判例全文 line
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【事件名】「出る順宅建」事件
【年月日】平成6年7月25日
 東京地裁 平成4年(ワ)第3549号 著作権侵害差止等請求事件

判決
原告 株式会社東京リーガルマインド
右代表者代表取締役 X
右訴訟代理人弁護士 松尾和子
同 辻居幸一
同 田中伸一郎
右訴訟復代理人弁護士 富岡英次
被告 株式会社早稲田経営学院
右代表者代表取締役 Y
被告 株式会社早X稲田経営出版
右代表者代表取締役 Y
右両名訴訟代理人弁護士 岩原武司
同 清水肇
同 大山健児
同 鈴木政俊
同 津田和彦
右訴訟復代理人弁護士 木村哲司


主文
1 被告らは、原告に対し、各自金71万1854円及びこれに対する平成4年3月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを3分し、その1を被告らの、その余を原告の負担とする。
 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 原告の請求
一 被告らは、共同して、原告に対し、被告株式会社早稲田経営学院発行の雑誌「Article」及び原告発行の雑誌「法律文化」に別紙謝罪広告目録(1)記載の謝罪広告を同目録(2)記載の条件でそれぞれ、かつ1回掲載せよ。
二 被告らは、原告に対し、各自200万円及びこれに対する平成4年3月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
三 訴訟費用は被告らの負担とする。
四 第二項につき仮執行宣言。
第2 事案の概要
一 本件は、原告が、被告らの出版販売等する別紙被告書籍目録(1)記載の書籍に掲載されている別紙被告表目録(1)ないし(8)記載の表、及び別紙被告書籍目録(2)記載の書籍に掲載されている別紙被告表(1)ないし(4)、(6)ないし(8)記載の表が、原告の別紙原告書籍目録(1)記載の書籍中の別紙原告表目録(1)ないし(8)記載の表について有する著作権(複製権)及び著作者人格権を侵害しているとして、被告らに対し、著作権法115条の規定に基づき謝罪広告の掲載、著作権侵害による通常使用料相当の損害賠償金2万4290円(その内訳は、別紙被告書籍目録(1)記載の書籍について2万0216円、同目録(2)記載の書籍について4074円である。)、著作権及び著作者人格権侵害による信用毀損に対する損害賠償金200万円の内金97万5710円、右不法行為と相当因果関係を有する弁護士費用相当の損害金150万円の内金100万円の合計200万円の被告ら連帯しての支払いを求めるものである。
二 基礎となる事実
1(一)原告は、宅地建物取引主任者資格試験(宅建試験)を含む国家試験の受験指導の企画、制作、提供、講義、出版等を業とする会社である。(甲8号証の1、原告代表者、弁論の全趣旨)
(二)被告株式会社早稲田経営学院(被告学院)は、原告同様に国家試験の受験指導等を業とする会社であり、被告株式会社早稲田経営出版(被告出版)は、被告学院の出版部門を担当する同被告の子会社である。(争いがない)
2(一)原告は、昭和63年6月25日までに、「出る順宅建(下)宅建業法 法令上の制限 その他」との題号の書籍(第1版)を出版し、その後、毎年これに改訂を加え、平成2年3月10日、別紙原告表目録(1)ないし(8)記載の表(順に「原告表(1)」、「原告表(2)」、「原告表(3)」、「原告表(4)」、「原告表(5)」、「原告表(6)」、「原告表(7)」、「原告表(8)」といい、これらを「原告各表」と総称することがある。)を掲載した別紙原告書籍目録(1)記載の書籍(原告書籍(1))を出版した。(争いのない事実、甲7号証の1ないし22)
(二)原告書籍(1)は、原告の開催する宅建試験の受験指導のための講座の常勤及びアルバイトの講師により、原告の企画に基づき、すなわち原告の発意の下に作成し、原告名義で公表されたものである。(甲8号証の1、原告代表者)
(三)原告は、同年9月30日頃以来原告表(1)ないし(3)、同(5)及び同(8)を掲載した別紙原告書籍目録(2)記載の書籍(原告書籍(2))を出版した。(争いのない事実)
