判例全文 | ||
【事件名】創価学会vs日蓮正宗 名誉毀損事件 【年月日】平成10年1月19日 大津地裁 平成4年(ワ)第162号 損害賠償請求事件 (口頭弁論の終結の日 平成九年一〇月三日) 判決 原告 A 右訴訟代理人弁護士 道上達也 同 今村峰夫 同 松村廣治 同 近藤行弘 同 幸田勝利 被告 B 右訴訟代理人弁護士 小長井良浩 同 樺島正法 同 菅充行 同 西村文茂 同 北本修二 同 川下清 主文 一 被告は原告に対し、金三〇万円及びこれに対する平成四年三月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 二 原告のその余の請求を棄却する。 三 訴訟費用はこれを一五分し、その一四を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。 四 この判決は第一項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第一 請求 一 被告は、原告に対し一金五〇〇万円及びこれに対する平成四年三月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 二 訴訟費用は原告の負担とする。 三 仮執行宣言 第二 事案の概要 一 本件は、かつては宗教法人日蓮正宗の被包括宗教法人であった世雄寺の住職である原告が、日蓮正宗代表役員である被告に対し、被告が、日蓮正宗総本山大石寺内大講堂における非教師らとの会食会の席上、「A(原告)なんかは学会に金をもらって離脱し、又、あちこちの寺に誘いをかけているそうだ。そして、とりあえず五、〇〇〇万円やると、月給は八〇万円出すということらしい。」という趣旨の発言をして、原告の名誉を毀損したのは不法行為に該当するとして、慰謝料五〇〇万円を請求した事案である。 二 当事者間に争いのない事実及び証拠上認められる基本的な事実 当事者間に争いのない事実及び<証拠略>によれば、当事者及び発言内容等について、次の事実が認められる。 1 原告(昭和三四年五月二八日生)は、昭和四六年三月に得度して日蓮正宗の僧侶となり、昭和六〇年一〇月一六日から、当時はまだ日蓮正宗の被包括宗教法人であった世雄寺(滋賀県<住所略>)の住職になった。なお、世雄寺は、平成四年二月二日、日蓮正宗に対し、同宗から離脱する旨の通知をしている。 原告は、同日ころ、他の僧侶らとともに、日蓮正宗の現体制を批判する内容の「諫暁の書」と題する文書を発表している。 2 被告は、日蓮正宗の法主、管長であり、同宗の代表役員にあるものである。 3 日蓮正宗総本山大石寺では、平成四年三月三〇日から、二日間の予定で、非教師(住職となる資格を得る前の僧侶)指導会が開催されていたが、一日目の被告の御目通りの際に、参加していた五人の非教師が、被告に対し、「離山の書」と題する文書を置いて立ち去るという事件が発生した。 4 被告は、翌三月三一日午前一一時三〇分ころ、大石寺大講堂内において開催された、約一四〇名の非教師らを含む約四〇〇名の僧侶らとの会食会に出席していたが、そのころ、大石寺は、前日の事件について書かれたと思われる「報告書」と題するファックス文書を受信し、その文書が被告の手に渡された。その文書を見た被告は、会食会の席上で、次のとおり発言した。 「『午後九時大奥では、現場検証が行われている』と、『三月三一日、五名の売僧は、創価学会弁護士に相談、あるいは、付き添われX氏らと同様記者会見をし、低俗週刊誌化した創価学会新聞に寄稿でもして生活の糧とするのか。』 多分これは出るだろうよ。そんなことで多分、向こう側のあれらが、いろんなことを言って変な創価学会が金で買っている週刊誌が今あるから、そういうものに、ま、向こうが、あのね、さんざっばら、このお山の悪口・私の悪口をも書いて、昨日のことを針小棒大に、あるいは捏造して、必ず出すだろうと思う。 えー、『奇麗事をいっても事実はそうである。類は友を呼ぶ。お金大好き創価学会に金欲丸出し僧が群がる。』と、 えー、今、これはだね、宗門の僧侶の特に住職の、に対して、学会が、あの、あらゆるところから、総代からも来ている。