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【事件名】公共工事用積算ソフト事件(2)
【年月日】平成15年7月15日
 大阪高裁 平成14年(ネ)第1763号 損害賠償等請求控訴事件
 (原審・大阪地裁平成11年(ワ)第12875号)
 (口頭弁論終結の日 平成15年5月6日)

判決
控訴人(1審原告) シーエーエヌ株式会社
同訴訟代理人弁護士 松村信夫
同 和田宏徳
同 塩田千恵子
同訴訟復代理人弁護士 坂本優
被控訴人(1審被告) 株式会社ドッドウエルビー・エム・エス
同訴訟代理人弁護士 石本哲敏


主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴人の当審における追加請求(一般不法行為に基づく損害賠償請求)を棄却する。
3 当審における訴訟費用は、控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、被控訴人が販売している「自治体専用 公共土木設計積算システム」と称するプログラム(以下「被告ソフト」という。)を複製、頒布、翻案してはならない。
3 被控訴人は、原判決別紙「営業秘密目録」記載の営業秘密(以下「本件営業秘密」という。)を、被告ソフトの作成・製造・販売に使用し、又はこれを開示してはならない。
4 被控訴人は、本件営業秘密を使用して開発製造した被告ソフトを廃棄せよ。
5 被控訴人は、控訴人に対し、5605万円及びこれに対する平成11年10月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。
7 仮執行宣言
第2 事案の概要
1 本件は、「公共工事設計積算システム」と称するプログラム(以下「原告ソフト」という。)の著作権を有する控訴人が、被控訴人に対し、@被告ソフトの作成・販売は、原告ソフトについての控訴人の著作権(複製権及び翻案権)を侵害するとして、被告ソフトの複製・頒布・翻案の差止めを請求し、A被控訴人は、原告ソフトに関する本件営業秘密が不正に取得されたことにつき悪意若しくは重過失でこれを取得し(不正競争防止法2条1項5号)、又は本件営業秘密の取得後に、本件営業秘密について不正取得行為が介在したことにつき悪意若しくは重過失で本件営業秘密を使用若しくは開示した(同項6号)として、本件営業秘密の使用及び開示の差止め並びに本件営業秘密を使用して開発した被告ソフトの廃棄を求め、B著作権侵害又は不正競争防止法4条に基づく損害賠償を請求した事案である。
 原判決は、控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人は、控訴を提起し、当審において、前記第1の5と同旨の一般不法行為に基づく損害賠償請求を追加した(控訴人は、上記追加請求に係る一般不法行為に基づく損害賠償請求と、上記Bの著作権侵害に基づく損害賠償請求、不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求を、いずれも選択的に請求する趣旨であると解される。)。
 (以下、控訴人を「原告」、被控訴人を「被告」という。また、略称は原判決のそれによる。)
2 前提となる事実
 当事者間に争いがない事実及び証拠により容易に認定できる事実は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決2頁18行目から4頁3行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 2頁22行目の「原告会社」を「原告」と改め、3頁7行目の「次々に」の次に「原告を」を加え、同9行目の「ソフトウエア」を「ソフト」と改め、同14行目の「被告は」の次に「、平成9年1月ころ、」を加える。
(2) 4頁3行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。
「(3) 原告ソフト及び被告ソフトは、地方自治体が公共工事を民間に発注する際に、入札価格の基準価格の積算を行うことを目的とするものである(以下、このようなソフトを「公共工事用積算ソフト」という。)。
 公共工事用積算ソフトが、入札価格の基準価格の積算を行う作業手順は、おおむね次のとおりである。
ア 各都道府県が発行している積算について標準的な作業内容を定めた「積算基準書」及び「コード表」に準拠して、ある工事について単位量を完成するために要する標準資材量や労務量(歩掛かり)に関する必要な情報(歩掛かりデータ)を、あらかじめ入力しておく。
