判例全文 line
line
【事件名】『素肌美容法』類似本事件
【年月日】平成10年6月29日
 東京地裁 平成3年(ワ)第17845号 損害賠償等請求事件
 (口頭弁論集結の日 平成10年4月13日)

判決
東京都(以下住所略)
 原告 株式会社ヘルスロード
右代表者代表取締役 足立和子
東京都(以下住所略)
 原告 足立和子
右両名訴訟代理人弁護士 三木祥史
東京都(以下住所略)
 被告 ビューティサポー株式会社
右代表者代表取締役 高橋八重子
広島市(以下住所略)
 被告 高橋八重子
右両名訴訟代理人弁護士 西本党命
同 本田兆司
同 桂秀次郎
同 下山博造
同 石川道夫
同 石井光穂


主文
一 原告らの請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は、原告らの負担とする。

事実
第1 請 求
一 被告らは、原告足立和子に対し、連帯して金3900万円及びこれに対する平成4年10月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
二 被告らは、原告株式会社ヘルスロードに対し、連帯して金2000万円及びこれに対する平成4年10月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
三 被告高橋八重子は、別紙著作物目録記載―1及び2の著作物を出版、頒布してはならなし。
四 被告ビューティサポー株式会社は、別紙著作物目録記載―1及び2の著作物を頒布してはならない。
五 被告ビューティサポー株式会社は、別紙著作物目録記載―3の著作物を出版してはならない。
六 被告ビューティサポー株式会社は、所持する別紙著作物目録記載―3の著作物を廃棄せよ。
七 被告らは、別紙原告主張美容法目録記載の美容法が、被告高橋八重子が独自に開発した美容法であるとの趣旨の告知をし、又はその趣旨を記載した文章を流布してはならない。
八 被告らは、原告足立和子に対し別紙謝罪広告目録記載―1の謝罪広告を、原告株式会社ヘルスロードに対し同目録記載―2の謝罪広告を、原告らに対し同目録記載―3の謝罪広告を、いずれも同目録記載二の要領でせよ。
九 一項及び二項について仮執行宣言
第2 請求原因
一 当事者
1 原告ら
 原告株式会社ヘルスロード(以下「原告会社」という。)は、化粧品、健康食品の販売等を業とする株式会社であり、原告足立和子(以下「原告足立」という。)は、原告会社の代表取締役である。
2 被告ら
 被告ビューティサポー株式会社(以下「被告会社」という。)は、化粧品の製造、販売等を業とする株式会社であり、被告高橋八重子(以下「被告高橋」という。)は、被告会社の代表取締役である。
二 著作権侵害一
1 原告足立は、別紙著作物目録二1記載の著作物(以下「原告著作物1」という。)及び同目録記載二2の著作物(以下「原告著作物2」という。)を著作した。
2 被告高橋は、別紙著作物目録記載一1の著作物(以下「被告著作物1」という。)及び同目録記載一2の著作物(以下「被告著作物2」という。)を著作した。
3(一) 被告著作物1の「私の美容理論」(15ぺ一ジないし24べ一ジ)の部分及び被告著作物2の「『洗い続ける素肌美容法』について」(11ぺ一ジないし29ぺ一ジ)の部分には、著作者名として、被告高橋の名が表示されている。
(二) 仮に、被告著作物1の「私の美容理論」の部分及び被告著作物2の「『洗い続ける素肌美容法』について」の部分を西谷厚務(以下「西谷」という。)が著作したとしても、被告高橋は、西谷に、右各部分の代筆を依頼し、西谷は、これを承諾した。
(三) したがって、被告高橋は、著作権法14条によって被告著作物1の「私の美容理論」の部分及び被告著作物2の「『洗い続ける素肌美容法』について」の部分の著作者と推定されるし、仮に、西谷が右各部分を作成したとしても、著作権法15条によって著作者は被告高橋となる。
4 被告著作物1のうちの「私の美容理論」の部分及び被告著作物2のうちの「『洗い続ける素肌美容法』について」の部分は、その各要旨が、別紙被告著作物要旨一及び二並びに原告著作物要旨一及び二のとおり、いずれも原告著作物1及び2の各要旨のいずれとも同一であるか又は極めて類似しており、被告著作物1及び2の各右部分は、いずれも原告著作物1を翻案したものであり、かつ、原告著作物2を翻案したものである。
5 被告著作物1及び2の右4の各部分には、原著作者として原告足立の氏名が表示されていない。
6 被告高橋は、被告会社の代表取締役として、自ら又は被告会社従業員等を指揮して、被告著作物1及び2を頒布している。
7 被告高橋は、右6の際、被告著作物1及び2が原告足立の著作権を害する行為によって作成されたことを知っていた。
8 被告会社は、被告著作物1及び2の販売によって次のとおり少なくとも合計2400万円の利益を得た。
(一) 被告著作物1は、定価が1000円、被告会社の東明杜からの購入価格が600円で、これを販売した場合の被告会社の利益は400円である。
 被告会社は、被告著作物1を平成3年12月12日までに少なくとも5万冊販売しており、これによって少なくとも2000万円の利益を得た。
(二) 被告著作物2は、定価600円、製造価格400円で、これを販売した場合の被告会社の利益は200円である。
 被告会社は、被告著作物2を平成3年12月12日までに少なくとも2万冊販売しており、これによって少なくとも400万円の利益を得た。
9(一) 右各著作権侵害行為について、原告著作物1及び2の著作権使用料相当額は、いずれも被告著作物11冊当たり400円であり、被告著作物21冊当たり200円である。
(二) 被告会社は、平成3年12月12日までに、少なくとも被告著作物1を5万冊頒布し、被告著作物2を2万冊出版、頒布した。
10 よって、原告足立は、原告著作物1又は2(選択的)の著作権(翻案権)に基づき、被告高橋に対し、被告著作物1及び2の出版、頒布の停止を、被告会社に対し、被告著作物1及び2の頒布の停止を、右著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として、被告らに対し、連帯して2400万円及びこれに対する不法行為の後である平成4年10月31日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払いを、原告著作物1又は2(選択的)についての著作者人格権(氏名表示権)に基づき、被告らに対し、別紙謝罪広告目録記載一1の謝罪広告を同目録記載二の要領で行うことを求める。
三 著作権侵害二
1 原告足立は、別紙著作物目録記載二3の著作物(以下「原告著作物3」という。)及び同目録記載二4の著作物(以下「原告著作物4」という。)を著作した。
2 被告高橋は、昭和60年4月ごろ、被告会社の代表取締役として、西谷及び宮本ひろし(以下「宮本」という。)と共同して、別紙著作物目録記載一3の著作物(以下「被告著作物3」という。)を著作した。
3 被告高橋は、被告会社の代表取締役として、自ら又は被告会社従業員等を指揮して、被告著作物3を出版している。
4 被告著作物3は、別紙被告著作物3と原告著作物3との対照表の箇所で、原告著作物3の記載と同一であるか又は極めて類似しており、原告著作物3の複製権(主位的)又は翻案権(予備的)を侵害している。
5 被告著作物3は、別紙被告著作物3と原告著作物4との対照表の箇所で、原告著作物4の記載と同一であるか又は極めて類似しており、原告著作物4の複製権(主位的)又は翻案権(予備的)を侵害している。
6 被告高橋は、右3の行為が原告著作物3及び原告著作物4について有する原告足立の著作権を侵害することを知りだから又は過失により知らないで、右3の行為を行っている。
7 右各著作権侵害行為について、通常の著作権使用料相当額は、原告著作物3につき250万円、原告著作物4につき50万円である。
8 よって、原告足立は、被告会社に対し、著作権(主位的に複製権、予備的に翻案権)に基づき、被告著作物3の出版の禁止及び廃棄を、被告らに対し、右著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として、連帯して300万円及びこれに対する不法行為の後である平成4年10月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
四 著作権侵害三
1 被告高橋は、被告会社の代表取締役として、自ら又は被告会社従業員等を指揮して、広告誌「ガリヤ」平成4年4月号に、別紙著作物目録記載一4の文章(以下「被告著作物4」という。)を掲載した。
2 被告著作物4は、別紙被告著作物4と原告著作物1及び4との対照表の箇所で、原告著作物1及び4のいずれともその記載が同一であるか又は極めて類似しており、被告著作物4は、右箇所において原告著作物1の複製権(主位的)又は翻案権(予備的)を侵害しており、かつ、原告著作物4の複製権(首位的)又は翻案権(予備的)を侵害している。
3 被告高橋は、右1の行為が原告著作物1及び原告著作物4について原告足立が有する著作権を侵害することを知り又は過失により知らないで、右1の行為を行った。
4 右著作権侵害行為について、通常の著作権使用料相当額は、いずれを侵害した場合でも200万円である。
5 よって、原告足立は、被告らに対し、原告著作物1又は4(選択的)の著作権侵害(主位的に複製権、予備的に翻案権)の不法行為による損害賠償として、連帯して200万円及びこれに対する不法行為の後である平成4年10月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
五 誹講行為
1 被告高橋は、被告会社の代表取締役として、自ら又は被告会社従業員等を指揮して、NTT広島販売センタ企画、発刊のPR誌「ポシェ」第4号(平成2年11月号)及び第5号(平成3年1月号)に、別紙被告広告目録記載一の文章(以下「被告広告」)という。)を掲載した。右「ポシェ」は広島市内を中心に頒布された。
2 被告広告一は、原告会社の「笹の葉化粧品」(以下「原告化粧品」という。)を名指しして、原告化粧品よりも被告会社の「ピアベルピア化粧品」(以下「被告化粧品」という。)が優れているという趣旨のものである。
3 しかし、原告化粧品より被告化粧品が優れているという根拠はない。したがって、被告広告一の内容は虚偽である。
4 原告会社は、化粧品の販売等を業とするものであり、広島市に代理店を持ち、相当数の顧客もいるところ、被告会社の右1の行為によって、営業上の信用を著しく害された。
5 原告会社が右1の行為によって受けた信用の失墜を金銭に見積もると、1000万円を下らない。
6 よって、原告会社は、被告らに対し、不法行為による損害賠償として、連帯して1000万円及びこれに対する不法行為の後である平成4年10月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払い、並びに営業上の信用を回復する措置として別紙謝罪広告目録記載一2の謝罪広告を同目録記載二の要領で行うことを求める。
六 虚偽事実告知、流布行為
1 被告高橋は、被告会社の代表取締役として、自ら又は被告会社従業員等を指揮して、別紙被告広告目録記載二ないし六のとおり文章を掲載又は頒布し、流布した。
2 右各文章は、別紙原告主張美容法目録記載の美法法(以下「甲美容法」という。)は被告高橋が独自に開発した美容法であるとの趣旨のものである。
3 被告高橋は、被告会社の代表取締役として、自ら又は被告会社従業員等を指揮して、各所において美容説明会を開催し、集合した人々に対し、被告会社の化粧品を宣伝するに当たり、甲美容法は被告高橋が独自に開発した美容法である旨告知、流布している。
4 しかし、甲美容法は、原告足立が独自に開発して、被告高橋に教授したものであり、被告高橋が独自に開発したものではない。したがって、右1及び3の告知、流布の内容は虚偽である。
5 原告会社は、甲美容法に基づき、営業している。
6 原告足立は、甲美容法に基づき、書籍等を著し、講演活動を行っている。
7 右1及び3の行為により、これを読んだり聞いたりした者は、甲美容法は原告足立が独自に開発したものではないと誤信するおそれがある。
8 右7のとおり害された原告会社の営業上の利益を金銭に見積もると1000万円を下らない。
9 右7のとおり害された原告足立の営業上の利益を金銭に見積もると1000万円を下らない。
10 よって、原告らは、被告らに対し、不正競争防止法2条1項11号、3条1項に基づき、甲美容法は被告高橋が独自に開発したものである旨の告知、流布の停止、同法2条1項11号、4条に基づき、連帯して、各原告に対しそれぞれ1000万円及びこれに対する不正競争行為の後である平成4年10月31日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払い並びに信用回復措置として別紙謝罪広告目録記載一3の謝罪広告を同目録記載二の要領で行うことを求める。
第3 請求原因に対する認否
一 一は認める。
二1 二1は不知。
 また、原告著作物1及び2は、思想又は感情を創作的に表現したものではなく、その著作物性を争う。
2 二2のうち、被告高橋が被告著作物1の「美と真実を求めて」及び「理念」の部分を著作したことは認め、その余は否認する。
 被告著作物1の「私の美容理論」の部分は西谷の著作であり、被告高橋以外の著作名義の部分は各著作名義人の著作である。
 被告著作物2の「洗い続ける素肌美容法について」の部分は西谷の著作であり、被告高橋以外の著作名義の部分は各著作名義人の著作である。
3(一) 二3(一)、(二)は認める。
(二) 二3(三)は争う。
4 二4は否認する。
 被告著作物1及び2は、その著作に当たって原告著作物1及び2を参考にしてはいないし、内容としても原告著作物1及び2の翻案権を侵害していない。
5 二5は認める。
6 二6は認める。
7 二7は否認する。
8 二8の(一)、(二)のうち、被告著作物1及び2の定価の表示は認めるが、その余は否認する。
 被告らが行っている被告著作物1の頒布はすべて無償のものであり、被告著作物2を東明杜が有償で販売しているが、その販売数は不明であり、被告らが行っている被告著作物2の頒布はほとんどが無償のものである。
9(一) 二9(一)は争う。
(二)二9(二)は否認する。
10 二10は争う。
三1 三1は認める。
 ただし、原告著作物3及び4は、思想又は感情を創作的に表現したものではなく、その著作物性を争う。
2 三2は認める。
3 三3は、過去に原告ら主張のとおり被告著作物3を出版したことは認めるが、その余は否認する。
 現在、被告著作物3は出版していない。
4 三4、5は否認する。
 被告著作物3は、被告高橋、西谷及び宮本が共同で著作したが、その著作に当たって原告著作物3及び4を参考にしてはいないし、内容としても原告著作物3及び4の複製権及び翻案権を侵害していない。
5 三6ないし8は争う。
四1 四1は、被告高橋が、被告会社の代表取締役として、被告会社従業員に広告誌「ガリヤ」平成4年4月号に被告会社の広告を掲載するよう指揮したことは認めるが、その余は否認する。
 被告高橋は、被告著作物4の内容については指揮していない。
2 四2は否認する。
3 四3ないし5は争う。
五1 五1は認める。
2 五2、3は否認する。
3 五4のうち、原告会社が化粧品の販売等を業とし、広島市に代理店を持ち、相当数の顧客がいることは認め、その余は否認する。
4 五5、6は争う。
六1 六1は認める。
2 六2は否認する。
 被告高橋が独自に開発し、流布した美容法は、別紙被告主張美容法目録記載の美容法(以下「乙美容法」という。)である。
3 六3は否認する。
 被告高橋が独自に開発し、流布した美容法は、乙美容法である。
4 六4、5は否認する。
5 六6は不知。
6 六7は否認する。
7 六8、9は争う。
8 六10は争う。
 原告らの請求は、被告らが「直接原告らに関する事実を陳述、流布するものではない」原因事実に基づく請求であり、主張自体失当である。
理由
第1 請求原因一の各事実は当事者間に争いがない。
第2 請求原因二(著作権侵害一)について
一 原告著作物1、2とその著作物性について
1 証拠(甲24、36)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実を認めることができる。
(一) 原告著作物1は、昭和55年9月1日、「シミがとれ美しくなるバッティング美容法」の題名で主婦の友社から発行された書籍のうち、原告足立の著作した「パッティング美容法とその実際」と題する部分(20ぺ一ジないし86ぺ一ジ)であり、「あなたは素肌の美しさを忘れていませんか」、「皮膚の構造を知る」、「シミはどうしてできるのか」、「細胞は生まれ変わる」、「パッティング美容法とは」、「パッティング美容法」、「洗ったあとは」、「ニキビ・吹き出物の注意」、「軟膏かぶれに注意」、「丘疹」、「化粧品かぶれ」、「赤ら顔の治し方」、「素肌復活への道」、「男性と女性の肌の違い」、「内臓疾患から出るシミ」、「シミが治るまでの化粧法」、「日やけを予防するには」、「小じわは防げるか」との題目を付した18の部分から構成されている。
