成14年4月号のスーパーインデックスは、編集著作物として著作権法上の保護を受けるものというべきである。
イ 被控訴人による著作権侵害
 控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)のスーパーインデックス(78頁〜85頁)の編集著作権が侵害されているかどうかは、編集著作物の性質から、同一スクール名が同じ小分類と大分類に分類、配列されているかどうかを判断すれば足りるというべきである。
 そこで、控訴人情報誌東海版平成14年4月号のスーパーインデックスと被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号(甲1〜3)のカテゴリー別インデックス(甲1の100頁〜107頁、甲2の84頁〜89頁、甲69の3の82頁〜86頁〔同頁は甲3には欠落〕)を比較すると、表示されているスクール名はその多くが一致しており、その大分類・小分類の一致率も高く、上記各被控訴人情報誌のカテゴリー別インデックスの当該一致部分において、控訴人情報誌東海版平成14年4月号のスーパーインデックスの編集著作物を再製していると評価できる。また、被控訴人は、控訴人情報誌東海版に掲載されている広告主を見て、その広告主を対象に営業を行っていることは明らかであるから、素材であるスクール・講座情報に関する依拠性も明らかである。
 したがって、被控訴人が、カテゴリー別インデックスを表示した被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号を編集、発行した行為は、控訴人情報誌東海版平成14年4月号のスーパーインデックスの編集著作物についての控訴人の複製権又は翻案権を侵害する。
(1-4) スーパーインデックスの大分類・小分類表示
ア スーパーインデックスの大分類・小分類表示の編集著作物該当性
 控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)のスーパーインデックス(78頁〜85頁)においては、広告主からの受注を行う前に、あらかじめ詳細かつ具体的に大分類・小分類による分類、配列体系を構築し、毎号、その情報が入れ替わるにもかかわらず、講座情報の掲載がある限り、その同一性を維持しており、当該分類、配列体系を構築する行為に創作性を認めることができるから、スーパーインデックスの大分類・小分類表示は、全体として編集著作物に該当するというべきであり、控訴人情報誌東海版平成14年4月号のスーパーインデックスの大分類・小分類表示は、編集著作物として著作権法上の保護を受けるものというべきである。
イ 被控訴人による著作権侵害
 控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)のスーパーインデックス(78頁〜85頁)の大分類・小分類表示を編集著作物としてとらえれば、著作権侵害の判断においては、被控訴人各情報誌のカテゴリー別インデックスにおいて、同じ大分類・小分類が再製されていれば、上記著作物の著作権侵害であると判断でき、控訴人情報誌と被控訴人情報誌の各号の対応関係は必要ないというべきである。
 控訴人情報誌東海版平成14年4月号のスーパーインデックスに表現されている小分類と被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号(甲1〜3)のカテゴリー別インデックス(甲1の100頁〜107頁、甲2の84頁〜89頁、甲69の3の82頁〜86頁)に表現されている学ぶ内容を示す分類を比較すると、その多くが大分類による分類に至るまで一致する。上記各被控訴人情報誌のカテゴリー別インデックスの当該一致部分において、控訴人情報誌東海版平成14年4月号のスーパーインデックスの大分類・小分類表示の編集著作物を再製していると評価できる。上記各被控訴人情報誌のカテゴリー別インデックスにおいては、控訴人情報誌東海版平成14年4月号のスーパーインデックスに掲載されていない小分類があるが、当該不一致部分に被控訴人の創作性はない。また、上記の類似性及び控訴人各情報誌の創刊以前にこれと同一の又はこれに類する情報媒体は存在しなかったことからすれば、依拠性も明らかである。
 したがって、被控訴人が、カテゴリー別インデックスを表示した被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号を編集、発行した行為は、控訴人情報誌東海版平成14年4月号のスーパーインデックスの大分類・小分類表示の編集著作物についての控訴人の複製権又は翻案権を侵害する。
(1-5) 控訴人通学アイコン一覧表
ア 控訴人通学アイコン一覧表の編集著作物該当性
 控訴人は、平成14年4月号からの控訴人各情報誌の誌面構成の刷新に際し、控訴人各情報誌の読者が一目りょう然に各スクール・講座の特徴を把握し、容易にスクール・講座情報を比較できるようにすることを目的として、スクール・講座情報にスクールの特色や講座の特色を付記することとし、そのために、あらかじめ読者に関心の高い情報の類型をアイコンとして選択し分類した控訴人通学アイコン一覧表及び控訴人通信アイコン一覧表を作成することとした。
 平成13年1月ころ、控訴人各情報誌の編集担当者は、@過去3年分の控訴人情報誌首都圏版の広告記事のすべて、A創刊以来控訴人各情報誌に添付されていた読者アンケートはがきのフリーコメント欄に記載された読者の回答、B控訴人において年2回行った読者調査の結果報告書を基に、各スクールのセールスポイントや特徴と考えられる情報を抽出してまとめたところ、全部で831種類に上った。控訴人各情報誌の編集担当者は、約2か月間にわたり検討を重ね、@スクール・講座に関する控訴人各情報誌の読者の関心事を明示している事項といえるか、A控訴人各情報誌の読者にとって適切にスクール・講座情報を比較検討することができるかという視点に立って、上記831種類から161種類を選択し、暫定案を作成し、さらに、約3か月間にわたり、暫定案の改良作業を行い、71種類のアイコンとし、控訴人通学アイコン一覧表を完成させた。
 上記のように、控訴人各情報誌の編集担当者を中心とした控訴人従業員の創意と工夫により、当初831種類あった項目から、71種類のアイコンを選択するに至ったものであり、その選択の創作性が非常に高いことは明らかである。
 また、控訴人通学アイコン一覧表においては、@「スクール便利ポイント」、A「特長アイコン」、B「○得情報アイコン」という3分類を用いて、各アイコンを分類、配列しているが、この分類、配列は、控訴人各情報誌の読者に、スクール・講座の比較検討ポイントを、的確に伝え、理解させる等の視点から設定された。その分類方法には、広い選択の幅があり、かつ、控訴人各情報誌の編集担当者は、各分類項目にどのアイコンを分類するかについても試行錯誤を重ねたものであり、だれが行っても同様になるというものではなく、控訴人通学アイコン一覧表における分類、配列にも、高い創作性がある。
 したがって、控訴人通学アイコン一覧表は、編集著作物として著作権法上の保護を受けるものというべきである。
イ 被控訴人による著作権侵害
 被控訴人各情報誌のいずれにおいても、「ヴィー・スクール スクール情報の見方・読み方・使い方」に被控訴人通学アイコン一覧表が掲載されている。
 控訴人通学アイコン一覧表と被控訴人通学アイコン一覧表を比較すると、被控訴人通学アイコン一覧表では、控訴人通学アイコン一覧表のアイコン71種類中、69種類のアイコンが用いられている上、控訴人通学アイコン一覧表の「スクール便利ポイント」、「特長アイコン」、「○得情報アイコン」に対応する、「おすすめチェック」、「特長アイコン」(「講座選びのポイント」)、「得トクアイコン」(「○得ポイント」)の3分類によって各アイコンを分類している。被控訴人通学アイコン一覧表で付加されたアイコンは、例えば、本来は講座の特徴を示す表示であるにもかかわらず、スクールの特徴を示す「おすすめチェック」に分類されたり、あるいは、講座情報に実際に付されることがほとんどないものなど、付加したことに何らの創作性も認められない。
 したがって、被控訴人が、被控訴人通学アイコン一覧表を表示した被控訴人各情報誌各号を編集、発行する行為は、控訴人各情報誌の控訴人通学アイコン一覧表の編集著作物についての控訴人の複製権又は翻案権を侵害する。
(1-6) 控訴人通信アイコン一覧表
ア 控訴人通信アイコン一覧表の編集著作物該当性
 控訴人は、上記(1-5)アの経緯で、控訴人通学アイコン一覧表及び控訴人通信アイコン一覧表を作成したものであるところ、これらをわずか2か月の期間で作成する必要があったため、平成13年8月25日控訴人発行「家で楽しく学ぶ本」(甲31、以下「甲31ムック」という。)の「スーパーINDEX」で使用されていた21種類の通信講座の特徴、サービスを表すマーク表示(以下「マーク表示」という。)を基に、控訴人各情報誌の通信講座におけるセールスポイント、特徴をアイコン化した。マーク表示の選択に当たっては、控訴人が行った通信教育のマーケット調査、甲31ムックの読者アンケート及び控訴人各情報誌の読者アンケートの各結果から、読者の関心事を広く拾い上げる作業を行い、さらに、容易に検索可能にし、読者に誤解、誤認を生じさせない特徴を選択し、通信講座を開講するスクールに対する新講座開講の提案を行うという観点から、取捨選択を行い、控訴人各情報誌平成14年4月号(甲12〜14)の通信アイコン一覧表を作成した。しかし、これら控訴人各情報誌の原稿入稿時である同年2月ころ、営業担当者からアイコンの追加の要望があり、更に検討した結果、控訴人通信アイコン一覧表を完成させ、控訴人各情報誌同年6月号(甲60)より掲載したものである。
