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【事件名】「ジャスコ」のぬいぐるみ無断販売事件
【年月日】平成14年1月31日
 東京地裁 平成13年(ワ)第12516号 著作権侵害差止請求事件
 (平成13年11月26日 口頭弁論終結)

判決
原告 有限会社イノップ
訴訟代理人弁護士 大竹夏夫
被告 株式会社アナザーワン
訴訟代理人弁護士 花沢剛男
被告 イオン株式会社
訴訟代理人弁護士 城山康文


主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 被告らは、いずれもその所持又は管理している別紙物件目録1記載のぬいぐるみを頒布してはならない。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
3 仮執行宣言
第2 事案の概要
 本件は、原告が、後記著作物の著作権管理を著作権者から委ねられているとして、被告らに対し、被告らがそれぞれ所持又は管理する別紙物件目録1記載のぬいぐるみ(以下「本件ぬいぐるみ」という。)は、原告との利用許諾契約に違反するものであると主張して、著作権者の著作権に基づきぬいぐるみの頒布の差止めを求めている事案である。
1 争いのない事実等(末尾に証拠を摘示した事実のほかは、当事者間に争いがない。)
(1) 当事者
 原告は、小物・雑貨の輸入卸及び販売を業とする有限会社である(弁論の全趣旨)。
 被告アナザーワンは宣伝広告の企画制作、販売促進キャンペーンなどのプロモーション活動の企画制作・実施運営を主な業とする株式会社である。
 被告イオン(旧商号「ジャスコ」)は、大規模店舗形態のスーパーマーケットを全国展開する株式会社である。
(2) 本件ぬいぐるみについて
 本件ぬいぐるみは、フィンランド在住の人形作家訴外T・A(以下単に「A」という。)が製作する別紙物件目録2記載の人形(以下「オリジナル人形」という。)を模して、被告アナザーワンが中国の業者に製作させたものである。
 オリジナル人形の題材であるトントゥは、フィンランドやスウェーデン、ノルウェーなどで語り継がれている想像上の生き物であり、森に住む妖精の一種で、クリスマスの時期になるとサンタクロースがクリスマスプレゼントを配るのを手伝うとされている。
オリジナル人形は、幅、奥行き、高さ各約3ないし6pほどの石膏製の人形であり、Aが上記のようなトントゥの寓話を基に自らの感覚でその容貌、形状、色彩を具体化して人形としたものである。
 本件ぬいぐるみは、オリジナル人形を基に被告アナザーワンが企画・製作したもので、オリジナル人形の容貌、姿態等を模した複製物である(乙2、3、弁論の全趣旨)。
(3) 被告イオンの2000年クリスマスキャンペーンについて
 本件ぬいぐるみは、平成12年(2000年)12月ころに被告イオンに属する店舗の一部で実施された販売促進活動であるクリスマスキャンペーン(以下「本件クリスマスキャンペーン」という。)の一環として製作された。
 本件クリスマスキャンペーンは、被告アナザーワンが企画、運営したもので、その内容は概ね次のとおりであった。
@ オリジナル人形500個と本件ぬいぐるみ1万5000個をイオン(当時の商号は「ジャスコ」。以下、同じ。)各店の顧客に販売し、又は賞品ないし景品として配布する。
A オリジナル人形と本件ぬいぐるみは、すべてフィンランド政府公認のサンタクロース事務局から、サンタクロースのプレゼントとして顧客宅に直送する。
(4) 本件クリスマスキャンペーンの実際
 オリジナル人形500個と本件ぬいぐるみ1万5050個(50個は予備)は、平成12年12月初旬ころ、フィンランドから日本に向けて発送された。当初、本件ぬいぐるみ1万5000個は、すべて被告イオンの顧客宅に直送される計画であったが、被告アナザーワン及び同イオンにおいて配布先となる顧客を十分に集めることができなかったため、約5000ないし6000個は予定どおり顧客宅に直送されたものの、約9000ないし1万個は、発送段階になって、急遽個人顧客宅でなくイオン各店宛てに送付された。
 イオン各店に送付された本件ぬいぐるみは、その大半が平成12年12月25日前後のクリスマス期間中にイオン各店において顧客に配布された。しかし、本件クリスマスキャンペーンが終了した平成13年1月以降も、イオン各店に若干の本件ぬいぐるみが残存しており、被告アナザーワンも若干の本件ぬいぐるみを保有している。
2 争点
(1) 原告が、Aの著作権に基づいて差止請求権を行使できるか(争点1)
