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【事件名】「ケイコとマナブ」編集著作権侵害事件 【年月日】平成16年3月30日 東京地裁 平成15年(ワ)第285号 著作権侵害差止等請求事件 (口頭弁論終結の日 平成15年12月1日) 判決 原告 株式会社リクルート 原告訴訟代理人弁護士 高橋元弘 同 藤本知哉 同 飯塚卓也 同 末吉亙 被告 株式会社プロトコーポレーション 被告訴訟代理人弁護士 辻巻真 同 辻巻淑子 同 辻巻健太 同 立松直樹 同 岩田香織 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の請求 1 被告は、別紙「情報誌目録1」記載の情報誌を製作、印刷、製本、発売又は頒布してはならない。 2 被告は、別紙「情報誌目録2」記載の情報誌を製作、印刷、製本、発売又は頒布してはならない。 3 被告は、別紙「情報誌目録3」記載の情報誌を製作、印刷、製本、発売又は頒布してはならない。 4 被告は、別紙「情報誌目録4」記載の情報誌を製作、印刷、製本、発売又は頒布してはならない。 5 被告は、別紙「情報誌目録5」記載の情報誌を製作、印刷、製本、発売又は頒布してはならない。 6 被告は、別紙「情報誌目録6」記載の情報誌を製作、印刷、製本、発売又は頒布してはならない。 7 被告は、別紙「アイコン一覧表目録1」記載のアイコン一覧表を掲載した情報誌を製作、印刷、製本、発売又は頒布してはならない。 8 被告は、別紙「アイコン一覧表目録2」記載のアイコン一覧表を掲載した情報誌を製作、印刷、製本、発売又は頒布してはならない。 9 被告は、別紙「雑誌目録1」(1)ないし(15)、同目録2(1)ないし(10)及び同目録3(1)ないし(10)記載の雑誌並びにこれらの半製品及びこれらの印刷用紙型、亜鉛版、フィルム、版下など印刷用の原版を廃棄せよ。 10 被告は、原告に対し、金1380万円及びこれに対する平成15年1月25日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 原告は、いわゆる各種学校やその講座内容等の情報を掲載した情報誌「ケイコとマナブ」(首都圏版、関西版、東海版等)を編集、発行している。 本件において、原告は、被告が同様の内容の情報誌「ヴィー・スクール」(首都圏版、関西版、東海版)を製作、発行する行為は、前記情報誌「ケイコとマナブ」(首都圏版、関西版、東海版。各平成14年4月号)につき原告の有する編集著作物の著作権を侵害するものであるとして、被告に対し、主位的に、著作権に基づき雑誌の製作、発売等の差止め及び損害賠償(著作権法114条3項)を請求し、予備的に、被告による模倣行為は一般不法行為に該当するとして、不法行為に基づく損害賠償を請求している。 1 前提となる事実関係(争いのない事実等。証拠により認定した事実については、末尾に証拠を掲げた。) (1) 当事者 原告は、「就職ジャーナル」「B−ing(ビーイング)」「とらばーゆ」「ガテン」「フロムエー」「ケイコとマナブ」「仕事の教室」「住宅情報」「住宅情報賃貸版」「AB・ROAD(エイビーロード)」「じゃらん」「カーセンサー」「ゼクシィ」等の情報誌の発行やWebサイト「ISIZE(イサイズ)」等のインターネットによる情報提供サービスを業とする株式会社である。 被告は、図書・新聞一般印刷物の印刷及び販売、広告宣伝業務等を業とする株式会社である。 (2) 原告による「ケイコとマナブ」の創刊、発行等 ア 原告は、平成2年2月7日、趣味のお稽古事から仕事に役立つ講座まで、様々な分野のスクール情報(いわゆる各種学校の名称・所在地等の情報をいう。以下同じ。)及び講座情報(スクール情報に係る学校の講座内容・日時・費用等の情報をいう。以下同じ。)を編集・収録した月刊誌「ケイコとマナブ」(のちに「ケイコとマナブ首都圏版」と名称を変更)を創刊した。その後、原告は、平成5年3月2日に月刊誌「ケイコとマナブ関西版」を、平成7年3月2日に月刊誌「ケイコとマナブ東海版」を順次創刊し、現在では、月刊誌「ケイコとマナブ首都圏版」、同「ケイコとマナブ関西版」、同「ケイコとマナブ東海版」、同「ケイコとマナブ北海道版」、同「ケイコとマナブ九州版」の各スクール情報誌を毎月発行している(以下、月刊誌「ケイコとマナブ首都圏版」、同「ケイコとマナブ関西版」、同「ケイコとマナブ東海版」の3誌を総称して「原告各情報誌」ということがある。)。 イ 原告各情報誌には、白黒印刷で構成され、原告の広告主から出稿されるスクール情報及び講座情報が掲載された広告記事が分類配列されて掲載されている部分(以下「分野別モノクロ情報ページ」という。)がある。分野別モノクロ情報ページに掲載される通学講座の広告記事は、@スクール名、A住所、B最寄駅、Cスクールの特徴を示すアイコン(「スクール別便利ポイント」)、Dカプセル、E講座の特徴を示すアイコン(「特徴アイコン」、「○得情報アイコン」)、F資料請求番号、Gコース名、H講座開講日時・費用、I入学金・受講料の割引を示すマーク、Jコース内容、Kスクール情報、L地図、M交通案内、及びフリースペースからなり、各要素の配置場所についても、定型的に決められている(別紙「通学のレイアウト比較」参照)。 また、原告各情報誌の通信講座の広告記事は、@カプセル、A費用、B標準期間、C講座名、D資料請求番号、E講座のポイント、F講座の内容、G添削回数等、H特徴アイコン・○得情報アイコンの表示(「ここに注目!」)、I教材紹介、Jスクール名、K写真、L受講のポイントや体験談の掲載欄、Mプロファイルカプセル等からなり、各要素の配置場所についても、定型的に決められている(別紙「通信のレイアウト比較」参照)。 (3) 被告による「ヴィー・スクール」の編集・発行等 ア 被告は、同様にスクール情報・講座情報を掲載した月刊誌「ヴィー・スクール東海版」を平成14年8月26日付で創刊した。その後、被告は平成15年1月25日付けで月刊誌「ヴィー・スクール首都圏版」及び同「ヴィー・スクール関西版」を創刊し、現在では、月刊誌「ヴィー・スクール東海版」、同「ヴィー・スクール首都圏版」及び同「ヴィー・スクール関西版」の各スクール情報誌を発行している。そして、被告は、別紙雑誌目録記載の各情報誌を編集、発行した(以下、月刊誌「ヴィー・スクール東海版」、同「ヴィー・スクール首都圏版」及び同「ヴィー・スクール関西版」の3誌を総称して「被告各情報誌」ということがある。)。 イ 被告各情報誌の被告の広告主から出稿されるスクール情報及び講座情報が掲載された広告記事が分類配列されて掲載されている部分(以下「カテゴリー別スクール情報」という。)に掲載される通学講座の広告記事は、@スクール名、A住所、B最寄駅、Cスクールの特徴を示すアイコン(「おすすめチェック」)、Dカプセル、E講座の特徴を示すアイコン(「講座選びのポイント」、「○得ポイント」)、F資料請求番号、Gコース名、H講座開講日時・費用、I入学金・受講料の割引を示すマーク、Jコース内容、Kスクール情報、L地図、M交通案内、及びフリースペースからなり、原告各情報誌の広告記事と同一であるばかりでなく、各要素の配置場所についても、スクールの電話番号が、スクール名の下に配置されているほかは、すべて同一である(別紙「通学のレイアウト比較」参照)。 被告各情報誌の通信講座の広告記事は、@カプセル、A費用、B標準期間、C講座名、D資料請求番号、E講座のポイント、F講座の内容、G添削回数等、H通信講座情報アイコン・通信講座情報とくとくアイコンの表示(「Check」)、I教材紹介、Jスクール名、K写真、L受講のポイントや体験談の掲載欄、Mプロファイルカプセル等からなり、原告各情報誌の広告記事と同一であるばかりでなく、各要素の配置場所についても、特徴アイコン・○得情報のアイコン表示場所が異なるほかは、すべて同一である(別紙「通信のレイアウト比較」参照)。 2 争点及び当事者の主張 (1) 「分野別モノクロ情報ページ」についての、編集著作物該当性及び被告による著作権侵害の有無 (原告の主張) ア 原告各情報誌の分野別モノクロ情報ページの編集著作物性 原告各情報誌が掲載対象とするようなスクール・講座には、多種多様なものが無数に存在している。もしもこのような講座情報を、何の分類もせず、無作為に列挙すれば、読者が自ら興味を持ち又は学びたいと考えている講座を検索することは極めて困難となる。 かかる困難を回避し、読者が興味を持つスクール・講座を容易に検索できるよう、原告は平成2年の「ケイコとマナブ」創刊時において、一定の分類、配列方針を定める必要があった。しかし、「ケイコとマナブ」創刊以前は、スクール情報・講座情報を掲載する雑誌ないしこれに類する媒体やその他参考とすべきものは、一切存在しなかった。そこで、原告は、講座情報の分類・配列方針を独自に定め、平成2年の「ケイコとマナブ」の創刊当初から、講座情報の分類・配列に工夫を凝らしてきた。 その結果、原告各情報誌(平成14年4月号)の講座情報の分類・配列方針は、概略次のようなものとなっている。 (a) 多数の講座内容を表す分類指標(この指標は、原告において「カプセル」と呼ばれている。以下、この講座の内容を分類する指標のことを「カプセル」という。)を設定する(原告各情報誌の平成14年4月号におけるカプセル数は866個である。)。 このカプセルは、@読者の視点から、詳細になりすぎず、かつ概括的になりすぎないように細分化する、Aカプセルの表記は社会的に浸透している言葉を選ぶ、Bカプセルの文言が商標権侵害とならない文言となるようにする、C読者保護の観点から不相当な表記でないかチェックするというような作業を経て選定されるものである。 (b) (a)の分類指標(カプセル)を一定の方針に従い、見出し毎に振り分ける(原告各情報誌の見出しの種類は、平成15年4月号では19種類である。この見出しのことを以下総称して「ツメ見出し」という。)なお、このツメ見出しの設定に当たっては、読者ニーズに配慮しつつ、収録される情報量に偏りが出ないよう、ツメをできるだけ細分化することとされている。 原告の営業担当者がスクール広告を受注すると、原告は、その講座毎に、当該講座が分類指標(カプセル)のいずれに該当されるかにつき判断する。そして、当該講座情報は、当該講座に付された分類指標たるカプセルが振り分けられるべきツメ見出しに合わせて配列され、分野別モノクロ情報ページに掲載される。 上記のように、原告各情報誌の分野別モノクロ情報ページにおいては、あらかじめ講座情報を分類・配列する体系を設定し、講座情報をその体系に沿って分野別モノクロ情報ページに分類・配列するといった一連の過程に、創作的行為が含まれているのである。 このように設定されたツメ見出しとカプセルによる分類・配列体系は、ケイコとマナブ首都圏版平成14年4月号、同関西版平成14年4月号、同東海版平成14年4月号のいずれにも採用されており、それぞれ各地域での広告主から受注を受けた講座情報を、当該分類・配列体系に基づいてそれぞれの情報誌の分野別モノクロ情報ページにおいて分類・配列している。したがって、原告各情報誌平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページ部分は、その講座情報の分類・配列に創作性があり、それぞれ素材を講座情報とする編集著作物として著作権法上の保護を受けるものというべきである。また、同時に、上記原告各情報誌平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページ部分は、素材を分類配列体系の項目である「学ぶ内容」とする編集著作物として著作権法上の保護を受けるものというべきである。 イ 編集体系を構成する個々の分類項目を「素材」ととらえるべきであること 被告は、原告各情報誌において編集著作物の「素材」となり得るのは、原告各情報誌の紙面上に記載、表現されている具体的なスクール情報・講座情報以外にあり得ないと主張して、原告の主張を争うが、以下に述べるとおり、編集体系を構成する抽象的な要素も「素材」となり得るものであり、被告の主張は失当である。 (a) 著作権法は著作権として複製権のみならず翻案権(著作権法27条)も認めており、具体的表現でない内面的な表現も保護範囲に含まれることを認めている。例えばある小説を映画化した場合、その映画における個々の台詞が当該小説と異なっていたとしても、そのストーリーという内面的なものに同一性・類似性がある限り、小説の著作権者の承諾なく映画を製作した場合、翻案権侵害となる。すなわち、著作権法が翻案権という権利を認めていることから、著作権法上の保護範囲(=「表現」)は、外面的な表現のみに限定されるのではなく、内面的な領域まで及んでいる。 上記の理は編集著作物においても妥当し、編集著作物においても翻案権が認められている以上、編集著作物の「表現」も編集物の内面的な領域にまで及ぶこととなる。 そもそも「アイデアと表現の二分論」は、表現の自由や学問の自由等を確保し、他の者が創作する余地を残すことによって、情報を豊かにし、文化の発展に資すること等を根拠とするものであるのであって、その趣旨からしても、著作物の保護範囲である「表現」は、外形的・具体的なものと内面的・抽象的なものとを振り分ける物的な基準ではなく、著作権による保護を認めるべきものと認めるべきではないものとを振り分けるための規範的な概念である。そして、著作権の保護範囲(=「表現」)がどこまで及ぶかは、当該著作物の目的や性質に応じて、規範的に解釈されるべきものである。編集著作物の「表現」及びその構成要素である「素材」をどのように考えるかについては、法文上の根拠がない以上、著作権法の法目的に立ち返って考えなければならない (b) 「表現」という基準は上記のように規範的なものであり、編集著作物の編集体系であったとしても、それが内面的・抽象的であるというだけで直ちに「表現」ではないとして保護対象から除外することは許されない。むしろ、その基準は次のように考えるべきである。 すなわち、著作権法は著作者の権利を保護することを通じて、「文化の発展」に寄与することを目的としているところ(同法1条)、「文化」の世界は、特許法の規律する技術の世界と異なり、多様性の世界であるから、著作権法は、特許法のようにその保護要件として新規性や進歩性を要求することなく、ただ創作者各自が自らの個性や独自性を発揮し、多様な表現を生み出すことを要請している。 したがって、著作権の保護をどこまで認めるべきかを著作権法の法目的から考察するに、どのような創作活動にインセンティブを与えることが、結果として作品の豊富化、多様化を促進することになるかという観点から決せられるべきこととなる。 