判例全文 | ![]() |
|
![]() |
【事件名】「韓国の歌」編集著作権確認等請求事件 【年月日】平成7年11月24日 東京地裁 平成4年(ワ)第12389号 編集者著作権確認等請求事件 判決 原告 X 右訴訟代理人弁護士 岡田和樹 同 神田高 被告 有限会社イサオ商事 右代表者代表取締役 Y 被告 Y 右両名訴訟代理人弁護士 伊藤博 主文 1 別紙目録1記載の編集著作物につき、原告が著作権を有することを確認する。 2 被告有限会社イサオ商事は、原告に対し、金462万円及びこれに対する平成4年8月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 3 原告の被告Yに対するその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は、原告と被告有限会社イサオ商事との間に生じた費用は全部同被告の負担とし、原告と被告Yとの間に生じた費用はこれを2分し、その1は原告の負担とし、その余は同被告の負担とする。 この判決第2項は、仮に執行することができる。 事実 第1 当事者の求めた裁判 一 請求の趣旨 1 主文1項同旨。 2 主文2項同旨。 3 被告Yは、原告に対し、金100万円及びこれに対する平成4年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は被告らの負担とする。 5 第2、3項につき、仮執行宣言 二 請求の趣旨に対する答弁 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 第2 当事者の主張 一 請求原因 1 原告と被告有限会社イサオ商事(以下「被告会社」という。)の代理人被告Yは、平成2年4月ころ、韓国の歌の韓国語の歌詞に日本語のルビをふった歌詞集及び楽譜集を、次の約定で共同で出版することを合意した。 (一)右歌詞集及び楽譜集は原告が編集し、被告会社が印刷資金等を出して発行する。 (二)被告会社は、原告の報酬として、右歌詞集の複製物を400冊、楽譜集の複製物を200冊交付する。 2 原告は、平成3年8月ころ、韓国語の歌詞に日本語のルビをふった歌詞集及び楽譜集の編集を完成し、原稿を被告Yに交付し、被告会社はこれを印刷して、平成3年12月、別紙目録1(1)記載の著作物(以下「本件歌詞集(改訂版)」という。)及び同1(2)記載の著作物(以下「本件楽譜集」という。別紙目録1(1)(2)を合わせて「本件著作物」という。)を出版した。 3 被告らは、原告の本件著作物についての著作権を争う。 4 被告会社は、本件著作物の複製物を原告に交付しない。 5 原告は、被告会社の債務不履行により、本件著作物販売代金額相当の462万円(1冊あたり7700円)の得べかりし利益を喪失した。 6 被告Yは、本件著作物の編集ミスなどの虚構の事実を作り上げ、その責任を原告になすりつけ、原告に対し損害賠償を請求したり、編集人の資格がないと決めつけるなど、本件著作物についての原告の著作権を否認する行為を行い、その結果、原告の名誉感情は著しく傷つけられ、これによって原告は精神的損害を被った。 右慰謝料としては、100万円が相当である。 7 よって、原告は、 (1)被告らに対し、本件著作物の著作権が原告にあることの確認、 (2)被告会社に対し、債務不履行による損害賠償として、462万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払い、 (3)被告Yに対し、不法行為による損害賠償として、100万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払い、を求める。 二 請求原因に対する認否 1 請求原因1の事実は否認する。 2 同2のうち、被告会社が本件著作物を出版したことは認め、その余の事実は否認する。 本件歌詞集(改訂版)は、原告及び被告Yが共同で編集著作したものであり、本件楽譜集は被告Yが編集したものである。 3 同3の事実は認める。 4 同4の事実は認める。 5 同5の事実は否認する。 6 同6のうち、原告に対し損害賠償を請求したり、編集人の資格がないと決めつけるなど、本件著作物についての原告の著作権を否認する行為を行ったことは認め、その余は否認する。 三 被告会社の抗弁(相殺) 1 被告会社の売買代金債権 (一)原告と被告会社は、昭和63年11月ころ、別紙目録2記載の著作物(以下「本件歌詞集(旧版)」という。)