(二) その概要を見ると、「あなたは素肌の美しさを忘れていませんか」では、肌のトラブルをなくし、美しい素肌を取り戻す美容法としてパッティング美容法が紹介され、「皮膚の構造を知る」では、皮膚の断面図とともに皮膚の構造、機能の説明、「シミはどうしてできるのか」では、シミのできる原因についての著者の見解とシミのできた皮膚の様子、「細胞は生まれ変わる」では、皮膚の新陳代謝を利用してシミをとることができること、「パッティング美容法とは」、「パッティング美容法」及び「洗ったあとは」では、著者が考え出したパッティング美容法について、それを実行しているモデルの写真と具体的な方法の解説、「ニキビ・吹き出物の注意」では、ニキビ・吹き出物の原因、予防法と治し方、「軟膏かぶれに注意」では、軟膏の連用による害、「丘疹」では、丘疹の原因と治し方、「化粧品かぶれ」では、かぶれの原因とかぶれを起こす化粧品のテスト方法、「赤ら顔の治L方」では、赤ら顔の原因と治し方、「素肌復活への道」では、素肌の復活には一定期間を必要とするが、パッティング美容法を根気よく続ければ素肌が美しく蘇ること、「男性と女性の肌の違い」では、10代から60代までの男性と女性の肌の違い、特にシミの出方、「内臓疾患から出るシミ」では、内臓疾患によるシミの様子と簡単な自己診断法、「シミが直るまでの化粧法」では、シミがとれるまでの間、シミをカバーするファウンデーションの選び方、「日やけを予防するには」では、日やけを予防する美容法、「小じわは防げるか」では、小じわの原因と予防のための美容法が記述されている。
(三) 日さらに、原告著作物1のうち原告らが翻案権を侵害されたと主張する部分(別紙原告著作物要旨―において要旨が省略されていない部分)の大要を示せば、概ね次のとおりである。
(1)あなたは素肌の美しさを忘れていませんか
 女性を美しくするはずだった化粧が、いつの間にか、逆に女性から美を奪う働きをするようになり、多くの化粧品や美容法が、肌のトラブルを起こし、女性の本来の素肌の美しさを忘れさせるようになってしまった。女性がお化粧をして美しくなるのは素肌の美しさがあってこそのことで、素肌を隠すためのお化粧はむだなばかりか、肌のトラブルを増し、とり返しのつかない害にもなりかねない。美しい素肌をとり戻すことこそ、女性が美しくなれる第一歩であり、肌のトラブルを、化粧品を塗ることでおおい隠す化粧をしている人は素肌を直視し、美しい素肌を取り戻す美容法に切りかえていただきたい。それは、むずかしい美容法ではなく、だれにでもすぐできる「パッティング美容法」である。
(2)皮膚の構造を知る
 肌にトラブルが起こったとき、まず皮膚の機能や構造をよく知ることが必要である。皮膚は、上から表皮、真皮、皮下組織の三つの層に分かれ、少しずつ違った働きをもっているものの、全体には密接なつながりを持つ。たとえば、角化作用は表皮の表面の働きである。皮脂は皮下組織で作られ、真皮中を通って送られてくる。この皮脂の量が減少すると、つやが落ちて肌荒れが起こる。古くなった皮膚は新しく生まれる細胞に押し上げられて、常に角化作用を繰り返しているが、この機能が鈍くなって表われる現象の一つが老人性のシミである。真皮は血管、神経、起毛筋を有し、暑さ、寒さを調節している。皮膚に細菌がついて毛穴に炎症が起き、痛みを感じるのは、真皮中の知覚神経の作用による。
 皮下組織では皮脂や汗が分泌し、肌をうるおす源となっている。皮脂の多い人は脂性、少ない人は荒れ性である。皮脂は知覚神経の支配を受けずに分泌するため、皮脂の量が多くても少なくても気づかない。しかも、皮膚に常にクリームなどを塗って人工的に脂肪膜を作ると、皮脂腺も皮脂を分泌しなくなってしまう。
(3)シミはどうしてできるのか
 長い間、女性の顔のシミの原因が、睡眠不足、疲れ、肝臓障害、香料などのせいにされてきたが、それぞれがシミの原因かどうか考えてくるといずれも根拠が薄弱である。
 私の結論は、ミのいちばん大きな原因は、石油で作られた化粧晶と、それを毛穴の奥深くまでしみ込ませるマッサージであるというものであり、その証拠は、こうした化粧品を多く使う女性ばかりにシミができ、マッサージをした指の動いたとおりに黒くなっていくという事実である。クレンジングクリームから始まり、マッサージをして、ナイトクリームまでコースで塗り込んでいく化粧品と美容法が歳月の力を借りて女性の顔を汚していくのである。
 表皮にあるメラニン色素は、真皮を通り抜けて、皮下組織に及び、太陽に合うと増加する。メラニン色素は、うぶ毛をを<「を」は重複〉取り巻いて、皮脂腺のあるところどこにでも分布し、毛穴が深ければそれだけこの色素も深く、石油系化粧品を塗った肌に日光が当たると、普通の日やけとは違った感じに肌の色を染め変えてしまう。
 化粧品に含まれる油には、動物油、植物油、鉱物油とあるが、鉱物油が石油製品である。鉱物油のクリームは、肌に塗ったとき、浸透しないで皮膚の表面に残ってしまい、このクリームを塗って日光に当たると、油焼けを起こす。油焼けはシミに、シミは黒皮症に、月日を重ねて変化する。
 シミができやすい人とは、@マッサージの好きな人、A外出の多い人、B脂性よりも荒れ性の人、C色白の人よりも肌の浅黒い人、D若い人よりも30代以上の人、E洗顔をあまりしたい人、Fふきとり化粧水を使わなかった人である。
 逆にシミができにくい人は、@化粧品で肌の手入れをほとんどしない人、A日陰にばかりいて外出しない人、B脂性の人、C色白の人、Dせっけんでジャブジャブ顔を洗う人、E夜塗り込んでも、朝、日光に当たる前にせっけんで顔を洗う人、F洗顔料、パック、化粧水、乳液などを好んで使い、クリーム類をあまり塗らない人である。
 シミは、その人の指の動いたとおりに着色する。
 シミのできている部分の皮膚は、厚くかたくなって、つやがない。できてからの年数が短いほど茶色に近く、年数を追うごとに墨のような色に変化し、石油の量が多いものほど、シミの色も濃くなる。
 人の皮膚の色を決定するのは表面ではなく、皮膚の内部であるから、表から見てシミだとわかる場合は、その奥に層ができている。特に風呂上りなどの毛穴が開いているときに、熱心に石油系のクリーム類を塗り込んだ人は、シミの層は相当深いと考えられる。
 そのため、美容法をかえてもすぐにはシミのない美しい肌には戻らない。
(4)細胞は生まれ変わる
 私たちの細胞は日々新しく生まれ変わり、古くなった細胞はあかとなってはげ落ちていく。シミをとるには、この自然の力をうまく利用すればよい。シミは玉ねぎの皮をむくようなもので、茶色い皮をはぎとっていけば必ず白い玉ねぎが中から出てくる。
 シミがとれやすい人は、@健康で脂性の人、A色白の人、B若い人、C熱心に塗らなかった人、Dシミができてからの期間が短い人であり、シミがとれにくい人はその反対である。
 塗りすぎてしまった人、シミができて期間の長い人は、根気よく洗ってたたく美容法をつづけるしかない。顔全体にシミがある場合、とれやすい部分は、頬骨の上、鼻の回り、眉間であり、とれにくい部分は、耳の前にできた境界線、口の脇、顎だと皮膚の厚い部分、目のすぐ下にあたる皮膚の生まれ変わる周期のおそい部分である。
 皮膚の浅い部分、鼻の回りのように皮脂が下から押し上げてくる部分のシミは短期問で消えるが、皮膚の厚い部分のシミは、本来の素肌が表に出てくるまでに長い期間が必要である。
(5)パッティング美容法とは
 パッティング美容法とは、肌をたたく美容法をいう。
 クレンジングクリームで化粧を落としたら、せっけんを一杯泡立てて顔を洗う。顔の皮膚も呼吸しており、この呼吸を妨げないためにも、肌がよごれたらきれいに流すことが美しい素肌の決め手となる。
 ただ、寒い季節には、せっけんで顔を洗ったままにしておくと皮膚の老化を早めるので、クリームを塗って保護しなければならない。
(6)パッティング美容法
 手をよく洗い、きれいな手でクレンジングクリームを伸ばしてメーキャップとなじませ、ティッシュペーパーでふきとる。次にせっけんをよく泡立て、流れているお湯か水できれいに洗い流す。このとき、脂性の人は熱めのお湯を使い、荒れ性の人はぬるま湯にする。よごれや化粧をよくとるためにクレンジングクリームを2度使い、吸引カップを使う。
 次に、パッティング美容法を始めから終わりまで12段階に分け、これを実際に行っているモデルの12枚の写真が簡単な説明とともに掲載されている。
(7)洗ったあとは
 このあと、流れているお湯か水を手にとり、肌をたたく。
 タオルでふきとったら、無アルコールの化粧水を使って肌をただく。特にアルコールを含まない化粧水を使うのは、アルコールは蒸発する際、肌の水分を奪ってしまうからである。このあと、こめかみあたりを指先で押さえて神経の疲れをほぐし、乳液をつける。
 肌をよくたたくパッティング美容法は短時間で血行をよくし、洗顔のあと肌の水分を補うことで肌のみずみずしさも蘇る。さらにほどよい振動は減少し始めた皮脂の分泌を呼び覚ます。
(8)ニキビ、吹き出物の注意
 ニキビの原因のほとんどは、思春期を迎えたためのホルモンと分泌される皮脂のせいであるが、思春期を過ぎても消えないものは、吹き出物といえる。
 予防法は、肌に合った洗顔料で顔を洗い、肌にほこりや細菌が付着しないよう心がけることである。皮脂の量が多くたると、皮膚の表面が脂っぽくなり、肌がよごれやすくなる。肌をよく洗って清潔にしておけば、自然に治る。
 脂性の人は、洗顔により清潔にすることを心がけ、吹き出物がもしできたら、いじらず、ほこりから肌を守るようにすることが大切である。
 化膿している吹き出物を指で押すと着色するので、押したりいじったりしてはならない。24、5才を過ぎて出てくるニキビは、皮膚呼吸を妨げたために起きる吹き出物である。
(9)軟膏かぶれに注意
 軟膏を化粧下地に使う人が多くなっているが、軟膏は薬であり、常用すると副作用により、最初は、肌がほてる、少しむずがゆい、顎のあたりに水を含んだ吹き出物が出るなどの症状が現れ、軟膏の連用が長期にわたると、肌は次第に固くなり、つるんとした肌に変わり、その底にむずがゆさを感じるようになる。
 軟膏の使用を止めると顔が腫れ上がり、かゆみとほてりで精神状態までおかしくなりかけ、顔全体の皮がむける。元に戻るのは3か月を過ぎたころである。
 ホルモン入りの軟膏や化粧品を塗りすぎると、次第に機能のバランスがくずれてしまう。
(10) 素肌復活への道
 皮膚が長い期間知らずに塗り込んだ化粧品によって害を受けていたとしたら、その復活には一定の期間を必要とする。毛穴に塗り込んだ脂が肌の色を染め、皮膚の中にかゆみを起こし、赤いほてりを感じさせるのに長い期間があったのだから、新しい細胞が生まれ、表面に出て復活するまでの期間も辛抱しなければならない。
 しかし、私たちの細胞は生きており、復活しようと懸命に働いている。自然の力は強く、途中で投げ出すことははない。
 シミや黒皮症が皮膚の表面に出てくるまでには長い時間がかかり、これをとるのにも長い時間がかかるが、パッティング美容法で根くらべに勝てば、素肌も美しくよみがえる。あせらず根気よく時期を待たなければならない。
(11) 日やけを予防するには
 日やげは肌のためにはよくない。特に紫外線の強い夏、肌を焼きすぎてしまうと、シミがあらわれる原因となる。
 日やけ防止の美容法として、日やけ止めクリームと、汗と水に強いフアウソデーションを塗る方法があるが、日やけ止めクリームにも油が入っており、日光に当たると肌は油やけを起こす。汗と水に強い石油系の油を浸かったファウンデーションを塗ると、やはり油やけする。
 日やけ予防には、朝、@せっけんをよく泡立てて顔を洗う。Aせっけんを洗い流したあと、流れている水かぬるま湯を手にとり、肌をたたく。Bタオルで水気をふきとったら、無アルコール化粧水で肌をたたく。C下地に乳液を使う。D水おしろいを塗る。Eコンパクトか粉おしろいを使う。
 夏は、皮脂と汗によって肌の働きが活発になるから、正しい美容法で素肌を若返らせるチャンスである。
(12)小じわは防げるか
 小じわは、肌の水分が減少するために起きる。肌に水分を与える前に油を塗ると肌が水分を受けつけないので、夜、化粧を落としたらせっけんで洗い、水分を与え、クリームは最後に使う。クリームを塗り過ぎると皮膚の皮脂分泌が止まり、老化を早める結果となるが、目の回りは空洞になっているから、洗顔のあとすぐにクリームを塗る。クリームを塗るとき、、指先でおくようにつけ、肌を引っ張らない。
 小じわ予防には、@肌をたたいて血行をよくする。A水分を与える。Bそのあと油分を与える。
 目の回りを冷たい風にさらさないよう心がけ、クリームは動・植物系油脂のものを選ぶ。小じわが増え始めると、油っぽいクリームを目の回りに塗り、マッサージをしたくなるが、目の回りは、空洞の中にある目を薄い皮膚がおおっているだけであり、また顔の筋肉も一定の流れをもっているので、その流れに逆らうマッサージは禁物である。
 また、化粧品の塗りすぎは、毛穴を開く原因にもなり、毛穴が大きくなると顔全体がぼってりたるんでくる。毛穴を目立たなくし、目の回りに緊張感を与え、顔全体を引き締めたい場合は、毛穴に負担をかけない化粧水、乳液などを使い、緊張感を出すためにパックを使い、パッティング美容法を実行する。この美容法の効果は大きく、肌をみずみずしく若返らすことも不可能ではない。
2 証拠(甲25、36)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実を認めることができる。
(一)告著作物2は、昭和53年1月25日、原告足立が著作し、「甦った私の素顔」の題名で株式会社文理書院から発行された書籍のうちの「第三章 新しい美容理論の確立」と題する部分(86ペ一ジないし115ぺ一ジ)であり、「シミのできる原因」、「シミをとるために」、「クレンジングクリーム」、「マッサージの害」、「カブレの原因」、「にきびの原因」との題目を付した6の部分から構成されている。
(二)その大要を示せば、概ね次のとおりである。
(1)シミのできる原因黒いシミの原因としては、肝臓、内臓が悪いからと言われることがあるが、実際に内蔵の悪い人は、黒くならず、青白い顔をしている。紫外線もシミを作る原因と言われているが、紫外線にあたる割合の多い子供にはシミがないし、大人でも日光にあたる率が高い男性にはシミがない。女性でも、日光にあたることの多い20代よりも、30代を過ぎた女性にシミが現れることが多い。このように30代以上の女性にシミが多いのは、化粧品を長い期間ぬって日光にあたったからである。
 鉱物性の化粧品をぬった肌に日光があたると油やけをし、シミになるのである。オデコから頬骨とマッサージのために動いた指の部分だけが黒くなる。
 風呂上がりに肌の毛穴が開いているときにクリームを塗ると、毛穴の中に入りやすく、その上マッサージをすると毛穴のさらに奥まで入りこんでしまう。
 夜、クリームをつけてマッサージを繰り返し、日中、紫外線にあたることを周期的、長期的に繰り返すと、その部分が油やけ→シミ→黒皮症と変化する。
 特に荒性の人は、脂性の人に比べ皮下組織から出てくる脂肪の量が少ないため、皮膚の表面から塗り込まれる化粧品は、穴の中に定着しやすいので注意を要する。
 逆に、脂性の人、若い人は、分泌される脂肪、いいかえれば本来の生理用によって、塗り込まれた化粧品を表に出してしまうので、洗顔すると肌に油は残らない。
 若いころ脂性であった人も30代を過ぎると普通肌に、普通肌であった人は荒性に変わってしまう。
 シミが取れ始める期間に差が出てくるのは、脂性の人、若い人に比べ、荒性の人、高齢の人、貧血症の人は、肌の新陳代謝が遅いために取れにくいからである。
 色白の人に比べ、肌の浅黒い人は、メラニン形成細胞の働きが活発なため、日光と油が加わると、皮膚の深い部分で色素が異常分裂し、表面に出てくるため、シミが出やすい。また、せっけんで顔を洗うことが習慣になっている人は、油脂をも洗い流しているため、肌に油が定着しにくい。さらに、クレンジングクリームにふきとり化粧水がセットされている場合に、ふきとり化粧水を使うことにより、肌に油が残らない。
 皮膚の構造を見ると、うぶ毛をとりまいている毛穴の部分は、表皮がそのまま皮下組織にはいり込んでおり、表皮に分布するメラニン形成細胞も皮下組織に及んでいる。私は、毛穴から塗り込まれる油は、指の力を借りて皮膚の奥深く入りこみ、その油を含んだ色素細胞が日光を受けて異常分裂するのではないかと考えている。毛穴が深ければ、取れる期問も長くなる。
 シミのできる要因は、@マッサージの好きな人、A外出の多い人、B荒性の人、C30代以上の人、D肌の浅黒い人、E洗顔をあまりしない人、Fふきとり化粧水のセットされているクレンジングクリームを使っている人で、ふきとり化粧水をあまり使わない人である。
(2)シミをとるために次のことを守れば、一定の期問にシミが消え始める。@マッサージをやめること、A鉱物性化粧品の便用を中止すること、B朝晩、洗顔料でよく洗顔すること、Cクレンジングクリームを水溶性のものにすること。
 顔全体にシミがある場合、取れる順序は、@毛穴の大きい鼻と口の間、A左の頬骨(手の力が右の方が強いため、深くぬり込んでいる場合が多い)、B右の頬骨(皮膚の層が浅いため)、C眉間、D鼻の部分、E左の鼻の横、F右の鼻の横である。