 上記のように、甲31ムックの編集担当者及び控訴人各情報誌の編集担当者を中心とした控訴人従業員の創意と工夫により、36種類のアイコンを選択するに至ったものであり、その選択の創作性が非常に高いことは明らかである。
 また、控訴人通信アイコン一覧表においては、@「特長アイコン」、A「○得情報アイコン」という2分類を用いて各アイコンを分類、配列しているが、この分類、配列は、控訴人各情報誌の読者に、スクール・講座の比較検討ポイントを、的確に伝え、理解させる等の視点から設定された。その分類方法には、広い選択の幅があり、だれが行っても同様になるというものではなく、控訴人通信アイコン一覧表における分類、配列にも、高い創作性がある。
 したがって、控訴人通信アイコン一覧表は、編集著作物として著作権法上の保護を受けるものというべきである。
イ 被控訴人による著作権侵害
 被控訴人各情報誌のいずれにおいても、被控訴人通信アイコン一覧表が掲載されている。
 被控訴人通信アイコン一覧表と控訴人通信アイコン一覧表を比較すると、被控訴人通信アイコン一覧表では、控訴人各情報誌平成14年4月号(甲12〜14)の控訴人通信アイコン一覧表(東海、首都圏及び関西版とも共通である。)のアイコン32種類すべてが用いられている上、被控訴人は、これらのアイコンに若干のアイコンを付加した上で、控訴人通信アイコン一覧表の「特長アイコン」及び「○得情報アイコン」に対応する「通信講座情報アイコン一覧」及び「通信講座情報トクトクアイコン一覧」の2分類によって各アイコンを分類している。また、被控訴人通信アイコン一覧表にある「実習有り」、「卒業時資格取得」及び「編入制度有」のアイコンは、控訴人各情報誌平成14年4月号の控訴人通信アイコン一覧表には設定されていなかったが、控訴人が、控訴人各情報誌同年6月号から独自に控訴人通信アイコン一覧表へ付加したものであり、被控訴人が控訴人各情報誌同年6月号の控訴人通信アイコン一覧表に依拠したことは明らかである。
 したがって、被控訴人が、被控訴人通信アイコン一覧表を表示した被控訴人各情報誌各号を編集、発行する行為は、控訴人各情報誌の控訴人通信アイコン一覧表の編集著作物についての控訴人の複製権又は翻案権を侵害する。
(1-7) 製作、印刷、製本、発売及び頒布の差止め請求並びに雑誌、半製品、印刷用紙型、亜鉛板、フィルム、版下など印刷用の原版の廃棄請求
 被控訴人は、今後も、控訴人の上記編集著作権を侵害する被控訴人各情報誌を編集、発行する蓋然性が高く、控訴人は、被控訴人に対し、@本判決別紙アイコン一覧表目録1記載のアイコン一覧表を掲載した情報誌の製作、印刷、製本、発売及び頒布の差止め(控訴の趣旨2)、A本判決別紙アイコン一覧表目録2記載のアイコン一覧表を掲載した情報誌の製作、印刷、製本、発売及び頒布の差止め(同3)、B本判決別紙雑誌目録1(1)ないし(24)、同目録2(1)ないし(19)及び同目録3(1)ないし(19)記載の雑誌及びそれらの半製品並びにこれに関する印刷用紙型、亜鉛板、フィルム、版下など印刷用の原版の廃棄(同4)を求めることができる。
(2) 被控訴人の不法行為
ア 情報誌は、多数の広告主から出稿された大量の広告記事を整理して掲載しただけでは足りず、広告記事の検索性及び比較検討の容易性が重要であり、このことが特色を生かし独自性を得るポイントとなる。控訴人各情報誌は、検索性及び比較検討の容易性を高めるため、分野別モノクロ情報ページにおいてツメ見出しとカプセルによる分類、スーパーインデックスにおいて2段階の分類をし、各広告記事のレイアウト等について、長時間かつ多大な労力を掛け、控訴人に蓄積されたノウハウ及び創意と工夫により作成されたものである。
 これに対し、被控訴人は、被控訴人各情報誌において、何の労力を掛けることなく、何らの工夫もないまま、以下のとおり、控訴人各情報誌の分類体系やレイアウト等をそのまま利用し、販売地域が競合する地域において、広告料及び販売価格を低く設定することにより、控訴人の営業活動を妨害している。
(ア) 被控訴人の編集、発行する被控訴人各情報誌においては、控訴人各情報誌の広告記事・インデックスの配列方法、アイコン一覧表、レイアウト及びFAXシートを模倣している。
(イ) 控訴人各情報誌は、控訴人の運営する控訴人サイトと連動し、ケイコとマナブに掲載されている広告記事よりもより詳細な情報を提供している。控訴人サイトは、多数存在する講座を、資格・スキル系と趣味系に分類し、さらには、分野、地域別、目的、沿線・最寄駅、スクール名、スクールの特長、受講料等、及びその組み合わせにより検索が可能となるよう構成されている。
 一方、被控訴人も、控訴人の上記手法を模倣し、Webサイト「VeeSchool.com」(以下「被控訴人サイト」という。)を運営し、被控訴人サイトは、控訴人サイトと同様、資格・スキル系と趣味系に分類するとともに、分野、地域別、沿線・最寄駅、スクール名、スクールの特長、受講料等、及びその組合せにより検索が可能となるよう構成されている。
 以上のとおり、被控訴人は、被控訴人各情報誌において、市場性の高い先行商品である控訴人各情報誌の価値を有する部分をすべて模倣している。
イ 上記の被控訴人の行為に照らせば、被控訴人が控訴人の顧客である広告主及び読者を奪取するという不正競争的意図を有することは明らかである。広告主は、スクール・講座の広告記事を被控訴人情報誌に掲載するに際して、その広告レイアウト・掲載情報の項目が控訴人情報誌と全く同一であるため、控訴人情報誌への掲載をやめ、被控訴人情報誌への掲載に切り替えるに際して何らの労力もなく、容易に控訴人の顧客である広告主を奪うことできる。また、控訴人情報誌の読者も、その分類、配列体系、レイアウト、FAX及びインターネットを用いた資料請求の具体的方法が同一であるため、容易に被控訴人情報誌に乗り換えることができる。しかも、被控訴人は、被控訴人情報誌制作に費用を費やすことがないため、被控訴人情報誌の価格を控訴人情報誌よりも安価に設定し、かつ、その発売日を控訴人情報誌の発行日の前日に設定している。
ウ 被控訴人の上記行為は、控訴人の時間と労力を費やしたことにより作成された控訴人情報誌の価値を低下させるとともに、被控訴人は何らの労力をかけず控訴人の獲得してきた媒体としての信用にただ乗りし、控訴人の顧客を奪うものであって、著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護に値する営業活動上の利益を違法に侵害するものとして、不法行為を構成するというべきである。
(3) 損害
ア 上記(1)による損害
 控訴人は、被控訴人による被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号(甲1〜3)の編集、発行による著作権侵害のため、著作権行使につき受けるべき使用料に相当する額の損害を被ったものであり、その額は、上記被控訴人情報誌東海版の売上額の10パーセントが相当である。
 被控訴人情報誌東海版の売上額は、平成14年10月号は4200万円を、同年11月号は3900万円を、同年12月号は3100万円を下らないから、控訴人は、その合計額1億1200万円に上記使用料率10パーセントを乗じて得られる1120万円を下らない損害を被った。
イ 上記(2)による損害
 控訴人は、被控訴人の上記(2)の不法行為により、1380万円を下らない損害を被った。
ウ 弁護士費用
 被控訴人の上記(1)の著作権侵害及び(2)の不法行為と相当因果関係を有する弁護士費用は500万円を下らない。
2−3 控訴人の請求
 よって、控訴人は、被控訴人に対し、@控訴人各情報誌平成14年4月号の控訴人通学アイコン一覧表の編集著作権に基づき、本判決別紙アイコン一覧表目録1記載のアイコン一覧表を掲載した情報誌の製作、印刷、製本、発売及び頒布の差止め(控訴の趣旨2)を、A控訴人各情報誌同年6月号の控訴人通信アイコン一覧表の編集著作権に基づき、本判決別紙アイコン一覧表目録2記載のアイコン一覧表を掲載した情報誌の製作、印刷、製本、発売及び頒布の差止め(同3)を、B控訴人情報誌東海版同年4月号の分野別モノクロ情報ページ(106頁〜234頁)及びスーパーインデックス(78頁〜85頁)の編集著作権並びに上記控訴人通学アイコン一覧表及び控訴人通信アイコン一覧表の編集著作権に基づき、本判決別紙雑誌目録1(1)ないし(24)、同目録2(1)ないし(19)及び同目録3(1)ないし(19)記載の雑誌及びそれらの半製品並びにこれに関する印刷用紙型、亜鉛板、フィルム、版下など印刷用の原版の廃棄(同4)を求めるとともに、C主位的に上記各編集著作権の侵害に基づき、予備的に民法709条に基づき、損害賠償として、上記(3)の損害のうち1380万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成15年1月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(同5)を求める。
