判例全文 | ||
【事件名】プロ野球の打撃理論書事件 【年月日】平成15年3月6日 東京地裁 平成14年(ワ)第26691号 著作権侵害による損害賠償請求事件 (平成15年2月18日 口頭弁論終結) 判決 原告 A 被告 B 訴訟代理人弁護士 辻本年男 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は、原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 被告は、原告に対し、30万円を支払え。 第2 事案の概要 1 原告の主張する請求原因 本判決末尾添付の別紙1(訴状写し)及び別紙2(訴状訂正書写し)のとおり 2 被告の認否 原告主張の請求原因は、すべて否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件において、原告は、別紙2(訴状訂正書写し)記載の文書(以下、「原告著作物」という。)を原告作成に係る著作物と主張した上で、被告がこれを無断で使用したとして、著作権の侵害に基づく損害賠償30万円の支払を求めている。 別紙1(訴状写し)及び別紙2(訴状訂正書写し)によれば、原告の主張するところは、要するに、原告が、野球の打撃理論等に関する文書である原告著作物を被告に送付し、被告はこれを利用してプロ野球の公式戦等において競技を行っているものであるところ、被告のこのような行為は原告著作物を使用したものとして著作権侵害を構成するというものである。 しかしながら、仮に、原告の主張するように、原告著作物に記載されている野球の打撃理論等を被告が公式戦等の試合において実践したとしても、当該行為は著作権法にいう著作者の権利を侵害するものではない。けだし、著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号参照)であり、著作権法は、著作者の思想又は感情の創作的な表現を保護するものであって、具体的な表現を離れた単なる思想又はアイデア自体は、著作権法上の保護の対象とはされていないからである(最高裁平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。そして、本件において、原告が著作権侵害として主張する内容は、単に、被告が原告著作物に記載された内容を参考にして競技をしたというにとどまるものであって、原告著作物の具体的な表現を利用したものとはいえない。 上記によれば、本件において、原告が著作権侵害として主張する内容は、主張自体失当であり、著作権侵害を理由とする原告の本件請求は、理由がない。 2 なお、念のために、著作権法の規定する著作権の各支分権について検討しても、被告の行為が著作権侵害を構成するものでないことは、明らかである。 3 結論 以上によれば、被告の行為は著作権侵害を構成しないから、原告の請求は、その余の点について検討するまでもなく、理由がない。 よって、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官 三村量一 裁判官 村越啓悦 裁判官 青木孝之 別紙1(訴状写し) 略 別紙2(訴状訂正書写し) 略 |
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