(2) 原告が、被告イオンに対して差止請求権を行使できるか(争点2)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(原告は、Aの著作権に基づいて差止請求権を行使できるか)について
(1) 原告の主張
 原告は、Aから、オリジナル人形について、日本国内において第三者に対し著作権利用許諾を与える権限を独占的に授与されている(甲3の1。契約書3条)。また、Aは、原告に対し、日本国内において第三者が著作権を侵害する行為があった場合には、その侵害を差し止める義務を負う(同12条)。
 したがって、原告は、Aに対する債権を被保全権利として、Aの第三者に対する著作権侵害差止請求権を代位行使することができる。
(2) 被告らの主張
ア 原告は、著作権者でないことを自認している。著作権法112条は、著作権者等に差止請求権を付与したにとどまり、単なるライセンシーには差止請求権を付与していない。
イ 原告の挙げる契約書(甲3の1)の3条には、「exclusively」(独占的に)と記載されているが、この語は、Aが日本において原告以外の第三者に対してライセンシーへの許諾権限を授与しない趣旨で用いられているのであって、A自身が日本においてオリジナル人形の著作権について利用許諾を与える権限を制限する趣旨ではない。つまり、Aは、日本において、原告以外の第三者に対してオリジナル人形の著作権につき利用許諾を与える権限を有している。
 また、同契約書12条には、「イノップはAの著作権を侵害する権利をいかなるライセンシーにも与えてはならない。イノップが日本においてAの著作権の侵害又は侵害の試みを発見した場合には、イノップはAに通知し、当該侵害から著作権を防御するようすべての可能な手続を進めるものとする。侵害の場合には、本契約の当事者は、著作権を防御するために合理的な手段を講じるよう協力しなければならない。」と記載されているが、同条項において定められているAの義務は、自己の著作権防御のための協力義務だけであって、自己の著作物の複製や譲渡を行う原告以外のすべての第三者に対して差止請求を行う義務を負っているわけではない。これは、上述のように、A自身が原告以外の第三者に対して著作権の利用を許諾する権限を有している以上、当然の帰結である。したがって、原告には、債権者代位権の基礎となるべき被保全権利が認められない。
ウ 上記契約書によれば、原告はライセンシーではなく、著作物の管理を受任している者にすぎないのであって、原告が自らAの著作物を使用する権利は付与されていない。このことは、原告が上記著作物を使用する場合の使用料の規定が存在しないことからも明らかである。したがって、「独占的使用権者が著作権者の差止請求権を代位行使し得る」という講学上の議論は、原告には当てはまらない。
 独占的使用権者に差止請求権の代位行使を認めるべきであるとの見解の根拠は、侵害行為により独占的使用権者の利益が直接害されることにあるが、原告のような受任者の利益は、侵害行為により直接害される関係にない。すなわち、侵害行為に対して差止命令が発令されたとしても、侵害行為者が受任者に対してライセンス供与を求めてくるとは限らないし、また他のライセンシーの実施数量が拡大するとも限らないのである。よって、民法423条にいう「自己の債権を保全するため」との要件を満たさない。
 著作権等管理事業法においても、管理委託契約の類型として、信託契約(2条1項1号)と委任契約(同項2号)を掲げているが、このような分類がされているのは、委任契約の受任者の場合には、信託契約の受託者と異なり、自ら侵害行為者に対して権利行使することができないという理解が前提となっていることは明らかである。不動産賃貸借の例でも、賃借人が賃貸人に代位して建物の不法占拠者に対して明渡請求し得ると解されているのに対し、賃借人の募集及び賃貸不動産の管理を委任された不動産業者が明渡請求権の代位行使をし得ないのと同じである。
2 争点2(原告が、被告イオンに対して差止請求権を行使できるか)について
(1) 被告イオンの主張
 被告イオンは、被告アナザーワンから本件クリスマスキャンペーンについて提案された企画を採用し、同被告から本件ぬいぐるみを購入して、同被告にその発送手配を委託したにすぎない。そして、被告アナザーワンによるクリスマス前の本件ぬいぐるみの販売は、原告の許諾の下において行われた行為である。したがって、著作権法26条の2第2項1号の規定するとおり、Aの著作権(譲渡権)は本件ぬいぐるみの被告アナザーワンから被告イオンへの販売により消尽しており、被告イオンの第三者に対する本件ぬいぐるみの譲渡に対してはもはや著作権(譲渡権)の行使は認められないから、原告の請求は主張自体失当である。