イ そして、例えば人力掘削に必要な金額を算出するに当たっては、関係する歩掛かりデータ、すなわち施工単価コード、単位数量、単位、出力名称、規格名称、掘削する土質及び増減率について、デジタルデータがあらかじめ入力されていれば、後は、実際の作業量など個別の条件を入力することにより(既定値があるものについては、既定値以外の条件を用いる場合には入力の必要があるが、そうでない場合には入力の必要はない。)、当該作業に必要な金額が算出される。
ウ このように、公共工事用積算ソフトは、@あらかじめ入力された歩掛かりデータの部分、A個別の工事について必要なデータを入力する部分(使用者に対してどのように入力するかガイダンスする機能を含む。)、Bあらかじめ入力された歩掛かりデータと、個別に入力されたデータを利用して演算し、算出された金額を出力する部分の三つに分けることができる(もちろん、原告ソフト及び被告ソフトには、このほかにも、入力する項目や数値に不適切なものがないかチェックする機能や、データを管理する機能など多くの機能が備わっているが、公共工事用積算ソフトの機能をごく単純化すると、上記三つの機能に分けることができる。)。」
3 本件の争点
(1) 被告ソフトは、原告ソフトを複製又は翻案したものであるか否か。
(2) 被告は、原告ソフトの著作権を侵害する行為をしたか否か。
(3) 被告は、原告ソフトに関する本件営業秘密が不正に取得されたことにつき、悪意若しくは重過失でこれを取得し、又は本件営業秘密の取得後に、本件営業秘密について不正取得行為が介在したことにつき悪意若しくは重過失で本件営業秘密を使用若しくは開示したか否か(不正競争防止法2条1項5号、6号該当の不正競争行為の有無)。
(4) 被告は、Cらが原告から持ち出した原告ソフトの歩掛かりデータをコンバートしたものを被告ソフトに組み込み、原告と競合する地域で被告ソフトを販売したか否か(一般不法行為の有無)。
(5) 原告の被った損害の有無及び額
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点(1)について
 次のとおり付加、訂正するほかは、原判決4頁16行目から10頁18行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 4頁16行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。
 「 原告ソフトは、地方自治体が道路工事などの公共工事を民間に発注する際に、入札の前提となる予定価格を公正に計算し、その基礎となる単価や歩掛かりの情報を処理するためのプログラムであり、著作権法2条1項10号の2、10条1項9号にいうプログラムの著作物に当たる。また、原告ソフトは、歩掛かりデータの集合物であって、これらの情報をコンピュータを用いて検索することができるように体系的に構成したものであり、著作権法2条1項10号の3、12条の2にいうデータベースの著作物に当たる。」
(2) 4頁17行目の「被告会社」を「被告」と、同23行目の「ア〜ウ」を「ア〜オ」と各改める。
(3) 6頁13行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。
 「エ 計算補正区分
 公共工事用積算ソフトにおいて、最終的に算出された価格を出力する際に、項目によって、千円未満や小数点以下などを切り捨てたり四捨五入するなど、端数処理の作業が必要になることがある。この作業を「計算補正」という。そして、各計算補正作業に付けられた番号を「計算補正区分」という。
 原告ソフトと被告ソフトの計算補正区分は、並び順が一致し、かつ、被告ソフトの計算補正区分は、原告ソフトの計算補正区分プラス100であって、極めて類似している。
 さらに、原告ソフト及び被告ソフトには、いずれも、将来に使用の可能性があるためにあらかじめ用意されているものの、実際には現在使用されていない計算補正区分があるが、これも一致している。
 これらのことは、被告ソフトが原告ソフトを複製又は翻案したことの証拠である。
オ 諸雑費及び小計を計算するためのデータの与え方
 諸雑費及び小計を計算するためのデータの与え方には、@それぞれの諸雑費や小計の情報において、自己の対象行がどこか情報を持たせる方法、Aそれぞれの行に、自己がどこの諸雑費や小計の対象行になっているか情報を持たせる方法、B対象行の情報を別ファイルに独立させ、諸雑費行や小計行と関連づける方法、C対象行の組み合わせパターンを全て区分化して、その区分を各データに持たせる方法がある。原告ソフトは@の、被告ソフトはAの方法を採っているところ、原告ソフトを複製したジェイソフトのdbマジック版複製ソフトもAの方法を採っている。したがって、被告ソフトは、ジェイソフトのdbマジック版複製ソフトをさらに複製又は翻案したものであると考えられる。」
