判例全文 | ||
【事件名】アニメ絵本の二次的使用条項解釈事件 【年月日】平成12年1月20日 東京地裁 平成7年(ワ)第1751号 損害賠償請求事件、平成8年(ワ)第6889号 損害賠償反訴請求事件 (口頭弁論終結の日 平成11年10月14日) 判決 原告(反訴被告) A 右訴訟代理人弁護士 高橋正雄 被告(反訴原告) 株式会社永岡書店 右代表者代表取締役 B 右訴訟代理人弁護士 今井征夫 主文 一 被告(反訴原告)は、原告(反訴被告)に対し、金二九五万三一〇〇円及び内金二六万三七六〇円に対する平成七年二月二五日から、内金一七六万五四二〇円に対する平成九年一月一日から、内金五九万二六五〇円に対する同一〇年一月一日から、内金三三万一二七〇円に対する同一一年一月一日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 二 原告(反訴被告)のその余の本訴請求を棄却する。 三 被告(反訴原告)の反訴請求を棄却する。 四 訴訟費用は、本訴・反訴を通じこれを五分し、その一を原告(反訴被告)の負担とし、その余を被告(反訴原告)の負担とする。 五 この判決の第一項は、仮に執行することができる。 事実及び理由 第一 請求 一 本訴 被告(反訴原告。以下「被告」という。)は、原告(反訴被告。以下「原告」という。)に対し、金二三〇六万三七六〇円及びこれに対する平成七年二月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 二 反訴 原告は、被告に対し、金五〇〇〇万円及びこれに対する平成八年四月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 第二 当事者の主張 (本訴) 一 請求原因 1 原告と被告との出版契約 (一) 原告と被告は、昭和五九年三月一〇日及び同六〇年一〇月三一日、原告の著作に係る別紙図書目録(一)記載の童話絵本シリーズ(以下「永岡図書」という。)について、原告が被告に出版権を設定し、被告は右出版権に基づいて永岡図書を出版・販売し、原告に定価の六パーセントの著作物使用料を支払うことなどを内容とする契約(以下「本件契約」という。)を締結した。 本件契約には、「永岡図書が翻訳・ダイジェスト・演劇・映画・放送・録音・録画など二次的に使用される場合、原告はその使用に関する処理を被告に委任し、被告は具体的条件について原告と協議のうえ決定する」との条項(以下「二次的使用条項」という。)が設けられている。 (二) 原告と被告は、平成四年三月、本件契約について、著作物使用料を定価の七パーセントに引き上げ、有効期間を既刊本については平成四年三月一〇日から、未刊本については初版出版から、それぞれ一〇年間とするなどの変更をする旨の合意をした。 2 被告の契約違反行為 (一) 被告は、平成五年八月一〇日、原告の許諾を得ずに、中華人民共和国所在の訴外人民中国出版社(以下「人民出版」という。)との間で、人民出版が永岡図書のうち別紙図書目録(一)記載の「名作アニメシリーズ」第一巻ないし第一〇巻の中国語版を中華人民共和国において出版し販売することを許諾する旨の契約(以下「人民出版との契約」という。)を締結し、その前払保証印税として人民出版から七万九四〇〇円の支払を受けた。 (二) 被告は、平成六年五月一六日、原告の許諾を得ずに、台湾所在の訴外笛藤出版図書有限公司(以下「笛藤出版」という。)との間で、笛藤出版が永岡図書全巻の中国語版を台湾において出版し販売することを許諾する旨の契約(以下「笛藤出版との契約」という。)を締結し、その著作物使用料として笛藤出版から五六〇万円の支払を受けた。 (三) 被告は、平成六年八月一五日、原告の許諾を得ずに、インドネシア共和国所在の訴外ピーティー・エレックスメディア・コンプティンド社(以下「エレックスメディア社」という。)との間で、エレックスメディア社が永岡図書全巻のインドネシア語版を同国において出版し販売することを許諾する旨の契約(以下「エレックスメディア社との契約」という。また、右(一)ないし(三)の各契約を総称して「本件各海外出版契約」という。)を締結し、その前払保証印税としてエレックスメディア社から八万円の支払を受けた。 (四) 被告の右(一)ないし(三)の行為は、本件契約の二次的使用条項に違反する。 3 原告の損害 (一) 被告の前記2(一)の契約違反による損害 (1) 財産的損害 人民出版との契約による前払保証印税として、被告が人民出版から現に受け取った七万九四〇〇円のうち、原告に分配されるべき分として被告が認める三万一七六〇円(七万九四〇〇円の四割)は、少なくとも被告の前記2(一)の契約違反によって原告が被った損害になる。 (2) 慰謝料 原告は、その意向を問われることなく被告により人民出版との前記2(一)記載の契約を締結されたこと及びその後の被告の不誠実な対応により、多大な精神的苦痛を受けた。