このような観点からすると、著作権法における「表現」とは、創作者の個性、多様性が発揮される領域、すなわち創作の幅のある領域ということができる。この「創作の幅」のある部分が著作物の「表現」であるということを編集著作物に当てはめると、具体的・外形的に印刷されていない編集体系であっても、選択又は配列の幅のある領域に属するものであれば、それは編集著作物の「表現」であるということができる。 「アイデアと表現の二分論」が表現の自由や学問の自由等を確保し、他の者が創作する余地を残すことによって、情報を豊かにし、文化の発展に資すること等を根拠とするものであることは、上述したとおりである。上記のように編集著作物における表現を「選択又は配列に幅のある領域」ととらえたとしても、他の者が創作する余地が残されており、かつ、そのような選択の余地において多様な創作活動をすることができるのであるから、むしろ文化の発展に寄与することになるのであり、なんら「アイデアと表現の二分論」に反することにはならない。 (c) 上述のとおり、選択又は配列に幅のある領域に属するものであれば、内面的・抽象的な編集体系であっても著作権法により「表現」として保護される。そして編集著作物における「表現」は、素材の選択又は配列によって構成される。したがって、編集著作物の「表現」(保護範囲)を形作る選択又は配列の対象たる「素材」もまた、編集著作物の外面的表現を構成する生の具体的な素材(本件でいうスクール情報・講座情報)に限られない。編集物の内面的な構成要素も、それが当該編集物の創作過程において編集者(著作者)の積極的な選択又は配列の対象となっている限り、「素材」ととらえることができる。 このように「素材」を抽象的にとらえることが許されることは、次の点からも明らかである。 現行著作権法は、旧法とは異なり「素材」を著作物に限定していない。このように現行著作権法における「編集著作物」の保護対象が大幅に拡張され、「素材」は、著作物であっても、非著作物であっても、あるいは著作物と非著作物との混合でも許されるようになった。さらに、現行著作権法が、「素材」に何ら限定を付していないため、「素材」概念をある程度弾力的に解釈することが可能となった。 このように、個々の素材自体の具体的な表現や詳細な内容が異なっていたとしても、素材を抽象化することにより、複製・翻案権侵害を認定することができるのである。 編集物の創作過程において編集者が積極的に選択又は配列の対象とするのは、編集物の外面的表現を構成する生の素材に限られず、編集者が選択又は配列を行う際にどのような要素に着目するかは、編集物によって大きく異なっている。現行著作権法における編集著作物は、画集や詩集といった芸術的な編集物から、新聞や雑誌といった情報誌までも含まれる。前者の芸術的な編集物においては、その素材たる絵や詩の持つ表現そのものに着目して編集活動がされるのに対し、後者の情報誌の編集物においては、素材の持つ巧拙や表現の独創性よりもむしろ各記事が取り扱う出来事やテーマの話題性・テーマ性に着目して素材の選択又は配列が行われる。このような場合における「素材」は、出来事やテーマというより抽象的なレベルでとらえることができる。 このように考えると、ある編集著作物を構成する「素材」をどのレベルまで抽象化してとらえることができるかという点は、編集者が実際に何に着目して編集活動を行ったかという観点から決せられなければならない。 そして特に、その素材の表現自体が代替的である事実的編集物の編集著作物及びその著作権の範囲をとらえるに当たっては、生の事実にとどまらず、より抽象化したレベルでとらえることが可能である。 したがって、情報誌のような編集著作物において、編集体系を「表現」としてとらえれば、その編集体系を構成する抽象的な分類項目のような要素はそれ自体が「素材」と位置付けられる。 (d) 上述の基準に照らして、原告の編集物たる原告各情報誌平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページにおけるツメ見出し・カプセルによる編集体系とスーパーインデックスにおける大分類と小分類による編集体系が、著作権によって保護される表現に該当するかどうかについて述べる。 まず、分野別モノクロ情報ページにおいては、大分類たるツメ見出しの設定、小分類たるカプセルの設定及びこれらの大分類と小分類の関係を関連付けるという手法によりその体系を構築しており、スーパーインデックスにおいても同様の体系が構築されているが、このような大分類・小分類及びその関連付けにより構築される編集体系は、原告各情報誌と同様のコンテンツを提供するインターネット上のウェブサイトで採用されている編集体系にみられるように、その選択配列の幅は非常に広い。 一方、同体系を構築した後に受注する広告の講座情報の配列については、そもそも講座情報は受注した以上原則として掲載しなければならず選択の幅はなく、また、あらかじめ詳細に編集体系が設定されていることから、どこに講座情報を配列するかは、その講座がどのような内容であるかということを正確に把握するという事実認定的要素が強く、その講座内容を基に自動的・機械的に配列されるのであり、やはり配列に幅があるとはいいがたい。 したがって、事実的編集物たる原告各情報誌において選択・配列に幅のある部分はこれらの編集体系であり、それが「表現」たりうることとなる。 (e) 上記のように、編集体系をもって「表現」ととらえることができる結果、当該選択・配列の対象となるべき「素材」は、講座情報やスクール情報といった外部的な素材というよりは、むしろ編集体系を構成する個々の分類項目というべきである。 ウ 被告による著作権侵害(1) (a) 上記イ記載のとおり、事実的編集物たる原告各情報誌においては、選択・配列に幅のある編集体系を「表現」ととらえ、それを構成する個々の分類項目を「素材」としてとらえることができる。 原告各情報誌平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページ部分が編集著作物性を認められるのは、読者が見たい講座の検索を容易に行うとともに各講座の比較検討をも容易に行うことができるようにするという目的の下に作成された分類・配列体系における小分類項目たるカプセルの分類、選択、配列に創意と工夫が存し、かつ、このようなツメ見出し・カプセルによる分類・配列体系に基づいて、原告各情報誌の編集担当者が、各スクールの講座がどのような学ぶ内容を有する講座かを指標として、あらかじめ定められた分類・配列体系に従って当該講座の情報を分野別モノクロ情報ページ部分に分類、配置したことによるものである。したがって、このようなツメ見出し・カプセルによる分類配列体系こそが分野別モノクロ情報ページにおける「表現」であり、これを構成する「学ぶ内容」(カプセルあるいは小分類とイコールとなるものである)が「素材」となるものである。 上記のように、原告各情報誌の分野別モノクロ情報ページにおける編集著作物の素材は、抽象的に「学ぶ内容」としてとらえれば足りることになる。 (b) 素材を抽象的に「学ぶ内容」ととらえると、別のスクールの講座や、同一スクールの別講座であっても学ぶ内容が同じであれば同一の素材として認識される。 それゆえ、原告各情報誌の分野別モノクロ情報ページにおける編集著作物の著作権が侵害されているか否かは、同一スクールの同一講座で比較するのではなく、同じ学ぶ内容が同じカプセル(小分類)・ツメ見出し(大分類)に分類・配列されているかどうかを判断すれば足りるのであって、個々の素材たる講座情報の具体的な表現や詳細な内容はもとより、当該講座が開講されているスクールや具体的な講座名が一致していることも必要でない。 このように素材たる講座情報を、学ぶ内容という抽象化した講座情報としてとらえ、同じ学ぶ内容を有する講座情報が同じカプセル・ツメ見出しに分類・配列されているかという視点から著作権侵害の成否を判断すれば足りるとすると、その著作権侵害の判断において、「ケイコとマナブ首都圏版平成14年4月号」と「ヴィー・スクール首都圏版の各号」といった対応関係で侵害の判断をする必要はなく、例えば「ケイコとマナブ東海版平成14年4月号の『分野別モノクロ情報ページ』とヴィー・スクール首都圏版平成15年5月1日号」という形での類否判断を行うことも許されることになる。 (c) もっとも、以下においては、念のため具体的に検討を行うこととするが、@ケイコとマナブ東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページとヴィー・スクール東海版各号のカテゴリー別スクール情報、Aケイコとマナブ首都圏版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページとヴィー・スクール首都圏版各号のカテゴリー別スクール情報、Bケイコとマナブ関西版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページとヴィー・スクール関西版各号のカテゴリー別スクール情報のそれぞれについて、「分野別モノクロ情報ページ」部分において分類・配列されている講座情報の種類、すなわちカプセル名に標記されている学ぶ内容の種類と「カテゴリー別スクール情報」に掲載されている学ぶ内容たる講座情報を比較すると、@ないしBのそれぞれについて、その多くが一致しており、かつ、その分類・配列も一致する。 当該一致部分において、原告各情報誌平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページ部分の編集著作物の創作性は十分表現されており、その創作的な表現が、被告各情報誌のカテゴリー別スクール情報部分において再製されている。 したがって、被告が、現在に至るまでカテゴリー別スクール情報を掲載した被告各情報誌各号を編集・販売する行為は、原告の編集著作物の複製権を侵害する行為である。 そして、@ヴィー・スクール東海版各号の「カテゴリー別インデックス」に掲載されているツメ見出し・カプセルのうちで、ケイコとマナブ東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページにおいて掲載されているツメ見出し・カプセルと一致するものは、別紙情報誌目録1記載の分類配列方法のとおりであり、Aヴィー・スクール首都圏版各号の「カテゴリー別インデックス」に掲載されているツメ見出し・カプセルのうちで、ケイコとマナブ首都圏版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページにおいて掲載されているツメ見出し・カプセルと一致するものは、別紙情報誌目録2記載の分類配列方法のとおりであり、さらに、Bヴィー・スクール関西版の「カテゴリー別インデックス」に掲載されているツメ見出し・カプセルのうちで、ケイコとマナブ関西版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページにおいて掲載されているツメ見出し・カプセルと一致するものは、別紙情報誌目録3記載の分類配列方法のとおりであるところ、今後も、被告において、別紙情報誌目録1ないし3記載の分類配列方法により講座情報を分類・配列し、それを掲載した被告各情報誌を編集・販売する蓋然性が高い。 なお、被告各情報誌のカテゴリー別スクール情報部分においては、原告各情報誌平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページに掲載されていない学ぶ内容及びそれに対する小分類(カプセル)があるが、当該不一致部分に被告の創作性はない。 仮に、被告各情報誌のカテゴリー別スクール情報部分において、講座情報の分類・配列に被告の創作性があるものとしても、上記一致部分において原告の編集著作物の表現上の本質的特徴を感得することができるから、原告の翻案権を侵害しているというべきである。 エ 被告による著作権侵害(2) ケイコとマナブ東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページに掲載される広告の広告主と、ヴィー・スクール東海版各号のカテゴリー別スクール情報に掲載される広告の広告主は、50パーセント程度の一致率であり、当該広告主の広告の分類の一致率も高い。ケイコとマナブ首都圏版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページとヴィー・スクール首都圏版各号のカテゴリー別スクール情報、ケイコとマナブ関西版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページとヴィー・スクール関西版各号のカテゴリー別スクール情報を比較した場合にも同様のことがいえる。 したがって、編集著作物における「素材」を最大限具体的にとらえ、原告各情報誌の分野別モノクロ情報ページにおける素材を特定のスクール講座の広告記事であるとしても、重複する範囲で原告の編集著作物を再製しているということができる。 また、被告が被告各情報誌の対象とする地域を、原告各情報誌と同一の首都圏・関西・東海地方に設定していること、及び、被告も認識しているとおり、原告各情報誌と被告各情報誌に共通する広告主が非常に多く、当該各地方におけるスクールの存在を調査する資料が原告各情報誌以外にはほとんど存在しないことからして、被告は原告各情報誌に掲載されている広告主を見て、その広告主を対象に営業を行っていることは明らかであり、素材たる講座情報に関する依拠性も明らかである。 さらに原告が主張している編集著作物性は、その素材たる講座情報の選択の創作性ではなく、あくまで分類・配列の創作性である。したがって被告各情報誌に掲載する講座情報が、被告の広告主から受注したものに限られるとしても、被告が受注した講座情報をどのように配列するかは、原告各情報誌に依拠しているのであって、その著作権侵害・依拠性が否定されるものではない。 したがって、「素材」について上記のように最大限具体的にとらえたとしても、ヴィー・スクール東海版各号のカテゴリー別スクール情報はケイコとマナブ東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページの著作権(編集著作物の著作権)を、ヴィー・スクール首都圏版各号のカテゴリー別スクール情報はケイコとマナブ首都圏版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページの著作権(編集著作物の著作権)を、ヴィー・スクール関西版各号のカテゴリー別スクール情報はケイコとマナブ関西版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページの著作権(編集著作物の著作権)をそれぞれ侵害しているということができる。 (被告の主張) ア 著作物性について 原告各情報誌の分野別モノクロ情報ページにおける講座情報の分類・配列方法については不知。その余は否認ないし争う。 原告が権利を主張する記事の配列方法、インデックス、アイコン、スクール情報の配列方法といった編集レイアウトは、単なるフォーマットのアイデアであって、こういったアイデアについては意匠権等の工業所有権により保護される余地があり得るとしても、著作権の保護の対象ではない。また、このような編集レイアウトのアイデアが素材であるスクール情報から切り離された場合に、それ自体独立の編集著作物となり得るものでもない。裁判例においても、広告や記事などの素材から離れたレイアウト自体が著作権によって保護されることはないと解している。したがって、原告が「編集著作物」に該当すると主張するスクール情報・講座情報の分類・配列構造及びインデックスやアイコン一覧表におけるスクール名等の分類・配列構造は、素材たるスクール情報を離れて編集著作物性を有するものではない。 イ 編集体系を構成する個々の分類項目を「素材」ととらえるべきであるとの主張について 原告は、事実的編集物たる原告各情報誌においては、抽象的な編集体系そのものが「表現」であり、それを構成する個々の分類項目が「素材」となり得ると主張するが、失当である。まず、著作権法による保護の対象となる「著作物」は、思想又は感情を創作的に「表現したもの」と定義されており(著作権法2条1項1号)、編集物に具体的に記載、表現されていない抽象的な「学ぶ内容」あるいは編集体系といっったようなものは「素材」とはなり得ない。 また、原告は、事実的編集物においては編集体系において創作性が発揮されると主張しながら、それを構成する分類項目が「素材」になると主張するが、編集体系が創作性を有する「選択又は配列」であると同時に創作性の有無を問わない「素材」にもなるという事態は、著作権法12条の想定していないところといわざるを得ない。 原告において、編集体系を構成する分類項目が「素材」であると主張している根拠は、要するに編集体系には創作性があるが講座情報やその当てはめには創作性がないということに尽きるようであるが、そもそも著作権法12条は「素材」については創作性を要求していないのであり、創作性がある部分が「素材」であるという主張は、著作権法12条の規定に適合しない。 したがって、抽象的な個々の分類項目が原告各情報誌の素材であるとする原告の主張は失当といわざるを得ない。スクール情報を整理・編集して掲載したスクール情報誌である原告各情報誌は、それが編集著作物になり得るとしても、選択又は配列の対象となる「素材」となり得るのは、紙面上に具体的に記載、表現されているスクールの名称・所在地等の具体的なスクール情報及び講座内容・日時・費用等の具体的な講座情報以外にあり得ない。そもそも読者の主たる関心事はスクール情報や講座情報といった事実情報であり、編集体系はこれを検索しやすくするための配列の工夫にほかならないわけであるから、スクール情報や講座情報こそが編集物である原告各情報誌及び被告各情報誌の「素材」に該当するのである。 具体的に誌面に印刷される講座情報とは全く別に編集配列そのものの保護を要求することは、要するに具体的な表現を離れたアイデアの保護を要求するものであり、アイデアと表現を区別して後者のみを保護するという著作権法の原則に反するものである。 原告は、事実的編集物においては編集体系が経済的に重要であるとして、具体的なコンテンツを離れた著作権保護の必要性を主張する。しかし、事実的編集物において重視され、経済的に価値を持つのは、搭載された事実の数と正確性であり、編集体系やフォーマットの価値はこれに比べてはるかに低い。事実的編集物については、事実の収集活動に最もコストがかかり、また利用者の関心も収集された事実の多さや正確性に集中するため、経済的な価値は素材である事実に集中している。 本件では、被告は、原告と同じように、自らのコストで広告主に対する営業と取材を行い、雑誌を編集し出版するという活動を行った上で被告各情報誌を発行しているものであり、知的財産権制度の枠組みを超えてまで原告の独占権を確保しなければならない強い必要性は存在しない。むしろ、ヒット商品については競合商品が発売されるのが自由主義経済の原則であり、このことは社会的にも是認されてきたところである。裁判例においても、デッドコピーの事案以外には、知的財産権侵害に該当しない行為を不法行為に該当すると判断したものは存在しない。 ウ 著作権侵害について 被告各情報誌のカテゴリー別スクール情報と原告各情報誌の分野別モノクロ情報ページに一致しない小分類が存在することは認め、その余は否認ないし争う。原告の著作権侵害(1)及び(2)の主張は、いずれも次に述べるとおり失当である。 (a) ツメ見出し及びカプセルによる分類・配列体系について 原告が主張するスクール情報・講座情報の分類・配列方法のうちツメ見出しについては、スクール情報・講座情報を分類・配列するという目的が共通することから必然的にある程度の類似が生じているものの、被告各情報誌は22分類、原告各情報誌は19分類であり分類数が異なること、分類名の大部分が異なること、配列方法が異なることなどが示すように、被告各情報誌のスクール情報・講座情報の分類・配列方法は、原告各情報誌のスクール情報・講座情報の分類・配列方法を模倣したものではない。また、被告各情報誌においては、ツメ見出しのみの一段階の分類で広告を配列しており、カテゴリー別スクール情報の欄に関しては、原告が原告各情報誌の分野別モノクロ情報ページにおいて採用していると主張する大分類(ツメ見出し)と小分類(カプセル)の2段階分類による編集配列は採用していない。 (b) また、編集著作物については、素材の共通性がなければ著作権侵害とはならないところ、原告各情報誌と被告各情報誌では、素材である具体的なスクール情報・講座情報に共通性がないので、著作権の侵害とはなり得ない。ここでいう共通性がないとは、被告各情報誌に掲載された具体的なスクール情報・講座情報は、被告が広告主からの情報に基づき被告自身が作成したものであって、原告各情報誌に依拠したものではないということである。もちろん、同一の広告主が原告各情報誌と被告各情報誌の両者に同一内容の広告掲載を依頼した場合に、結果として内容が共通となることはあるが、これが著作権侵害に該当しないことはいうまでもない。 (2) 分野別モノクロ情報ページ中のツメ見出し・カプセルの編集著作物性及び被告による著作権侵害の有無 (原告の主張) ア ツメ見出し・カプセルの編集著作物性 情報誌たる原告各情報誌では、毎号その講座情報が入れ替わるにもかかわらず同一の利便性を維持する必要性から、あらかじめ当該情報の分類・配列体系を詳細かつ具体的に設定している。原告各情報誌の広告記事の編集においては、この分類・配列体系を構築することで、大部分の創作的行為がされ、この創作的行為の結果たる分類・配列の体系は、広告記事の収集・分類・配列をする前に既に決定されている。この分類・配列体系は、原告各情報誌の分野別モノクロ情報ページにおいては、ツメ見出し、カプセルとしてそれぞれ表現されている。 この分類・配列体系たるツメ見出し、カプセルは、分野別モノクロ情報ページにおいて表現されたものであること、広告記事が入れ替わったとしても常に同一の利便性を提供するものであること、広告記事の収集・分類・配列の前に既に詳細かつ具体的に決定されているものであること、汎用性・客観性を有するものであることから、広告記事とは独立してそのもの自体が独立の編集著作物として保護される得る性質を備えているといえる。前記(1)の「原告の主張」イで述べたとおり、情報誌のような編集著作物においては、編集体系自体を創作性のある「表現」としてとらえることができ、その場合にはその編集体系を構成する分類項目を編集著作物における「素材」ととらえることができるところ、素材たるカプセルを分類・配列するツメ見出しを設定するという一連の行為に創作性を認めることができるから、分野別モノクロ情報ページのツメ見出し、カプセルは全体として編集著作物性を有するというべきである。 具体的には、@ケイコとマナブ首都圏版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページに表現されているツメ見出し及びカプセル、Aケイコとマナブ関西版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページに表現されているツメ見出し及びカプセル、Bケイコとマナブ東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページに表現されているツメ見出し及びカプセルは、編集著作物として保護されるものである。 上記のように、ツメ見出し及びカプセルは、全体として独立の編集著作物として保護されるものである。仮にツメ見出し及びカプセルを広告記事と独立して保護しないと、次に述べるように、妥当な結論が得られないこととなる。 すなわち、原告各情報誌の分野別モノクロ情報ページにおける大きな特徴の一つは、あらかじめ同ページに掲載される広告記事の分類・配列体系が定められており、その分類・配列体系に基づいて半ば自動的に広告記事が配列されていくという点にある。とりわけ情報量が膨大である原告各情報誌においては、その分類・配列体系が具体的かつ詳細に定められているため、広告記事の分類・配列は、半ば自動的となる。このように半ば自動的に広告記事を分類・配列し得る体系を構築することにより、その汎用性・客観性の度合いも増すものであり、そのため、被告各情報誌のような他の雑誌においても、原告各情報誌における分類・配列体系を利用することにより、原告各情報誌に掲載されていない広告記事であっても、同様に分類・配列することができる。 このように優れた分類・配列体系(詳細に体系を構築されているため客観性・汎用性を有する分類・配列体系)を盲目的に「アイデア」と考えるならば、優れた編集体系を有する編集物ほど、他人に模倣されやすく、その価値を著しくおとしめるという矛盾を生じてしまう。 したがって、このような性質を有する原告各情報誌における分類・配列体系については、広告記事とは別に、その体系そのものを編集著作物として保護する必要性が高い。それゆえ、このような体系を著作物としての保護の範囲外に置くことは、著しくその妥当性を欠くのである。 イ 被告による著作権侵害 このようにツメ見出し・カプセルの体系それ自体を編集著作物としてとらえ、同一のカプセルが同一のツメ見出しに分類・配列されているかという観点から著作権侵害の判断をすれば足りるとすると、その著作権侵害の判断においては、ケイコとマナブ東海版平成14年4月号とヴィー・スクール東海版の各号といった対応関係で侵害の判断をする必要はなく、例えば、ケイコとマナブ東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページとヴィー・スクール首都圏版の平成15年5月1日号とで著作権侵害の判断をすることも許されることとなる。 もっとも、ここでは念のため、やや具体的に検討すると、@ケイコとマナブ東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページに表現されている小分類たるカプセルと、ヴィー・スクール東海版各号のカテゴリー別スクール情報に表現されている学ぶ内容を示す小分類、Aケイコとマナブ首都圏版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページに表現されている小分類たるカプセルと、ヴィー・スクール首都圏版各号のカテゴリー別スクール情報に表現されている学ぶ内容を示す小分類、Bケイコとマナブ関西版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページに表現されている小分類たるカプセルと、ヴィー・スクール関西版各号のカテゴリー別スクール情報に表現されている学ぶ内容を示す小分類を、それぞれ比較すると、その多くが大分類(ツメ見出し)による分類に至るまで一致する。 当該一致部分において、原告各情報誌平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページにおけるツメ見出し・カプセルの編集著作物の創作性は十分表現されており、その創作的な表現が、被告各情報誌のカテゴリー別スクール情報に掲載される小分類と大分類(ツメ見出し)において再製されている。 したがって、被告が、現在に至るまでカテゴリー別スクール情報において小分類・大分類を表示した被告各情報誌各号を編集、販売する行為は、原告各情報誌のツメ見出し・カプセルの著作物(編集著作物)に関する原告の複製権を侵害する行為である。 そして、@ケイコとマナブ東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページにおいて掲載されているツメ見出し・カプセルと一致するヴィー・スクール東海版平成15年5月1日号のツメ見出し・カプセルは、別紙「情報誌目録1」記載の分類配列方法のとおりであり、Aケイコとマナブ首都圏版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページにおいて掲載されているツメ見出し・カプセルと一致するヴィー・スクール首都圏版平成15年5月1日号のツメ見出し・カプセルは、別紙「情報誌目録2」記載の分類配列方法のとおりであり、Bケイコとマナブ関西版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページにおいて掲載されているツメ見出し・カプセルと一致するヴィー・スクール関西版平成15年5月1日号のツメ見出し・カプセルは、別紙「情報誌目録3」記載の分類配列方法のとおりであるところ、今後も、被告において、別紙情報誌目録1ないし3記載の分類配列方法により講座情報を分類・配列し、それを掲載した被告各情報誌を編集・販売する蓋然性が高い。 なお、被告各情報誌のカテゴリー別スクール情報部分において掲載される小分類には、原告各情報誌平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページに掲載されていない小分類(カプセル)があるが、当該不一致部分に被告の創作性はない。 