判例全文 line
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【事件名】創価学会vs日蓮正宗 宣伝ビラ事件(2)
【年月日】平成16年11月29日
 東京高裁 平成15年(ネ)第1464号 損害賠償等請求控訴事件
 (原審・東京地裁平成13年(ワ)第12339号)
 (平成16年7月21日 口頭弁論終結)

判決
1審原告 創価学会
訴訟代理人弁護士 福島啓充
同 桝井眞二
同 井田吉則
同 成田吉道
同 豊浜由行
同 大峰義孝
同 松村光晃
同 中村秀一
同 海野秀樹
同 若井広光
1審被告 日蓮正宗
訴訟代理人弁護士 久保田康史
同 菅充行
同 間辺大午
同 有賀信勇
同 大室俊三
1審被告 A
訴訟代理人弁護士 大島真人
1審被告 B
訴訟代理人弁護士 松井繁明
同 笹本潤
同 菊池紘
同 大山勇一
同 笹山尚人


主文
1 1審被告日蓮正宗及び1審被告Aの本件各控訴に基づき、原判決主文第3項中、同1審被告らの各敗訴部分を取り消す。
2 1審原告の1審被告日蓮正宗及び1審被告Aに対する請求をいずれも棄却する。
3 1審原告及び1審被告Bの本件各控訴をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、第1、2審を通じて、1審原告に生じた費用の10分の1と1審被告Bに生じた費用の5分の1を1審被告Bの、一審原告と1審被告らに生じたその余の費用のすべてを1審原告の、それぞれ負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 1審原告
(1) 原判決を次のとおり変更する。
(2) 1審被告らは、原判決別紙ビラ目録1記載のビラ及び同目録2記載のビラを、1審被告ら又は第三者をして配布したり、掲示その他不特定多数人の目に触れるような行為をしてはならない。
(3) 1審被告らは、前項の各ビラを、回収して廃棄せよ。
(4) 1審被告らは、1審原告に対し、連帯して3000万円及びこれに対する平成13年6月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 1審被告ら
(1) 原判決中、1審被告らの各敗訴部分を取り消す。
(2) 1審原告の1審被告らに対する請求をいずれも棄却する。
第2 事案の概要
 本件は、原判決別紙ビラ目録1記載のビラ(以下「本件写真ビラ」という。)及び同目録2記載のビラ(以下「本件絵ビラ」といい、本件写真ビラと本件絵ビラとを併せて「本件各ビラ」という。)が作成、配布されたことについて、原判決別紙1審原告写真目録1記載の写真(以下「1審原告写真1」という。)及び同目録2記載の写真(以下「1審原告写真2」という。)につき法人著作(著作権法15条1項)に基づく著作権及び著作者人格権を有すると主張する1審原告が、本件各ビラは1審被告らが作成、配布したものであり、本件写真ビラに掲載されている原判決別紙ビラ写真目録記載の写真(以下「本件ビラ写真」という。)は1審原告写真1を、本件絵ビラに掲載されている原判決別紙ビラ絵目録記載の絵(以下「本件ビラ絵」という。)は1審原告写真2を、それぞれ複製又は翻案したものであり、1審原告写真1、2に対する1審原告の著作権及び著作者人格権を侵害するとして、1審被告らに対し、(1)著作権法112条に基づき、本件各ビラの配布の差止等、(2)民法の不法行為の規定に基づき、1審原告写真1、2についての各著作権侵害による損害賠償として、著作権法(注、平成15年法律第85号による改正後のもの。以下同じ)114条2項又は3項により算定した1000万円(1審原告写真1、2につき、それぞれ500万円)及び1審原告写真1、2についての各著作者人格権侵害による損害賠償として、2000万円(1審原告写真1、2につきそれぞれ1000万円)の連帯支払を求めた事案である。
 原判決は、本件ビラ写真を掲載した本件写真ビラを作成、配布する行為は、1審原告写真1についての1審原告の著作権(複製権、譲渡権)及び著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権)を侵害するとし、本件ビラ絵を掲載した本件絵ビラを作成、配布する行為は、本件ビラ絵が1審原告写真2を複製又は翻案したものとはいえないから、著作権及び著作者人格権の侵害とはならないとした上、1審原告写真1についての著作権及び著作者人格権の侵害を理由として、@1審被告Bに対し、本件写真ビラの配布の差止め及び廃棄を命じ(原判決主文1、2項)、A1審被告らに対し、1審原告写真1についての著作権侵害による損害賠償50万円及び同写真についての著作者人格権侵害による損害賠償50万円の合計額100万円とこれに対する遅延損害金の連帯支払を命じ(同3項、なお、上記の損害賠償は、1審被告Bについては不法行為、1審被告Aについては1審被告Bの侵害行為を幇助したことによる共同不法行為、1審被告日蓮正宗については1審被告Aの上記幇助行為ついての使用者責任に基づくものである。)、1審原告の1審被告らに対するその余の請求を棄却した(同4項)。これに対し、1審原告及び1審被告らの双方が控訴した。
 本件において争いのない事実、争点及びこれに対する当事者の主張は、次のとおり当審における当事者の主張を付加するほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1ないし3のとおりであるから、これを引用する。
1 1審原告の主張
(1) 1審原告写真1についての著作権及び著作者人格権の侵害
ア 1審原告写真1の著作物性(争点(1)ア(ア))
 1審原告写真1は、原判決が詳細に認定しているとおり、創価大学創立20周年を記念して、同大学の卒業生から送られたローブ(以下「本件ローブ」という。)をスーツの上から着用し、式帽を被った、被写体であるCの品格等を的確に表現するために、撮影場所や背景、Cのポーズなどに注意を払いながら、「スーツの上から本件ローブ及び式帽を着用したCを、背景、構図、照明、光量、絞り等に工夫を加えて撮影」(原判決23頁)したものであって、撮影者の思想又は感情を創作的に表現しているから、著作物性を有する。
イ 著作権侵害
(ア) 本件ビラ写真は1審原告写真1の複製物又は翻案物かについて(争点 (1)ア(イ)a)
 本件ビラ写真は、1審原告写真1をあえて使用して作成されており、1審原告写真1から被写体であるCの上半身を抜き出し、これを白黒写真とした以外には、1審原告写真1に特段の変更を加えておらず、1審原告写真1と実質的に同一であるから、その複製物というべきである。
(イ) 本件写真ビラに本件ビラ写真を掲載することは、1審原告写真1の適法な引用に当たるか等について(争点(1)ア(イ)b)
a 引用の目的について
 著作権法32条1項が引用の目的として例示している批評とは、当該著作物を批評するための引用を意味しているのであって、Cや、1審原告及び公明党を批判するための引用は、同条にいう批評のための引用ではない。ある人物が発言を行ったことの真実性を知らせるなどという理由によって、当該人物を撮影した写真著作物の無断使用が許される道理はない。
b 「引用の目的上正当な範囲内」の引用について
 著作権法32条1項第2文にいう「引用の目的上正当な範囲内」の引用と認められるためには、@引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と引用されて利用される著作物とを明瞭に区別して認識することができること、A両著作物の間には前者が主、後者が従の関係があると認められる場合であること、Bその引用が引用される側の著作者人格権を侵害するような態様でされるものでないこと、以上の三要件を必要とする。本件写真ビラは、文章部分が主、本件ビラ写真が従という関係にはない上、Cを揶揄するために、1審原告写真1から取ったCの肖像に勝手に吹き出しを付加するという改変(同一性保持権の侵害)をしているから、正当な範囲内のものといえないことは明らかである。
(ウ) フェアユースの主張について
 原判決が判示するとおりであり、1審被告らの主張は失当である。
ウ 著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)の侵害
 原判決の判示するとおりであり、侵害は明らかである。
(2) 1審原告写真2についての著作権及び著作者人格権の侵害
ア 1審原告写真2の著作物性(争点(1)イ(ア))
 1審原告写真2は、1審原告写真1と同様に、著作物性を有する。
イ 複製権、翻案権、譲渡権、同一性保持権及び氏名表示権の侵害(争点(1)イ(イ)) 
(ア) 複製権侵害について
 本件ビラ絵は、著作権侵害を理由として本件写真ビラの配布を禁止した平成13年5月25日の東京地方裁判所の仮処分決定を潜脱し、1審原告を揶揄、嘲笑する悪質な意図をもって、1審原告写真2の肖像部分をそのままトレースして作成されたものである。本件ビラ絵を1審原告写真2を拡大したものと重ね合わせると、ごく一部を除いて両者は一致し、本件ビラ絵が1審原告写真2の肖像部分を細部までトレースし、1審原告写真2に全面的に依拠して作成されたことは明らかである。本件ビラ絵は、1審原告写真2に式帽を書き加え、着衣の一部をローブ様のものをまとっているかのように描き変えているが、その加筆部分に創作性が認められる余地はない。したがって、本件ビラ絵は、1審原告写真2の表現上の本質的特徴を感得させるものであり、1審原告写真2の複製物というべきである。
