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【事件名】カルティエ腕時計の差止め事件 【年月日】平成16年7月28日 東京地裁 平成15年(ワ)第29376号 不正競争行為差止等請求事件 (口頭弁論終結日 平成16年5月21日) 判決 原告 カルティエ インターナショナル ビー ブイ(以下「原告カルティエ」という。) 原告 リシュモンジャパン株式会社(以下「原告リシュモンジャパン」という。) 原告ら訴訟代理人弁護士 加藤義明 同 木村育代 同補佐人弁理士 アインゼル・フェリックス=ラインハルト 同 山崎和香子 同訴訟復代理人弁護士 町田健一 同 角田邦洋 同 三留和剛 被告 ケントレーディング有限会社 被告 ケントレーディングブレイン株式会社 被告ら訴訟代理人弁護士 森徹 主文 1 被告らは、別紙2被告製品目録記載1ないし3の各商品を製造し、譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、又は電気通信回線を通じて提供してはならない。 2 被告らは、別紙2被告製品目録記載1ないし3の各商品を廃棄せよ。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 4 この判決は、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 主文と同旨 なお、原告カルティエは、訴状において、商標権侵害に基づく請求と不正競争防止法に基づく請求につき、それぞれ請求の趣旨を書き分けて記載するが、いずれも、主文と同旨であると判断できる。 第2 事案の概要 原告らは、被告らに対して、@原告らの製造又は販売する腕時計の形態が、原告らの商品等表示として需要者の間に広く認識されているものであり、被告らの製品である腕時計の形態はこれと類似し、原告らの製品との混同のおそれがある、A原告らの製品の形態が、原告らの商品等表示として著名であり、被告らの製品の形態がこれと類似している、又は、B被告らの製品は、原告カルティエが有する商標権に係る登録商標と類似する標章が付されている、と主張して、不正競争防止法2条1項1号、2号、3条に基づき(原告カルティエにおいては、選択的に商標法25条、37条1号、36条に基づき)、被告らの製品の製造、販売等の差止及び廃棄を求めた。 1 前提となる事実等(争いがない事実以外は証拠を末尾に記載する。) (1) 原告ら 原告カルティエは、平成9年(1997年)に、イタリア共和国所在のオフィチーネパネライ社(以下「パネライ」という。)からパネライとの商標を付した時計の製造販売等の事業とそれに関連するすべての知的財産権を譲り受け、世界市場において、パネライの商標を付した腕時計(以下「パネライ製品」という。)を製造し、販売している(甲13)。 原告リシュモンジャパンは、原告カルティエが製造するパネライ製品を、日本における総代理店として販売している(甲13)。 (2) 被告ら 被告ケントレーディング有限会社は、時計とその部品の輸出入販売等を行っており、被告ケントレーディングブレイン株式会社は、食料品、香辛料の輸出及び販売等を行っている。被告らは、共同してR・X・Wという商標を使用して腕時計を製造し、販売している。 (3) 原告ら製品 原告カルティエは、別紙1原告製品目録記載1ないし9の腕時計(以下、順に「原告製品1」「原告製品2」という。また、原告製品1ないし原告製品9を併せて「原告各製品」という。)を製造、販売し、原告リシュモンジャパンは、原告各製品を日本国内で販売している(甲13)。 (4) 被告ら製品 被告らは、平成14年ころ、別紙2被告製品目録記載2の腕時計(以下「被告製品2」という。)を製造し、被告らの店舗である銀座ケントレーディング(東京都中央区銀座1丁目所在、以下「被告ら店舗」という。)内及び被告らのウェブサイト「RXW」上において、被告らの販売する商品として譲渡又は引渡しのために展示し、前記店舗内及びウェブサイト(日本語表記のもの、英語表記のもの及び「楽天 銀座ケントレーディング」)を通じて販売し、現在も展示及び販売を継続している。 また、被告らは、被告製品2を製造、販売した後、別紙2被告製品目録記載1及び3の各腕時計(以下「被告製品1」、「被告製品3」という。また、被告製品1ないし被告製品3を併せて「被告各製品」という。)を製造し、被告ら店舗内及びウェブサイト上において、被告らの販売するレギュラー商品として譲渡又は引渡しのために展示し、被告ら店舗内及び各ウェブサイトを通じて販売し、現在も展示及び販売を継続している。 (5) 原告カルティエの商標権 原告カルティエは、以下の商標権を有する(以下「原告商標権」といい、その登録商標を「原告登録商標」という。)。 登録番号 第4323923号 登録商標 別紙3原告商標目録記載のとおり 商品及び役務の区分 第14類 指定商品 身飾品、宝玉及びその模造品、時計 出願日 平成10年10月14日 出願番号 10−088393 登録日 平成11年10月8日 2 争点 (1) 原告各製品の形態は、周知又は著名な商品等表示といえるか。 (2) 被告各製品は、原告各製品と類似するといえるか。 (3) 被告各製品は、原告各製品と間で、混同を生じるおそれがあるか。 (4) 被告各製品にリューズプロテクターを付ける行為は、原告登録商標を使用する行為といえるか。 3 争点についての当事者の主張 (1) 争点(1)(原告各製品の形態は周知又は著名な商品等表示といえるか。)について (原告らの主張) 以下のとおり、原告各製品の形態は、周知又は著名な商品等表示である。 ア 商品等表示性 原告各製品は、以下の各要素又はこれらの組合せに形態上の特徴があるので、その形態は、不正競争防止法2条1項所定の「商品等表示性」を有する。形態上の各要素は、@リューズプロテクター(リューズを保護するための部品)の形状、Aケース(本体)及びベゼル(文字盤の外周部分にある枠)の形状、大きさ、Bホーン(革のストラップやブレスレットなどを装着するための角状の凸部)の形状、C文字盤のレイアウト、D文字盤上の数字等の形状、E長針、短針及び秒針の形状、Fバックルの形状である。 原告各製品が販売開始される以前は、日本において、上記の各要素又はこれらの組合せを備えた形態を有する腕時計は販売されていなかった。原告らが、これらの各要素又はこれらの組合せからなる原告各製品を独占的かつ継続的に製造し、販売したことにより、各要素、又はこれらの組合せからなる形態は、原告らの出所に係る製品であることを示す出所表示機能を有するに至った。 (ア) リューズプロテクターの形状 ケースの側面に、リューズプロテクターが取り付けられている。リューズプロテクターの形状は、半円形の弦の中央部を長方形にくり抜いたブリッジ形状であり、長方形にくり抜かれた部分で、リューズを囲むように配置されている。 リューズプロテクターの外側の円弧状の部分に、リューズをロックしたり解除したりするためのL字形のレバーが収められている。 (イ) ケース及びベゼルの形状 ケース及びベゼルは、やや膨らみのある四角いケースに丸いベゼルを組み合わせた、クッション型である。ベゼルよりケースの方が大きく、原告各製品を正面から見ると、ケースの上にベゼルが乗っているような形状である。ケース及びベゼルは、つやのある金属でできている。原告各製品を側面から見ると、ケースの上にベゼルが盛り上がり、さらに厚いカバーガラスが上部にはめられた形状を示す。原告各製品の厚みは約15ミリメートルである。 (ウ) ケースの大きさ ケースの大きさは、直径40ミリメートル、44ミリメートル、47ミリメートルの3タイプある。いずれも、他に例のないほど大きいといえる。 (エ) ホーンの形状 ストラップを留めるために、原告各製品のケース部分から、両端からそれぞれ2本のホーンが角状に突き出ている。正面から見ると長方形に近い。側面から見ると、全体が、楔型に近い形状を示し、手首に接触する側は直線的であり、その反対側は、緩やかな曲線を描いている。2本のホーンの先端部内側にある金属のポールにストラップを通し、金属製の小さなねじで留める形が採られている。 (オ) 文字盤のレイアウト 文字盤は40ミリメートル近くあり、12、3、6、9時のすべての位置又はそのうちのいくつかの位置に、対応する数字が配されている。 数字の配されていない時刻の位置には、数字とほぼ同じ長さ及び太さで、両端が丸くなった棒状のバーインデックスが配されている。 原告製品2を除く原告各製品には、秒を示すスモールセコンドが存在するが、スモールセコンドは、文字盤の9時の位置に、8時と10時の位置の間に納まるように配されており(原告製品8は左利き用であるため、3時の位置に2時と4時の位置の間に配されている。)、5秒ごとの位置を示すための12本の線が配されている。 レイアウト上の制約がある場合を除き、文字盤の中央より上部に、商品名が白色の英字で横に配され、中央より下部に、「PANERAI」と白色のアルファベットが配されている。 (カ) 文字盤上の数字等の形状 文字盤上の、12、3、6、9時の位置に対応する数字が配されている製品においては、数字は丸みを帯びたアラビア書体で表示されている。3の数字については、上部が直線で描かれており、6と9の数字については、円の部分が完全に閉じられず、隙間がある。数字及びバーインデックスは、夜間でも時刻が読めるように、発光する。 スモールセコンドについても、目盛りは、12本のバーインデックスで表示され、0、15、30、45秒の位置に配された線は、他の線より太く、発光する。 (キ) 長針、短針及び秒針の形状 長針と短針は、円形の軸受け部から、やや太めでまっすぐな針が伸び、先端部が三角形となったペンシル形状である。軸受け部及び先端部は黒色で、針の周囲も黒色で縁取りがされている。また、縁取りの内側は、発光する。短針は長針よりやや太い。 スモールセコンドがあるタイプに配された秒針は、軸受け部から前方のみならず後方にも伸びており、針の前方は中心部分が少し膨らんだアーモンド形状を示し、針の後方は小円形状を示し、後端部及びアーモンド形部分の縁が白色であり、縁取りの内側は、発光する。 (ク) バックルの形状 時計ストラップのバックルは、内周が長方形、外周が台形に近い形をしている。 イ 周知性・著名性 以下の状況に照らすならば、原告各製品の前記の形態上の特徴は、遅くとも平成12年初頭ころまでには、少なくとも高級腕時計の取引者及び需要者の間に、原告らの製造販売に係る商品であることを示す商品等表示として広く認識されていた。 