判例全文 line
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【事件名】町議会議員のスキャンダル報道事件
【年月日】平成15年12月24日
 宇都宮地裁 平成12年(ワ)第362号等 損害賠償請求事件

判決


主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は甲、乙両事件とも原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 被告A新聞社、同B及び同Cは、原告に対し、連帯して500万円及びこれに対する平成12年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告Dは、原告に対し、300万円及びこれに対する平成12年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告Eは、原告に対し、200万円及びこれに対する平成12年9月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告A新聞社、同D及び同Eは、原告に対し、別紙謝罪広告記載の広告を朝日新聞、毎日新聞、読売新聞及び東京新聞の各栃木版の朝刊並びにa新聞の朝刊に別紙謝罪広告記載の条件でそれぞれ1回掲載せよ。
第2 事案の概要
 本件は、原告が、被告A新聞社の日刊新聞紙における見出し及び記事、被告D及び同Eの町議会における発言が、それぞれ原告の名誉を毀損するものであるとして、被告らに対し損害賠償等を求めた事案である。
1 争いのない事実
当事者
ア 原告は、土木建築の設計、監理、請負等を業とする株式会社である。
イ 被告A新聞社は、日刊新聞紙の発行等を目的とする株式会社であり、日刊新聞紙a新聞を発行している。
 被告B及び同C(以下同被告らと被告A新聞社を一括して「被告A新聞社ら」ともいう。)は、被告A新聞社の被用者であり、後記記事が掲載された平成12年3月ころ、被告Bはa新聞の編集局長、被告Cはa新聞の記者であった。
ウ 被告D及び被告Eは、栃木県塩谷郡F町議会の議員である。
 原告は、平成11年2月12日、F町からG河川公園(以下「本件河川公園」という。)の園路開設や駐車場造成等を内容とするG河川公園整備工事分割2号(以下「本件河川公園工事」という。)を受注した。
 原告は、平成11年10月28日ころ、本件河川公園工事に関して、栃木県日光土木事務所長に対し顛末書(以下「本件顛末書」という。)を提出した。本件顛末書には、原告が、同年8月ころ、本件河川公園工事の盛土の際、購入した土量では足りなかったため、独断で隣接地の土を約300立方メートル掘削して盛土材として使用したこと、同年9月初旬から10月中旬にかけて、F町から受注した下水道工事において発生した残土約200立方メートルを搬入して埋め戻したこと、同年10月19日及び同月20日の二晩にかけて、上記下水道工事の施工のため本件河川公園敷地を使用し10立方メートルの残土搬入と仮置きしていた砕石4立方メートルの搬出をしたことを述べるとともに、本件河川公園敷地を無断で使用し、残土を捨てたことを詫びる旨が記載されている。
 平成12年3月8日から同月16日にかけて、F町議会平成12年第1回定例会が開かれ、その期間中の同月15日、F町議会3常任委員会合同審査(以下「本件合同委員会」という。)が行われた。
 被告Dは、本件河川公園工事に関して、平成12年3月14日の定例会(以下「本件定例会」という。)の一般質問において、別紙D発言記載@ないしBの各発言(以下「D発言@」等という。)をし、同月15日、本件合同委員会において、別紙D発言記載CないしFの各発言(以下、「D発言C」等といい、D発言@ないしFを一括して「D発言」ともいう。)をした。
 被告Eは、平成12年3月15日、本件合同委員会において、本件河川公園工事に関して、別紙E発言記載@ないしBの各発言(以下、「E発言@」等といい、E発言@ないしBを一括して「E発言」ともいう。)をした。
 被告A新聞社は、平成12年3月17日発行のa新聞朝刊県北版において、「H小体育館建設請負契約 落札業者疑惑絡み否決 F町議会」との見出し(以下「本件見出し」という。)を付した別紙掲載記事記載の記事(以下、「本件記事」といい、本件記事中下線を付した@ないしCの部分を「本件記事@」等という。)を掲載し、頒布した。
2 争点及び当事者の主張