(イ) 翻案権侵害について
 仮に、本件ビラ絵が1審原告写真2の複製物に当たらないとしても、1審原告を揶揄、嘲笑する意図で1審原告写真2をトレースして本件ビラ絵を作成することが翻案権の侵害に当たることは明白である。原判決は、本件ビラ絵は、1審原告写真2における、Cの顔の表情、輪郭等の具体的な表現上の特徴がすべて捨象されており、1審原告写真2の表現形式上の本質的特徴部分を感得する程度に類似しているとはいえないとして、翻案権侵害を否定したが、原判決のように、写真の個別的、具体的な表現のみを表現形式上の本質的特徴部分としてとらえると、写真を絵にしたような場合には、翻案権侵害はおよそ成立し得ないという不当な結論になる。写真に著作物性が認められるための創作性については、原判決が挙げる撮影技法や現像手法だけでなく、被写体の選択、組合せ、配置等にも着目すべきであり、これらの要素も表現形式上の本質的特徴部分を構成するというべきである。1審原告写真2は、ブラジル教育統一協会から創価学会インターナショナル(SGI)の加盟団体であるブラジル日蓮正宗(NSB)に「文化・教育功労大十字勲章」が贈呈されたことを機に、SGI会長であるCとNSBメンバーの心の交流を表現するために撮影された。このような撮影主題を的確に表現するために、撮影は、入念なテストをした上行われ、人物と勲章が引き立つように、Cに様々なポーズや表情をとってもらいながら、構図、カメラアングル、背景、照明による光の陰影等にも工夫を凝らして数十カットを撮影した。1審原告写真2は、これらの数多くのカットの中から、撮影主題が最もよく表われた1カットを選び抜いたものである。1審原告写真2には、背景、照明、光量、絞り等の工夫のみならず、被写体であるCと大十字勲章の組合せや配置、ポーズ、表情等にも工夫が加えられているから、これらも表現形式上の本質的特徴部分を構成している。本件ビラ絵は、1審原告写真2のこの本質的特徴部分を感得させるものであるから、1審原告写真2の翻案物であり、本件ビラ絵を作成する行為は、翻案権の侵害に当たる。
(ウ) 同一性保持権及び氏名表示権の侵害について
 1審原告写真2を著作者の同意なく改変した本件ビラ絵を本件絵ビラに掲載し、著作者を表示することなく配布する行為は、1審原告写真2についての同一性保持権及び及び氏名表示権の侵害に当たる。
(3) 1審被告日蓮正宗及び同Aに対する請求について(争点(3))
ア 差止等請求
 以下に述べるとおり、本件各ビラは、1審被告らが共謀し、1審被告日蓮正宗の教義の重要な実践として、妙観講の組織を挙げて配布したものであるから、1審被告Bに対してのみならず、1審被告日蓮正宗及び同Aに対しても、本件各ビラの配布禁止及び回収、廃棄を命じるべきである。
(ア) 1審被告らの関係及び妙観講の活動等
 1審被告日蓮正宗は、平成2年の暮以降、宗を挙げて1審原告に対する批判、攻撃を行っており、信者に対しても、1審原告の誤りを指摘し、周知させることが1審被告日蓮正宗の教義の実践であると指導してきた。
 1審被告Aが講頭を務める妙観講は、1審被告日蓮正宗の信者組織の中で最大の構成員を有し、1審原告に対する批判、攻撃においても先鋭的な攻撃部隊として、その大半を行っている。
 1審被告Bが主宰する政治団体「信教と思想の自由を守る会」(以下「守る会」という。)は、1審原告及び公明党を批判するビラの作成、配布を活動の中心としているが、1審被告Bがビラの作成名義人として存在するのみで、人的にも資金的にも組織としての実体はなく、1審被告日蓮正宗と実質上同一ないし単なる傀儡にすぎない。「守る会」名義のビラは、1審被告日蓮正宗が購入し、その作成費を負担している。また、これまで、「守る会」の名義で作成されたビラ(甲19〜21)は、1審被告日蓮正宗の僧侶や妙観講を中心とする信者組織によって配布されてきた。1審被告Bは、妙観講の講員であり、1審被告Aとも密接な関係にある。
 1審被告日蓮正宗は、公明党が細川連立内閣、羽田連立内閣に参加した平成5、6年ころから、「1審原告の日本支配の野望を阻止する」として、1審原告が政権の中枢に入り込む事態を阻止することを「護法の戦い」と位置付け、選挙の際に、1審原告及び公明党に対するひぼう中傷を行うことを活動の基本方針に据えるようになった。その活動の中心的役割を担ったのは、妙観講であり、同講は、平成7年10月ころから、1審被告日蓮正宗の上記方針の下に、「民主政治を考える会」(以下「考える会」という。)作成名義の1審原告及び公明党批判のビラを全国的に大量に配布した。さらに、「考える会」の代表者が死亡し、1審被告Bが代表者となって「守る会」が発足した後は、「守る会」作成名義の上記同様のビラを、組織を挙げて全国に配布するようになった。 
 1審被告日蓮正宗の準機関誌である「慧妙」には、上記基本方針の下に、「守る会」名義のビラとほぼ同一論調の1審原告批判が繰り広げられている。1審原告を攻撃するためにCの写真を無断で掲載することは、「慧妙」の常とう手段である。「守る会」のビラは、すべて、1審原告及び公明党に対するひぼう中傷を目的としているものであるが、その内容、表現等は、これまで1審被告日蓮正宗が1審原告に対して行ってきたものと同一であり、1審被告日蓮正宗の活動と軌を一にしている。
(イ) 本件各ビラの作成、配布についての1審被告日蓮正宗、妙観講及び1審被告Aの関与
 本件各ビラは、1審被告日蓮正宗が平成7年以来継続的に行ってきた「1審原告の日本支配の野望を阻止する」という基本方針に基づく活動の延長線上において、平成13年6月の東京都議会議員選挙、7月の参議院議員選挙に向けて、それまでと同様のビラを大量配布するという目的で作成された。1審被告日蓮正宗は、上記基本方針に則り、1審被告A及び同Bと共謀して、「守る会」作成名義のビラを作成、配布することを決定した。これを受けて、1審被告A及び同Bは、本件写真ビラ100万枚、本件絵ビラ50万枚を作成し、いずれも東京都杉並区内の妙観講本部に搬入し、同年5月から6月にかけて、妙観講の組織を挙げて配布した。
 1審被告らは、本件各ビラの作成、配布は、1審被告Bが自ら計画し、面識のある妙観講の講員に個人的に依頼して行ったものであり、1審被告Aや1審被告日蓮正宗は関与していないなどと主張するが、150万枚ものビラが、事前に綿密な配布計画を立てることなしに作成されることはあり得ない。本件各ビラは、その99%を妙観講の講員が配布するという配布計画を前提に作成され、現に、妙観講の講員によって配布されたのであり、そのようなことは、妙観講の講頭である1審被告Aとの綿密な打合せなしに1審被告Bが単独で行い得ることではない。本件各ビラが、妙観講の組織を挙げて配布されたものであることは、本件写真ビラの妙観講本部への搬入、搬出、配布、仮処分決定を受けての配布の中止、さらには、本件写真ビラに代わる本件絵ビラの作成、妙観講本部への搬入、搬出、配布という一連の行為が、平成13年5月23日から同年6月14日までの短期間の間に手際よく行われたことからも明らかである。原判決は、本件各ビラがどのような配布計画の下に作成され、だれがどのように配布したか、150万枚という大部のビラの作成費用をだれが負担したかを十分に検討することなく、1審被告日蓮正宗及び同Aの責任を否定しており、失当である。
 本件各ビラの作成、配布は、1審被告日蓮正宗の教義に基づく実践活動そのものであり、1審被告日蓮正宗及び同Aが、本件各ビラの内容を認識した上で、その作成、配布の企画及び実行に深く関与していたことは、明らかというべきである
イ 1審被告日蓮正宗及び同Aの損害賠償責任
(ア) 共同不法行為による責任
 本件各ビラの作成、配布は、1審被告らが共謀して計画し、1審被告日蓮正宗の教義の重要な実践として、妙観講の組織を挙げて配布が実行されたものであるから、1審被告日蓮正宗及び同Aは、本件各ビラの作成、配布による著作権侵害及び著作者人格権侵害につき、共同不法行為者(民法719条1項)として責任を負う。
(イ) 1審被告Aの幇助者としての責任
 仮に、上記(ア)が成り立たないとしても、1審被告Aは、本件各ビラの内容の詳細を認識した上で、1審被告Bから、本件各ビラを妙観講本部で保管し、ビラ配布を担当する妙観講員に引き渡すことに関して要請を受けて、これを了承し、妙観講本部をそのための場所として提供したことにより、著作権及び著作者人格権の侵害を幇助したものであるから、侵害行為の幇助者(民法719条2項)として、不法行為責任を負う。
(ウ) 1審被告日蓮正宗の使用者責任
 仮に、1審被告日蓮正宗について上記(ア)が成り立たないとしても、1審被告Aは、上記(ア)又は(イ)のとおり、1審原告写真1、2についての著作権及び著作者人格権の侵害の共同不法行為者又は侵害の幇助者であるところ、同1審被告は、法華講支部である妙観講の講頭として、1審被告日蓮正宗の実質的な指揮監督に服するものであり、かつ、本件各ビラの作成、配布は、1審被告日蓮正宗の事業の執行につきされたものであるから、1審被告日蓮正宗は、1審被告Aが侵害行為又は侵害幇助行為により1審原告に加えた損害について、民法715条の使用者責任を負う。
(4) 損害額(争点(5))
ア 著作権侵害による損害額
(ア) 著作権法114条2項による損害額
 「守る会」は、本件各ビラの作成により、それぞれ500万円を下らない利益を得ているから、著作権法114条2項により算定した1審原告の損害額は、1審原告写真1、2のそれぞれにつき、500万円(合計1000万円)を下らない。 
(イ) 著作権法114条3項による損害額
