判例全文 line
line
【事件名】プロ野球の打撃理論書事件(2)
【年月日】平成15年7月15日
 東京高裁 平成15年(ネ)第1906号 著作権侵害による損害賠償請求控訴事件
 (原審・東京地裁平成14年(ワ)第26691号)
 (平成15年6月24日 口頭弁論終結)

判決
控訴人(原告) A
被控訴人(被告) B
訴訟代理人弁護士 辻本年男


主文
 本件控訴を棄却する。
 控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴人の求めた裁判
 「原判決を取り消す。被控訴人は、控訴人に対し、30万円を支払え。訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。」との判決。
第2 事案の概要
1 本件は、野球のバッティング技術情報を記載した文書(原判決別紙2記載のもの。以下「控訴人著作物」という。)を作成した控訴人が、プロ野球選手である被控訴人にこれを一方的に送付したところ、被控訴人が試用期間経過後も控訴人の指定した金員を支払うことなく控訴人著作物を使用してバッティング等を行っているとして、被控訴人に対し、著作権侵害を理由として損害賠償請求をした事案である。
 原判決は、控訴人の主張する被控訴人の行為(バッティング等)は、著作権侵害を構成しないとして、控訴人の請求を棄却した。そこで、控訴人が本件控訴を提起した。
 当事者の主張は、次のとおり当審における控訴人の主張を付加するほか、原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。
2 当審における控訴人の主張の要点(控訴理由の要点)
 控訴人は、原審においては、控訴人の主張する被控訴人の行為について録画再生による証明の要求が満たされていないと主張し、被控訴人のバッティングの状況を録画したビデオテープ(甲6)及びビデオ用説明文(甲5)を追加して提出した。控訴人は、これにより、控訴人著作物に記載された技術情報が被控訴人によって使用されていることが証明されると主張する。
第3 当裁判所の判断
1 控訴人の主張は、必ずしも明確ではないが、証拠(甲1ないし6)及び弁論の全趣旨に照らせば、要するに、野球のバッティングに関する控訴人著作物を作成して、被控訴人に送付したが、これは有料の技術情報提供であって、無料の試用期間後引き続き使用するときは購入するとの条件であったこと、そして、試用期間経過後も被控訴人が控訴人著作物を使用していることは、録画されたビデオテープ(甲6。テレビの実況中継やスポーツニュースにおける被控訴人のバッティング場面を録画したものと認められる。)により証明されること、試用期間経過後にも代金の支払いをすることなく、上記のように使用することは著作権侵害であることを主張しているものと理解される。
2 検討するに、本件全証拠、特に当審で提出された甲5、6を精査しても、被控訴人の行った野球競技(バッティング)が控訴人著作物を使用してされたものであるという控訴人の主張事実自体を認めるに足りないばかりか、種々の観点から検討しても、被控訴人が控訴人著作物の著作権を侵害したことを根拠付ける事由を見出すことはできない。よって、控訴人の本訴請求は、理由がないというべきである。
3 以上によれば、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないので、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第18民事部
 裁判長裁判官 塚原朋一
 裁判官 塩月秀平
 裁判官 田中昌利
line
 
日本ユニ著作権センター
http://jucc.sakura.ne.jp/