右精神的苦痛に対する慰謝料としては、一〇〇万円が相当である。 (二) 被告の前記2(二)の契約違反による損害 (1) 財産的損害 @ 原告は、訴外株式会社ブティック社(以下「ブティック社」という。)から出版し又は出版する予定の自らの著作に係る別紙図書目録(二)記載の童話絵本一〇〇巻について、その中国語版(以下「台英本」という。)を原告の正規のライセンシーである訴外台湾英文雑誌社(以下「台英社」という。)に台湾において出版・販売させることを予定し、このうち第一巻から第六五巻までは現に出版・販売されているところ、平成六年一〇月、笛藤出版による永岡図書の中国語版(以下「笛藤本」という。)の出版が発覚したことによって、台英社はその後の台英本の出版を見送ることとなった。 被告による前記2(二)の契約違反行為がなければ、少なくとも次のア、イの合計二〇〇万部の台英本が順調に出版・販売されていたはずである。 ア 未刊の三五巻についての新刊本 二四万五〇〇〇部(一巻当たり七〇〇〇部) イ 既刊の六五巻についての再版本 一七五万五〇〇〇部(全六五巻で年間合計一三万二五〇〇部(平成二年から平成五年までの再版本の年間平均販売部数)×約一三・二四年間) 台英本について、原告が受けていた著作物使用料は、一部当たり一〇円であるから、右のとおり台英本が順調に出版・販売されていれば得られたはずの原告の著作物使用料収入は、二〇〇〇万円を下回らない。 したがって、被告の前記2(二)の契約違反によって原告が被った損害の額は、右得べかりし利益二〇〇〇万円を下回らない。 A 右@の主張が認められないとしても、被告が原告と協議の上で笛藤出版との契約をしていれば、海外における版権の相場である定価の七パーセント程度の著作物使用料の支払を原告が受ける旨の契約がされていたはずであり、その場合、原告は笛藤本一冊(定価約二八〇円)当たり二〇円程度(二八〇円×七パーセント)の著作物使用料の支払を受けられたことになるところ、笛藤本はこれまでに少なくとも一〇〇万部(新刊本一巻当たり七〇〇〇部×一〇〇巻、再版本全一〇〇巻で年間合計一三万二五〇〇部×約二・三年間)は出版・販売されているから、原告が得られたはずの著作物使用料収入は、二〇〇〇万円を下回らない。 したがって、被告の前記2(二)の契約違反によって原告が被った損害の額は、右得べかりし利益二〇〇〇万円を下回らない。 B 右@又はAの主張が認められないとしても、笛藤出版との契約による著作物使用料として、被告が笛藤出版から現に受け取った五六〇万円のうち、原告に分配されるべき分として被告が認める二二四万円(五六〇万円の四割)は、少なくとも被告の前記2(二)の契約違反によって原告が被った損害になる。 (2) 慰謝料 原告は、被告の前記2(二)の契約違反の結果、@拙劣な複製技術に基づき製作された粗悪本である笛藤本を出版されたこと、A笛藤本の出版が発覚したことにより台英社に対して著者としての面目を失ったこと、B台英社から台英本の出版を見送るとの通告を受けたこと、C原告が笛藤本の出版発覚後に被告に事情を問い合わせたのに対し被告から不誠実な対応を受けたこと、により多大な精神的苦痛を受けた。右精神的苦痛に対する慰謝料としては、一〇〇万円が相当である。 (三) 被告の前記2(三)の契約違反による損害 (1) 財産的損害 エレックスメディア社との契約による前払保証印税として、被告がエレックスメディア社から現に受け取った八万円のうち、原告に分配されるべき分として被告が認める三万二〇〇〇円(八万円の四割)は、少なくとも被告の前記2(三)の契約違反によって原告が被った損害になる。 (2) 慰謝料 原告は、その意向を問われることなく被告によりエレックスメディア社との前記2(三)記載の契約を締結されたこと及びその後の被告の不誠実な対応により、多大な精神的苦痛を受けた。右精神的苦痛に対する慰謝料としては、一〇〇万円が相当である。 4 よって、原告は、被告に対し、債務不履行による損害賠償として金二三〇六万三七六〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成七年二月二五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。 二 請求原因に対する認否及び被告の主張 1 請求原因1について 認める。 2 請求原因2について (一) 請求原因2(一)ないし(三)の各事実のうち、それぞれ、「原告の許諾を得ずに」との点は否認し、その余は認める。 (二) 同(四)の主張は争う。 (三) 被告の主張 (1) 原告の許諾 平成六年二月、被告の当時の編集部長であったC(以下「C」という。)が、原告に対し、電話で「永岡図書につき、アジア地域から翻訳出版の引き合いがきており、話を進めてよいか」と連絡したところ、原告から「アメリカはまずいが、アジア各国なら話を進めてもらってかまわない」との回答を得た。