 シミがとれにくい部分は、@オデコの高いところ、A右類<「類」は「頬」の誤〉中央から下の部分、B左頬中央から下の部分、C耳の前にできたシミの境界線である。
 長い間ぬり込んだ油脂が細胞を覆い、そこに紫外線を受けて焼き込んだのがシミとなり、黒い層をなしているのだから、シミ取りクリームや、シミ取り化粧水などでは、白い皮膚に戻すことはできない。
 黒くなっても、皮膚の深い部分には生まれたときの肌があるから、その皮膚が表に出てくるのを待たねばならない。
 シミを取りたいなら、今までの美容法を変え、鉱物性化粧品の使用を止めることである。皮膚が生きている限り、肌は復活する。
 若いころなかったソバカスが急に出てきて、斑点状のもの、境界線がはっきりしているもの、紫がかったもの、灰色がかったもの、墨汁のようなシミなどいろいろあるが、努力次第でいずれのシミも素肌復活は可能である。
(3)クレンジングクリーム
 クレンジングクリームは、化粧を落とすものであるが、ふきとり化粧水がセットされているクレンジングクリームを顔にのばし、メーキャップとなじませて水で洗っても、化粧を落とすことはできない。化粧を落とすのは、このあとに使うふきとり化粧水の方である。化粧を落とすことができない鉱物性のクレンジングクリームが化粧落とLとしてまかり通り、使用者は、それが化粧落としであると思い込んで愛用している。
 油脂が肌に残ってしまうクリームであれば、せっけんで顔を洗うしかない。肌の汚れや化粧を落とすには、洗顔料をつけて洗うことが一番良い。
(4)マッサージの害
 顔の筋肉には、割線方向と呼ばれる一定の流れがあるが、この割線方向に逆らうマッサージは、その筋肉を異常に伸ばしたり広げたりする結果、肌をたるませることになる。この肌のクルミは、底が空洞になっている目の回りには小じわとして現われる。
 マッサージの害は、@マッサージによる肌のクルミは小じわの元になる。A鉱物油脂を含むクリームを同時に使い、紫外線に当たると黒くなる。B目の回りは小じわがよりやすい。C必要以上に塗られるクリーム類で吹き出物となり化膿する。D丘疹になる。E皮膚が厚くなる。
 小じわ予防の美容法を考えると、洗顔→無アルコールの化粧水→乳液→動植物性油脂のクリームとすることにより、水々しい肌がよみがえる。
 若々しい肌を守るためにはマッサージ美容法を止めるべきである。
 若い女性は、皮脂の多い肌に余分のクリーム類を塗り、マッサージを続けると、ニキビに似た吹き出物が出始める。
 丘疹は、マッサージをよくし、日光にあたらない人に多い。毛穴の部分に油がつまって盛り上がったのものであるが、硬くなった表面の皮膚を取り除き、指で押して白い油を出し、肌をたたいて血行をよくする美容法を繰り返すと、見えなくなる。
 私は、これをパッティング美容法と名づけたが、それは、洗顔のあと無アルコールの化粧水をカット綿に含ませて肌をたたいたあと、動、植物性油脂の栄養クリームと被膜クリームを塗る。
(5)カブレの原因
 肌のカブレは、@新しく使った化粧品そのものが肌に合わない場合、A肌になじんでいた化粧品を急に別のものに変えたために、一時的にたる場合、B旅行、里帰りなど違った土地の水で顔を洗い、同じ時期に化粧品を取り替えた場合、C新しく購入した化粧品で心がはずみ、カミソリで顔をそった場合、D季節の変わり目に化粧品を取り替えたりした場合、E軟膏を塗っていた肌に、動、植物性の化粧品をぬった場合に起こる。
 カブレというのは、その化粧品の使用を中止すればすぐに治る。石油系の化粧品は、肌にぬったとき常に細胞の外にあって浸透しないため、カブレはおきにくい。逆に、動、植物性油脂のクリームは、肌にぬるとすぐに浸透するので、カブレも起こしやすい。
 赤いほてり、かゆみ、粟粒状の水泡が現れたら、まず顔を洗い、その化粧品を洗い流し、そして冷やしたタオルで顔を覆う。これでほてりが治り、同時にかゆみも止まり、水泡も消える。
 カブレを治すために軟膏をぬり、その軟膏を肌になじませてしまうと、今度は、化粧品を受けつけない肌を作ってしまう場合が多い。
 カブレがいちぼんひどく現れるのは、化粧品の代わりに軟膏を使っていた人が、その軟膏の使用を中止した場合である。軟膏を使用した期問が長ければ長いほど、このカブレもひどく、この場合、腫れが治ると、今度は厚くなっていた表皮が急にめくれはじめ、魚のウロコのようになって、何枚も何枚もの皮がはげ落ちてくる。このあとの新しい肌は生まれ変わったようにツヤツヤしてくる。
 また、黒皮症にかかると、病院でパッチテストを受ける人がいるが、これはカブレるかどうかのテストであり、黒いシミになるのは、カブレにくい鉱物性のクリーム類に原因がある。
(6)きびの原因
 にきびは、@生理作用により分泌される皮脂の量が多すぎる場合、A分泌された皮脂に、ほこりがついて化膿する場合、B洗顔をなまけた場合、Cマッサージその他によってクリーム類をぬり過ぎ、それに生理作用が負けた場合、D動物性油脂の栄養クリームを知らずにぬり過ぎた場合にできる。
 にきびが出るいちぼん大きな原因は、生理作用による。すなわち、分泌される脂肪の量が多ければ、肌は脂っぽくなり、ほこりがつきやすくなる。化膿菌がついたりすると、毛穴の部分が赤くはれてくる。
 脂っぽい肌の人は、にきび予防として常に洗顔を忘れてはならない。
 もしにきびができてしまったら、アルカリ性石鹸による洗顔は避け、肌をいじらないようにして、中性または酸性洗顔料で洗うようにする。そのままでは肌がつっぱるときは、乳液を塗る。
 石鹸で顔を洗い、にきび取りクリームや軟膏をぬり続けても、にきびが治らないのは、皮膚の生理作用をさまたげ、分泌する皮脂を毛穴の中に閉じ込めてしまうためである。また、マッサージを繰りかえしていると、その生理作用は、外からの働きかけに負けて、あふれる油脂が化膿の元凶となる。
 化粧とは本来、皮膚の新陳代謝をさまたげず、美しい肌をつくるために、ほんの少しの手助けをすることである。化粧品を使うのは、そのための補助手段である。
 マッサージ美容法に代わるパッティング美容法が、徐々に広まり始めている。この新しい美容法が、黒いシミを消して素肌復活をはかり、世界一だといわれた日本女の肌を守ってくれるにちがいない。
3 以上認定の事実に、証拠(甲24、25、36)及び弁論の全趣旨を総合すると、原告著作物1、2は、いずれも、鉱物油を成分とする化粧品をマッサージによって肌に塗り込むという従来のマッサージ美容法がシミ、ニキビ、小じわその他のさまざまな肌のトラブルの原因となっていることを、化粧品の成分、皮膚の構造・機能やその他の人体の生理作用に基づいて、特にシミの原因についての原告足立独自の見解を交えて、シミ、ニキビ、小じわその他のトラブルごとに具体的に説明し、従来のマッサージ美容法に代わる新しい美容法として、原告足立が自らの顔面黒皮症を克服した経験に基づいて考え出した「パッティング美容法」と称する美容法を推奨し、その具体的な方法や優れている理由等を写真や絵を交えながら、です・ます調で詳細かつ平易に著述したものであり、原告足立の美容に関する思想・感情を創作的に表現した著作物であると認められる。
二 被告著作物1、2について
 証拠(甲10、11)によると、被告著作物1、2は、次のとおりのものであると認められる。
1 被告著作物1は、昭和63年7月15日、「素肌美容法一美と真実を求めて」の題名で東明社から発行された書籍のうちの「私の美容理論」と題する部分(15ぺ一ジないし24ぺ一ジ)であり、冒頭部分(15ぺ一ジから17ぺ一ジ3行目までの部分)と「化粧品はお肌にとって"異物"」、「マッサージ美容法をやめましょう」、「自然の力を大切に」、「トラブル解消に"王道"はない」との題目を付した部分から構成されている。
2 被告著作物1の各部分は、概ね次のとおりのものである。
(一)冒頭部分(15ぺ一ジから17べ一ジ3行目までの部分)
 私は、私が長年にわたって研究開発した、自信をもって勧められるオリジナル化粧品の販売ルートを拡大してはというアドバイスをいただくが、それはできない。なぜなら、私の美容理論は、こうすれば肌のトラブルが解消するという単純明快なものではなく、一人ひとりの肌の状態に合わせて異なった手入れをし、そして美しい素肌を取り戻すという方法だからである。肌の状態がわからないのに、ただ化粧品を売るということはできない。私の美容法は、百人いれば百通りのアドバイスをするのが大原則だが、ここでは、基本的な考え方をいくつか説明したい。
(二)化粧品はお肌にとって"異物"
 多くの化粧晶は、石油から採取した流動パラフィンと水と界面活性剤で混ぜ合わせて香料を入れ、白い色をつけたものである。これに黒い色をつけると靴墨になる。
 最近は、「自然派」と称して植物油を使った化粧品も出回っているが、どんなに優れた化粧品も、お肌にとっては「異物」にすぎない。
 肌にとって最良のクリームは皮脂であり、私の美容法は、皮脂が十分に出る手助けをする方法と言える。私は、最も肌に害がなく、肌の活性化を計るものとして、ピアベルピア化粧品を開発したが、それさえも皮脂にはかなわない。正しい方法で洗顔して「異物」を除き、肌の求めている水分を与えてやることが、私の美容法の基本である。
(三)マッサージ美容法をやめましょう
 私は、長年、マッサージ美容法をやめましょう、と呼びかけてきた。それはまず、風呂上りなどにマッサージをすると毛穴の開いた状態になっている肌の奥深くまで「異物」である化粧品を塗り込む方法だからである。塗り込まれた化粧品は簡単には除けず、毛穴をふさぎ、皮脂の出る道を閉ざす。マッサージ美容法で動かした手の形そのままにシミが出きていた人が少なくない。また、マッサージの終わりに指でギュッと押さえるコメカミのところにホクロのように鉱物油の塊りがあった人も数多くいる。
 また、マッサージは、皮膚のたるみを助長し、シワの原因にもなる。素直に考えれば、マッサージ美容法が肌に悪いことは容易にわかるが、マッサージ美容法の神話は根強く、多くの人の肌のトラブルの原因になっている。
 肌を活性化させるためには、異物を塗り込んだり引っ張ったりするのではなく、やさしく自分の手でパッティングすれば十分である。しかし、トラブルの状態によってはバッティソグ〈「バ」は「パ」の誤〉をしてはいけないケースも多くある。
 いずれにせよ、マッサージ美容法をやめることが、私の美容法の大きなポイントである。
(四)自然の力を大切に
 人間は、体の中に「美しくなろうとする力」を持っている。例えば皮脂の分泌はその一つである。既存の化粧品や美容法は、その自然の力を抑えようとするものでしかなかった。
 例えば、私達の肌は、強い日差しに合うと日焼けするが、これは肌にとっての防衛能力が働いているからで、日差しが弱くなれば、肌は元の白さを取り戻そうとする。ところが、肌に油を塗って太陽の下で肌をさらすとどうなるか。油焼けは、日焼けのように陽光が弱くなっても元に戻ることはなく、肌が黒ずんだりシミになって残る。
 私の美容理論の基本は、人問の持つ自然の力を引き出し、少なくともその力を抑えるような手入れをしないことにある。
(五)トラブル解消に"王道"はない
 しおれかかった花には水をやるように、肌が求めているのは水分である。ところが、アルコール(エタノール)は、注射の前にアルコールで消毒すると肌がスッーとするように、肌の水分を奪いながら蒸発する。したがって、アルコール入りの化粧水は、肌が真に求めているものを奪うという逆効果しかもたらさたい。
 「学問に王道なし」と同じで、肌のトラブル解消にも「王道」はない。薬で一時的によくなることはあっても、体の中の「美しくなろうとする力」でトラブルが解消しない限り、時間がたてばトラブルが再発したり、別のトラブルの原因となる。 
 私の美容法で美しい肌を取り戻すには時間がかかる。またその間に一時的に「はね返り現象」が起こることもある。しかし、体の芯から健康で、美しい肌になれるのが、私の素肌美容法である。一生、隠し続け、ごまかし続ける悲しさを思えば、たとえ時間はかかっても、真に美しい肌に向かって1日でも早く歩み出すことが大切である。
3 被告著作物2は、平成2年6月10日、「洗い続けて美しい素肌に一マッサージ美容法をやめました」の題名で被告会社から発行された書籍のうちの「『洗い続ける美容法』について」と題する部分(11べ一ジないし29ぺ一ジ)であり、「『女性の女性による女性のための美容法』を」、「自然の力を大切に」、「化粧品はお肌にとって"異物"」、「マッサージこそトラブルの原因」、「お肌が求めているのは水分」、「洗い続けて美しい素肌を」との題目を付した各部分と後書きに相当する部分(27ぺ一ジ6行目から29ぺ一ジまでの部分)から構成されている。
4 被告著作物2の各部分は、概ね次のとおりのものである。
(一)「女性の女性による女性のための美容法」を
 ここ数年、世界、そして日本で起きた政治的に大きな動きと同じことが美容の世界にも起きている。マッサージ美容法は美しい素肌を作る方法だと思い込んできた。また、今までの化粧品は真に女性を美しくするために作られたものではない。私たちは、自分の頭で考えて、美容法と化粧品を選ばなければならない。
 「洗い続ける美容法」と愛称される私の美容法は、私が自分の顔に出来たシミを取りたい一心で開発したものである。今まで肌のために良いとされていたことを一つ一つ検証しているうち、ほとんどの女性が美しくなる方法として信じていたことが、肌のトラブルの原因になっているという悲しい事実を知った。
(二)自然の力を大切に
 人の体には、「美しくなろうとする自然の力」が備わっている。
 例えば、私たちの体からは常に皮脂が分泌されている。これは、皮膚をつややかに保ち、外気に当たっても荒れることを防ごうという作用である。強い日差しに出会うと日焼けするが、冬になれば元に戻る。
 私は、化粧品や美容法は、美しくなろうとする自然の力を補佐し、あるいはフルに引き出してやるための手段だと思う。
 ところが、既存の美容法や化粧品は、皮脂という最良のクリームを無視して、上から油を塗り込む結果、皮脂が出なくなり肌が油焼けを起こし(日焼けは元に戻るが、油焼けは戻らない)、さらに上から何かを塗るうとする。
 私の美容法によると、皮脂がたっぷり出るようになり、肌にツヤが出る。
 ただ、私の美容法に切り替えて、一時的に「跳ね返り現象」が出ることがある。特に軟膏を使っていた人の場合は、ちょっとした決断が必要である。しかし、これからの人生のことを思えば、早く決断すべきである。
(三)化粧品はお肌には"異物"
 現在の化粧品の多くは靴墨と同じものである。多くの化粧品は、鉱物油(石油)から作られ、それに白い色を混ぜるとクリームに、黒い色を混ぜると靴墨になる。化粧品が石油から作られていると知った時、私は思わず「うそ!」と叫んだ。
 最近は、植物油や動物油を使った、いわゆる「自然派」と称する化粧品も出回っているが、私は、私の開発した化粧品も含めて、化粧品はお肌にとって「異物」であると思う。したがって、私は私の化粧品に対しても自然化粧品という表現は使わない。
 しかし、化粧品も、「美しくなろうとする自然の力」を補佐し、フルに引き出せるものであれば、価値はある。また、例えば日差しから肌を守るための化粧品も必要である。
 つまり、化粧品は肌にとって異物であることを知ったうえで、効果的に必要なものを使うべきである。
(四)マッサージこそトラブルの原因
 私は10年余り前から「マッサージ美容法をやめましょう。」と訴え続けてきた。
 マッサージ美容法はなぜ肌の敵なのか。それはまず、化粧品という「異物」を毛穴の奥深くまで塗り込む作業だからである。しかも、風呂上りの毛穴の開いたときに塗り込んでいく。皮膚の底に入った化粧品は、シミの層になっていく。
 私は、今までに、マッサージの指の動きそのままにシミが出ている人を数え切れたいほど見てきた。また、指を止めてギュッと押えるコメカミのところに大きなホクロのようなシミが出来ていた人もたくさんいる。
 シミだけでなく、毛穴を塞ぎ、皮脂を出られなくして乾燥肌になる人もいる。
 マッサージ美容法の害はそれだけでなく、マッサージは、皮膚を引っ張ったり縮めたりするので、肌のたるみ、シワの原因になる。
 肌の新陳代謝を良くするためなら、マッサージよりも、手のひらでパチパチたたいてやる方が効果的である。ただし、それもしてはいけない肌の状態もあるので注意が必要である。
 いずれにせよ、マッサージ美容法こそ肌のトラブルの大きな原因である。
 毎年春になると、若い人を集めて美容講習会が開かれ、マッサージの仕方がていねいに教えられていて、私は悲しい思いをさせられている。
(五)お肌が求めているのは水分
 しおれかかった花に水をやるように、肌が求めているのは、油ではなく水分である。ところが、化粧水をたっぷり使えば水分の補給ができるのかといえば「否」である。なぜなら、ほとんどの化粧水にはアルコールが含まれているからである。注射の前にアルコールで消毒すると肌がスーツとするように、アルコールは、水分を奪いながら蒸発する。したがって、アルコール入りの化粧水では、水分の補給には何の役にも立たない。
(六)洗い続けて美しい素肌を
 私の「洗い続ける素肌美容法」は、「正しい洗顔」にウェイトを置き、そのため市販のソープでは物足りたくてピアベルピアソープを開発した。
 洗顔は、化粧品という「異物」が毛穴の奥深くたまってできたシミを洗って落とすだけでなく、シミや吹き出物などお肌のトラブルを防止するためにも欠かせない。