(4) 6頁16行目から17行目にかけての「被告会社」を「被告」と、同18行目の「原告会社」を「原告」と、同23行目の「捜査、逮捕されている」を「逮捕、勾留されている」と各改める。
(5) 7頁1行目の「捜査、逮捕時期」を「逮捕、勾留時期」と、同12行目の「ジェイソフトが著作権侵害事件が強制捜査された」を「ジェイソフトが、Cらに対する著作権法違反被疑事件に関して、警察の捜索差押えを受けた」と、同15行目の「提案書(甲8)は、」を「提案書(甲8)と、」と各改める。
(6) 7頁22行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。
 「カ ジェイソフトが作成したdbマジック版複製ソフトには、使用されている歩掛かりデータを別のファイル構造にコンバートするためのプログラムが存在するが、コンバート後のファイルは、dbマジック版複製ソフト中では全く使用されていない。
 コンバート後のファイルは、推測される被告ソフトの歩掛かりデータファイルと同一構造を持つものと考えられる。
キ 被告は、原告ソフトと被告ソフトは、そもそも異なる言語、開発ツールを用いて作成されており、この点で決定的に異なっている旨主張する。
 しかし、原告ソフト中の歩掛かりデータを、原告が作成したコンバートプログラムにより、推測される被告ソフトのファイル構造にコンバートすると、コンバートされた歩掛かりデータによって被告ソフトを稼働させることが可能である(ただし、被告ソフトを実行するために必要な実行モジュールを入手できないため、擬似的に、被告ソフトをMicrosoft社のAccess2000上で起動させた。)。上記コンバートプログラムは、容量2388KBの小規模なものであり、開発期間も1名が1週間弱で開発可能なものであるから、上記コンバートは極めて容易にできるものである。
 したがって、被告ソフトは、原告ソフト中の歩掛かりデータを流用して作成されたものであると考えられる。
ク 被告ソフト中の「\VBプログラム\ロジック入力-new\Module1.bas」部分には、コンバートによりテキストデータを取り込んだ場合に、本来なら1行に記載されるべき改行コードを構成する2バイトのデータが、二つのフィールドに分散されてしまい、改行コードとしての意味をなさなくなるエラーを、歩掛かりデータを作成する者に注意喚起する処理(エラールーチン)が付加されている。このことは、被告ソフトが、原告ソフトの歩掛かりデータをコンバートして作成されたことの証左の一つである。」
(7) 9頁14行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。
 「エ 計算補正区分について
 争う。
オ 諸雑費及び小計を計算するためのデータの与え方について
 争う。」
(8) 9頁21行目の「捜査、逮捕された」を「逮捕、勾留された」と改める。
(9) 10頁12行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。
 「カ 同カ記載の事実について、コンバートプログラムは、コンバート先のファイル構造が特定されていなければ意味がないが、dbマジック版複製ソフトのコンバートプログラムが更新された平成8年5月ないし6月ころは、被告ソフトは作成の準備すらされておらず、ファイル構造は特定されていなかった。
 dbマジック版複製ソフトのコンバートプログラムは、テスト用としてバージョンアップのために作成されたものである。
キ 同キ記載の事実について、原告は、被告ソフトを解析して、それに使用できるような形に原告ソフトの歩掛かりデータをコンバートするプログラムを設計したのであるから、原告ソフトの歩掛かりデータが被告ソフトで使用できるのは当然のことであり、複製又は翻案の根拠にはならない。」
2 争点(2)について
 次のとおり訂正するほかは、原判決10頁20行目から11頁17行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 10頁21行目の「翻案して」を「複製又は翻案して」と改める。