3 被控訴人の主張
3−1 訴えの変更に対する異議
 控訴人は、当審において、著作権侵害を主張する控訴人各情報誌の著作物及び被控訴人情報誌の著作物の一部変更を伴う訴えの追加的、交換的変更をしたが、訴え変更に係る請求は、当初の請求と請求の基礎が同一ではなく、また、著しく訴訟手続を遅滞させることとなるから、同訴えの変更に異議がある。
3−2 著作権侵害及び不法行為の成否について
(1) 各著作物の編集著作物該当性及び被控訴人による著作権侵害の成否について
(1-1) 分野別モノクロ情報ページについて
ア 分野別モノクロ情報ページの編集著作物該当性
(ア) スクール・講座情報の分類、配列方法といった編集レイアウトは、単なるフォーマットのアイデアであって、このようなアイデアについては、意匠権等の工業所有権により保護される余地があり得るとしても、著作権の保護の対象ではない。また、このような編集レイアウトのアイデアは、素材であるスクール情報から切り離された場合に、それ自体独立の編集著作物となり得るものでもない。裁判例においても、広告や記事などの素材から離れたレイアウト自体が著作権によって保護されることはないとされている。したがって、控訴人が編集著作物に該当すると主張するスクール・講座情報の分類、配列方法は、素材であるスクール情報を離れて編集著作物性を有するものではない。
(イ) 控訴人は、事実的編集物である控訴人各情報誌においては、抽象的な編集体系そのものが表現であり、それを構成する分類項目が素材となると主張するが、失当である。著作権法による保護の対象となる著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法2条1項1号)と定義され、編集物に具体的に記載、表現されていない抽象的な学ぶ内容あるいは編集体系は、素材とはなり得ない。また、控訴人は、事実的編集物においては、編集体系に創作性があると主張しながら、それを構成する分類項目が素材になると主張するが、編集体系が創作性を有する「素材の選択又は配列」(同法12条)であると同時に創作性の有無を問わない素材にもなるという事態は、同条の想定していないところといわざるを得ない。そもそも、同条は、素材について創作性を要求していないのであり、創作性のある部分が素材であるという主張は、同条の規定に適合しない。
 スクール・講座情報を整理、編集して掲載した控訴人各情報誌は、それ自体が編集著作物になり得るとしても、選択又は配列の対象となる素材となり得るのは、紙面上に具体的に記載、表現されている具体的なスクール・講座情報である。そもそも、読者の主たる関心事は、事実情報であるスクール・講座情報であり、編集体系は、これを検索しやすくするための配列の工夫にほかならないから、スクール情報・講座情報こそが編集著作物である控訴人各情報誌及び被控訴人各情報誌の素材に該当する。具体的に誌面に印刷されたスクール・講座情報とは全く別に、編集体系そのものの保護を要求することは、具体的な表現を離れたアイデアの保護を要求するものであり、アイデアと表現を区別して後者のみを保護するという著作権法の原則に反するものである。また、事実的編集物において重視され、経済的に価値を持つのは、掲載された事実の数と正確性であり、編集体系やフォーマットの価値は、これと比べてはるかに低い。事実的編集物については、事実の収集活動に最もコストがかかり、利用者の関心も、収集された事実の多さや正確性に集中するため、経済的な価値は素材である事実に集中している。被控訴人は、控訴人と同じように、自らのコストで広告主に対する営業と取材を行い、編集、出版という活動を行った上で、被控訴人各情報誌を発行しているのであり、知的財産権制度の枠組みを超えてまで、控訴人の独占を確保しなければならない必要性は存在しない。むしろ、ヒット商品については、競合商品が発売されるのが自由主義経済の原則であり、このことは社会的にも是認されてきたところである。
イ 被控訴人による著作権侵害の成否について
 控訴人が主張するスクール・講座情報の分類、配列方法のうち、ツメ見出しについては、スクール・講座情報を分類、配列するという目的が共通することから、必然的にある程度の類似が生じているものの、被控訴人各情報誌は22分類、控訴人各情報誌は19分類であり分類数が異なること、分類名の大部分が異なること、配列方法が異なることなどが示すように、被控訴人各情報誌のスクール・講座情報の分類、配列方法は、控訴人各情報誌を模倣したものではない。また、被控訴人各情報誌においては、ツメ見出しのみによる1段階の分類で広告を配列し、カテゴリー別スクール情報ページの欄においては、大分類(ツメ見出し)と小分類(カプセル)の2段階の分類は採用していない。
 また、編集著作物は、素材が共通でなければ著作権侵害とはならないところ、控訴人各情報誌と被控訴人各情報誌では、素材である具体的なスクール・講座情報が共通ではないので、著作権の侵害とはなり得ない。被控訴人各情報誌に掲載された具体的なスクール・講座情報は、被控訴人が広告主からの情報に基づき被控訴人が作成したものであって、控訴人各情報誌に依拠したものではない。同一の広告主が控訴人各情報誌と被控訴人各情報誌の両者に同一内容の広告掲載を依頼した場合に、結果として内容が共通となることはあるが、そうであるからといって著作権侵害に該当するということはできない。
(1-2) 分野別モノクロ情報ページ中のツメ見出し・カプセルについて
ア 分野別モノクロ情報ページ中のツメ見出し・カプセルの編集著作物該当性について
 控訴人各情報誌の分野別モノクロ情報ページ中のツメ見出し・カプセルは、編集著作物として著作権法上の保護を受けることはできない。
イ 被控訴人による著作権侵害の成否について
 被控訴人各情報誌と控訴人各情報誌のツメ見出しについては、スクール・講座情報を分類、配列するという目的が共通することから、必然的にある程度の類似が生じているものの、被控訴人各情報誌におけるスクール・講座情報の分類、配列方法は、控訴人各情報誌を模倣したものではなく、また、被控訴人各情報誌においては、ツメ見出しのみによる1段階の分類で広告を配列し、カテゴリー別スクール情報ページの欄においては、大分類(ツメ見出し)と小分類(カプセル)の2段階の分類を採用していないことは、上記(1-1)イのとおりである。
(1-3) スーパーインデックスについて
ア スーパーインデックスの編集著作物該当性について
 控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)のスーパーインデックス(78頁〜85頁)は、編集著作物として著作権法上の保護を受けることはできない。
イ 被控訴人による著作権侵害の成否について
 被控訴人各情報誌のカテゴリー別インデックスは、ツメ見出しに対応する22の大分類(ただし、タイトルは異なる。)と、小見出しに対応する小分類の2段階の分類であるのに対して、控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)のスーパーインデックス(78頁〜85頁)は、19のツメ見出しと対応しない32項目の大分類とカプセルに対応する小分類の2段階の分類である。このように、控訴人各情報誌と被控訴人各情報誌では分類項目数が異なる上、講座の分野別のインデックスの大分類をツメ見出しに一致させる被控訴人各情報誌と、ツメ見出しと異なったより細かい分類を大分類として用いる控訴人各情報誌とでは、その編集方針においても差異がある。また、控訴人各情報誌と被控訴人各情報誌では、大分類の名称がいずれも異なり、さらに、小分類の分類名には、例えば、外国語名、資格名、楽器名及び技名のように、具体的な講座内容を表す名詞を名称とし、その選択には創作性がなく、必然的に共通とならざるを得ない分類名が多数含まれているが、選択の幅のある分類名については、大きく異なっている。
 また、編集著作物は、素材が共通でなければ著作権侵害とはならないところ、控訴人各情報誌と被控訴人各情報誌では、素材である具体的なスクール・講座情報が共通ではなく、被控訴人各情報誌に掲載された具体的なスクール・講座情報は、控訴人各情報誌に依拠したものではないから、著作権侵害には該当しないことは、上記(1-1)イのとおりである。
(1-4) スーパーインデックスの大分類・小分類表示について
ア スーパーインデックスの大分類・小分類表示の編集著作物該当性について
 控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)のスーパーインデックス(78頁〜85頁)の大分類・小分類表示は、単なるアイデアであって、編集著作物として著作権法上の保護を受けることはできない。