3(一)被告学院は、平成3年6月20日までに、別紙被告表目録(1)ないし(8)記載の表(順に「被告表(1)」、「被告表(2)」、「被告表(3)」、「被告表(4)」、「被告表(5)」、「被告表(6)」、「被告表(7)」、「被告表(8)」といい、これらを「被告各表」と総称することがある。)を掲載した別紙被告書籍目録(1)記載の書籍(被告書籍(1))を作成し、被告出版は同日以来これを出版し、被告学院は、これを定価2800円で販売した。(争いがない)
 また、被告学院は、同年秋までに、被告表(1)ないし(4)、(6)ないし(8)を掲載した別紙被告書籍目録(2)記載の書籍(被告書籍(2))を作成し、被告出版は同年秋頃これを出版し、被告学院は、これを同被告の宅建試験講座の受講者らに無償で配布した。(争いがない)
 但し、被告書籍(2)においては、被告表(1)ないし(4)、(6)ないし(8)の各表毎に2箇所ないし4箇所の語句が空欄とされてアルファベットの符号が付されて空欄穴埋の問題の形式とされ、同じ頁の下部に〈解答〉として、アルファベット符号の空欄に入るべき語句が示されている。(甲4号証の1ないし10)。
(二)被告書籍(1)の出版部数は少なくとも3000部、被告書籍(2)のそれは1000部である。(争いがない)
第3 争点及びこれに対する当事者の主張
一 原告各表は著作物と認められるか。
1 原告表(1)について
(一)原告の主張
 原告表(1)は、宅地建物取引業法(宅建業法)8条1項により、建設省及び都道府県にそれぞれ備えられる宅地建物取引業者名簿に関して、同条2項に示された名簿登載事項及び同法9条に示された前記事項の変更の届出を一つの表にまとめたものであり、次のとおり創意と工夫が施されているから著作物性がある。
(1)原告表(1)は、宅建業法8条2項と9条から名簿登載事項と変更の届出を選び出して一つの表にまとめ、それによって両者を一度に、かつ体系的に容易に理解できるようにしたものであり、この構成は原告により工夫されたものであって精神的労力を用いた成果である。
(2)加えて、原告表(1)には、名簿登載事項の整理に関して原告の創造がある。
 すなわち、宅建業法8条2項の法文と原告表(1)とを比較すると、次のとおり名簿登載事項関係でも同法8条2項そのままではない。
(ア)原告表(1)の@、A及びDは、それぞれ同条2項中1号、2号及び5号と同じであるが、原告表(1)のB、Cについては、同2項3号及び4号の記載を簡潔にし、かつ、同各号に言及された同法施行令2条の2の具体的要件については宅建試験合格には不要と判断してこれを除外している。
(イ)原告表(1)のEは、同条2項6号の内容を示すものであるが、同号で引用する同法15条を必要な範囲で取り出した上、右6号の内容をわかり易く簡潔に記載している。
(ウ)原告は、同法8条2項7号を記載する上で、同号にいう建設省令である同法施行規則5条の各条文に示すところを検討し、その1号及び2号に対応させて原告表(1)のF及びGの2項目に分け、その意味するところをそれぞれ簡潔な用語で示した。
(3)更に、宅建業法9条にかかる変更の届出期間に関する法文を一目でわかるように原告表(1)の欄外に、他の部分と調和がとれるように簡潔にエクスクラメーションマークをもって示している。
(4)以上のとおり、原告表(1)は、名簿登載事項関係でも宅建業法8条2項そのままではなく、創意工夫を施しているのであって、著作物として保護されるべきものである。
(二)被告らの主張
(1)原告表(1)は、宅建業法8条2項及び同9条を図表化したものであるが、右各法条は、宅地建物取引業者名簿の登載事項及び登載事項のうちで変更があった場合に届出を要する事項を定めており、その内容は一義的に解釈されるものである。
 このような法文の内容を図表化する場合、項目分けとしては二つの観点がある。一つは登載すべき事項が8項目あることであり、一つは登載すべき事項のうち6項目が変更の際に届出を要することである。
 右の観点から右法文の内容を図表化すると、登載すべき事項と要届出事項の二つの項目を置き、8個の登載すべき事項にそれぞれ届出の要否を対置させた表となるのが当然である。原告表(1)は、このような必然的な条文の解釈をそのまま表にしたにすぎず、特に表の内容に新規性や創造性があるわけではなく、著作物性がない。
(2)原告表(1)は、昭和63年2月12日、東京法経学院出版発行の「63年版宅地建物取引主任者合格ノート」(乙6号証の6)に記載されている宅地建物取引業者名簿の登載事項の整理を枠で囲って、模倣、改変したものにすぎず、著作物性はない。