 仮に、上記(ア)が認められないとしても、1審被告らは、著作権法114条3項により、1審原告写真1、2の使用について1審原告が受けるべき金銭の額に相当する1000万円(1審原告写真1、2のそれぞれにつき500万円)を1審原告に対して支払う義務がある。写真についての一般的な使用料が5万円〜20万円程度であるとしても、これは正規の利用許諾を受けた場合の使用料額であり、しかも、1万部程度の複製を前提としたものであるから、本件のように無断使用で、しかも、部数が100万枚、50万枚という格段に大きな数である場合の参考となるものではない。また、1審原告写真1、2が悪質なひぼう中傷のために利用されたことにより、1審原告は、1審原告写真1、2を機関誌等に使用することができなくなった。本件各ビラについて1審原告が受けるべき金銭の額に相当する額は、ビラの部数の多さ及び侵害行為の悪質性を考慮して、1審原告写真1、2のそれぞれにつき、500万円が相当である。
イ 著作者人格権侵害による損害額
 1審原告写真1、2は、創意工夫を凝らして撮影された価値の高い著作物であり、1審原告の各種出版物に掲載して利用することを予定していたのに、悪質な意図の下に改変されたことによって、著作者人格権が甚だしく侵害された。その損害額は、本件各ビラについて、それぞれ1500万円を下らないから、その一部として、それぞれ1000万円を請求する。
2 1審被告らの主張
(1) 1審原告写真1についての著作権及び著作者人格権の侵害について
ア 1審原告写真1の著作物性について(争点(1)ア(ア))
(1審被告ら)
 1審原告写真1が著作物でないことは原審における主張のとおりである。
イ 著作権侵害について
(ア) 本件ビラ写真は1審原告写真1の複製物又は翻案物かについて(争点(1)ア(イ)a)
(1審被告日蓮正宗)
 仮に、1審原告写真1が著作物であるとしても、その著作物性は、原判決も認めるとおり、背景、構図、照明、光量、絞り等に工夫を加えて撮影している点にある。すなわち、原判決は、「D(注、1審原告写真1、2の撮影者)は、1審原告写真1を撮影するに当たり、Cを引き立たせる効果を考えて、撮影場所として、絵画や花瓶のある創価女子短期大学内の応接室を選択し、背景の装飾品として、ゴブラン織りの絵画を選択し、部屋の照明を消して、特別に用意したストロボの光源のみで撮影することとし、ストロボを置く角度、高さ、光量を考慮し、背景の壁など部屋の隅々の露光を計測、考慮して、シャッター速度、絞りを決めた。また、Dは、本件ローブの全体像を写し出すこと、本件ローブ全体の格調の高さ及びCの品格を表現すること、本件ローブの腕の部分の刺繍が鮮明に写るようにすることなどを心掛けて、Cのポーズを決定した」(原判決22頁下から2行目〜23頁8行目)と認定し、これを根拠に、同写真が撮影者であるDの思想又は感情を創作的表現したものと認定したのである。ところが、本件写真ビラに掲載された本件ビラ写真は、背景を欠いた上半身だけであり、しかも、鮮明でないモノクロ写真であって、照明の強度、方向等を全く感得させないものとなっているから、背景や構図における創作的表現や撮影者が工夫したとする照明、光量、絞り等にかかわる創作部分は何ら複製されていない。本件ビラ写真は、批判の対象としてのCを特定するために必要な部分のみを抽出して利用しているにすぎず、1審原告写真1を創作物とさせている特徴を何ら複製していないから、写真著作物としての1審原告写真1の複製物又は翻案物のいずれにも当たらない。
(1審被告B)
 本件ビラ写真は、1審原告写真1の創造的価値を利用しておらず、Cの肖像としての同一性を確保するために使用されているにすぎないから、著作権侵害には当たらない。
(イ) 本件写真ビラに本件ビラ写真を掲載することは、1審原告写真1の適法な引用に当たるか等について(争点(1)ア(イ)b)
(1審被告日蓮正宗)
 本件写真ビラは、1審原告、C及び公明党を批判する目的で、Cの肖像を必要な範囲で引用した上で批判するものであり、公正な慣行に反する点もなく、著作権法32条1項により許容されるものである。公人を批判する際にその発言を取り上げるのは当然であり、Cを批判するのに同人の肖像に同人の発言を吹き出しとして付することに何ら不公正な点はない。
(1審被告B)
 著作権法32条1項が「報道、批判、研究その他引用の目的上正当な範囲内で」と規定している趣旨は、引用の目的に照らして、引用の態様、方法が正当な範囲を逸脱してはならないということにある。本件写真ビラは、1審原告及びCを政治的に批判することを目的とするものであり、Cの発言の内容を正確に引用することによって批判の正当性を保とうとしたものであるから、写真の上半身のみを切り抜き、1審原告写真1の上半身を本件写真ビラの約15%の大きさとし、「吹き出し」を付けても、引用の目的に照らして正当な範囲内にあるというべきである。しかも、本件写真ビラにおける1審原告写真1の引用態様は、C本人であることを確認させるという程度の意味しか持たず、写真の創作性や芸術性を利用する態様ではなく、この点からも正当な範囲を逸脱するものではない。
 また、本件写真ビラに本件ビラ写真を用いたことについては、公正な利用(フェアユース)の法理により、著作権侵害は成立しない。本件写真ビラにCの写真を用いたのは、Cの発言を広く国民に知ってもらうためであり、Cの写真や絵を用いて批判を行うことは、正当な政治的言論活動であるから、最大限保障されなければならない。本件においては、著作権法と表現の自由を調整するために著作権法を憲法に適合するように限定的に解釈する手法であるフェアユースの法理を適用し、著作権侵害を否定すべきである。
ウ 著作者人格権の侵害について
 否認する。
(2) 1審原告写真2についての著作権及び著作者人格権の侵害について(争点(1)イ)
(1審被告日蓮正宗)
ア 1審原告写真2の著作物性について
 1審原告写真2は著作物性を有しない。
イ 複製権、翻案権、譲渡権、同一性保持権及び氏名表示権の侵害について
 1審原告が1審原告写真2と本件ビラ絵との一致点として挙げる点は、いずれも対象が共通であることから生じる一致点であるにすぎず、1審原告写真2の表現上の創作性にかかわる、撮影者の思想を創造的に表現しようとして工夫した撮影方法や現像の方法などの特徴は、全く複製されていない。
 本件ビラ絵は、1審原告写真2の翻案物にも当たらない。翻案とは、「既存の著作物に依拠して、それとは表現形式が異なるものの、その創作に係る本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為」であるが、本件ビラ絵は、既存の著作物の内容としている事実のみを抽出して、その創作性の認められない部分を利用しているにすぎないからである。
(3) 1審被告日蓮正宗及び同Aに対する請求について(争点(3)) 
(1審被告日蓮正宗)
ア 1審被告日蓮正宗に対する差止等請求について 
 1審被告日蓮正宗が、1審被告B及び同Aと共謀して、本件各ビラを作成、配布したという事実はない。
 この点に関する1審原告の主張は、要するに、「守る会」には実体がなく、同会名義で発行された他のビラに1審被告日蓮正宗の僧侶が関与したことがあるから、同会は1審被告日蓮正宗と実質的に同一であり、さらに、1審原告に対する批判の論調が「守る会」と「慧妙」とで類似しているから、本件各ビラの作成、配布には、1審被告日蓮正宗が関与していることが推測されるというものである。しかし、1審被告日蓮正宗は、宗教団体総体として組織的に政治活動を行ったり、信徒に対して政治活動の指揮監督を行うことはない。本件各ビラのような政治的なビラの作成、配布は、日蓮正宗の教義の実践とは無縁である。ビラの作成費用を1審被告日蓮正宗が負担したこともない。「守る会」名義のビラ(甲19〜21)の配布に関与した者の中に1審被告日蓮正宗の僧侶らがいたとしても、そのことから本件各ビラの配布が1審被告日蓮正宗によってされたということはできない。「慧妙」は、妙観講の講員を含む信徒と1審被告日蓮正宗の有志僧侶によって作成される新聞であって、1審被告日蓮正宗としての見解・方針を信徒や僧侶に伝える機関誌ではない。仮に、「慧妙」における1審原告及びC批判の論調が、本件各ビラと共通していたとしても、それは、「主義、所見を同じくする者」の言動が内容的に共通するというだけのことであって、本件各ビラについての1審被告日蓮正宗の関与を何ら示すものとはいえない。「守る会」の1審原告に対する批判活動を1審被告日蓮正宗の活動と同視する1審原告の主張は失当である。
イ 1審被告日蓮正宗の損害賠償責任について
(ア) 共同不法行為による責任について
 1審被告日蓮正宗は、本件各ビラの作成、配布に関与していないから、共同不法行為者(民法719条1項)としての責任を負わない。
(イ) 使用者責任について
a 1審被告Aの侵害行為及び侵害幇助の不存在
 1審被告Aは、侵害の行為はもとより、著作権等侵害を幇助する行為もしていないから、1審被告Aの行為に基づき1審被告日蓮正宗に民法715条の責任が生じる余地はない。
 すなわち、本件写真ビラは、1審被告Bが、1審被告Aと何の連絡もないまま作成を計画し、平成13年4月末ころ、印刷会社に対し、本件写真ビラの文章原稿を入稿し、同年5月7日には、その校正と本件ビラ写真を交付して、印刷が開始されたものである。このように、本件写真ビラは、1審被告Aの関与がないままに作成されたのであるから、本件写真ビラの作成(複製行為)について、1審被告Aに幇助行為が存在する余地はない。また、1審被告Aは、1審被告Bが本件写真ビラの配布を妙観講の講員に配布を依頼した経緯についての認識はなく、これに関与もしていない上、ビラの保管場所として妙観講本部を提供した事実もないから、本件写真ビラの配布(譲渡行為)に関しても幇助行為は存在しない。
