判例全文 line
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【事件名】アニメ声優の「声の使用料」請求事件(2)
【年月日】平成16年8月25日
 東京高裁 平成15年(ネ)第6051号 各ビデオ化使用料請求控訴事件
 (一審・東京地裁平成12年(ワ)第2729号、平成15年(ワ)第2305号)

判決
控訴人ら・被控訴人ら(原告ら) 甲野花子<ほか三五九名>(以下「一審原告ら」という。)
訴訟代理人弁護士 中野麻美
同 森真子
被控訴人(被告) 日本アニメーション株式会社(以下「一審被告日本アニメ」という。)
代表者代表取締役 本橋浩一
訴訟代理人弁護士 青山正喜
控訴人(被告) 音響映像システム株式会社(以下「一審被告音響映像」という。)
代表者代表取締役 中島順三
訴訟代理人弁護士 橋本栄三


主文
一 一審原告らの本件控訴に基づき原判決主文第二項を取り消す。
二 一審被告日本アニメは、一審原告らに対し、別紙ビデオ化使用料個人別集計表「個人計」欄記載の各一審原告に対応する金員及びこれに対する同表原告番号欄一番から三八一番まで記載の各一審原告(欠番を除く。)については平成一一年一〇月四日から、同表原告番号欄三八二番及び三八三番記載の各一審原告については平成一五年二月一五日からそれぞれ完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。
三 一審被告音響映像の本件控訴を棄却する。
四 訴訟費用は、第一、二審を通じて、一審被告らの負担とする。
五 上記二は、仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 控訴の趣旨
一 一審原告ら
(1)原判決主文第二項を取り消す。
(2)一審被告日本アニメは、一審被告音響映像と連帯して、一審原告らに対し、別紙ビデオ化使用料個人別集計表「個人計」欄記載の各一審原告に対応する金員及びこれらに対する一審原告番号一番から三八一番までの各一審原告(欠番を除く。)については、平成一一年一〇月四日から、一審原告番号三八二番及び三八三番の各一審原告については平成一五年二月一五日からそれぞれ完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。
(3)訴訟費用は、第一、二審とも一審被告日本アニメの負担とする。
(4)仮執行宣言
二 一審被告音響映像
(1)原判決中一審被告音響映像の敗訴部分を取り消す。
(2)上記敗訴部分に係る一審原告らの請求を棄却する。
(3)訴訟費用は、第一、二審とも、一審原告らの負担とする。
第二 原判決(主文)の表示
一 一審被告音響映像は、一審原告らに対し、別紙ビデオ化使用料個人別集計表「個人計」欄記載の各一審原告らに対応する金員及びこれらに対する一審原告番号一番から三八一番までの各一審原告(欠番を除く。)については平成一一年一〇月四日から、一審原告番号三八二番及び三八三番の各一審原告については平成一五年二月一五日からそれぞれ完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。
二 一審原告らの一審被告日本アニメに対する請求のうち、債権者代位権に基づく請求を除く請求については、これを棄却し、債権者代位権に基づく請求については、当該請求に係る訴えを却下する。
三 訴訟費用は、一審原告らと一審被告音響映像との間では、一審原告らに生じた費用については、これを二分し、その一を同一審被告、その余を一審原告らの、同一審被告に生じた費用については、同一審被告の、一審原告らと一審被告日本アニメとの間では、いずれも一審原告らの各負担とする。
四 上記一について、仮執行宣言。
第三 事案の概要
一 本件は、一審被告アニメの委託に基づき一審被告音響映像が音声を製作したテレビ放送用アニメ作品に、声優として出演した本人ないし出演した者の相続人である一審原告らが、放送後、同作品がビデオ化されて販売されたことに伴い、一審被告音響映像に対しては、第一に出演契約、第二に団体協約、第三に商慣習を、それぞれ根拠として、テレビ放送以外の目的に利用された場合には、その使用料(以下「目的外使用料」という。)を一審原告ら声優(出演した声優である一審原告ら本人及び一審原告らの被相続人である出演声優をいう。以下同じ。)に支払うべき義務があると主張して、一審被告日本アニメに対しては、第一に前記団体協約、第二に第三者のためにする契約にそれぞれ基づく一審被告音響映像の支払に係る担保責任、第三に一審被告音響映像を債務者とする債権者代位権の行使を、それぞれ根拠に、当該目的外使用料を支払うべき責任があると主張して、ビデオ化されたアニメ作品に係る目的外使用料(以下「ビデオ化使用料」という。)及び遅延損害金の連帯支払を求める事案である。
二 本件事案における前提となる事実は、原判決「事実及び理由」の「第三 前提となる事実」(原判決三ページ二行目から同七ページ四行目まで)に摘示するとおりであり、また、本件の争点及び当事者双方の主張は、当審において、当事者双方が後記三ないし五のとおり主張するところを付加するほかは、原判決「事実及び理由」の「第四 本件訴訟の争点」(原判決七ページ五行目から同二〇ページ一七行目まで)に摘示するとおりであり、一審原告らの本訴請求の内容は、原判決「事実及び理由」の「第五 本訴請求の内容」(原判決二〇ページ一八行目から二六行目まで)に摘示するとおりであるから、これらを引用する。
 本件の主な争点は、ビデオ化使用料の支払義務について、(1)一審被告音響映像の関係では、@出演契約に基づき支払義務を負うか否か、A昭和五六年一〇月一日に、協同組合日本俳優連合日俳連)、日本動画製作者連盟(動画連)の加盟各社、日本音声製作者連盟(音声連)の加盟各社との間で取り交わされた「テレビ放送用アニメーション番組の出演並びに音声製作に関する協定書」(本件協定)及び前同日に本件協定四条ただし書に基づいて取り交わされた「テレビ放送用アニメーション番組の出演に関する覚書」(本件覚書)並びに本件覚書四条に基づき決定・改訂され覚書に添付される「外画・動画出演実務運用表」(実務運用表。本件協定、本件覚書及び実務運用表を合わせて、以下「本件協定等」と総称する。)が、中小企業等協同組合法九条の二第一項六号の団体協約に当たるかどうか、そして、これらにより支払義務を負うか否か、B商慣習に基づき支払義務を負うか否か、(2)一審被告日本アニメの関係では、@一審被告音響映像がビデオ化使用料を支払わないときに、本件協定等に基づき、あるいは、第三者のためにする契約に基づき、担保責任を負うか否か、A一審被告音響映像を債務者とする債権者代位権の行使が認められるか否かにあり、当審においては、これらに加え、(3)一審原告らのビデオ化使用料債権につき、@「芸人ノ賃金」(民法一七四条二号)として一年の消滅時効の成否、A商事債権として五年の消滅時効の成否、(4)一審被告音響映像による債務の承認の成否、(5)一審被告音響映像による消滅時効の援用が権利の濫用に当たるかにある。