また、同年三月、被告代表者B(以下「B」という。)が、原告に対し、電話で右と同旨の連絡をしたところ、原告から右と同旨の回答を得た。 これによって、被告は、原告から本件各海外出版契約を締結することについてあらかじめ許諾を得たものであるから、右各契約を締結した被告の行為は、本件契約の二次的使用条項に違反しない。 (2) 二次的使用条項の解釈 本件契約の二次的使用条項は、永岡図書の二次的使用につき、被告が原告から包括的委任を受けるというものであり、被告の契約上の義務は、二次的使用に関し、原告から同意を得ることではなく、具体的な条件につき原告と協議のうえ決定するというものであるにすぎない。したがって、原告と協議するまでの必要性に乏しい場合には、あえて協議をせずに具体的条件を決定して契約を締結しても、そのことが直ちに債務不履行を構成するものとはいえない。 本件各海外出版契約の締結は、専門業者を介在させ、最も有利に契約締結交渉を運んだものであり、原告と協議するまでの必要性に乏しい場合に当たるから、具体的条件につき原告と協議をしなかったとしても、債務不履行とはいえない。 とりわけ、人民出版との契約については、契約金額も僅少であり、巻数も一〇巻にすぎず、原告に特段の不利益を及ぼすものではないから、具体的条件につき原告と協議しなかったとしても、包括的委任の範囲内のものであり、債務不履行には当たらない。 3 請求原因3について 争う。 ただし、被告は、本件各海外出版契約に基づいて被告が支払を受けた前払保証印税又は著作物使用料の四割に相当する金員については、被告が二次的使用条項に違反したか否かにかかわらず、原告への分配金として支払義務があることを認める。 三 被告の主張(二2(三))に対する原告の認否 1 二2(三)(1)の主張(原告の許諾)について 否認する。 2 二2(三)(2)の主張(二次的使用条項の解釈)の主張について 争う。 (反訴) 一 請求原因 1 原告と被告との出版契約 (一) 原告と被告は、昭和五九年三月一〇日及び同六〇年一〇月三一日、本訴請求原因1(一)記載の契約(本件契約)を締結した。 本件契約には、「原告は、永岡図書と明らかに類似すると認められる内容の著作物もしくは永岡図書と同一書名の著作物を出版し、あるいは他人をして出版させない」との条項(以下「排他的使用許諾条項」という。)が設けられている。 (二) 原告と被告は、平成四年三月、本件契約について、本訴請求原因1(二)記載の合意をした。 2 原告の契約違反行為 (一) 原告は、平成元年から平成七年にかけて、ブティック社をして、自らの著作に係る別紙図書目録(二)記載の第一一巻から第七四巻までの六四点の童話絵本(以下「ブティック図書」という。)を出版させた。 (二) ブティック図書はいずれも、別紙対比目録記載のとおり対応する永岡図書と同一の書名の著作物であるから、これらをブティック社に出版させた原告の行為は、本件契約の排他的使用許諾条項に違反する。 (三) ブティック図書のうち、第二八巻「ヘレンケラー」、第二九巻「ながぐつをはいたねこ」及び第五一巻「あしながおじさん」を除く六一点の各図書は、永岡図書と明らかに類似すると認められる内容の著作物であるから、これらを出版させた原告の行為は、この点からも本件契約の排他的使用許諾条項に違反する。 3 被告の損害 平成元年(一九八九年)以前の永岡図書一点当たりの年間発行部数は別紙損害目録表1B記載のとおりであったところ、平成二年(一九九〇年)に永岡図書と市場で競合する商品であるブティック図書が発行されたことにより、同年から平成七年(一九九五年)までの永岡図書一点当たりの年間発行部数は別紙損害目録表2B記載のとおりに減少した。これによって、右表2G記載のとおりに永岡図書の売上金額が減少し、被告は、右表2H記載のとおり合計四億〇四〇四万八九五三円の得べかりし利益を失った。 したがって、原告の前記2の契約違反によって被告が被った損害の額は、右得べかりし利益四億〇四〇四万八九五三円である。 4 よって、被告は、原告に対し、債務不履行による損害賠償として右3記載の四億〇四〇四万八九五三円の内金五〇〇〇万円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成八年四月二〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。 二 請求原因に対する認否及び原告の主張 1 請求原因1について 認める。 2 請求原因2について (一) 請求原因2(一)は認める。 (二) 同(二)のうち、ブティック図書がいずれも対応する永岡図書と同一の書名の著作物であることは認め、その余は争う。 (三) 同(三)は争う。 (四) 原告の主張 (1) 錯誤無効 原告は、本件契約の締結に当たって、排他的使用許諾条項の文言にかかわらず、内容さえ類似していなければ同一の書名の書籍を他から出版することは自由であると考えており、もしそのような拘束があれば原告は本件契約を締結しなかったものであるから、要素の錯誤がある。