 以上に加えて、1審被告Aに幇助による不法行為責任が成立するためには、1審被告Bによる著作権等侵害の事実を、1審被告Aにおいて認識し、認容していたこと(主観的要件)が必要と解されるところ、1審被告Aは、本件写真ビラの配布等を禁じる仮処分決定がされた後、初めて本件写真ビラに掲載された本件ビラ写真のことを知ったのであるから、著作権等の侵害についての認識や認容はなかったものである。
 原判決は、1審被告Aが、@本件写真ビラの記載内容の詳細を認識しつつ、A1審被告Bに妙観講本部を本件写真ビラの保管場所として提供したことが、B1審被告Bによる本件写真ビラの作成、配布を幇助したものであるとする(原判決35頁)が、上記@、Aの事実はないから、原判決における幇助の認定は、その前提を欠く。
b 「使用関係」及び「事業の執行につき」の要件の欠如
(a) 「使用関係」について
 1審被告日蓮正宗に民法715条による責任が成立するためには、1審被告Aが1審被告日蓮正宗の被用者であるという「使用関係」の存在が要求されるところ、1審被告日蓮正宗は、本件各ビラの作成、配布のような活動については、1審被告Aを指揮監督する関係にはなかったから、「使用関係」は存在しない。そもそも、1審被告日蓮正宗は、法華講を教義信仰上指導する関係にはあっても、政治活動その他の世俗的な行為につき指揮監督する立場にはない。
(b) 「事業の執行につき」の要件について
 本件各ビラの作成、配布は、宗教法人である1審被告日蓮正宗の活動に密接に関連するものとはいえず、その事業の執行につき行われたということもできない。本件写真ビラは、「守る会」の名義で発行されており、ビラに記載された「守る会」の連絡先等も1審被告日蓮正宗とは無関係であるから、同ビラの作成、配布は、外形上も、1審被告日蓮正宗の事業の執行と関連すると見る余地は皆無である。
(1審被告A)
ア 1審被告Aに対する差止等請求について
 1審被告Bは、宗教とは関係なく、政治活動として「守る会」の活動を行っていたものであり、「守る会」の活動は、妙観講や1審被告日蓮正宗の活動と無関係である。妙観講は、創価学会に対する教義上の批判は行うが、政治活動は行わない。1審原告の主張は、政治的な批判を目的とするビラ配布等の政治活動と宗教活動とを意図的に混同させようとするものである。1審被告Aは、次のイに述べる限度でしか本件写真ビラにかかわっていない。
イ 幇助者としての責任について
 1審被告Aは、妙観講の講員に本件写真ビラを配布するように指示したことはなく、妙観講本部をビラの保管場所として提供することを了承したこともない。
 1審被告Aは、妙観講の定例班長会の前日である平成13年5月10日に、1審被告Bから、電話で、1審原告及び公明党批判のビラを配布したいので知己の妙観講員にビラ配布の依頼をしてよいかという相談を受け、妙観講の講員が個人としてビラ配布をすることは構わないという趣旨で、1審被告Bの申出を了承した。しかし、その際、ビラの内容については、以前「創価学会による被害者の会」(以下「被害者の会」という。)の機関誌「自由の砦」に掲載された「C語録」と同じような内容であるということしか聞いておらず、写真が掲載されることは知らなかった。その後、妙観講本部に本件写真ビラが搬入された際も、1審被告Aは本件写真ビラを見ておらず、本件ビラ写真が掲載されていることは、本件写真ビラの配布を禁じる東京地方裁判所の仮処分決定が出た後に知ったものである。1審被告Aは、本件写真ビラに掲載された写真が著作権等侵害に当たるものであることも知らなかったし、知る機会もなかったのであるから、本件写真ビラの作成、配布による著作権等の侵害行為による責任はもとより、その幇助者としての責任も成立しない。 
(4) 権利濫用について(争点(4))
(1審被告B)
 本訴請求は、著作権侵害等に名を借りて言論活動を抑圧しようとするものであり、権利の濫用に当たるものとして許されない。本件各ビラは、Cの発言を国民に広く知らせ、1審原告及び公明党を政治的に批判するために作成、配布したものであり、そのようなビラについては、言論の自由が最大限尊重されなければならない。1審原告写真1は、「聖教グラフ」に掲載され、その後「グラフティ創価学会の現実 PART3」(丁1)、「C創価学会=週刊実話増刊号」(丁2)、「創価学会の光と影」(丁3)に転載されたが、これに対し1審原告は何の異議も述べていないから、著作権法上の権利がないことを自認しているに等しいか、又はその権利を放棄したものである。
 本件写真ビラについては、言論の自由の見地から総合的な価値判断を行い、フェアユースの法理によって、著作権侵害の成立を否定すべきである。
(5) 損害額について(争点(5))
(1審被告日蓮正宗)
 1審原告は、著作権法114条2項及び3項に基づく損害額の主張をするが、いずれも争う。1審原告写真1、2は、Cが本件ローブ(あるいは勲章)を贈呈されたことを機会に撮影された記念写真であって、営利を目的とするものではない上、1審原告によれば、同写真は1審原告にとってきわめて意義があるので1審原告の機関誌等に掲載、使用するつもりであったというのであるから、有償で第三者に貸し出すことが予定されていたものでもない。一方、1審被告Bないし「守る会」も本件各ビラを営利を目的として作成、配布したものではない。結局、本件においては、1審原告に何ら経済的損失が生じておらず、1審原告が侵害行為による損害を被ったということはできないから、損害額についての1審原告の主張は、前提を欠くものである。 
(1審被告B)
 著作権侵害による損害について、1審被告Bは、本件写真ビラの作成、配布によって何ら利益を受けていないから、著作権法114条2項を適用する余地はない。同条3項の「受けるべき金銭の額」を認定するに当たっては、著作物としての写真が利用される場合の一般的な使用料を基準とすべきであり、1審原告写真1が掲載されたのが雑誌であったことや、撮影者が聖教新聞社の記者であったことを考慮すると、新聞に掲載された写真を第三者が新聞社から提供を受けて利用する場合が参考とされるべきである。新聞に掲載された写真の許諾料は、比較的低廉である(数千円からせいぜい数万円の範囲)から、原判決認定の額(50万円)は高すぎる。しかも、本件写真ビラは、実際には、多くとも5000部程度しか配布されていないから、仮に著作権侵害が認められるとしても、「受けるべき金銭の額」は、3万1500円(朝日新聞の写真使用料)を超えることはない。
 著作者人格権侵害による損害について、1審原告主張の損害額は、何ら根拠がない。
第3 当裁判所の判断
1 1審原告写真1についての著作権の侵害について(争点(1)ア)
(1) 1審原告写真1の著作物性及び著作者について
 当裁判所も、1審原告写真1は、著作物性を有すると判断する。その理由は、この点に関する原判決説示(22頁12行目〜23頁14行目)のとおりであるから、これを引用する。また、上記引用に係る原判決の認定及び争いのない事実(原判決4頁7行目〜14行目)に照らせば、1審原告写真1は、1審原告の発意に基づきその業務に従事する者が職務上作成する著作物で、1審原告が自己の著作名義の下に公表するものであるから、他に別段の定めがない本件においては、著作権法15条1項に従い、1審原告写真1の著作者は1審原告と認めるのが相当である。
(2) 本件ビラ写真は、1審原告写真1の複製物又は翻案物といえるか
 本件ビラ写真は、1審原告写真1から被写体であるCの上半身部分を抜き出し、カラー写真を白黒写真としたものであり、上記の点以外に1審原告写真1に特段の変更を加えていない(争いのない事実、甲1、2)から、1審原告写真1を有形的に再製したもの(複製)というべきである。
 1審被告日蓮正宗は、本件ビラ写真は、背景を欠いた上半身だけであり、しかも白黒写真であって、背景や構図における創作的表現や撮影者が工夫したとする照明、光量、絞り等にかかわる創作部分を何ら利用しておらず、本件写真ビラが批判の対象としたCを特定するために必要な肖像部分を抽出して利用しているにすぎないなどとして、本件ビラ写真は1審原告写真1の複製物に当たらないと主張し、1審被告Bは、本件ビラ写真は、1審原告写真1の創作的価値を利用しておらず、Cの肖像としての同一性を確保するために使用されているにすぎないから、著作権侵害には当たらないと主張する。しかしながら、一般に、肖像写真は、被写体である人物をどのように表現するかを中心として、写真表現における創意工夫がされるものであるから、複製か否かを判断するに当たっては、人物を表現した部分に重きを置いて、著作物である写真の創作的特徴が複製を主張される写真に再現されているかどうかを検討することが許されるというべきである。上記観点から、1審原告写真1と本件ビラ写真とを対比観察すると、本件ビラ写真は、比較的鮮明な白黒写真であって、1審原告写真1の肖像部分のカラー画像を白黒画像に変えただけのものであることを一見して看取し得るものである上、具体的な表現形式という点でも、1審原告写真1における人物のポーズや表情はもとより、顔の陰影、人物が着用しているローブの状態など、1審原告写真1の撮影者が照明や光量、絞り等の工夫をすることによって表現した創作部分の特徴は、カラー写真が白黒写真に変更された後も、なお、相当程度忠実に再現され、実質的に維持されていると認められる。したがって、本件ビラ写真は、カラーが白黒になり、背景及び被写体である人物の下半身がカットされていても、なお、1審原告写真1の複製物に当たるということを妨げない。