 原判決は、一審被告音響映像の関係では、昭和六一年改訂の実務運用表には、ビデオ化使用料についても、具体的な算定方法が記載されるに至ったが、そこには、目的外使用料についての日俳連と音声連との協議の結果が反映されているとみることができ、少なくとも当時音声連に加盟していた音声製作会社は、その支払を拒絶する旨の特段の意思表示がある場合は格別、そうでない限り、実務運用表の算定方法に従った目的外使用料の支払について承諾していたといわざるを得ず、一審被告音響映像がそのような特段の意思表示をしていたと認めるに足りる証拠はなく、一審被告音響映像も、目的外使用料も含めた出演条件について、実務運用表によることを了承していたと認めることが相当であるとして、一審被告音響映像は、本件出演契約に基づき、一審原告ら声優に対し、目的外使用料の一つである本件ビデオ化使用料についても、その支払義務があると判断して、一審原告らの一審被告音響映像に対する各請求を認容し、一審被告日本アニメの関係では、本件協定等に基づく一審被告日本アニメの担保責任あるいは第三者のためにする契約に基づく担保責任はいずれも認められないと判断して、それらに基づく一審原告らの各請求を棄却し、債権者代位権に基づく一審原告らの各請求については、一審被告音響映像が無資力であることを認めるに足りる証拠はないとして、これを理由とする訴えを却下したので、一審被告音響映像が控訴し、一審原告らも、一審被告日本アニメに対する請求について控訴した。
三 当審における一審原告らの主張
(1)本件出演契約は、俳優と音声製作会社との間で締結され、実務運用表に基づく支払基準によって音声製作会社が出演料を計算し支払う義務を負うことを契約内容とするものであるが、目的外使用についても、支払をなすことが当然の前提として締結されてきた。しかし、この目的外使用によって直接利益を受けるのは動画製作者であって、動画製作者が音声製作者に目的外使用料の支払をしなければ、目的外使用料が支払われる実質的裏付けがとれなくなる。そこで、その裏付けを確実なものとすることが、本件協定等の締結のもう一つの基本目的とされた。本件協定及び覚書は一体不可分のものであり、覚書に添付された実務運用表は、動画製作者に対しても事前の同意を得、かつ周知してきたものである。そして、目的外使用料の支払については、本件協定及び覚書締結当初から念頭に置かれてきたことであり、このことは、最も初期に本件協定・覚書に添付された実務運用表にも目的外使用料の取扱いが定められていることからも明らかである。こうして動画製作者の了解を得、周知された支払基準に対しては、動画連及び一審被告日本アニメを初めとする動画連加盟社から異議が唱えられたことはなかった。したがって、動画連及び加盟各社は、本件協定に合意した以上は、本件協定四条後段に拘束されることはもちろんのこととして、同条ただし書に基づいて本件覚書及び実務運用表の内容にも拘束されることは当然というべきである。同条後段の、利用料は動画製作者から音声製作者に支払われるとする定めに加え、利用料の支払その他を覚書によって定めるという内容は、上記のことを踏まえて、動画製作者が、覚書に従って計算された出演料を、まずもって音声製作者に支払うことを約したものである。
 以上によれば、覚書に添付されるものとして逐次改訂されてきた実務運用表が、使用料の支払基準を定めるものであり、本件協定の内容に動画製作者が合意したということは、動画製作者が俳優らに対し、同運用表に従って計算された出演料の支払を担保する責任を負うことを意味する。この支払担保責任は、本件協定・覚書に基づいて成立した、出演契約を締結した俳優らのために、実務運用表に定める基準に従った支払を動画製作者において担保することを内容とする、第三者のための契約に基づき負担するものである。
(2)一審被告日本アニメは、昭和六一年の実務運用表に基づく支払担保責任を負うものである。
 一審被告日本アニメは、本件協定締結当時は動画連の会員であり、本件協定に署名押印している。その後、同社は、動画連を脱退しているけれども、それによって会社として署名押印した本件協定の効力から免れるものではない。少なくとも、脱退に至るまでの間には、音声連及び日俳連が昭和六一年に策定された実務運用表の内容を一審被告日本アニメほか動画製作者に通知し、一審被告日本アニメをはじめとする動画製作者はその内容に異議なく同意したものであるから、一審被告日本アニメは、その実務運用表による支払担保責任を負うものである。
 この支払担保責任を負うということは、出演契約に基づいて出演料を支払うべき一審被告音響映像が、動画製作者である一審被告日本アニメから使用料の支払を受けられないために一審原告らに対する支払が不可能である場合には、一審原告ら債権者らは、債務者である一審被告音響映像に代位して、同社の資力の有無を問わず、一審被告日本アニメに支払を求める法的権利を有することを意味している。
(3)一審被告音響映像は、音声製作を停止して、サンオンキョー有限会社に業務を移籍しており、一審被告音響映像は、音声製作受注に係る収益以外にさしたる収益はなく、むしろ、四〇〇〇万円を超える借入金債務を負担しており、事務所を引き払い、サンオンキョー有限会社の事務所に間借りした状態にあり、資産が皆無であることは明白である。
 したがって、一審原告らは、一審被告音響映像に代位して、一審被告日本アニメに対し、本件ビデオ化使用料の支払を求める権利を有する。
 なお、音声製作者は、動画製作者からビデオ化使用料の支払がなされなければ、声優に対する使用料の支払原資を確保することができないこと、実務運用表は、そこに盛り込まれる出演基準に従った料金の支払について、動画製作者の了解を得た上で策定されたものであることからすれば、動画製作者は、音声製作者に対し、実務運用表に従った出演条件に基づく料金を支払う義務を負うものであるから、一審被告音響映像は一審被告日本アニメに対し、かかる債権を有するので、一審原告らは、これを代位行使するものである。
(4)一審被告音響映像及び同日本アニメは、人的及び物的に一体関係にあるから、一審原告らが一審被告音響映像との間で締結した契約の効力は、一審被告日本アニメにも及ぶと解すべきである。
 一審被告音響映像の株式のほとんどは一審被告日本アニメ及びその代表者である本橋浩一代表取締役が保有しており、一審被告日本アニメの資本関係上の支配力は絶大であり、人的関係においても、一審被告日本アニメの代表者等が一審被告音響映像の代表者に就任している。
(5)本件ビデオ化使用料は、民法一七四条二号の「芸人ノ賃金」には、当たらない。同号の「芸人ノ賃金」とは、一般大衆に提供される芸能活動が、その日ごとの興行収入の配分計算による日銭を賃金とすることによって支払われる出演料についてのものであるから、本件の目的外使用料は、一審原告ら声優の声優としての出演に固定された録音物に対する使用許諾料としての性質をも併せ持つものであり、「芸人ノ賃金」に当たらないから短期消滅時効の適用はなく、一般債権の原則に基づきその消滅時効の規定が解釈適用されるべきである。
(6)消滅時効の起算点は、ビデオ販売され、音声製作会社が実務運用表に基づき使用料を算定し、これを一審原告らに通知した時点である。本件では、かかる通知はなされていないから、敢えてその時点を求めるならば、本訴提起後で、一審被告音響映像から計算の根拠となる資料であるビデオの発売年月日が示された平成一六年五月である。
 本件ビデオ化使用料は、ビデオ化されたビデオ出版社の販売を停止条件として発生するものであるが、ビデオ化及び販売の事実は、音声製作者から通知されない限り、声優はこれを知ることができないから、その通知を受けたときに権利行使は可能となり、その時点から時効は進行すると解すべきである。ビデオ化使用料は、当該ビデオに収録されている声優の出演話数も算定の基礎となるところ、ビデオ化に当たって放送作品の一部がカットされることもあり、キャストの確定はビデオを検証しても不可能であり、ビデオ化使用料の算定には、音声製作会社の出演時の出演記録等が必要であり、ビデオ発売時期にビデオ化使用料を算定することは不可能である。