本件記事の名誉毀損該当性
(原告の主張)
ア 本件記事は、原告が他の公共事業において土砂を盗掘したので、F町議会において原告との間のH小学校体育館建設工事請負契約(以下「本件請負契約」という。)締結を承認する旨の議案(以下「本件議案」という。)が否決され、F町が盗掘の調査を進めて原告への処分を考えており、原告においてもこれを認めているような内容で構成されており、次のとおり、原告が土砂を盗掘した刑法犯であるとの印象を与え、原告の社会的評価、信用を著しく失墜させるものである。
 本件記事@は、その記載の仕方からして、原告があたかも土砂を盗掘したかのような印象を与えるものである。
 本件記事Aは、F町が処分を考える前提として「盗掘というような事実があれば」と述べているところ、これを脱落させることにより、ありもしない盗掘及び処分を既成事実として記載するものである。
 本件記事Bは、原告が盗掘という犯罪行為をしたとの事実を前提とするものである。
 本件記事Cは、本件議案が否決された理由が設計内容の不備とされたことから、原告が被告Cの取材に対して「事後処理についても法律に則ってやってもらいたい。」と述べたところ、この部分は記載せず、本件記事C記載の原告のコメントのみを本件記事Bの直後に記載することによって、原告が盗掘を認めたととられるように構成したものである。
イ なお、本件記事には、原告の名称が記載されていないが、本件請負契約の落札業者が原告を指すことは明らかである。
(被告A新聞社らの主張)
ア 本件記事には、本件請負契約の落札業者の名称を記載しておらず、他の公共事業名も明らかにしていないから、一般読者を基準として、上記落札業者が原告を指すと特定することはできない。
イ 本件記事は、F町議会において本件議案が否決されたこと、その背景には落札業者が他の公共事業において土砂を盗掘したとの疑い(以下「本件盗掘疑惑」という。)についてF町と話し合いを持ったとされる問題が絡んでいることを報道したものであって、原告の主張するような内容として構成し、原告が土砂を盗掘した刑法犯であるとの印象を与えるものではない。
 本件記事Aは、F町が再度調査検討を進め、その結果により処分を考える、すなわち、問題の事実があれば処分をし、なければ処分をしないという趣旨であり、盗掘、処分を既成事実として記載したものではない。
 本件記事Bは、議員多数の意見を挙げて、F町議会において本件議案が否決された背景には本件盗掘疑惑が絡んでいることを報道したものにすぎず、原告が盗掘という犯罪行為をしたとの事実を前提とするものではない。
 本件記事Cは、本件議案が設計不備を理由に否決されたことについて、業者側が「地方自治法に基づいてやっているのだから、否決は受け入れる。」と話していることを報じたにすぎない。原告主張のコメントを記載しなかったのは、本件記事において、既に議案否決後に執行部が法に則った処理をする方針である旨を記載していたので不必要と判断したためであり、これを記載しなかったことにより落札業者が盗掘を認めたかのような内容になるものではない。
本件記事の違法性及び被告A新聞社らの責任
(被告A新聞社らの主張)
ア 本件記事は、F町議会における公共工事請負契約の承認決議に関するものであるから、公共の利害に関する事実について、専ら公益を図る目的で報道されたものである。
イ 本件記事は、F町議会において本件議案が否決されたこと、その背景には本件盗掘疑惑について落札業者が町と話し合いを持ったとされる問題が絡んでいることを報道したものであって、原告が本件河川公園工事において盛土材が不足したため本件河川公園敷地内から約300立方メートルの土を掘削しこれを盛土材としたという本件盗掘疑惑の基となった事実について、これを盗掘であると摘示するものではない。
 そして、本件盗掘疑惑の基となった上記事実があること、F町が原告の専務を町役場に呼んで本件盗掘疑惑について事情聴取し顛末書を提出させており、原告とF町との間で話し合ったというべき事実があること、本件定例会及び本件合同委員会において、原告が上記掘削をしたことが盗掘であるか流用であるのか、流用であるとしても事前の許可が必要であったのではないか等の問題が指摘されたこと、F町議会において本件議案が否決され、その背景には本件盗掘疑惑があったこと、本件合同委員会後、被告A新聞社の取材に対して、F町幹部、取材に応じた議員、原告が、それぞれ本件記事AないしCの趣旨の話をしたことは、いずれも事実であるから、本件記事の内容は真実である。
