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【事件名】日米ビデオソフトの無断複製・貸与事件(刑)
【年月日】平成8年1月12日
 那覇地裁 平成7年(わ)第317号、第328号、第357号

判決文
平成8年1月12日宣告
 裁判所書記官 井口恭子
平成7年(わ)第317号、第328号、第357号

判決
本店の所在地 沖縄県(以下住所略)
法人の名称 有限会社タウン
代表者の住居 (住所略)
代表者の氏名 S・N
本籍 沖縄県(以下住所略)
住居 (住所略)
  無職 M・N
      昭和34年(以下略)生
 
 右両名に対する各著作権法違反、商標法違反被告事件について、当裁判所は、検察官吉野通洋出席の上審理し、次のとおり判決する。


主文
 被告人有限会社タウンを罰金300万円に、被告人M・Nを懲役1年6月にそれぞれ処する。
 被告人M・Nに対し、この裁判確定の日から3年間右刑の執行を猶予する。
 被告人有限会社タウンから、那覇地方検察庁で保管中のビデオカセットテープ219本(平成7年領第539号符号3、83ないし85、96、97、104ないし106、172ないし175、179ないし182、184ないし189、282ないし284、294、300及び312ないし317)、ビデオデッキ33台(同号符号4ないし20、217ないし221及び379ないし389)、分配器3台(同号符号195ないし197)、コピーガードキャンセラー4台(同号符号21、22及び198)を没収する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人有限会社タウンは、沖縄県(以下住所略)に本店を置き、ビデオソフトの賃貸等の業務を行うもの、被告人M・Nは、代表取締役として被告人会杜の業務全般を統括していたものであるが、被告人Nは、被告人会杜の業務に関し、
第1 A・A等と共謀の上、法定の除外事由がなく、かつ、著作権者である20世紀フォックスフィルムコーポレーション(代表者メリー・アンヌ・ハリソン)ほか4社の許諾を得ないで、別紙複製一覧表記載のとおり、平成7年5月25日ころから同年9月7日ころまでの間、右被告人会杜本店において、右20世紀フォックスフィルムコーポレーションが著作権を有する映画の著作物「スピード」ほか6点をビデオカセットテープ215本にダピングして複製し、もって右20世紀フォックスフィルムコーポレーションほか4社の著作権を侵害し、
第2 T・T等と共謀の上、法定の除外事由がなく、かつ、著作権者である東宝株式会社(代表取締役石田俊彦)ほか3社の許諾を得ないで、別紙犯罪事実一覧表記載のとおり、同年7月30日ころから同年8月15日ころまでの間、レンタルショップタウン与那原店(店長T・T)ほか5店舗において、右東宝株式会社が著作権を有する映画の著作物「ゴジラVSスペースゴジラ」ほか5点の複製されたビデオカセットテープ合計13本を、それらがいずれも右著作権者らの許諾を得ずに複製されたものであることの情を知りながら、公衆であるB・Iほか3名に賃貸して頒布し、もって右東宝株式会社ほか3社の著作権を侵害し、
第3 K・K等と共謀の上、東宝株式会社が商標登録を受けた別紙商標目録1記載の商標について、何ら権利がないのに、右登録商標の指定商品に類似する商品であるビデオカセットテープに右登録商標を使用するため、同年7月12日ころ、那覇市(以下住所略)所在の神山シール工芸杜において、「ゴジラVSスペースゴジラ」のビデオカセットテープの背と腹のラベルに酷似し、かつ、右登録商標を表示するラベル20組合計40枚を印刷して製造し、何ら権利がないのに、同月13日ころ、右被告人会杜本店において、「ゴジラVSスペースゴジラ」が複製されたビデオカセットテープ20本に、右ラベル20組合計40枚を貼付して右登録商標を使用し、もって右東宝株式会杜の商標権を侵害し、
第4 A・A等と共謀の上、東映株式会杜が商標登録を受けた別紙商標目録2記載の商標について、何ら権利がないのに、右登録商標の指定商品に類似する商品であるビデオカセットテープに右登録商標を使用するため、同年9月7日ころ、右被告人会社本店において、「DRAGON BALLZ 復活のフュージョン!! 悟空とベジータ」のビデオカセットテープの背と腹のラベルをカラーコピーするなどして右登録商標を表示するラベル18組合計36枚を製造し、何ら権利がないのに、そのころ、同所において、「DARAGON BALLZ 復活のフュージョン!! 悟空とベジータ」が複製されたビデオカセットテープ18本に、右ラベル18組合計36枚を貼付して右登録商標を使用し、もって右東映株式会社の商標権を侵害したものである。
 