 仮に、ビデオ発売時期を消滅時効の起算点とするとしても、最新のビデオ・DVD発売時期をもってその起算点とすべきである。
(7)一審被告らの消滅時効の主張は、一審被告音響映像は、ビデオ化の事実を知りながら、それを全く一審原告らに知らせることなく推移させて、権利行使の機会を剥奪してきたものであり、また、一審被告音響映像は、音声連の会員社として、一審被告日本アニメにビデオ化使用料の支払義務があることの了解を得ることを前提に製作を行う義務があるにもかかわらず、ビデオ化の事実を知りながら、かつ、一審被告日本アニメが支払わないことを一審原告らに通知せず、未払額の通知を行わないで未払額を増加させ、一審原告らの権利行使の機会を故意に剥奪したものであるから、消滅時効の援用は権利の濫用である。
(8)一審被告音響映像は、平成九年一〇月一三日付け文書をもって、自ら音声製作を請け負ったテレビ放送作品すべてを開示し、本件ビデオ化使用料支払債務が発生した可能性があること及びその場合には第一審原告らに対しビデオ化使用料の支払を負担することを認め、その支払を現実化させるために一審被告日本アニメとの間で交渉するように通知してきた。かかる通知は、本件ビデオ化使用料の支払義務を認めたものであり、民法一四七条三号の債務の承認に当たる。
(9)一審被告日本アニメは、本件協定は期限外利用料を定めたもので、覚書は、その支払方法を定めたものである旨主張する。しかしながら、本件協定四条から明らかなように、本件協定と覚書とは一体的なものであって、これらと一体のものとして締結された実務運用表では目的外使用料に関する定めを置いており、目的外で使用する場合は、個別の話し合いによると定められており、この声優との話し合いがなければ、動画を目的外に使用できないことが定められている。昭和五六年ころには既に家庭用ビデオが普及しっつあり、テレビシリーズアニメのビデオ化の際には、日俳連と音声製作会社との間で、個別契約が交わされていた。そして、昭和六一年以降は、実務運用表に統一的支払基準が設定され、その都度契約をしないでも処理できるように簡便化された。一審被告日本アニメは、大手動画製作者は不払いを貫いているかの如く主張するけれども、一審被告日本アニメの主張している事例は、二次使用料等を含めた契約のものもあり、不払い宣言をしているのは一審被告日本アニメのみである。
 一審被告日本アニメは、昭和六一年に策定された実務運用表に同意していない旨主張する。しかしながら、当時、一審被告音響映像は、音声連に加盟しており、同社は、動画製作会社である一審被告日本アニメから、実務運用表を守る約束を取り付ける立場にあり、同社が同意しないのであれば、それを音声連に伝えるべき立場にあったが、かかる拒絶の姿勢は伝えられなかったから、このことは、一審被告日本アニメは、実務運用表に同意していたことを示すものである。
(10)一審被告音響映像は、声優の出演料は、実務運用表に基づいて算定されているものではなく、各声優の出演料の算定の元となるランク表が存在し、各声優の出演料はこのランク表に基づいて算定されている旨主張する。しかし、ランクは、実務運用表に基づいて設定されたものであり、実務運用表には、出演料は、ランクに放送枠時間及び使用日的によって定められた料率を乗じた額を加算して算出されることが定められている。具体的には、ランク+時間割増+目的使用料という計算式であり、出演料の算定は、ランクと出演時間だけでは不可能であり、放送枠時間と使用目的を明確にして、これを実務運用表に当てはめて初めて算出できる。一審被告音響映像自身、実務運用表に従って出演料を算出して、支払を継続してきたことは、証拠上明らかである。
 一審被告音響映像は、実務運用表に従ってビデオ化使用料を支払った事実はない旨主張する。しかし、同被告は、実務運用表に従って、出演料、期限外利用料、ビデオ化使用料を支払っており、その例は、「爆転シュートベイブレード」、「ちびまる子ちゃん」、「魔法陣グルグル」、「フランダースの犬」、「うらしま太郎」、「未来少年コナン」など枚挙に暇がない。昭和五四年には、一審被告日本アニメと日俳連との間で、目的外使用の許諾と料金支払に関して覚書が締結されており、前記の「フランダースの犬」、「魔法陣グルグル」について目的外使用料を支払っており、同被告が当初から支払を拒絶しているなどの事実はない。
 また、一審被告音響映像は、音声製作会社等が目的外使用料を支払っていることを、一審原告らによる圧力によるものである旨主張する。しかし、ビデオ化使用料の未払は、本件の一審被告らのみであり、全体に対して〇・四パーセントにすぎず、他は実務運用表に基づいて支払われているのであり、実務運用表は、各社、各団体の意見調整を繰り返した上、最終的な一致点を見出して策定されており、一審被告音響映像も、理事会社として出席し、実務運用表策定作業に直接関わってきて、これに異を唱えたことはなく、実務運用表は、業界内の確固たるルールとして、策定され、機能しているのであり、上記のような目的外使用料の支払は、一審原告らの圧力によるものではなく、実務運用表が業界ルールとして根付き、個別の声優との契約内容となっているからに他ならない。
 一審被告音響映像は、目的外使用料については、支払代行者にすぎず、支払義務はない旨主張するけれども、契約の当事者は同被告と声優らであるから、一審被告音響映像には支払義務がある。
(11)一審被告音響映像は、ビデオ化使用料率は、平成四年三月三一日までは六〇パーセント、それ以後は八〇パーセントである旨主張するけれども、かかる請求内容は、原審において異議のないことを確認し、金額に争いがないようにしたものであるから、金額に間違いがあることを指摘する主張は、悪意もしくは重大な過失により時機に後れて提出されたものであるから、却下すべきである。
四 当審における一審被告日本アニメの主張
(1)一審原告らは、一審被告日本アニメは、本件協定に署名捺印し、昭和六一年に策定された実務運用表に異議なく同意したから、ビデオ化使用料について、昭和六一年の実務運用表に基づく支払担保責任を負う旨主張する。しかし、一審被告日本アニメは、昭和六一年に策定された実務運用表に同意した事実はないし、ビデオ化使用料の支払担保責任を負う理由もない。一審被告日本アニメも一審被告音響映像も、目的外使用料の支払義務を一切認めておらず、しかもそのことは、日俳連も知っていた。
 本件協定は、期限外利用料を定めたものであり、覚書は、その支払方法を定めるものであり、本件目的外使用料については、音声製作者が俳優との間で実務運用表に基づく支払基準によって出演料を支払う旨の内容の出演契約を締結しているとは考えられない。本件協定には期限外利用料以外の記載は一切なく、覚書や実務運用表にも全く触れられていない。音声連作成の文書を見ても、本件協定が期限外利用料に関する協定であることを明記している。また、動画製作者は、本件覚書や実務運用表には一切関与していないから、動画製作者が目的外使用料の支払を担保するいわれはない。
 動画製作者が、実務運用表の改訂の前後を問わず、これに同意したり、支払基準を了解した事実は全くない。実務運用表は、これを策定した日俳連ら内部では、相手方が支払を承諾した場合の出演料の請求基準を記載したものであり、外部に対しては希望する出演料の基準を記載したものにすぎず、動画製作者が実務運用表に基づく支払を明示的に承認しない限り請求権は発生せず、動画製作者に支払義務を負わせるものではない。日俳連は、これを承知の上で動画製作者らの意向など全く考慮せずに実務運用表を策定し、これを道具として、動画製作者らに対し、目的外使用料を認めるように要請し又は圧力をかけてきた。その結果、実務運用表の改訂について事前に同意したこともなく、目的外使用料を認めていないにもかかわらず、日俳連の要請や圧力に屈してやむなくこれを支払った者もいたが、現在の大事業者では、実務運用表の目的外使用料を一切認めていないものもある。