 したがって、被告A新聞社らが本件記事を報道したことについて違法性はない。
ウ 仮に、本件記事の内容が真実であると証明されなかったとしても、本件記事は、被告A新聞社の記者であるIが、平成12年3月14日、F町議会事務局に対して取材し、本件定例会において盗削の問題についての質問が出たこと、本件合同委員会でも上記問題が取り上げられることになったことを確認し、同月15日、本件合同委員会での審議内容をF町議会事務局において聴取して取材するなどし、その後、被告Cが、本件議案に賛成、反対した議員の双方に対して取材し、原告にも電話で取材するなどして、公正な取材に基づいて報道されたものであり、被告A新聞社らには、これを真実と信ずるにつき相当な理由があったというべきである。
(原告の主張)
ア 本件記事は、原告が土砂の盗掘をしたことを摘示し、印象付けるものであり、虚偽の事実を記載したものである。
イ 被告A新聞社は、F町長が、本件合同委員会において、同一敷地内の土砂の移動については流用であるというのが栃木県及びF町の見解である旨述べているにもかかわらず、本件記事において、この点には全く触れず、盗掘と記載したのであって、明らかに虚偽の事実を記載したものである。また、本件定例会及び合同委員会における審議では、同一敷地内の土砂の移動についてではなく、本件河川公園から下水道工事現場という別の場所に土砂を搬出し使用したのではないかが問題とされていたのであって、被告A新聞社らが主張するように同一敷地内の土砂の移動が本件盗掘疑惑の基となった事実であるというのであれば、それ自体、虚偽の事実を記載したことになる。
ウ 被告A新聞社は、被告Dら特定の議員からの偏った情報に基づいて本件記事を構成し、原告に取材した際にも、本件議案否決の背景に本件盗掘疑惑が絡んでいることについてはコメントを求めず、原告が疑惑を否定し根拠がない旨の反論をする機会がないまま、本件記事を掲載したものであって、公正な取材に基づいて掲載したものではない。
D発言の名誉毀損該当性
(原告の主張)
 D発言は、原告が公共事業において土砂の盗削を行った悪質業者であると述べ、刑法犯であるとの印象を与えるものであり、原告の社会的評価、信用を著しく失墜させるものである。
 なお、D発言自体から原告の名称が特定できないとしても、D発言が原告を指していることは明らかであり、特定性に欠けることはない。また、合同委員会は秘密会ではなく、委員長の許可があれば町民が傍聴することができ、町会議員、町職員ら34名が出席し、F町議会事務局にも審議内容が流されていたのであるから、公然事実を摘示したというべきである。
(被告Dの主張)
 被告Dは、発言の際、原告の名称を挙げることを慎重に避け、盗削という言葉もF町の担当者が流用という言葉にこだわるので論争のためにあえて用いたものであって、原告を盗削者であると断定したものではないから、D発言によって、原告の名誉を毀損したとはいえない。
 本件合同委員会は、非公開の秘密会であり、本件合同委員会での発言が公然事実を摘示したとはいえない。
D発言の違法性及び被告Dの責任
 (被告Dの主張)
ア 被告Dは、町議会議員として、栃木県やF町の指導監督の不備を正すという公共の目的のために、本件定例会及び本件合同委員会においてD発言をし、盗削といった言葉も論争をする中で必要最小限に絞って発言し、自己の目撃状況とその後の調査に基づき事実であると確信をして発言したものであって、相当性があるから、町議会議員の正当な職務行為として免責されるべきである。
イ 被告Dは、町議会議員として、栃木県やF町の指導監督の不備を正すためにD発言をしたもので、公共の利害に関する事実について、専ら公益を図る目的で発言したものである。
 被告Dは、平成11年10月19日午後11時ころから翌20日未明及び同日夜から翌21日未明の二晩にかけて、本件河川公園南側に位置する自宅及び同敷地内から、本件河川公園敷地内の2箇所において、工事施工業者がユンボで土砂を掘削し、ダンプカーに積載して東武鉄道鬼怒川線の踏切を越えて国道に出て走り去るところを目撃した。被告Dは、同月20日、F町観光課担当者をして砂利採取の跡を見分させ、その後、同観光課、栃木県の機関である栃木県日光土木事務所(以下「日光土木事務所」という。)を通じて、栃木県において本件河川公園敷地内の砂利を採取した業者から顛末書を徴していること、砂利採取が行われた上記日時に本件河川公園敷地内で工事は行われていなかったこと、砂利採取をした河川敷はF町が栃木県から占有許可を受けているが、F町も栃木県も業者の砂利採取を認めていなかったことを確認した。