2 原告表(2)について
(一)原告の主張
(1)原告表(2)は、宅建業法21条では同条1号以外は、同条2号、3号で18条中の1項1号又は3号から5号の2までと、18条1項2号を各引用しているが、両者は届出期間及びその届出義務者が異なるため、これを説明すると複雑になり初学者にとって理解が容易でない。そこで、法文と異なる簡潔な原告の文言による記述により、法文の意味するところを示して表にまとめたものであって、原告の精神的労苦による成果物である。
(2)また、原告表(2)は、法文から直接には導かれない特徴として、次のことが指摘できる。
(ア)項目について、届出義務者ごとに枠でくくり、一目で届出の必要な事項と届出義務者がわかるようにしてあること。
 また、同法21条3号の記載に関しては、1文で示されているところを後見人と保佐人の二つの枠に分け、法概念につき未だ理解の充分でない初学者にわかるように同法18条1項2号に示された禁治産者の届出義務者は前者、準禁治産者については後者と明示していること。
(イ)項目の順序について、21条の号の順ではなく、よりわかり易くするように届出義務者に着目し、相続人、後見人、保佐人、本人の順(すなわち同法21条、1号、3号、2号の順)としていること。
(ウ)同法21条2号で引用する同法18条1項1号又は3号から5号の2は、18条1項の但書が対象とする1項各号に該当する者が都道府県知事の登録を受けることができないとする不許可事由の形で示されているので、21条の届出事由については、18条の不許可事由の記載を若干解釈で補った上、@ないしCの項目にまとめ、それをそれぞれ原告の言葉で簡潔に示していること。
 また、同法18条1項5号及び5号の2の長い条文を合体させてDとして要約していること。
(3)以上のとおり、原告表(2)は、原告の精神的労苦に基づく独創的な記述であって、著作権法上保護される著作物である。
(二)被告らの主張
(1)宅建業法21条は、届出項目及び届出義務者の二つの要素を規定した条項であり、同条1号、同条2号が引用する同法18条1項1号、3号ないし5号の2、21条3号の8個の届出項目につき、それぞれ届出義務者を規定している。そしてこの内容を図表化すれば、8個の届出項目に対してそれぞれ届出義務者を対置する構造の表となるのは必然である。
 また、読者の理解しやすさを勘案すれば、届出義務者が共通の同法21条2号の届出項目を枠でくくるなどすることは当然の発想である。
 原告表(2)は、右の観点から、条文の構造をそのまま図表化したにすぎず、表の基本的構造について何らの創造性があるとはみられない。
 なお、原告表(2)は、本人が届出義務者となる事項について最後にまとめているが、これは表の見易さを確保するために通常されることであり、特に新規性や創造性があるとはみられない。
(2)また、原告表(2)は、右2号に規定された各届出事由を本文とは異なる形で記述しているが、これは解釈上当然導かれる内容を記載したにすぎず、特に創造的な記述とはいえない。
 すなわち、同号規定の各届出事由は、同法18条の不許可事由をそのまま準用する形をとっているが、同法18条の不許可事由の場合には過去にかかる事由が生じた場合であっても一定の期間が経過すれば許可をしても良いという立場から、かかる事由が生じた時点から一定の期間内であることが不許可の要件となるが、同法21条の届出事由の場合には将来業者として不適当な事由が生じたときは直ちに届け出るべきことを規定しており期間の経過の点は無関係である。このような解釈をもとに各届出事由を簡潔に表現すると、当然に原告表(2)の記述となるのである。
(3)同法18条1項5号、同号の2は、刑事手続による処分を受けた際のことを規定しており、届出事由としては考慮する必要のない処分からの期間の点を除いて、その内容を整理すると、禁固以上の刑に処せられたこと、宅建業法に違反して罰金刑を受けたこと、刑法204条(傷害罪)等で罰金刑を受けたこと、暴力行為等の処罰に関する法律違反の罪を犯し罰金刑に処せられたこと、ということになり、原告表(2)は、右の内容を簡略に記述したのみであって、特に独創性や創造性がみられるものではない。