(証拠の標目)
判示事実全部について
 被告人Nの当公判廷における供述
 被告人Nの検察官(平成7年10月19日付け、同年11月8日付け)及び司法警察員(同年9月28日付け4丁のもの、同月29日付け、同年11月1O日付け)に対する各供述調書
 H・N(平成7年10月16日付げ)及びH・Y(同付日付け)の検察官に対する各調書(謄本)
 S・Z、Mk・N(平成7年9月29日付け、同年11月8日付げ)、M・K、M・F、T・T、Mt・N、H・K(平成7年10月3日付け)、H・U(平成7年10月4日付げ)H・Y及びY・Sの司法警察員に対する各供述調書(Z、Mk・Nの11月8日付け及びS以外はいずれも謄本)
 司法警察員作成の平成7年9月29日付け捜査報告書、検証調書及び捜索差押調書(乙)
 司法巡査作成の実況見分調書
 登記官前里幸廣作成の登記簿謄本
判示第1、第2の事実について
 M・Iの司法警察員に対する供述調書
 M・F作成の任意提出書並びに司法警察員前原勉作成の領置経過報告書及び領置調書
 検察事務官作成の写真撮影報告書(5丁のもの)
判示第1の複製一覧表1ないし6、第2及び第3の事実について
 A・Aの検察官(平成7年10月13日付け)及び司法警察員(同月4日付げ)に対する各供述調書(謄本)
 Mk・N(平成7年10月11日付け、同月16日付け)及びK・Kの司法警察員に対する各供述調書(謄本)
判示第1の複製一覧表1ないし6及び第3の事実について
 被告人Nの司法警察員に対する平成7年11月3日付け及び同月の4月付け各供述調書
 Mk・N(平成7年11月2日付け、同月9日付け)、A・A(同月4日付け)、K・T(謄本2通)、T・T及びH・Y(同月3日付げ謄本)の司法警察員に対する各供述調書
 H・K作成の任意提出書並びに司法警察員宮平政則作成の領置経過報告書及び領置調書
 司法警察員作成の捜索差押調書(甲)2通(普通貨物自動車(沖縄45せ7947)及び有限会社タウンAVシステム事業部におげるもの)
 検察事務官作成の写真撮影報告書(8丁のもの)
判示第1の複製一覧表1ないし6の事実について
 Mk・N(平成7年11月6日付け)、A・A(同月4日付け)、M・F(同日付け)、H・N(同年10月31日付け)及びH・U(同年11月4日付け)の司法警察員に対する各供述調書(N以外はいずれも謄本)
判示第1の複製一覧表1、2及び4ないし6の事実について
 司法警察員作成の鑑定嘱託書(謄本)2通(与生安第416号、第430号)
判示第1の複製一覧表1、4及び5の事実について
 20世紀フォックスフィルムコーポレーション代理人遠山友寛ほか2名作成の平成7年10月19日付げ告訴状
 株式会社日本国際映画著作権協会作成の「鑑定結果のご報告」と題する書面2通(「X一ファイル8」4本ほか5本及び「X一ファイル8」4本ほか13本についてのもの)
判示第1の複製一覧表1の事実について
 司法警察員作成の鑑定嘱託書(謄本)(与生安第423号)
 株式会社日本国際映画著作権協会作成の「鑑定結果のご報告」と題する書面2通(「スピード」1本及び同10本についてのもの)
判示第1の複製一覧表2及び4の事実について
 司法警察員作成の捜索差押調書(甲)(レソタルショップタウン大謝名店におげるもの)
 司法警察員作成の証拠品選別報告書(レンタルショップタウン大謝名店で差し押さえた証拠品についてのもの)
 司法警察員作成の鑑定嘱託書(謄本)(写生安第421号)
判示第1の複製一覧表2の事実について
 パラマウントピクチュアズコーポレーション代理人遠山友寛ほか2名作成の平成7年10月19日付げ告訴状
 株式会社日本国際映画著作権協会作成の「鑑定結果のご報告」と題する書面3通(「今そこにある危機」2本、同8本及び同13本についてのもの)
判示第1の複製一覧表3ないし6及び第3の事実について
 司法警察員作成の捜索差押調書(甲)2通(軽貨物自動車(沖縄40て8457)及びI・G方におけるもの)
判示第1の複製一覧表3、4、6及び第3の事実について
 司法警察員作成の捜索差押調書(甲)(レンタルショップタウン与那原店におげるもの)
判示第1の複製一覧表3、6及び第3の事実について
 司法警察員作成の証拠選別報告書(レンタルショップタウン与那原店で差し押さえた証拠品についてのもの)
判示第1の複製一覧表3及び第3の事実について
 司法警察員作成の鑑定嘱託書(謄本)5通(与生安第424号ないし第427号、第433号)