 被告Dは、上記目撃状況とその後の調査に基づいて、原告が上記のとおり土砂を採掘したことが真実であると確信してD発言をしたものであるから、違法性がなく、仮に、真実でないとしても、真実と信じるにつき相当の理由があるから、責任がない。
ウ 仮に、原告が主張する経過どおりであったとしても、原告は、河川管理者から河川区域内の土砂等の採取の許可及び現状変更の許可を得ることなく、無断で河川区域内で土砂を採取したものであり、原告の行為は河川法25条、27条に違反し、処罰の対象となり得るものであるから、被告Dが盗削と発言したことは真実であるというべきである。
(原告の主張)
ア 被告Dは、F町に原告が盗削したと認めさせることによって、原告の本件請負契約の受注を妨害し、F町における公共事業の指名を停止させる目的で、D発言をしたものであり、町議会議員の正当な職務行為としてしたものではなく、公共の利害に係り、公益目的によるものともいえない。
イ 被告Dは、本件定例会及び合同委員会において、原告が、本件河川公園敷地内から土砂を掘削し、他の下水道工事現場に土砂を搬出し埋立てに用いたことをもって、土砂を盗掘したと発言している。
 しかしながら、原告は、平成11年8月ころ、本件河川公園工事の盛土の際、隣接地の土を約300立方メートル掘削して盛土材として使用し、同年9月初旬から10月中旬にかけて、F町から受注した下水道工事において生じた残土約200立法メートルを搬入して埋め戻したもので、被告Dが目撃したと主張する同年10月19日、同月20日夜間には、上記下水道工事のため、本件河川公園敷地を資材置場として使用し、下水道工事による残土、砕石の搬入、搬出を行い、同月20日午後11時ころダンプカー1台が脱輪しバックホウで引き上げる際落とした土砂を積載したことがあったが、本件河川公園敷地内から土砂を掘削、搬出して下水道工事に使用したことはなく、D発言は、虚偽の事実に基づくものである。
 また、被告Dの自宅及び同敷地内から、同人が土砂の掘削を目撃したと指摘する場所を見通すことはできず、目撃状況についての発言が変遷していることなどから、目撃状況について信憑性がなく、真実と信ずるにつき相当な理由があるともいえない。
ウ 原告は、河川管理者である栃木県から形状変更の許可を得たF町から受注して本件河川公園工事を行ったものであり、同工事の際の土砂の移動は許可の範囲内の形状変更であって、河川法に違反するものではない。
E発言の名誉毀損該当性
(原告の主張)
 E発言は、原告が公共事業において土砂の盗削を行った悪質業者であると述べ、刑法犯であるとの印象を与えるものであり、原告の社会的評価、信用を著しく失墜させるものである。
(被告Eの主張)
 被告Eは、本件合同委員会において、F町の担当者が流用という言葉にこだわるので論争のために盗削であると発言したもので、原告を盗削者であると断定したものではないから、E発言によって、原告の名誉を毀損したとはいえない。
E発言の違法性及び被告Eの責任
(被告Eの主張)
 被告Eは、被告D及び町民から原告が本件河川公園工事について土砂の盗掘をしている旨を聞き、所属するF町議会観光建設常任委員会の所轄事項であったので、町議会議員の当然の職責として、事実関係を明らかにするために、本件合同委員会の質疑においてE発言をした。E発言は、原告が盗掘したことよりも、原告が、栃木県やF町の承諾を得ず本件河川公園敷地内から約300立方メートルの土を掘削して盛土材として使用し、下水道工事から掘削した土砂を搬入して埋め戻したこと、本件河川公園敷地を資材置場として無断で使用したことについて、これを認める顛末書を提出していることを前提にして、F町担当者が流用という言葉で原告の行為を正当化しようとしたので、論争の過程でこれを反駁したものである。
 公共事業に関連して、違法な掘削行為か疑われている問題について、本件定例会や本件合同委員会において、盗掘であるのか流用であるのか、流用であるとしても事前の許可が必要であったのではないか等の問題について論争することは、町議会議員として当然の職責であり、被告Eの発言は免責されるべきである。
(原告の主張)
 被告Eは、本件合同委員会において、原告が、本件河川公園敷地内から土砂を掘削し他に搬出したことを前提として、土砂を盗掘したと発言している。本件河川公園敷地における土砂の採掘の経過は、上記D(原告の主張)イに記載のとおりであり、E発言は、虚偽の事実に基づくものである。