イ 被控訴人による著作権侵害の成否について
 被控訴人各情報誌のカテゴリー別インデックスにおいては、分類項目数、編集方針及び分類の名称が、控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)のスーパーインデックス(78頁〜85頁)とは異なっている。被控訴人各情報誌は、独自の分類、配列方法に基づき、スクール・講座情報を分類、配列している。
(1-5) 控訴人通学アイコン一覧表について
ア 控訴人通学アイコン一覧表の編集著作物該当性について
 各種情報誌において、アイコンは、広告に共通して記載されるべき情報を、キーワードやロゴなどを用いて簡潔に表示したものであり、少ないスペースで多くの情報を掲載できるようになるとともに、利用者による広告相互間の比較が容易になるため、広く用いられている。また、アイコン一覧表は、情報誌で使用されているアイコンを列挙して説明を加えたものであり、書籍や地図の略語一覧表や凡例に相当するものである。被控訴人各情報誌と控訴人各情報誌は、ともにスクール・講座情報を掲載した情報誌であり、同業の広告主であれば、受講者にアピールしようとする内容は必然的に類似し、アイコンは、複数の広告主が共通してアピールするポイントとなる情報を表すものであるから、表示すべき事項の選択肢は非常に限られる。広告主が共通して受講者に提供しようとする情報(アピールポイント)は、例えば、レッスン時間、レッスンの予約制や振替制度、少人数制や担任制などの授業スタイル、駅前、無料体験、説明会、月謝制等の料金体系などであり、これらは、だれが選択してもほとんど差異が生じないものであり、このような必然的な選択は、そもそも創作性がないというべきである。
イ 被控訴人による著作権侵害の成否について
 被控訴人通学アイコン一覧表は、被控訴人各情報誌で使用されているアイコンのうち、各スクール情報欄の「おすすめチェック!」欄で使用されているアイコンを、「おすすめチェック!」欄に、個々のスクール・講座情報欄で使用されているアイコンを、内容に応じて、「講座選びのポイント」欄又は「○得ポイント」欄に、それぞれ列挙して説明を加えたものであり、控訴人通学アイコン一覧表に依拠して作成したものではない。被控訴人通学アイコン一覧表と控訴人通学アイコン一覧表は、どのような事項をアイコンで表示するのかというアイデア面では、スクール・講座情報の提供という目的の共通性から、結果として、相互にある程度類似しているが、アイコン一覧表のマークの説明の文章の具体的な表現は、大きく違っているし、アイコン一覧表の形状や色彩、レイアウトなどの視覚的デザインなどにおいても、具体的な表現は、明らかに異なっている。著作権は、アイデアではなく、具体的な表現を保護するものであるから、具体的な表現において大きく異なっている以上、著作権侵害は成り立たない。
(1-6) 控訴人通信アイコン一覧表について
ア 控訴人通信アイコン一覧表の編集著作物該当性について
 被控訴人各情報誌の控訴人通信アイコン一覧表は、編集著作物として著作権法上の保護を受けることはできない。
イ 被控訴人による著作権侵害の成否について
 被控訴人通信アイコン一覧表は、被控訴人各情報誌の通信講座情報欄で使用されているアイコンを、内容に応じて、それぞれ分類、列挙して説明を加えたものであり、控訴人通信アイコン一覧表に依拠して作成したものではない。また、被控訴人通信アイコン一覧表と控訴人通信アイコン一覧表は、その具体的な表現において大きく異なっており、著作権侵害は成り立たない。
(1-7) 製作、印刷、製本、発売及び頒布の差止め請求並びに雑誌、半製品、印刷用紙型、亜鉛板、フィルム、版下など印刷用の原版の廃棄請求について
 被控訴人が、被控訴人各情報誌を編集、発行する行為は、控訴人の編集著作権を侵害するものではなく、控訴人の差止め請求及び廃棄請求は、いずれも失当である。
(2) 被控訴人の不法行為の成否について
 他人の商品を完全に模倣又は複製して販売したいわゆるデッド・コピーの事案について、著しく不公正な手段を用いた他人の法的保護に値する営業活動上の利益の違法な侵害として不法行為の成立する余地があり、それを認めた裁判例もあるが、本件はそのような事案ではない。被控訴人は、広告主に対する営業活動及び広告主から集めた広告の編集作業を独自に行い、被控訴人各情報誌を編集、発行しているのであり、控訴人各情報誌をデッド・コピーしているわけではなく、両者は、スクール・講座情報の提供という目的の共通性から、結果として、ある程度の類似が生じているにすぎない。
(3) 損害について
 控訴人の主張のうち、被控訴人各情報誌における主な収入が広告主からの広告料収入であることは認めるが、控訴人が被ったとする損害については、否認ないし争う。
3−3 控訴人の請求について
 以上のとおり、控訴人の請求は、当審における訴え変更に係る請求を含め、いずれも理由がない。
第3 当裁判所の判断
1 訴えの変更に対する異議について
 控訴人は、当審において、著作権侵害を主張する控訴人各情報誌の著作物及び被控訴人情報誌の著作物の一部変更を伴う訴えの追加的、交換的変更をし、被控訴人は、これに対し異議を述べたが、訴え変更に係る請求は、当初の請求と請求の基礎が同一と認められ、かつ、著しく訴訟手続を遅滞させることになると認めることはできない。そこで、当審における訴え変更に係る請求を含む控訴人の請求について判断することとし、まず、控訴人主張の著作権侵害及び不法行為の成否について検討する。
2 各著作物の編集著作物該当性及び被控訴人による著作権侵害の成否について
2−1 分野別モノクロ情報ページについて
(1) 分野別モノクロ情報ページの編集著作物該当性について
ア 上記第2の1の前提となる事実、証拠(甲12〜18、25、26、29〜41)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。
(ア) 控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)には、モノクロで印刷され、控訴人の広告主から出稿されたスクール・講座情報が掲載された分野別モノクロ情報ページ(106頁〜234頁)があり、これらのページは、紙面の前小口の端から約1.5センチメートル内の部分に当該ページに掲載されているスクール・講座情報の内容を端的に示す文言がツメ見出しとして記載され、本文部分は、1ページに1ないし9校の通学講座に関するスクール・講座情報が掲載され、各スクールごとに、@スクール名、A住所、B最寄駅、Cスクールの特徴を示すアイコン(「スクール便利ポイント」)、Dカプセル(講座内容を表す分類指標)、E講座の特徴を示すアイコン(開講時間、受講制度、レベル、講師に関する事項等、講座・コース独自の特長及びメリットに関する「特長アイコン」と、受講料の支払方法及び割引に関する特長、メリットに関する「○得情報アイコン」がある。)、F資料請求番号、Gコース名、H講座開講日時・費用、I入学金・受講料の割引を示すマーク、Jコース内容、Kスクール情報、L地図、M交通案内及びフリースペースから構成され、これらの情報は、「情報の見方」(74頁)の記載に従って配置されている。
(イ) 上記分野別モノクロ情報ページ(106頁〜234頁)において、スクールは、ツメ見出しの分類により、「英会話」(106頁〜121頁)、「外国語&語学の仕事」(121頁〜126頁)、「パソコン」(126頁〜139頁)、「デジタルクリエイティブ」(140頁〜148頁)、「エンジニア」(149頁〜152頁)、「ビジネス資格&スキル」(152頁〜158頁)、「建築・インテリア・CAD」(159頁〜169頁)、「フラワー」(170頁〜178頁)、「マスコミ・ファッション・デザイン」(179頁〜180頁)、「キレイ」(181頁〜190頁)、「癒し&健康」(191頁〜197頁)、「医療&福祉・教育」(198頁〜204頁)、「専門スキル」(205頁〜206頁)、「フード&料理」(207頁〜212頁)、「ミュージック」(213頁〜217頁)、「絵画・アート・書&クラフト」(218頁〜221頁)、「文化教養」(221頁〜223頁)、「スポーツ&乗り物」(224頁〜228頁)、「ダンス」(228頁〜234頁)の順に配列されている。
(ウ) 上記ツメ見出し及びカプセルは、読者による各スクール・講座情報の検索や比較検討を容易にするため、控訴人において、上記第2の2−2(1-1)ア(ア)a、b記載の方針に従って設定したものであり、控訴人情報誌東海版平成14年4月号におけるカプセルの種類は866、ツメ見出しの種類は19である。
