判例全文 | ||
【事件名】無洗米製造機中傷事件(2) 【年月日】平成15年10月16日 東京高裁 平成15年(ネ)第1497号 不正競争行為差止請求控訴事件 (原審・東京地裁平成14年(ワ)第3965号) (平成15年8月26日 口頭弁論終結) 判決 控訴人(被告) 株式会社東洋精米機製作所 訴訟代理人弁護士 深井潔 補佐人弁理士 辻本一義 同 窪田雅也 被控訴人(原告) 株式会社サタケ 訴訟代理人弁護士 牧野利秋 同 鈴木修 同 伊藤玲子 同 嶋田英樹 補佐人弁理士 増井忠弐 主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴人の求めた裁判 控訴人は、「原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。」との判決を求めた。 第2 事案の概要 1 控訴人が、被控訴人製造販売に係る無洗米製造装置を使用している顧客である複数の精米業者に対し、同装置に用いられるタピオカに猛毒のシアンが含まれているなどの内容の通知書を送付したことから、被控訴人が、控訴人の同行為が不正競争防止法2条1項14号の虚偽事実の告知・流布に当たるとして、その告知・流布することの差止めを求め、原判決は、一部を除き被控訴人の請求を認容した。 2 争いのない事実及び争点は原判決事実及び理由欄の第2に、争点に関する当事者の主張は同第3にそれぞれ示されているとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、原判決が認容した範囲において被控訴人の請求は理由があるものと判断するものであるが、その理由は、原判決33頁24行目の「乙102」の次に「、当審で乙110及び111を追加。」を加えるほか、原判決事実及び理由欄の「第4 争点に対する判断」に示されているとおりである。 2 当審における控訴人の主張の趣旨は、控訴人が送付した書簡に、原判決が記載されていると認定した各点(原判決27頁(2)の@〜C)が記載されているということはできないこと、この書簡の記載は真実であること、書簡の読み手は、タピオカに含まれるシアンが無洗米TWRに付着する可能性があるとの一意見が記載されているにすぎないと認識するものであること、を述べるものである。 しかし、控訴人が当審で主張するところ及び当審で追加提出された書証にかんがみても、上記控訴人主張の点に関する原判決の認定判断を左右するものではない。 控訴人は、意見の表明ないし論評による信用毀損については、公共の利害に関する場合、公益を図る目的であり、その根拠とした事実の全体又は主要な部分が真実であるか、若しくは真実であると信じるにつき相当の理由があるときには、違法性は阻却されると主張する。 しかしながら、原判決25頁以下の1の項、特に27頁(2)の認定判示によれば、控訴人は、精米業者に対し本件書簡を送付していながら、生活クラブ連合会の連合消費委員会委員であるA及びBに対してはこれを送付したとは証拠上認められず、また、ホクレンや泉市民生協に対しては本件書簡と同旨の事実を口頭で告知したとも証拠上認められないというのであるから、公益を図る目的であったとは認めることは困難であり、さらに、原判決34頁以下の3の項の認定判示によれば、控訴人は、激烈な表現を伴った本件書簡を、根拠のないまま自己の憶測で作成し、精米業者に送付したというのであるから、その全体又は主要な部分が虚偽であることを知っていたと容易に推認することができ、仮に虚偽ではないと信じていたとしても、相当な理由があるということができない。控訴人の主張は、いずれの観点からも、採用することはできない。 控訴人は、「虚偽の事実」に当たる原判決27頁(2)のA〜Cの点が記載された書簡を精米業者に送付したものであるから、不正競争防止法3条1項に基づき、原判決主文1のとおり(1)〜(3)の行為の差止めを命じる必要があるものというべきである。 第4 結論 よって、被控訴人の請求を認容した原判決部分は相当であり、本件控訴は棄却されるべきである。 東京高等裁判所第18民事部 裁判長裁判官 塚原朋一 裁判官 塩月秀平 裁判官 古城春実 |
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