 被告Eは、原告の本件請負契約の受注を妨害し、F町における公共事業の指名を停止させる目的で、E発言をしたものであって、町議会議員の正当な職務行為としてしたものではない。
原告の損害
(原告の主張)
ア 原告は、長年にわたって公共工事の請負などを誠実に行ってきたところ、土砂を盗掘、盗削した旨の本件記事、D発言及びE発言により、その社会的評価、信用に計り知れない打撃を受けたものであり、その損害を金銭に換算すると、被告A新聞社らについては500万円、被告Dについては300万円、被告Eについては200万円を下らない。
イ 原告が受けた損害は、金銭賠償のみでは到底填補されるものではなく、被告らによる各名誉毀損の内容、態様が悪質であること、事後、謝罪、訂正等の措置が一切講じられていないことなどに照らすと、原告の名誉を回復するためには、被告A新聞社、被告D及び被告Eによる謝罪広告の掲載が不可欠である。
第3 当裁判所の判断
1 前記争いのない事実に証拠(甲1、3ないし5、11の1ないし10、甲12、13、14の1ないし8、甲15、16、18、19の1ないし3、甲21ないし23、27の1ないし4、甲28の1ないし3、乙1、2、丙1ないし5、6の1ないし5、丙7、丁1、証人J、同I、被告D本人、同E本人)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の各事実が認められる。
 本件河川公園敷地の大部分は、一級河川の河川区域内にあり、F町は、平成10年8月26日、河川公園として整備をする目的で、河川管理者である栃木県知事から、河川法24条、26条、27条に基き、河川の占有、工作物の新築等、土地の形状変更の許可を得た。
 原告は、平成11年2月12日、F町から、同日から同年3月20日までの工期で、本件河川公園の園路開設や駐車場造成等を内容とする本件河川公園工事を受注した。同工事の工期は、その後、同年9月9日までと変更された。
 また、原告は、同年8月11日、F町から、同日から同年12月8日までの工期で、F町公共下水道高徳工区築造工事分割1号(以下「本件下水道工事」という。)を受注した。
 本件河川公園工事の設計では、盛土材として900立方メートルの購入土が見積もられていたところ、原告が、平成11年8月ころ、本件河川公園工事の盛土工事を実施していた際、盛土材が不足することが判明した。原告は、本件河川公園工事の発注部署であるF町観光課の主幹に相談したものの、設計変更等が見込めなかったことから、本件下水道工事において発生する残土で埋め戻すことができると考え、無断で、本件河川公園敷地内の施工箇所の北側別紙図面X点付近(以下「本件掘削箇所」という。)から、約300立方メートルの土を掘削し盛土材として使用した。
 原告は、同年9月9日ころ、本件河川公園工事の施工を終え、同年10月中旬ころまでに、本件下水道工事において発生した土約200立方メートルを使用して本件掘削箇所を埋め戻し、本件掘削箇所は、掘削前から約100立方メートル不足する状態となった。
 原告の下請業者である有限会社Kは、本件下水道工事の施工のため、平成11年10月中旬ころ、夜9時から翌朝5時までの夜間工事の許可を得て、工事を実施した。Kは、当初、下水道工事において生ずる土砂や埋設用の砕石を仮置きしておくストックヤードとして原告所有地を使用していたが、同月18日、同地の近隣の住民から苦情があったことから、同日の夜間工事を中断した。
 原告は、Kから報告を受け、本件河川公園工事が終了していたにもかかわらず、無断で、本件河川公園敷地をストックヤードとして使用するよう指示した。
 Kは、同月19日、本件河川公園敷地内での工事、占有の許可を得ることなく、埋設用の砕石やバックホウ(掘削、積込等の作業に用いられる建設機械)などを本件河川公園敷地内に運び込み、本件河川公園敷地内の別紙図面Y点付近をストックヤード(以下「本件ストックヤード」という。)として使用し、午後9時ころから、本件下水道工事の夜間工事を開始し、翌20日未明にかけて、本件下水道工事現場から掘削した土砂をダンプカーで本件河川公園敷地内に搬入して本件ストックヤードに仮置きし、同所から本件下水道工事現場へ埋設用の砕石、仮置きしていた土砂を搬出する作業を行った。