イ 上記認定の事実によれば、控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)の分野別モノクロ情報ページ(106頁〜234頁)は、広告主から出稿されたスクール・講座情報を素材として、これらの素材を、読者の検索及び比較検討を容易にするため、五十音順等の既存の基準ではなく、控訴人の独自に定めた分類、配列方針に従って配列したものであり、その具体的配列は創作性を有するものと認められるから、編集著作物に該当するということができる。しかしながら、上記ア(ア)の配置方針自体は、スクール名、住所、最寄駅、コース名、地図などの読者が当然に必要とする情報を誌面に割り付ける際の方針、すなわち、アイデアにすぎず、表現それ自体ではない部分である。また、上記ア(イ)の分類自体も、同様にアイデアにすぎず、表現それ自体ではない部分であると認められる上、仮に、分類項目を素材としてとらえることができるとしても、スクール・講座情報を掲載する情報誌において、読者による検索の便宜のため、同種のスクールをまとめて分類する必要があることは、当然のことであり、その分類項目も、英会話、外国語、パソコン、資格など、実用性の高いスクール・講座情報を先に、音楽、海外、スポーツなど、趣味性の高いスクール・講座情報を後に、かつ、類似するものが近接したページに掲載されるよう19種類のツメ見出しの分類に従って配列したにすぎないものであるから、その選択、配列に表現上の創作性を認めることはできない。
 控訴人は、上記具体的なスクール・講座情報及び具体的な編集物である控訴人情報誌東海版平成14年4月号を離れ、分類、配列体系の項目である「学ぶ内容」ないし編集体系を構成する分類項目を素材とし、編集体系を表現としてとらえるべきであると主張する。しかしながら、著作権法は、思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照)、アイデアなど表現それ自体でない部分は、著作権法の保護の対象ではないと解すべきところ、控訴人の主張する具体的な編集物を離れた編集体系自体は、上記のとおり、選択、配列のアイデアにすぎないというべきであり、また、仮に、分類項目を素材としてとらえることができるとしても、その選択、配列に表現上の創作性を認め得ないものであるから、これを著作権法の保護の対象と解することはできない。したがって、控訴人の上記主張は、いずれにしても採用することができない。
(2) 被控訴人による著作権侵害の成否について
ア 控訴人は、被控訴人が、カテゴリー別スクール情報ページを掲載した被控訴人情報誌東海版平成14年10月号から同年12月号(甲1〜3)を編集、発行した行為は、控訴人の編集著作物の複製権又は翻案権を侵害すると主張するので、検討する。
 上記第2の1の前提となる事実、証拠(甲1〜3)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。
(ア) 被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号(甲1〜3)には、カラーで印刷され、被控訴人の広告主から出稿されたスクール・講座情報が掲載されたカテゴリー別スクール情報ページ(甲1の173頁〜267頁、甲2の133頁〜224頁、甲3の125頁〜199頁)がある。これらのページは、例えば、被控訴人情報誌東海版平成14年10月号においては、紙面の前小口の端から約1センチメートル内の部分に当該ページに掲載されているスクール・講座情報の内容を端的に示す文言がツメ見出しとして記載され、本文部分は、1ページに1ないし11校の通学講座に関するスクール・講座情報が掲載され、各スクールごとに、@スクール名、A住所、B最寄駅、Cスクールの特徴を示すアイコン(「おすすめチェック」)、Dカプセル、E講座の特徴を示すアイコン(「講座選びのポイント」、「○得ポイント」)、F資料請求番号、Gコース名、H講座開講日時・費用、I入学金・受講料の割引を示すマーク、Jコース内容、Kスクール情報、L地図、M交通案内及びフリースペースから構成され、これらの情報は、「スクール情報はこうやって見る!」(99頁)の記載に従って配置されている。
(イ) 被控訴人情報誌東海版平成14年10月号(甲1)のカテゴリー別スクール情報ページにおいて、スクールは、ツメ見出しに対応した分類により、「英語、英会話をマスターしたい!」(174頁〜185頁)、「好きな国の外国語を話したい!」(185頁〜186頁)、「パソコンを自由に操りたい!」(187頁〜200頁)、「デジタルクリエイターになりたい!」(201頁〜206頁)、「プログラマーを目指したい!」(207頁〜208頁)、「スキル&資格でキャリアアップしたい!」(208頁〜214頁)、「建築&インテリアの仕事がしたい!」(215頁〜220頁)、「マスコミ&ファッションの世界に飛び込みたい!」(221頁〜223頁)、「医療&福祉の現場で役に立ちたい!」(223頁〜227頁)、「将来専門分野で働きたい!」(227頁)、「ブライダルで幸せのお手伝いがしたい!」(228頁〜229頁)、「ビューティーセンスを磨きたい!」(229頁〜233頁)、「リラックス&ヒーリングで癒しにはまりたい!」(234頁〜243頁)、「毎日お花に囲まれていたい!」(243頁〜247頁)、「料理上手だねって言われたい!」(247頁〜250頁)、「日本の文化をたしなみたい!」(250頁〜252頁)、「もの創りってやっぱり面白い!」(252頁〜255頁)、「音楽を楽しみたい!」(255頁〜260頁)、「スポーツでいい汗かきたい!」(260頁〜263頁)、「ダンス!ダンス!ダンス!したい!」(263頁〜266頁)、「自分の絵&書を飾ってみたい!」(267頁)、「その他いろいろなことやってみたい!」(267頁)の順に配列されている。
(ウ) 被控訴人情報誌東海版平成14年11月号及び同年12月号(甲2、3)のカテゴリー別スクール情報ページ(甲2の133頁〜224頁、甲3の125頁〜199頁)においても、被控訴人情報誌東海版平成14年10月号(甲1)と同様の分類、配列によって、スクールごとにスクール・講座情報が掲載され、被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号のツメ見出しの種類は22である。
イ 上記認定の事実によれば、被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号(甲1〜3)のカテゴリー別スクール情報ページ(甲1の173頁〜267頁、甲2の133頁〜224頁、甲3の125頁〜199頁)は、被控訴人の広告主から出稿されたスクール・講座情報を素材として、これらの素材を、上記ア(イ)、(ウ)の配置方針及び分類により掲載したものであるところ、その配置方針及び分類は、控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)の分野別モノクロ情報ページ(106頁〜234頁)の配置方針及び分類と類似しているものの、これらの点は、いずれも上記控訴人情報誌の表現それ自体でない部分又は表現上の創作性が認められない部分である。
 そこで、進んで、スクール情報・講座情報の具体的配列について見ることとし、控訴人情報誌及び被控訴人情報誌とも、スクール・講座情報は、スクールごとに掲載されているから、控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページにおけるスクールの配列と被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号におけるスクールの具体的配列を対比する。
(ア) 控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)において、スクールは、例えば、「英会話」(106頁〜121頁)の分類中では、「CROSSROADS」(106頁上段)、「NOVA」(同頁中、下段)、「ECC」(107頁)・・・「YHG英語セミナー」(121頁上段中)の順に、「パソコン」(126頁〜139頁)の分類中では、「きりゅうパソコン教室」(126頁下段左)、「日本パソコン学院アビバ」(127頁)、「Winパソコン塾」(128頁上段)、「NECパソコンファミリースクウェア名駅校/新岐阜校」(同頁中、下段)・・・「おさや総合スクール」(139頁上段右)、「パソコンカレッジガリレオ」(同段左)、「中部大栄教育システム」(同頁中、下段)の順に配列されている。
(イ) これに対し、被控訴人情報誌東海版平成14年10月号(甲1)において、スクールは、上記「英会話」に対応する「英語、英会話をマスターしたい!」(174頁〜185頁)の分類中では、「ルクス」(174頁上段左)、「NOVA」(同頁中、下段)、「KTC英会話名古屋校」(175頁)・・・「REDWOODS ACADEMY」(185頁上段右)の順に、上記「パソコン」に対応する「パソコンを自由に操りたい!」(187頁〜200頁)の分類中では、「ももたろうパソコン教室矢場校」(187頁上段左)、「ももたろうパソコン教室昭和橋校」(同頁中段右)、「ももたろうパソコン教室春日井校」(同段左)、「中部コンピュータ学院本校」(同頁下段)・・・「アルファ・インストラクタ・アカデミー」(200頁)の順に配列され、その配列が上記(ア)の配列と同一性又は類似性があると認めることはできず、他の分類に係る配列についても、両者の配列に同一性又は類似性があると認めることはできない。そして、このことは、被控訴人情報誌東海版同年11月号及び同12月号(甲2、3)について見ても同様である。