(4)原告表(2)は、昭和60年1月17日、株式会社週刊住宅情報社発行の「60年版宅建試験の完全整理」(乙7号証の3)記載の表とほとんど同じであり、条文の文言の略し方にやや相違がみられるが、特に創造性がみられるわけではないから、右先行出版物記載の表を模倣、改変したものにすぎず、原告が著作権を取得することはありえない。
3 原告表(3)について
(一)原告の主張
 原告表(3)は、複雑な都市計画法15条1項を解説するものであるが、右1項は、都道府県知事が定める都市計画のみについて規定しており、市町村が定める「他の都市計画」については、具体的に規定していない。「他の都市計画」については同法7条ないし12条の5をみなければならないが、これは極めて長文であり、種々の事項を包含するため、ここに示されたところから、都市計画の種類を整理し、その上で、対象となる「他の都市計画」を描き出し、同法15条が何を言っているのか一見してわかるように表にしたものである。
 原告表(3)は、次のとおり、原告が独自の観点から精神的労苦により作成したものであって、著作物性がある。
(1)都市計画法15条1項はその法文を読んだだけでは初学者に具体的理解が困難であるので、原告は、その説明のために、同法7条ないし12条の5に示されている都市計画の種類を改めて整理し、また特に地域地区については決定権者が分かれるため、決定権者毎に細分して、それぞれ右側の位置にわかり易く決定権者を示したのであり、正に原告の精神的労苦の所産である。
(2)また、決定権者について、「知事または市町村」として示しているものがあるところ、これについては法文を詳細に見れば更に項目を分けることも可能であるが、宅建試験の合格のための知識量という原告の独自の観点からこの限度の記載に留めているものである。
(二)被告らの主張
(1)原告表(3)は、都市計画法7条ないし12条の5及び同法15条の規定に従って、都市計画の種類とその決定権者を記載しただけであり、記載内容が一致するのは、これまた当然でしかない。要するに原告表(3)の記載は都市計画法の条文上に明記された用語と、それに対する法律上の決定権者を並べたものにすぎず、これを表に記載すれば、誰が行っても原告表(3)と同一になる程度のものである。このように、原告表(3)の記載内容それ自体は著作権の対象として保護されるものではありえない。
(2)原告表(3)は、昭和63年1月25日、株式会社学陽書房発行の「図解宅地建物取引知識」(乙8号証の3)記載の表と同じものであって、表の体裁が原告表 (3)は表全体を線で囲んでいるところが異なるが、内容に影響のない単純な形態の違いにすぎない。したがって、原告表(3)は、右先行出版物記載の表を模倣、改変したものであり、原告が著作権を取得することはありえない。
4 原告表(4)について
(一)原告の主張
(1)原告表(4)は都市計画法29条の示すところを表にまとめたものである。原告表(4)は、同条が示すところを開発行為の許可の要否について、横に開発行為の態様を各号の特徴を捉えて分類する一方、縦に都市計画区域の別を示してその交わるところに要否を○、×あるいは△で表わし、許可の要否が一見して分かるように表に示している。この表は右法文から一義的に導かれるものでなく、原告の精神的労苦の所産による独創的なものである。
(2)以下、原告表(4)中の独創的な点について指摘する。
(ア)原告表(4)は、横に開発行為の態様を、縦に都市計画区域の別を示し、その交わるところに要否を示したが、これは決して法文からの当然の論理の帰結ではない。すなわち、区域の別だけをみても、法文は、柱書で区域を限定し、1号及び2号において更に細かく区域を限定し、また3号以下では何ら限定はない。原告表(4)がこのような細部についても必要な範囲で取り込んで項目をまとめているのは、原告独自の考えによる。
(イ)また、細かな各項目分けについてみると、法文からは、市街化区域及び線引区域について、農林漁業用建築物という開発態様を、また市街化調整区域について小規模開発という開発態様を示す必要は全くない。また、2号ないし4号については開発態様を個別に明示し、5号ないし11号は一まとめにしているが、これらはいずれも法文からの論理の帰結ではない。
(3)原告の右のような整理は、原告が受験指導の観点から整理したものであって、原告表(4)が原告の独創によるもので、著作権法上保護されるものであることは明白である。
(二)被告らの主張