また、原告各製品の前記の形態上の特徴は、遅くとも平成13年初頭ころまでには、全国の高級腕時計の取引者及び需要者に知られるようになり、原告らの製造販売に係る商品であることを示す商品等表示として著名となった。 (ア) 販売数量 日本においては、原告リシュモンジャパンを総代理店として、平成10年(1998年)にパネライ製品の販売が開始された。販売開始から現在までの日本国内でのパネライ製品の販売数量は、以下のとおりである。 平成10年(1998年) 306本 平成11年(1999年) 594本 平成12年(2000年) 1292本 平成13年(2001年) 3397本 平成14年(2002年) 4200本 このように、パネライ製品の販売数量は年々増加している。特に、平成11年から平成12年にかけては約2.6倍と急増し、その後も増加傾向にある。また、平成10年9月から平成16年2月までの間に、原告らが日本において販売した、前記の形態上の特徴を有する腕時計の数量は、合計1万1099本である。なお、パネライ製品のうち、約95パーセントが、前記の形態上の特徴を有する製品であるから、上記の販売数量のうち、約95パーセントが、原告各製品についての販売数量と推認できる。 (イ) 宣伝費用 平成15年度の原告リシュモンジャパンにおけるパネライ製品の宣伝費用は、おおむね6500万円である。なお、パネライ製品のうち、約95パーセントが、前記の形態上の特徴を有する製品であるから、宣伝費用のうち、約95パーセントが、原告各製品についての費用であると推認できる。 (ウ) 雑誌での紹介 平成10年に、原告らは、日本においてパネライ製品の販売を開始した。同年に、多くの雑誌で、@同年4月に開催されたSIHH(通称ジュネーブサロンと呼ばれる時計フェア)においてパネライ製品が登場したこと、A日本で販売が開始されること、Bイタリア海軍にダイバーズウォッチ等を納入していたパネライの軍用時計の復刻版であるということ、C大きさや特殊なリューズプロテクターなどの特徴があることなどを紹介した記事が写真入りで掲載された。 平成11年には、時計業界において、ボリューム感のある大型の時計の人気が高まった。雑誌の記事において、パネライ製品は、厚み、大きさ、リューズプロテクターの形状などの特徴が強調されるとともに、写真で紹介され、時計専門誌のみならず、男性ファッション誌や男性情報誌にも掲載された。 平成12年には、大型サイズの時計の人気が続く中、パネライ製品は、雑誌に掲載される回数やページ数が増え、定番の時計として紹介されるようになった。また、これらの記事では、パネライ製品のデザイン上の個性が強調された。さらに、専門誌や男性誌だけではなく、女性ファッション誌にも掲載されるようになり、これらの読者である幅広い年齢層の女性にも知られるようになった。 平成13年には、パネライ製品が100冊以上もの雑誌に掲載され、女性誌や情報誌に取り上げられる回数も増えた。これらの記事では、パネライ製品は、独特な形態により人気を博していることが示されている。 平成14年には、パネライ製品に関する雑誌掲載数は150近くに上り、パネライ製品の人気が高まったことが示されている。 平成15年には、ウェディング雑誌やビジネス誌でも、一流時計の定番商品の一つとして紹介されるようになった。 (被告らの反論) 原告各製品には、以下のとおり、原告の主張する各要素又はこれらの組合せに形態上の特徴はないので、その形態が商品等表示に該当することはないのみならず、周知、著名であるともいえない。 ア 商品等表示性 (ア) リューズプロテクターの形状 原告各製品のリューズプロテクターは、半円形の弦の中央部を長方形にくり抜いた形状をしている。これは、外部的接触からリューズを保護し、手を傷つけないようにするという目的で選択されたもので、通常採用される、ありふれた形態といえる。他社製品においても、同様の形態が採用されている。 レバーのL字形状は、リューズを押し込めてリューズの隙間から水の浸入を防ぐという機能を有するもので、通常採用される、ありふれた形態である。レバーの形状は、通常の使用時には、半円形のリューズプロテクターの中に挿入されており、看者の目を惹く形態とはいえない。以上のとおり、レバーのL字形状は、原告各製品の形態的特徴とはいえない。 (イ) ケース及びベゼルの形状 ケース全体の形状として、クッション形とした点は、他社製品でも採用されているので、原告各製品の形態的特徴とはいえない。 (ウ) ケースの大きさ 原告各製品のケースの大きさが、直径40ミリメートル、44ミリメートル、47ミリメートルの3種類存在することは、原告各製品に共通する特徴はないということになる。 また、直径40ミリメートル以上の大きさを有する点についても、そのような大きさの腕時計は、他社製品でも多数紹介されているので、原告各製品の形態上の特徴とはならない。 (エ) ホーンの形状 原告らが主張する原告各製品のホーンの形状は、腕時計が通常有する形状であり、形態上の特徴はない。 (オ) 文字盤のレイアウト 文字盤の大きさは、ケースの大きさに沿うものであるから、形態を特徴付けるものとはいえない。 