判例全文 | ||
【事件名】被爆写真、著作権確認事件(2) 【年月日】平成10年6月18日 広島高裁 平成9年(ネ)第319号 著作権確認等請求控訴事件 (原審・広島地裁平成6年(ワ)第1362号) (口頭弁論の終結の日 平成10年4月20日) 判決 横浜市(以下住所略) 控訴人 宍戸幸輔 広島市(以下住所略) 被控訴人 松重美人 右訴訟代理人弁護士 古田隆規 同右 武井康年 同右 小田清和 同右 坂本彰男 同右 秋田智佳子 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 一 原判決を取り消す。 二 控訴人が、原判決末尾の別紙1及び2の各写真について、著作権を有することを確認する。 三 被控訴人は、控訴人に対し、金1万円を支払え。 四 被控訴人は、控訴人に対し、原判決末尾の別紙1及び2の各写真のオリジナルネガフィルムを引き渡せ。 第2 事案の概要 原判決の「事案の概要」の記載を引用する。 第3 争点に対する判断 一 原判決の「争点に対する判断」の記載を引用する。ただし、30頁4行目の「のであって、」から同6行目の「できる」までを削除する。 二 そして、当審における主張立証も右認定判断(原判決引用)を左右するに足りない。 三 本件に即して民事裁判の事実認定の仕方について述べると、当事者の請求及び主張に基づいて証明の主題を明らかにして、これに沿う証拠とこれに沿わないあるいはこれに反する証拠とに分け、それぞれの証明力、証拠価値を検討し証明主題に沿う証拠がこれに沿わないあるいはこれに反する証拠に優越する程度に至れば証明があったことになり、その程度に至らないときはその証明がなかったことになる。 これを本件についていえば、証明の主題は「控訴人である宍戸幸輔が本件各写真を撮影したこと」であり、これに沿う証拠として控訴人本人尋問の結果及び証人井原忠の証言並びに書証などがあり、証明の主題に沿わないあるいはこれに反する証拠として被控訴人本人尋問の結果、鑑定の結果及び証人小池恒裕の証言並びに書証などがある。これらそれぞれの証明力、証拠価値を検討した結果、控訴人本人尋問の結果及び証人井原忠の証言並びに書証などにもそれなりの証拠価値及び証明力は認められるものの、前記認定判断の限度にとどまり、特に、控訴人は本件各写真の現像した結果を現認しておらず、また原爆投下直後の異常な混乱の中かつ当時の軍律厳しい下ではあるが控訴人以外の者が写真撮影をしたことを全く否定することはできないというべきであり、他方、被控訴人本人尋問の結果について鑑定の結果及び書証に照らして検討すると、必ずしも全面的に信用できるとはいえないが、少なくとも前記認定判断の限度では合理性があるので、結局証明主題に沿う証拠がこれに沿わないあるいはこれに反する証拠に優越するとはいえず、証明主題の立証があったとはいえないのである。 なお、本件においては「被控訴人である松重美人が本件各写真を撮影したこと」は証明の主題ではないので、本判決はこの点について肯定とも否定とも何らの判断もしていない。 第4 よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第4部 裁判長裁判官 東孝行 裁判官 菊地健治 裁判官 河野清孝 |
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