(2) 10頁25行目の「同保守行為は、」から11頁1行目末尾までを「被告は、遅くとも平成10年4月ころ以降は、被告ソフトが原告の著作権を侵害するものであることを知っていたというべきであり、被告ソフトを頒布し又は頒布するために所持する行為は、著作権法113条1項2号により、原告の著作権を侵害する行為とみなされる。」と改める。
(3) 11頁7行目及び同14行目の各「別紙」をいずれも「原判決別紙」と改める。
3 争点(3)について
 原判決11頁20行目から13頁3行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決12頁14行目の「原告会社」を「原告」と改める。
4 争点(4)について
〔原告の主張〕
 原告は、昭和62年ころから原告ソフトの開発に取りかかり、1億円以上の開発費を投じて原告ソフトを完成させた。積算基準書及びコード表に記載された歩掛かりデータを、土木設計積算ソフトの歩掛かりデータとして入力するためには膨大な労力を要する。
 被告が平成9年1月ころから同10年2月ころまでの約1年という短期間で被告ソフトを開発し、歩掛かりデータ部分を入力することは不可能であり、被告は、Cらが原告から持ち出した歩掛かりデータをコンバートしたものを、被告ソフトの歩掛かりデータ部分として組み込んだものと考えられる。
 そして、被告は、原告ソフトと競合する販売地域で被告ソフトを販売しているから、公正かつ自由な競争原理によって成り立つ取引社会において、著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護に値する営業活動上の利益を侵害するものとして、一般不法行為に該当する。
〔被告の主張〕
 Cらが原告から持ち出した歩掛かりデータをコンバートしたものが被告ソフトに組み込まれていることは否認し、原告が歩掛かりデータ入力のために要した労力及び費用については不知。
 データ入力はプログラムの開発とは全く異なる作業であり、プログラムを開発する者がデータ入力をする必然性はない。被告が、原告の歩掛かりデータをコンバートして使用したのであれば、被告ソフトのソースコードの解析から容易にその事実が明らかになるはずであるが、そのような証拠は全くない。
5 争点(5)について
 原判決13頁5行目から同24行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
第4 当裁判所の判断
1 争点(1)について
 当審も、被告ソフトが原告ソフトを複製又は翻案したものであるとは認められないと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決14頁1行目から23頁12行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 14頁14行目から15行目にかけての「B既定値の表記及び処理内容を指摘するが、既定値の表記に関する主張事項を除けば」を「B既定値の表記及び処理内容、C計算補正区分及びD諸雑費及び小計を計算するためのデータの与え方を指摘するが、既定値の表記及び計算補正区分に関する主張事項を除けば」と改める。
(2) 18頁11行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。
 「オ 計算補正区分について
(ア) 証拠(甲52)によれば、原告ソフトと被告ソフトの計算補正区分を対比すると、@計算補正区分の並び順が一致し、A被告ソフトの計算補正区分が原告ソフトの計算補正区分プラス100となっており、B将来に使用の可能性があるためにあらかじめ用意されているが、実際には現在使用されていない計算補正区分が一致しているなど、両者の間に類似性があることが認められる。
(イ) しかし、公共工事用積算ソフトにおいては、算出された金額を出力するに当たって、どの桁まで表示するか、それ以下については切り捨てるか、四捨五入するかなどは、地方自治体の作成した施工単価条件表(甲18、25〜27)に定められており、これに従って計算補正をするプログラムを作成する限り、現実に使用される計算補正は一致するのが当然である。
(ウ) 実際には現在使用されていない計算補正区分について、将来追加される可能性を考慮して、容易にプログラムの修正を行えるように、あらかじめ設定しておくことは、不自然な処理ではない。
 そして、将来、どのような計算補正が追加される可能性があるかは、現在使用されている計算補正の種類から、ある程度予測することが可能であると認められる(例えば、現在、切捨てと四捨五入においては、「少数第1位止」から「少数第5位止」までが使用されているが、切上げにおいては、「少数第1位止」のみが使用されている場合は、切上げについても、将来、「少数第2位止」から「少数第5位止」までが使用される可能性があるとの予測が成り立つ。)。