 したがって、本件協定及び覚書当事者間で、動画製作者が実務運用表に定める基準に従った出演料の支払を担保する第三者のための契約が成立したということも認めることはできない。
 なお、ビデオ化により利益が出るか否か、あるいは、その利益額は、販売してみないと分からないことであり、利益の有無・金額や製作本数、販売本数等にかかわらずビデオ化により当然に使用料の支払義務が発生するという実務運用表の基準には合理性がない。
(2)一審原告らは、債権者代位権でもって、一審被告日本アニメに請求するが、そもそも代位される債権が存しないから、一審原告らの主張は失当である。
 また、一審被告音響映像が無資力であることは否認する。一審被告音響映像は、音声製作部門以外の業務は継続している。
(3)一審被告音響映像と一審被告日本アニメが人的及び物的に一体関係にあるとの主張は否認する。
 一審被告日本アニメはアニメーション映画の製作を目的として、一審被告音響映像はアニメーション映画その他の音声製作を目的として、それぞれ独立して経営を行っており、両者の関係は、アニメーションの音声製作に関する注文者と請負人というものである。一審被告日本アニメは、製作するアニメーション映画の音声製作のすべてを一審被告音響映像に発注しているわけではないし、一審被告音響映像も、他の動画製作者から音声製作を請け負っている。
 一審被告音響映像の代表者であった乙山松夫は、一審被告日本アニメの経営には全く関与していなかったし、会社の所在地も異なり、従業員の採用も個別に行っており、経理処理等財産関係が混同されているような事実もない。
 乙山松夫は、昭和五五年以来、一審被告音響映像の代表者であったが、同人の特別背任の事実が発覚し解任され、業務の抜本的見直しの必要やテレビ局等への迷惑を避けるために緊急避難として、平成一五年三月に、サンオンキョー有限会社を設立し、音声製作部門の業務を移譲したものである。
 一審被告日本アニメと一審被告音響映像が、法的に一体の関係にあるという事実はなく、一審原告らが一審被告音響映像と締結した契約の効力が一審被告日本アニメに及ぶということはない。
(4)一審被告日本アニメは、一審被告音響映像の時効の主張を援用する。
五 当審における一審被告音響映像の主張
(1)声優の出演料は、実務運用表に基づいて算定されているものではない。各声優の出演料の算定の元となるランク表が存在し、各声優の出演料はこのランク表に基づいて算定されている。各声優の出演時間が明らかになれば、ランク表に基づき契約内容のうちの出演料は、音声製作者、出演俳優に明らかになる。出演料以外の出演内容については、音声製作者が各声優に出演依頼する際に明らかにしているので、契約内容は確定される。一審原告らは、声優の出演料を決めるにはランク表では不可能である旨主張するけれども、時間割増と目的使用料はランク表に記載されており、その出演料を算定できる。
 期限外利用料は、本件協定及び覚書により、動画製作会社が支払うことを合意しているので、当然に実務運用表に基づいて支払われている。しかし、本件目的外使用料は、本件協定・覚書の合意には含まれず、したがって、実務運用表によって算定されているという事実もない。
 池水通洋の陳述書によると、ビデオ化された場合、音声製作会社が受け取る手数料は、音声製作会社によって異なるとのことであるが、期限外利用料についての各音声製作会社の手数料は、三五パーセントと定まっているにもかかわらず、目的外使用料については各社によって区々であるという事実は、日俳連が動画製作会社あるいは音声製作会社に圧力をかけ、その結果、各社の判断において、支払を認めていった経緯を示すものであり、実務運用表に従って支払義務の合意ができたのとは異なる。仮に、一審被告音響映像が支払義務を認めたものであれば、その手数料を日俳連や各出演俳優との間で取り決めているはずであるが、かかる事実はない。また、一審原告らの本件請求は、その手教科を差し引いたものではないことは、一審被告音響映像と一審原告らとの間では、目的外使用料の支払について、いまだ合意が成立していないことを端的に示すものである。
 一審被告音響映像は、本件目的外使用料の支払を合意したことはなく、実務運用表も、音声連・日俳連・日本マネージャー協会(マネ協)で構成する実務小委員会で作成されたもので、そこで作成された内容に一審被告音響映像が同意するか否かは、全く別の作業である。
 一審原告らは、一審被告音響映像が、ビデオ化使用料を支払っているとして具体的作品名を挙げて主張するけれども、いずれも、一審被告音響映像の取扱作品でないものや、使用料を支払わなければ出演を拒否する旨通知され、混乱を避けるためにやむなく支払ったものなどであり、一審原告らの主張の根拠となるものではない。
 一審被告音声映像は、期限外利用料の支払と同様に、本件目的外使用料についても、動画製作者の承諾が得られた場合に、初めてこれを支払うのであり、かつそれは動画製作者の支払手続を代行するにすぎない。一審被告音響映像は、この支払については、動画製作会社の支払の窓口になるにすぎず、法律上の支払義務を負うものではない。
 一審原告らの主張によると、作品がビデオ化され始め、それが問題となり始めたのは昭和六一年ころからであり、ビデオ化使用料の未払が明らかになったのは平成五年としているが、作品がビデオ化され市場に出回れば、それに出演した俳優、あるいは日俳連に、ビデオ化されたことが明らかになるはずであるが、仮に、一審原告らの主張するように、昭和六一年から本件目的外使用料の支払合意が成立しているのであれば、一審原告ら、あるいは、日俳連から支払要求があって当然であるが、かかる要求がなかったことは、そのような合意が成立していなかったことを裏付けるものである。平成五年からの日俳連の活動は、一審被告音響映像にかかる支払義務を認めさせようとする活動であり、いまだに合意に至っておらず、一審被告音響映像に支払義務が発生していないことも明らかである。
(2)仮に、一審被告音響映像に、本件目的外使用料について支払義務が発生しているとしても、既に時効により消滅している。
 一審原告らの請求権は、民法一七四条二号の「芸人ノ賃金」に該当し、一年間の経過により消滅する。一審被告音響映像は、この時効を援用する。
 仮に、一年の時効が認められないとしても、少なくとも商事債権として五年の経過により時効消滅しているから、一審原告らが東京簡易裁判所に調停申立てをした平成一一年八月二四日の五年前である平成六年七月末以前にビデオ化された作品については、時効により消滅しており、同時効を援用する。
(3)消滅時効は、権利を行使することができるときから進行し、事実上の障碍の存在は時効の進行を妨げないし、権利者が権利の存在やその行使の可能性を知らない場合にも消滅時効の進行は妨げない。
 一審原告らがその権利の存在、発生を知らなくても、それは事実上の障碍の存在にすぎず、作品がビデオ化されたときから、目的外使用料請求権の消滅時効は進行する。
 また、一審原告らは、その主張の内容からしても、遅くとも、平成四、五年ころには、権利の存在を知っていたものである。