それからあの、Aとかいうような、あの、この、こないだ向こうに走ったわずかな僧侶も、自分の知っている友人なんかに、どんどん電話をかけている。 五〇〇〇万円やる。五〇〇〇万出すっていうんだな、先ずな。それから、あの、月給が八〇万円、だから、その、宗門を抜けて離脱して、そして、その、なにに、ならないか、という誘いがもう頻繁にかかっているらしいよ。各宗門の僧侶にね。ま、宗門の僧侶が、そんなかでどれだけ金で転ぶか。 まー、もう、もう、そういうことをやること、創価学会は、もう、もう、信者に対して、一人から、こう、一〇万円とか、何十万円、何百万円、できる人には、何千万円のあれをあれして、今は、目茶苦茶な金を集めながらだね、あらゆる金欲をもって、『お金大好き』と、そこに書いてあると、その点はその通りだ。それで、その、僧侶を一人一人金で釣ろうとしている。 ま、もし、こんなかに金がほしい人間がいて、私はそっちに走るといって言うんだったら、かまわね。行け。行っていいよ。そういう根性の腐った者は、日蓮正宗の僧侶にはいらない。 しかし、金で転ぶ者は、必ず、金なんてものは、幾らあったってだね、不義の金は絶対に身につかない。これは、絶対に本当だ。終いには、地獄・餓鬼・畜生のような憂き目を、先ず今生に、生きている間に経験し、死んでからが、本当にすごい地獄に堕ちるという、大聖人様の御書のとおりだな。 ともかく、あれだね、こういうようなことがあるということだ。うちの方の宗門では、先ず、さっきも言ったとおり、堂々と正法正義を常に説ききっておる。なぁ、しかし、金で、しかし金で人を釣るなんでことは、これから先もないよ。どうだ、ないだろう。また今後もない。そんなことは金がいくらあろうとしない。」 第三 本案前の主張等 一 法律上の争訟に該当するか (被告の主張) 本件発言を審理、判断するためには、その前提として宗教問題についての正邪、良否を審理判断することとなるから、そのような問題は法律上の争訟に当たらない。 また、本件発言は宗教団体内部の問題であり、この問題については、一般市民としての権利に関する重大な侵害でない限り、これを司法権の範囲外として訴えを却下すべきである。 (原告の反論) 本件発言自体は、宗教上の教義、信仰に関する事柄でない。また、発言自体の審理判断について、その前提として宗教問題を審理判断する必要もない。本件は、一般市民としての人格的権利が侵害されているから、当然に司法審査の対象となる。 二 弁護士法二五条二号違反による訴訟行為の無効 (被告の主張) 原告訴訟代理人の道上達也、松村廣治両弁護士は、いずれも日蓮正宗被包括宗教法人が債権者となっている別件仮処分申立事件において、被告から実質上の委任を受け、被告との信頼関係に基づいて、日蓮正宗の護持等につき協議を受けたものである。しかるに、両弁護士は、別件仮処分申立事件と関連する本件訴訟において、日蓮正宗の護持等につき攻撃を加える原告の訴訟代理人を努めるもので、弁護士の社会的信用と職務の公正確保を目的とする弁護士法二五条二号に違反するから、両弁護士の訴訟行為は無効というべきである。 (原告の反論) 被告主張の別件仮処分申立事件については、被告から依頼されたものでなく、宗教法人たる各寺院から依頼されたものである上、被告が主張するような宗教事項は争点となっておらず、内容的にも本件訴訟とは別の事件である。 三 証言の排除 (被告の主張) 証人Yは、創価学会の日蓮正宗批判に同調し、被告又は日蓮正宗攻撃の材料を得る目的で平成四年三月三〇日、三一日の非教師指導会に参加し、被告の本件発言をメモしたり、ファックス文書にあらわし、これに基づいて証言するものであるから、同証言は、秘密漏泄罪にあたり、違法に収集された録音テープの証拠能力を排除する考え方と同列に考え、違法収集証拠として排除されるべきである。 第四 本案の争点 一 名誉毀損発言の存否について (原告の主張) 1 被告の発言内容からは、原告が金欲しさから、金に釣られて、金をもらって離脱した、いわば信念を金で売った堕落僧であり、その上、自分の知っている友人僧侶に対しても、金をえさに離脱を働きかける破廉恥な人間であると印象づけるものであるから、原告の社会的評価の低下をもたらすものである。 2 被告は、本件前日の平成四年三月三〇日に起こった非教師らの離山事件を契機に、離脱者に対する攻撃すなわち原告に対する攻撃という意図も有して、約四〇〇人もの聴衆を前に発言したものである。