12、3、6、9時の位置に数字が配されている点については、原告各製品のうち、原告製品3、4及び9には、12、3、6時にしか数字が配されておらず、原告製品5から8までは、12時と6時にしか数字が配されていないので、原告各製品の特徴にはなり得ない。仮に、これらの位置のすべてに対応する数字が配されていたとしても、通常の形態であるといえる。数字が配されている以外で、時刻を示す位置に配されているバーインデックスについても、通常の形態であり、形態上の特徴はない。 秒を示すスモールセコンドの位置は、原告製品1、3、4及び5では、9時の位置に配置され、共通しているが、原告製品6では5時の位置に、原告製品8では3時の位置に、それぞれ配置され、また、その形状も、原告製品7においては異なっているなど、原告各製品に共通する形態上の特徴はない。12本の線が配されている点も、スモールセコンドの形態として、他社製品においても通常用いられている、ありふれた形態であり、原告各製品の形態上の特徴にはなり得ない。商品名や商標を中央上部に配置する点も、他社製品において採用されている、ありふれたレイアウトである。 (カ) 文字盤上の数字等の形状 文字盤上の数字等の形状は、特殊なものではない。暗闇の中で発光する点も、他社製品において通常有する形態であり、また、視認性を高めるために機能的に選択されたものであり、形態上の特徴にはなり得ない。 (キ) 長針、短針及び秒針の形状 長針、短針及び秒針の形状は、ごくありふれた形態であり、形態上の特徴とはいえない。 イ 周知性・著名性 (ア) 販売数量及び宣伝費用 原告らの主張する販売数量、宣伝費用を前提としても、原告各製品の商品形態の周知性を根拠付けることはできない。 パネライ製品の普及率を検討すると、パネライ製品の平成10年9月から平成16年2月までの5年6か月の間の合計販売数が1万1099本であるのに対して、我が国の生産年齢人口(15歳以上65歳未満人口)は8621万9631人(総人口の67.9パーセント)であるから、5年6か月間の普及率は、0.0128パーセントにすぎない。また、我が国の20歳から44歳の男女に限定した場合であっても、5年6か月間の普及率は、0.0259パーセントにすぎず、東京都の生産年齢人口868万5878人に限定した場合であっても、5年6か月間の普及率は、約0.12パーセントにすぎない。 したがって、原告各製品の販売数量は、わずかであるといえるから、その形態が周知性及び著名性を有することはない。 (イ) 雑誌での紹介 原告らが主張する雑誌での紹介により、原告各製品の形態が、周知、著名な商品等表示になることはない。これらの記事では、リューズプロテクターのないパネライ製品も多数掲載されているので、読者は、パネライという商品名を認識することはあっても、原告各製品の形態の特徴を認識することはなく、原告各製品の形態が、周知性及び著名性を取得することはない。 (2) 争点(2)(原告各製品の形態と被告各製品の形態とは類似するか。)について (原告らの主張) ア 被告各製品と原告各製品とは、以下のとおり、形態的特徴が共通し、両者は類似する。 (ア) リューズプロテクターの形状 被告各製品と原告各製品とは、ケースの側面に、リューズプロテクターが取り付けられていること、リューズプロテクターの大きさ及び形状がほぼ同じであること、リューズプロテクターの外側の円弧状の部分に、リューズをロックしたり解除したりするためのL字形のレバーが収められていること等の点において共通する。 (イ) ケース及びベゼルの形状 被告各製品と原告各製品は、ケースが、クッション形状で、やや膨らみのある四角い外形と丸いベゼルを組み合わせている点において、共通する。被告製品1及び3と原告製品1は、ケースの大きさ、文字盤の大きさ、ケースとベゼルがつやのある金属でできているという点において共通する。被告製品1と原告製品1は、いずれも厚みが15ミリメートルである。 (ウ) ケースの大きさ 被告各製品と原告各製品は、40ミリメートル以上の大型ケースが採用されている点において共通する。被告製品1及び3と原告製品1は、いずれも、ケースの直径が47ミリメートルである点において共通する。被告製品2のケースの大きさは直径41ミリメートルであり、原告製品2は直径44ミリメートルであるので、その差はわずか3ミリメートルである。 (エ) ホーンの形状 被告各製品と原告各製品とは、ホーンが、ケース部分の両端から2本角のように突き出ていること、正面から見ると長方形、側面から見ると全体が楔型に近い形状であること、腕に接触する側は直線的であり、その反対側は、緩やかな曲線を描いていること等の点において共通する。 (オ) 文字盤のレイアウト 被告各製品と原告各製品とは、文字盤が、黒色で大きく、12、3、6、9時の位置に数字が配されていること、数字が配されていない時刻の位置には、数字とほぼ同じ長さ及び太さで、両端が丸くなった棒状のバーインデックスが配されていること、文字盤の中央より上部に、商品名が、白色のアルファベットで配されていること等の点において共通する。 (カ) 文字盤上の数字等の形状 被告各製品と原告製品1及び2とは、文字盤上に、12、3、6、9の数字が丸みを帯びたアラビア書体で表示されていること、3の数字については、上部が直線で描かれていること、6と9については、円の部分が完全に閉じられず、隙間があること、数字及びバーインデックスが発光すること等の点において共通する。 (キ) 被告製品1及び3と原告製品1とは、バックルの形状、本体の長さ、ベルトの幅、厚み、ステッチが酷似しており、ダイビング用の替えベルト、ドライバーが付属品として付けられていること、本体及び付属品が全て重厚な化粧箱に入れられて販売されていること等の点において共通する。被告製品2についても同様であると考えられる。 イ 被告各製品には「MARINA MILITARE」の商品名が、原告各製品には「LUMINOR」又は「LUMINOR MARINA」及び「PANERAI」の商品名が、それぞれ文字盤に表示されているが、両者の形態上の類似性を否定するものとはいえない。 なお、被告らは、原告各製品の裏蓋が透明であるのに対して、被告各製品の裏蓋が透明でない点で異なることをもって、類似性がないと主張する。しかし、看者は文字盤のある表側を見るのが普通であり、通常の使用態様において時計の裏側が目に触れることはほとんどないから、被告各製品と原告各製品とは、形態において類似する。 (被告らの反論) ア 被告各製品と原告各製品とは、以下のとおり相違する。 (ア) リューズプロテクターの形状 リューズプロテクターは、被告各製品では、全体的に平板であって、文字の刻印はないのに対して、原告各製品では、正面から見ると半円形の部分が、丸みを帯び、「REG.」「T.M.」の文字が刻印されている点で異なる。 (イ) 商品名等の表示 被告各製品には、文字盤に「MARINA MILITARE」という商品名が白色のアルファベットで横に2列に、表記されているのに対して、原告各製品には、「LUMINOR」又は「LUMINOR MARINA」及び「PANERAI」の文字が表記されている点で異なる。 通常、腕時計における文字盤は、看者の最も目を惹く部分といえ、腕時計のようにケース、文字盤、針などの構成、形態が似通ったものとなる商品においては、文字盤に表示された商品名が、商品の自他識別、出所表示を最もよく果たすので、この点は相違は大きい。 (ウ) 文字盤上の数字等の形状 被告各製品では、文字盤上の数字等の字体は、大きくかつより丸みを帯びて、ポップな印象を与えている。 (エ) リューズの形状 リューズは、被告各製品では、薄いため、リューズプロテクターとの間に隙間が生じているのに対して、原告各製品では、厚みを帯びて重厚感があり、リューズプロテクターと一体感を与えている点で異なる。 (オ) L字形のレバーの形状 L字形のレバーは、被告各製品では、下から上に持ち上げて操作するものに限られるのに対して、原告各製品では、下から持ち上げるものと上から下ろすものとの両者がある点で異なる。 (カ) 透明な裏蓋 原告各製品では、裏蓋に、いわゆるシースルーバックと呼ばれる透明の素材が用いられ、時計内のムーブメントが透過して見えること、ムーブメントには、「PANERAI」との刻印が多数施されていたり、ルビーが取り付けられて装飾性を高めていること等の特徴があるのに対して、被告各製品では、裏蓋に、透明な素材は用いられておらず、裏蓋に「R・X・W」等の標章が刻印されている点で異なる。 (3) 争点(3)(被告各製品と原告各製品とは混同を生じるおそれがあるか。)について (原告らの主張) 被告各製品と原告各製品とは、形態的特徴において共通し、両者は類似するので、出所についての誤認混同が生じるおそれがある。 被告らは、被告各製品は、被告ら店舗の店頭又は通信販売により販売されているのに対して、原告各製品は、総代理店を通じ、著名な高級百貨店や時計店において販売されているので、販売態様が異なると主張する。しかし、被告ら店舗及びウェブサイトでは、高級腕時計ブランドの真正商品の販売も行われていること、雑誌においては、原告各製品の紹介記事を掲載した雑誌において、被告各製品の広告が掲載されていた例があることに照らすと、需要者が全く異なるということはない。 また、被告らは、被告各製品の価格は、約5万円から8万円であるのに対して、原告製品は、約40万円から90万円であり、著しい価格差があると主張する。しかし、被告各製品の形態、被告各製品の需要者層と原告各製品の需要者層が同一であること、被告各製品が原告各製品の代替品として販売されていることなどに照らすならば、両者の間に出所の混同が生じないということはできない。 さらに、被告らは、被告各製品及び原告各製品のいずれにも、商品名が表記されていると主張する。しかし、原告各製品の形態の特徴が顕著であることに鑑みれば、被告各製品に、商品名が付されていたとしても、需要者が、被告各製品が、原告らと何らかの関係があると誤認、混同する可能性は高い。 (被告らの反論) 以下のとおりの理由から、被告各製品と原告各製品との間には、出所についての誤認混同が生じるおそれはない。 すなわち、@被告各製品は、被告ら店舗の店頭又は通信販売により販売されているのに対して、原告各製品は、総代理店を通じ、著名な高級百貨店や時計店において販売されているので、販売態様が異なる、A被告各製品の価格は、約5万円から8万円であり、いずれも10万円以下であるのに対して、原告各製品は、約40万円から90万円であり、著しい価格差がある、B被告各製品にも原告各製品にも、商品名が表記されていること等の点に照らすならば、被告各製品と原告各製品との間に、出所についての誤認混同が生じるおそれはない。 (4) 争点(4)(被告各製品にリューズプロテクターを付ける行為は、原告登録商標を使用する行為といえるか。)について (原告カルティエの主張) 以下のとおり、被告らが、被告各製品にリューズプロテクターを付す行為は、原告商標権を侵害する。 すなわち、原告登録商標は、リューズプロテクターを正面から見た形状を平面図形で表したものであり、半円形の弦の中央部を長方形にくり抜いた、ブリッジ状の形状で表されている。被告各製品に付されたリューズプロテクターを正面から見た形状は、原告登録商標と同一であるから、そのような形状のリューズプロテクターを被告各製品に付す行為は、原告商標を使用する行為であるといえる。 (被告らの反論) 被告各製品のリューズプロテクターを正面から見た形状は原告登録商標と同様であるが、被告各製品のリューズプロテクターは、立体的なものであり、被告各製品を構成する部品である。被告各製品にリューズプロテクターを装着する行為は、商標としての使用には当たらない。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(原告各製品の形態は周知又は著名な商品等表示といえるか。)について 商品の形態は、必ずしも商品の出所を表示することを目的として選択されるものではないが、商品の形態が他の商品と識別し得る独特の特徴を有し、かつ、商品の形態が長期間継続的かつ独占的に使用され、又は、その使用が短期間であっても商品形態について強力な宣伝等が伴う場合には、商品の形態が、商品自体の機能や美観等の観点から選択されたという意味を超えて、自他識別機能又は出所表示機能を有するに至り、需要者の間で広く認識されることがあり得る。そこで、以下、これらの観点から、原告各製品の形態が、商品等表示に該当するか否か等につき判断する。 (1) 事実認定 前記前提となる事実並びに証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。 ア 原告各製品の各部分の形状(甲3の1〜3の470、8の1) (ア) 原告各製品の各部分の形状は、第2、3、(1)(原告らの主張)アの(ア)ないし(ク)記載のとおりである。特に、原告各製品においては、以下の形態上の特徴を有している。すなわち、 a リューズプロテクターの形状について、ケース側面に、リューズを覆うように、リューズプロテクターが取り付けられている点、リューズプロテクターは、半円形の弦の中央部を長方形にくり抜いたブリッジ形であり、長方形にくり抜かれた部分にリューズがはめ込まれるような形で配置されている点、リューズプロテクターの弧の部分には、リューズのロック及びその解除のためのL字形のレバーが収められている点、レバーが閉じられた状態でも、リューズプロテクターを正面から見た場合に、レバーの先端部がリューズプロテクターの弧の部分からやや突き出している点に形態上の特徴がある。 b ケース及びベゼルの形状について、やや膨らみのある四角いケースに丸いベゼルを組み合わせた、クッション型の形状である点、ベゼルよりケースの方が大きく、原告各製品を正面から見ると、ケースの上にベゼルが乗っているような形状を示し、側面から見ると、ケースの上にベゼルが盛り上がり、さらに厚いカバーガラスが上部にはめられた形状を示し、原告各製品はかなりの厚みを有しているという点、ケースの大きさがいずれも40ミリメートル以上である点において、形態的な特徴がある。 (イ) この点、リューズプロテクターの形状については、リューズプロテクターを付した時計は、他にも製造販売された例があり(甲9、乙16)、このうちの2種については、平成11年8月ころまでに販売されていた(乙16)。しかし、これらの製品のリューズプロテクターの形状は、原告各製品のものと、一見して明らかに異なる形状であること、原告各製品のリューズプロテクターの形状と比較的似た形状のリューズプロテクター(甲9の番号2及び7に記載されている時計並びに乙16のハミルトンというブランドの時計のリューズプロテクター)についても、半月形の弧の部分及びケースと接する部分の各形状が大きく異なること、リューズを押さえるレバーが付されていない点や、付されていてもその先端部が見えないという点で、原告各製品のリューズプロテクターとは、形態上の相違があること等に照らすならば、原告各製品の上記部分に形態上の特徴があるということができる。 イ 販売状況等 (ア) 原告らは、平成10年から日本国内でのパネライ製品の販売を開始した。平成10年9月以降の、リューズプロテクター付きパネライ製品の販売数量及び金額は以下のとおりである(甲7)。原告各製品は、原告製品1を除き、被告らが被告各製品の製造及び販売を開始する平成14年までに、既に販売されていた(原告製品1は、平成14年以降に販売が開始された。甲3の382、3の470)。 