したがって、排他的使用許諾条項のうち、永岡図書と同一書名の著作物の出版を禁止する部分は無効であるから、ブティック社にブティック図書を出版させた原告の行為は債務不履行に該当しない。 (2) 内容の非類似 本件契約の排他的使用許諾条項における「明らかに類似すると認められる内容の著作物」とは、著作権法における「複製」に当たる著作物を指し、要約した内容が大要同じであるという程度では足りず、文章及び絵という表現物が、具体的な表現について、明らかに類似することを要するというべきである。 ブティック図書のうち請求原因2(三)記載の六一点は、いずれも、文章及び絵の具体的な表現について、対応する永岡図書と明らかに類似するとはいえないから、ブティック社にブティック図書を出版させた原告の行為は、排他的使用許諾条項のうち永岡図書と明らかに類似すると認められる内容の著作物の出版を禁止する部分に違反しない。 (3) 被告の許諾 原告は、ブティック図書の出版につき、被告の許諾を得たから、被告に対し契約違反の責任を負わない。すなわち、次の@、Aのような事情によれば、被告は、ブティック図書の出版につき明示又は黙示の許諾をしたものである。 @ ブティック図書が最初に出版されたのは平成元年であるところ、被告は、ブティック図書の存在及び内容を知りながら、本件反訴を提起した平成八年まで、何ら原告の責任を追及しなかった。 A 原告と被告は、平成四年三月に、本件契約の内容を変更する請求原因1(二)記載の合意をしたが、その内容が原告に有利なものとなっていることからすると、この時点において、被告は、本件ブティック図書の出版を容認していたというべきである。 (4) 権利濫用・信義則違反 右(3)@、Aのような事情によれば、被告の請求は権利濫用又は信義則違反であり、許されない。 3 請求原因3について 争う。 三 原告の主張(二2(四))に対する被告の認否・反論 1 二2(四)(1)の主張(錯誤無効)について (一) 否認する。 (二) 原告の主張する錯誤は、動機の錯誤にすぎず、要素の錯誤とはいえない。 (三) 原告には右錯誤につき、重大な過失がある。 2 二2(四)(2)ないし(4)の主張について いずれも争う。 第三 当裁判所の判断 一 本訴について 1 請求原因1の事実は、当事者間に争いがない。 2 請求原因2(被告の契約違反行為)について (一) 請求原因2(一)ないし(三)の各事実は、それぞれ「原告の許諾を得ずに」との点を除き、当事者間に争いがない。 (二) 本件契約の二次的使用条項の趣旨について 本件契約の二次的使用条項は「永岡図書が翻訳・ダイジェスト・演劇・映画・放送・録音・録画など二次的に使用される場合、原告はその使用に関する処理を被告に委任し、被告は具体的条件について原告と協議のうえ決定する」というものであるところ、右条項が、永岡図書を二次的に使用する権利、すなわち著作権法上の翻案権(同法二七条)が著作者たる原告に留保されることを前提とした上で、右二次的使用を第三者に許諾等する際の事務処理につき、原告がこれを被告に委任することとしつつ、右事務処理に当たっての受任者たる被告の義務として、二次的使用を許諾等する場合には、その具体的条件についてあらかじめ委任者たる原告と協議し、その同意の下でこれを決定して右事務処理を行わなければならないことを定めた趣旨のものであることは、右条項自体の文言及び本件契約のその他の条項の内容(乙第一号証の一ないし四)に照らして明らかというべきである。 被告は、右条項は永岡図書の二次的使用に関する処理につき被告が原告から包括的委任を受けるという内容の条項であるから、二次的使用を許諾等する場合の具体的条件について原告と協議するまでの必要性に乏しい場合には、原告と協議をすることなく被告の判断で右具体的条件を決定して許諾等を行うことも許容される旨主張するが、右のような解釈は、明らかに右条項の文言に反し、何ら合理的根拠のないものであって、失当というほかない。 (三) 本件各海外出版契約の締結に当たって、被告が本件契約の二次的使用条項に基づく義務を履行したか否かについて (1) まず、平成五年八月一〇日に締結された人民出版との契約に関しては、被告があらかじめ原告と何らかの協議を行ったという事実について、被告からの具体的な主張はなく、証拠上もこれを認めることができない。したがって、被告が二次的使用条項に基づく前記のような義務を履行したということができないのは、明らかである。 (2) 次に、平成六年五月一六日に締結された笛藤出版との契約及び同年八月一五日に締結されたエレックスメディア社との契約に関して、被告は、「請求原因に対する認否及び被告の主張」2(三)(1)記載のとおり右各契約の締結についてあらかじめ原告から許諾を得たから二次的使用条項への違反はない旨主張するところ、Cはその証人尋問において、平成六年二月、原告に対し電話で「永岡図書につき、アジア地域から翻訳出版の引き合いがきているので、話を進めてよいか。」