そして、その発言は非教師らの口を通して全国に伝播していくものであり、彼らが日蓮正宗の構成員であるとともに、一般市民社会の構成員でもあり、また、一般社会との接触をもちながら生活していることからすると、原告の社会的評価を低下させるものである。 (被告の主張) 1 被告の発言は、創価学会の行為を指摘したに止まり、原告について述べたものではない。すなわち、原告が友人に対して電話を架けていることを述べたものに過ぎず、買収活動等の事実と原告が結びつくものではない。 2 本件発言は、創価学会の攻撃から教団の組織を防衛維持し、特に修行中の未熟な僧侶である非教師らを教育指導するという自己の正当な利益を援護するためやむをえずなされたものであり、宗教団体内部の非公開の場での弟子に対する指南であって、原告を攻撃するための発言ではなく、原告の名前は偶々出てきたに過ぎないことは明らかである。また、本件発言は、原告ら離脱僧の言動や、創価学会の攻撃に比すれば、内容、態様の点から見ても取るに足らないものである上、原告は、既に離脱により日蓮正宗内の評価は最低であり、本件発言によりさらに評価が低下することはない。以上のとおり、原告には、本件発言による損害はない。 二 違法性の有無について (被告の主張) 本件発言は、公共に関する事柄であり、公益を図る目的に出たものであって、その真実性も証明されている。また、本件発言は創価学会との言論の応酬の正当な一場面である。 したがって、本件発言は違法性が阻却されるものである。 (原告の主張) 本件発言が公共の利害に関する事柄でなく、公益を図る目的に出たものでもない上、その発言内容の真実性の立証もなされていない。また、被告と創価学会との間に言論の応酬はあっても、原告との間には存しないので、右議論は問題にならない。 三 損害額 第五 証拠<略> 第六 本案前の主張等について 一 法律上の争訟に該当するか 1 裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象は、裁判所法三条にいう「法律上の争訟」、すなわち、当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる(最高裁昭和四一年二月八日判決・民集二〇巻二号一九六頁参照。)と解するのが相当である。 原告の請求は、被告の発言が原告の名誉を侵害する違法な行為であるとして、被告に対し、民法七〇九条、七一〇条に基づいて慰謝料を請求するものであり、右当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、それが法令の適用により解決することができるものにあたることは明らかである。 2 もっとも、具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争であっても、法令の適用により解決するのに適しないものは裁判所の審判の対象となりえないというべきである。すなわち、宗教上の教義に関する判断が請求の当否を決するについての前提問題にとどまるものであっても、訴訟の帰すうを左右する必要不可欠のものである等の事情が認められる場合には、その訴訟の実質において法令の適用による終局的な解決の不可能なものであって、法律上の争訟に当たらないというべきである(最高裁昭和五六年四月七日判決・民集三五巻三号四四三頁参照)。 そこで、これを本件についてみるに、本件において原告が名誉及び感情を害されたと主張している被告の発言(前記第二の二、4)における原告に関連する部分は、原告が創価学会の意を受けて日蓮正宗の僧侶に対して、宗門離脱を勧めている事実及びその態様に関するものに限られており、右宗門離脱に関する原告の宗教的見解や信念、日蓮正宗の宗教上の教義に関するものでないことは明らかである。したがって、本件の争点である被告の発言が原告の名誉を違法に毀損するものといえるかどうかを判断するにあたって、宗教上の教義に関する判断が前提問題となるものでもなく、また、その判断が必要不可欠であると解することはできず、本件については右事情は認められない。 