 Kは、同様にして、同月20日から翌21日の未明にかけて、本件下水道工事の夜間工事の施工のため、本件下水道工事現場から本件ストックヤードに土砂を搬入、仮置きし、同所から本件下水道工事現場へ砕石、仮置きしていた土砂を搬出する作業を行った。同月20日午後11時ころ、土砂の搬送を行っていたKのダンプカーが、別紙図面Z点付近で脱輪し、Kは、バックホウを用いるなどしてダンプカーを引き上げ、その際に落とした土砂をならすなどの作業をした。
 被告Dは、本件河川公園の南側に位置する別紙図面A点に居宅を所有している。同居宅は、本件河川公園敷地よりも高い位置にあり、同居宅から本件河川公園敷地を俯瞰することができるが、同居宅及びその敷地内から、別紙図面X点ないしY点の方向及び別紙図面Z点方向の見通しは、間にある木立のため、良くない状況である。
 被告Dは、平成11年10月19日夜、本件河川公園敷地内において工事作業がおこなわれていることに気付き、自宅及びその敷地内から、別紙図面Y点付近においてバックホウを用いて作業をしている状況やダンプカーが本件公園敷地内へ出入りしている状況などを目撃した。また、被告Dは、同月20日夜、同様にして、本件河川公園敷地内において工事作業が行われていることに気付き、更に、別紙図面Z点付近において、ダンプカーとバックホウを用いて作業している状況などを目撃した。
 被告Dは、同月21日、日光土木事務所やF町観光課に問い合わせて、本件河川公園敷地内での工事、夜間作業の許可がされていないことを確認し、同課担当者らと本件河川公園敷地に赴き、別紙図面X点付近に掘削された跡があること、別紙図面Y点付近にバックホウが停めてあること、別紙図面Z点付近に土砂をならした跡があることなどを確認した。
 日光土木事務所及びF町観光課の担当者は、被告Dからの指摘を受けて、平成11年10月19日ないし21日の2晩にかけて本件河川公園敷地内において作業をしていたのが、Kであることを確認し、同月25日、26日にかけて、原告から事情を聴取した。原告は、本件河川公園工事の施工の際、設計数量では盛土材が不足していたことから、施工箇所横の土砂を流用して盛土材として使用し、本件下水道工事から生ずる残土で埋め戻そうとし、一部埋め戻したこと、本件下水道工事の夜間工事において、当初ストックヤードとしていた箇所の近隣住民から苦情があったことから、本件河川公園敷地内をストックヤードとして使用したことなどの経過を説明し、同月28日ころ、日光土木事務所長に対し、本件顛末書を提出した。
 原告は、同年11月ころ、日光土木事務所の指示で、本件掘削箇所に埋め戻した本件下水道工事の残土を取り除き、新たに土砂を入れて本件掘削箇所を埋め戻した。
 原告は、平成12年3月6日ころ、F町に対し、本件顛末書の内容に、日光土木事務所からの指示で、本件掘削箇所から本件下水道工事の残土200立方メートルを搬出し、その跡に同質の土300立方メートルを搬入して埋め戻した旨を付加した内容の顛末書を提出した。
 F町は、平成12年2月18日、H小学校体育館建設工事の指名競争入札を実施し、原告は、代金額1億8774万円で落札した。
 平成12年3月14日、F町議会において本件定例会が行われた。
 被告Dは、本件定例会の一般質問において、F町議会議員として、原告が本件河川公園敷地内から掘削した土砂を搬出し本件下水道工事現場に埋めたことを前提として、本件河川公園敷地において無断で夜間工事が行われたこと、土砂の採掘が行われたことについて質問し、その中でD発言@の発言をし、その質疑の中で、F町観光課長が当該建設会社が原告であること及び原告がF町に対して提出した上記顛末書の内容を明らかにした後、D発言A及びBの発言をした。
 平成12年3月15日、本件河川公園工事における土砂採取の問題について、本件合同委員会が行われた。本件合同委員会の出席者は、審査委員長の外F町議会議員及び同町職員の合計34名である。
 F町長は、質疑の冒頭で、栃木県の見解として、河川占有の許可をしている同一敷地内の土砂を同一敷地内で移動することは流用である旨を述べた。その質疑の中で、被告Dは、本件定例会と同様に、原告が本件河川公園敷地内から掘削した土砂を搬出し本件下水道工事現場に埋めたことを前提として、D発言CないしFの発言をした。また、被告Eは、被告Dから聞いた事情に依拠して、F町議会議員として、E発言@ないしBの発言をした。
 また、質疑の中で、F町長及び同助役は、同日の審議内容について、調査をした上で処分等を考える旨の発言をし、被告Eは、同日の審議内容が翌日の本件議案に関わってくる旨の発言をした。
 平成12年3月16日、定例会において、本件議案が否決された。被告Dは、その質疑において、議案に反対する旨の討論をした。