平成10年9月〜平成11年3月 298本 7080万円 平成11年4月〜平成12年3月 552本 1億4137万2000円 平成12年4月〜平成13年3月 1260本 3億0604万2000円 平成13年4月〜平成14年3月 2295本 5億8308万3000円 平成14年4月〜平成15年3月 3067本 9億0939万6000円 平成15年4月〜平成16年2月 3627本 11億4200万4500円 合計 1万1099本 31億5269万7500円 (イ) スイス時計協会及び時計美術宝飾新聞社が共同で行う、全国の時計販売店に対するアンケート調査(毎年1月から6月までの上期と通年の2回行われる)では、パネライ製品は、@平成11年1月から6月までの間に、取り扱う時計販売店が増加したこと(甲4の1、5頁)、A平成12年中に人気の高まりが見られたこと(甲4の3、6頁)、B平成13年1月から6月までの間に著しく販売が増加し、注目を浴びて人気が高まっていること(甲4の4、7頁)、C平成13年中では、めざましく販売が増えた製品の一つであること(甲4の5、6頁)、D平成14年1月から6月までの間にも、時計専門店や百貨店でよく売れている、又はめざましく販売が増えている製品の一つであること(甲4の6、3頁)が報告されている。 ウ 雑誌での紹介 平成10年には、6月以降、パネライ製品が雑誌に22回取り上げられ、国内での販売が開始された新しいブランドであること、ケース、文字盤の大きさやリューズプロテクターに特徴があることなどが紹介された(甲3の1〜3の22)。 平成11年には、雑誌に42回掲載され、厚みや大きさ、リューズプロテクターの特徴、パネライのバックグラウンドなどを詳しく紹介する特集記事が組まれることもあった(甲3の23〜3の64)。 平成12年には、パネライ製品の雑誌掲載回数は66回となった。時計専門誌だけでなく、男性ファッション誌や男性情報誌に掲載される回数も増え、女性ファッション誌にも紹介されるようになった(甲3の65〜3の130)。 平成13年には、雑誌において107回掲載され、情報誌、女性誌に紹介される回数が増えた(甲3の131〜237)。 雑誌掲載回数は、平成14年は141回(甲3の238〜3の378)、平成15年は91回となり(甲3の379〜3の469)、ビジネス誌(甲3の305、3の339、3の364、3の374、3の437)、ウェディング雑誌(甲3の421、436)などにも紹介されるようになった。 これらの雑誌の記事や広告においては、説明とともに、パネライ製品を正面あるいは側面から写した写真が掲載され、リューズプロテクターの部分を拡大した写真が掲載されることもあった(甲3の1〜3の470)。 (2) 判断 以上認定した事実を基礎として判断する。 ア 原告各製品の商品等表示性について (ア) 原告各製品は、前記のとおり、@リューズプロテクターの形状、Aケース及びベゼルの形状とケースが大型であることにおいて形態上の特徴があり、これらを組み合わせたことにより、原告各製品の形態として独自の特徴を有するに至っていると考えられる。このような独創性、原告各製品の販売状況及び雑誌等での紹介の実情等に照らすと、上記2つの特徴的な形態を組み合わせた点は、原告各製品が原告の製造販売に係るものであることを示す、商品等表示に該当するということができる。 原告らは、原告各製品の形態のうち、他の形状(ホーンの形状、文字盤のレイアウト、文字盤上の数字等の形状、長針、短針及び秒針の形状、バックルの形状)についても、原告の出所を示す商品等表示に当たると主張する。 しかし、@文字盤のレイアウト、文字盤上の数字等の形状、バックルの形状については、原告各製品のいずれもが共有する形状とはいえないこと、A文字盤のレイアウト、文字盤上の数字等の形状、長針等の形状については、他社製品にも多く見られる、ありふれた形状であること、Bホーンの形状については、腕時計の機能から通常選択される、ありふれた形状であることなどから、商品等表示に当たると解することはできない。 (イ) これに対して、被告らは、リューズプロテクターの形態は、リューズを外部的接触から保護すべく覆うという目的と、手を傷つけることを防止する目的のために選択されたもので、通常採用される、ありふれた形態である旨主張する。しかし、他社製品のリューズプロテクターの形状は、原告各製品と大きく異なっていることに照らすならば、原告各製品におけるリューズプロテクターの形状が、機能面から必然的に選択される形状であると解することはできない。 また、被告らは、クッション形のケースや40ミリメートル以上のケースを具備する製品が多数存在するので、これらの形態上の特徴は、原告の出所を示す商品等表示にならない旨主張し、これに沿った証拠がある(甲3の15、3の19、乙2〜15)。しかし、他社製品において、クッション形のケースで、40ミリメートル以上の大きさのものは、それほど見られないことからすれば、原告各製品の上記の特徴的形態をもって、原告の出所を示す商品等表示であると解することの妨げにならない。 さらに、被告らは、原告各製品の背部に配された透明の裏蓋の部分こそが、原告各製品の形態の特徴的な部分である旨主張する。しかし、需要者は、通常、文字盤のある表側に関心を示すと解されること、透明な裏蓋については、他社の製品においても見られることなどの点に照らすならば、原告各製品の特徴的な形態として、透明性のある裏蓋の形状を必須の要素に加えるべきであると解するのは相当でない。 