(3) 本件写真ビラに本件ビラ写真を掲載することは、1審原告写真1の適法な引用(著作権法32条1項)として許されるか
ア 本件写真ビラは、原判決摘示(24頁9行目〜25頁7行目)のとおりの内容、態様のものであって、ビラの表面には、「公明党は、創価学会の教義(日本を創価王国にして、トップのC氏が最高権力者になる)を実現するために作られた政党です。」、「あなたは、こんな政党や宗教団体に、日本の命運を握られてもよい、と思いますか!?」、「NO!」などの文章が大書され(その文字、記号の一部は本件ビラ写真に重なっている。)、「私は日本の国主であり大統領であり精神界の王者であり最高権力者である!」、「デージンも何人か出るでしょう。日本一の創価学会ですよ!」と書いた吹き出しを付けた本件ビラ写真が、縦約17.5センチメートル、横約12.0センチメートルのビラ表面の面積の約15%を占める大きさで印刷され、ビラの裏面には、「創価学会・公明党のトップ語録」、「これが創価学会のホンネです!! 皆さん、この実態をご覧ください」との大見出しの下に、Cの発言が合計37箇所掲載されている。
イ 1審被告らは、本件写真ビラは、1審原告、C及び公明党を批判する目的でCの肖像を必要な範囲で引用しているものであるから、著作権法32条1項に規定する適法な引用として許容されるものであると主張する。しかしながら、本件写真ビラは、ビラ自体としては、1審原告、C及び公明党を政治的に批判することを目的としたものであるとしても、そこに掲載された本件ビラ写真は、ビラの表面に大きく目を引く態様で印刷されている上、1審原告写真1の被写体の上半身部分のみを抜き出し、1審原告写真1の創作意図とはむしろ反対の印象を見る者に与えることを意図したことをうかがわせる「私は日本の国主であり大統領であり精神界の王者であり最高権力者である!」、「デージンも何人か出るでしょう。日本一の創価学会ですよ!」などの揶揄的な内容の吹き出しを付したものであるから、このような態様による写真の掲載を、公正な慣行に合致し、かつ、政治的に批判する批評の目的上、正当な範囲内で行われた引用と解することはできない。
 本件ビラ写真を本件写真ビラに掲載することは、著作権法32条1項によって許される適法な引用には当たらない。
ウ 1審被告らは、また、本件ビラ写真を本件写真ビラに掲載したことは、フェアユースの法理の下で、正当な引用として許される旨主張する。しかしながら、著作物を引用して利用する場合における著作権と著作物の公正な利用との調整に関しては、著作権法32条において、引用が著作物の適法な利用として許されるための要件を具体的に規定していると解されるから、同規定の趣旨から離れて、米国著作権法上のフェアユースの法理の適用により、他人の著作物を自由に引用して利用することができると解することは相当ではない。この点に関する1審被告らの主張は、採用することができない。
(4) 小括
 以上(1)ないし(3)によれば、1審原告の許諾を得ずに本件ビラ写真を掲載した本件写真ビラを作成し、公衆に配布することは、1審原告写真1に対する1審原告の複製権及び譲渡権を侵害する。
2 1審原告写真1についての著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権)の侵害について(争点(1)ア)
 上記1(1)のとおり、1審原告写真1は著作物と認められるものであるところ、本件ビラ写真は、同(2)のとおり、1審原告写真1について、背景を消去し、被写体であるCの上半身の肖像のみを表した白黒写真とする変更を加えている上、同(3)のとおり、肖像部分の上に、文字、記号を重ね、さらに、Cの発言内容を記載したものと受け取られる吹き出しを書き加えることによって、全体として、1審原告写真1の創作意図を損なうものとなっている。また、本件ビラ写真が掲載されている本件写真ビラには、著作者である1審原告が表示されていない(甲1)。
 したがって、1審原告の同意を得ることなく本件ビラ写真を掲載した本件写真ビラを作成し、公衆に配布することは、1審原告写真1について1審原告が有する同一性保持権及び氏名表示権を侵害する。
3 1審原告写真2についての著作権及び著作者人格権の侵害について(争点(1)イ)
(1) 1審原告写真2の著作物性及び著作者について
 当裁判所も、1審原告写真2は著作物性を有すると判断する。その理由は、原判決説示(26頁16行目〜27頁8行目)のとおりであるから、これを引用する。また、上記引用に係る原判決の認定及び争いのない事実に照らすと、上記1(1)と同様に、1審原告写真2の著作者は1審原告と認められる。
(2) 1審原告写真2についての複製権、翻案権、譲渡権、同一性保持権及び氏名表示権侵害の有無
 当裁判所も、本件ビラ絵を掲載した本件絵ビラを作成し、公衆に配布する行為は、1審原告写真2についての複製権、翻案権、譲渡権、同一性保持権及び氏名表示権のいずれも侵害するものではないと判断する。その理由は、以下のとおり付加するほかは、原判決説示(27頁11行目〜29頁6行目)のとおりであるから、これを引用する(ただし、28頁下から2行目の「本件写真2」を「1審原告写真2」と訂正する。)。
 1審原告は、1審原告写真2は、背景、照明、光量、絞り等の工夫のみならず、被写体であるCと大十字勲章の組合せや配置、ポーズ、表情等にも工夫が加えられているから、これらも表現形式上の本質的特徴部分に当たるとした上、1審原告写真2のうちの肖像部分を細部までトレースして作成された本件ビラ絵からは、1審原告写真2の上記本質的特徴部分が看取されるから、本件ビラ絵は1審原告写真2の複製物又は翻案物に当たると主張する。
 しかしながら、本件ビラ絵が、1審原告写真2におけるCの肖像部分の輪郭等を手書きでなぞって線で表現するという表現形式を採ることによって、Cの顔の表情、輪郭等の1審原告写真2における具体的な表現上の特徴をすべて捨象し、それらの特徴を感得させないものとなっていることは、上記引用に係る原判決説示のとおりというべきである。そして、被写体である人物とその人物の装用品等の組合せや配置、人物のポーズ、表情等は、1審原告写真2のような肖像写真の撮影において、常に考慮される要素であるから、それらが具体的に表現された表現形式を抜きに、それ自体として写真の表現における本質的な特徴部分と評価すべきものではない。本件ビラ絵は、上記のとおり、写真を手書きの線による表現へと変更することによって、1審原告写真2における具体的な表現上の特徴がすべて捨象されているものであるから、1審原告写真2の表現上の本質的な特徴を直接感得させるものとはいえず、1審原告写真2の複製、翻案のいずれにも当たらないというべきである。
(3) 小括
 以上のとおりであるから、本件ビラ絵を掲載した本件絵ビラを作成、配布する行為は、1審原告写真2の著作権及び著作者人格権を侵害するものではない。
4 1審被告Bの1審原告写真1に対する著作権及び著作者人格権の侵害について(争点(2))
(1) 1審被告Bは、1審被告日蓮正宗の信者組織である妙観講の構成員であり、平成11年に設立された政治団体「守る会」の代表者であること、1審被告Bが、平成13年5、6月ころ、本件ビラ写真を掲載した本件写真ビラを作成し、これを妙観講の講員に依頼して東京都内において公衆に配布させたこと、その際、1審原告から上記行為に対する許諾を得ていないことは、当事者間に争いがない。
(2) 本件写真ビラの作成、配布の具体的経緯について、上記争いのない事実等並びに証拠(甲1〜3、31、丙1、3−1、2、丙5、丙6−1、2、丁18、当審における1審被告B本人及び同A本人)によれば、以下の事実が認められる。
 平成13年6月に東京都議会議員選挙が、同年7月に参議院議員選挙が予定されていた。これらの選挙に向けて、1審被告Bは、同人が主催する「守る会」において、1審原告及び公明党を批判する内容のビラを100万枚作成し、同年5月下旬ころに配布することを企画した。それらのビラの配布については、妙観講の講員の協力を得て、そのすべてを配布すること、また、印刷したビラの配布のための保管及び作業場所として、東京都杉並区内の妙観講本部を使用すること予定した。
 1審被告Bは、1審原告やCから名誉毀損による責任を追求されないようにとの配慮の下に、上記ビラには、以前、自ら執筆して「自由の砦」に掲載した「創価学会・公明党のトップ語録」に収録したCの発言を、そのまま、あるいは表現をやや和らげて記載することとし、また、Cの発言であることを明確に示すために、写真を掲載することとした。
 1審被告Bは、同年5月1日に、本件写真ビラの文章部分の原稿を印刷会社に入稿し、さらに、ビラに掲載するCの写真を選んで、本件ビラ写真の写真原稿を準備した上、同月7日、校正済みの文章原稿と本件ビラ写真の写真原稿を印刷会社に渡し、そのころ、印刷会社によって印刷が開始された。本件写真ビラの印刷は同月21日に完成し、1審被告Bは、そのうち99万枚を杉並区西荻窪所在の妙観講本部に、1万枚を「被害者の会」の事務所に送付するよう手配した。同月23日夜に、妙観講本部で1審被告Aのほか1審被告Bも出席する妙観講の班長指導会が予定されており、本件写真ビラ99万枚は、同日夕刻に、妙観講本部の1階ロビー横の和室に搬入された。本件写真ビラは、同月24日から25日にかけて、妙観講の講員によって東京都内各所で配布されたが、同月25日午後1時ころ、本件写真ビラの配布を禁止する東京地方裁判所の仮処分決定が1審被告Bに送達されたため、その直後に配布は中止された。