(4)一審原告らは、一審被告らの消滅時効の主張は、一審被告音響映像は、ビデオ化の事実を知りながら、それを全く一審原告らに知らせることなく推移させて、権利行使の機会を剥奪してきたものであり、それにもかかわらず消滅時効を援用するのは権利の濫用であるなどと主張する。
 しかしながら、一審被告音響映像は、作品を作成した後は、その原盤を動画製作者に引き渡すので、ビデオ化には全く関与せず、ビデオ化されることを全く知らないのであり、ビデオ化の事実を知りながら一審原告らに知らせなかったものではなく、権利行使の機会を剥奪したものではないから、権利濫用には当たらない。
(5)仮にビデオ化使用料を認定するとしても、使用料率は、平成四年三月三一日までは六〇パーセント、それ以後は八〇パーセントで認容されるべきである。
 一審原告らは、かかる主張は、原審において異議のないことを確認し、金額に争いがないようにしたものであるから、金額に間違いがあることを指摘するのは、悪意もしくは重大な過失により時機に後れて提出されたものであるから、却下すべきである旨主張するけれども、一審被告らに明らかにできる事項は、一審原告らの本名、芸名、放送局名等であり、それ以外の使用料等は否認しているものであり、それが認められるか否かは裁判所の認定に係る事柄であるから、時機に後れた攻撃防御方法の問題ではない。
(6)一審被告音響映像と一審被告日本アニメが人的及び物的に一体関係にあるとの主張は否認する。
 一審被告音響映像は、一審被告日本アニメからアニメーションの音声製作を請け負っているのであり、注文者と請負人の関係にある。両者は独立に経営を行っており、従業員の採用等も別個であり、一体関係にない。
 一審被告音響映像の代表者であった乙山松夫の特別背任の事実が発覚し解任され、その経営、業務にははなはだしい混乱を来し、テレビ局等への迷惑をかけるおそれが発生したために、やむなく一審被告音響映像の音声製作部門の業務を設立したサンオンキョー有限会社が行うこととしたものである。
(7)一審被告音響映像に見るべき資産がないとの主張及び同社の組織・営業には実体がないとの主張はいずれも否認する。
六 証拠関係<略>
第四 当裁判所の判断
一 当裁判所も、一審原告ら声優と一審被告音響映像との本件出演契約において、目的外使用料も含めて実務運用表に従って支払うことが合意されたものと認めるのが相当であり、一審原告らの一審被告音響映像に対する本件請求は、いずれも、理由があるものと判断する。そのように判断する理由は、後記二ないし四のとおり付加するほかは、原判決の「事実及び理由」の「第六 当裁判所の判断」の第一項及び第二項(原判決二一ページ二行目から二八ページ九行目まで)に説示するとおりであるから、これを引用する。
二(1)一審被告音響映像は、一審原告ら声優との本件出演契約において、実務運用表に従って本件目的外使用料を支払う旨の合意はしていない旨重ねて主張する。
(2)しかしながら、原判決の認定説示するとおり、@日俳連(その前身である日本放送芸能家協会)と音声連(その前身である紫水会)は、長年にわたり、声優の出演条件について協議を繰り返してきたところ、昭和五六年一〇月一日、日俳連、動画連の加盟各社及び音声連の加盟各社は、本件協定を締結し、これを受けて、日俳連と音声製作会社とは本件覚書を締結し、その中には、日俳連会員が出演する場合の出演料は、実務運用表による旨定められていること、A昭和五〇年実務運用表が確認される前後のころは、いわゆる期限外利用料の支払問題が主な懸案事項であったが、その後、家庭用ビデオの普及等に伴い、テレビ用に製作されたアニメ作品がビデオ化されて販売されるようになったため、ビデオ化使用料の支払も問題化し、昭和五六年の本件協定のころには、実務運用表に具体的に定めないその他の目的外使用については、「その都度の協議による。」と規定し、更に、昭和六一年の実務運用表からビデオ化使用料の支払条件が明記されるに至ったこと、B音声製作会社と声優との個別の出演契約においては、音声製作会社から、出演作品のタイトル・役柄、出演作品の本数・時間、出演日時・場所、出演作品の利用目的のみが告げられ、それに基づいて声優は、出演を承諾するか否かを判断しており、それ以外の出演料や期限外利用料、目的外使用料等(まとめて以下「出演料等」という。)については具体的な提示等はなされず、出演料等の算定や支払は、実務運用表に基づいてなされていたこと、C実務運用表は、日俳連、音声連、マネ協の代表者によって構成される実務小委員会で検討され改訂されており、その改訂に当たっては、音声連加盟会社をはじめ関係団体の意見を聞いた上で合意が形成される手続が進められていたこと、D弁論の全趣旨によれば、一審被告音響映像は、昭和五八年に音声連に加盟し、平成二年からは理事会社となり、平成四年からは、実務運用表の策定・運用を具体的に扱う実務小委員会の担当理事であり、実務運用表の内容及び改訂経過については、十分知る立場にあったこと、E一審被告音響映像も、声優との個別の出演契約に当たっては、出演料等について、個別具体的な提示等は行わず、実際には、実務運用表に基づいて算定し、声優に支払っていたことがそれぞれ認められるから、これらの事実によれば、一審原告ら声優及び一審被告音響映像は、出演料等の出演条件は、実務運用表に従うことを前提に本件出演契約を締結していたものと認められ、そして、上記の経過からすれば、ビデオ化使用料についても、昭和六一年の実務運用表の改訂以後は、同表に基づいて支払う旨を合意していたものと認めるのが相当である。
(3)一審被告音響映像は、実務運用表は、実務小委員会が作成したものにすぎず、同被告はこれに同意していない旨主張する。
 しかしながら、前記認定説示のとおり、実務運用表の改訂に当たっては、少なくとも音声連加盟各社の意見を聴取の上、改訂手続が進められたと認められるし、一審被告音響映像は、声優らとの個別の出演契約においては、契約当時の実務運用表を前提とし、出演条件はこれに従うことを契約内容として合意したものというべきであるから、一審被告音響映像のかかる主張は、前記認定を左右するものではない。
(4)一審被告音響映像は、声優の出演料は、実務運用表に基づいて算定されているのではなく、ランク表に基づいて算定されている旨主張する。
 しかしながら、本件協定は、前記の経緯を背景に、声優の出演条件について、動画製作会社、音声製作会社、声優(日俳連)が、その間の基本的合意事項として昭和五六年一〇月一日に締結されたこと、これを受けて、直接の契約関係に立ち、出演料等の支払関係にある日俳連と音声製作会社とが本件覚書を締結し、その中で日俳連会員が出演する場合の出演料等は、実務運用表による旨定められていること、その後も、実務運用表は、関係団体の意見を徴しながら改訂を続け、音声連加盟各社はこれに基づいて支払を行っていること、実務運用表は、ランクが設定され、かつ、声優各人についての個別のランク付けが存することを前提にして、このような個別のランクとこれに乗ずる一律の料率を用いて出演料等の算定が行われるべきであることを示している文書であることなどの事実によれば、声優の出演料等は、その契約当時の実務運用表に基づいて算定することが合意されているというべきであって、一審被告音響映像が声優各人ごとのランク表に基づいてその声優の出演料の算定をしているとしても、そのことは前記認定を左右するものではないというべきである。
(5)また、一審被告音響映像は、本件目的外使用料は、本件協定及び覚書には含まれず、したがって、実務運用表に基づいて支払われていることはない旨主張する。