を出版するに際し、被告会社が原告に売り渡すときは、定価1万円の7掛けである1冊7000円を売価とする旨の合意をした。 (二)被告会社は、原告に対し、次のとおり、合計631冊の本件歌詞集(旧版)を売り渡し、その代金は合計441万7000円であった。 (1)昭和63年1月17日から平成元年1月17日までの間に121冊 (2)平成元年1月29日に495冊 (3)平成元年2月9日に15冊 (三)被告会社は、原告から、平成元年1月29日、右代金の内金5万円を受領し、残代金436万7000円の債権を有している。 2 被告会社の債権(予備的主張) (一)仮に、右1(一)の売買契約が認められないとしても、被告会社と原告との間で、本件歌詞集(旧版)について、利益配分の前提として1冊につき7000円の販売代金を一旦被告会社に入金する旨の合意があった。 (二)原告が入金すべき販売代金は、631冊分の合計441万7000円から支払済みの5万円を控除した残金436万7000円であり、被告会社は、同額の債権を有する。 3 相殺の意思表示 被告会社は、原告に対し、平成7年2月20日の本件第15回準備手続期日において、右1、2の債権をもって、原告の被告会社に対する本訴債権とその対当額において相殺する旨の意思表示をした。 四 抗弁に対する認否 1 抗弁1(一)の事実は否認する。 同1(二)のうち、原告が本件歌詞集(旧版)合計631冊の交付を受けたことは認め、その余の事実は否認する。 同1(三)のうち、原告が5万円を支払ったことは認め、その余の事実は否認する。 2 同2(一)の事実は認める。 同2(二)のうち、本件歌詞集(旧版)の588冊分の合計411万6000円につき、被告会社に入金すべきであったことは認め、その余は否認する。その余の43冊分は、見本又は寄贈分である。3 同3の事実は認める。 五 再抗弁 仮に、抗弁1または2の事実が認められたとしても、原告と被告会社(代理人被告Y)は、平成2年4月ころ、右債権については、請求しないことを合意した。 六 再抗弁に対する認否 再抗弁事実は否認する。 第3 証拠関係は、本件記録の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるからこれを引用する。 理由 第1 著作権確認請求について 一 原告本人尋問の結果(第1、2回)、被告Y本人尋問の結果及び後掲の各証拠によれば、本件についての事実経過は、次のとおりと認められる。 1 原告は、韓国で生まれ、昭和16年に来日して、昭和26年に国際音楽学校を卒業し、昭和33年からキャバレーやクラブでピアノを演奏するなど、音楽関係の仕事についていた。 被告Yは、韓国のKBS放送でバンドマスターや音楽プロデューサーを務め、その後ナイトクラブのバンドマスターをした後、昭和58年ころ、来日してクラブでエレクトーン演奏をしていて、そのころ、原告と知り合った。 原告は、日本語も韓国語も読み書きができるのに対し、被告Yは日本語の理解が充分でない。 2 原告は、昭和60年ころ、クラブで日本人の客から韓国の歌にルビをふってほしいなどの要望を受け、韓国語の歌詞に日本語のルビをふった歌詞集を出してみることを思い立ち、被告Yに相談して、当時同被告が経営の実権を有していた被告会社と原告が、共同でこれを出版することになった。そして原告と被告会社の代理人被告Yは、具体的には、当座の資金は被告会社が出し、原告は歌詞にルビをふるなど編集作業に携わって韓国語の歌詞に日本語のルビをふった歌詞集を出版することを合意した。 3 昭和61年10月ころ、歌詞集の印刷が行われたが、このときの歌詞集(第1版)は、資料として集めた楽譜等を充分に編集しないままに印刷業者に任せれば良いとの被告Y及び原告の考えで印刷業者に原稿を渡したところ、使い物にならない出来であったので、ゲラ刷で廃棄された(成立に争いのない甲20の1、原告本人尋問の結果(第2回)真正に成立したものと認められる甲20の2、甲20の3(官署作成部分の成立は争いがない。)、乙1の存在)。 4 原告と被告会社の実質的代表者である被告Yは、昭和63年ころにいたり、再度きちんと編集をして本件歌詞集(旧版)を出版し、売上から必要経費を差し引いた利益を、原告が45パーセント、被告会社が55パーセントの割合で配分することを合意した。 5 昭和63年12月、本件歌詞集(旧版)が発行された。