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【事件名】コンサートの無断撮影・複製・頒布事件(刑)
【年月日】平成8年10月24日
 千葉地裁 平成8年(わ)第1042号

判決
本籍 千葉市(以下住所略)
住居 (住所略)
 学生S・NことN・T 昭和48年(以下略)生

 右の者に対する著作権法違反被告事件について、当裁判所は、検察官伊藤薫出席の上審理し、次のとおり判決する。


主文
 被告人を懲役1年に処する。
 この裁判確定の日から3年間右刑の執行を猶予する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、T・Kと共謀の上、歌手木村拓哉が平成6年8月30日に東京都千代田区所在の日本武道館において歌唱するなどした「木村拓哉オロナミンCコンサート」の実演を著作隣接権者に無断で撮影したビデオテープの複製を作成して不特定多数の者に販売して頒布しようと企て、右実演の著作隣接権を有する株式会社ジャニーズ出版の許諾を受けず、かつ、法定の除外事由がないのに、別紙犯罪事実一覧表記載の通り、右Kにおいて、平成8年2月5日ころから同年5月1日ころまでの問、前後4回に渡り、千葉県(以下住所略)の同人方において、右ビデオテープを録画して複製ビデオテープを合計4巻作成した上、同年2月6日ころから同年5月2日ころまでの間、前後4回に渡り、右各複製ビデオテープを同町一宮2,947番地所在の一宮郵便局から東京都(以下住所略)のM・S方外3か所に順次郵送し、同人らに右各複製ビデオテープを1巻6,000円で販売して頒布し、もって、右株式会社ジャニース出版の著作隣接権を侵害したものである。
(証拠の標目)
 (注)各項括弧内の数字は証拠等関係カードの検察官請求証拠の甲乙別の番号を示す。
判示事実全部について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する各供述調書(乙9、10)
一 被告人の司法警察員に対する各供述調書(乙1ないし8)
一 T・Kの司法警察員(甲28ないし30)及び検察官(甲31、32)に対する各供述調書
一 K・SことR・Aの司法警察員(甲25)及び検察官(甲26、27)に対する各供述調書
一 K・N(甲2)及びT・I(甲23)の司法警察員に対する各供述調書
一 司法警察員作成の捜査照会書(謄本)(甲5)、領置物件謄本作成報告書(甲3)、証拠品見分結果報告書3通(甲11ないし13)、「著作権法違反被疑事件における押収した証拠品の同一性報告書」と題する書面(甲14)、分析結果報告書2通(甲19、22)、捜査報告書3通(甲20、21、24)及び電話照会結果報告書(甲4)
一 文化庁文化部著作権課長作成の「捜査関係事項について(回答)」と題する書面(甲6)
判示別紙犯罪事実一覧表番号1の事実について
一 M・Sの司法警察員に対する供述調書(甲7)
一 司法警察員作成の見分結果報告書(甲15)
同番号2の事実について
一 N・Hの司法警察員に対する供述調書(甲8)
一 司法警察員作成の見分結果報告書(甲16)
同番号3の事実ついて
一 A・Tの司法警察員に対する供述調書(甲9)
一 司法警察員作成の見分結果報告書(甲17)
同番号4の事実について
一 Y・Nの司法警察員に対する供述調書(甲10)
一 司法警察員作成の見分結果報告書(甲18)
(法令の適用)
 被告人の判示各所為はいずれも刑法60条、著作権法119条1号、113条1項2号、91条1項にそれぞれ該当するところ、各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法45条前段の併合罪であるから、同法47条本文、10条により犯情の最も重い別紙犯罪事実一覧表番号4の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役1年に処し、情状により同法25条1項を適用してこの裁判確定の日から3年間右刑の執行を猶予する。
(量刑の理由)
 本件は、被告人が、人気歌手の木村拓哉のコンサートを盗み撮りしたいわゆる「隠し撮りビデオテープ」を販売目的で入手し、著作隣接権者の許諾を受けずに複製テープを作成して、不特定多数人に通信販売の方法で頒布し、被害会社の著作隣接権を侵害したという事案である。
 被告人は、違法行為であることを熟知しながら安易に本件犯行を敢行し、被害会社の著作隣接権を侵害して自己の経済的利益を図ったものであり、本件各犯行の動機に酌量の余地はない。また、本件各犯行の態様は、コンサート会場周辺で大量のチラシを配付して顧客を募り、偽名を使用して隠し撮りビデオテープの販売を反復・継続的に行ったもので、巧妙かつ悪質である。以上の事実からすれば、被告人の犯情は悪く、刑事責任は軽視できない。
 しかし、被告人は本件各犯行を反省していること、これまで前科はないこと、被告人の母親が証人として出廷し、今後被告人を指導監督する意向を示し、被告人も大学生として真面目に勉学に励むことを誓っていること等、被告人にとって酌むべき事情もあるので、これらの事情を考慮して今回は刑の執行を猶予することとし、主文のとおり量刑した。
 よって、主文のとおり判決する。

平成8年10月24日
千葉地方裁判所刑事第1部
 裁判官 吉本徹也


別紙犯罪事実一覧表
番号 複製年月日(平成8年) 複製場所 頒布数(複製数) 頒布年月日(平成8年) 頒布場所 頒布先 販売価格(円)
2月5日ころ 千葉県(以下住所略)K方 1巻 2月6日ころ 千葉県(以下住所略)所在一宮郵便局 東京都(以下住所略) M・S 6,000
2月8日ころ 上同 上同 2月9日ころ 上同 千葉県(以下住所略) N・H 6,000
2月15日ころ 上同 上同 2月16日ころ 上同 仙台市(以下住所略) A・T 6,000
5月1日ころ 上同 上同 5月2日ころ 上同 東京都(以下住所略) Y・N 6,000

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