ウ 以上対比したところによれば、控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)の分野別モノクロ情報ページ(106頁〜234頁)と被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号(甲1〜3)のカテゴリー別スクール情報ページ(甲1の173頁〜267頁、甲2の133頁〜224頁、甲3の125頁〜199頁)は、配置方針及び分類は類似しているものの、その具体的配列は、同一性又は類似性があると認めることはできず、上記類似性を有する部分は、表現それ自体でない部分又は表現上の創作性が認められない部分であって、上記各カテゴリー別スクール情報ページから上記分野別モノクロ情報ページの表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないから、上記各カテゴリー別スクール情報ページは、上記分野別モノクロ情報ページを複製ないし翻案したものということはできない。
 また、控訴人は、控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページにおける素材が、特定のスクール講座の広告記事であるとしても、そこに掲載される広告の広告主と、被控訴人情報誌東海版各号のカテゴリー別スクール情報ページに掲載される広告の広告主は、多くが一致していること、被控訴人が、被控訴人情報誌東海版の対象とする地域を、控訴人情報誌東海版と同一の東海地方に設定し、控訴人情報誌東海版に掲載されている広告主を見て、その広告主を対象に営業を行っていることは明らかであることなどを挙げて、素材であるスクール・講座情報に関する依拠性も明らかであると主張する。しかしながら、被控訴人が控訴人情報誌東海版に掲載されている広告主を対象に営業を行ったとしても、そのこと自体は、何ら違法ということはできず、また、広告主の多くが一致していたとしても、当該広告主から控訴人に出稿されたスクール・講座情報と被控訴人に出稿されたスクール・講座情報は、別のものであるから、控訴人主張の上記事実をもって、被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号のカテゴリー別スクール情報ページが控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページに依拠しているということはできない。
エ 以上検討したところによれば、被控訴人が、カテゴリー別スクール情報ページを掲載した被控訴人情報誌東海版平成14年10月号から同年12月号を編集、発行した行為は、控訴人の編集著作物の複製権又は翻案権を侵害するということはできない。
2−2 分野別モノクロ情報ページ中のツメ見出し・カプセルについて
(1) 分野別モノクロ情報ページ中のツメ見出し・カプセルの編集著作物該当性について
 控訴人は、控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)の分類、配列体系は、分野別モノクロ情報ページ(106頁〜234頁)中のツメ見出し、カプセルとしてそれぞれ表現され、全体として編集著作物に該当するというべきであり、控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページ中のツメ見出し・カプセルは、編集著作物として著作権法上の保護を受けるものというべきであると主張する。控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページにおいて、スクールは、ツメ見出しの分類により、上記2−1(1)ア(イ)の順に配列されているところ、ツメ見出し及びカプセルは、読者による各スクール・講座情報の検索や比較検討を容易にするため、控訴人において、上記第2の2−2(1-1)ア(ア)a、b記載の方針に従って設定したものであり、そのカプセルの種類は866、ツメ見出しの種類は19であることは、上記第3の2−1(1)ア(ウ)のとおりである。
 しかしながら、具体的な編集物を離れた編集体系自体は、選択、配列のアイデアというべきであって、著作権法の保護の対象と解することはできないことは上記2−1(1)イのとおりであり、分野別モノクロ情報ページ中のツメ見出し、カプセルも選択、配列のアイデアにすぎないというべきである。したがって、控訴人の上記主張は、採用することができない。
(2) 被控訴人による著作権侵害の成否について
 以上のとおり、控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)分野別モノクロ情報ページ(106頁〜234頁)中のツメ見出し・カプセルは、編集著作物ということはできないから、被控訴人が、被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号(甲1〜3)のカテゴリー別スクール情報ページ(甲1の173頁〜267頁、甲2の133頁〜224頁、甲3の125頁〜199頁)において、小分類・大分類を表示した被控訴人各情報誌各号を編集、発行した行為は、控訴人各情報誌のツメ見出し・カプセルの編集著作物の複製権又は翻案権を侵害するということはできない。
2−3 スーパーインデックスについて
(1) スーパーインデックスの編集著作物該当性について
 控訴人は、素材である分類項目を分類、配列する一連の行為に創作性を認めることができるから、大分類・小分類による分類、配列体系は、全体として編集著作物に該当するというべきであり、控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)のスーパーインデックス(78頁〜85頁)は、編集著作物として著作権法上の保護を受けるものというべきであると主張するので検討する。
ア 上記第2の1の前提となる事実、証拠(甲12、25)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。
 控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)には、控訴人の広告主から出稿されたスクール・講座情報を、大分類と小分類から成る2段階の分類を行った上、スクール名を配列し、当該スクールに係るスクール・講座情報の掲載ページ数とともに、資料請求のための「共通はがき」の利用の可否、控訴人サイトでの情報検索の可否、通学と通信教育の別、割引の有無を知ることができるようにしたスーパーインデックス(78頁〜85頁)がある。スーパーインデックスにおいては、読者が常設ツメ及び特集ツメに収録されている講座情報を比較検討し、かつ、容易にその掲載ページを検索できるようにするため、スクール・講座情報を、上記第2の2−2(1-3)ア(ア)〜(エ)記載の観点から、分類、配列したものであり、スーパーインデックスにおける大分類は、ツメ見出しと共通するものもあるが、ツメ見出しより細分化された項目となっており、小分類は、カプセルに対応するものとなっている。
イ 上記認定の事実によれば、控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)のスーパーインデックス(78頁〜85頁)は、広告主から出稿されたスクール情報・講座情報を素材として、これらの素材を、読者の検索及び比較検討を容易にするため、五十音順等の既存の基準ではなく、控訴人の独自に定めた分類、配列方針に従って配列したものであり、その具体的配列に創作性を有するものと認めることができ、編集著作物に該当するということができる。しかしながら、上記分類自体は、アイデアにすぎず、表現それ自体ではない部分であると認められる上、また、仮に、分類項目を素材としてとらえることができるとしても、その選択、配列に表現上の創作性を認めることができないことは、上記2−1(1)イのとおりである。
ウ 控訴人は、上記具体的なスクール・講座情報及び具体的な編集物である控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)を離れ、大分類・小分類による分類、配列体系が全体として編集著作物に該当するというべきであると主張する。しかしながら、控訴人の主張する具体的な編集物を離れた編集体系自体は、選択、配列のアイデアにすぎないというべきであり、また、仮に、分類項目を素材としてとらえることができるとしても、その選択、配列に表現上の創作性を認め得ないものであるから、これを著作権法の保護の対象と解することはできない。したがって、控訴人の上記主張は、採用することができない。
(2) 被控訴人による著作権侵害の成否について
ア 控訴人は、被控訴人が、カテゴリー別スクール情報ページを掲載した被控訴人情報誌東海版平成14年10月号から同年12月号(甲1〜3)を編集、発行した行為は、控訴人の編集著作物の複製権又は翻案権を侵害すると主張するので、検討する。