(七)後書きに相当する部分(27ぺ一ジ6行目から29べ一ジまでの部分)
 以上は、私の美容法の「最大公約数」であり、すべてではない。具体的な美容法になると、肌の性質や状態により手入れの方法は千差万別である。私は、最高の化粧品と自信をもっているピアベルピア化粧品も、その人の肌の状態を見て、また過去にどんな手入れをしてきたかを聞いてからでなければ売らない。これは、商売としては効率の悪いやり方だが、美容法があっての化粧品であり、化粧品だけが一人歩きすることは、私には考えられない。
 お肌のトラブル解消に近道はない。上からチョコッと塗っただけではシミやニキビは治らない。私自身シミを取るために何年もかかった。しかし、私の美容法は、トラブル解消のための最善の道である。
 今後とも私は、肌のトラブルで悩む人のために全力を尽くす。
三 著作権侵害の成否
 被告著作物1、2が原告著作物1、2を翻案したものということができるためには、被告著作物1、2の著作者が、原告著作物1、2に依拠して被告著作物1、2を著作し、かつ、原告著作物1、2における表現形式上の本質的特徴を被告著作物1、2から直接感得することができることが必要である。
 そこで、まず、原告著作物1、2の表現形式上の本質的特徴を被告著作物1、2から直接感得することができるかどうかについて判断する。
1 被告著作物1について
 前記一、二認定の事実によると、被告著作物1と原告著作物1、2の全体の構成、各項目の表題及び配列は、類似したものとは認められない。
 そこで、以下、右認定の事実に加え、甲9(被告著作物1)と甲24(原告著作物1)及び甲25(原告著作物2)とを対比して、被告著作物1の各項目について検討する。
(一)原告著作物1の「あなたは素肌の美しさを忘れていませんか」には、原告足立の案出した美容法が美しい素肌をとり戻す美容法であることが記述されており、美しい素肌を取り戻す美容法を推奨する点で被告著作物1の冒頭部分(15べ一ジから17べ一ジ3行目までの部分)と共通する。
 しかし、被告著作物1の冒頭部分の記述は、右の点を除いては、原告著作物1、2と異なっているうえ、素肌を美しくするためにどのようにすべきかを論じた著書は、原告著作物1、2よりも前に存したものと認められる(甲57、乙18)から、美しい素肌を取り戻す美容法というのも、原告著作物1に特有の表現であるとまでは認められない。
(二)被告著作物1の「化粧品はお肌には"異物"」では、まず、多くの化粧品が石油から作られていることとその具体的な成分及びどんなに優れた化粧品も肌には異物であることが記述されている。これに対し、作物1の「シミはどうしてできるのか」にも、化粧品に鉱物油が含まれること、鉱物油のクリームは害があるとの記述があり、原告著作物2の「シミのできる原因」にも鉱物性の化粧品の害についての記述がある。
 しかし、原告著作物1、2には、石油から作られる化粧品の具体的な成分の指摘はないうえ、優れた化粧品でも肌には異物であるとの記述もない。また、原告著作物1、2の右部分では、鉱物油が含まれる化粧品の害について具体的に記述されているのに対し、被告著作物1の右部分には、そのような具体的な害についての記述はない。
 次に、右「化粧品はお肌には"異物"」には、皮脂が最良のクリームであること、洗顔で「異物」を除き、肌に水分を与えるのが美容法の基本であることが記述されている。これに対し、原告著作物1では、「皮膚の構造を知る」に、皮脂が減少すると肌荒れが起こること、「細胞は生まれ変わる」に、皮脂が押し上げてシミが消えること、「パッティング美容法とは」に、洗顔が美しい素肌の決め手となること、「洗ったあとは」に、流れているお湯か水、無アルコールの化粧水で肌をたたくこと、「小じわは防げるか」に、小じわの予防には肌に水分を与えることが必要であることが、また、原告著作物2では、「シミのできる原因」に、皮脂が塗り込まれた化粧品を表に出すことが、それぞれ記述されている。
 しかし、被告著作物1の右部分では、化粧晶との対比で皮脂が最良のクリームであると記述されているのに対し、原告著作物1、2の皮脂についての記述は、皮膚の構造や生理的な機能の説明の中の一つとして、あるいは、シミをとる自然の力として述べられており、両者は異なっている。また、洗顔をして化粧品を洗い落とし、肌に水分を与えるという美容法は、原告著作物1、2より前から知られていた方法であると認められる(甲57、乙14、18、乙55の1ないし3)ところ、被告著作物1は、これを端的に表現しているのに対し、原告著作物1の洗顔及び肌に水分を与えるとの記述は、パッティング美容法の具体的な手順、内容の説明の中での一過程として述べられているのであり、その取り上げ方は異なっている。
(三)被告著作物1の「マッサージ美容法をやめましょう」では、マッサージ美容法の害として、風呂上りなどにマッサージをすると毛穴の開いた状態になっている肌の奥深くまで「異物」である化粧品を塗り込むこと、塗り込まれた化粧品は簡単には除けず、毛穴をふさぎ、皮脂の出る道を閉ざすこと、マッサージ美容法で動かした手の形そのままにシミができていた人が少なくないこと、また、マッサージの終わりに指でギュッと押さえるコメカミのところにホクロのように鉱物油の塊りがあった人も数多くいることが記述されている。これに対し、原告著作物1の「シミはどうしてできるのか」には、シミの原因は、石油で作られた化粧品を毛穴の奥深くまでしみ込ませるマッサージであり、マッサージをした指が動いたとおりに黒くなっていく、シミはその人の指の動いたとおりに着色するという記述があり、原告著作物2の「シミのできる原因」には、風呂上がりに肌の毛穴が開いているときにクリームを塗ると、毛穴の中に入りやすく、その上マッサージをすると毛穴のさらに奥まで入り込んでしまう、特に荒性の人は、脂性の人に比べ皮下組織から出てくる脂肪が少ないため、皮膚の表面から塗り込まれる化粧品は毛穴の中に定着しやすいという記述がある。被告著作物1の右部分と原告著作物1、2の右部分は、マッサージの害として、特に風呂上がりなど毛穴の開いたときのマッサージが化粧品を肌の奥深くに入り込ませ、マッサージで動かした指の形にシミができると記述している点で共通する。
 しかし、原告著作物1、2の右部分では、シミができる原因を記述する中で右の記述をしているのに対し、被告著作物1の右部分では、著者がマッサージ美容法をやめるよう呼びかけてきた理由として、右の記述がされているのであり、その文言等の具体的な表現は異なっているうえ、被告著作物1には、「マッサージの終わりに指でギュッと押えるコメカミのところにホクロのように鉱物油の塊りがあった人も数多くいる」といった原告著作物にはない記述もある。また、マッサージが化粧品を毛穴の深くまで入り込ませる害があるというのは美容法に関する一種の見解であり、これ自体は著作権法の保護を受けるわけではない。そして、この点について原告著作物と被告著作物が同様の見解に立っている以上、そのような見解を述べるという意味で原告著作物1、2と被告著作物1が類似することは避けられないところである。
 また、右「マッサージ美容法をやめましょう」では、マッサージが皮膚のたるみ、シワの原因にもなると記述され、原告著作物2の「マッサージの害」にも、マッサージが肌をたるませ、小じわの原因になるとの記述があり、この点で両者は共通する。 
 しかし、原告著作物2の右部分は、目の回りの構造、顔の筋肉の構造を説明した上で、筋肉の流れに逆らうマッサージが肌をたるませ、目の回りの小じわになるという、小じわの原因について順序立てた記述となっており、論理の流れが表現されているのに対し、被告著作物1の右部分では、単にマッサージが皮膚をたるませ、シワの原因になるとするだけで、原告著作物2のような論理の流れが表現されておらず、両者は異なっている。
 さらに、右「マッサージ美容法をやめましょう」には、肌の活性化にはパッティングで十分であり、マッサージ美容法をやめることがポイントであると記述されている。これに対して、原告著作物1の「パッティング美容法とは」及び「パッティング美容法」でもパッティング美容法を推奨する記述があるが、右記述は、原告足立の案出したパッティング美容法の具体的な手順、内容を順序立てて説明するという形式になっており、単にパッティングをすれば十分であると述べるのみである被告著作物1とは、異なっている。また、マッサージ美容法をやめるというのは、美容法における一つの立場を端的に表現したものであり、告著作物1、2にも同旨の表現が見られるが、それ自体としては創作的な表現とは言い難い。
(四)被告著作物1の「自然の力を大切に」には、人間が「美しくなろうとする自然の力」を持っているが、既存の化粧品や美容法は、自然の力を抑えようとするものでしかなかったという記述があるが、原告著作物1、2にはこれと同一又は類似する表現は見当たらたい。
 また、「自然の力を大切に」には、日焼けと油焼けは異なり、油焼けがシミになる、私の美容法の基本は、人間の持つ力を引き出すことであると記述されている。これに対し、原告著作物1の「シミはどうしてできるのか」でも、鉱物油のクリームを塗った肌に日光が当たると、日焼けとは違った油焼けを起こし、油焼けはシミに、シミは黒皮症に変化するという記述があり、原告著作物2の「シミのできる原因」にも、鉱物油のクリームを塗った肌に日光が当たると、油焼けし、シミになるとの記述がある。被告著作物1の右部分と原告著作物1の右部分では、日焼けと油焼けが違うこと、油を塗った肌に日光が当たると油焼けを起こすこと、油焼けがシミの原因であることという各点において共通し、被告著作物1の右部分と原告著作物2の右部分では、油を塗った肌に日光が当たると油焼けし、シミになるとの点において共通する。
 しかし、原告著作物1、2の右部分では、シミができる原因を記述する中で右の記述をしているのに対し、被告著作物1の右部分では、自然の力を抑えるような手入れの例として右の記述をしているのであり、その文言等の具体的な表現も異なっている。また、化粧品中の油分と日光の紫外線によって油焼けを起こし、それがシミの原因となることについては、原告著作物1、2より前に知られていたことであると認められる(乙13の1、乙55の1ないし3)うえ、油を塗った肌に日光が当たると油焼けしシミになることは、シミのできる原因を説明する一種のアイデアであり、それ自体は著作権法により保護される対象ではなく、右アイデアを表現しようとすれば、その表現は、右のアイデアを表現するという意味において類似したものとならざるを得ない。
(五)被告著作物1の「トラブル解消に"王道"はない」には、肌は水分を求めているが、アルコールは、注射の前にアルコールで消毒すると肌がスーッとするように、肌の水分を奪いながら蒸発するから、アルコール入りの化粧水は、肌が真に求めているものを奪うという逆効果しかもたらさないという記述がある。これに対し、原告著作物1の「洗ったあとは」にも、洗顔のあと、水気をタオルでふきとったら、無アルコールの化粧水を使って肌をたたく、特にアルコールを含まない化粧水を使うのは、アルコールは蒸発する際、肌の水分を奪ってしまうからであるという記述があり、両者はアルコール入りの化粧水を使うと肌の水分を奪うことになり美容上好ましくないという考え方を記述している点で共通する。
 しかし、原告著作物1の右部分では、パッティング美容法の手順を説明する中で右の記述がされているのに対し、被告著作物1の右部分では、肌が求めているのは水分であることを記述する中で右の記述がされており、被告著作物1の右部分では、注射の例を引いているが、原告著作物1の右部分ではこのような例は引かれていないなど、異なっている。また、アルコールが蒸発するとき肌の水分を奪うのでアルコール入りの化粧水を使うと肌の水分を奪うことになり美容上好ましくたいという考え方は美容法についての一種のアイデアであり、それ自体は著作権法の保護を受けないところ、同一のアイデアを表現しているという意味において、両者が類似することは避けられない。
 また、右「トラブル解消に"王道"はない」には、肌のトラブル解消に「王道」はない、薬で一時的によくなることはあっても、体の中の「美しくなろうとする力」でトラブルが解消しない限り、時間がたてば再発したり、別のトラブルの原因となるという記述があるが、原告著作物1、2にそれと同一又は類似の表現はない。
 さらに、右「トラブル解消に"王道"はない」には、私の美容法では美しい肌を取り戻すには時間がかかり、一時的に「はね返り現象」が起こることもあるが、これからの人生のことを思えば、たとえ時間はかかっても、真に美しい肌に向かって1日でも早く歩み出すことが大切であるという記述がある。これに対し、原告著作物1の「素肌復活への道」には、皮膚が長い間知らずに塗り込んだ化粧品によって害を受けていたとしたら、その復活には一定の期間を必要とするが、私たちの細胞は生きており、復活しようと懸命に働いている、素肌復活は1日でも早い方がいいが、パッティング美容法により、あせらず根気よく時期を待たなければならないという記述がある。両者は、それぞれの推奨する美容法の効果が現れるまで一定期間を要するという点で共通するが、これは事実をありのままに述べたにすぎず、それ以外には、同一又は類似する点はない。
2 被告著作物2について
 前記一、二認定の事実によると、被告著作物2と原告著作物1、2の全体の構成、各項目の表題及び配列は、類似したものとは認められない。
 そこで、以下、右認定の事実に加え、甲10(被告著作物2)と甲24(原告著作物1)及び甲25(原告著作物2)とを対比して、被告著作物2の各項目について検討する。
(一)告著作物2の「『女性の女性による女性のための美容法』を」には、これまでの美容法と化粧品が実は肌のトラブルの原因だったことを記述している部分があり、その点で原告著作物1の「あなたは素肌の美しさを忘れていませんか」と共通する部分がある。
 ところで被告著作物2及び原告著作物1、2は、ともにこれまでの化粧品及び美容法を否定して新しい化粧品、美容法を提唱することを主題とするものであり、右「『女性の女性による女性のための美容法』を」と右「あなたは素肌の美しさを忘れていませんか」は、そのような主題を示すものであるところ、このような主題自体は特に目新しいものではないうえ、右主題が共通であるという点を除いては、両者に類似する点は認められない。
(二)被告著作物2の「自然の力を大切に」には、人には「美しくなろうとする自然の力」があり、その例として皮脂について記述がある。これに対し、原告被告1、2〈「被告」は「著作物」の誤〉には、「美しくなろうとする自然の力」についての記述はない。また、原告著作物1の「皮膚の構造を知る」には、皮脂についての記述があるが、これは生理的な機能の解説の一部として述べられていて、被告著作物2とは項目の取り上げ方が異なるし、具体的な表現も異なっている。
 また、右「自然の力を大切に」には、既存の美容法や化粧品は、皮脂という最良のクリームを無視して、上から油を塗り込む結果、皮脂がでなくなり、肌が油焼けを起こし(日焼けは元に戻るが、油焼けは戻らない)、さらに上から何かを塗るうとするものであること、私の美容法によると、皮脂がたっぷり出るようになり、肌にツヤが出ること、ただ、私の美容法に切り替えて、一時的に「跳ね返り現象」が出ることがあることが記述されている。これに対し、原告著作物1、2には「跳ね返り現象」に関する記述はない。また、原告著作物1の「シミはどうしてできるか」には、鉱物油のクリームを塗った肌に日光が当たると、日焼けとは違った油焼けを起こし、シミになるという記述があり、原告著作物2の「シミのできる原因」にも鉱物油のクリームを塗った肌に日光が当たると、油焼けし、シミになるとの記述がある。被告著作物2の右部分と原告著作物1の右部分は、日焼けと油焼けが違うこと、油を塗った肌に日光が当たると油焼けを起こすという内容において共通し、被告著作物2の右部分と原告著作物2の右部分では、油を塗った肌に日光が当たると油焼けするとの点において共通するが、これらの点については、右1(四)において、同様の共通点について述べたのと同様のことをいうことができる。
(三)被告著作物2の「化粧品はお肌には"異物"」は、現在の化粧品の多くは鉱物油(石油)から作られ、どんなに優れた化粧品も肌には「異物」であるが、化粧品にも価値はあり、異物であることを知って効果的に使うべきであるとの記述があるが、原告著作物1、2には、化粧品にも価値はあり、異物であることを知って効果的に使うべきである旨の記述はない。また、原告著作物1の「シミはどうしてできるのか」には化粧品に鉱物油が含まれることと鉱物油のクリームの害についての記述があり、原告著作物2の「シミのできる原因」にも鉱物性の化粧品の害についての記述があるが、原告著作物1、2の右部分では、鉱物油が含まれる化粧品の害について具体的に記述されているのに対し、被告著作物2の右部分には、そのような具体的な害についての記述はなく、どんなに優れた化粧品も肌には「異物」であると述べるのみであって、異なっている。