との連絡をしたところ、原告から「進めてもらって結構です。Bさんのほうにお任せします。」との回答を得たことを供述しており、また、Bは、その本人尋問及び陳述書(乙一一号証)において、平成六年二月か三月ころ、原告に対し電話で右Cと同じ内容の連絡をしたところ、原告から「そちらのほうでやってもらって結構です。」との回答を得たことをそれぞれ供述しているものの、右両名の供述する電話でのやりとりの内容は、右程度の抽象的なものにとどまるもので、契約の相手方や契約の期間、許諾料、発行部数等の具体的な契約条件については全く話をしなかったというのである。原告と被告の間には、前記のとおり、被告において永岡図書の二次的使用を第三者に許諾等する場合にはその具体的条件についてあらかじめ原告と協議しその同意の下でこれを決定するという二次的使用条項を含む本件契約が締結されているものであり、右の電話でのやりとりのころ、原告が海外渡航等の理由により長期間不在となることが予定されていたわけではなく、また、アジア地域での翻訳出版につき緊急に事務手続を進めなければならないといった事情も存在しなかった(かえって、原告本人の供述によれば、当時、原告は、既に台英社に対して台英本の出版を許諾していたことから、契約の相手方等について関心を有していたと認められる。)のであるから、CやBから右のような抽象的な内容の問い合わせがあったのに対し、原告が口頭で前記のような回答をしたとしても、右電話でのやりとりの内容及び前後の経緯からみて、原告においては、永岡図書のアジア地域における二次的使用について、被告が今後第三者との交渉を進めていくことにとりあえずの了解を与えたにすぎないと認められるのであって、被告主張のように、右電話でのやりとりによって、被告に対し、以後のアジア地域全般における永岡図書の二次的使用に関し原告の個別的な了解なしに具体的条件を決定して契約を締結するという包括的な権限を与えたとは、到底認めることはできない。 右のとおり、C及びBと原告との間の電話でのやりとりにより、笛藤出版との契約及びエレックスメディア社との契約の締結について、被告が二次的使用条項に基づく義務を履行したという被告の主張は採用することができず、また、証拠上、他の機会に被告が原告と右各契約の締結に関してあらかじめ何らかの協議を行ったという事実を認めることもできないから、被告は右各契約の締結に関して二次的使用条項に基づく前記のような義務を履行したということはできない。 (四) 以上によれば、被告は、本件各海外出版契約を締結するにつき、本件契約の二次的使用条項に基づく義務を履行しなかったものというべきである。 3 請求原因3(原告の損害)について (一) 人民出版との契約締結に関する損害 (1) 財産的損害について 被告は、人民出版との契約に基づいて被告が人民出版から前払保証印税として支払を受けた七万九四〇〇円の四割に相当する三万一七六〇円につき、著作者である原告に分配されるべき未払金であることを認めているところ、被告の前記債務不履行によって原告が受けた損害の額が少なくとも右金額を下回らないことは、明らかである。 (2) 慰謝料について 原告は、被告が原告の許諾なしに人民出版との契約を締結したこと及びその後の被告の不誠実な対応によって多大な精神的苦痛を受けた旨主張するが、証拠上、人民出版が永岡図書の中国語版を現に出版したという事実は認められず、また、右契約後に、被告から原告に対して、右契約に関して何らかの不誠実な言動があったという事実も認められないから、右契約に関して、原告が慰謝料によって癒されるべきほどの精神的損害を受けたとは認められない。 (二) 笛藤出版との契約締結に関する損害 (1) 財産的損害について @ 証拠(甲第三〇号証、第三一号証、第三三号証、第三四号証の一ないし二六、第三五号証の一ないし一八、第三六号証、第三九号証、第四〇号証、第四五号証、第一〇六号証、第一〇九号証の二、乙第一二号証、原告本人)によれば、以下の事実が認められる。 ア 原告は、台英本について、ブティック社及び訴外株式会社ジョア(以下「ジョア社」という。)を通じて、台英社に対して台湾における出版・販売を許諾した。 台英社は、平成元年二月から台湾において台英本を順次発行し、平成三年までに第一巻から第六〇巻まで、平成七年に第六一巻から第六五巻まで、平成一〇年に第六六巻から第七〇巻までを発行した。台英本の年度毎の新刊本と既刊本の再版を併せた販売部数は、平成元年が三〇万部、同二年が二〇万五〇〇〇部、同三年が二九万部、同四年が一五万五〇〇〇部、同五年が一三万部、同六年が一八万部、同七年が二七万〇九〇〇部、同八年の一月から六月が七万〇五九〇部であり、平成一一年七月現在における毎月の販売部数は五〇〇〇部前後である。 台英本の定価は、一部当たり一二〇元(日本円に換算して約四八〇円相当)であり、原告には一部当たり一〇円の著作物使用料が右販売部数に応じて、毎年数回に分けて支払われてきた。 