本件歌詞集(旧版)には、原告が「発刊によせて」として選曲や歌詞についてのコメントを掲載し、その奥付には、「編集 原告」「監修 被告Y・A」「発行 被告会社」との趣旨の記載がされていた(いずれも成立に争いのない甲6の1ないし4、甲17の1ないし3)。 6 平成2年初めころ、原告と被告Yは、本件歌詞集(旧版)を改訂すること及び本件楽譜集の出版を合意し、本件歌詞集(旧版)と曲を一部入れ換えするなどして、一旦平成3年5月、歌詞集(第3版)が印刷されたが、印刷ミス等があったため廃棄され、同年12月、あらためて本件歌詞集(改訂版)及び本件楽譜集が発行された。廃棄された歌詞集(第3版)の奥付には、「編集 被告Y・原告」「日本語監修 原告」「発行 被告会社」との記載があったが、本件歌詞集(改訂版)には、原告が「編集後記」を掲載し、本件歌詞集(改訂版)及び本件楽譜集の奥付には、「編集 原告」「監修 被告Y・A」「発行 被告会社」との記載がある(いずれも成立に争いのない甲7の1ないし3、甲8の1ないし4、甲18の1、2、前掲甲20の1ないし3、いずれも被告Y本人尋問の結果真正に成立したものと認められる乙2、乙3)。 7 その後、被告会社が原告に約定の本件歌詞集(改訂版)及び本件楽譜集の引渡しをしないこと等から、本件紛争が始まった(いずれも成立に争いのない甲1ないし甲4)。 二 いずれも成立に争いのない甲9、甲10、甲19の1、2、甲10により真正に成立したものと認められる甲11ないし甲16、原告本人尋問の結果(第1、2回)によれば、本件著作物の編集経過については、次の事実が認められる。 1 本件歌詞集(旧版)の編集 原告は、被告Yの意見も採り入れて掲載が適切な曲を選曲し、選曲したものにつき、既に自ら収集していたものの外、韓国語の歌詞のついている楽譜を集め、一部は被告Yからも楽譜等の提供を受けて、資料を整え、それらの資料は判型が大小様々であることから拡大コピーする等して楽譜をB5判の大きさに整え、そこから歌詞の部分を手書きで抜き出し、ハングル語の歌詞に日本語のカタカナでルビをふり、その下にその歌詞の日本語訳を記載した。日本語の歌詞がある場合はそのまま、また、日本語の訳詞をつける必要がある場合は、まず原告が直訳し、それを作詞家であるAに渡して、訳詞を依頼し、作成してもらった。このようにして、原告は、韓国の曲754曲と日本の曲30曲につき、ハングル語の歌詞に日本語のカタカナでルビをふり、その下にその歌詞の日本語訳を記載した体裁の原稿を作成し、これを韓国語のクヌドゥル順(日本語のアイウエオ順に相当する。)を基本とし、歌詞に長短があることから1曲分を1頁又は見開き2頁に収めることができるように、かつ別に発行予定の楽譜集に対応する曲の楽譜を同じ順序で、しかも1曲分を1頁又は見開き2頁に収めることができるように(歌詞の長短と楽譜の長短は必ずしも一致しない。)順序を調整して、曲を配列していったものである。 2 本件歌詞集(改訂版)の編集 原告は、平成3年秋、韓国の旅館に泊まり込みで、Aの協力を得るなどして、編集作業にあたった。原告は、被告Y等の意見を採り入れて旧版から韓国の曲35曲を削除し、韓国の曲185曲を追加し、さらに日本の曲5曲を追加して、追加した曲についての原稿を旧版の場合と同様の方法で作成し、これを既にある曲の中に韓国語のクヌドゥル順を基本とし、1曲分を1頁又は見開き2頁に収めることができるように、かつ楽譜集に対応する曲の楽譜を同じ順序に1曲分を1頁又は見開き2頁に収めることができるように順序を調整して、曲を配列していった。 3 本件楽譜集 原告は、本件歌詞集(旧版、改訂版)を編集する過程で拡大コピーする等して判型を整えた楽譜を、一つの楽譜集として統一した体裁にするために表記を整え、かつ本件歌詞集(改訂版)と曲の順序が同じで、かつ1曲分を1頁又は見開き2頁に収めるように順序を調整して編集した。 三 被告らは、本件歌詞集(改訂版)の編集は原告と被告Yが共同で行い、本件楽譜集の編集は被告Yが行った旨を主張し、被告Yは、被告本人尋問において「本件著作物の発行を思い立って、選曲をしたのは被告Yであり、被告会社で被告Yと韓国の三韻出版社が協力して選曲しルビをふり、配列をした。」旨を供述する。 