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【事件名】自転車練習法ビデオ事件(2)
【年月日】平成12年3月29日
 東京高裁 平成11年(ネ)第5087号 著作物利用対価請求控訴事件
 (原審・東京地裁平成10年(ワ)第3297号)
 (平成12年2月2日 口頭弁論終結)

判決
控訴人(原審原告) A
控訴人(原審原告) B
被控訴人(原審被告) 株式会社ベネッセコーポレーション
右代表者代表取締役 C
右訴訟代理人弁護士 伊藤真
被控訴人(原審被告) 株式会社エヌエイチケイソフトウェア
右代表者代表取締役 D
右訴訟代理人弁護士 宮川勝之
同 高木裕康
同 中村優子


主文
 本件控訴を棄却する。
 控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由
第一 当事者の求めた判決
一 控訴人ら
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人らは、控訴人Aに対し金一四七〇万円及びこれに対する平成一〇年一二月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を、控訴人Bに対し金六三〇万円及びこれに対する平成一〇年一二月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。
3 訴訟費用は、第一、第二審とも被控訴人らの負担とする。
二 被控訴人ら
 主文と同旨
第二 当事者の主張
 当事者双方の主張は、後記一及び二のとおり当審における主張を付加するほかは、原判決事実及び理由欄の「第二 当事者の主張」に記載のとおりであるから、これを引用する。
一 控訴人らの主張
1 原判決は、控訴人らが、平成九年六月九日に被告ベネッセのE及びFと会った際に、本件著作物の著作権使用料についての話をした旨の控訴人Bの供述及び控訴人らの陳述書(甲第七号証)の記載について、これらを直ちに信用することができないとして、右事実を認めなかったが、控訴人らは、右のE及びFとの面談の際にも、また、同月四日の被告エヌエイチケイのG及びHとの面談の際にも、著作権使用料に関する話をしている。控訴人Bが、同月三日に原審代理人であった唐澤貴夫弁護士と、著作権に関する事柄を含めて打合わせをしていることは控訴人らの陳述書(前掲甲第七号証)記載のとおりであり、そこまでの準備をしていた控訴人らが、著作権使用料に関する話を切り出さなかったということはあり得ないことである。
2 原判決は、不当利得返還請求についての判断において、「常識」、「こつ」、「アイデア」等の言葉を使用して、本件コーナーが本件著作物の翻案に当たると認められないとしたが、被告エヌエイチケイは、本件ビデオの製作を受託した後、本件著作物の存在を知り、これを参考にして台本を作成したものの思うようなものができなかったところから、控訴人らと面談して、控訴人らに、台本の手直し及び撮影時の立会いを求めたものであって、このことから、右のような「常識」や「こつ」に基づいても、本件著作物を入手するまでは台本の作成に取りかかれず、また、本件著作物を参考にしてもまともな台本を作成できなかったことが明らかである。本件ビデオは、被告エヌエイチケイが、本件著作物に準拠して作成を試みたものの、まともなものができなかった台本を、本件著作物の著者自らが完成させ、それがビデオ化されたものである。
 また、原判決は、本件著作物と本件コーナーとの違いに言及するが、本件著作物の自転車練習法は、誰にでも通用し、いかなる状況の設定にも対応するものである。
 したがって、原判決の右判断は誤りである。
二 被控訴人らの主張
 控訴人らの主張は争う。
第三 当裁判所の判断
一 当裁判所も、控訴人らの本件請求は理由がないものと判断する。
 その理由は、控訴人らの当審における主張に対し、次のとおり判断するほかは、原判決事実及び理由欄の「第三 当裁判所の判断」の記載と同じであるから、これを引用する。但し、原判決一五頁三行目に「E」とあるのを「〇〇〇〇」に、二八頁八行目に「ペダルを蹴って」とあるのを「ペダルを踏んで」に、それぞれ改める。
1 控訴人らの主張1について
 前示(原判決一八頁八行目から二〇頁二行目まで)のとおり、原審証人〇〇〇〇の証言並びに同人及びFの各陳述書(丙第二、第三号証)の記載のほか、平成九年六月九日に控訴人らと被告ベネッセのE及びFとの面談があってから後の、控訴人らと被告ベネッセとの間のやりとりが、専ら、控訴人らにおいて本件著作物を被告ベネッセから出版することを再三再四申し入れ、被告ベネッセがこれに応じられない旨繰り返し返答することに終始していて(原判決一五頁七行目から一六頁九行目、一七頁四行目から一〇行目)、唐澤貴夫弁護士が、Iこと控訴人Aの代理人として、被告ベネッセ宛ての同年九月二六日付書面(丙第一六号証)によって著作権に関する契約の締結を求めるまでは、控訴人らと被告ベネッセとの間に、著作権使用料に関する申入れや返答があった事実が認められないことに照らせば、控訴人らが、前示同年六月九日のE及びFとの面談の際に、本件著作物の著作権使用料についての話をした旨の控訴人Bの供述及び控訴人らの陳述書(甲第七号証)の記載を、直ちに信用することはできない。
 控訴人らは、控訴人Bにおいて、同年六月三日に原審代理人であった唐澤貴夫弁護士と著作権に関する事柄を含めて打合わせをしており、著作権使用料に関する話を切り出さなかったということはあり得ないと主張するが、仮に主張の内容の打合わせがあったとしても、控訴人Bの原審における供述及び控訴人らの陳述書(甲第七号証)の記載によれば、右打合わせは、同月四日の被告エヌエイチケイのG及びHとの面談に備えたものであることが認められ、したがって、右打合わせがあったからといって、同月九日のE及びFとの面談において、著作権使用料に関する話があったことが推認されるものではない(なお、控訴人らが、同月四日のG及びHとの面談において、著作権使用料に関する話をしたかどうかは、本件における控訴人らの請求と直接関係するものではない。)。
 のみならず、仮に控訴人らとE及びFとの面談において、控訴人らが著作権使用料に関する話に及んだとしても、被告ベネッセにおいて、本件著作物の利用につき相当額の対価を支払うことを承諾し、控訴人らと被告ベネッセとの間にその旨の合意が成立したことを認めるに足りる証拠はないから、控訴人らの被告ベネッセに対する右合意に基づく請求は、いずれにせよ理由がない。
2 控訴人らの主張2について
 本件著作物と本件コーナーの各内容を対比した結果に照らして、本件コーナーが本件著作物の翻案に当たるものと認めることができないことは、前示(原判決二六頁五行目から三一頁九行目)のとおりである。
 控訴人らは、被告エヌエイチケイにおいて、本件著作物を入手するまでは本件コーナーの台本の作成に取りかかれず、また、本件著作物を参考にしてもまともな台本を作成できずに、本件著作物の著者自らが台本を完成させた旨主張し、あるいは本件著作物の自転車練習法が誰にでも通用し、いかなる状況の設定にも対応するものである旨主張するが、本件著作物と本件コーナーのそれぞれの内容が前示のとおりである以上、控訴人ら主張の事実が仮に存在するとしても、本件コーナーが本件著作物の翻案に当たることを認めるまでには至らない。
二 以上によれば、原判決は正当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法六一条、六五条一項本文、六七条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第一三民事部
 裁判長裁判官 田中康久
 裁判官 石原直樹
 裁判官 清水節
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