(四)被告著作物2の「マッサージこそトラブルの原因」には、マッサージ美容法の害について、マッサージ美容法は、化粧品という「異物」を毛穴の奥深くまで塗り込み、しかも、風呂上りの毛穴の開いたときに塗り込んでいくこと、皮膚の底に入った化粧品は、シミの層になっていくこと、マッサージの指の動きそのままにシミが出ている人を数え切れないほど見てきたこと、指を止めて押えるコメカミのところに大きなホクロのようなシミが出来ていた人もたくさんいること、シミだけでなく、毛穴を塞ぎ、皮脂を出られなくあして乾燥肌になる人もいること、マッサージは、皮膚を引っ張ったり縮めたりするので、肌のたるみ、シワの原因になることが記述されている。これに対し、原告著作物1の「シミはどうしてできるのか」には、シミの原因は、石油で作られた化粧品を毛穴の奥深くまでしみ込ませるマッサージであり、マッサージをた指が動いたとおりに黒くなっていく、シミはその人の指の動いたとおりに着色する、表から見てシミだとわかる場合は、その奥に層ができているという記述があり、原告著作物2の「シミのできる原因」にも、風呂上がりに肌の毛穴が開いているときにクリームを塗ると、毛穴の中に入りやすく、その上マッサージをすると毛穴のさらに奥まで入り込んでしまう、特に荒性の人は、脂性の人に比べ皮下組織から出てくる脂肪が少ないため、皮膚の表面から塗り込まれる化粧品は毛穴の中に定着Lやすいという記述がある。また、原告著作物2の「マッサージの害」にも、マッサージが肌をたるませ、小じわの原因になるとの記述がある。両者は、マッサージの害として、特に風呂上がりなど毛穴の開いたときのマッサージが化粧品を肌の奥深くに入り込ませ、シミの層になること、マッサージで動かした指の形にシミができることを記述する点で共通するが、この点については、右1(三)で同様の共通点について述べたのと同様のことをいうことができる。
 また、右「マッサージこそトラブルの原因」には、肌の活性化には、マッサージよりもパッティングが効果的であると記述されている。これに対し、原告著作物1の「パッティング美容法とは」及び「パッティング美容法」でもパッティング美容法を推奨する記述があるが、この記述は、原告足立の案出したパッティング美容法の具体的な手順、内容を順序立てて説明するという表現の形式になっており、単にパッティングが効果的であると述べるのみの被告著作物2の右部分とは、異なっている。
(五)被告著作物2の「お肌が求めているのは水分」の記述については、右1(五)第1段及び第2段で述べたところが当てはまる。
(六)被告著作物2の「洗い続けて美しい素肌を」には、私の「洗い続ける素肌美容法」は、「正しい洗顔」にウェイトを置き、そのため市販のソープでは物足りなくてピアベルピアソープを開発したこと、洗顔は、化粧品という「異物」が毛穴の奥深くたまってできたシミを洗って落とすだけでなく、シミや吹き出物などお肌のトラブルを防止するためにも欠かせないことが記述されているが、原告著作物1、2には、これと同一又は類似した記述はない。
 原告著作物1、2でも、被告著作物2と同様に洗顔の重要性を説いているが、そのような考え方自体は著作権法の保護を受けるものではない上、美容法において洗顔が重要であるということは、原告著作物1、2より前に知られていたものと認められる(乙18、乙55の1ないし3)。
(七)被告著作物2の後書きに相当する部分(27ぺ一ジ6行目から29ぺ一ジまでの部分)については、原告著作物1、2に、これと同一又は類似した記述はない。
3 以上認定判断したとおり、被告著作物1、2と原告著作物1、2とは、全体の構成、各項目の表題及び配列において相違しており、各項目ごとに比べても、一部共通する部分があるものの、それは、原告著作物1、2と被告著作物1、2では、その基となる美容法が同一又は類似することによるものであり、また、共通する部分も、その取り上げ方、叙述の順序、論理の流れ及び文言等の具体的な表現が相違している。したがって、被告著作物1、2からは、原告著作物1、2の表現形式上の本質的特徴を直接感得することはできず、被告著作物1、2は、原告著作物1、2を翻案したものとは認められない。
4 よって、その余の点について判断するまでもなく、被告著作物1及び2に関する請求はいずれも理由がない。
第3 請求原因三(著作権侵害二)について
一 請求原因三1及び同2の事実並びに同3のうち、被告高橋が被告会社の代表取締役として、自ら又は被告会社の従業員等を指揮して被告著作物3を出版したことがあることは、当事者間に争いがない。
二 原告著作物3、4とその著作物性
1 原告著作物3について
(一)証拠(甲16、36)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実を認めることができる。
(1)原告著作物3は、昭和55年1月ごろ、東京素肌美容センター出版局から発行された「素肌復活美容ガイド特製版」と題する20ぺ一ジの横長の小冊子であり、全体の構成は、1ぺ一ジ目に「スキンフレッシャー」という名称の洗顔用品の広告があり、2べ一ジから19べ一ジまでは、1ぺ一ジに1項目ずつ、「皮膚の構造」、「しみの要因」、「同じ化粧品・美容法でシミのできる人とできない人がいるのはなぜ?」、「マッサージの害」、「しみの取れやすい部分浮き上がってくる部分」、「しみを取るために」、「化粧品の好みと肌の関係」、「小じわと美容法」、「にきびの要因」、「にきびの予防と手当」、「化粧品の塗りすぎと若い肌」、「丘疹」、「軟膏と皮膚」、「日やけ止め」、「化粧品カブレ」、「美しい素肌のために」、「パッティング美容法」、「毛髪」と題する18項目の説明部分があり、最後のペ一ジには素肌復活美容法を推奨する文章とイラストが記載されている。
(2)原告著作物3の表紙及び目次は、別紙被告著作物3と原告著作物3との対照表(以下「対照表@」という。)の1枚目右側部分及び2枚目右側部分のとおりであり、また、18の項目はいずれも上部に表題を記載し、その表題に関する簡潔な説明文とイラストで構成されており、その内容は次のとおりである。
 「皮膚の構造」には対照表@の3枚目右側部分の説明文とイラスト、「しみの要因」には対照表@の5枚目右側部分の説明文とイラスト、「同じ化粧品・美容法でシミのできる人とできない人がいるのはなぜ?」には対照表@の6枚目右側上段部分の説明文とイラスト、「マッサージの害」には対照表@の10枚目右側上段部分の説明文とイラスト、「しみの取れやすい部分浮き上がってくる部分」には対照表@の8枚目右側部分の説明文とイラスト、「しみを取るために」には対照表@の7枚目右側部分の説明文とイラスト、「化粧品の好みと肌の関係」には対照表@の6枚目右側下段部分の説明文とイラスト、「小じわと美容法」には対照表@の10枚目右側下段部分の説明文とイラスト、「にきびの要因」には対照表@の9枚目右側上段部分の説明文とイラスト、「にきびの予防と手当」には対照表@の9枚目右側下段部分の説明文とイラスト、「化粧品の塗りすぎと若い肌」には対照表@の4枚目右側の赤線で囲まれた部分の説明文とイラスト、「丘疹」には毛穴に油がつまって盛り上がった様子を描いたイラストと丘疹の原因及び特徴についての説明文、「軟膏と皮膚」には軟膏の害を指摘した女性の顔のイラストと対照表@の4枚目右側の青線で囲まれた部分の説明文、「日やけ止め」には対照表@の11枚目右側部分の説明文とイラスト、「化粧品カブレ」にはかぶれの原因についての説明文及び対照表@の12枚目右側部分の説明文とイラスト、「美しい素肌のために」には、化粧品の種類の列挙とそれらが不要又は必要な理由の説明文、「パッティング美容法」には、植物の播種から成長の段階を示すイラストと成長した植物の葉に例えたマッサージとパッティング美容法との相違の説明文、「毛髪」には、毛穴の断面図に各部位の名称を付したイラストと毛髪及びその手入れ方法についての説明文がそれぞれ記載されている。
(二)右認定の事実に甲16号証と弁論の全趣旨を総合すると、原告著作物3は、原告足立の提唱するパッティング美容法及びその基本となる考え方の要点を、イラストと文を組み合わせ、文の配置や順序にも工夫して、簡潔かつ分かり易く記載したものと認められるから、原告足立の美容に関する思想を創作的に表現した著作物であると認めることができる。
2  原告著作物4について
(一) 証拠(甲6、36)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実を認めることができる。
(1)原告著作物4は、昭和54年6月1日に東京素肌美容センター出版局から発行された「素肌復活美容講習会のためのプリトーク」と題する小冊子であり、「素肌復活美容講習会」、「しみ」、「こじわ」、「にきび」、「パッティング美容法」と題する部分から構成されている。
(2)原告著作物4の各部分は、次のとおりである。
 「素肌復活美容講習会」では、従来のマッサージ美容法を否定するパッティング美容法の紹介、しみの原因が石油で作られた化粧品とマッサージであること、皮膚の構造についての説明と対照表@の3枚目右側部分のイラストが、「しみ」では、しみの七つの要因とマッサージで油を塗り込み、日光に当たるとしみができることについての説明、対照表@の5枚目右側部分及び6枚目右側上段部分の説明文とイラストが、「こじわ」では、顔筋肉の流れとそれに逆らうマッサージが肌をたるませ、目の回りの小じわの原因になること、小じわの予防法、対照表@の10枚目右側下段部分の説明文とイラストが、「にきび」では、にきびは脂性の人にできやすいが、化粧品の塗り過ぎでできるのは吹き出物であること、にきびの治療に使われる軟膏の害についての説明、対照表@の9枚目右側上段部分の説明文とイラスト、対照表@の9枚目右側下段部分の説明文とイラスト、対照表@の4枚目右側の赤線で囲まれた部分の説明文とイラスト、軟膏の害を指摘した女性の顔のイラストと対照表@の4枚目右側の青線で囲まれた部分の説明文が、「パッティング美容法」では、パッティング美容法の具体的な手順と方法、化粧品かぶれの原因と症状、対照表@の12枚目右側部分の説明文とイラストがそれぞれ記載されている。
(二)右認定の事実に甲6号証と弁論の全趣旨を総合すると、原告著作物4は、原告足立の提唱するパッティング美容法及びその基本となる考え方の要点を、イラストと文章を組み合わせて、簡潔かつ分かり易く表わしており、原告足立の美容に関する思想を創作的に表現した著作物であると認めることができる。
三 被告著作物3と原告著作物3、4の著作権侵害の成否
1 証拠(甲17)によると、被告著作物3は12ぺ一ジの横長の小冊子であって、表紙、目次及び対照表@の左側部分(1ぺ一ジないし10ぺ一ジ)からなり、11ぺ一ジ及び12ぺ一ジには副腎皮質ホルモン外用剤による皮膚障害を報じた朝日新聞の昭和57年5月27日及び同年7月22日の記事がそのまま掲載されていることが認められる。
2(一)まず、対照表@に基づき、被告著作物3が原告著作物3を複製又は翻案したと認められるかどうかについて判断するが、対照表@の各対照箇所を見ても、両者の表現が同一であるとは認められないから、被告著作物3が原告著作物3を複製したものであるとは認められない。
 そこで、翻案の点について判断することとするが、前記説示のとおり、翻案が認められるためには、原告著作物3に依拠して被告著作物3が作成され、かつ、原告著作物3の表現形式上の本質的特徴を被告著作物3から直接感得することができることが必要である。
(二)原告著作物3の表現形式上の本質的特徴を被告著作物3から直接感得することができるかどうかについて、対照表@の各対照箇所ごとに検討するに、次に述べた理由により、いずれの箇所についても、原告著作物3の表現形式上の本質的特徴を被告著作物3から直接感得することができるとまで認めることはできない。
(1)対照表@の1枚目及び2枚目は表紙及び目次の対比であるが、題名及び目次には著作物性を認めることはできないうえ、題名並びに目次の項目名及びその配列は、大きく異なっている。
(2)対照表@の3枚目は、皮膚の断面図に各部位の名称を付したという点では共通するが、図の描き方も名称を付した部位も、大きく異なっている。
(3)対照表@の4枚目は、被告著作物3が一つの箇所の記載であり、肌に問題が起こる原因を1から5まで短い言葉で列挙しているのみであるのに対し、原告著作物3は三つの箇所の記載を合わせたものであり、にきびの要因、しみの要因、化粧品の塗り過ぎの害、軟膏の害のそれぞれについての具体的な説明になっており、両者は大きく異なっている。
(4)対照表@の5枚目は、表題の付け方、油の種類を横書きで縦に並べている点、マッサージ、日光から油やけ、黒皮症へと矢印でつないでいる点、右側の四角の囲みの中に、しみの原因(要因)を列挙し、それを「……人」と表している点において類似している点が存する。しかし、原告著作物3と被告著作物3を比べた場合、その表題名やその記載方法は同一ではなく、油の種類の表記の順序や文字の大きさも同一ではない。また、原告著作物3では、鉱物油を最後に表記したうえ、それから矢印をその下の皮膚のイラストに伸ばし、右イラスト及びそれに記載された説明と一体となって鉱物油の害について説明しているのに対し、被告著作物3では、単に油の種類を列挙しているのみであり、皮膚のイラストやそれに記載された説明は全く存しない。さらに、しみの原因(要因)についての記載は、異なる言葉が用いられており、その意味するところも必ずしも同一ではない。原告著作物3では、マッサージ、日光から油やけ、黒皮症へと矢印でつないでいる部分は、小さい文字で記載されており、右対照部分全体の中で占める割合は小さいうえ、被告著作物3では、矢印でつないでいる文字の後ろに楕円形の模様が付いているのに対し、原告著作物3には、それがなく、矢印の形状も異なり、文言も必ずしも同じではない。
(5)対照表@の6枚目は、被告著作物3が一つの箇所であるのに対し、原告著作物3は二つの箇所を合わせたものであり、項目の表題も異なる。また、しみのできる場合とできない場合とを対比している点では共通するが、イラストや説明文が全く異なっている。
(6)対照表@の7枚目は、表題が一部共通であり、イラストと説明文の配置の仕方が似ており、説明文の内容が一部共通しているが、イラストの描き方は全く異なり、また、説明文の具体的な表現もかなり異なっている。
(7)対照表@の8枚目は、被告著作物3がしみの取れる順番を1から5まで列挙しているのに対し、原告著作物3では、女性の顔の部位と説明文を線で結び、取れやすい部分、浮いてくる部分、できない部分に分けて説明しており、両者は異なっている。
(8)対照表@の9枚目は、両者ともにきびに関するという点で共通するが、被告著作物3が一つの箇所であるのに対し、原告著作物3は2箇所を合わせたものであり、イラストも全く異なっている。また、説明文の内容及び文言も異なっている。
(9)対照表@の10枚目は、マッサージの害に関するものであり、女性の左向きの横顔に筋肉の流れが描かれている点で共通するが、被告著作物3が一つの箇所であるのに対し、原告著作物3は二つの箇所を合わせたものである。また、原告著作物3には他にもイラストがあり、顔の筋肉の流れの説明があるが、被告著作物3にはそれらがなく、他の説明文の内容も異なっている。
(10)対照表@の11枚目は、両者ともに、上段と下段の2列に分け、上段では油やけ、しみに至る場合が、下段では日やけの場合が矢印で進むように表現されている。しかし、原告著作物3では、化粧品の容器や石?の絵が大きく描かれており、それらが矢印で結ばれているのに対し、被告著作物3では、楕円形の模様の上に文字が書かれ、それらが矢印で結ばれており、書かれている文言も異なる。また、被告著作物3では、真ん中に「単なる日やけは元にもどる」と大きく記載されているのに対し、原告著作物3には、このような記載は全くない。
(11)対照表@の12枚目は、両者が化粧品かぶれを防ぐためのパッチテストに関する点で共通するが、原告著作物3は一つの箇所の右半分だけを取り出しており、左半分には化粧品かぶれの原因の説明や症状が記載されているが、被告著作物3にはそれらの記載がない。また、パッチテストのイラストもテストをする腕の位置や説明文の内容も異なっている。
3 次に、被告著作物3が原告著作物4を複製又は翻案したと認められるかどうかについて判断するが、別紙被告著作物3と原告著作物4との対照表の対照箇所を見ても、両者の表現が同一であるとは認められないから、被告著作物3が原告著作物4を複製したものであるとは認められない。
 そこで、翻案の点について判断することとするが、前記説示のとおり、翻案が認められるためには、原告著作物4に依拠して被告著作物3が作成され、かつ、原告著作物4の表現形式上の本質的特徴を被告著作物3から直接感得することができることが必要である。
 原告著作物4の表現形式上の本質的特徴を被告著作物3から直接感得することができるかどうかを、別紙被告著作物3と原告著作物4との対照表の対照箇所について判断するに、被告著作物3では、まず目の下の構造を述べ、それから、そこに小じわができやすいことを述べているのに対し、原告著作物4では、顔の筋肉には流れがあることを説明した後、流れにさからって指を動かすと肌がたるむと述べ、特に目の回りは皮膚をのばさないように注意しなければならないと述べているのであって、全体の構成が異なる上、文言等の具体的な表現も大きく異なっており、原告著作物4の表現形式上の本質的特徴を被告著作物3から直接感得することができるとはいえない。