 また、仮に本件ぬいぐるみの譲渡が、原告の許諾の範囲を超えて行われた行為であったとしても、被告イオンはその点に関して善意無過失である。したがって、著作権法113条の2により、やはり著作権者は被告イオンに対して譲渡権を行使できない。
(2) 原告の主張
ア 被告イオンが、被告アナザーワンから本件ぬいぐるみを購入したとの主張は、事実に反する。本件ぬいぐるみに関する著作権の利用許諾は、原告から被告イオンに対してされたものであり、その利用許諾契約は、被告アナザーワンが被告イオンの代理人として原告と締結したものである。
 その理由として、次の3点が挙げられる。@本件クリスマスキャンペーンは、被告イオンが同社の顧客に本件ぬいぐるみを届けるというもので、著作権利用の主体は被告イオンである。A本件ぬいぐるみは、そのすべてが被告イオンが同社の顧客に配布する目的だけのために製作されたものであり、同被告以外の者が使用することは予定されていなかった。B被告アナザーワンは、被告イオンから本件クリスマスキャンペーン全体の企画、運営を委託されたものであり、その企画を遂行する上で被告イオンと原告との間を仲介する存在であった。原告と被告イオンの従業員が直接会ったことはないが、同被告は、被告アナザーワンから逐次交渉内容の説明を受けていたので、被告イオンの従業員が立ち会わなくても、原告と被告イオンとの間で本件ぬいぐるみに関する著作権利用許諾の合意が成立したものである。
イ したがって、被告アナザーワンと被告イオンの関係は、本件クリスマスキャンペーン全体の企画、運営の委任ないし請負契約を締結したという関係にあり、被告アナザーワンが被告イオンに本件ぬいぐるみを売却したという関係ではない。本件ぬいぐるみも、被告イオンが被告アナザーワンにその製作を委託したとみるべきである。すなわち、被告イオンが著作権の利用許諾を受け、被告アナザーワンに本件ぬいぐるみの製作を委託し、同被告が中国の業者に製作委託したとみるべきである。
ウ 原告やAが本件ぬいぐるみについて著作権の利用許諾を決めたのは、被告イオンが日本で最大手のスーパーマーケットチェーンであり、信頼することができたからである。被告アナザーワンとはそれまで取引がなく、どのような会社かもわからなかったから、仮に被告アナザーワンに利用許諾する話であれば、原告もAも拒絶していた。
エ 以上のとおり、著作権法26条の2第2項1号又は同法113条の2を理由に、被告イオンの第三者に対する本件ぬいぐるみの譲渡に対して著作権行使が許されないとする被告イオンの主張は、その前提事実を誤ったものであって、失当である。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(原告が、Aの著作権に基づいて差止請求権を行使できるか)について
(1) 前記争いのない事実等及び証拠(甲2、丙1、3)並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
ア フィンランド在住の人形作家Aは、フィンランドなどで語り継がれているトントゥの寓話から、トントゥのオリジナル人形を創作した。オリジナル人形は、幅、奥行き、高さ各約3ないし6pほどの石膏製の人形で、1体1体手作りされており、Aが上記のようなトントゥの寓話を基に自らの感覚でその容貌、形状、色彩を具体化して人形としたものである。オリジナル人形は、A自身がトントゥの寓話から受けるイメージを造形物として表現したものであって、その姿態、表情、着衣の絵柄・彩色等にAの感情の創作的表現が認められ、かつ美術工芸品的な美術性も備えているもので、Aが著作権を有する著作物である。
 本件ぬいぐるみは、オリジナル人形の容貌、姿態等の特徴を模して、被告アナザーワンが中国の工場で製作させたもので、オリジナル人形の複製物である。
イ 被告アナザーワンは、被告イオンの本件クリスマスキャンペーンに使用する目的で、本件ぬいぐるみを製作させた。
(2) 原告の地位
ア 原告とAの間で平成12年(2000年)9月29日に締結された英文の契約書(甲3の1)は、「著作権管理契約書」(Copyright Management Agreement)と題するものであり、Aの有するオリジナル人形の著作権に関して合意されたものであるが、次のような条項を含む。
第1条 「Aは、イノップに対し、日本国内において、本契約書に定められた条件でライセンシーに対しAの著作権の利用許諾を与える権限を授与し、イノップはこれを受諾した。」(A entrusts to Inoppu, and Inoppu accepts, the right to transfer her copyright to licensees in Japan on terms stated in this agreement.)