しかし、被告Y自身、具体的にやったこととしては、資料集め、選曲、三韻出版社への原稿の持込み等を挙げるのみであるうえ、本件歌詞集(改訂版)及び本件楽譜集の奥付に「編集 原告」「監修 被告Y・A」との趣旨の記載がされたのに対し文句をいわず、販売していたこと(原告本人尋問の結果(第1回))、さらに、被告Yは日本語を充分に解しないことは前記認定のとおりであり、ルビをふることも、訳詞をつけることも、訳詞を理解し、編集作業を行うことも、難しいと思われること、また、三韻出版社の代表者であるBが本件著作物を編集したのが原告である旨回答書に記載していること(前掲甲20の1ないし3)、本体訴訟前に被告会社が原告に宛てた内容証明郵便でも、原告を「編集人」と認めていること(前掲甲1、甲2、甲4)に照らしても、被告Yの前記供述部分はたやすく信用しがたい。 四 以上の事実によれば、編集著作物である本件著作物の著作権は、原告に帰属するものと認められる。そして、請求原因3の事実は当事者間に争いがないから、原告の著作権確認請求は理由がある。 第2 債務不履行に基づく損害賠償請求について 一 請求原因1、4、5について 1 原告本人尋問(第1、2回)及び被告Y本人尋問(後記信用できない部分を除く。)の各結果によれば、被告会社が原告に対し本件歌詞集(改訂版)400冊及び本件楽譜集200冊を交付する合意をしたことが認められる。 被告Yは、本人尋問において、本件歌詞集(改訂版)400冊及び本件楽譜集を交付すべき合意をしたことは認めるものの、本件楽譜集の冊数は50冊であった旨供述する。しかしながら、被告Yの右供述部分は、同時になされた本件歌詞集(旧版)についての清算の合意の有無について後記認定のとおり措信できないことにも照らし、たやすく信用できない。 2 請求原因4の事実は当事者間に争いがない。 3 前掲甲7の1ないし3、甲8の1ないし4、原告本人尋問(第2回)によれば、本件著作物の定価はいずれも1万1000円であること、原告は本件著作物600冊の交付を受けていれば、1冊あたり定価の7掛けの7700円で販売することができたであろうことが認められ、したがって、原告は、被告会社の債務不履行により、これを販売することにより得べかりし462万円(7700円の600冊分)の利益を失ったことが認められる。 二 相殺の抗弁について判断する。 1 原告と被告会社が本件歌詞集(旧版)について、売買契約を締結したことを認めるに足りる証拠はない。 2 他方、原告は被告会社に対し、本件歌詞集(旧版)についての利益分配の前提として、本件歌詞集(旧版)1冊につき7000円の割合で被告会社に入金すべき約定があったこと、被告会社から原告に対し本件歌詞集(旧版)631冊が交付されたことは争いがなく、原告本人尋問(第2回)及び被告Y本人尋問の結果によって真正に成立したものと認められる乙4の3及び被告Y本人尋問の結果によれば、右631冊のうち少なくとも8冊は、アメリカ、香港、ソウルでの宣伝用に関係者に配布するためのもので、この分については原告が被告会社へ入金する必要のないものであることが認められる。 三 すすんで、再抗弁について判断する。 1 前記認定の事実に原告本人尋問(第1、2回)、被告Y本人尋問、弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。 (一)本件歌詞集(旧版)については、原告と被告Yとの間で、その販売による売上げから経費を控除した後の利益を原告が45パーセント、被告会社が55パーセントの割合で配分することが合意されていた。 そして、被告会社から原告に対し、本件歌詞集(旧版)631冊が交付されたこと、そのうち多くとも623冊については、1冊につき7000円の割合で被告会社に入金すべき約定があった。 (二)ところが、本件歌詞集(旧版)の出版後、原告は被告会社に5万円を入金したのみで、被告会社との間で右入金や清算の手続きが進まないでいたところ、その後、その経費を900万円とする旨の合意ができたものの、清算しないまま、原告と被告Yは、カラオケ用レーザーディスクに進出する話で意見が食い違い、喧嘩分かれの状態となり、以後、連絡をし合わない状態が続いた。 (三)その後、被告Yから原告に、先に原告が交付を受けた本件歌詞集(旧版)中の30冊を代金を支払うから分けてくれと申出があり、原告がこれに応じて本件歌詞集(旧版)を渡し、被告Yが代金を支払ったことをきっかけに、両者の連絡が回復し、平成2年初めころ、原告と被告会社は、本件歌詞集(改訂版)と本件楽譜集の出版を合意し、その際、今回は利益を原告が45パーセント、被告会社が55パーセントの割合で配分するという契約は結ばず、被告会社が原告に対し、報酬として本件歌詞集(改訂版)400冊及び本件楽譜集200冊を交付すること、本件歌詞集(旧版)の清算については、原告が1冊当たり7000円を入金して経費を差引き、利益を原告が45パーセント、被告会社が55パーセントの割合で配分するという当初の約定による手続きはしないこととする旨を合意した。 