(ア) 被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号(甲1〜3)には、カラーで印刷され、被控訴人の広告主から出稿されたスクール・講座情報を、大分類と小分類から成る2段階の分類を行った上、スクール名を配列し、当該スクールに係るスクール・講座情報の掲載ページ数とともに、資料請求のための「共通または専用はがき」の利用の可否、通学と通信教育の別、資格取得向けの講座であるか否か、割引の有無を知ることができるようにしたカテゴリー別インデックス(甲1の100頁〜107頁、甲2の84頁〜89頁、甲69の3の82頁〜86頁)がある。
(イ) そこで、控訴人情報誌東海版平成14年4月号のスーパーインデックス(78頁〜85頁)におけるスクールの配列と被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号におけるスクールの具体的配列を対比する。
 控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)スーパーインデックスにおいて、スクールは、例えば、大分類「英会話・英語」中の小分類「英会話」(78頁右欄)の中では、「NEW LEAF ACADEMY」、「カイズ外語学院」、「NO BORDERS イングリッシュスクール」、「ルクス」・・・「ALC」の順に、大分類「パソコン」中の小分類「パソコン」(79頁右欄)の中では、「きりゅうパソコン教室」、「マルチメディアスクールWAVE」、「ドゥックパソコン塾」、「アルファ・マンツーマン・アカデミー」の順に配列されている。
 これに対し、被控訴人情報誌東海版平成14年10月号(甲1)のカテゴリー別インデックス(100頁〜107頁)において、スクールは、上記小分類「英会話」に対応する「英会話」(100頁右欄、中欄)の中では、「アートブレイン アカデミー イングリッシュスクール」、「愛知大学エクステンションセンター」、「UP TO YOU」、「イーオン」・・・「REDWOODS ACADEMY今池北」の順に、上記小分類「パソコン」に対応する「パソコン」(101頁右欄、中欄)の中では、「アドバンス パソコンスクール」、「牛若丸パソコンスクール」、「AID パソコンスクール」、「NECパソコンファミリースクウェア新岐阜校」・・・「わかるとできる豊明校(本間塾)」の順に配列され、その配列が上記スーパーインデックスの配列と同一性又は類似性があると認めることはできず、他の分類に係る配列についても、両者の配列に同一性又は類似性があると認めることはできない。そして、このことは、被控訴人情報誌東海版同年11月号及び同12月号(甲2、3)について見ても同様である。
イ 以上対比したところによれば、控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)のスーパーインデックス(78頁〜85頁)と被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号(甲1〜3)のカテゴリー別インデックス(甲1の100頁〜107頁、甲2の84頁〜89頁、甲69の3の82頁〜86頁)の具体的配列は、同一性又は類似性があると認めることはできず、上記各カテゴリー別インデックスから上記スーパーインデックスの表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないから、上記各カテゴリー別インデックスは、上記スーパーインデックスを複製ないし翻案したものとはいえない。
ウ 以上検討したところによれば、被控訴人が、カテゴリー別インデックスを掲載した被控訴人情報誌東海版平成14年10月号から同年12月号(甲1〜3)を編集、発行した行為は、控訴人の編集著作物の複製権又は翻案権を侵害するということはできない。
2−4 スーパーインデックスの大分類・小分類表示について
(1) スーパーインデックスの大分類・小分類表示の編集著作物該当性について
 控訴人は、控訴人情報誌東海版平成14年4月号(甲12)のスーパーインデックス(78頁〜85頁)の大分類・小分類表示は、当該分類、配列体系を構築する行為に創作性を認めることができるから、スーパーインデックスの大分類・小分類表示は、編集著作物として著作権法上の保護を受けるものというべきであると主張する。控訴人情報誌東海版平成14年4月号のスーパーインデックスの大分類・小分類表示は、読者が常設ツメ及び特集ツメに収録されている講座情報を比較検討し、かつ、容易にその掲載ページを検索できるようにするため、スクール・講座情報を、上記第2の2−2(1-3)ア(ア)〜(エ)記載の観点から、分類、配列したものであり、スーパーインデックスにおける大分類は、ツメ見出しと共通するものもあるが、ツメ見出しより細分化された項目となっており、小分類は、カプセルに対応するものとなっていることは、上記第3の2−3(1)アのとおりである。
 しかしながら、具体的な編集物を離れた編集体系自体は、選択、配列のアイデアというべきであって、著作権法の保護の対象と解することはできないことは上記2−1(1)イのとおりであり、スーパーインデックスの大分類・小分類表示も選択、配列のアイデアにすぎないというべきである。したがって、控訴人の上記主張は、採用することができない。
(2) 被控訴人による著作権侵害の成否について
 以上のとおり、スーパーインデックスの大分類・小分類表示は、編集著作物ということはできないから、被控訴人が、カテゴリー別インデックスを表示した被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号を編集、発行した行為は、控訴人情報誌東海版平成14年4月号のスーパーインデックスの大分類・小分類表示の編集著作物についての控訴人の複製権又は翻案権を侵害するということはできない。
2−5 控訴人通学アイコン一覧表について
(1) 控訴人通学アイコン一覧表の編集著作物該当性について
ア 上記第2の1の前提となる事実、証拠(甲12〜14、26、40、53、73)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。
(ア) 控訴人各情報誌平成14年4月号(甲12〜14)には、控訴人通学アイコン一覧表(甲12〔上記東海版〕の75頁、甲13〔同首都圏版〕の195頁、甲14〔同関西版〕の122頁)が掲載されている。控訴人通学アイコン一覧表おいては、スクール・講座情報について、読者がスクール及び講座を選択する際に関心事となる特徴点を示した合計71種類のアイコンを、@「そのスクールが持っている立地条件、設備のほか、受講生が受けられるサービスなど」(同一覧表上段「スクール便利ポイント」の説明)に関する「スクール便利ポイント」(23種類)、A「講座・コース独自の特長・メリット・・・開講時間、受講制度、レベル、講師など」(同中段「特長アイコン」の説明)に関する「特長アイコン」、B「講座・コースの受講料の支払い方法や、割引に関する特長・メリット」(同下段「○得情報アイコン」の説明)に関する「○得情報アイコン」の三つに分類し、配列している。
(イ) 上記@「スクール便利ポイント」には、「『駅前』駅出口から、周囲徒歩3分以内(目安)のスクールです」(注、アイコン名を『』内に記載し、続けて、その説明文を記載した。以下同じ。)、「『シャワー完備』シャワー設備のあるスポーツクラブなどに、このマークがついています」、「『駐車場有り』駐車場があり、車で通学ができるスクールです」などが、A「特長アイコン」には、「『予約制』レッスンの予定を自由に予約できる制度があります」、「『土日OK』土日も開講しているレッスン・コースです」、「『初心者対象』まったくの初心者を対象としたコース・レッスンです」などが、B「○得情報アイコン」には、「『給付制度対象』厚生労働省教育訓練給付制度の対象講座です」、「『分割分納』受講料を分けて支払います。手数料や金利が発生する可能性があるので、必ずスクールにお問い合わせください」などがある。
イ 控訴人は、控訴人通学アイコン一覧表は、上記@「スクール便利ポイント」、A「特長アイコン」及びB「○得情報アイコン」の3分類を用いた分類、配列が、控訴人各情報誌の読者に、スクール・講座の比較検討ポイントを、的確に伝え、理解させる等の視点から設定されたもので、分類方法に広い選択の幅があり、だれが行っても同様になるというものではなく、高い創作性があり、編集著作物として著作権法上の保護を受けるものというべきであると主張するので、検討する。