 しかしながら、前記のとおり、本件協定は、基本的な合意内容を定め、その詳細を本件覚書にゆだねていること、そして、本件覚書もまた、出演料等については実務運用表によることを合意していること、実務運用表は昭和六一年の改訂後は、ビデオ化使用料についての規定を置いていること、本件協定は、現在においても、関係団体あるいは加盟各社が尊重し、動画製作会社、音声製作会社及び日俳連会員である声優の間では、出演条件等については、本件協定、本件合意及び実務運用表に基づいて出演契約の交渉、合意成立等の契約関係事務が処理されていることなどからすれば、本件協定の書面上は、ビデオ化使用料に関する文言が記載されていないけれども、昭和六一年の実務運用表にビデオ化使用料についての支払条件が明記された以降は、日俳連、音声連加盟各社、動画連加盟各社は、ビデオ化使用料についての実務運用表の規定は、本件協定に基づく合意に含まれるものと位置づけているものと認めるのが相当である。
 また、一審被告音響映像は、実際、実務運用表に従った支払はなされていない旨も主張する。しかしながら、上記のとおり、音声製作会社と声優は、実務運用表に従った内容で出演契約を締結しているものと認められ、そして、その中にビデオ化使用料も含まれると解すべきことは前記のとおりであるから、一審被告音響映像が指摘する事実は、音声製作会社側がビデオ化使用料の支払条件の記載を含む実務運用表に従う出演料等の支払を内容とする出演契約が成立しているにもかかわらず、それを遵守していない事態が存在していることを示すものとも考えることができるのであって、前記認定を左右するものとはいえない。
(6)一審被告音響映像は、期限外利用料の支払と同様に、本件目的外使用料についても、動画製作者の承諾が得られた場合に、初めてこれを支払うのであり、かつ、それは動画製作者の支払手続を代行するにすぎず、法律上の支払義務を負うものではない旨主張する。
 しかしながら、本件出演契約は、一審被告音響映像と一審原告ら声優との間で成立し、本件目的外使用料の支払もその契約の内容をなすものであり、一審被告音響映像が支払義務を負うのは、当然というほかない。一審被告音響映像の負担は、最終的には動画製作会社が負担すべきものであるか否かは、一審被告音響映像の一審原告ら声優に対する支払義務に影響するものとはいえない。
三 一審被告らは、一審原告らの主張する本件債権は、時効により消滅している旨主張するので、以下検討する。
(1)声優が、テレビ放送用アニメーション作品に出演して行う行為は、芸能作品について声によって演芸をすることにより、対価を得るものであるから、アニメーション作品に出演して得る対価自身は、民法一七四条二号の「芸人ノ賃金」に当たるものと解されるが、本件ビデオ化使用料は、これと異なり、その後、これらのアニメーション作品を別の媒体に化体して、新たな商品を製作し、これを販売することに基づいて発生する債権であるところ、「芸人ノ賃金」の債権については短期消滅時効が定められている趣旨は、かかる賃金は、その出演時、あるいはこれに接着した時間に支払われるその都度の報酬ないし対価を指すものと解されることなどにかんがみると、本件ビデオ化使用料は、上記のような別の媒体に化体して新たな商品を製作することに基づき発生する債権であるから、これをもって「芸人ノ賃金」に含まれるものということはできず、通常の商事債権と解されるから、その消滅時効の期間は五年と解すべきである。
(2)次に、消滅時効の起算点について検討する。
 ビデオ化使用料は、本件出演契約の中で、上記のとおり、テレビ放送用アニメーション作品を将来ビデオ化した場合に、声優らが使用料債権を取得することを合意したことによる債権であるが、その債権は、実際にビデオ化され、販売に供せられたときに具体的に発生するものと解される。
 この債権は、テレビ放送用アニメーション作品がビデオ化され、販売を開始すれば、具体的に発生するものであるから、その時から、債権の権利行使は可能となり、したがって、その時から、消滅時効は進行するものと解される。
 一審原告らは、本件ビデオ化使用料は、声優らは、ビデオ化の事実を知らず、仮に知ったとしても、自分の出演した部分がビデオ化されているかは把握できず、ビデオ化及び販売の事実を、音声製作者から通知されない限り、声優はこれを知ることができないから、その通知を受けたときに権利行使は可能となり、その時点から時効は進行すると解すべきである旨主張する。
 しかしながら、アニメーション作品がビデオ化され販売されれば、声優らは、ビデオ化使用料の請求は可能となり、これを妨げる法律上の障碍は認められないのであるから、かかる時点から消滅時効は進行するものと解される。
(3)一審原告らは、一審被告音響映像は、平成九年一〇月一三日付け文書をもって、自ら音声製作を請け負ったテレビ放送用アニメーション作品すべてを開示し、本件ビデオ化使用料支払債務が発生した可能性があること及びその場合には第一審原告らに対しビデオ化使用料の支払債務を負担することを認め、その支払を現実化させるために一審被告日本アニメとの間で交渉するように通知してきたが、かかる通知は、民法一四七条三号の債務の承認に当たる旨主張する。
 <証拠略>によれば、平成九年ころ、一審被告日本アニメ以外の動画製作会社からは、ビデオ化使用料が支払われているにもかかわらず、一審被告日本アニメがこれを支払わないために、一審原告らは、一審被告音響映像を通じて、一審被告日本アニメに本件ビデオ化使用料の支払を求めていたところ、一審被告日本アニメがこれに応じようとしないために、一審被告音響映像は、自らがこれ以上の説得をすることが困難と考え、これ以上は、声優ら、すなわち、日俳連が直接一審被告日本アニメと交渉してほしい旨の書面を日俳連に送付し、その後、日俳連が、一審被告日本アニメと直接に交渉したことが認められるが、これらの経緯によれば、一審被告音響映像は、自らは、本件ビデオ化使用料支払の責任を感じながらも、自社のみがこれを負担することは不可能であり、動画製作会社である一審被告日本アニメが支払うのであれば、一審被告音響映像も実際に支払う原資ができると受け止めており、一審被告日本アニメにビデオ化使用料の支払を求めていたが、同社の説得には応じないために、その説得の役割を日俳連にゆだねたものと解される。
 そうすると、一審被告音響映像は、上記書面を送付することにより、本件ビデオ化使用料自身の支払義務があること自体は認め、そうはいっても実際には、一審被告日本アニメが支払わないために、一審被告音響映像は現実にはその支払をする資力が乏しい事情を述べたものと解され、一審被告音響映像は、本件ビデオ化使用料の支払義務を負うこと自体は認めていたものと認められるのであり、これにより、時効の進行中であったビデオ化使用料債務の時効は中断し、また、既に時効が完成していた債務については、時効の援用権を放棄し、あるいは、信義則上、時効援用権を喪失したものと認められる。