3 また、一般に団体内部の紛争については、その紛争が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、当該紛争の解決は、団体内部の自律的解決に委ねられるべきものであって、裁判所の審判権は及ばないと考えられ(最高裁昭和六三年一二月二〇日判決・判例時報一三〇七号一一三頁参照)、この理は宗教団体にも当てはまるものと解されるが、本件において、原告は、本件被告の発言により、その名誉を侵害したと主張しているのであり、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまるものとは解されず、また、その解決を団体内部の自律的解決に委ねるのも相当でないので、審判権が及ばないとすることはできない。 よって、被告の本案前の主張は理由がない。 二 原告訴訟代理人二名の代理権について 被告は、原告訴訟代理人弁護士道上及び松村が、別件である日蓮正宗被包括宗教法人が債権者となった仮処分事件二件について、その債権者の代理人であり、その紛争は本件と関連しているので、本件訴訟活動は弁護士法二五条二号に違反する無効なものであると主張しているが、数人の訴訟代理人がいる場合において、訴訟代理人は各自当事者を代理する権限を有するのであるから、そのうちの数人の訴訟代理人に訴訟行為の無効事由があったとしても、他の訴訟代理人に適法な代理権がある限り、その当事者のためにした訴訟行為は有効であると解されるところ、本件においても、被告主張の右二名のほかにも代理人がいるのであるから、弁護士法二五条二号違反の行為があったかどうかを判断するまでもなく、被告の主張は理由がない。 三 証言排除の申立てについて 被告は、証人Yの証言は違法に収集されたものであるから排除されるべきと主張し、その理由として、同Yは、被告攻撃の材料を確保する意図の下に、本件非教師指導会に参加したのであり、その行為は、宗教上の義務に違反しかつその証言は秘密漏泄罪にあたるので、違法性の程度は著しいとしている。 しかしながら、証人Yの証言によれば、同人は本件教師指導会に参加する資格を有して参加したものである。また、本件昼食会での被告の発言が、刑法上保護される「秘密」に該当するものとも認められない。 被告は、録音テープに関する議論を持ち出して、信義則上証拠能力を認められない場合があると主張した上で、本件はそれに該当すると主張しているが、本件Yの参加の態様からして、仮に証人Yに被告主張の内心の意図があったとしても、その証言が信義則に違反して証拠能力が認められなくなるものとは解されない。 第七 争点に対する判断 一 本案の争点1(名誉毀損発言の存否)について 1 前記本件発言の内容に照らせば、本件発言は、創価学会による日蓮正宗僧侶に対する宗門離脱の勧誘及び平成四年三月三〇日の非教師指導会における事件に対するものとしてなされているものの、その中で特定の者すなわち原告を名指した上、原告を含む複数の者が金をもらって日蓮正宗の宗門を離脱して、さらに、金を出して宗門離脱を勧誘しているとの事実を指摘しているものと認めるのが相当である。これに反する被告の主張は採用できない。 そして、右事実の指摘は「単に日蓮正宗の信徒内での評価にとどまらず、一般的に原告の社会的評価を下げるものと認められ、さらに、本件発言が、約一四〇人の非教師を含む僧侶約四〇〇人という多数の面前で行われたことに照らせば、これらの者を通じてさらに広い範囲に流布される可能性があると認められる。以上によれば、本件発言は、原告の名誉を侵害する違法なものと評価するのが相当である。 2 この点、被告は、本件発言は、その目的が、組織防衛のためであって、原告を個人攻撃するためのものではないと主張している。しかしながら、被告の発言の主たる目的が被告主張の通りであったとしても、右事実によって、本件発言による原告の社会的評価の低下が生じないと解することは到底できない上、原告がすでに被告を批判する文書を提出して離脱の意思を表明していたことや、原告の名を指摘した発言内容に照らせば、少なくとも離脱者の一人としての原告個人をも批判する意図があったと認められる。 したがって、被告の右主張は採用できない。 