仮に、被告各情報誌のカテゴリー別スクール情報に掲載されている小分類において、講座情報の分類・配列に被告の創作性があるものとしても、未だ上記一致部分において原告の編集著作物の表現上の本質的特徴を感得することができ、原告の翻案権を侵害しているというべきである。 さらに、上記の類似性及び原告各情報誌の創刊以前にこれと同一の又はこれに類する情報媒体は存在しなかったことからして、依拠性も明らかである。 上記によれば、被告が、@ヴィー・スクール東海版各号のカテゴリー別スクール情報において大分類・小分類を表示し、ヴィー・スクール東海版各号を製作・販売する行為は、原告のケイコとマナブ東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページに表示したツメ見出し・カプセルの著作権(編集著作物の著作権)を、Aヴィー・スクール首都圏版各号のカテゴリー別スクール情報において大分類・小分類を表示し、ヴィー・スクール首都圏版各号を製作・販売する行為は、原告のケイコとマナブ首都圏版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページに表示したツメ見出し・カプセルの著作権(編集著作物の著作権)を、Bヴィー・スクール関西版各号のカテゴリー別スクール情報において大分類・小分類を表示し、ヴィー・スクール関西版各号を製作・販売する行為は、原告のケイコとマナブ関西版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページに表示したツメ見出し・カプセルの著作権(編集著作物の著作権)を、いずれも侵害するものである。 (被告の主張) ア 著作物性について 原告各情報誌における広告記事の編集方法は不知、その余は争う。前記(1)の「被告の主張」ア、イにおいて述べたように、素材たる具体的なスクール情報・講座情報の分類・配列構造は、単なるアイデアであって著作権による保護の対象ではない。 イ 著作権侵害について 被告各情報誌のカテゴリー別スクール情報と原告各情報誌の分野別モノクロ情報ページに一致しない小分類が存在することは認め、その余は否認ないし争う。被告各情報誌と原告各情報誌のツメ見出しにおいては、スクール情報・講座情報を配列するという目的が共通することから必然的にある程度の類似が生じているものの、前記(1)の「被告の主張」ウ(a)で述べたように、被告各情報誌におけるスクール情報・講座情報の分類・配列方法は独自のものであり、原告各情報誌を模倣したものではない。また、被告は、被告各情報誌のカテゴリー別スクール情報において、原告が原告各情報誌について主張しているような大分類と小分類による2段階方式の分類は採用していない。被告が2段階分類を行っているのは、カテゴリー別インデックスという索引ページのみであり、スクール情報本文においてはあくまでもツメ見出しのみで分類し、カプセルの記載内容はスクール情報の配列には用いられていない。 (3) 原告各情報誌における「学べる内容から探せるスーパーINDEX」の編集著作物性及び被告による著作権侵害 (原告の主張) ア 原告各情報誌平成14年4月号の各版には、「学べる内容から探せるスーパーINDEX」(以下「スーパーインデックス」という。)が掲載されている。このスーパーインデックスは、原告各情報誌に常設ツメと特集ツメとが存在していることから、原告各情報誌の読者が常設ツメ及び特集ツメに収録されている講座情報を比較検討し、かつ、容易にその掲載ページを検索できるようにするため、次のような工夫の下、講座情報に掲載された講座を有するスクール名等を分類・配列し掲載している。 @ 平成2年以来、原告各情報誌に掲載されたスクール・講座の広告記事及びそれらを分類する指標である小分類(いわゆるカプセルに対応。以下同様)にどのような種類があるのかを、広く調査する。 A 収集した広告記事に対応する講座内容を示す指標である小分類は、 @ 小分類を読者の視点から、詳細になりすぎず、かつ概括的になりすぎないよう細分化する、 A 小分類の表記は、社会的に浸透している言葉を選ぶ、 B 小分類の文言が商標権侵害とならない言葉で表現する、 C 読者保護の観点から不相当な表記でないかをチェックする 等の観点から小分類の種類を限定する。 B Aで取捨選択した小分類を基に、それらをまとめる大分類(絶対分野)を設定する。その大分類の設定に当たっては、読者のニーズに配慮しつつ、ツメ見出しよりも細分化し、検索の利便性を追求する。 C Bで設定した分類の体系を基に、原告各情報誌平成14年4月号以降に掲載される各スクールの有する講座の内容に応じて小分類を割り当てるとともに、当該小分類を割り当てた講座を有するスクール名を小分類名下に記載する。さらに大分類名下に、当該小分類名を記載してインデックスを作成する。 前記(1)の「原告の主張」イにおいて述べたように、情報誌のような編集著作物においては、編集体系自体を創作性のある「表現」としてとらえることができ、その場合にはその編集体系を構成する分類項目を編集著作物における「素材」ととらえることができるところ、原告各情報誌のスーパーインデックスにおいては、あらかじめ特定の講座を有するスクールの名称を分類・配列する体系を設定し、当該スクール名等をその体系に沿って、分類・配列するといった一連の過程に創作的行為が含まれているのである。このように設定された大分類と小分類による分類・配列体系は、原告各情報誌平成14年4月号のいずれにも採用されており、それぞれ各地域で広告主から受注を受けた講座情報を有するスクール名を当該分類・配列体系に基づいて、原告各情報誌のスーパーインデックス部分に分類・配列してスーパーインデックスを作成している。 したがって、@ケイコとマナブ東海版平成14年4月号のスーパーインデックス、Aケイコとマナブ首都圏版平成14年4月号のスーパーインデックス、Bケイコとマナブ関西版平成14年4月号のスーパーインデックスは、それぞれ、スクール名等の分類・配列に創作性があり、全体が編集著作物として著作権法による保護を受ける。 なお、原告が著作権侵害の主張をするに当たって原告各情報誌平成14年4月号を選択したのは、ヴィー・スクール東海版の創刊された平成14年8月26日以前に発行された原告各情報誌に依拠して、被告が被告各情報誌を編集・発行していると、考えられるためである。特に被告各情報誌における分類・配列の同一性からすれば、被告は、少なくとも原告各情報誌の平成14年4月号に依拠していることは明らかである。 イ 上記アにおいて述べたとおり、原告各情報誌平成14年4月号のスーパーインデックスは、スクール名等の分類・配列に創作性があり、編集著作物として保護されるものと解されるが、この編集著作権が侵害されているかどうかは、上記アで述べた編集著作物の性質からすれば、同一スクール名が同じ小分類・大分類に分類・配列されているかどうかを判断すれば足りることとなる。 そこで、ケイコとマナブ東海版平成14年4月号のスーパーインデックスとヴィー・スクール東海版各号のカテゴリー別インデックス、ケイコとマナブ首都圏版平成14年4月号のスーパーインデックスとヴィー・スクール首都圏版各号のカテゴリー別インデックス、ケイコとマナブ関西版平成14年4月号のスーパーインデックスとヴィー・スクール関西版各号のカテゴリー別インデックスを、それぞれ比較してみると、表示されているスクール名はその多くが一致しており、その大分類・小分類の一致率も高い。 上記のように、素材を特定のスクール名等ととらえ、類比を判断した場合において、スクール名の重複する範囲では、その分類・配列の多くが一致しているのであるから、その範囲において、被告各情報誌のカテゴリー別インデックスは、原告各情報誌平成14年4月号のスーパーインデックスの編集著作物を再製していると評価できる。また、分野別モノクロ情報ページの著作権侵害において述べたのと同様、被告は、原告各情報誌に掲載されている広告主を見て、その広告主を対象に営業を行っていたものであることからすれば、分類、配列のみならず、素材たるスクール名等についても依拠性は明らかである。 上記によれば、ヴィー・スクール東海版各号のカテゴリー別インデックスはケイコとマナブ東海版平成14年4月号のスーパーインデックスの著作権(編集著作物の著作権)を、ヴィー・スクール首都圏版各号のカテゴリー別インデックスはケイコとマナブ首都圏版平成14年4月号のスーパーインデックスの著作権(編集著作物の著作権)を、ヴィー・スクール関西版各号のカテゴリー別インデックスはケイコとマナブ関西版平成14年4月号のスーパーインデックスの著作権(編集著作物の著作権)をそれぞれ侵害しているというべきである。 (被告の主張) ア 著作物性について 原告各情報誌にスーパーインデックスが掲載されていること及びスーパーインデックスの内容及び作成方法は不知、その余は争う。 イ 著作権侵害について 原告の主張は争う。次に述べるとおり、原告の著作権侵害の主張は失当である。 (a) 被告は、被告各情報誌の分野別インデックスについては、ツメ見出しに対応する(ただしタイトルは異なる)22の大分類と、小見出しに対応する小分類の2段階の分類を行っている。これに対して、原告は、原告各情報誌のスーパーインデックスにつき、ツメ見出し(19項目)と対応しない32項目の大分類とカプセルに対応する小分類の2段階の分類を行っている。 このように、原告各情報誌と被告各情報誌では分類項目数が異なる。加えて、原告と被告では、講座の分野別のインデックスの大分類をツメ見出しに一致させる方針(被告)をとるか、ツメ見出しと異なったより細かい分類を大分類として用いるか(原告)という編集方針の差異がある。 また、原告各情報誌と被告各情報誌では、大分類の名称がいずれも異なっている。さらに、講座名称に由来する部分の大きい小分類の分類名には、例えば外国語名、資格名、楽器名及び技名のように、具体的な講座内容を表す固有名詞的な名称(この選択には創作性がないことは明白である。)で必然的に共通とならざるを得ないものが多数含まれているが、それ以外の選択の幅のある部分については大きく異なっている。 (b) このように、原告各情報誌と被告各情報誌のインデックスでは、スクール名等の分類・配列方法が異なるほか、編集著作物については素材の共通性がなければ著作権の侵害とはならないところ、被告各情報誌のインデックスの素材であるスクール名等は、被告の広告主であるスクール等の名称であり、原告各情報誌のインデックスにおけるスクール名等に依拠したものではないので、著作権の侵害となり得ない。 (4) 原告各情報誌におけるスーパーインデックスの大分類・小分類表示の編集著作物性及び被告による著作権侵害 (原告の主張) ア 原告各情報誌のスーパーインデックスにおいては、広告主からの受注を行う前にあらかじめ詳細かつ具体的に大分類・小分類の分類・配列体系を構築していること、それゆえ、毎月毎号、その情報が入れ替わるにもかかわらず、講座情報の掲載がある限りその同一性を維持していること、当該分類・配列体系を構築することに創作的行為の大部分がなされていること、当該分類配列体系は原告各情報誌のすべてに共通して用いられている点からもわかるとおり客観性・汎用性を有することに照らせば、原告各情報誌のスーパーインデックスの大分類・小分類の表示は、それ自体独自の編集著作物にほかならない。 前記(1)の「原告の主張」イに述べたように、情報誌のような編集著作物においては、編集体系自体を創作性のある「表現」としてとらえることができ、その場合にはその編集体系を構成する分類項目を編集著作物における「素材」ととらえることができるところ、原告各情報誌のスーパーインデックスにおける大分類・小分類を編集著作物としてとらえると、次のように創作性を説明できる。すなわち、小分類を素材ととらえ、このような素材を選択した上、その小分類を特定の大分類の下に配列している。このような一連の創作的活動には、選択・配列の創作性が存在する。したがって、原告各情報誌のスーパーインデックスにおける大分類・小分類は全体として編集著作物として保護されるのである。 具体的には、原告の主張するところの大分類・小分類という編集著作物は、@ケイコとマナブ東海版平成14年4月号に表現されている大分類及び小分類、Aケイコとマナブ首都圏版平成14年4月号に表現されている大分類及び小分類、Bケイコとマナブ関西版平成14年4月号に表現されている大分類及び小分類の3種類である。 イ このように原告各情報誌のスーパーインデックスに表現された大分類・小分類は独立した著作物であるところ、被告各情報誌のカテゴリー別インデックスにおいて同じ大分類と小分類が再製されていれば、上記著作物の著作権侵害であると判断できる。したがって、具体的な著作権侵害の判断においては、必ずしも、「ケイコとマナブ首都圏版平成14年4月号」と「ヴィー・スクール首都圏版の各号」といった対応関係で侵害の判断をする必要はなく、例えば「ケイコとマナブ東海版平成14年4月号の『スーパーインデックス』とヴィー・スクール首都圏版平成15年5月1日号」という形での類否判断を行うことも許される。 もっとも、以下においては、念のため具体的に検討を行うこととし、@ケイコとマナブ東海版平成14年4月号のスーパーインデックスに掲載される大分類・小分類の著作物がヴィー・スクール東海版各号のカテゴリー別インデックス部分において複製ないし翻案されているか、Aケイコとマナブ首都圏版平成14年4月号のスーパーインデックスに掲載される大分類・小分類の著作物がヴィー・スクール首都圏版各号のカテゴリー別インデックス部分において複製ないし翻案されているか、Bケイコとマナブ東海版平成14年4月号のスーパーインデックスに掲載される大分類・小分類の著作物がヴィー・スクール東海版各号のカテゴリー別インデックス部分において複製ないし翻案されているか、という点について検討することとする。 そこで、@ケイコとマナブ東海版平成14年4月号のスーパーインデックスに表現されている小分類とヴィー・スクール東海版各号のカテゴリー別インデックスに表現されている学ぶ内容を示す小分類、Aケイコとマナブ首都圏版平成14年4月号のスーパーインデックスに表現されている小分類とヴィー・スクール首都圏版各号のカテゴリー別インデックスに表現されている学ぶ内容を示す小分類、Bケイコとマナブ関西版平成14年4月号のスーパーインデックスに表現されている小分類とヴィー・スクール関西版各号のカテゴリー別インデックスに表現されている学ぶ内容を示す小分類を、それぞれ比較すると、その多くが大分類による分類に至るまで一致する。 