(4)そして、上記(3)の平成九年一〇月一三日時点における一審被告音響映像による債務の承認及び時効の援用権放棄ないし時効援用権の喪失の事実に加え、本件記録によれば、本訴提起に先立つ平成一一年八月に申し立てられた調停の手続において、申立人らとの間のビデオ化使用料を支払う旨の団体協約ないし出演契約の存在を争ったものの、全く消滅時効完成の主張をした形跡がない上、後記四(2)に説示のとおり、一審被告音響映像は、本訴の原審の審理において、一審被告日本アニメとともに、一審原告ら声優との間の本件ビデオ化使用料を支払う旨の契約ないし団体協約あるいは商慣習の存在は争ったものの、一審原告らが請求する一審原告らごとの具体的な請求額とその算定方法については、当事者間で調査を重ね、慎重にその検討を行うべき弁論準備及び弁論手続を経て、当事者間に争いのないものとして、主張が整理されたものと認められ、かつ、原審のそのような手続中に消滅時効完成の主張を全く提出していないのであり、そのため、原判決も、一審被告らは、本件ビデオ化使用料が一審原告らの本訴請求額となることそれ自体は争っていない旨、双方の主張を整理していることが認められるのであり、これらの事情をも併せかんがみると、一審被告音響映像は、平成九年一〇月一三日の時点での前示の債務の承認等の事実にとどまらず、本訴提起に先立って申し立てられた調停の手続においても、本訴の原審段階においても、一審原告ら声優との間のビデオ化使用料を支払う旨の契約ないし団体協約あるいは商慣習の存在は争ったものの、仮にそれらが存在するとすれば、一審原告ら個別具体的な債権自体については争わない態度を示していたものと認められ、これらを総合すると、一審被告音響映像が、突如、当審において、一審原告らの本件ビデオ化使用料について消滅時効を援用することは、信義則上許されないものというべきである。
(5)そうすると、一審被告らの消滅時効の抗弁は、理由がないことに帰するといわなければならない。
四(1)一審被告音響映像は、仮に、ビデオ化使用料が認められるとしても、その使用料率は、平成四年三月三一日までは六〇パーセントである旨主張し、一審原告らは、一審被告音響映像の控訴審におけるかかる主張は、時機に後れた攻撃防御方法の提出であるから、却下すべきである旨主張する。
(2)本件訴訟記録によると、当裁判所には、次の事実が明らかである。
@ 一審原告らは、本件訴状で、一審原告ら個人別にビデオ化使用料を作品タイトル毎に算定し、「ビデオ化使用料個人別集計表」を添付して、これを請求した。
A これに対し、一審被告らは、いずれも、答弁書において、調査中であるとして、上記集計表を含むアニメ作品の放送の事実に関して認否を留保し、一審被告音響映像にあっては、「これが右契約の目的外のビデオとして転用され販売され」たとの一審原告らの主張に対して否認するとともに、「テレビ放送されたものがすべてビデオになるのではない。ビデオ化されるのはその一部である。」との認否反論をした(なお、一審被告日本アニメにあっては、「テレビ放送されたアニメーションをビデオとして販売したことはあるが、その作品名や巻数についても調査未了であり認否を留保する」旨の認否をした。)。
B 一審原告らは、平成一二年九月一四日の原審第四回口頭弁論期日で、甲一の一(本件協定)、同二(本件覚書)、甲二(実務運用表)、甲三の一ないし六(実務運用表)等を証拠として提出した。
C 一審原告らは、平成一三年七月六日の原審第一回弁論準備手続期日において陳述された同日付け準備書面において、添付した個人別集計表について、一審被告らに認否を求めた。
D 一審被告日本アニメは、平成一三年一一月二〇日付け準備書面において、ビデオ化した事実がない作品、あるいは、出演部分はビデオ化していない作品などを指摘し、使用料率・転用率等は否認する旨記載し、裁判所に提出したが、上記準備書面は陳述しなかった。
E 平成一四年二月二二日の第六回弁論準備手続において、六回にわたった弁論準備手続は終結され、平成一四年五月九日の第八回口頭弁論期日において、弁論準備手続の結果が陳述された。
F 一審原告らは、平成一五年一月二四日付け準備書面で請求を拡張し、その個人別作品別の請求内容を別紙として添付した。なお、同準備書面では、前記の陳述されなかった一審被告日本アニメの平成一三年一一月二〇日付け準備書面でビデオ化されていないなどと指摘された作品等については、これから削除されており、これらによれば、陳述されなかった上記準備書面を踏まえて、請求内容を再検討したことがうかがわれる。
 その後、一審原告らの請求内容について一審被告らの弁論行為はなされていない。
G 原判決は、「事実及び理由」の「第三 前提となる事実」の六、(2)(原判決七ページ二行目から四行目まで)において、「被告らも、原告ら主張のビデオ化使用料の支払義務が認められると仮定した場合の当該使用料、すなわち、本件使用料が原告らの本訴請求額となることそれ自体は争っていない。」旨説示している。
H 前記のとおり、一審被告音響映像は、当審において一審被告らは、一審原告らの主張のうち、一審被告らにおいて確認できるのは、一審原告らの本名、芸名、放送局名、放送年月日、作品タイトル名、ランク、巻数についてであり、これについては確認の上聞違いがないことを確認したが、それ以外の使用料率については、否認する旨の主張をするに至った。
(3)本件記録上顕れた以上の経過によれば、一審被告らは、一審原告ら声優との間のビデオ化使用料を支払う旨の契約ないし団体協約あるいは商慣習の存在自体は争ったものの、一審原告らが請求する一審原告らごとの具体的な請求額とその算定方法については、当事者間で調査を重ね、慎重にその検討を行うべき弁論準備及び弁論手続を経て、当事者間に争いのないものとして、主張が整理されたものと認められるのであって、原判決の前記のような前提となる事実の摘示も、そのような主張整理を踏まえてなされたものと認められる。
 そうすると、一審被告らは、原審における弁論準備及び弁論手続を経て、争いのないものとして整理した一審原告らの請求額の算定方法の一つたるビデオ化使用料率について、原判決において一審被告音響映像の支払責任が認められたことから、当審において、従来の訴訟対応を覆し、膨大な請求の個別の事実関係について、一から敢えて争おうとするものであり、かかる訴訟対応は、著しく信義に反するものというべきであるから、重大な過失により時機に後れて提出した攻撃防御方法で訴訟の完結を遅延させるものとして許されないものというべきであり、一審被告音響映像のかかる主張は、却下を免れない。
五(1)一審原告らは、一審被告日本アニメは、本件協定の効力として、あるいは、第三者のためにする契約を根拠として、一審被告日本アニメは、一審被告音響映像が本件ビデオ化使用料を支払わないときに、これを自ら一審原告ら声優に支払う担保責任がある旨重ねて主張する。
 しかしながら、一審被告日本アニメがかかる責任を負うと認められないことは、原判決の認定説示するとおり(原判決二八ページ一一行目から同二九ページ一六行目まで)<編注・本号前掲一一六頁二段三行目〜三段二五行目>であって、一審被告日本アニメの担保責任をいう一審原告らの主張は失当である。本件協定等を検討しても、一審被告日本アニメが一審原告ら声優に直接支払義務を負うことまでを定めたと解すべき規定は見当たらない。
(2)また、一審原告らは、一審被告音響映像及び一審被告日本アニメは、人的及び物的に一体関係にあるから、一審原告ら声優が一審被告音響映像との間で締結した契約の効力は、一審被告日本アニメにも及ぶと解すべきである旨主張する。
 しかしながら、一審被告両社は、人的関係、資本的関係等において、極めて密接な関係があり、その連携は顕著と認められるが、なお、法人格においても一体であるとまで認めるに足りる証拠はないから、一審原告らのかかる主張は、採用できない。
六 一審原告らの一審被告日本アニメに対する債権者代位権に基づく請求について検討する。
(1)一審原告らが、一審被告音響映像に対して、本件ビデオ化使用料の請求権を有すると解すべきことは、前記説示のとおりである。