 そうすると、原告が、将来追加される可能性を見越して、あらかじめ設定した計算補正の選択は、原告ソフトに特有のものであるとはいえない。したがって、原告ソフトと被告ソフトの現在使用されていない計算補正区分が類似しているからといって、被告ソフトが原告ソフトを複製又は翻案しているということはできない。
(エ) しかも、計算補正は、前記前提となる事実記載の公共工事用積算ソフトのうち、算出された金額を出力する場合等に端数を処理するという機能を担当するにすぎないから、ソフト全体から見ればごく一部にすぎない。
 そして、被告ソフトのソースコードは開示され(乙5)、原告は、被告ソフトのソースコードを解析するための十分な能力及び時間があったにもかかわらず、他に原告ソフトと被告ソフトの表現上の類似性についての主張立証がされていないことを考慮すると、計算補正区分が類似しているという一事をもって、プログラム全体についての同一性、類似性を認めるには至らない。
(オ) なお、計算補正区分の並び順が一致し、計算補正区分が類似していることは、プログラムの表現上の類似点であるという余地があるから、プログラム全体についての同一性、類似性が認められないとしても、計算補正に関するプログラムの部分について、著作権侵害が成立する余地がある。
 しかし、前記(イ)及び(ウ)のとおり、公共工事用積算ソフトを作成するに当たって、どのような計算補正を選択するかは、地方自治体の作成した施行単価条件表に基づいて決まることであり、将来追加される可能性がある計算補正の選択も含めて、原告ソフトに特有なものであるとはいえない。そうすると、計算補正区分の並び順及び計算補正区分の番号の付け方について創作性があるとはいえないから、原告ソフト中の計算補正に関するプログラムが独立してプログラムの著作物であるということはできない。
 したがって、計算補正に関するプログラムの部分について著作権侵害が成立するということもできない。
カ 諸雑費及び小計を計算するためのデータの与え方について
 諸雑費及び小計を計算するためのデータの与え方について、被告ソフトとジェイソフトのdbマジック版複製ソフトが同一の方法を採用しているとしても、被告ソフトと原告ソフトは別の方法を採用しているのであるから、被告ソフトと原告ソフトとの間に類似性、同一性があることの根拠とはなり得ない。」
(3) 18頁12行目冒頭の「オ(ア)」を「キ(ア)」と改め、19頁3行目の「原告は」の前に「原審において、」を加え、同8行目の「当裁判所」を「原審裁判所」と、同21行目の「上記イないしエ」を「前記イないしカ」と、20頁5行目の「被告会社」を「被告」と、21頁18行目の「捜査、逮捕されている」を「逮捕、勾留されている」と、22頁4行目から5行目にかけての「刑事事件の捜査等で」を「刑事事件により逮捕、勾留された等のため」と、同20行目の「提案書は」を「提案書と」と各改める。
(4) 23頁7行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。
 「エ 証拠(甲42、43、44の1〜11、45の1・2、46〜50)によれば、原告の平成14年版歩掛かりデータを、原告が作成したコンバートプログラム(甲42)によりコンバートした歩掛かりデータは、原告が作成した歩掛かり試算プログラム(甲43)を用いてMicrosoft社製Access2000で作動させた被告ソフト上で使用することができること(ただし、原告の平成14年版歩掛かりデータは、原告ソフトの歩掛かりデータとファイル構造上ほぼ同一であるけれども、原告ソフトのデータベースはBtrieveを用いているのに対し、Microsoft社製SQLを用いている点で異なるものである。)、原告が作成したコンバートプログラムの容量は2388KBであり、比較的小規模なものであることが認められる。
 そうすると、被告ソフトと原告ソフトとは開発言語等が異なるものの、適切なコンバートプログラムを作成することにより、原告ソフトで用いられている歩掛かりデータをコンバートした歩掛かりデータ等を用いて、被告ソフトの少なくとも一部を動作させることは、技術的には可能であることが認められる。しかしながら、このことは、原告ソフトを複製又は翻案して被告ソフトを作成することが可能であることを示すにとどまり、そのことから直ちに、被告ソフトが原告ソフトを複製又は翻案したものと推認し得るものではない。