当該一致部分において、原告各情報誌平成14年4月号のスーパーインデックスにおける大分類・小分類の編集著作物の創作性は十分表現されており、その創作的な表現が、被告各情報誌のカテゴリー別インデックスに掲載される小分類と大分類において再製されている。 したがって、被告が、現在に至るまで被告各情報誌のカテゴリー別インデックスにおいて小分類・大分類を表示した被告各情報誌を編集・販売する行為は、原告各情報誌平成14年4月号のスーパーインデックスに表現された大分類・小分類の編集著作物の複製権を侵害する行為である。 そして、@ケイコとマナブ東海版平成14年4月号のスーパーインデックスに表現されている大分類・小分類と一致するヴィー・スクール東海版平成15年5月1日号のカテゴリー別インデックスに表示されている大分類・小分類は、別紙「情報誌目録4」記載の分類配列方法のとおりであり、Aケイコとマナブ首都圏版平成14年4月号のスーパーインデックスに表現されている大分類・小分類と一致するヴィー・スクール首都圏版平成15年5月1日号のカテゴリー別インデックスに表示されている大分類・小分類は、別紙「情報誌目録5」記載の分類配列方法のとおりであり、Bケイコとマナブ関西版平成14年4月号のスーパーインデックスに表現されている大分類・小分類と一致するヴィー・スクール関西版平成15年5月1日号のカテゴリー別インデックスに表示されている大分類・小分類は、別紙「情報誌目録6」記載の分類配列方法のとおりであるところ、今後も、被告において、別紙情報誌目録4ないし6記載の分類配列方法により講座情報を分類・配列し、それを掲載した被告各情報誌を編集・販売する蓋然性が高い。 なお、被告各情報誌のカテゴリー別インデックスにおいては、原告各情報誌平成14年4月号のスーパーインデックスに掲載されていない小分類があるが、当該不一致部分に被告の創作性はない。 仮に、被告各情報誌のカテゴリー別インデックスに掲載されている小分類において、講座情報の分類・配列に被告の創作性があったとしても、未だ上記一致部分において原告の編集著作物の表現上の本質的特徴を直接感得することができ、被告は、原告の翻案権を侵害しているというべきである。 さらに、上記の類似性及び原告各情報誌の創刊以前にこれと同一の又はこれに類する情報媒体は存在しなかったことからすれば、依拠性も明らかである。 上記によれば、被告が、@ヴィー・スクール東海版各号のカテゴリー別インデックスにおいて大分類・小分類を表示し、ヴィー・スクール東海版各号を製作・販売する行為は、原告のケイコとマナブ東海版平成14年4月号のスーパーインデックスに表示した大分類・小分類の著作権(編集著作物の著作権)を、Aヴィー・スクール首都圏版各号のカテゴリー別インデックスにおいて大分類・小分類を表示し、ヴィー・スクール首都圏版各号を製作・販売する行為は、原告のケイコとマナブ首都圏版平成14年4月号のスーパーインデックスに表示した大分類・小分類の著作権(編集著作物の著作権)を、Bヴィー・スクール関西版各号のカテゴリー別インデックスにおいて大分類・小分類を表示し、ヴィー・スクール関西版各号を製作・販売する行為は、原告のケイコとマナブ関西版平成14年4月号のスーパーインデックスに表示した大分類・小分類の著作権(編集著作物の著作権)を、いずれも侵害するものである。 (被告の主張) ア 著作物性について 原告各情報誌におけるスーパーインデックスの作成方法は不知。その余は争う。前記(1)の「被告の主張」のアで述べたとおり、素材たるスクール情報・講座情報の分類・配列構造は、単なるアイデアであって著作権による保護の対象ではない。 イ 著作権侵害について 被告各情報誌のカテゴリー別インデックスと原告各情報誌のスーパーインデックスに一致しない小分類が存在することは認め、その余は否認ないし争う。 前記(3)の「被告の主張」イに述べたとおり、被告各情報誌のカテゴリー別インデックスにおいては、分類項目数、編集方針及び分類の名称が原告各情報誌のスーパーインデックスとは異なっている。このことが示すように、被告は独自の分類配列方法に基づきスクール情報・講座情報を分類・配列している。 (5) 原告各情報誌における「通学アイコン一覧表」の編集著作物性及び被告による著作権侵害の有無 (原告の主張) ア 通学アイコン一覧表の創作性 原告は、平成14年4月号からの原告各情報誌のリニューアル(「誌面構成の刷新」をいう。以下同じ。)に際し、原告各情報誌の読者が一目瞭然に各スクール・講座の特徴を把握し、容易にスクール・講座の情報を比較できるようにすることを目的として、スクール・講座情報にスクールの特色や講座の特色を付記することとし、そのために、あらかじめ読者に関心の高い情報の類型をアイコンとして選択して分類した表を作成することとした。それが原告通学アイコン一覧表及び原告通信アイコン一覧表である(別紙「原告通学アイコン一覧表」及び別紙「原告通信アイコン一覧表」参照。以下、両者を併せて「原告アイコン一覧表」ということがある。)。 原告通学アイコン一覧表は、次に述べるとおり高い創作性を有する。 (a) 選択の創作性 平成13年1月ころ、原告各情報誌の編集担当者は、@過去3年分のケイコとマナブ首都圏版の広告記事すべて、A創刊以来原告各情報誌に添付されていた読者アンケートはがきのフリーコメント欄に記載された読者の回答、B原告において年に2回行われていた読者調査の結果報告書を基に、各スクールのセールスポイントや特徴と考えられる情報を抽出してまとめたところ、全部で831種類に上った。原告各情報誌の編集担当者は、この831種類の情報を基礎に、編集担当者間に蓄積されていた経験や知識を用いて、さらにセールスポイント・特徴となるべき情報を加えるなどしながら、原告各情報誌の読者において関心が高い特色情報であって、その有無により読者がスクール・講座情報を比較検討することが容易になると考えられる情報を選択していったのである。 原告各情報誌の編集担当者6名は、約2か月間にわたり検討に検討を重ね、分野別項目チェックに記載された831種類のスクール・講座のセールスポイント・特徴の中から、161種類を選択し、「スペック一覧表(暫定案)」を作成した。 161種類のセールスポイント・特徴の選択にあたっては、@スクール・講座に関する原告各情報誌の読者の関心事を明示している事項といえるか、A原告各情報誌の読者にとって適切にスクール・講座情報を比較検討することができるか、という大きな視点に立って行われた。読者の関心事については、現在の読者が関心を持っている事項の探求のみならず、将来読者の関心事となるものも含め検討し、スクール・講座のセールスポイント・特徴を選択した。このような選択ができるのは、創刊以来培ってきた原告各情報誌の編集担当者の知識と経験があってこそであることはいうまでもない。 このようにして161種類のセールスポイント・特徴が選択され、この段階において、原告通学アイコン一覧表の原形ができあがったのであるが、未だ原告通学アイコン一覧表において選択されている「シャワー完備」、「留学手続き代行」、「レベルチェ」、「学割有り」等のアイコンは含まれておらず、逆に「スペック一覧表(暫定案)」において選択されていた「オーディション」、「キャンペーン」、「有名人OB」、「お出かけおケイコ」、「アットホーム」、「オンナを磨く」等のセールスポイント・特徴は、後の検討によりその選択から外されていくのである。 原告各情報誌の編集担当者は、約3か月間にわたり、上記のとおり作成されたスペック一覧表(暫定案)の改良作業を行った。改良作業においては、編集担当者の認識と、広告主と直接に関わりを持つ原告の営業担当者やケイコとマナブの読者との間の認識にずれがないかについての検証として、原告の営業担当者に対するヒアリング及び原告各情報誌の読者モニターに対するアンケートを実施した。上記のヒアリング及びアンケートの結果を踏まえて、ケイコとマナブの編集担当者は、@読者に混乱を来すような内容不明確なアイコンかどうか、A複数の事項を含むアイコンを分割してアイコン化すべきかどうかなどの視点から、アイコンを整理統合し、さらに、分野別項目チェック作成時には捕捉できなかったスクール・講座のセールスポイント・特徴を上記ヒアリング・アンケートの結果の中から選択した結果、スペック一覧表(暫定案)に記載されたセールスポイント・特徴から約45種類を削除するとともにセールスポイント・特徴を約20種類加えるなどの取捨・選択を行い、72種のアイコンとしたのである。 原告各情報誌の編集担当者は、原告社内の関係者の協力の下、さらに約1か月間にわたりアイコンの精査を行った。そこでは、アイコンの表記により、読者クレームの原因となるか否かという視点を中心として、アイコンの取捨・選択が行われた。 原告各情報誌の編集担当者は、上記の取捨・選択の結果をたたき台に、原告の営業担当者から意見を出させ、さらに数種類のアイコンを削除するとともに数種類のアイコンを追加するなどして、71種類のアイコンからなる原告通学アイコン一覧表を完成させたのである。 上記のように、原告各情報誌の編集担当者を中心とした原告社員の創意と工夫により、当初831種類リストアップしたスクール・講座のセールスポイント・特徴を様々な観点から追加・変更・削除した結果、71種類のアイコンを選択するに至ったものであり、この点に照らせば、その選択の創作性が非常に高いことは明らかである。 (b) 分類・配列の創作性 原告通学アイコン一覧表においては、@「スクール便利ポイント」、A「特長アイコン」、B「○得情報アイコン」という3分類を用いて、各アイコンを分類・配列している。 この分類・配列は、原告各情報誌の読者にスクール・講座の比較検討ポイントを的確に伝え理解させる等の視点から設定されたものである。選択されたアイコン自体の分類方法には、広い選択の幅があり、かつ、原告各情報誌の編集担当者は、各分類項目にどのアイコンを分類するかについても幾度となく試行錯誤を重ねている。 このように、アイコンの分類・配列は、誰が行っても同様になる類のものではなく、原告通学アイコン一覧表における分類・配列についても高い創作性が存在することは明らかである。 (c) まとめ 上記の検討から明らかなとおり、原告通学アイコン一覧表は、読者にスクール・講座の比較検討ポイントを的確に伝え理解させる等の視点、並びに広告主に対しより魅力的な講座づくりのポイントを提供する資料となるように、読者の関心が高いと考えられるスクール・講座の特色を選択して分類したものであり、いずれも、その選択及び配列において創意工夫がなされたものであって、高度の創作性が存在するものである。 イ 著作権侵害 被告各情報誌のいずれにおいても、「ヴィー・スクール スクール情報の見方・読み方・使い方」において「Vee Schoolならスクールの各種サービスや講座特典の魅力が一目でわかる!」と題する一覧表(以下、「被告通学アイコン一覧表」という。)が掲載されている。同一覧表に掲載されているマーク、説明文及びアイコンの分類は別紙「アイコン一覧表目録1」記載のとおりである。 原告通学アイコン一覧表(平成14年4月号掲載)と被告通学アイコン一覧表を比較すれば、被告通学アイコン一覧表が原告通学アイコン一覧表のデッドコピーであることは明らかであるが、さらに敷衍して両者を比較対照すると、次の表のようになる(網掛け部分は不一致の部分)。
上記の対照表からも明らかなとおり、被告通学アイコン一覧表では、原告通学アイコン一覧表に記載されているアイコン71種類のうち69種類のアイコンが用いられている。そして、原告の選択したアイコンのほぼすべてに、数個のアイコンを付加した上、原告通学アイコン一覧表の「スクール便利ポイント」、「特長アイコン」、「○得情報アイコン」に対応する「おすすめチェック」、「特長アイコン」(「講座選びのポイント」)、「得トクアイコン」(「○得ポイント」)の3分類によって各アイコンを分類しているのである。なお、被告通学アイコン一覧表にて付加されたアイコン(上記対照表網掛け部分)は、例えば本来は講座の特徴を示す表示であるにもかかわらず、スクールの特徴を示す「おすすめチェック」に分類されたり、また講座情報には実際に付されることがほとんどないアイコンであるなど、それらのアイコンを付加したことになんらの創作性も認められない。 このように、被告は、被告通学アイコン一覧表を作成するに当たって原告による素材たるアイコンの選択及び分類(配列)の創作性を利用するものであって、原告通学アイコン一覧表の著作物(編集著作物)の複製権ないし翻案権を侵害することは明らかである。 (被告の主張) ア 原告アイコン一覧表の創作性について 原告の主張は争う。 「アイコン」とは、中古車や住宅など各種広告情報誌において、多くの広告に共通して記載されるべき情報をキーワードやロゴなどを用いて簡潔に表示したものである。アイコンにより少ないスペースで多くの情報を掲載できるようになるとともに、利用者による広告相互間の比較が容易になるため、アイコンは広告情報誌において広く用いられている。多数の広告主が共通してアピールしたい一般的な内容をアイコンで表示し、個々の広告主固有の特徴やアピールは自由記載欄に文章で表示するというのが通常の広告情報誌のスタイルである。また、当該広告情報誌で使用されているアイコンを列挙して説明を加えたものが「アイコン一覧表」であり。書籍や地図の略語一覧や凡例に相当するものである。 被告各情報誌と原告各情報誌は、ともに各種スクールの広告情報誌であり、同業の広告主であれば受講者にアピールしようとする内容は必然的に類似してくる。まして、アイコンは複数の広告主が共通してアピールするポイントとなる情報を表すものであるから、アイコンにより表示すべき事項の選択肢は非常に限られてくる。各種スクールが共通して受講者に提供しようとする情報(アピールポイント)は、例えばレッスン時間、レッスンの予約制や振替制度、少人数制や担任制などの授業スタイル、駅前、無料体験、説明会、月謝制等の料金体系などであり、これらは誰が選択してもほとんど差異が生じないものであり、このような必然的な選択は、そもそも創作性がないというべきである。 イ 著作権侵害について 被告各情報誌に被告通学アイコン一覧表が掲載されていること、被告通学アイコン一覧表の内容及び原告による対比の主張については不知。被告通学アイコン一覧表が原告通学アイコン一覧表のデッドコピーであること及び著作権の侵害については否認ないし争う。 被告通学アイコン一覧表は、被告各情報誌のスクール情報・講座情報欄で使用されている全てのアイコンのうち、各スクール情報欄の「おすすめチェック!」