4 以上のとおり、被告著作物3は、原告著作物3、4を翻案したものとは認められないから、その余の点について判断するまでもなく、被告著作物3に関する請求はいずれも理由がない。
第4 請求原因四(著作権侵害三)について
一 請求原因四1のうち、被告高橋が被告会社の代表取締役として、被告会社従業員に広告誌「ガリヤ」平成4年4月号に被告会社の広告を掲載するよう指揮したことは当事者間に争いがない。
 証拠(甲18)によると、広告誌「ガリヤ」平成4年4月号に被告会社の広告が掲載されたこと、右広告は、被告会社の取締役である後藤浩子と内園美千代の対談を掲載するという形式であること、右対談中の後藤浩子の発言として被告著作物4があること、以上の事実を認めることができる。
二 被告著作物4が原告著作物1及び原告著作物4を複製又は翻案したものであるかどうかについて判断する。
1 まず、別紙被告著作物4と原告著作物1及び4との対照表(以下「対照表A」という。)の各対照箇所を見ても、両者の表現が同一であるとは認められないから、被告著作物4が原告著作物1又は原告著作物4を複製したとは認められたい。
2 次に、翻案の点について判断することとするが、前記説示のとおり、翻案が認められるためには、原告著作物1、4に依拠して被告著作物4が作成され、かつ、原告著作物1、4の表現形式上の本質的特徴を被告著作物4から直接感得することができることが必要であるので、まず、原告著作物1、4の表現形式上の本質的特徴を被告著作物4から直接感得することができるかどうかを判断する。
(一)被告著作物4と原告著作物1、4は、対照表Aの各対照箇所において、それぞれ、目の回りの構造、マッサージによってしわができる過程、油やけがしみになることを述べている点で、共通している。
 しかし、目の回りの構造について述べている部分をみると、被告著作物4では目の下の構造を「薄い皮張り」と表現しているのに対し、原告著作物1では目の回りを「空洞」、「空洞の中にある目を薄い皮膚が覆い」と、原告著作物4では目の回りを「ミイラで見られるように大きく空洞」と表現しており、客観的に同一の構造を表わすのに全く異なる用語を用いて表現している。
 次に、マッサージによってしわができる過程について述べている部分をみると、被告著作物4では、「伸ばしたり丸めたり押さえたり、刺激を与えていく」と表現しているのに対し、原告著作物では「伸ばしたり広げたり」と、原告著作物4では「小刻みにマッサージする」と表現しており、同一の動作を表わすのに異なる表現をしている。また、マッサージがしわの原因になるというのは、両者の美容法の基となる考え方、つまりアイデアであり、このアイデアを表現しようとすれば、その表現は自ずと類似したものにならざるを得ないのであって、右の表現の違いがあることからすると、右の対比部分が、同一のアイデアを表わすことから必然的に類似する以上に類似しているとは認められない。
 最後に、油やけがしみになることについて述べている部分のうち、原告著作物1の28ぺ一ジを被告著作物4と対比してみると、両者は、クリームを塗る、それに日光があたる、油やけを起こすということを述べており、原告著作物4の3ぺ一ジの部分を被告著作物4と対比してみると、両者は、油(クリーム)を塗る、油に日光があたる、しみになるということを述べており、その意味で、これらは類似している。しかし、油を塗る、油に日光が当たる、油やけを起こす、しみにたるというのは、両者の美容法の基となる考え方、つまりアイデアであり、このアイデアを端的に表現しようとすれば、その表現は自ずと類似したものにならざるを得ないのであって、右の対比部分が、同一のアイデアを表わすことから必然的に類似する以上に、具体的に類似しているとは認められない。
 また、被告著作物4には、原告著作物4の5ぺ一ジのようなイラストもなく、説明文も異なっている。
(二)以上の対比に基づいて考えれば、被告著作物4と原告著作物1、4は、共通、類似している部分があるものの、原告著作物1又は原告著作物4の表現形式上の本質的特徴を被告著作物4から直接感得することができるとまで認めることはできないというべきである。
 したがって、被告著作物4は、原告著作物1又は原告著作物4を翻案したものではない。
三 よって、被告著作物4に関する請求は、その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がたい。
第5 請求原因五(誹詩行為)について
一 請求原因五1及び同五4のうち、原告会社が化粧品の販売等を業とし、広島市に代理店を持ち、相当数の顧客がいることは当事者問に争いがない。
二 被告広告一の内容とそれについての不法行為の成否
 証拠(甲12、13)によると、被告広告一は、被告高橋と被告化粧品を愛用する橘高真知子の両名に対するインタビュー及び両名の会話という形式でPR誌「ポシェ」に掲載された広告であること、その内容は、シミのひどかった橘高真知子が被告高橋と出会い、同被告の勧める原告化粧品の使用を始めたこと、その後、被告高橋が原告化粧品を勧めていたのをやめて被告化粧品を作るようになった経過、橘高真知子が被告化粧品を使用してシミが消えたこと、橘高真知子の紹介で被告化粧品の使用者が増えていることを、両名の会話などを通して読者に訴えるものであること、被告広告一は、被告高橋が原告化粧品を被告化粧品に変えた経過を話す部分に出てくるものであること、以上の事実を認めることができる。
 被告広告一において、被告高橋は、原告化粧品に納得できず、被告化粧品を作ったと述べているが、「原告化粧品に納得てきたい」というのは、被告高橋が被告化粧品を作るようになった経過を説明する中で述べた被告高橋の原告化粧品に対する主観的な感想にすぎず、具体的な事実をあげて原告化粧品の評価を述べているわけではない。また、「まちがったのは勧められない」という、被告高橋の右発言に続く部分も、被告高橋の右発言を受けて、被告高橋の気持ちを繰り返したものであって、被告高橋の右発言と同趣旨のものであると解することができる。
 以上のような被告広告一中の被告高橋の発言がされた状況やその内容からすると、被告広告一が、原告化粧品や原告会社を違法に誹講するものであるとまでいうことはできず、被告広告一を掲載した行為が不法行為に当たるということはできない。
三 よって、請求原因五の請求は、いずれも理由がない。
第6 請求原因六(虚偽事実告知・流布行為)について
一 請求原因六1の事実は、当事者間に争いがない。
二 虚偽事実の告知、流布の有無
1 右一の争いのない事実及び証拠(甲12ないし15)によると、別紙被告広告目録二ないし四の文章が掲載された被告会社の広告には、右文章にいう新しい美容法の具体的な内容についての記載はないことが認められる。
 別紙被告広告目録二ないし四の文章は、被告高橋が新しい美容法を開発した趣旨のものであることは、その文意から明らかであるところ、右認定の事実によると、右文章にいう新しい美容法が具体的にいかなる美容法であるのかは不明であるから、右文章の趣旨が、甲美容法は被告高橋が独自に開発した美容法であることを述べたものであるとは認められない。
2(一)証拠(甲10、11)によると、被告広告目録五及び同六記載の文章は、被告高橋の提唱する美容法の具体的な内容を説明するものであることが認められる。
 その内容は、前記第2の二で認定Lたとおりである。これと甲美容法とを対比してみると、@シミは、皮膚に浸透した鉱物油が、年月をかけて日光によって油焼けを起こすことによって生じるものであること、Aマッサージをすると、鉱物油が毛穴の奥深くまで浸透し、シミになり、現に、シミは、マッサージのために動いた指の跡に濃く現れること、B洗顔を繰り返すことが重要であること、Cパッティングをすれば十分であるが、パッティングをしてはいけない場合もあること、Dみずみずしい肌に必要たのは、油分ではなく水分であること、Eマッサージは、かえって肌のたるみや小じわの原因となること、Fアルコール入りの化粧水は肌の水分を奪うもので、アルコールの入っていない化粧水がよいことの各点において、甲美容法と共通しているが、被告広告目録五及び同六記載の文章は、甲美容法の他の部分まで記述しているとは認められない。また、証拠(甲10、11)によると、被告広告目録五の文章が掲載されている被告著作物1には、そこに記載されている美容法は被告高橋が始めたものである旨の記載があり(3ぺ一ジ)、被告広告目録六記載の文章には、そこに記載されている美容法は被告高橋が開発したものである旨の記載がある(29ぺ一ジ)ものの、それ以上に、全く新しい美容法であるとか、被告高橋が独自に開発したものであるといった記載はない。
 以上によると、被告広告目録五及び同六記載の文章には、甲美容法のうち右@ないしFの部分は、被告高橋が「始めた」又は「開発した」美容法である旨が記載されているものと認められる。
(二)ところで、証拠(甲4、27、36、51、甲65の1ないし5、甲66の1ないし3、乙51)及び弁論の全趣旨によると、原告足立の主宰する東京素肌美容センターは昭和52年暮れころから原告足立の提唱する美容法の普及活動及び化粧品の販売などを行っていたこと、被告高橋は、昭和54年9月ごろ、原告足立を訪ねてその美容理論や美容法を学び、同年10月20日、東京素肌美容センターとの間で商品売買契約を締結して東京素肌美容センターの代理店となり、原告足立の提唱する美容法の普及活動と化粧品の販売を始めたこと、被告高橋は、昭和58年9月に右商品売買契約を解消し、代理店でなくなるまで、美容法の説明や化粧品の販売を行っていたこと、以上の事実を認めることができる。
 また、証拠(甲1ないし6、8、9、16、24、25、29、36、甲65の1ないし5)によると、右(一)@ないしB、DないしFについては、原告足立が提唱する美容法においても同じことが言われていることが認められる。しかし、証拠(甲1ないし6、8ないし11、16、24、25、29、36、甲65の1ないし5、甲66の1ないし3、乙25、26、51)及び弁論の全趣旨によると、原告足立が提唱する美容法は「パッティング美容法」と名づけられていて、肌をよくたたくことを勧めるものであり、洗顔も、スキンフレッシャーという道具を使って行うことを勧めるものであるのに対し、被告高橋が「始めた」又は「開発した」と述べている美容法では、パッティングをしてはいけない場合も多くあるなどとして、必ずしもパッティングを勧めておらず、洗顔に際してスキンフレッシャーのような道具の使用も勧めていないこと、被告高橋が、必ずしもパッティングを勧めておらず、洗顔に際して道具の使用も勧めていないのは、自らが原告足立の提唱する美容法の普及活動と化粧品の販売をしていた間の経験に基づいていること、以上の事実が認められる。
(三)以上述べたところからすると、被告広告目録五及び同六記載の文章に記載されている美容法の多くは、被告高橋が原告足立の美容法から学んだものであり、殊に甲美容法と同一の右@ないしB、DないしFを内容とする美容法(以下「本件同一美容法」という。)は、被告高橋が独自に開発したものではないと認められる。したがって、被告高橋が被告広告目録五及び同六記載の文章において、本件同一美容法を「始めた」又(は「開始した」と記載することは事実に反し、虚偽であるといわざるを得ない。
(四)そこで、被告広告目録五及び同六記載の文章において、本件同一美容法を「始めた」又は「開始した」と記載したこと(以下「本件虚偽記載」という。)が、原告らの営業上の信用を害するものであるかどうかを判断する。
(1)前記第2の三1(二)及び(四)認定のとおり、原告足立が自らの美容法を提唱するよりも前に、顔に化粧品(油)を塗って日光に当たると油焼けを起こし、それがシミの原因になることは知られていたうえ、洗顔をして化粧品を洗い落とし、肌に水分を与えるという美容法も存在しており、証拠(乙17)によると、顔の筋肉の流れに逆らったマッサージがシワの原因になることも知られていたことが認められる。これらは、本件同一美容法のうちの右@、B、D、Eと内容が共通する点が存する。したがって、本件同一美容法のうちの右既知の美容法と共通する部分は、原告足立が独自に開発したものとは認められないが、共通したい部分は原告足立が独自に開発したものであると認められる。
 そうすると、本件虚偽記載のうち、右既知の美容法と共通する部分に関する記載は、被告高橋が「始めた」又は「開始した」ものではないという点では事実に反するが、右既知の美容法と共通する部分は原告足立が独自に開発したものでもないのであるから、右記載が原告らの信用を害することにはなるわけではない。
(2)本件同一美容法のうちの右既知の美容法と共通ない部分は、原告足立が独自に開発したものであるから、本件虚偽記載のうち、原告足立の独自に開発した部分に関する記載は、間接的に原告足立が独自に開発したことを否定することになる。
 しかしながら、右(一)及び(二)認定のとおり、本件虚偽記載は、被告高橋が本件同一美容法を「始めた」又は「開発した」と述べているにとどまり、直接的に原告足立が本件同一美容法を開発したことを否定しているわけではなく、被告広告目録五及び同六記載の文章において、原告足立が提唱している美容法を原告足立が開発したことを直接否定する趣旨の記載もないこと、原告足立が提唱している美容法と被告高橋が被告広告目録五及び同六記載の文章において記載している美容法とは、原告足立の最も重視しているパッティングを被告高橋は必ずしも勧めていないという点で重要な差異があり、両者の美容法を知った者は、異なる美容法であると受けとる可能性も認められること、証拠(甲1ないし3、5、9、24、25、29、36、46、48、甲58の1ないし32、甲65の1ないし5)によると、原告足立は、黒皮症を独自の美容法で克服した体験を持ち、原告足立が提唱している美容法は、その体験に基づいて考案されたものであり、原告足立は、その著書において、右美容法を紹介する際には、自らの体験と右美容法を考案した経過を記載していて、それらは右美容法の内容とも密接に結びついていることが認められるから、原告足立の提唱している美容法に関心を持ち、それを知っている者の多くは、原告足立の古体験と考案の経過を知っているものと推認することができることを総合すると、本件虚偽記載を含む被告広告目録五及び同六記載の文章が流布されたとしても、これにより、直ちに原告足立の提唱している美容法を知った者が、本件同一美容法のうち右既知の美容法と共通しない部分について、それは原告足立によって独自に開発されたものではないと誤信するとは認められず、仮にそのことについて疑問を持つ者が一部にいたとしても、右共通しない部分は、原告の提唱する美容法、例えば前記認定の原告著作物1、2の内容全体と比べれば大きな部分ではないことを考慮すると、原告らの営業上の信用が害されるとまでは認められない。
3(一)証拠(甲18、21、22、23、甲64の1、乙59、60)及び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。
(1)被告高橋は、被告会社の代表取締役として、自ら又は被告会社の従業員等を指揮し、各所において美容説明会を開催し、集まった人に被告高橋の美容法の内容を説明しており、右美容説明会は、被告会社の化粧品の宣伝にもなっている。
(2)被告会社は、平成3年11月2日、福岡県において美容説明会を行い、前記後藤浩子が講師として被告高橋の美容法を説明したが、その際、被告高橋の美容法は被告高橋の体験に基づくものであると話した。
 また、被告会社は、平成3年11月24日、熊本県において美容講習会を行い、被告高橋が講師として自らの美容法を説明したが、その際、被告高橋の美容法は被告高橋の体験に基づくものであると話した。
(3)被告高橋及び後藤浩子が、被告高橋の美容法として説明した中で、シミの原因、シミを取るための方法、にきび・吹き出物の原因と予防、小じわの原因と予防に関する部分の内容は、次のとおりである。
@ 化粧品は、水と油をまぜて色をつけたものであるが、油には、鉱物油、植物油、動物油がある。鉱物油とは、石油からいろいろ製品をつくった後の残りを脱色した流動パラフィン、ワセリンである。
A マッサージ美容法は、毛穴の広がった風呂上がりに、毛穴に油を塗り込む。そして、日光に当たると油焼けして、ソバカス状のシミが出てくる。
 皮膚科の医師は、かぶれを繰り返すからシミができると言うが、嘘だと思う。かぶれたことがなくてもシミはできる。かぶれることとシミができることとは別である。
 マッサージ美容法を長く続けた人ほどシミがたくさんくっきりと出る。油をしっかり塗り込んでいるからシミができやすいのである。
 日光に当たる時間の多い人もシミができやすい。
 皮脂が出にくくなっている人、荒性の人も、シミが多い。クリームは油でできているから、洗顔が正しくなかった人にシミが多い。メークを落とさないで眠った人にもシミが早くできる。
 25、6才から30才以上の人が皆シミを持っているといっても過言ではない。25、6才から30才以上の人にシミが多いのは、化粧品を17、8才から使い始めたら21才位で化粧品が毛穴につまってくる。10年以上化粧した人は30才にたると毛穴が化粧晶でつまってしまうからである。