第3条 「日本国内においてAの著作権の利用許諾をライセンシーに授与する権限は、イノップに独占的に帰属する」(The right to transfer A's copyright in Japan belongs exclusively to Inoppu.)
第9条 「イノップは、Aに対し、著作権利用許諾のロイヤリティを次のとおり支払うものとする。
 ライセンシー1社から第4条に記載された企画の1つについて暦年1年間(1月1日から12月31日まで)に支払われるロイヤリティが30万円以下の場合には、イノップはAにその受領したロイヤリティの50%の額を支払う。
 ライセンシー1社から第4条に記載された企画の1つについて暦年1年間(1月1日から12月31日まで)に支払われるロイヤリティが30万円を超えた場合には、15万円(30万円の50%)に30万円の超過額の70%を加算した額を支払う。
 ロイヤリティの支払は、イノップがそれを受領した年に属するものとして取り扱う。」
第10条 「イノップは、ライセンシーからロイヤリティを受領してから30日以内にAにロイヤリティを支払うものとする。その際には、ライセンシーの名称、対象となる企画、対象期間、販売ないし配布された商品の数量、その他ロイヤリティの計算の基礎になる情報を開示する報告書を添付するものとする。」
第12条 「イノップはAの著作権を侵害する可能性のある者には、利用許諾を与えてはならない。イノップが日本においてAの著作権の侵害又は侵害のおそれを発見した場合には、イノップはAに通知し、当該侵害から著作権を防御するようすべての可能な手続を進めるものとする。侵害の場合には、本契約の当事者は、著作権を防御するために合理的な手段を講じるよう協力しなければならない。」
イ 上記の契約書(甲3の1)の条項によれば、原告との間の契約については、@「著作権管理契約書」と題されたものであり、AAが原告に対してオリジナル人形の著作権の利用許諾をライセンシーに与える権限を授与する旨の条項(1条、3条)のほか、ライセンシーへの許諾についての細目を定める条項が置かれているが(2条、4条、5条、8条、11条)、原告自身がオリジナル人形の複製物を製造又は販売することを前提とした条項は全く置かれておらず、B原告は、ライセンシーから受領した使用料の中から、一定割合の金銭を自己の報酬として控除した残額をAに送金することとされており(9条、10条)、日本におけるオリジナル人形の著作権の利用による売上げの多寡について、原告自身は全く危険を負わないこととなっている。
 これらの点に照らせば、オリジナル人形の著作権につき、原告が上記契約によりAから授与された権限は、日本におけるライセンシーを開拓し、ライセンシーに対してAに代わって著作権の利用を許諾し、ライセンシーからロイヤリティを受領してAに送金するということに尽きるものであって、原告自身がオリジナル人形の複製物の製造ないし販売をすることにつき許諾を受けることは全く内容とされていない。
(3) 著作権に基づく侵害差止請求権の代位行使の可否
 ところで、著作権者から著作物の独占的使用許諾を得ている使用権者については、著作権者に代位して当該著作物の著作権に基づく侵害差止請求権を行使することができるという見解が存在する。これは、特許権における独占的通常実施権者が特許権者に代位して特許権に基づく侵害差止請求権を行使することができるとの見解にならって提唱されているものと解されるが、著作物の独占的使用許諾を得ている使用権者であれば、特許権における独占的通常実施権者と同様に、当該著作物の模倣品の販売等の侵害行為により直接自己の営業上の利益を害されることから、独占的使用権に基づく自らの利益を守るために、著作権者に代位して侵害者に対して著作権に基づく差止請求権を行使することを認める余地がないとはいえない。