オ 証拠(甲33〜36)によれば、dbマジック版複製ソフトには歩掛かりデータをコンバートするプログラムが存在すること、コンバートされた歩掛かりデータのファイルはdbマジック版複製ソフト中では使用されていないことが認められる。
 しかし、証拠(甲33、乙2の1〜8、3の1・2)によれば、上記コンバートプログラムは平成8年5月ないし6月に更新されていること、そのころ、被告ソフトの開発は始まっておらず、開発ツールやデータベースソフトも選択されていなかったことが認められる。そうすると、Cらが、コンバート先のファイル構造が未定のまま、dbマジック版複製ソフト中に原告ソフトで用いらている歩掛かりデータを被告ソフトで用いるためのコンバートプログラムを作成したということは不合理であり、これに上記コンバートプログラムには「歩掛(計算)テスト用」との表題が付されていること(甲33)を併せて考慮すると、上記コンバートプログラムは、dbマジック版複製ソフトのバージョンアップのためのテスト用に準備されたものと認めるのが相当である。 
カ 証拠(甲51、乙5)及び弁論の全趣旨によれば、被告ソフト中の「\VBプログラム\ロジック入力-new\Module1.bas」部分には、テキストデータを取り込んだ場合に、本来なら1行に記載されるべき改行コードを構成する2バイトのデータが、二つのフィールドに分散されてしまい、改行コードとしての意味をなさなくなるエラーの発生について注意喚起する処理(エラールーチン)が付加されていることが認められ、これによれば、被告ソフトは、テキストエディタを用いて作成するだけではなく、既存のテキストデータを取り込むことにも対応した機能が備わっているものといえる。
 しかし、被告ソフトのバージョンアップの際に、別途作成したデータをテキストデータとして取り込む必要が生じる可能性があることは否定できず、これに備えてあらかじめテキストデータを取り込むための機能を用意しておくことも特に不自然であるとはいえないから、このことによって被告ソフトが原告ソフトの歩掛かりデータをコンバートして取り込んだことを認めることもできない。
キ そして、他にジェイソフトないし被告が、dbマジック版複製ソフト中のコンバートプログラム等を用いて、原告ソフトで用いられている歩掛かりデータをコンバートし、被告ソフトに使用したことを認めるに足りる証拠はない。」
(5) 23頁8行目冒頭の「エ」を「ク」と改める。
(6) 23頁11行目及び同12行目を次のとおり改める。
 「(3) 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告ソフトがプログラムの著作物(著作権法10条1項9号)に当たることを前提とした著作権(複製権、翻案権)侵害を理由とする原告の請求は理由がない。
 また、前記のとおり、被告ソフトが、原告ソフトの歩掛かりデータをコンバートしたものを組み込んだものであると認められない以上、原告ソフトがデータベースの著作物(同法12条の2)に当たることを前提とした著作権(複製権、翻案権)侵害を理由とする原告の請求も理由がない。」
2 争点(3)について
 原判決23頁15行目から24頁7行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決23頁15行目の「別紙」を「原判決別紙」と改める。
3 争点(4)について
 前記1のとおり、被告が、原告ソフトの歩掛かりデータをコンバートしたものを、被告ソフトの歩掛かりデータ部分として組み込んだとは認められないから、原告の一般不法行為に基づく損害賠償請求は前提を欠く。
4 その他、原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照らし、原審及び当審で提出、援用された全証拠を精査しても、当審の引用する原判決及び当審の認定、判断を覆すほどのものはない。
5 結論
 以上によれば、その余の争点について判断するまでもなく、原告の著作権法及び不正競争防止法に基づく差止請求及び損害賠償請求はいずれも理由がないから、これを棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当であるから、本件控訴は理由がない。また、原告が当審において追加した一般不法行為に基づく損害賠償請求も理由がないから、これを棄却する。
 よって、主文のとおり判決する。

大阪高等裁判所第8民事部
 裁判長裁判官 竹原俊一
 裁判官 小野洋一
 裁判官 中村心
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