 社団法人日本ビデオ協会作成の「鑑定結果について」と題する書面5通(右各鑑定嘱託に対するもの)
判示第1の複製一覧表4ないし6の事実について
 H・U作成の任意提出書並びに司法警察員天願武作成の領置経過報告書及び領置調書
 司法警察員作成の鑑定嘱託書(謄本)4通(写生安第417号、第418号、第422号、第429号)
 司法警察員作成の捜索差押調書(甲)(レソタルショップタウン寄宮店におけるもの)
判示第1の複製一覧表4、5の事実について
 株式会社日本国際映画著作権協会作成の「鑑定結果のご報告」と題する書面3通(「X一ファイル8」1本ほか2本、「X一ファイル8」2本ほか4本及び「X一ファイル8」9本ほか7本についてのもの)
判示第1の複製一覧表4及び6の事実について
 司法警察員作成の鑑定嘱託書(謄本)(写生安第420号)
判示第1の複製一覧表4の事実について
 株式会社日本国際映画著作権協会作成の「鑑定結果のご報告」と題する書面4通(「X一ファイル8」1本(2通)、同2本及び同4本についてのもの)
判示第1の複製一覧表5の事実について
 株式会社日本国際映画著作権協会作成の「鑑定結果のご報告」と題する書面(「X一ファイル10」1本についてのもの)
判示第1の複製一覧表6の事実について
 ワーナーブラザーズインク代理人遠山友寛ほか2名作成の平成7年10月19日付け告訴状
 株式会社日本国際映画著作権協会作成の「鑑定結果のご報告」と題する書面8通(「スペシャリスト」1本(3通)、同7本、同14本(2通)、同20本及び同29本についてのもの)
判示第1の複製一覧表7及び第4の事実について
 被告人Nの司法警察員に対する平成7年10月21日付け、同月23日付げ及び同月24日付げ各供述調書
 A・Aの検察官(平成7年11月7日付げ謄本)及び司法警察員(同年10月8日付け謄本、同月28日付け)に対する各供述調書
 T・G、S・T、Mk・N(平成7年10月26日付け)及びY・Aの司法警察員に対する各供述調書
 東映株式会社代理人前田哲男作成の告訴状
 H・N作成の任意提出書及び司法警察員伊山高作成の領置調書
 被告人N作成の任意提出書及び司法警察員知念誠仁作成の領置調書
 司法警察員作成の鑑定嘱託書(写し)2通及び社団法人日本ビデオ協会作成の「鑑定結果について」と題する書面2通(右各鑑定嘱託に対するもの)
 検察事務官作成の写真撮影報告書(3丁のもの)
判示第2の事実について
 被告人Nの司法警察員に対する平成7年10月10日付げ供述調書
 T・T、H・K及びH・Uの検察官に対する各供述調書(謄本)
 A・I、K・M、H・N(謄本2通)H・K(平成7年10月9日付け謄本)、H・U(平成7年10月9日付け謄本)の司法警察員に対する各供述調書
 司法警察員作成の証拠品の精査報告書2通
判示第2の犯罪事実一覧表1ないし3及び8の事実について
 東宝株式会社代理人前田哲男作成の告訴状(鑑定結果報告書等添付)
判示第2の犯罪事実一覧表1、2、6及び7の事実について
 B・Iの司法警察員に対する供述調書
判示第2の犯罪事実一覧表2及び7の事実について
 H・Nの検察官に対する平成7年10月18日付け供述調書(謄本)
 St・Nの司法警察員に対する供述調書(謄本)
判示第2の犯罪事実一覧表 3及ひ10の事実について
 Mt・Nの検察官に対する供述調書(謄本)
判示第2の犯罪事実覧表 4、5、7及ぴ9中の「X一ファイル10」に関する部分の事実について
 20世紀フォックスフィルムコーポレーション代理人遠山友寛ほか2名作成の平成7年9月4日付け告訴状(「鑑定結果のご報告」と題する書面等添付)
判示第2の犯罪事実 一覧表4、5、7中の「スピード」に関する部分及び10の事実について
 検察事務官作成の写真撮影報告書(4丁のもの)
判示第2の犯罪事実 一覧表5の事実について
 T・Nの司法警察員に対する供述調書判示第2の犯罪事実一覧表6及び9中の「今そこにある危機」に関する部分の事実について
 パラマウントピクチュアズコーポレーション代理人遠山友寛ほか2名作成の平成7年9月4日付け告訴状(「鑑定結果のご報告」と題する書面等添付)
判示第2の犯罪事実 一覧表10の事実について
 ワーナーブラザーズインク代理人遠山友寛ほか2名作成の平成7年9月4日付げ告訴状(「鑑定結果のご報告」と題する書面等添付) 
判示第3の事実について
 東宝株式会社代理人前田哲男作成の追加告訴状(商標登録原簿等添付)
判示第4の事実について
 I・Yの司法警察員に対する供述調書(法令の適用)