(3) 上記認定事実によれば、1審被告Bは、1審原告写真1を複製した本件ビラ写真を掲載した本件写真ビラを作成し、配布したことにより、1審原告写真1について1審原告が有する著作権(複製権、譲渡権)及び著作者人格(同一性保持権、氏名表示権)を侵害したものであり、それらの侵害につき、少なくとも過失があるというべきである。
 なお、1審被告Bは、当審における本人尋問において、本件ビラ写真は、デザイナー某に依頼して作成させたものであり、その依頼の際、Cの写真として、平成2年7月16日継命新聞社発行の「グラフティ創価学会の現実 PART3」(丁1)に掲載された写真を指定したが、同写真が鮮明ではなかったため、同デザイナーが自身の判断により、1審原告発行の雑誌「聖教グラフ」同月11日号(甲2)に掲載されていた同一の画像がより鮮明な写真を用いて本件ビラ写真を作成したと供述するが、仮にそうであったとしても、同1審被告の指示により1審原告写真1の複製に当たる本件ビラ写真が作成されたことに変わりはないから、同1審被告に著作権等侵害について少なくとも過失があるとの上記判断は左右されない。
5 1審被告日蓮正宗及び同Aに対する請求について(争点(3))
(1) 前提となる事実
 1審原告は、1審被告日蓮正宗及び同Aに対しても、著作権法112条に基づき本件各ビラの配布等の差止等を求め、また、民法の不法行為の規定に基づき損害賠償の支払を求めているので、まず、1審被告ら相互の関係及び1審原告と1審被告らとの対立の経緯についてみると、この点に関する事実認定は、原判決説示(29頁下から6行目〜34頁11行目)のとおりである(ただし、原判決29頁下から6行目〜5行目の括弧内を「甲7〜16、18〜23、32〜41、43〜45、48、49、51〜67、70〜74、丁12、当審における1審被告B本人及び同A本人」に、32頁下から6行目の「根本」を「根元」に、33頁1行目の「正法公布」を「正法広布」にそれぞれ改める。)から、これを引用する。
(2) 本件写真ビラの作成、配布に対する1審被告Aの関与について
ア 上記4(2)に認定した本件写真ビラの作成、配布の具体的な経緯と、上記(1)のような1審被告ら相互の関係及び1審原告と1審被告らとの対立の経緯を総合すると、本件写真ビラの作成、配布について、1審被告Aは、1審被告Bが、上記4(2)のとおり平成13年6月、7月の選挙に向けて1審原告及び公明党を批判する内容のビラを作成、配布する準備をしており、ビラを妙観講の講員の手で配布し、ビラの保管及び配布作業の場所には妙観講本部を使用する予定であることを、遅くとも本件写真ビラの印刷開始時期である同年5月7日より前の時点で、1審被告Bから聞かされており、ビラ配布のための保管及び作業場所として妙観講本部を使用することを同人から要請され、これを了承したものと認められる。
イ この点につき、1審被告日蓮正宗及び同Aは、1審被告Aは、平成13年5月10日に、1審被告Bから、電話で、妙観講の講員に「守る会」が発行する1審原告及び公明党を批判するビラの配布を依頼してもよいかとの相談を受け、講員が個人としてビラを配布することは構わないとしてこれを了承したことはあるが、それ以外は無関係であって、上記ビラの保管場所として妙観講本部を提供したこともなく、本件写真ビラの作成、配布には一切関与していないなどと主張し、丙5及び丁18にはこれに沿う記載があり、1審被告A及び同Bも、当審における各本人尋問において、これに沿う供述をしている。しかし、100万枚という大量のビラの配布には、相当数の人員と期間が必要と考えられるから、1審被告Bが、ビラ配布のための人員や保管場所等を1審被告Aの了承を得てあらかじめ確保することなく、本件写真ビラの印刷を発注したとはにわかに考え難く、同月21日に完成した本件写真ビラのうち99万枚が同月23日に印刷会社から直接、妙観講本部に搬入され、その翌日から配布が開始された事実も考え合わせると、1審被告A及び同Bの上記供述内容は、不自然であって直ちに信用することができない。
ウ 他方、1審原告は、1審被告Aの関与について、同1審被告は、1審被告日蓮正宗の決定した方針に従い、1審被告Bと本件写真ビラを作成することを共謀し、1審被告Bとの間で綿密なビラ配布計画を作成した上、本件写真ビラを妙観講の講員に指示して組織を挙げて配布させた旨、また、100万枚もの大量のビラを配布するためには、綿密な配布計画を作成し、妙観講の組織を挙げての配布体制を組むことが不可欠であり、それらは妙観講の責任者である1審被告Aの関与なしには不可能であるから、1審被告Aが本件写真ビラの作成、配布の企画及び実行に深く関与していたことは明らかである旨主張する。
 確かに、1審被告Aは、1審被告日蓮正宗の被包括法人理境坊に所属する妙観講の講頭として、妙観講を代表し、講務を掌理する立場にあったこと、本件写真ビラの配布のための保管及び作業場所として妙観講本部が使用されたこと、本件写真ビラのうち99万枚が同本部に搬入された平成13年5月23日の当日に開かれた班長指導会には、1審被告Aが1審被告Bとともに出席していることは、上記認定のとおりである。
 しかしながら、他方、証拠(甲9、丙5、丁18、当審における1審被告B本人及び同A本人)によれば、妙観講の講員数は全国で約1万人に上り、その組織は、平成13年5月当時、講頭を筆頭にして、その下に支部が6、その下に支区が22、その下に活動の最小単位である班が350くらいあったこと、1審被告Bは、妙観講の講員として、支区の部長の補佐役である幹事にまで昇進したが、上記4(1)のとおり平成11年に自ら政治団体「守る会」を設立して代表者に就任し、1審原告及び公明党の内情を暴いたビラを作成して一般市民に配布するなどの政治活動に力を注ぐようになったため、平成12年に支区の幹事から班長(受持ち講員数20人)に降格され、妙観講の会合にもほとんど出なくなったこと、1審被告Bが本件写真ビラの保管等のため上記のとおり妙観講本部を使用したのは、班長指導会が同所で開かれる当日に合わせて搬入することが、大量のビラの配布について講員の協力を得る上で便宜であるとの考慮が働いたものであることが認められる。そして、1審被告日蓮正宗と1審原告との間に教義上の激しい対立関係が続いており、妙観講の機関誌「妙観」に、「創価学会の動きを油断なく監視し、学会による政権取りや正法破壊の蠢動は、断じて阻止していかねばならない」(甲139−3)、「正法を衰微破壊しようとしている創価学会を放置することなど、断じてできません」(甲140−2)などの、1審原告との戦いを呼び掛ける妙観講の講頭や副講頭の発言が記事として掲載されていることに照らすと、1審被告日蓮正宗の信者組織である妙観講の講員は、1審被告Bの直接の依頼に対しても、1審原告及び公明党を批判するビラなどの配布に積極的に協力するものと推測されるから、本件写真ビラの配布計画に1審被告Aが参画しない限り、本件写真ビラの作成、配布を実現することができないとまで断定することは困難である。その他、本件写真ビラが、1審被告Aの了解の下に、妙観講本部に搬入され、妙観講の講員によって配布されたことを含めて、本件写真ビラの作成、配布に関連して証拠上認められる一切の事情を勘案しても、1審被告Aが、1審被告日蓮正宗の決定した方針に従い、本件写真ビラを作成することについて1審被告Bと共謀し、同1審被告との間で綿密なビラ配布計画を作成した上、妙観講の講員に指示して妙観講の組織を挙げて本件写真ビラの配布を実行させたとの1審原告の主張事実を推認するには足りないというべきである。
エ したがって、本件写真ビラの作成、配布に関する1審被告Aの関与は、上記ア認定の限度で認めることができるにとどまり(なお、本件写真ビラの内容について、1審被告Aがどの程度の認識を有していたかについては、後記(3)で検討する。)、更に進んで、1審被告Aが、本件ビラ写真の作成ないし同写真を掲載したビラの作成、配布について、これを被告Bと共謀して行ったとか、その行為主体であるということはできない。
(3) 1審被告Aの幇助者としての責任について
ア 1審原告は、1審被告Aについて、本件写真ビラの作成、配布による著作権及び著作者人格権の侵害についての幇助者としての責任を主張しているので、更に検討すると、本件写真ビラの作成、配布についての1審被告Aの具体的な関与は、上記(2)アのとおりであり、1審被告Aが、1審被告Bの依頼に応じて本件写真ビラ配布のための保管及び作業場所として妙観講本部を使用することを了承し、その了承の下に、同本部が保管及び作業場所として使用されたことによって、本件写真ビラの配布(譲渡権侵害)が容易となったということができる。したがって、1審被告Aには、本件写真ビラの配布を客観的に容易にするという意味における幇助行為があったというべきである(なお、1審被告Aが本件写真ビラの保管及び配布作業のために妙観講本部を使用することを了承したことは、本件写真ビラの「作成」についての幇助とは認められない。)。