 しかしながら、本件においては、原告は、上記認定のとおり、オリジナル人形につき、著作権者から著作権の独占的な利用許諾を得ている者ではなく、単にライセンシーに対する許諾付与業務及びライセンシーからのロイヤリティの徴収業務を委任されているというだけであり、オリジナル人形の著作権を侵害する模倣品等が販売されたとしても、それにより直接自己の営業上の利益を害される関係にあるものではない。したがって、原告が、Aに代位してオリジナル人形の著作権に基づく差止請求権を行使することは、認められないというべきである。
(4) なお、仮に、原告とAの間の上記契約12条を、Aの著作権に基づく侵害差止請求権を原告が行使することを認めた条項と解することができるとしても、そのように著作権に基づく差止請求権について著作権者が契約により他者に行使させることを認めることは、弁護士法72条において弁護士以外の者の法律事務の取扱いが禁じられ、信託法においても訴訟信託が禁止されていること(信託法11条)、及び、著作権等管理事業法上、著作権等の管理事業を営もうとする団体が登録制とされて種々の義務を負うなど事業上一定の制約を受けるものとされていること等の法制度の趣旨に反するものといわざるを得ない。したがって、上記契約の条項を根拠に、Aから契約上その権限が付与されているとして、原告がAの著作権に基づく差止請求権を行使することも、認められない。
 したがって、いずれにしても、原告がAの著作権に基づく差止請求権を行使することは認められないというべきである。
(5) そうすると、原告がトントゥのオリジナル人形の著作権者でないことは当事者間に争いがない以上、原告が著作権に基づく侵害差止請求権を行使し得る根拠は存しないというべきであり、原告の請求は理由がない。
2 争点2(原告が、被告イオンに対して差止請求権を行使できるか)について
 なお、原告は、当初、被告アナザーワンに対して著作物の使用許諾をしたと主張していたもので(訴状)、これによれば被告イオンは複製の許諾を得た被告アナザーワンから複製物の譲渡を受けた者となると解されるところ、被告イオンから著作権法26条の2第2項1号の消尽の主張がされるや、原告は、前言を翻し、被告アナザーワンは被告イオンの代理人であって、原告が著作物の使用許諾をした相手方は被告イオンであると主張するに至った(原告準備書面(1))。
 しかしながら、証拠(乙1ないし3、丙1、4)及び弁論の全趣旨によれば、オリジナル人形の著作権の利用につき原告の許諾を受けた被告アナザーワンから、被告イオンが本件ぬいぐるみを買い入れた事実が認められるところであり、原告の被告イオンに対する請求は、著作権法26条の2第2項1号の点からも、失当であることが明らかである。
 原告の主張は、上記のとおり証拠により認められる客観的事実に反するばかりでなく、当庁に係属する原告の被告アナザーワンに対する別件訴訟(当庁平成13年(ワ)第8305号事件)における原告の主張(甲5の1ないし5参照)とも矛盾し、同訴訟における請求の根拠をも否定しかねないものであり、これらの事情に照らせば、原告の主張は、場当たり的で一貫性を欠くものであることが明らかである。原告の本訴請求は、主張それ自体からして、その信用性を疑わせるものと言わざるを得ない。
3 結論
 以上によれば、その余の点について検討するまでもなく、原告の被告らに対する請求は理由がない。
よって、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第46部
 裁判長裁判官 三村量一
 裁判官 村越啓悦
 裁判官 青木孝之
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日本ユニ著作権センター
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