欄で使用されているアイコンを「おすすめチェック!」欄に、個々の講座情報欄で使用されているアイコンを内容に応じて「講座選びのポイント」欄又は「○得ポイント」欄にそれぞれ列挙して説明を加えたもので、原告通学アイコン一覧表の選択・配列方法に依拠して作成されたものではない。 被告通学アイコン一覧表と原告通学アイコン一覧表は、どのような事項をアイコンで表示するのかというアイデア面ではスクール情報の提供という雑誌の目的の共通性から結果として相互にある程度類似しているが、まずアイコン一覧表のマークの説明の文章表現は大きく違っているものであるし、アイコン一覧表の形状や色彩、レイアウトなどの視覚的デザインにおいても両者は明らかに異なっているものであって、文章、レイアウト、視覚的なイメージといった具体的な表現については相互に大きく異なっている。著作権は特許権等の工業所有権と異なり、アイデアではなく具体的な表現を保護するものであるから、具体的な表現において大きく異なっている以上、著作権侵害は成り立たないというべきである。 (6) 原告各情報誌における「通信アイコン一覧表」の編集著作物性及び被告による著作権侵害の有無 (原告の主張) ア 原告通信アイコン一覧表の創作性 前記(5)の「原告の主張」アで述べたとおり、原告は平成14年4月号からの原告各情報誌のリニューアルに際し、原告通信アイコン一覧表を掲載した。 原告通信アイコン一覧表は、次に述べるとおり高い創作性を有する。 (a) 選択の創作性 原告通信アイコン一覧表は、わずか2か月あまりの間に作成する必要があったため、原告の編集・発行する「家で楽しく学ぶ本」の「スーパーINDEX」で使用されていた通信講座の有する特徴・サービスを示す21種類のマーク表示(以下「マーク表示」という)を基礎として、原告各情報誌の通信講座におけるセールスポイント・特徴をアイコン化する作業を開始した。 このマーク表示の選択にあたっては、「家で楽しく学ぶ本」の編集担当者において、原告が行った通信教育のマーケット調査の結果、「家で楽しく学ぶ本」の読者アンケート結果、原告各情報誌の読者アンケート結果の中から読者の関心事を広く拾い上げるという作業を行った。さらに、その拾い上げた読者の関心事について、容易に検索可能にするという観点、読者に誤解・誤認を生じさせない特徴を選択するという観点さらには通信講座を開講するスクールに対する新講座開講の提案を行うという観点を中心として、試行錯誤の上、選択されたのが23種類のマーク表示である。 原告各情報誌の編集担当者は、上記の23種類のマーク表示を基に、原告各情報誌の編集担当者としての知識とノウハウに基づき、原告各情報誌に掲載される通信講座のアイコンの取捨選択を行った。アイコンの取捨選択にあたっては、原告通学アイコン一覧表との統一性を保つという視点に加え、@原告各情報誌の読者の関心対象かどうか、A原告各情報誌の読者に誤解・誤認を生じさせないか、という観点を中心に据えた。上記の各観点は、マーク表示の選択の観点にも採り上げられているものの、原告各情報誌の編集担当者としての経験・ノウハウの蓄積からさらにブラッシュ・アップを行ったのである。例えば、@の観点からは「パソコン講座」を、Aの観点からは「省庁認証」、「サンプル無料」、「修了後認定」を原告各情報誌のアイコンとして採用しなかったのである。 上記の取捨選択の結果をたたき台として、さらに通信講座においては想定できないようなアイコンや特定の読者にしか受講できないかのような印象を与えるアイコン等を削除するなどの方針の下、3種類のアイコンを削除するなどして、原告通信アイコン一覧表が完成したのである。 上記のように、「家で楽しく学ぶ本」の編集担当者及び原告各情報誌の編集担当者を中心とした原告社員の相違と工夫により、多くの通信講座におけるセールスポイント・特徴を様々な観点から取捨・選択した結果、31種類のアイコンを選択するに至ったものであり、この点に照らせば、その選択の創作性が非常に高いことは明らかである。 (b) 分類・配列の創作性 原告通信アイコン一覧表においては、@「特長アイコン」、A「○得情報アイコン」という2分類を用いて各アイコンを分類・配列している。 この分類・配列は、原告通学アイコン一覧表の分類・配列と同様に、原告各情報誌の読者にスクール・講座の比較検討ポイントを的確に伝え理解させるなどの視点から設定されたものであり、かつ、誰が行っても同様になる類のものではない。 このように、原告通信アイコン一覧表における分類・配列についても高い創作性が存在する。 (c) まとめ 上記の検討から明らかなとおり、原告通信アイコン一覧表は、読者にスクール・講座の比較検討ポイントを的確に伝え理解させるなどの視点、並びに広告主に対してより魅力的な講座づくりのポイントを提供する資料となるように読者に関心の高いと考えられるスクール・講座の特色を選択して分類したものであり、いずれも、その選択及び配列において創意工夫されたものであって、高度の創作性が存在するものである。 イ 被告通信アイコン一覧表による著作権侵害 被告各情報誌のいずれにおいても、「通信講座情報アイコン一覧」及び「通信講座情報トクトクアイコン一覧」と題する一覧表(以下「被告通信アイコン一覧表」という。)が掲載されている。同一覧表に掲載されているマーク、説明文及びアイコンの分類は別紙「アイコン一覧表目録2」記載のとおりである。 この被告通信アイコン一覧表と原告通信アイコン一覧表を比較すれば、被告通信アイコン一覧表が原告通信アイコン一覧表の複製ないし翻案物であることは明らかであるが、さらに敷衍して両者を比較対照すると次の表のようになる(網掛け部分は不一致の部分)。
上記対照表からも明らかなとおり、被告通信アイコン一覧表では、原告各情報誌平成14年4月号(東海、首都圏、関西版において共通)の原告通信アイコン一覧表に記載されているアイコン32種類のすべてが用いられている。そして、被告は、これらのアイコンに若干のアイコンを付加した上で、原告通信アイコン一覧表の「特長アイコン」及び「○得情報アイコン」に対応する「通信講座情報アイコン一覧」及び「通信講座情報トクトクアイコン一覧」の2分類によって各アイコンを分類している。 なお、被告通信アイコン一覧表において付加されたアイコンのうち上記対照表網掛け部分のものは平成14年12月号より付加されたものであるが、通学講座ならまだしも、通信講座においてはおよそ想定できないアイコンであり、これらアイコンの付加が原告通信アイコン一覧表の創作性の看取可能性にいささかの影響も与えることはない。 また、被告通信アイコン一覧表にある「実習有り」、「卒業時資格取得」及び「編入制度有」のアイコンは、原告各情報誌平成14年4月号の原告通信アイコン一覧表には設定されていなかったが、原告が、原告各情報誌平成14年6月号から独自に原告通信アイコン一覧表へ付加したものである。したがって、これらのアイコンが被告通信アイコン一覧表に設けられていることは、被告が被告通信アイコン一覧表の作成に当たって、平成14年4月号の原告通信アイコン一覧表の翻案物である同年6月号の原告通信アイコン一覧表に依拠した事実を裏付けるものである。 このように、被告は、被告通信アイコン一覧表を作成するに当たって、原告通信アイコン一覧表に認められるアイコンの選択及び分類(配列)の創作性をそのまま利用しているのであって、原告の編集著作物である原告通信アイコン一覧表の複製権ないし翻案権を侵害したことは明らかである。 (被告の主張) ア 原告通信アイコン一覧表の創作性について 原告の主張は争う。前記(5)の「被告の主張」アで述べたとおり、原告通信アイコン一覧表には創作性は認められない。 イ 著作権侵害 被告各情報誌に被告通信アイコン一覧表が掲載されていること、被告通信アイコン一覧表の内容及び原告による対比の主張については不知。被告通信アイコン一覧表が原告通信アイコン一覧表のデッドコピーであること及び著作権の侵害については、否認ないし争う。被告通信アイコン一覧表は、被告各情報誌の通信講座情報欄で使用されているアイコンをその内容に応じて分類して列挙し、説明を加えたものであって、原告通信アイコン一覧表の選択・配列方法に依拠して作成されたものではない。 また、被告通信アイコン一覧表と原告通信アイコン一覧表にはその具体的な表現において大きく異なっており、著作権侵害が成り立たないことは前記(5)の「被告の主張」イで被告通学アイコン一覧表について述べたのと同様である。 (7) 被告の不法行為責任の有無 (原告の主張) ア 民法709条にいう一般不法行為の成立要件としての権利侵害は、必ずしも厳密な法律上の具体的権利の侵害であることを要せず、法的に保護に値する利益の侵害をもって足りる。被告は、原告各情報誌に記載されているツメ見出し・カプセルないしスーパーインデックスにおける大分類・小分類による分類をほぼそのまま利用して、被告各情報誌の各号におけるカテゴリー別スクール情報において講座情報を、カテゴリー別インデックスにおいてスクール名をそれぞれ分類・配列しているものであり、原告に対して一般不法行為による損害賠償責任を負う。 イ 原告は、平成2年のケイコとマナブ創刊以来、様々な工夫と試行錯誤を繰り返し、多大な労力をかけ、現在のケイコとマナブを完成させた。例えば、次に述べるいわゆる「カプセル体系」などである。 原告は、平成2年の「ケイコとマナブ」創刊以来、検索の利便性の観点から随時工夫を凝らしてきた結果、原告各情報誌平成14年4月号現在の講座情報の分類・配列方針として、ツメ分類・絶対分野・カプセルという分類・配列体系(以下「カプセル体系」という。)を作り上げた。 特に、原告各情報誌は、創刊から10年余りが経過し、スクール情報の情報量自体が膨大になってきたこともあり、更に読者の利便性の向上を図るため、原告は、随時変更を重ねてきた「ケイコとマナブ」を、首都圏版、関西版、東海版、九州版、北海道版いずれも平成14年4月号より内容を一新することとなり、平成12年8月より原告各情報誌平成14年4月号のリニューアルに向け、多くの時間と労力を費やしてきた。 このような原告各情報誌のリニューアルにおいて、原告各情報誌の編集担当者は、そのリニューアルのもっとも大きなプロジェクトとして、原告各情報誌における分野別モノクロ情報ページの分類配列構造の変更及びスーパーインデックスの新設が掲げられ、様々な試行錯誤の結果、上記のカプセル体系を作り上げたのである。 このカプセル体系のほかにも、原告各情報誌は、創刊以来数多くの試行錯誤を重ね、かつ相当の時間と労力をかけて、リニューアルを繰り返し、平成14年4月号以降の原告各情報誌を作り上げてきた。そのような10余年にわたる数々の時間と労力の結果、様々な工夫を凝らしてきた結果である原告各情報誌を、次に述べるとおり、被告は何らの労力を要せずして模倣し、被告各情報誌を発行しているのである。 よって、原告は予備的に原告による一般不法行為を主張する。 ウ 被告による原告各情報誌の模倣 (a) カプセル体系の模倣 被告は、原告各情報誌平成14年4月号等に記載されているツメ見出し・カプセルないしスーパーインデックスにおける大分類・小分類による分類をほぼそのまま利用して、かつ、その掲載順序までも模倣し、被告各情報誌におけるカテゴリー別スクール情報において講座情報を、カテゴリー別インデックスにおいてスクール名をそれぞれ分類・配列している。 (b) アイコン一覧表及びアイコンによりスクール・講座の特徴を表示することの模倣 原告通学アイコン一覧表及び原告通信アイコン一覧表は、上記のとおり原告の試行錯誤と労力によって作り上げられたものであるところ、被告は、上記の各アイコン一覧表をデッドコピーして被告通学アイコン一覧表及び被告通信アイコン一覧表として被告各情報誌に掲載している。 被告は、さらに被告各情報誌に掲載される広告記事内に、スクールの特徴、講座の特徴を示すアイコン・マークを表示するというアイデア及びそのアイコン・マークの種類について模倣している。 (c) レイアウトの模倣 原告各情報誌の分野別モノクロ情報ページに掲載される通学講座の広告記事は、@スクール名、A住所、B最寄駅、Cスクールの特徴を示すアイコン(「スクール別便利ポイント」)、Dカプセル、E講座の特徴を示すアイコン(「特徴アイコン」、「○得情報アイコン」)、F資料請求番号、Gコース名、H講座開講日時・費用、I入学金・受講料の割引を示すマーク、Jコース内容、Kスクール情報、L地図、M交通案内、及びフリースペースからなり、各要素の配置場所についても、定型的に決められている。 他方、被告各情報誌のカテゴリー別スクール情報に掲載される通学講座の広告記事は、@スクール名、A住所、B最寄駅、Cスクールの特徴を示すアイコン(「おすすめチェック」)、Dカプセル、E講座の特徴を示すアイコン(「講座選びのポイント」、「○得ポイント」)、F資料請求番号、Gコース名、H講座開講日時・費用、I入学金・受講料の割引を示すマーク、Jコース内容、Kスクール情報、L地図、M交通案内、及びフリースペースからなり、原告各情報誌の広告記事と同一であるばかりでなく、各要素の配置場所についても、スクールの電話番号が、スクール名の下に配置されているほかは、すべて同一である。 また、原告各情報誌の通信講座の広告記事は、@カプセル、A費用、B標準期間、C講座名、D資料請求番号、E講座のポイント、F講座の内容、G添削回数等、H特徴アイコン・○得情報アイコンの表示(「ここに注目!」)、I教材紹介、Jスクール名、K写真、L受講のポイントや体験談の掲載欄、Mプロファイルカプセル等からなり、各要素の配置場所についても、定型的に決められている。 他方、被告各情報誌の通信講座の広告記事は、@カプセル、A費用、B標準期間、C講座名、D資料請求番号、E講座のポイント、F講座の内容、G添削回数等、H通信講座情報アイコン・通信講座情報とくとくアイコンの表示(「Check」)、I教材紹介、Jスクール名、K写真、L受講のポイントや体験談の掲載欄、Mプロファイルカプセル等からなり、原告各情報誌の広告記事と同一であるばかりでなく、各要素の配置場所についても、特徴アイコン・○得情報のアイコン表示場所が異なるほかは、すべて同一である。 (d) 「FAXシート」の模倣 被告は、被告各情報誌において、原告各情報誌の掲載する「ケイコとマナブ専用資料請求FAXシート」と色遣い・構成ともに酷似する「ヴィー・スクール共通資料請求FAXシート」を掲載していた。もっとも、さすがに、この「ヴィー・スクール共通資料請求FAXシート」については、平成14年12月に、原告から被告に対して掲載を中止するよう警告したところ、被告においてその構成を変更した。 (e) 各種インデックスの模倣 原告各情報誌においては、スーパーインデックスのみならず、沿線別インデックス、50音順インデックスを掲載している。被告各情報誌においても、同様に沿線別インデックス及び50音順インデックスを掲載している。しかも沿線別インデックスにおいては、その分類方法についても模倣箇所が多数見受けられる。 (f) インターネットの利用とその内容の模倣 原告各情報誌は、原告の運営するウェブサイト「ISIZE STUDY」(以下「原告サイト」という。)と連動し、原告各情報誌に掲載されている広告記事よりもより詳細な情報を提供し、また、資料請求も原告サイトへのアクセスにより可能とするよう、各講座には資料請求番号を付し、当該番号を原告サイトにおいて入力するだけで資料請求が容易に可能な工夫がなされている。また、原告サイトは、多数存在する講座を、資格・スキル系と趣味系に分類し、さらには、分野、地域別、目的、沿線・最寄駅、スクール名、スクールの特徴、受講料等、及びその組合せにより検索が可能となるよう構成されている。 他方、被告各情報誌においても、同様にウェブサイト「VeeSchool.com」(以下「被告サイト」という。)と連動させ、被告各情報誌に掲載されているスクール・講座の資料請求がウェブ上において可能となるように、被告各情報誌に掲載されている講座に資料請求番号を付している。また、被告サイトは、多数存在する講座を、原告サイトと同様に、資格・スキル系と趣味系に分類するとともに、分野、地域別、沿線・最寄駅、スクール名、スクールの特徴、受講料等、及びその組み合わせにより検索が可能となるように構成されている。 エ 被告は、上記のようにカプセル体系、広告記事の内容をそのほかケイコとマナブの大部分をほぼそのまま模倣しているほか、ウェブサイトの利用方法についても類似点が多数見られる。 このように原告各情報誌と同一の構成の媒体・ウェブサイト等を利用することにより、被告は、何らの労力なく、広告主や読者の信用を獲得し得るスクール情報誌を作成することができる。さらには、広告主がスクール・講座の広告記事を被告各情報誌に掲載するに際して、その広告レイアウト・掲載情報の項目が原告各情報誌と全く同一であるため、被告に提供すべき情報は、原告各情報誌に掲載する場合と全く同様となり、原告各情報誌の広告主が、原告各情報誌への掲載を止めて被告各情報誌への掲載に切替えるに際して何らの労力もない。のみならず、広告掲載に対する効果が原告各情報誌により実証済みであるため、原告各情報誌の広告主としては、原告各情報誌への掲載から被告各情報誌への掲載に切り替えることについて抵抗が少ないことが容易に想像できる。 また、読者にしても、その分類・配列体系やレイアウトが同一であることや、ファクシミリ・インターネットを用いた資料請求の具体的方法が同一であるため、これまで原告各情報誌を購入していた読者が、容易に被告各情報誌に乗換えることができることになる。 このように、被告は、何らの労力を費やすことなく、原告各情報誌において原告が獲得した信用にフリーライドし、かつ、原告各情報誌の広告掲載料よりも安価に広告掲載料を設定することで(ときには無料掲載も行い)、原告の販売地域と競合する地域の広告主に営業を行い、原告各情報誌の広告主を奪うとともに、しかも被告各情報誌製作に費用を費やすことがなかったために、被告各情報誌の価格を原告各情報誌の価格よりも安価に設定し、かつ、原告各情報誌の発行日よりも前の日に設定して、スクール・講座情報を分類・配列して掲載した情報誌である被告各情報誌を編集・販売している。 このような行為は、原告の時間と労力を費やしたことにより作成された原告各情報誌の価値を低下させるとともに、被告は何らの労力も費やさずに原告の獲得してきた媒体としての信用にただ乗りし、原告の顧客を奪うものであって、著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護に値する営業活動上の利益を侵害するものとして、一般不法行為を構成するというべきである。 (被告の主張) 原告の主張はいずれも否認ないし争う。 他人の商品を完全に模倣又は複製して販売したいわゆるデッドコピーの事案について、著しく不公正な手段を用いた他人の法的保護に値する営業活動上の利益の侵害として不法行為の成立する余地のあること、それを認めた裁判例があることは認めるが、本件はそのような事案ではない。 本件において、被告は、広告主に対する営業活動及び広告主から集めた広告の編集作業を独自に行って被告各情報誌を製作、販売しているのであり、原告各情報誌をデッドコピーした情報誌を販売しているわけではないし、両誌の編集レイアウトについても、各種スクールの広告情報誌という同一の利用目的のために互いに最善のレイアウトを追求した必然的な結果として、ある程度の類似が生じているに過ぎない。 原告の主張する、カプセル体系の模倣、アイコン一覧表及びアイコンによりスクール・講座情報の特徴を表示することの模倣、レイアウトの模倣、FAXシートの模倣、各種インデックスの模倣及びインターネットの利用とその内容の模倣についてはいずれも否認する。 (8) 原告の損害 (原告の主張) ア ヴィー・スクール東海版の発行により原告の被る損害 原告は、被告のヴィー・スクール東海版平成14年10月号ないし平成15年1月号(合計4号)の編集・発行という著作権侵害行為により、著作権行使につき通常受けるべき使用料に相当する額の損害を被った。ヴィー・スクール東海版の上記各号の大半が原告の各編集著作物を複製して製作されたものであることを考慮すると、その売上額の10パーセントに当たる額をもって、原告の著作権の行使につき通常受けるべき使用料の額とするのが相当である。 ところで、ヴィー・スクール東海版のような情報誌における主たる売上額は、広告主からの広告掲載料合計額である。そこで、コマ数に、広告スペース等により定められる広告掲載料を乗じた額に、さらに一定の値引率を乗じてもなお、ヴィー・スクール東海版各号において、売上額は以下に記載する金額を下らない。 @ヴィー・スクール東海版平成14年10月号 4200万円 Aヴィー・スクール東海版平成14年11月号 3900万円 Bヴィー・スクール東海版平成14年12月号 3100万円 Cヴィー・スクール東海版平成15年1月号 2600万円 (合計)1億3800万円 したがって、原告の請求し得べき著作権使用料相当額(損害額)は、上記合計額に前記使用料率10パーセントを乗じて得られる1380万円を下らない。 イ 一般不法行為による損害 被告は、被告各情報誌が原告各情報誌と同一の構成の情報誌であることを強調し、広告主に対して営業を行っている。このような営業により、原告の多数の顧客が、原告各情報誌での掲載をやめ、被告各情報誌に掲載するようになった。このような被告による広告の受注及び被告各情報誌の編集販売行為によって原告が被った損害は1380万円を下らない。 (被告の主張) 原告の主張のうち、被告各情報誌における主な収入が広告主からの広告料収入であることは認め、その余はいずれも否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 原告各情報誌の編集著作物性について(争点(1)ないし(6)関係) (1) 原告は、原告各情報誌平成14年4月号のうち、@講座情報を素材とした分野別モノクロ情報ページ部分、A小分類項目たるカプセルを素材とした分野別モノクロ情報ページに掲載の分類・配列体系、Bスクール名等を素材としたスーパーインデックス部分、C小分類項目を素材としたスーパーインデックスに掲載の分類・配列体系、D原告通学アイコン一覧表、及び、E原告通信アイコン一覧表が、いずれも編集著作物に該当するとして、それぞれについて著作権侵害(編集著作物の著作権の侵害)を主張している。そこで、まず、上記@ないしEの各部分が著作権法12条に規定する編集著作物に該当するかどうかを判断する。 (2) 前記「前提となる事実関係」(前記第2、1)に証拠(甲12ないし18、25、26、29ないし41、46、47)及び弁論の全趣旨を総合すると、次の各事実が認められ、この認定を左右するに足りる証拠はない。 ア 原告各情報誌平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページ部分は、白黒印刷で構成され、原告の広告主から出稿されるスクール情報及び講座情報が掲載された広告記事が分類配列されて掲載される部分である。原告各情報誌の編集担当者は、読者が検索しやすいようにあらかじめ定められた分類・配列の基準に従って、入稿してくる広告記事の配置場所を決め、分野別モノクロ情報ページを完成させていくこととなる。 イ 原告各情報誌平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページ部分においては、紙面の前小口の端から約5センチメートル内の領域に当該ページに掲載されているスクール情報・講座情報の内容を端的に示す文言(ツメ見出し)が記載されているほか、各広告記事の冒頭部分には、講座情報の分類指標を示す類型的な文言が長方形型の形態の枠の中に記載されたもの(カプセル)が見出し的に記載されている。 ウ 上記イのツメ見出し、カプセルは、分野別モノクロ情報ページにおける広告記事の分類・配列の基準を示し、読者による各スクール情報及び講座情報の比較検討や情報検索を容易にするための手段として、原告各情報誌の創刊時から記載されていた。具体的には、ツメ見出しを設けることで、読者が目指す情報を容易に検索でき、かつ読者の関心を惹きつけることができるようになり、カプセルを設けることで、スクール情報及び講座情報の掲載されているページを読者が一見したときに、「どんなジャンルの講座で何が習えるのか」といった概略をつかむことが可能となる機能が期待されている。 原告各情報誌の編集担当者は、原告各情報誌の創刊時から必要に応じてツメ見出し及びカプセルの内容やこれらの体系に変更を加え、平成14年4月号における原告各情報誌のリニューアル時には、別紙「カプセル体系」記載のとおりのツメ見出し及びカプセルの体系に従った広告記事の分類・配列が行われるようになった。 エ 原告各情報誌平成14年4月号には、講座の種類について大分類と小分類からなる2段階の分類を行った上で、スクール名を配列し、情報誌本文における掲載ページを掲げるとともに、資料請求のための「共通はがき」の利用の可否、原告サイトでの情報検索の可否、通学と通信教育の別、割引の有無を知ることができるようにしたスーパーインデックスが、情報誌末尾に掲載されている。大分類は基本的にツメ見出しに対応しているものの、業種による区別をするなど、ツメ見出しよりやや細分化された項目となっており、小分類は上述のカプセルに対応するものとなっている。 このスーパーインデックスは、原告各情報誌の分野別モノクロ情報ページ、特集ページ及び通信教育講座の広告記事に掲載された多数のスクール情報及び講座情報について、読者が完全に希望の講座を有するスクールを検索し、かつ各スクールの比較検討を行うことができるように、平成14年4月号のリニューアル時以降導入されたものである。 具体的には、原告各情報誌の平成14年4月号のリニューアル時において、ツメ見出しを「常設ツメ」と「特集ツメ」に区別し、「特集ツメ」のページにおいては「常設ツメ」とは別個の分類・配列を行うこととしたため、これまで「常設ツメ」のページに収録されていた講座の一部が、「常設ツメ」による分類の枠外のものとして「特集ツメ」のページに収録されるということが生じ、読者にとって目指す講座が探しにくくなり、それらの講座を比較検討できなくなるという不都合が生じた。そこで、読者の利便性を確保するために、「常設ツメ」と「特集ツメ」の双方を通じた検索手段として、原告各情報誌の編集担当者による検討の結果、スーパーインデックスが導入されたものである。このスーパーインデックスにおける大分類・小分類の分類配列の発想は、ツメ見出し・カプセルによる分類・配列の場合と基本的には同一であるが、ツメ見出しの場合には一つのツメ見出しの下に割り振られる情報量をなるべく均等にする必要があるのに対し、スーパーインデックスにおける大分類・小分類の分類配列の場合にはそのような制約がないため、大分類自体は、業種・業界によって区別するなど細分化し、そこにカプセルが割り当てられるという体系となっている。 オ 原告各情報誌平成14年4月号には、別紙「原告通学アイコン一覧表」及び別紙「原告通信アイコン一覧表」のとおりの各一覧表が掲載されている。この原告通学アイコン一覧表及び原告通信アイコン一覧表は、スクール情報・講座情報を記載した広告記事において用いられているアイコンに説明を付し、原告通学アイコンについては「スクール便利ポイント」(当該スクールの立地条件、設備のほか、受講生が受けられるサービスに関するもの)、「特長アイコン」(開講時間、受講制度、レベル、講師に関する事項等、講座・コース独自の特徴、メリットに関するもの)及び「○得情報アイコン」(受講料の支払い方法や、割引に関する特長・メリットに関するもの)の3つのカテゴリーに分類し、原告通信アイコンについては「特長アイコン」及び「○得情報アイコン」の2つのカテゴリーに分類して一覧表としたものである。 原告通学アイコン一覧表及び原告通信アイコン一覧表が原告各情報誌に掲載されるようになったのは、次のような経緯による。原告は、平成14年4月号からの原告各情報誌のリニューアルに際し、原告各情報誌の読者が一目で各スクール情報・講座情報の特徴を把握し、容易にスクール・講座の情報を比較することができるように、スクールや講座の特徴のうち読者が関心を持ちそうな事項を抽象的に整理して広告記事に記載することにした。そこで、各広告記事に読者の多くが関心を持つスクールや講座の独自の特徴やメリットを短いフレーズで端的に表すマーク、すなわちアイコンを掲載することとした。そして、過去3年分のケイコとマナブ首都圏版に記載されたスクール情報・講座情報、読者アンケートはがきの回答等を参考にしてアイコンの選定を行い、最終的に原告通学アイコン一覧表及び原告通信アイコン一覧表記載のアイコンを選定した。この検討作業の結果、原告各情報誌の広告記事に用いられるようになったアイコンを読者に分かり易いように説明を付して分類整理して一覧表としたものが、原告通学アイコン一覧表及び原告通信アイコン一覧表である。 (3) 上記(2)において認定した事実関係によれば、原告が編集著作物と主張する原告各情報誌(平成14年4月号)の各部分のうち、分野別モノクロ情報ページ部分は、広告主から出稿されたスクール情報・講座情報を内容とする個々の具体的な広告記事を素材としてとらえた場合には、これらの素材を読者の検索の便宜に資するように独自の分類配列方針に従って配列したものであり、当該配列は五十音順等の何らかの既存の基準に基づいて行ったものとは認められないから、これらの具体的広告記事の配列に創作性を有するものとして、編集著作物に該当する。 (4) 原告は、上記のような具体的な広告記事を離れて、抽象的な編集体系自体を編集著作物としてとらえ得るものと主張し、原告各情報誌(平成14年4月号)の分野別モノクロ情報ページ部分について、抽象的な「学ぶ内容」(カプセルとして設定された項目)、あるいは大分類項目たるツメ見出し及び小分類項目たるカプセルを素材としてとらえ、これらを関連付けることにより構築した分類体系自体を編集著作物ということができると主張する(原告の主張する分類体系の内容の詳細は、平成15年2月25日付け原告第1準備書面3頁以下及び甲25(佐々木健作成の陳述書)参照)。 しかしながら、著作権法12条に規定する編集著作物は、あくまでも具体的な編集物に具現化された編集方法を保護するものであって、具体的な編集対象物を離れた、編集方法それ自体をアイデアとして保護するものではない。原告は、抽象的な「学ぶ内容」(カプセルとして設定された項目)、あるいはツメ見出しの項目及びカプセルの項目がそれぞれ編集著作物の素材となり得るものと主張するが、これらの項目は、あくまでも具体的な広告記事を分類配列するための指標にすぎず、これらを関連付けしたものは、抽象的な体系的構成ということはできるにしても、編集著作物ということはできない。具体的な編集対象物を離れた体系的な構成は、データベースの著作物(著作権法12条の2)として保護されることがあるとしても、編集著作物として保護されることはない。原告の主張は、データベースの著作物と編集著作物を区別しないで論ずるものであって失当である。 原告は、原告各情報誌の分野別モノクロ情報ページ部分につき、ツメ見出し及びカプセルによる分類体系自体を編集著作物と主張し、これと同様の分類体系により広告記事を分類配列した情報誌の製作・発売等の差止めを求めているが(第1「原告の請求」第1項ないし第3項)、これらの請求はその前提を欠くものであり、理由がない。 (5) 原告は、原告各情報誌(平成14年4月号)の末尾に掲載されているスーパーインデックス部分が編集著作物に該当すると主張する。 スーパーインデックスは、上記(2)で認定のとおり、分野別モノクロ情報ページ、特集ページ及び通信教育講座に分類配列された広告記事の検索やスクール情報の比較を容易にするために設けられたものであって、広告記事の掲載されているスクールの名称ごとに情報誌本文における掲載ページを掲げるとともに、資料請求のための「共通はがき」の利用の可否、原告サイトでの情報検索の可否、通学と通信教育の別、割引の有無を知ることができるようにした一覧表であり、各スクールは基本的には分野別モノクロ情報ページ等での分類配列方針に従って並べられている。 原告は、スーパーインデックスにおいて大分類、小分類を設け、これを関連付けた編集体系そのものが、編集著作物として保護されると主張するが、スーパーインデックスにおいて記載されている具体的なスクール名及び当該スクールの広告記事掲載ページを離れて、当該分類体系自体が編集著作物となる旨の原告の主張は、上記(4)において説示したところと同様の理由により、失当といわざると得ない。したがって、スーパーインデックスにつき、大分類及び小分類による分類体系自体を編集著作物と主張して、これと同様の分類体系による索引を掲載した情報誌の製作・発売等の差止めを求める原告の請求(第1「原告の請求」第4項ないし第6項)は、その前提を欠くものであり、理由がない。 スーパーインデックス部分を編集著作物として、その著作権侵害を理由として損害賠償を求める請求についても、上記のとおり、スーパーインデックスの分類体系自体を編集著作物ということができないものであり、また、スーパーインデックス部分を本文に掲載されたスクールの広告記事を素材とする編集著作物ととらえた場合であっても、理由がない。すなわち、スーパーインデックスについては、スクールの名称等を掲載する順序としての分類配列方針には創作性を認め得る。そして、原告各情報誌におけるスーパーインデックスは、当該情報誌の本文に掲載された個々の広告記事の掲載場所(掲載ページ)を示すためのもの、すなわち広告記事を検索するための索引であるから、そこで素材とされているのは、当該原告情報誌に掲載されている広告記事であり(インデックスに記載されたスクールの名称が広告記事を表すものであることは、当該スクール名と共に広告掲載ページが記載されていることから明らかである。)、他方、被告各情報誌のカテゴリー別インデックスに記載されているスクールの名称は、当該被告情報誌に掲載されている広告記事を表すものであるから、両者は素材を異にするものであり、編集著作物の著作権の侵害は生じない。 したがって、スーパーインデックス部分の著作権(編集著作物の著作権)の侵害を理由とする損害賠償請求も理由がない。 (6) 原告は、原告各情報誌(平成14年4月号)に掲載されている原告通学アイコン一覧表及び原告通信アイコン一覧表が編集著作物に該当すると主張する。 前記(2)において認定のとおり、原告通学アイコン及び原告通信アイコンは、モノクロ情報ページ等に掲載された個々の広告記事中に付された、小さな矩形ないし楕円形中に短い語句を記載したマークであって、スクールや講座の特徴や受講生の享受できるメリットを示すものである。原告通学アイコンは、例えば、「駅前」「シャワー完備」「駐車場有り」「予約制」「土日OK」「給付制度対象」「月謝制」などであり、原告通信アイコンは、例えば、「スクーリング」「無料体験」「給付制度対象」「分割分納」などである。そして、原告各情報誌平成14年4月号に掲載されている原告通学アイコン一覧表及び原告通信アイコン一覧表は、前記各アイコンに説明を付し(例えば、「シャワー完備 シャワー設備のあるスポーツクラブなどにこのマークがついています。」「土日OK 土日も開講しているレッスン・コースです。」「給付制度対象 厚生労働省教育訓練給付制度の対象講座です。」など)、原告通学アイコンについては「スクール便利ポイント」(当該スクールの立地条件、設備のほか、受講生が受けられるサービスに関するもの)、「特長アイコン」(開講時間、受講制度、レベル、講師に関する事項等、講座・コース独自の特徴、メリットに関するもの)及び「○得情報アイコン」(受講料の支払い方法や、割引に関する特長・メリットに関するもの)の3つのカテゴリーに分類し、原告通信アイコンについては「特長アイコン」及び「○得情報アイコン」の2つのカテゴリーに分類して一覧表としたものである。 上記によれば、原告通学アイコン一覧表及び原告通信アイコン一覧表は、原告各情報誌に掲載されている広告記事中に用いられているこれらのアイコンについて、まとめてその意味を説明するいわば「凡例」であり、個別のアイコンを素材とする編集著作物ととらえ得るとしても、上記各アイコン一覧表は、素材たるアイコンの選択又は配列において創作性を認め得るものではないから、編集著作物と認めることはできない(さらにいえば、原告各情報誌(平成14年4月号)に掲載されている原告通学アイコン一覧表及び原告通信アイコン一覧表と、別紙「雑誌目録」記載の被告各情報誌における通学アイコン一覧表及び通信アイコン一覧表を比較すると、アイコンの個数、種類及び名称並びにその配列の順序は完全に一致するものではなく、異なる部分も存在するものであるから、両者を類似すると直ちに認めることはできないのであり、この点からも原告の主張は失当である。甲1ないし5、12ないし14、22ないし24、36ないし38、50ないし52)。 原告は、原告通学アイコン一覧表及び原告通信アイコン一覧表がいずれも編集著作物に該当すると主張して、これと同様のアイコン一覧表を掲載した情報誌の製作・発売等の差止めを求めているが(第1「原告の請求」第7項、第8項)、これらの請求はその前提を欠くものであり、理由がない。 また、原告通学アイコン一覧表及び原告通信アイコン一覧表の著作権(編集著作権)の侵害を理由とする損害賠償も理由がない。 2 原告各情報誌(平成14年4月号)の分野別モノクロ情報ページについての被告による著作権(編集著作物の著作権)侵害の有無(争点(1)関係) (1) 前記1(3)(4)において説示したとおり、原告各情報誌(平成14年4月号)の分野別モノクロ情報ページ部分は、広告主から出稿されたスクール情報・講座情報を内容とする個々の具体的な広告記事を素材としてとらえる限りにおいては、編集著作物に該当するものである。 そこで、被告が別紙「雑誌目録」記載の被告各情報誌を製作して販売したことにより、原告の上記分野別モノクロ情報ページの著作権(編集著作物の著作権)を侵害したかどうかを検討する。 (2) 前記「前提となる事実関係」(前記第2、1)に証拠(甲1ないし5、12ないし14、22ないし24、36ないし38、50ないし52)及び弁論の全趣旨を総合すると、別紙雑誌目録1の(1)ないし(15)、同目録2の(1)ないし(10)、並びに同目録3の(1)ないし(10)記載の被告各情報誌は、様々な分野のスクール情報・講座情報を掲載したスクール情報誌であること、上記の被告各情報誌のカテゴリー別スクール情報の部分は、カラー印刷で構成され、被告が被告の広告主からスクール情報・講座情報を記載した広告記事の出稿を受けて掲載していることが認められる。 原告各情報誌(平成14年4月号)の分野別モノクロ情報ページと上記被告各情報誌のカテゴリー別スクール情報とを比較すると、編集著作物たる原告分野別モノクロ情報ページの素材は、前記のとおり、広告主から出稿されたスクール情報・講座情報を内容とする個々の具体的な広告記事である。他方、被告カテゴリー別スクール情報は、同様に、広告主から出稿されたスクール情報・講座情報を内容とする個々の具体的な広告記事を素材としてとらえる場合には、編集著作物に該当するものである。両者を比較すると、原告分野別モノクロ情報ページが、原告が自己の広告主から出稿を受けた広告記事を素材とするものであるのに対して、被告カテゴリー別スクール情報は、被告が自己の広告主から出稿を受けた広告記事を素材とするものであり、素材を異にするものである。すなわち、原告及び被告はいずれも広告主からの広告記事の出稿を待って上記の各情報ページの編集を行うものであり、広告主に対して広告掲載の依頼を強制することはできないし、また、広告主から出稿された広告記事は例外的な場合を除いて必ず情報誌に掲載するものであるから、素材の選択において原告ないし被告の意思が関与する余地はなく、広告主のすべてが一致しているものでもない(前掲各証拠によれば、例えば、原告各情報誌平成14年4月号と被告各情報誌平成15年5月1日号の間においては、掲載される広告記事のスクール名がそれぞれ4割ないし5割程度しか一致していない。)。また、同じ広告主から出稿された広告記事であっても、具体的な広告記事の内容は異なるものである(被告各情報誌は、いずれも原告各情報誌(平成14年4月号)に後れて製作・発売されたものであり、広告記事の内容は異なる。)。そうすると、素材を異にする以上、被告カテゴリー別スクール情報が原告分野別モノクロ情報ページの著作権(編集著作物の著作権)を侵害することはない(なお、前掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告分野別モノクロ情報ページにおける広告記事の分類・配列方法のうち、ツメ見出しについては、原告各情報誌は19分類であるのに対して被告各情報誌は22分類であって分類数が異なるほか、分類名のうち異なるものがあり、配列方法もすべてが同一ではなく、また、原告が大分類(ツメ見出し)と小分類(カプセル)の2段階分類による配列を行っているのに対して、被告は1段階分類による配列を行っているものであって、配列についても直ちに類似していると認めることはできないから、この点からしても、原告の主張は採用できない。)。 したがって、分野別モノクロ情報ページの著作権(編集著作物の著作権)の侵害を理由とする損害賠償請求は、理由がない。 3 争点(7)(一般不法行為の成否)について 原告は、仮に被告各情報誌の製作、発売等が原告各情報誌の著作権侵害に該当しないとしても、被告は、被告各情報誌の編集において、原告各情報誌のカプセル体系を模倣し、アイコン一覧表及びアイコンによりスクール・講座の特徴を表示するというアイデアを模倣し、レイアウトを模倣し、ウェブサイトの利用方法についても模倣しているのであって、このような模倣行為は、著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護に値する営業活動上の利益を奪うものとして一般不法行為(民法709条)に該当する旨を主張する。 しかしながら、一般に、市場における競争は本来自由であるべきこと、自由な言論活動はできる限り保障されるべきであることに照らせば、著作権侵害行為に該当しないような情報誌の編集・発行行為については、当該行為がことさらに相手方に損害を与えることのみを目的としてなされたような特段の事情が存在しない限り、民法上の一般不法行為を構成することもないというべきである。 本件においては、このような特段の事情が存在することは証拠上認められないものであり、加えて、前記1及び2において説示したとおり、原告各情報誌と被告各情報誌の間では掲載される広告記事のスクール名がそれぞれ4割ないし5割程度しか一致していない上、広告記事の分類配列方法についても完全に一致しているものではなく、アイコンの個数、種類及び名称並びにその配列の順序も完全に一致しておらず、証拠(甲1ないし5、12ないし14、22ないし24、36ないし38、50ないし52)によれば、情報誌全体におけるカラーページの割合、全体的構成や主要ページのレイアウトも異なる印象を与えるものであるから、これらの事情に照らせば、被告による被告各情報誌の製作・販売等が一般不法行為を構成する旨の原告の主張は、到底採用できない。 したがって、一般不法行為を理由に損害賠償を求める原告の請求も理由がない。 4 結論 以上によれば、その余の点につき判断するまでもなく、原告の請求は、いずれも理由がない。 よって、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官 三村量一 裁判官 大須賀寛之 裁判官 松岡千帆 |
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