 被告A新聞社の記者であるIは、平成12年3月14日、F町議会事務局に対して取材し、同月15日、同事務局において本件合同委員会の審議内容を聴取した。被告Cは、これらの取材を引き継ぎ、同月16日、定例会での審議を取材し、その後、F町議会議員、F町、原告に対して取材し、本件記事を作成した。
2 被告A新聞社らに対する請求について
本件記事の名誉毀損該当性について
 本件記事は、全体として見ると、F町議会において本件議案が否決されたことを報道するものであるが、本件見出し中の「落札業者疑惑絡み否決」の部分と本件記事@とが相俟って、本件議案否決の背景に本件請負契約の落札業者が他の公共事業において土砂の盗掘をした疑いがあるという事実を摘示し、その旨の印象を与えるものであり、本件記事A、Bがこれを補強するものであるということができる。そして、本件記事中に原告の名称は記載されていないが、本件請負契約の落札業者が原告であることを知る不特定多数の者には、同落札業者が原告のことを指すと識別することが可能であるから、本件記事は、原告の社会的名誉、信用を低下させるものであり、原告の名誉を毀損するものであると認められる。
 なお、原告は、本件記事が、土砂の盗掘をしたという事実そのものを摘示し、その旨の印象を与えるかのように主張するが、本件記事の構成、記載内容からすると、その疑いがあることを摘示し、その旨の印象を与えるにとどまるというべきである。また、原告は、本件記事Cにより原告が盗掘を認めたととれるように構成した旨主張するが、その記載内容、本件記事内の構成位置を考慮しても原告主張のような印象を与えるものであるということはできない。
本件記事の違法性及び被告A新聞社らの責任について
ア 事実の摘示による名誉毀損について、その行為が公共の利害に関する事実に係り、その目的がもっぱら公益を図ることにある場合において、摘示された事実がその重要な部分について真実であることが証明されたときは、その行為には違法性がなく、不法行為は成立しないと解される。
イ 本件記事は、F町議会において本件議案が否決されたことを報道するものであるから、公共の利害に関する事実に係るものであるといえ、その記載内容に照らすと、専ら公益を図る目的で報道されたものであると認められる。
 そして、本件記事のうち名誉毀損に該当するのは、本件議案否決の背景に本件請負契約の落札業者である原告が他の公共事業において土砂の盗掘をした疑いがあるという事実に係る部分であるから、この点について、真実性の証明があるか否かを検討する。前記1AないしC、G、Hに認定のとおり、原告が、F町から受注した本件河川公園工事において、盛土材が不足したことから、無断で本件河川公園敷地内の施工箇所北側から土砂を掘削し盛土材として使用し、その後、本件下水道工事からの残土で一部埋め戻したこと、平成11年10月19日ないし同月21日未明の二晩にかけて、Kをして、本件下水道工事の施工のため、無断で本件河川公園敷地をストックヤードとして使用し、仮置きする土砂及び埋設用の砕石を搬入、搬出し、その際、同月20日に、ダンプカーを脱輪させ、その引上げ作業等をしたこと、そして、本件定例会及び本件合同委員会において、被告Dの一般質問を契機として、原告の上記行為について質疑がされ、原告が本件河川公園敷地内から土砂を掘削し、本件河川公園工事の盛土として使用したのか、本件河川公園敷地内から搬出して他に使用したのか、また、原告の行為が流用にとどまるのか盗削であるといえるのかが問題とされたこと、更に、その質疑の中で、本件合同委員会において、F町長及び同助役により、同日の審議内容について調査をした上で原告に対し処分等を考える旨の発言がされたこと、被告Eにより、同日の審議内容が本件議案に関わってくる旨の発言がされたことからすれば、本件定例会及び合同委員会の質疑において、原告が土砂を採掘した行為について土砂を盗掘したといえるか否かが問題とされ、そのことが本件議案否決の背景となっているということができるから、本件記事が摘示した事実は、その重要な部分において真実であると認められる。
ウ したがって、本件記事を掲載、頒布したことについては、名誉毀損の違法性を欠き、不法行為は成立しないというべきである。
3 被告D及び同Eに対する請求について
D発言及びE発言の名誉毀損該当性について