イ ところで、本件写真ビラの配布に関して、1審被告Aに著作権等侵害の幇助者としての責任が成立するためには、侵害の幇助とされる行為があった時点で、1審被告Aに、著作権の侵害についての主観的要件が備わっていることが必要である。そこで、1審被告Aが本件写真ビラの内容について、どの程度の認識を持っていたかについてみると、1審被告Aは、1審被告Bから、「守る会」が発行するビラの配布のための保管、作業場所として妙観講本部を使いたいという要請を受けた際に、そのビラがCの発言等を引用して1審原告及び公明党を批判する内容のものであって、Cの顔写真を掲載するという程度のことは、知らされていたと推認するのが自然である。しかし、それ以後、印刷済みの本件写真ビラが妙観講本部に搬入されるまでの間に、1審被告Aが、ビラに掲載するCの写真を見せられたり、写真が具体的にどのようなものであるかの報告を受けたりして、本件写真ビラに掲載される写真の具体的内容を知っていたことを認めるに足りる証拠はない。
ウ この点について、1審原告は、従来、「守る会」が選挙に向けて作成した1審原告及び公明党批判のビラは、妙観講の講員等によって配布されてきたこと、過去に配布された「守る会」のビラ(甲19〜21)における1審原告及び公明党批判の内容が1審被告日蓮正宗に関連する各種発行誌における批判内容と共通することなどを挙げ、1審被告Aは、本件写真ビラについても、具体的内容を認識した上で、その作成、配布に深く関与していたと主張する。
 しかし、1審被告Aが「守る会」の上記ビラの作成に関与してきたことを認めるに足る証拠はなく、むしろ、当審における1審被告B本人及び同A本人の各供述内容に照らすと、従来から、「守る会」名義で作成するビラの内容は、1審被告Bの判断によって決められたものであったことがうかがわれるから、本件写真ビラの内容の詳細や写真の有無及びその具体的態様を、1審被告Aが1審被告Bから知らされていなかったとしても不自然ではない。特に、写真については、「守る会」のビラの目的が1審原告及び公明党の批判にあり、掲載する写真はCであることがビラ読者に分かる程度のものであれば足りるのであるから、1審被告Aにおいても、写真はその程度のものと認識し、当該写真に対する1審原告の著作権等はもとより、その具体的な態様や入手経路についても格別の関心を持っていなかった可能性は十分にあるというべきである。そうすると、1審被告Bからの要請を受けて1審被告Aが本件写真ビラの配布のための保管場所に妙観講本部を使うことを了承した際、1審被告Aには、ビラに掲載する写真(本件ビラ写真)が、1審原告の著作権等を侵害する行為によって作成されたものであることないしその蓋然性が高いことの認識があったとは認められない。
 また、印刷の完成した本件写真ビラが平成13年5月23日夕刻に妙観講本部に搬入された後については、1審被告Aが本件ビラ写真を見る機会があったのではないかとの疑いは残るが、本件ビラ写真が著作権等を侵害するものであることについては、1審原告写真1と比較したときに初めて分かるという性質のものであるから、1審被告Aが本件写真ビラに本件ビラ写真が掲載されているのを見たとしても、そのことのみをもってしては、同1審被告が、本件写真ビラに掲載された本件ビラ写真が著作権等を侵害する行為によって作成されたものであることないしその蓋然性が高いことを認識しつつ、妙観講の講員による本件写真ビラの配布を容認したということはできないし、上記のような違法な結果の発生を認識し得べきであったのに認識しなかったということもできない。
エ 以上によれば、1審被告Aについては、本件写真ビラの配布による著作権侵害(譲渡権侵害)の幇助者としての責任が生じるための主観的要件が欠けているというべきである。
(4) 1審被告Aに対する請求について
ア 損害賠償請求について
(ア) 複製権及び譲渡権の侵害に基づく責任
 本件写真ビラは、1審被告Bが主体となって、作成(複製権侵害)を企画、実行したものであり、1審被告Aは、これについて1審被告Bと共謀したとも、作成に関与したとも認められないことは上記のとおりであるから、本件写真ビラの作成(複製権侵害)については、1審被告Aは、民法719条1項の共同不法行為者及び同条2項の幇助者のいずれにも当たらない。
 次に、本件写真ビラの配布(譲渡権侵害)については、上記のとおり、1審被告Aの共謀の事実は認められないから、1審被告Aは、民法719条1項の共同不法行為者としての損害賠償責任を負わない。また、1審被告Aは、1審被告Bの申し出に応じて、本件写真ビラの保管場所を提供し、また、妙観講の講員による配布を了承したが、その際、本件写真ビラに掲載される(又はされている)写真が著作権等を侵害する行為によって作成されたものであることないしその蓋然性が高いことの認識があったとはいえず、そのような違法な結果の発生を認識し得べきであったのに認識しなかったということもできないことは、上記(3)ウのとおりであるから、1審被告Aに、侵害の幇助者として、民法719条2項に基づく損害賠償責任があるということはできない。
(イ) 著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)の侵害に基づく責任 上記(ア)と同様の理由により、1審被告Aに共同不法行為者ないし幇助者としての責任があるということはできない。
イ 本件写真ビラの配布の差止め及び廃棄等請求について
 1審被告Aは、本件写真ビラの作成、配布の行為主体ということはできず、また、本件全証拠によっても、同1審被告について、1審原告写真1に対する1審原告の著作権及び著作者人格権を侵害するおそれがあるとは認められないから、同1審被告に対する本件写真ビラの配布の差止め、廃棄及び回収請求は、失当である。
(5) 本件写真ビラの作成、配布に対する1審被告日蓮正宗の関与について
ア 上記4(2)及び5(2)に認定のとおり、本件写真ビラは、1審被告Bが作成し、1審被告Aの了解の下に、1審被告Bからの依頼を受けた妙観講の講員が配布したものと認められるが、本件全証拠によっても、それら一連の過程において、1審被告日蓮正宗が、本件写真ビラの作成、配布の企画及び実行の行為主体と評価し得る態様で関与したことを認めるに足りない。
イ この点につき、1審原告は、@1審被告日蓮正宗は、宗を挙げて1審原告及び公明党に対する批判活動を行い、信者に対しても、1審原告の誤りを指摘し、周知させることが教義の実践活動であると指導してきたのみならず、平成5、6年ころからは、1審原告が政権の中枢に入ることを阻止することを「護法の戦い」と位置付けて、選挙の際に1審原告及び公明党の批判を行うことを活動の基本方針に据えてきた、A「守る会」は、1審原告及び公明党を批判するビラの作成、配布等を活動の中心とする団体であるが、人的にも資金的にも組織としての実態はなく、実体は、1審被告日蓮正宗と同一である、B「守る会」名義のビラの作成費用は、1審被告日蓮正宗が負担してきた、C従来、「守る会」名義のビラは、1審被告日蓮正宗の僧侶や妙観講を中心とする信者組織によって配布されてきた、D1審被告日蓮正宗の準機関誌である「慧妙」には、「守る会」のビラとほぼ同一論調の1審原告批判が繰り広げられており、平成13年4月1日号の「慧妙」(甲36)には、「C創価学会の日本国支配だけは、絶対に阻止しなければならない」等と呼び掛ける記事が掲載されているなどと指摘し、これらの事実を総合すれば、1審被告日蓮正宗が、本件写真ビラの作成、配布について、1審被告B及び同Aと共謀し、その実行に深くかかわったことは明らかである旨主張する。
 確かに、1審原告が指摘する上記@の点に関しては、1審被告日蓮正宗の代表役員であるE及び総監であるFが、1審被告日蓮正宗の会員等に対して、1審原告を批判したり、1審原告の誤りを指摘し、周知させることが、1審被告日蓮正宗の教義の実践であると発言してきたことが認められ、また、1審被告日蓮正宗の僧侶、信者等に広く読まれている新聞「慧妙」に、1審原告及び公明党を激しく批判する論調の政治的な記事が多数掲載されてきたことは認められるが、それらの一般的な事実だけでは、本件写真ビラの作成、配布という特定の具体的な行為について、1審被告日蓮正宗が指示、共謀その他の形で主体的な関与をしたと推認するには不十分である。また、上記Aについてみると、人的組織の点で、「守る会」自体が100万枚もの大量のビラを配布する人員を有していないこと自体は、「守る会」が1審被告日蓮正宗と実質的に同一であるとする根拠となるわけではないし、資金に関しては、1審被告Bの主張、行動に賛同する者からの援助等による活動資金の調達も可能であること(現に、多くの政治団体がその主張、行動に賛同する者からの援助等により、資金を調達し、活動を行っていることは当裁判所に顕著であるが、そのことにより、政治団体としての実体を否定されるものではない。)を併せ考えると、「守る会」が1審被告日蓮正宗と実質的に同一であると認めることはできない。上記Bの点についても、「守る会」の発行するビラの作成費用を1審被告日蓮正宗が負担してきたことを認めるに足りる証拠はない。上記Cの点については、「守る会」は、本件写真ビラ以前にも、1審原告及び公明党を激しく批判する記事を掲載した三種のビラ(甲19〜21)を作成、配布したことが認められるが、それらの作成、配布に1審被告日蓮正宗が関与したと認めるに足りる証拠はない。また、平成12年6月の衆議院議員総選挙に際して、「守る会」作成の「創価学会・公明党による日本支配を許すな」との見出しのビラ(甲21)の配布を依頼する文書が「守る会」から、全国の1審被告日蓮正宗の指導教師に宛てて送付されたことは原判決認定(34頁5行目〜9行目)のとおりであるが、この事実から1審被告日蓮正宗が「守る会」発行のビラの配布を同宗の僧侶らに指示したと推認することはできない。さらに、上記Dの点に関しては、「慧妙」は、妙観講の機関誌である「妙観」の編集スタッフと1審被告日蓮正宗の甲信布教区で発行されていた「広布」という雑誌の編集スタッフとが合流して発行することになった新聞(平成5年1月発刊、月2回発行)であって、1審被告日蓮正宗のEが寄稿することもあり、1審被告日蓮正宗の僧侶、信者等を読者としていることが認められる(甲18、弁論の全趣旨)が、「慧妙」に、「守る会」のビラと内容、論調の類似する1審原告及び公明党批判の記事が掲載されていても、主義、所見を同じくする者が作成する記事、使用する写真等は、相互に影響し合うことなどにより、その内容が類似することが十分にあり得るから、内容の類似性を根拠として、本件写真ビラの作成、配布に1審被告日蓮正宗が関与していると推認することはできない。