3 また、被告は、本件発言が、日蓮正宗総本山における非公開の場においてなされたのであるから、流布される可能性がなかったと主張しているが、本件発言がなされたのが、日蓮正宗の総本山内における非教師に対するものであり、非公開であったとしても、その聴衆が約四〇〇人という多数に及んでおり、また、発言内容が特に秘密とされてもおらず、非公開ということからただちに流布する可能性がなかったとはいえない。かえって、1項の事実からすると、発言内容は全国の末寺に流布する可能性があったと認められる。 4 さらに、被告は、本件発言が、非教師に対する教育の一貫であると主張しているが、非教師に対する教育指南としてなされたものであったとしても、そのことから原告に損害が生じないと解したり適法な発言と認めることはできない。 加えて、被告は、原告の日蓮正宗内の評価は既に離脱により低下しており、その損害がないと主張しているが、仮に日蓮正宗内での評価が低下していたとしても、本件発言内容のとおり、金銭に関する事実の指摘によって、さらに評価が低下するのは明らかである上、一般人の評価が低下することも明らかであるので、損害が全く発生するおそれがなかったとはいい難い。 5 以上のとおりであるから、本件発言が原告の名誉ないし感情を侵害しないという被告の主張は採用できない。 二 本案の争点2(違法性の有無)について 1 被告は、本件発言が、公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図る目的に出たものと主張した上で、事実について真実性の立証がされていると主張しているが、原告は、地方の小さな寺の住職に過ぎず、離脱にあたり記者会見をして新聞報道されたこと以上に、何らかの公共性をうかがわせる事実は認められず、公益を図る目的も認められないので、真実性について判断するまでもなく、被告の右主張は採用しない。 2 また、被告は、原告を創価学会の名目的原告と主張した上で、創価学会と被告との間には言論の応酬があり、本件発言はその一場面にすぎないから、違法性が阻却されると主張している。しかしながら、仮に原告と創価学会との間に緊密な関係があり、創価学会と被告との間に熾烈な論争が続いていたとしても、本件発言の内容、発言の場所や前記のとおり、少なくとも宗門離脱者としての原告個人に対する非難の意図が認められることなどを考慮すれば、そのような事情により、原告個人の名誉が全く保護に値しないものになるとか、本件発言の違法性が阻却されると解することはできない。 したがって、この点に関する被告の主張も採用しない。 三 本案の争点3(損害額)について 本件発言の違法性の程度及び原告に生じだ損害について検討するに、本件発言は、日蓮正宗総本山大石寺大講堂での昼食会といういわば被告側内部の発言であること、非教師に対する指南指導という目的のために、専ら創価学会に対する非難を内容とする発言をした際に、たまたま、離脱者の名として原告を挙げたにとどまり、原告非難が主たる目的でなかったこと、その発言時間もわずかであり、原告の名も一度出たに過ぎないこと、原告は既に被告に対する批判文書を提出しており、本件発言による原告の外部的評価の低下との関係で最も重要である日蓮正宗信徒内での評価は既に相当低下していたと考えられること、原告自身、右批判文書において被告を相当激しく非難している事情が認められる下では、本件発言による原告の精神的損害に対する慰謝料は三〇万円とするのが相当である。 四 結論 以上によれば、原告の請求のうち金三〇万円及びこれに対する平成四年三月三一日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める部分については理由があるからこれを認容し、その余の部分については理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法六一条、六四条本文を、仮執行の宣言につき、同法二五九条一項をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。 大津地方裁判所民事部 裁判長裁判官 鋼木重明 裁判官 末永雅之 裁判官 小西洋 |
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