2 被告Yは、被告会社が本件歌詞集(旧版)についての原告会社〈「原告会社」は「原告」の誤り?〉に対する債権を放棄したことはない旨を供述する。しかしながら、1(三)認定のような経過で、本件歌詞集(旧版)の清算がなされないまま、本件歌詞集(改訂版)が編集、製作され始めたこと、しかも本件歌詞集(改訂版)についての報酬を取り決めていることに照らし、この点についての被告Yの前記供述部分はたやすく信用できない。 なお、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲21、原告本人尋問の結果(第1回)によれば、本件歌詞集(旧版)は約2010冊印刷されて、そのうち約1900冊が販売されたものと推認されるところ、このうち原告に交付されたのが前記のとおり631冊であり、残りの1269冊を被告Yにおいて販売したとすると、売上合計は、約1700万円となること、前記認定のとおり、原告と被告Yは、経費を900万円とすることを合意したことが認められるから、これを差し引いた利益は800万円で、その45パーセントは360万円となること、原告が被告会社に入金すべき金額は、被告らの主張によれば436万7000円、原告の自認する冊数によっても411万6000円であるから、これを原告が入金しないで、360万円の利益配分を受けないとすることは、あながち不合理とはいえず、さらに、被告Y本人尋問の結果、本件著作物が合計3000冊程度印刷されていることが認められることからすれば、本件歌詞集(旧版)の場合と比較し、原告においてそのうち600冊の交付を受けることは、不自然でないものと解される。 3 したがって、再抗弁事実が認められ、被告会社の相殺の抗弁は理由がない。 四 よって、被告会社は、約定の本件著作物の複製物を交付しなかったことによる損害(前記一3認定のとおり462万円)を賠償すべきである。 第3 不法行為に基づく損害賠償請求について 一 請求原因6のうち、被告Yが原告に対し損害賠償を請求したり、編集人の資格がないと決めつけるなど、本件著作物についての原告の著作権を否認する行為を行ったことは当事者間に争いがない。 二 しかしながら、原告本人尋問の結果(第2回)によれば、原告としては、被告Yが原告に対し損害賠償を請求したり、編集人の資格がないと決めつけるなど、本件著作物についての原告の著作権を否認する内容証明郵便を書いたことをもって、本件不法行為の内容ととらえているものであるところ、前掲甲1、甲2、甲4及び弁論の全趣旨によれば、被告Yは被告会社名でそのような内容の内容証明郵便を出したこと、被告Y本人尋問の結果によれば、印刷ミス等があったため廃棄処分にした本件歌詞集(第3版)についての費用負担その他につきトラブルが発生したため、被告会社から原告に対し損害賠償請求等の内容を含む内容証明郵便を差し出したことが認められ、やや表現に穏当を欠く部分があるとはいえ、紛争の渦中にある当事者間の書簡中のものであって、不法行為として法的責任を問うまでの違法性はいまだ認められず、右のような事実を第三者に対し書面や口頭で告知したことを認めるに足りる証拠はない。 三 したがって、原告の不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。 第4 結論 以上の次第で、原告の本訴請求は、本件著作物の著作権が原告にあることの確認並びに被告会社に対し462万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日である平成4年8月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから認容し、被告Yに対するその余の請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法89条、92条、93条を各適用して主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 西田美昭 裁判官 高部眞規子 裁判官 池田信彦 |
![]() 日本ユニ著作権センター http://jucc.sakura.ne.jp/ |