(2)次に、一審被告音響映像と一審被告日本アニメとの関係について検討するに、前記引用に係る原判決の認定説示するように、@日俳連(その前身である日本放送芸能家協会)と音声連(その前身である紫水会)は、長年にわたり、日俳連会員である声優の出演条件について協議を繰り返してきたところ、昭和五六年一〇月一日、日俳連及び音声連の加盟各社に、一審被告日本アニメを含む動画連の加盟各社が加わって、本件協定を締結し、動画連の会員社(甲)が作品製作のため、音声製作を行うに当たり日俳連(乙)会員の出演条件及び音声連の会員社(丙)の音声製作条件は本件協定によるものとし、いわゆる期限外利用料の支払方法は該当作品ごとに甲より丙に利用料を支払い、乙に対する支払は丙が行う、ただし、乙と丙とは支払方法その他について別途覚書を交換するなどの本件協定が成立し、これを受けて、日俳連と音声連の各会員社とは、テレビ放送用アニメーション番組の音声作品(作品)の音声連の会員社(甲)による製作のために日俳連(乙)の会員が出演する場合の条件に関する合意を成立させて本件覚書を締結し、その中には、日俳連会員が出演する場合の出演料、期限外利用料等は、本件覚書に添付される実務運用表による旨定められていること、Aその後、実務運用表は、関係団体等の意見も聴取しながら、改訂を重ね、その間、一審被告音響映像が音声連に加盟した後に昭和六一年に改訂された以降の実務運用表には、ビデオ化使用料の支払条件が明示的に盛り込まれており、音声製作会社から日俳連会員である声優に支払われる出演料等は、このような実務運用表に基づいて支払われていたこと、B動画製作会社は、テレビ放送用アニメーション作品のうち音声製作部分を、音声製作会社に請け負わせるものであり、音声製作会社から声優に支払われる出演料等は、当然、動画製作会社から音声製作会社に支払われる代金に依拠するものであるから、実務運用表の改訂に当たり、出演料等の改訂に関しては、動画製作会社の了解なくして、音声製作会社のみの負担を前提に出演料等を改訂することは不可能であること、C実務運用表は毎年見直され、多くの改訂を経ているけれども、概ね改訂にかかる内容に従って、動画製作会社は支払っていたこと、D一審被告音響映像は、前示のとおり、昭和五八年に音声連に加盟した後、平成二年からは理事会社となり、平成四年からは実務運用表の策定、運用を具体的に扱う実務小委員会の担当理事であり、実務運用表の内容及び改訂経過について十分知る立場にあり、一方、一審被告日本アニメも、前示のとおり、本件協定の締結に自ら加わって本件協定等の内容を知っていたのみならず、昭和六一年の実務運用表にビデオ化使用料についての支払条件が盛り込まれたことをその当時において音声連ないし日俳連から説明を受けていたと推認され、また、一審被告音響映像が上記のように音声連に加盟している等の立場にあることも知っていたと推認されるのであり、このような認識のある一審被告日本アニメが上記のような経過・立場の一審被告音響映像に対し、昭和六一年の実務運用表の改訂後、一貫して、一審原告ら声優などの日俳連会員である声優の出演があり得る一審被告日本アニメ製作に係るテレビ放送用アニメーション作品の音声製作を委託する取引を継続してきたことがそれぞれ認められる。
 そうすると、日俳連、音声製作各社、動画製作各社は、昭和五六年の本件協定を成立させることを通じて、日俳連会員である声優の出演条件及び同声優の出演に係る音声製作条件につき本件協定等によることとする旨の基本的合意を確認し、日俳連会員である声優との出演契約は音声製作各社との間で締結されることから、その詳細は、本件覚書及び既に存在していた実務運用表にゆだね、その内容に従って、テレビ放送用アニメーション作品の音声製作を進めることを合意し、その後も、これに従って契約されてきたものと認められる。
 したがって、実務運用表自体は、日俳連会員である声優と音声連の会員社たる音声製作会社の出演条件を定めるものではあるが、そのような音声製作会社も、もちろん、出演料等の原資を、その音声製作会社に音声製作を委託ないし発注する動画製作会社からの代金に依拠せざるを得ないことからすれば、特段の事情がない限り、本件協定等でなされた合意の存在を前提として、動画製作会社と音声製作会社との間にも、音声製作費用の項目である声優の出演料等の価額の算定については、実務運用表に基づくものとする旨の合意があるものと解されるのであり、前記のような一審被告日本アニメと一審被告音響映像との間においても、同様の合意があったものと認めるのが相当であり、これを覆すに足りる証拠は存しない。なお、一審被告日本アニメは、平成二年三月に動画連を脱退しているけれども、その前後において、一審原告ら声優と音声製作会社である一審被告音響映像との出演契約ないし一審被告音響映像と一審被告日本アニメとの音声製作に関する契約の交渉態様、内容等が従前と異なって実務運用表とは関わりのないものに変わったと認めるべき証拠はないから、一審被告日本アニメが動画連を脱退した事実は、前記の認定を左右するには至らない。
 そうしてみると、音声製作会社である一審被告音響映像は、動画製作会社である一審被告日本アニメに対し、日俳連会員である一審原告ら声優に対して一審被告音響映像が支払義務を負う本件ビデオ化使用料と少なくとも同額以上の金員についても、その支払請求権を有するものと認められる。
(3)<証拠略>によれば、一審被告音響映像は、アニメーション作品等の音声製作をその主たる業務とする会社であるにもかかわらず、平成一五年三月三一日をもって、全ての音声製作の業務を停止し、その業務をサンオンキョー有限会社に移譲したこと、一審原告らが一審被告音響映像の取引銀行に対して差押えを行ったところ、株式会社りそな銀行銀座支店には、頭金が五六万五五八八円しか存しないこと、大東京信用組合にあっては、普通預金が一八二三万七八七八円存するものの、同組合は反対債権でもって相殺の予定であることがそれぞれ認められる。
 これらの事実に対し、一審被告らは、一審被告音響映像は無資力でない旨主張するものの、<証拠略>は、そのような無資力でないことを示す反証とは認められず、他に一審被告音響映像が無資力でないことをうかがわせる反証の提出は何ら行われていない。
 そうすると、上記の認定事実からすれば、一審被告音響映像は、無資力であると認めるのが相当である。
(4)以上によれば、一審原告らは、一審被告日本アニメに対して、一審被告音響映像に対する本件ビデオ化使用料の債権でもって、一審被告音響映像に代位して、一審被告音響映像の一審被告日本アニメに対する前記の支払請求債権をそれぞれ代位行使することができるというべきである。
七 その他、一審被告らは、一審原告らの本件請求が理由がないとしてるる主張するけれども、いずれも採用することができない。
第五 結論
 よって、一審原告らの本件請求は、いずれも、理由があり、認容すべきところ、原判決が一審原告らの本件請求のうち一審被告日本アニメに対する請求を棄却し又は却下したのは不当であり、一審原告らの本件控訴は理由があるから、原判決主文二項を取り消し、一審原告らの一審被告日本アニメに対する本件請求を認容することとし、一審原告らの一審被告音響映像に対する本件請求について上記と同旨の原判決は相当であり、一審被告音響映像の本件控訴は理由がないから棄却することとし、訴訟費用について民訴法六七条二項、六一条、六五条一項本文を、仮執行宣言について同法三一〇条をそれぞれ適用して、主文のとおり、判決する。

東京高等裁判所第9民事部
 裁判長裁判官 雛形要松
 裁判官 山崎勉
 裁判官 浜秀樹

別紙 ビデオ化使用料個人別集計表<略>
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日本ユニ著作権センター
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