 各種情報誌において、アイコンは、誌面に記載された情報を、キーワードやロゴなどを用いて簡潔に表示したものであり、少ないスペースに多くの情報を掲載し、読者による情報相互間の比較が容易にできるよう、一般的に広く用いられ、その場合、読者にアイコンの意味が理解できるよう、使用されるアイコンを整理し、これに簡潔な説明を付したアイコン一覧表を作成して掲載することは、当裁判所に顕著である。そして、控訴人情報誌及び被控訴人情報誌のように、広告主から出稿されたスクール・講座情報を掲載した情報誌において、「そのスクールが持っている立地条件、設備のほか、受講生が受けられるサービスなど」(控訴人通学アイコン一覧表上段「スクール便利ポイント」の説明)、「講座・コース独自の特長・メリット・・・開講時間、受講制度、レベル、講師など」(同中段「特長アイコン」の説明)及び「講座・コースの受講料の支払い方法や、割引に関する特長・メリット」(同下段「○得情報アイコン」の説明)は、読者が当然に関心を持つ点であり、その内容である、@「スクール便利ポイント」の「駅前」、「シャワー完備」、「駐車場有り」など、A「特長アイコン」の「予約制」、「土日OK」、「初心者対象」など、B「○得情報アイコン」の「給付制度対象」、「分割分納」などは、いずれも上記関心を持つ点に係る必要な情報であると認められるから、これら各情報に係るアイコン71種類を選択したことに、創作性があるとは認められない。また、これら各情報を、@「そのスクールが持っている立地条件、設備のほか、受講生が受けられるサービスなど」(同一覧表上段「スクール便利ポイント」の説明)に関する「スクール便利ポイント」(23種類)、A「講座・コース独自の特長・メリット・・・開講時間、受講制度、レベル、講師など」(同中段「特長アイコン」の説明)に関する「特長アイコン」及びB「講座・コースの受講料の支払い方法や、割引に関する特長・メリット」(同下段「○得情報アイコン」の説明)に関する「○得情報アイコン」の三つに分類した点も、スクール・講座情報のうち、@には主としてスクール情報に関するアイコンを、Aには主として講座情報に関するアイコンを、Bには支払情報に関するアイコンを分類したにすぎないと認められ、その分類、配列に創作性があるということはできない。
ウ したがって、控訴人通学アイコン一覧表は、アイコンの選択、配列に創作性があるということはできないから、編集著作物に該当するということはできない。
(2) 被控訴人による著作権侵害の成否について
 以上のとおり、控訴人通学アイコン一覧表は、編集著作物ということはできないから、被控訴人が、被控訴人通学アイコン一覧表を表示した被控訴人各情報誌各号を編集、発行する行為は、控訴人各情報誌の控訴人通学アイコン一覧表の編集著作物についての控訴人の複製権又は翻案権を侵害するということはできない。
2−6 控訴人通信アイコン一覧表について
(1) 控訴人通信アイコン一覧表の編集著作物該当性について
ア 上記第2の1の前提となる事実、証拠(甲29、30、31、53、60)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。
(ア) 控訴人情報誌首都圏版及び同関西版の平成14年6月号には、控訴人通信アイコン一覧表(甲60〔上記関西版〕の261頁)が掲載されている。控訴人通信アイコン一覧表おいては、スクール・講座情報について、読者がスクール及び講座を選択する際に関心事となる特徴点を示した合計36種類のアイコンを、@「講座・コース独自の特長・メリット・・・受講に関する制度やフォローシステムなど」(同一覧表上段「特長アイコン」の説明)に関する「特長アイコン」、A「講座の受講料の支払い方法や割引に関する特長・メリット」(同下段「○得情報アイコン」の説明)に関する「○得情報アイコン」の二つに分類し、配列している。
(イ) 上記@「特長アイコン」には、「『スクーリング』必須または任意で、実際にスクールに行って直接授業を受ける制度です」、「『無料体験』入会前に、授業を無料で体験できます」、「『卒業時資格取得』大学通信教育のコース卒業時に資格が取得できます。取得可能資格については、各大学に必ずご確認下さい」などが、A「○得情報アイコン」には、「『給付制度対象』厚生労働省教育訓練給付制度の対象講座です」、「『分割』受講料を分けて支払います。手数料や金利がかかります。詳細は各スクールに必ずご確認下さい」、「『分納』受講料を分けて支払います。手数料や金利はかかりません。詳細は各スクールに必ずご確認下さい」などがある。
イ 控訴人は、控訴人通信アイコン一覧表は、上記@「特長アイコン」及びA「○得情報アイコン」の2分類を用いた分類、配列が、控訴人各情報誌の読者に、スクール・講座の比較検討ポイントを、的確に伝え、理解させる等の視点から設定されたもので、分類方法に広い選択の幅があり、だれが行っても同様になるというものではなく、高い創作性があり、編集著作物として著作権法上の保護を受けるものというべきであると主張するので、検討する。
 各種情報誌において、アイコン及びアイコン一覧表を掲載していることは、上記のとおりであるところ、控訴人情報誌及び被控訴人情報誌のように、広告主から出稿されたスクール・講座情報を掲載した情報誌において、「講座・コース独自の特長・メリット・・・受講に関する制度やフォローシステムなど」(控訴人通信アイコン一覧表上段「特長アイコン」の説明)及び「講座の受講料の支払い方法や割引に関する特長・メリット」(同下段「○得情報アイコン」の説明)は、読者が当然に関心を持つ点であり、その内容である、@「特長アイコン」の「スクーリング」、「無料体験」、「卒業時資格取得」など、A「○得情報アイコン」の「給付制度対象」、「分割」、「分納」などは、いずれも上記関心を持つ点に係る必要な情報であると認められるから、これら各情報に係るアイコン36種類を選択したことに、創作性があるとは認められない。また、これら各情報を、@「講座・コース独自の特長・メリット・・・受講に関する制度やフォローシステムなど」(同一覧表上段「特長アイコン」の説明)に関する「特長アイコン」及びA「講座の受講料の支払い方法や割引に関する特長・メリット」(同下段「○得情報アイコン」の説明)に関する「○得情報アイコン」の二つに分類した点も、スクール・講座情報のうち、@には主としてスクール・講座情報に関するアイコンを、Aには支払情報に関するアイコンを分類したにすぎないと認められ、その分類、配列に創作性があるということはできない。
ウ したがって、控訴人通信アイコン一覧表は、アイコンの選択、配列に創作性があるということはできないから、編集著作物に該当するということはできない。
(2) 被控訴人による著作権侵害の成否について
 以上のとおり、控訴人通信アイコン一覧表は、編集著作物ということはできないから、被控訴人が、被控訴人通信アイコン一覧表を表示した被控訴人各情報誌各号を編集、発行する行為は、控訴人各情報誌の控訴人通信アイコン一覧表の編集著作物についての控訴人の複製権又は翻案権を侵害するということはできない。
2−7 以上検討したところによれば、控訴人の著作権に基づく各請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がない。
3 被控訴人の不法行為の成否について
 控訴人は、被控訴人は、被控訴人各情報誌において、控訴人各情報誌の広告記事・インデックスの配列方法、アイコン一覧表、レイアウト及びFAXシートを模倣し、また、控訴人の運営する控訴人サイトの手法を模倣し、被控訴人サイトを運営して、被控訴人各情報誌を発行する行為は、控訴人の獲得してきた媒体としての信用にただ乗りし、控訴人の顧客を奪取するという不正競争的意図を有するものであって、著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護に値する営業活動上の利益を違法に侵害するものとして、不法行為を構成すると主張する。
 しかしながら、控訴人各情報誌の配列方法、アイコン一覧表、レイアウト及びFAXシート並びに控訴人の運営する控訴人サイトの手法は、著作権法上の保護を受けるものではなく、控訴人がその独占的使用を主張し得る筋合いのものではないから、被控訴人においてこれらのノウハウを使用する行為は、それがデッド・コピーに当たるなど自由競争の範囲を逸脱したものと認められる特段の事情がある場合を除き、何ら違法性を帯びるものではないところ、被控訴人各情報誌及び被控訴人サイトは、控訴人各情報誌及び控訴人サイトをデッド・コピーしたものであると認めることができないことは、以上の判示に照らして明らかであり、他に、上記の特段の事情の存在をうかがわせるに足りる証拠はない。
 したがって、被控訴人に控訴人主張のような不法行為に該当する行為を認めることはできないから、控訴人の不法行為に基づく請求も、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。
4 結論
 以上によれば、控訴人の原審における請求(当審において審理の対象となっていない上記訴えの取下げ及び請求の減縮に係る部分並びに訴えの交換的変更に係る変更前の部分を除く。)をいずれも棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がなく、また、控訴人の上記訴え変更に係る請求も理由がない。
 よって、控訴人の本件控訴及び当審における請求をいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。

東京高等裁判所知的財産第2部
 裁判長裁判官 篠原勝美
 裁判官 岡本岳
 裁判官 早田尚貴
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