 朝も夜もしっかりソープ洗顔した人はきれいである。お湯洗いだけの人は、いずれシミが見えてくる。
シミは、歳月と日光の力を借りて、化粧品が皮膚の中で作ったものである。B シミをとるためには、自分で塗り込んだものを洗い続けること、マッサージ美容法を止めること、石油系の化粧品は使用しないこと、日光をさえぎることが必要である。
 そうすると、皮膚の新陳代謝が盛んになり、新しい細胞が生まれ、シミが治る。
C 若い人ほど皮脂が多く出る。若い人ににきびができるのは、毛穴が細くて皮脂が出られないからである。若い人は、化粧品を使わず、せっけんを使い、流れている熱めのお湯で洗うことである。にきびはそれだけで治る。
 化粧品によって、毛穴を塞ぎ、皮脂が十分出られなくなることによってできるのは、吹き出物である。
 にきび、吹き出物の予防は、化粧品を毛穴に詰め込まないことである。
 にきび、吹き出物に対しては、熱めの流れるお湯で2、3度洗うことである。
 にきびを治すために、副腎皮質ホルモン入りの軟膏を使用してはならない。薬の副作用がこわいからである。
D 小じわは、水分がないと増える。肌が欲しがっているのは、油分ではなく、水分である。流ている水かお湯で洗い流し、せっけんでダブル洗顔する。洗った後に、アルコールの入っていない化粧水をたっぷりたたく。アルコールの入っている化粧水では皮膚の水分を取られ、小じわが増える。
(二)以上認定の事実に証拠(甲21、22、23、甲66の1ないし3、乙51)を総合すると、被告会社の美容説明会において、被告高橋又は被告会社の従業員等が被告高橋の体験に基づくと説明している美容法の内容は、パッティングの点を除いては、甲美容法とおおむね同じものであると認めることができる。そして、証拠(甲1ないし6、8、9、16、24、25、29、36、甲65の1ないし5、甲66の1ないし3、乙51)及び弁論の全趣旨によると、パッティングの点を除く甲美容法は、原告足立が提唱する美容法とおおむね一致することが認められる。
 しかし、証拠(甲21、22、23、甲66の1ないし3、乙51)及び弁論の全趣旨によると、被告会社の美容説明会において、被告高橋又は被告会社の従業員等は、パッティングを勧めておらず、洗顔に際して道具の使用も勧めていないものと認められ、これらの点は、原告足立が提唱する美容法とは異なっているものということができる。
(三)ところで、証拠(甲24)によると、原告足立著作に係る「シミがとれ美しくなるパッティング美容法」(原告著作物1は、その一部である。)には、被告高橋の体験談が掲載されており、これには、被告高橋が大手化粧品メーカーの社員であったこと、化粧品が石油化学の産物であることを知って悩んだこと、ほほにしみができていたこと、原告足立の指導で原告足立の推奨する美容法を行うことによって、ほほにできていたしみが取れ始めたこと、それがきっかけとなって原告足立が推奨する美容法を広めるようになったこと、以上の事実が記載されていることが認められる。そして、この認定事実に証拠(甲66の1ないし3、乙51)を総合すると、右の掲載されている体験談は、実際に被告高橋が体験した事実であることが認められる。
 そうすると、被告会社の美容説明会において、被告高橋又は被告会社の従業員等が、パッティングの点を除く甲美容法は被告高橋の体験に基づくと説明したとしても、そのことが虚偽の事実を告知、流布したものであるとまで認めることはできない。
三よって、請求原因六の請求は、いずれも理由がない。
第7 結語
 以上の次第で、本件請求はいずれも理由がない。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判長裁判官 森義之
 裁判官 榎戸道也
 裁判官 中不健

著作物目録
一 被告著作物
1 「素肌美容法一美と真実を求めて」(昭和63年7月15日初版発行、発行所東明社)(甲10)
2 「洗い続けて美しい素肌に一マッサージ美容法をやめました」(平成2年6月10日第1刷発行、発行被告会社)(甲11)
3 「美しい素肌美のためのガイド高橋八重子の体験から」(昭和60年4月ころ発行、発行被告会社)(甲17)
4 広告誌「ガリヤ」平成4年4月号掲載の左記文章(甲18)
 記
 専門的な話になりますけど、目の下の構造を考えてみますと骨がないんですね、薄い皮張りなんですよ。そこを伸ばしたり丸めたり押さえたり、刺激を与えていくわげでしょう?伸ばした皮膚というのはたるんでシワになるんじゃないだろうか、それがマッサージクリームを塗り込むことによってそれを奇麗に洗い落とせばいいですけど残った油はお日様に当たって油焼けをしてシミの原因をつくっているんではないだろうかと、これが高橋の体験から出てきた美容法なんですよ。そしてお肌が求めているのは水分ですから、アルコールの入らないお化粧水をタップリ与えるのが一番だと考えています。
二 原告著作物
1 「シミがとれ美しくなるパッティング美容法」(昭和55年9月1日初版発行、発行所主婦の友社)のうちの「パッティング美容法とその実際」(20ぺ一ジないし86ぺ一ジ)の部分(甲24)
2 「甦った私の素肌」(昭和53年1月25日初版発行、発行所株式会社文理書院)のうちの「第三章新しい美容理論の確立」(86ぺ一ジないし115ペ一ジ)の部分(甲25)
3 「素肌復活美容ガイド特製版」(昭和55年1月ころ発行、発行東京素肌美容センター出版局)(甲16)
4 「素肌復活美容講習会のためのプリトーク」(昭和54年6月1日発行、発行東京素肌美容センター出版局)(甲6)
被告著作物要旨一
 被告著作物1の「私の美容理論」の部分の要旨
一 私は、私が長年にわたって研究開発した、自信をもって勧められるオリジナル化粧品も、むやみに販売ルートを拡大することはしない。
 それは、私の美容理論は、一人ひとりの肌の状態に合わせて、異なった手入れをし、そして美しい素肌を取り戻すという方法だからである。
二 化粧品はお肌には"異物"
 多くの化粧品は、石油から採取した流動パラフィンと水と界面活性剤を混ぜ合わせて香料を入れ、白い色をつけたものである。これに黒い色を混ぜると靴墨にたる。
 最近は、「自然派」と称して植物油を使った化粧品も出回っているが、どんな一に優れた化粧品も、お肌にとっては「異物」にすぎない。
 肌にとって最良のクリームは皮脂であり、私の美容法は、皮脂が十分に出る手助けをする方法と言える。私は、最も肌に害がなく、肌の活性化を計るものとして、ピアベルビ〈「ビ」は「ピ」の誤〉ア化粧品を開発したが、それさえも皮脂にはかなわない。洗顔により「異物」を除き、肌に水分を与えてやることが、私の美容法の基本である。
三 マッサージ美容法をやめましょう。
 私は、長年「マッサージ美容法をやめましょう。」と呼びかけてきた。それはまず、風呂上りなどにマッサージをすると毛穴の開いた状態になっている肌の奥深くまで「異物」である化粧品を塗り込む方法だからである。塗り込まれた化粧品は簡単には除けず、毛穴をふさぎ、皮脂の出る道を閉ざす。マッサージ美容法で動かした手の形そのままにシミが出きていた人が少なくない。また、マッサージの終わりに指でギュッと押えるコメカミのところにホクロのように鉱物油の塊りがあった人も数多くいる。
 マッサージは、皮膚のたるみを助長し、シワの原因にもなる。
 肌を活性化させるためなら、異物を塗り込んだり引っ張ったりするのではなく、やさしく自分の手でパッティングすれば十分である。ただし、トラブルの状態によってはパッティングをしてはいけないケースもある。
 いずれにせよ、マッサージ美容法をやめることが、私の美容法の大きなポイントである。
四 自然のカを大切に
 人問は、体の中に「美しくなろうとする自然の力」を持っている。例えば皮脂はその一つである。既存の化粧品や美容法は、自然の力を抑えようとするものでしかなかった。
 私達の肌は、強い日差しに合うと日焼けするが、これは肌にとっての防衛能力が働いているからで、日差しが弱くなれば、肌は元の白さを取り戻そうとする。ころが、肌に油を塗って太陽の下で肌をさらした「油焼け」は、日焼けのよう陽光が弱くなっても元に戻ることはなく、肌が黒ずんだりシミになって残る。
 私の美容法の基本は、人間の持つ力を引き出し、少なくともその力を抑えるような手入れをしないことにある。
五 トラブル解消に"王道"はない。
 しおれかかった花には水をやるように、肌が求めているのは、油ではなく水分である。ところが、アルコール(エタノール)は、注射の前にアルコールで消毒すると肌がスーッとするように、肌の水分を奪いながら蒸発する。従って、アルコール入りの化粧水は、肌が真に求めているものを奪うという逆効果しかもたらさない。
 肌のトラブル解消に「王道」はない。薬で一時的によくなることはあっても、体の中の「美しくなろうとする力」でトラブルが解消しない限り、時間がたてば再発したり、別のトラブルの原因となる。
 私の美容法では美しい肌を取り戻すには時間がかかる。またその間に一時的に「はね返り現象」が起こることもある。しかし、これからの人生のことを思えば、たとえ時間はかかっても、真に美しい肌に向かって1日でも早く歩み出すことが大切である。
被告著作物要旨二
 被告著作物2の「『洗い続ける素肌美容法』について」の部分の要旨
一 「女性の女性による女性のための美容法」をこれまで美しい素肌を作るために良いとされていたマッサージ美容法と化粧品は良くない。私たちは、自分の頭で考えて、美容法と化粧品を選ばなければならない。
 「洗い続ける美容法」と愛称される私の美容法は、私が自分の顔に出来たシミを取りたい一心で開発したものである。
 今まで良いとされていたものを一つ一つ検証しているうち、ほとんどの人が美しくなる方法として信じていたことが、肌のトラブルを引き起こす元になるという悲しい事実を知った。
二 自然の力を大切に
 人の体には、「美しくなろうとする自然の力」が備わっている。
 私たちの体からは常に皮脂が分泌されている。これは、皮膚をつややかに保ち、外気に当たっても荒れることを防ごうという作用がある。強い日差しに出会うと日焼けするが、冬になれば元に戻る作用もある。
 私は、化粧品や美容法は、美しくなろうとする自然の力を補佐し、あるいはフルに引き出してやるための手段だと思う。
 ところが、既存の美容法や化粧品は、皮脂の働きを無視して、上から油を塗り込む結果、皮脂の分泌を妨げ、肌が油焼けを起こし(日焼けは元に戻るが、油焼けはシミになって残る)、さらに上から何かを塗るうとする。
 私の美容法によれば、皮脂がたっぷり出るようになり、肌にツヤが出る。
 ただ、私の美容法に切り替えて、一時的に「跳ね返り現象」が出ることがある。特に軟膏を使っていた人の場合は、ちょっとした決断が必要である。しかし、これからの人生のことを思えば、早く決断すべきである。
三 化粧品はお肌には"異物"
 現在の化粧品の多くは靴墨と同じものである。多くの化粧品は、鉱物油(石油)から作られ、それに白い色を混ぜるとクリームに、黒い色を混ぜると靴墨になる。化粧品が石油から作られていると知った時、私は思わず「うそっ!」と叫んだ。
 最近は、植物油や動物油を使った自然化粧品も出回っているが、私は、私の化粧品も含めて、化粧品はお肌にとって「異物」であると思う。従って、私は私の化粧品に対して<自然化粧品>という表現は使わない。
 しかし、例えば日差しから肌を守ろうとする時など、美しくなろうとする力を補佐するために化粧品が必要なこともある。
四 マッサージこそトラブルの原因
 私は10年余り前から「マッサージ美容法をやめましょう。」と訴え続けてきた。マッサージ美容法はなぜいげないか、それはまず、化粧品という「異物」を毛穴の奥深くまで塗り込む作業だからである。特に風呂上りの毛穴の開いている時に塗り込んでいく。皮膚の底に入った化粧品は、シミの層になっていく。
 私は、今までに、マッサージの指の動きそのままにシミが出ている人を数え切れないほど見てきた。また、指を止めてギュッと押えるコメカミのところに大きなホクロのようなシミが出来ている人もたくさんいる。
 シミだけでなく、毛穴を塞ぎ、皮脂を出られなくして乾燥肌になる人もいる。
 マッサージ美容法は、皮膚を引っ張ったり縮めたりするので、肌のたるみ、シワの原因になる。
 肌の新陳代謝を良くするためなら、マッサージよりも、手のひらでパチパチたたいてやる方が効果的である。ただし、肌によっては注意を要する。
 いずれにせよ、マッサージ美容法こそ肌のトラブルの大きな原因である。
 毎年春になると、若い人を集めて美容講習会が開かれ、マッサージの仕方がていねいに教えられていて、私は悲しい思いをさせられている。
五 お肌が求めているのは水分しおれかかった花には水をやるように、肌が求めているのは、油ではなく水分である。ところが、化粧水をたっぷり使えば水分の補給ができるとの考えも誤りである。なぜなら、ほとんどの化粧水にはアルコールが含まれているからである。注射の前にアルコールで消毒すると肌がスーッとするように、アルコールは、水分を奪いながら蒸発する。従って、アルコール入りの化粧水は、水分の補給には何の役にも立たない。
六 洗い続けて美しい素肌を私の「洗い続ける美容法」は、「正しい洗顔」にウエイトを置き、そのため市販のソープでは物足りなくてピアベルピアソープを開発した。
 洗顔は、化粧晶という「異物」が毛穴の奥深くたまってできたシミを洗って落とすだけでなく、シミや吹き出物などお肌のトラブルを防止するためにも欠かせない。
七 以上は、私の美容法の「最大公約数」であり、すべてではない。具体的た美容法になると、肌の性質や状態により手入れの方法は千差万別である。私は、最高の化粧品と自信をもっているピアベルピア化粧品も、その人の肌の状態を見て、また過去にどんな手入れをしていたかを聞いてからでなげれば売らない。これは、商売としては効率の悪いやり方だが、化粧品が一人歩きすることは、私には考えられない。
 お肌のトラブル解消に近道はない。
 上からチョコッと塗っただけではシミやニキビは治らない。私自身シミを取るために何年もかかった。しかし、私の美容法は、トラブル解消のための最善の道である。
 今後とも私は、肌のトラブルで悩む人のために全力を尽くす。
原告著作物要旨一
 原告著作物1の「パッティング美容法とその実際」の部分の要旨
一 あなたは素肌の美しさを忘れていませんか
 女性を美しくするはずだった化粧が、いつの間にか女性から美を奪う働きをするようになってしまった。多くの化粧品や美容法が、肌のトラブルを起こし、女性の本来の素肌の美しさを忘れさせるようになった。
 美しい素肌をとり戻すことこそ、女性が美しくなれる第一歩である。
二 皮膚の構造を知る
 皮膚は、上から表皮、真皮、皮下組織の三つの層に分かれ、少しずつ違った働きをもっているものの、全体には密接なつながりをもつ。
 皮脂は、皮下組織で作られ、真皮中を通って送られてくる。この皮脂の量が減少すると、つやが落ちて肌荒れが起こる。皮膚に常にクリームなどを塗って人工的に脂肪膜を作ってやると、皮脂が分泌しなくなってしまう。
三 シミはどうしてできるのか
 長年、シミの原因としては、睡眠不足、疲れ、肝臓障害、香料などが言われてきたが、いずれも根拠が薄弱である。
 シミの原因は、石油で作られた化粧品と、それを毛穴の奥深くまでしみ込ませるマッサージである。
 その証拠に、化粧品を使う女性ばかりにシミができ、またマッサージをした指が動いたとおりに黒くなっていく。
 皮膚の表皮にあるメラニン色素は、皮脂腺のあるところどこにでも分布し、毛穴が深けれぼそれだげこの色素も深い。化粧品に含まれる油には、動物油、植物油、鉱物油(石油製品)があるが、鉱物油のクリームは、肌に塗っても浸透しないで皮膚の表面に残ってしまう。そして、これを塗った肌に日光が当たると、日焼けとは違った油焼けを起こす。油焼けはシミに、シミは黒皮症に、月白を重ねると変化する。
 シミができやすい人とは、@マッサージの好きな人、A外出の多い人、B脂性よりも荒性の人、C色白の人よりも肌の浅黒い人、D若い人よりも30代以上の人、E洗顔をあまりしない人、Fふきとり化粧水を使わなかった人である。
 シミは、その人の指の動いたとおりに着色する。
 シミができている部分の皮膚は、厚くかたくなって、つやがない。できてからの年数が長いと色も濃くなる。また石油の量が多いものほど、シミの色も濃くなる。
 表から見てシミだとわかる場合は、その奥に層ができている。特に風呂上りなどの毛穴が開いているときに、熱心に石油系のクリーム類を塗り込んだ人は、シミの層は相当深いと考えられる。
四 細胞は生まれ変わる
 私たちの細胞は日々新しく生まれ変わり、古くなった細胞はあかとたってはげ、落ちていく。シミをとるには、この自然の力をうまく利用すればよい。
 シミがとれやすい人は、@健康で脂性の人、A色白の人、B若い人、C熱心に塗らなかった人、Dシミができてからの期間が短い人であり、シミがとれにくい人はその反対である。
 顔全体にシミがある場合、とれやすい部分は、頬骨の上、鼻の回り、眉間であり、とれにくい部分は、耳の前にできた境界線、口の脇、顎など皮膚の厚い部分、目のすぐ下にあたる皮膚の生まれ変わる周期のおそい部分である。
 皮膚の浅い部分、皮脂が下から押し上げてくる部分のシミは短期間で消え、皮膚の厚い部分のシミは、本来の素肌が表に出てくるまでに長い期間が必要である。