イ 笛藤出版は、被告との契約に基づき、笛藤本全一〇〇巻を各巻五〇〇〇部ずつ印刷し、これらを平成六年から台湾において発行し、販売してきた。笛藤本の販売部数は、平成六年から平成八年一二月末日までが一七万六五四二部、同九年一月一日から一二月末日までが五万九二六五部、同一〇年一月一日から一二月末日までが三万三一二七部である。 笛藤本の定価は、一部当たり七〇元(日本円に換算して約二八〇円相当)である。 A 以上の事実を前提にすると、笛藤出版との契約を締結するに当たっての被告の前記債務不履行によって、原告が受けた損害の額については、民訴法二四八条の趣旨に照らし、以下のように算定するのが相当である。 まず、台英本と笛藤本とはいずれも童話絵本のシリーズであり大部分のタイトルも共通するものであるから、これらが市場において互いに競合することは明らかというべきところ、被告と笛藤出版との契約が締結された平成六年五月当時、原告は既に台英社に対して台英本の出版を許諾しており、しかも台英本は既に第一巻から第六〇巻までが発行されて順調な売上げを示し、原告にも相当な額の著作物使用料が定期的に支払われていたことからすると、仮に、笛藤出版との契約について、被告が本件契約の二次的使用条項に従ってあらかじめ原告との協議を行っていたとすれば、原告が笛藤本の出版を許諾することはなく、笛藤本が出版されることもなかったものと推認される。そして、右のとおり笛藤本と台英本とが市場で競合することが明らかなものであることに加え、笛藤本の売値が台英本よりも大幅に安いこと、笛藤本発行後の平成八年ころから台英本の販売部数に減少傾向がみられることなどからすれば、笛藤本の出版・販売によって台英本の販売部数が減少したことは明らかというべきところ、右減少した販売部数については、笛藤本の実際の販売部数がこれに相当するものと推認することができる。そうすると、原告は、被告の前記債務不履行がなければ出版されなかったはずの笛藤本が右債務不履行によって出版・販売されるに至ったことによって、台英本の販売により原告が得られる一部当たり一〇円の著作物使用料に、前記の販売部数を乗じた金額に相当する得べかりし利益の喪失という損害を被ったものと認められるところ、笛藤本の実際の販売部数は前記のとおり平成一〇年一二月末日時点で合計二六万八九三四部であるから、右時点にまでに原告に生じた損害の額は、二六八万九三四〇円であると認められるのであり、これを超える財産的損害を原告が受けたことを認めるに足りる証拠はない(なお、右平成一〇年一二月末日以降の笛藤本の販売の事実及びその部数についてはこれを認めるに足りる証拠がないから、これに対応する得べかりし利益については、損害の算定上考慮しないこととする。)。 また、笛藤本の販売部数は、前記のとおり最初の発行から平成八年一二月末日までが一七万六五四二部、同九年一月一日から一二月末日までが五万九二六五部、同一〇年一月一日から一二月末日までが三万三一二七部であり、それぞれの期間毎に右部数に対応する得べかりし利益に相当する損害が原告に生じているものといえるから、右損害に対する遅延損害金の起算日については、損害額二六八万九三四〇円の内金一七六万五四二〇円については平成九年一月一日から、内金五九万二六五〇円については同一〇年一月一日から、内金三三万一二七〇円については同一一年一月一日からとするのが相当である(各期間内における日々の販売部数を特定することはできないから、各期間の末日の翌日を各期間内の全販売部数に対応する得べかりし利益に係る遅延損害金の起算日とすることとする。)。 B なお、原告は、請求原因3(二)(1)@記載のとおり、被告の前記債務不履行の結果笛藤本が出版・販売され、その事実が平成六年一〇月に台英社に発覚したことにより、台英社がその後の台英本の出版を見送ることになったとした上で、右のような事態が生じなかった場合に見込まれたその後の台英本の販売部数に応じた原告の著作物使用料収入が得べかりし利益として原告の損害になる旨主張する。しかしながら、前認定のとおり、台英社は原告が主張する平成六年一〇月以降も台英本の再版本及び新刊本の出版・販売を行い、最近に至るまでこれを継続しており、原告もそれに応じた著作物使用料の支払を受けてきたのであるから、原告の前記主張は、「平成六年一〇月以降台英本の出版が見送られた」という前提事実を欠くものであり、採用することができない。そして、右のとおり台英本の出版・販売が継続している以上、台英本の販売により原告が得られる著作物使用料に関し、原告が得べかりし利益として主張し得るのは、笛藤本の出版・販売によって減少したと認められる台英本の販売部数に係る著作物使用料というべきところ、右減少した台英本の販売部数の算定に当たっては、前記Aで述べたように、笛藤本の現実の販売部数によるのが最も合理的な推認方法というべきである。