 判示第1の所為は被告人Nについて別紙複製一覧表1ないし7の各事実ことに包括して刑法(同表1については平成7年法律第91号による改正前のもの)60条、著作権法119条1号に、被告人会社について同様に同法124条1項、119条1号に、判示第2の所為は被告人Nについて著作物ごとに(複製品が複数の場合は包括して)刑法60条、著作権法119条1号、113条1項2号に、被告人会杜について同様に同法124条1項、119条1号、113条1項2号に、判示第3、第4の各所為は被告人Nについていずれも包括して刑法60条、商標法78条(37条7号、1号)に、被告人会社について同様に同法82条、78条(37条7号、1号)にそれぞれ該当するので、被告人Nについて各所定刑中いずれも懲役刑を選択した上、以上は刑法45条前段の併合罪であるから、被告人Nについて同法47条本文、10条により刑及び犯情の最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役1年6月に、被告人会社について同法48条2項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で同被告人を罰金300万円にそれぞれ処し、情状により同法25条1項を適用して被告人Nに対しこの裁判確定の日から3年間右刑の執行を猶予することとし、那覇地方検察庁で保管中のビデオカセットテープ215本(平成7年領第539号符号3、83ないし85、96、97、104、105、172ないし175、179ないし182(後記1本を除く。)、184ないし189(後記1本を除く。)、282ないし284(後記1本を除く。)、294、300及び312ないし317)は判示第1の犯罪行為によって生じた物、ビデオカセットテープ4本(同号符号106、181中バーコード番号0871801000038のもの、186中バーコード番号1227001OOOO16のもの、283中バーコード番号010000005799-5のもの)は判示第2の犯罪行為を組成した物、ビデオデッキ33台(同号符号4ないし20、217ないし221及び379ないし389)、分配器3台(同号符号195ないし197)及びコピーガードキャンセラー4台(同母符号21、22及び198)は判示第1の犯罪行為の用に供し又は供しようとした物であって、いずれも被告人会杜以外の者に属しないから、同法19条1項1号(ビデオカセットテープ4本)、2号(ヒテオデッキ、分配器及ぴコピーガードキャンセラー)、3号(ビデオカセットテープ215本)、2項本文を適用してこれらを同被告人から没収する。
 よって、主文のとおり判決する。

平成8年1月12日
那覇地方裁判所刑事第1部
 裁判官 大野正男
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日本ユニ著作権センター
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