 その他、1審原告の主張に基づき本件全証拠を検討しても、本件写真ビラの作成、配布につき、1審被告日蓮正宗が1審原告の主張するような態様で関与したと推認するには不十分である。
(6) 1審被告日蓮正宗に対する請求について
ア 損害賠償請求について
(ア) 共同不法行為者としての責任
 本件写真ビラの作成は、1審被告Bにおいて発案、準備し、印刷された同ビラの配布は、日蓮正宗の信者団体である妙観講の講員が行ったものであるところ、本件全証拠によっても、1審被告日蓮正宗がそれらにつき本件写真ビラの作成、配布の主体であると評価し得る程度に関与した事実を認めることはできないことは、上記(5)のとおりである。したがって、1審被告日蓮正宗が、自らの行為による共同不法行為者(民法719条1項)としての損害賠償責任を負うということはできない。
(イ) 使用者責任について
 上記のとおり、1審被告Aは、著作権及び著作者人格権の侵害についての行為主体であるともこれを幇助した者であるともいえないから、1審被告日蓮正宗は、1審被告Aの不法行為責任の成立を前提とする民法715条の使用者責任を負うものではないというべきである。
イ 本件写真ビラの配布の差止め及び廃棄等請求について
 1審被告日蓮正宗は、本件写真ビラの作成、配布の行為主体ということはできず、また、本件全証拠によっても、同1審被告について、1審原告写真1に対する1審原告の著作権及び著作者人格権を侵害するおそれがあるとは認められないから、同1審被告に対する本件写真ビラの配布の差止め、廃棄及び回収請求は失当である。
ウ まとめ
 以上のとおり、1審原告写真1についての著作権及び著作者人格権侵害に基づく1審被告A及び1審被告日蓮正宗に対する本訴請求は、いずれも理由がない。
6 1審被告Bの権利濫用の主張について(争点(4))
 1審被告Bは、1審原告は、専ら1審被告Bの正当な言論活動を抑圧、妨害する目的で、著作権及び著作者人格権を行使しており、同権利行使は権利濫用に当たると主張する。しかし、1審原告写真1が、「聖教グラフ」に掲載され、その後「グラフティ創価学会の現実 PART3」(丁1)、「C創価学会=週刊実話増刊号」(丁2)、「創価学会の光と影」(丁3)に転載されたが、これに対し1審原告が何の異議も述べていないからといって、そのことから直ちに、1審原告が1審原告写真1に対する著作権法上の権利がないことを自認し、あるいはその権利を放棄したということはできない。そして、本件写真ビラの作成、配布が1審原告の有する著作権及び著作者人格権を侵害していることは前示のとおりであり、また、1審原告が同侵害の排除と侵害による損害の回復を求めて本訴を提起していることは明らかであるから、1審被告Bに対する1審原告の本訴による権利の行使が、権利の濫用に当たるということはできない。
7 1審被告Bの賠償すべき損害額について(争点(5))
(1) 1審原告写真1に対する著作権(複製権、譲渡権)侵害による損害額
ア 著作権法114条2項による損害額
 1審原告は、本件写真ビラの作成により「守る会」が得た利益の額は少なくとも500万円を下らないと主張し、著作権法114条2項に基づき上記500万円を1審原告が受けた損害の額として主張する。しかし、1審原告写真1を商業的に利用しているとは認められない1審原告につき、「守る会」が得た利益を損害と推定してよいかという点は措くとしても、本件写真ビラを作成し配布したことによって、「守る会」が利益を得たことを認めるに足る証拠はない。したがって、同項による損害額の算定の主張は失当である。
イ 著作権法114条3項による損害額
 そこで、1審原告写真1についての著作権の行使につき受けるべき金銭の額について検討すると、証拠(甲124〜126、丁21−1〜3)によれば、写真の使用についての使用料は、一般に、葉書、チラシ等への使用の場合で5〜6万円前後、PR誌等への使用で20万円前後、新聞記事写真の使用料は数万円程度であることが認められる。この事実に、@1審原告写真1を複製した本件ビラ写真を掲載した本件写真ビラは100万枚作成されたが、配布されたのは、そのうちの一部であること、A同ビラは無償で配布されるもので、商業的な目的はないこと、B1審原告写真1は、Cが本件ローブを贈呈されたことを機会に撮影されたものであり、商業的利益を得る目的で撮影されたものではないこと等を併せ勘案すると、本件写真ビラへの1審原告写真1の利用につき1審原告が受けるべき金銭の額としては、50万円をもって相当と認める。
 1審被告Bは、1審原告写真1は商業的利用を予定して撮影されたものではなく、有償で第三者に利用されることを予定していないから、1審原告には経済的損失が生じておらず、損害が発生していない、許諾料の相場は数万円程度であるからこれに準じた算定がされるべきであるなどと主張する。しかし、著作権法114条3項の「受けるべき金銭の額」は、著作権を侵害された者に対して最低限の賠償を保障する性質のものであって、著作権者が自ら著作物の商業的利用を予定しているか否かにかかわらず、当該著作物の使用について許諾をするとした場合の客観的に妥当な額を損害として認める趣旨のものと解されるから、商業的利用を予定していなかったから損害の発生がないということはできない。また、本件写真ビラにおいては、1審原告写真1を複製したものに吹き出しを付加するなど、撮影者の創作意図に反することを殊更に意図した形態で1審原告写真1が利用されているから、著作権者が受けるべき金銭の額は、常識的な範囲内の利用行為を想定して行われる通常の許諾の場合における金額と同一に論じることはできないというべきである。
(2) 1審原告写真1についての著作者人格権侵害による損害額
 本件に現れた一切の事情を総合考慮すると、1審原告写真1の著作者人格権侵害による損害額としては、50万円が相当である。
8 1審被告Bに対する差止請求について
 本件写真ビラは100万枚作成され、そのうちの一部は配布されたが、配布禁止の仮処分決定が1審被告Bに送達された直後に配布が中止されたことは、上記4(2)に認定のとおりである。このうち配布されなかった本件写真ビラについては、これがすべて廃棄されたとする証拠(丁17、19−1〜17、当審における1審被告B本人)もあるが、たやすく信用し難く、他に、上記未配布分がすべて廃棄されたことを認めるに足りる証拠はない。そして、1審被告B及び「守る会」と1審原告との対立の経緯にかんがみると、1審被告Bは、上記未配布に係る本件写真ビラを配布し、1審原告写真1に対する1審原告の著作権及び著作者人格権を侵害するおそれがあると認められるから、当該ビラについてはその廃棄義務を負うというべきである。
 1審原告は、1審被告Bに対しては、差止請求権に基づき、既に配布済みの本件写真ビラの回収も命じるべきであると主張(なお、1審原告は、原判決は、結論部分では1審被告Bに対する回収義務を認めるが、主文では脱漏している旨指摘する。しかしながら、原判決には、回収義務の要件を認定した記載はなく、原判決42頁5行目の「回収及び廃棄並びに、」は、「廃棄、及び」の誤記と認める。)する。しかしながら、著作権法112条2項にいう「侵害の予防に必要な措置」とは、差止請求権の行使を実効あらしめるものであって、かつ、それが差止請求権の実現のために必要な範囲内のものであることを要するものと解するのが相当である(特許法100条2項に関する最高裁平成11年7月16日第二小法廷判決・民集53巻6号957頁参照)。本件において、既に配布済みの本件写真ビラの回収請求は、差止請求権の実現のために必要な範囲を超えることが明らかであるから、「侵害の予防に必要な措置」ということはできず、1審原告の上記主張は、採用することができない。
9 結論
 以上によれば、1審原告の請求中、1審被告Bに対する請求は、1審原告写真1についての著作権及び著作者人格権の侵害に基づいて、本件写真ビラの配布の差止め及び廃棄、並びに、同写真の著作権及び著作者人格権の侵害に基づく損害として、各50万円(合計100万円)の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。また、1審原告の1審被告日蓮正宗及び同Aに対する請求は、いずれも理由がない。
 よって、1審被告日蓮正宗及び同Aの本件各控訴に基づき、原判決主文第3項中、同1審被告らの各敗訴部分を取り消し、1審原告の同1審被告らに対する請求をいずれも棄却し、1審原告及び1審被告Bの本件各控訴はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。  

東京高等裁判所知的財産第2部
 裁判長裁判官 篠原勝美
 裁判官 古城春実
 裁判官 岡本岳
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