原告は、笛藤本の出版・販売がなければ、台英本は少なくとも二〇〇万部販売されていたはずである旨主張するが、原告の右主張は、これを根拠付ける具体的な事情を欠き、単なる推測の域を出ないものであって、採用することができない。 また、原告は、請求原因3(二)(1)A記載のとおり、被告の前記のような債務不履行がなく、被告が原告と協議の上で笛藤出版との契約をしていれば、定価の七パーセント程度の著作物使用料の支払を原告が受ける旨の契約がなされていたはずであるとして、右使用料率に基づく使用料収入を得べかりし利益として主張する。しかしながら、台英本の出版について原告に支払われる著作物使用料は一部当たり一〇円であって、定価約四八〇円に対する割合にすると約二パーセントにすぎないこと、台英本と同じ童話絵本シリーズの諸外国における海外翻訳版の出版について原告とジョア社との間で許諾契約が締結されているところ、これらの契約において原告が支払を受ける著作物使用料はいずれも定価の二・四五パーセント(海外の出版社からジョア社に支払われる版権使用料が定価の七パーセントとされ、そのうちの三五パーセントが著者印税額とされている。)とされていること(甲第三二号証の一ないし四、第七一号証ないし第七六号証)からすれば、原告の主張する定価の七パーセントという使用料率はこの種の出版契約における使用料率としては著しく高いものといわざるを得ないのであり、原告が関与していたとしても、そのような内容の契約が笛藤出版との間で締結されていたとは到底考えられない。仮に、原告の関与の下で笛藤出版との間で使用料率に基づく契約が締結されていたとしても、原告が支払を受けることのできた使用料は、台英本その他の海外翻訳出版の場合と同程度、すなわち多くても定価の三パーセント程度とされたものと推認される。この場合に原告が支払を受けることのできた使用料は、一部当たり八・四円(定価二八〇円×三パーセント)に、笛藤本のこれまでの販売部数として証拠上認められる合計二六万八九三四部を乗じた金二二五万九〇四六円であって、前記Aで認定した損害額を超えないのであるから、右のような損害の算定方法を考慮しても、前記Aで認定した損害額が過少であるとはいえない。 (2) 慰謝料について 証拠(甲第二号証ないし第四号証、第一一号証、第三七号証、第三八号証、第四〇号証、乙第九号証、第一一号証、原告本人、証人D、被告代表者本人)によれば、被告は笛藤本の出版後もその事実について原告に知らせていなかったこと、原告は、平成六年一〇月、台英社から台英本の一〇〇万部出版記念の祝賀会に招待されて台湾を訪問した際に、台英社から笛藤本が出版・販売されている事実を初めて知らされ、その上で台英本と競合する図書を他から出版させたことを非難され、さらに、そのことが原因で台英社から台英本の出版及び原告と台英社との間で進められてきた劇場用アニメーション映画を製作する企画を中止するとの申入れを受けるに至ったこと、その後原告が被告に原告の許諾を得ずに笛藤本を出版させたことについての事情説明を求めたのに対し、被告は、あくまで笛藤出版との契約締結につきあらかじめ原告の許諾を得たから被告に契約違反の事実はないとの立場(右のような被告の主張に理由がないことは前記2(三)(2)で判示したとおり)からの対応に終始したことが認められるところ、右のような、被告の前記債務不履行に基因する台英社からの処置及び右債務不履行後の被告の原告に対する不適切な対応によって、原告は精神的損害を受けたものというべきであり、これを癒すための慰謝料としては、金二〇万円が相当である。 なお、原告は、笛藤本が拙劣な複製技術によって製作された粗悪本であるとして、その出版により精神的苦痛を受けた旨主張するが、検甲第一三号証(笛藤出版発行の「赤毛のアン」)と検乙第一号証の三七(被告発行の「赤毛のアン」)とを比較してみても、笛藤本が拙劣な複製技術によって製作された粗悪本であるとまでは認められないから、原告の右主張は採用できない。 (三) エレックスメディア社との契約締結に関する損害 (1) 財産的損害について 被告は、エレックスメディア社との契約に基づいて被告が同社から前払保証印税として支払を受けた八万円の四割に相当する三万二〇〇〇円につき、著作者である原告に分配されるべき未払金であることを認めているところ、被告の前記債務不履行によって原告が受けた損害の額が、少なくとも右金額を下回らないことは明らかである。 (2) 慰謝料について 原告は、被告が原告の許諾なしにエレックスメディア社との契約を締結したこと及びその後の被告の不誠実な対応によって多大な精神的苦痛を受けた旨主張するが、証拠上、エレックスメディア社が永岡図書のインドネシア語版を現に出版したという事実は認められず、また、右契約後に、被告から原告に対して、右契約に関して何らかの不誠実な言動があったという事実も認められないから、右契約に関して、原告が慰謝料によって癒されるべきほどの精神的損害を受けたとは認められない。 