 D発言AないしC、E、F及びE発言@ないしBは、本件定例会及び合同委員会において、当該建設会社が原告であること及び原告提出に係る顛末書の内容が明らかにされた後に発言されたものであり、かつ、その発言内容及び質疑の経過によれば、原告が本件河川公園敷地内から土砂を掘削したことについて、これが盗削と評価できる違法なものであるという印象を与えるものと認められる。そして、本件合同委員会における発言についても、その出席者数からすれば公然と行われたということができるから、上記各発言は、原告の社会的評価及び信用を低下させるものであり、原告の名誉を毀損するものであると認められる。
 他方、D発言@については、発言された時点において原告を指すと識別することが可能ということはできず、また、D発言Dについては、その内容が原告の社会的評価及び信用を低下させるものであるということはできないから、原告の名誉を毀損するものであるとは認められない。
D発言及びE発言の違法性並びに被告D及び同Eの責任について
 前記認定のとおり、被告D及び同Eは、F町議会議員であり、F町議会における本件定例会及び合同委員会において、それぞれ町議会議員として、D発言及びE発言をしたものである。町議会議員は、町議会において、町行政に関連する事項について質疑する権限を有するというべきところ、D発言及びE発言は、いずれも、F町が占有許可等を得て開発を進めていた本件河川公園敷地内において土砂が採掘されたことについて行われたもので、F町の行政に関連する事項についての質疑であるというべきであるから、町議会議員としての職務を行うにつきされたものであると認められる。そうすると、仮にD発言及びE発言が両被告の故意又は過失による違法な行為であるとしても、国家賠償法1条1項に基づきF町が賠償責任を負うことがあるのは格別、公務員である両被告は個人としては、原告に対して、その責任を負わないと解すべきである。
 なお、原告は、被告D及び同Eが、原告の本件請負契約の受注を妨害し、F町における公共事業の指名を停止させる目的で、D発言及びE発言をしたものであり、町議会議員の正当な職務行為としてしたものではない旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。前記認定のとおり、被告Dは、原告が本件河川公園敷地内から掘削した土砂を本件下水道工事現場に搬出したことを前提としてD発言をしたものであり、誤った事実関係の認識を前提として発言をしたということができるが、原告下請業者の本件河川公園敷地内における夜間工事作業を目撃した際の状況、本件掘削箇所の原型復旧がされておらず掘削された跡が残っていたこと、その付近にバックホウが停めてあったことなど本件河川公園敷地内の痕跡を確認し、更に、F町や日光土木事務所に問い合わせて無許可で夜間工事作業が行われたことを確認していることからすれば、上記のように認識したことが、あながち不自然、不合理ということはできず、被告Dが意図的に事実関係を歪めて質疑をしたと認めることはできない。被告Dから聞いた事情に依拠して発言をした被告Eについても同様である。また、被告Dは、D発言@において「そういう悪いことをする業者をなぜ指名入札をさせるかということで伺います。」と、D発言Aにおいて「そういうことをした人に1か月もしないうちに指名をするというのはいかがかということでございます。」などと発言しており、これらを通じて見ると、F町が発注する公共事業において原告を指名することの当否を問題として指摘しているということができ、被告Eについても、本件合同委員会において、その審議内容が本件議案に関わってくる旨発言しているほか、「これをやたらにね、では指名停止しろとか、こうだということは言わないけれども、」などと発言しており(甲4)、同様に、公共事業において原告を指名することの当否を問題として指摘しているということができるが、これらは、町議会議員としての権限を濫用してことさらに公共事業における指名の停止を求めるようなものではなく、上記のように指摘したことをもって、D発言及びE発言が正当な職務行為としてされたものではないということもできない。
4 以上によれば、原告の本訴各請求は、いずれもその余の点について判断するまでもなく理由がないからいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。

宇都宮地方裁判所第2民事部
 裁判長裁判官 羽田弘
 裁判官 宮田祥次
 裁判官 天川博義
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