以上のとおり、被告らの主張は、いずれも採用できない。 イ 周知性又は著名性について 原告各製品を含む、リューズプロテクターが付されたパネライ製品については、@販売数量及び販売金額が、日本国内での販売開始後3年間は売上が前年比2倍のペースで増加し、その後も増加していること、A時計販売店に対する業界アンケート調査結果において、販売数量の伸びが著しい製品として報告されていること、B雑誌での紹介記事あるいは広告の掲載回数も販売後年々増加し、平成13年には、時計専門誌だけではなく、男性情報誌、男性ファッション誌、女性ファッション誌にも数多く掲載されたこと、C雑誌に掲載される際には、該当するパネライ製品の写真が掲載され、本件形態が看取できていたこと、Dパネライ製品の大部分が本件形態を有するものであること(甲3の1〜470、8の1)に照らすならば、原告各製品の上記の形態的な特徴は、平成14年ころまでには、需要者の間で広く認識され、周知の商品等表示となったことが認められる(なお、原告各製品のうち、原告製品1は、被告製品2の販売後に販売が開始されたものである(甲3の382、3の470)が、原告製品1を除く原告各製品も本件形態を有するから、この点は前記判断を左右するものではない。)。 他方、本件形態が原告の商品等表示として著名となっていたとまでは認められず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。 2 争点(2)(原告各製品の商品等表示と被告各製品の形態とは類似するか。)について (1) 前記のとおり、原告各製品の形態上の特徴は、前記のリューズプロテクターの形状、ケース及びベゼルの形状及び大型のケースであるという特徴を組み合わせた点でである。そして、被告各製品は、原告各製品の形態上の特徴を具備するものであるから、被告各製品と原告各商品とは類似する。 すなわち、被告各製品は、@リューズプロテクターが、半円形の弦の中央部を長方形にくり抜いたブリッジ形状を示しており、長方形にくり抜かれた部分にリューズがはめ込まれるような形で配置され、半円形の弧の部分には、L字形のレバーが収められ、レバーが閉じられた状態でも、リューズプロテクターを正面から見た場合に、レバーの先端部がリューズプロテクターの弧の部分からやや突き出している形状であること、Aケース及びベゼルが、やや膨らみのある四角いケースに丸いベゼルを組み合わせた、クッション型の形状であり、ベゼルよりケースの方が大きく、正面から見ると、ケースの上にベゼルが乗っているような形状であること、Bケースの大きさは、直径40ミリメートル以上であることが認められ(甲5、12の1〜12の4、乙1の3、1の4)、原告各製品の形態上の特徴を具備し、類似している。 (2) 被告らは、被告各製品と原告各製品とは、リューズプロテクターの具体的な形状においてわずかな相違があること、被告各製品には、商品名等が表示されていること、裏蓋の素材が異なること等を挙げて、被告各製品は、原告各製品とは、類似しない旨主張する。しかし、被告各製品が、原告各製品の形態上の特徴を具備し、相互に類似性が認められる以上、これらの事実をもって、前記の判断を左右するものとはいえない(なお、被告各製品の名称である「MARINA MILITARE」(甲5、12の1〜12の4、乙1の4)は、原告製品9の名称とは同一であり、原告製品3から5までの名称である「LUMINOR MARINA」と一部共通し、この点からも、類似性が否定されるとはいえない。)。 3 争点(3)(原告各製品との混同を生じるおそれがあるか。)について 前記2において認定したとおり、被告各製品は、原告各製品の形態上の特徴を具備し、相互に類似していることからすれば、需要者において、原告各製品と被告各製品とについて、出所の混同を生じるおそれがあると認められる。 また、被告各製品は、「MARINA MILITARE」との名称を付しているところ(甲5、12の1〜12の4、乙1の4)、この名称は、原告製品9の名称とは同一であり、原告製品3から5までの名称である「LUMINOR MARINA」と一部共通し、需要者における混同のおそれを助長する事情が存在すると認められる。 被告らは、原告各製品と被告各製品の価格差、販売形態の相違、営業表示をもって、原告各製品と被告各製品とでは需要者が異なり、誤認混同が生ずるおそれがない旨主張するが、前記の各事情に照らせば、これらの点をもって、前記の認定を左右することはできない。 4 まとめ そうすると、原告らの請求は、その余の点を判断するまでもなく、いずれも理由がある。なお、被告製品2については、現在製造及び販売をしていないことが認められるが、販売等の差止及び廃棄の必要性は存在すると解される。 第4 結論 以上のとおりであり、原告らの請求はいずれも理由があり、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 飯村敏明 裁判官 榎戸道也 裁判官 山田真紀 |
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