4 以上によれば、原告の本訴請求は、被告に対し、債務不履行による損害賠償として金二九五万三一〇〇円及び内金二六万三七六〇円に対する平成七年二月二五日(訴状送達の日の翌日)から、内金一七六万五四二〇円に対する平成九年一月一日から、内金五九万二六五〇円に対する同一〇年一月一日から、内金三三万一二七〇円に対する同一一年一月一日から各支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 二 反訴について 1 請求原因1の事実は、いずれも当事者間に争いがない。 2 請求原因2(原告の契約違反行為)について (一) 請求原因2(一)の事実は、当事者間に争いがない。 (二) 請求原因2(二)の事実のうち、ブティック図書がいずれも対応する永岡図書と同一の書名の著作物であることは当事者間に争いがない。したがって、原告がブティック社をしてブティック図書を出版させたことが、原告に「永岡図書と同一書名の著作物を他人をして出版させない」という義務を負担させている本件契約の排他的使用許諾条項と抵触することは明らかである。 (三) ブティック図書の出版について、被告の許諾があったか否かについて (1) 証拠(甲第一号証、第二三号証、第二四号証、第四七号証、乙第八号証、第一一号証、原告本人、証人D、証人C、被告代表者本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 @ 被告は、本件契約に基づき、昭和六一年から平成六年までの間に永岡図書各巻を順次発行した。 A 原告は、平成元年にブティック社との間でブティック図書の出版を許諾する旨の契約を締結し、ブティック社は、同年から平成七年までの間にブティック図書各巻を順次発行した。 B 被告の社内では、ブティック図書が出版されている事実はその発行の当初から認識されており、本件契約の排他的使用許諾条項との関係でこれを問題視する意見もあったが、永岡図書の出版に関して原告との良好な関係を維持するという観点から、被告は、平成八年四月に本件反訴を提起するまで、ブティック図書の出版につき原告に抗議をするなどの行動をとることはなかった。 C 平成四年二月、被告の対応に不満を持った原告が、被告に対し、永岡図書のうち契約書を作成していなかった「名作アニメシリーズ」の第三一巻以降について、その後の出版の中止を申し入れるという事態が生じたが、出版の継続を望むBらが原告を説得した結果、契約条件の一部を請求原因1(二)記載のとおりに変更して出版を継続するということで決着することとなった。その際、原告と被告との間では、ブティック図書の出版について特に問題とされることはなかった。 (2) 以上のとおり、被告は、平成元年の出版当初から原告の著作に係るものとしてブティック図書各巻がブティック社から順次出版されていることを認識し、しかも、これらブティック図書の書名や内容についても了知し、原告との関係において本件契約の排他的使用許諾条項への抵触の問題があることも十分に認識しながら、永岡図書の出版に関して原告との良好な関係を保つという営業上の判断から、あえてブティック図書の出版について問題としないまま、これを長期間にわたって放置してきたのであり、しかも、平成四年二月に原告との間で本件契約の契約条件の一部を変更する旨の合意をした際にも、原告によるブティック図書の出版については何ら問題とすることなく、むしろ、原告の不満を収めて永岡図書の出版を継続させることを優先して、原告に支払うべき著作物使用料の率を引き上げるという原告に有利な内容の合意をしているのである(なお、Bは、その尋問及び陳述書(乙一一号証)において、被告が永岡図書とブティック図書の書名及び内容を詳しく対比したのは本件訴訟が提起された後であり、その時に両者の書名及び内容が酷似していることを初めて認識したかのごとく供述する。しかしながら、出版社である被告が、自社が出版している童話絵本のシリーズと同一の著者が作成した童話絵本のシリーズが競業他社から出版されていることを認識しながら、その書名や内容について比較検討を加えないまま放置するとは通常考えられないというべきであるから、Bの右供述は不自然・不合理であり、到底措信することができない。)。 右のようなブティック図書の出版に対する被告の対応を総合すると、被告は、原告に対し、遅くとも平成四年二月の前記合意の際に、原告がブティック社にブティック図書を出版させることについて、黙示的な許諾を与えたものと認めるのが相当である。 (三) 以上によると、その余の点について判断するまでもなく、原告は、ブティック社にブティック図書の出版を許諾したことにより、被告に対し契約違反の責任を負うものとはいえない。 3 よって、被告の反訴請求は、理由がない。 東京地方裁判所民事第四六部 裁判長裁判官 三村量一 裁判官 大西勝滋 裁判官 中吉徹郎 |
日本ユニ著作権センター http://jucc.sakura.ne.jp/ |