五 パッティング美容法とは
 パッティング美容法とは、肌をたたく美容法をいう。
 クレンジングクリームで化粧を落としたら、石?を一杯泡立てて顔を洗う。顔の皮膚も呼吸しており、この呼吸を妨げないためにも、肌がよごれたらきれいに流すことが美しい素肌の決め手となる。
 洗顔のあとは、クリームを塗って保護したければならない。
六 パッティング美顔法
 手をよく洗い、クレンジングクリームを伸ばしてメーキャップとなじませ、ティッシュペーパーでふきとる。次に石?をよく泡立て、流れているお湯か水できれいに洗い流す。
七 洗ったあとは
 このあと、流れているお湯か水を手にとり、肌をたたく。
 タオルでふきとったら、無アルコールの化粧水を使って肌をたたく。特にアルコールを含まない化粧水を使うのは、アルコールは、蒸発する際肌の水分を奪ってしまうからである。
 こめかみあたりを指先で抑えて神経をほぐし、乳液をつける。
八 ニキビ、吹き出物の注意
 ニキビの原因のほとんどは、思春期を迎えたためのホルモンと分泌される皮脂のせいであるか、思春期を過ぎても消えないものは、吹き出物といえる。
 予防法は、洗顔料で顔を洗い、肌にほこりや細菌が付着しないよう心がけることである。皮脂の量が多くなると、肌がよごれやすくなる。脂性の人は、洗顔により清潔にすることを心がけ、吹き出物がもしできたら、いじらず、ほこりから肌を守るようにすることが大切である。
九 軟膏かぶれに注意
 軟膏を常用すると副作用により、肌がほてる、少しむずがゆい、顎のあたりに水を含んだ吹き出物が出るなどの症状が現われ、更に軟膏が長期にわたると、肌は次第に固くなり、つるんとした肌に変わり、その度にむずがゆさを感じるようになる。ホルモン入りの軟膏や化粧品を塗りすぎると、次第に機能のバランスがくずれてしまう。
十 丘疹
 (省略)
十一 化粧品かぶれ
 (省略)
十二 赤ら顔の治し方
 (省略)
十三 素肌復活への道
 皮膚が長い期間知らずに塗り込んだ化粧品によって害を受けていたとしたら、その復活には一定の期間を必要とする。
 しかし、私たちの細胞は生きており、復活しようと懸命に働いている。パッティング美容法により、あせらず根気よく時期を待たなければならない。
十四 高男性と女性の肌の違い
 (省略)
十五 内臓疾患から出るシミ
 (省略)
十六 シミが治るまでの化粧法
 (省略)
十七 日やけを予防するには
 日やけは肌のためにはよくない。特に紫外線の強い夏、肌を焼きすぎてしまうと、シミがあらわれる原因となる。
 日やけ止めクリームにも脂が入っており、肌は油やけを起こす。
 汗にも水にも強い石油系の油を使ったファンデーションを塗ると、やはり油やけする。
 日やけ予防には、@石鹸で洗顔し、A流れている水、ぬるま湯を手にとり、肌をたたき、Bタオルで水気をふきとったあと、無アルコール化粧水で肌をたたき、C下地に乳液を使い、D水おしろいを塗り、Eコンパクトで粉おしろいを使うのがよい。
十八 小じわは防げるか
 小じわは、肌の水分が減少するために起きる。
 小じわ予防には、@肌をたたいて血行をよくし、A水分を与え、Bそのあと油分を与えることが必要である。
 目の回りを冷たい風にさらさないよう心がけ、クリームは動、植物系油脂のものを選ぶ。
 目の回りは、空洞の中にある目を薄い皮膚がおおっているだけである。また筋肉も一定の流れをもっているので、その流れに逆らうマッサージは禁物である。
 化粧品の塗りすぎは、毛穴を開く原因にもなる。
 従って、化粧水、乳液などを使い、パッティング美容法を実行すべきである。
原告著作物要旨二
 原告著作物2の「新しい美容理論の確立」の部分の要旨
一 シミのできる原因
 黒いシミの原因としては、肝臓、内臓が悪いからと言われることがある。紫外線もシミを作る原因と言われているが、紫外線にあたる割合の多い子供にはシミがないし、大人でも日光にあたる率が高い男性にはシミがない。女性でも、日光にあたることの多い20代よりも、30代を過ぎた女性にシミが現れることが多い。このように30代以上の女性にシミが多いのは、化粧品を長い期間ぬったことと、日光にあたったからである。
 鉱物性の化粧品をぬった肌に日光があたると油やけをし、シミになるのである。オデコから頬骨とマッサージのために動いた指の部分だけが特に黒くなる。
 風呂上がりに肌の毛穴が開いているときにクリームを塗ると、毛穴の中に入りやすく、その上マッサージをすると毛穴のさらに奥まで入りこんでしまう。
 夜、クリームをつけてマッサージを繰り返し、日中紫外線にあたることを周期的、長期的に繰り返すと、その部分が油やけ→シミ→黒皮症と変化する。
 特に荒性の人は、脂性の人に比べ皮下組織から出てくる脂肪の量が少ないため、皮膚の表面から塗り込まれる化粧晶は、毛穴の中に定着しやすいので注意を要する。
 脂性の人、若い人は、本来の生理作用である皮脂によって、塗り込まれた化粧品を表に出してしまう。若いころ脂性であった人も30代を過ぎると普通肌に、普通肌であった人は荒性に変わってしまう。
 シミが取れ始める期間に差が出てくるのも、脂性の人、若い人に比べ荒性の人、高齢の人、貧血症の人は、肌の新陳代謝が遅いために取れにくいからである。
 色白の人に比べ、肌の浅黒い人は、メラニン形成細胞の働きが活発なため、日光と油が加わると、皮膚の深い部分で色素が異常分裂し、表面に出てくるため、シミが出やすい。石?で顔を洗うことが習慣になっている人は、油脂をも洗い流しているため、肌に油が定着しにくい。
 さらに、クレンジングクリームにふきとり化粧水がセットされている場合に、ふきとり化粧水を使うことにより、肌に油が残らない。皮膚の構造を見ると、うぶ毛をとりまいている毛穴の部分は、表皮がそのまま皮下組織には入り込んでおり、表皮に分布するメラニン形成細胞も皮下組織に及んでいる。毛穴から塗り込まれる油は、指の力を借りて皮膚の奥深く入りこみ、その油を含んだ色素細胞が日光を受けて異常分裂するので、シミは濃くなり、取れにくくなるのである。
ニ シミをとるために
 次のことを守れば一定の時間にシミがとれ始める。
 @ マッサージをやめること
 A 鉱物性化粧品の使用を中止すること
 B 朝晩、洗顔料で洗顔すること
 C クレンジングクリームを水溶性のものにすること
 D 直射日光をさけること
 E 肌荒れを起こさないこと
 F むしタオルをシミの部分に当てて、血行を良くすること
 G 洗顔の時、流れているお湯または水を顔にかけながら、肌をたたき活力をつけること
 顔全体にシミがある場合、とれる順序は、@毛穴の大きい鼻と口の間、A左の頬骨(手の力が右の方が強いため、深くめり込んでいる場合が多い)、B右の頬骨(皮膚の層が浅いため)、C眉間、D鼻の部分、E左の鼻の横、F右の鼻の横、である。
 シミがとれにくい部分としては、@オデコの高いところ、A右類〈「類」は「頬」の誤〉中央から下の部分、B左頬中央から下の部分、C耳の前にできたシミの境界線である。
 シミをとりたいならば、マッサージと鉱物性化粧品の使用をやめ、あせらずに、肌の復活をまたなければならない。
三 クレンジングクリーム
 ふきとり化粧水がセットされているクレンジングクリームを顔にのばし、メーキャップとなじませて水で洗っても、化粧を落とすことはできない。化粧を落とすのは、このあとに使う化粧水の方である。
 油脂が肌に残ってしまうクリームであれば、石?で顔を洗うしかない。肌の汚れや化粧を落とすには、洗顔料をつけて洗うことが一番良い。
四 マッサージの害
 顔の筋肉には、割線方向と呼ばれる一定の流れがあるが、この割線方向に逆らうマッサージは、その筋肉を異常に伸ばしたり広げたりする結果、肌をたるませることになる。この肌のクルミは、底が空洞になっている目の回りには小じわとして現れる。
五 カブレの原因
 肌のカブレは、次のような場合に起こる。
 @ 新しく使った化粧品そのものが肌に合わない場合
 A 肌になじんでいた化粧品を急に別のものに変えたために、一時的になる場合
 B 旅行、里帰りなど違った土地の水で顔を洗い、同じ時期に化粧品を取り替えた場合
 C 新しく購入した化粧品で心がはずみ、カミソリで顔をそった場合
 D 季節の変わり目に化粧品を取り替えたりした場合
 E 軟膏を塗っていた肌に、動、植物性の化粧品をぬった場合力ブレというのは、その化粧品の便用を中止すれぼすぐに治る。
 石油系の化粧品は、肌にぬったとき常に細胞の外にあって浸透しないため、カブレはおきにくい。逆に、動、植物性油脂のクリームは、肌にぬるとすぐに浸透するので、カブレも起こしやすい。
 赤いほてり、かゆみ、粟粒状の水泡が現れたら、まず顔を洗い、その化粧品を洗い流し、そして冷やしたタオルで顔を覆う。これでほてりが治り、同時にかゆみも止まり、水泡も消える。
 カブレを治すために軟膏をぬり、その軟膏を肌になじませてしまうと、今度は、化粧品を受けつけない肌を作ってしまう場合が多い。
 カブレがいちぼんひどく現れるのは、化粧品の代わりに軟膏を使っていた人が、その軟膏の使用を中止した場合である。軟膏を使用した期間が長ければ長いほど、このカブレもひどく、この場合、腫れが治ると、今度は厚くなっていた表皮が急にめくれはじめ、魚のウロコのようになって、何枚も何枚もの皮がはげ落ちてくる。このあとの新しい肌は生まれ変わったようにツヤツヤしてくる。
 また、黒いシミになるのは、カブレにくい鉱物性のクリーム類に原因がある。
六 にきびの原因
 にきびは次の場合にできる。
 @ 生理作用により分泌される皮脂の量が多すぎる場合
 A 分泌された皮脂に、ほこりがついて化膿する場合
 B 洗顔をなまけた場合
 C マッサージその他によってクリーム類をぬり過ぎ、それに生理作用が負けた場合D 動物性油脂の栄養クリームを知らずにぬり過ぎた場合
 にきびが出るいちばん大きな原因は、生理作用による。すなわち、分泌される脂肪の量が多ければ、肌は脂っぽくなり、ほこりがつきやすくなる。化膿菌がついたりすると、毛穴の部分が赤くはれてくる。
 脂っぽい肌の人は、にきび予防として常に洗顔を忘れてはならない。もしにきびができてしまったら、アルカリ性石?による洗顔は避け、肌をいじらないようにして、中性または酸性洗顔料で洗うようにする。
 このあと、清潔なバフを使って粉おしろいをつげておくと、ほこりよけになる。
 石鹸で顔を洗い、にきび取りクリームや軟膏をぬり続けても、にきびが治らないのは、皮膚の生理作用をさまたげ、分泌する皮脂を毛穴の中に閉じ込めてしまうためである。また、マッサージを繰りかえしていると、その生理作用は、外からの働きかけに負けて、あふれる油脂が化膿の元凶となる。
 化粧とは本来、皮膚の新陳代謝をさまたげず、美しい肌をつくるために、ほんの少しの手助けをすることである。化粧品を使うのは、そのための補助手段である。
 マッサージ美容法に代わるパッティング美容法が、徐々に広まり始めている。
 この新しい美容法が、黒いシミを消して素肌復活をはかり、世界一だといわれた日本女の肌を守ってくれるにちが〈「い」が脱落〉ない。
被告広告目録
一 PR誌「ポシェ」第4号(平成2年11月号)及び同第5号(平成3年1月号)(NTT広島販売センタ企画、発刊)に掲載された左記の文章
 記
 橘高先生 ……先生 ……確か、あの時は笹の葉化粧品?でしたね?
 高橋 ……とりあえず、会社をやめ、これこそはと信じた「笹の葉化粧品」を皆様にお勧めしてきた訳ですけどね……。それにも納得できなくなってもう、それだったら、自分で自分の使いたいものを作るしか方法がないと思って出来たのが、……―まちがったものは勧められないという先生の気持ちの現れですね。
二 PR誌「ポシェ」第4号(平成2年11月号)及び同第5号(平成3年1月号)(NTT広島販売センタ企画、発刊)に掲載された左記の文章
 記
 この「素肌美容法」は、シミに悩まされていた広島の一主婦にすぎなかった高橋八重子が、そのシミを取りたくて開発した全く新しい美容法です。
三 広告誌「ガリヤ」平成3年2月号(株式会社ガリヤ編集発行)において、被告高橋のプロフィールとして掲載された左記の文章
 記
 自らのシミに悩み、その解決法を長年に渡り研究。「マッサージをやめて洗い続ける」という今までになかった美容法は、広島を中心に全国に広がっている。
四 被告会社製作にかかるパンフレット「美しい素肌をとりもどすために・マッサージ美容法をやめました」と題するパンフレットに掲載された左記の文章
 記
 「この素肌美容法」は、シミに悩まされていた広島の一主婦にすぎなかった高橋八重子が、そのシミを取りたくて開発した全く新しい美容法です。
五 別紙著作物目録記載―1の著作物のうちの「私の美容理論」(15ぺ一ジないし24ぺ一ジ)の部分
六 同目録記載一2の著作物のうちの「『洗い続ける素肌美容法』について」(11ぺ一ジないし29ペ一ジ)の部分
原告主張美容法目録
一 シミの原因について従来の皮膚科医は、カブレを繰り返しているとシミになると説明し、カブレを起こす成分を含んだ化粧品の使用をやめるよう注意するに留まっていた。しかし、カブレを起こさなくてもシミはできるものであり、右説明は誤りである。
 従来のクリームを主体とする化粧品には、石油を原料とする流動パラフィン、ワセリン等の鉱物油が使われているが、シミは、皮膚に浸透した鉱物油が、年月をかけて日光によって油焼けを起こすことによって生じるものである。
 シミができる人は、次のような人である。
 @ マッサージを長く続けた人
 マッサージによって鉱物油が毛穴の奥深くまで浸透する。
 現に、シミは、マッサージのために動いた指の跡に濃く現れる。
 A 日光に当たる時間の多い入
 鉱物油が日光の紫外線に当たり、油焼けを起こす。
 B 荒れ性の人、皮脂が出にくくなっている人
 皮脂は、鉱物油等の異物の浸透を妨げ、浸透した異物を内側から押し出す役割がある。
 C 洗顔を正しくしない人
 洗顔により、鉱物油が洗い流される。
 D メイクを落とさないで眠る入
 鉱物油が肌に残っている。
 拭き取り化粧水がセットされているクレンジングクリームを使っている人で、拭き取り化粧水を余り使わない人も同様である。
 E 25、6歳だいし30歳以上の人
 女性は、一般に17、8歳のころから化粧を始め、次第に毛穴の奥に鉱物油が浸透してくる。
 長い年月化粧をしている人も同様。
ニ シミを取るための方法
 @ 洗顔を繰り返す。
 A マッサージ美容法をやめる。
 B 石油系の化粧品を使用しない。
 C 皮脂による自然の回復を待つ。
 D 日光を避けるため、粉白粉を使用する。
 E パッティングによって肌の活力を回復する。
 ただし、バッティングをしてはいけない場合もある。
三 ニキビ・吹出物の原因と予防
 思春期の若者のニキビは皮脂の分泌が多いことから生じるが、ある程度の年齢以上の吹出物は、化粧品の鉱物油が毛穴に詰まることによって生じる。
 したがって、その予防には、化粧品の塗り過ぎをやめ、洗顔をして肌を清潔にすることが必要である。
 また、ニキビ・吹出物がでたときに、皮膚科医は副腎皮質ホルモン入りの軟膏をつけるように指導するが、これは別の副作用を生じるため使用を避けるべきである。
四 こじわの原因と予防
 従来の美容法では、こじわを防ぐためには、油性クリームをマッサージによって塗ることが最適であると考えられていた。
 しかし、みずみずしい肌に必要なのは、油分ではなく水分である。
 また、マッサージは、かえって肌のたるみやこじわの原因ともなる。特に目の回りは薄い皮膚があるだけであるから、マッサージによってこじわができやすい。
 したがって、マッサージをやめ、洗顔をして、化粧水をたっぷりと与えるのがよい。特にアルコール入りの化粧水は肌の水分を奪うもので、アルコールの入っていない化粧水がよい。
被告主張美容法目録
一 化粧品は防腐剤などを加えなければ厚生省の認可を得られないから、どんなに良い化粧品でも肌にとっては異物であり、したがって、「自然化粧品」というものはあり得ず、「皮脂こそ最高のクリーム」である。
二 女性にとっては、化粧品は必要悪という面があり、異物であっても女性としては化粧は欠かせないものであり、化粧をして日光などから肌を守る必要性もあるので、できるだけ肌に負担のない化粧品を使い、必要がなくなったらきれいに洗い流すのが良い。また、化粧品だけでなく、自分の皮脂も紫外線に当たれば皮膚は油焼けするので、化粧品を落とす夜だけでなく朝も十分に洗顔する。
 被告の薦める洗顔方法は、念入りに作られた良い石?を使い、手のひらでよく泡立ててその泡でやさしく丁寧に洗うという方法である。洗顔器具、ブラシ等を使って擦ると、かえって肌を痛めることになるので使ってはいけない。
三 化粧水は肌に水分を与えるのが目的なので、肌の水分を奪うアルコール(エタノール)の入っていないものが良い。
四 マッサージは、化粧品を毛穴の中に塗り込むことになり、肌をたるませる原因にもなるので、してはいけない。
 原告がマッサージの代わりに薦めているパッティングは、化粧水をパチパチとたたきながらつける程度なら良いが、お客様に薦めると必ずしすぎる人が出て危険なこともあるので、一切薦めていない。
五 健康的な肌は、健康食品などでできるものではなく、バランスのとれた食事から得られる健康な体があってはじめてできるものである。
line
 
日本ユニ著作権センター
http://jucc.sakura.ne.jp/