(1)都市計画法29条は、都市計画区域内での開発行為について原則として都道府県知事の許可制とし、例外として、同条及び同条が引用する政令が許可の不要な開発行為として、@小規模開発、A農林漁業用建築物、B公益性のあるもの、C国、都道府県等が行うもの、D都市計画事業等の施行として行うものなどを定めているものである。
 そして都市計画区域は、同法29条の関係では市街化区域内(右@)、市街化調整区域内(右A)、それ以外の未線引区域(右BないしD)の三つに分けられる。かかる内容を図表化しようとすれば、項目分けとしては二つの観点があるのは明白である。つまり、一つは、都市計画区域別の項目分け、もう一つは許可の不要な開発行為別の項目分けである。
 その観点から内容を図表化すると、都市計画区域別の項目分けとしては区域外をも加えて4個、許可の不要な開発行為別の項目分けとして5個を対置させた表となるのは当然である。
 原告表(4)はかかる必然的な条文の解釈をそのまま表にしたにすぎず、特に表の内容に新規性や創造性があるわけではない。
(2)原告表(4)は、昭和60年3月20日、東京法経学院出版発行の「早受かり宅地建物取引主任」(乙9号証の3、4)記載の表と同じものであって、原告表(4)が許可の必要なケースと不要なケースを一つの表にまとめている点は特に工夫を要するものではない。したがって、原告表(4)は右先行出版物を模倣、改変したものであり、原告が著作権を取得することはありえない。
5 原告表(5)について
(一)原告の主張
 原告は建ぺい率の計算方法を説明するため原告表(5)の図を作成した。
 建ぺい率については、建築基準法53条1項及び同法施行令2条1項2号に規定があり、通常建物の1階部分の面積が敷地面積の何割を占めているかの割合が建ぺい率であると考えてよい。ただし、以下の点に注意する必要がある。
@ 上の階が下の階よりせり出している場合には、そのせり出している部分も建築面積に含めて計算する。
A バルコニー、ひさし、軒等が1m以上せり出している場合には、その先端から水平方向で1mの部分を除く残りの部分を計算に入れる。
B 同一敷地内に複数の建物があれば、それぞれの建築面積を合算する。
 原告は、上記注意点のうちわかりにくい@及びAについて容易に理解できるような例を工夫して、2階部分が1階よりせり出し、かつひさしを有する建物を描き、かつ絵について親しみがもてるようにするため、窓、木等を配置して原告表(5)を作成したものである。
 したがって、同図が原告の精神的労苦の所産として著作権法上の保護を受けるべきことは明白である。
(二)被告らの主張
(1)原告表(5)が芸術的な絵画と言いうるだけの美的見地からの創造性を認めうるものでないことは、一見して明白である。一方、学術的図表といいうるだけの知的な創造性が認めうるかであるが、原告表(5)は、従来から宅建試験の受験指導の書籍で使われていた一般的な図を改変したものにすぎず、それ自体を一個の著作物といいうるだけの創造性を有するものではない。
(2)原告表(5)は、昭和52年4月20日、株式会社オーム社発行の「絵とき建築関係法規」(乙10号証の2)に記載されている「建築面積の算定方法(令2条2号)」と題する2個の表の合体にすぎない。したがって、原告表(5)は右先行出版物記載の表を模倣、改変したものであり、原告が著作権を取得することはありえない。
6 原告表(6)について
(一)原告の主張
 原告表(6)は、建築基準法69条ないし75条に規定された建築協定に関する事項を内容的に分析し、これを適用区域、協定の主体、協定の内容、手続、協定の効力、協定の変更、協定の廃止、一人協定の項目に分類し、自ら工夫して簡潔にそれぞれ要点を列挙し、一つの表にまとめたものである。
 このように数条にまたがる条文に示されたところを検討し、独自に項目を立て、かつその説明を簡潔にまとめる行為は正に精神的労苦の所産であり、同表が著作権法上の保護を受けることは論をまたない。
(二)被告らの主張
(1)原告表(6)は、その記載内容が建築基準法の条文どおりである。
 すなわち、まず、適用区域、協定の主体、協定の内容の各欄は、同法69条、70条2項を整理したものにすぎない。借地権者について「地主の承諾不要」という記述は法文には存しないが、同法70条2項を解釈すればこの記述となるのは、極めて自然である。次に手続欄は、同法70条、73条をまとめたにすぎない。同様に協定の効力欄は同法75条、協定の変更欄は74条、協定の廃止欄は76条、一人協定欄は76条の3第1項、欄外注は同条4項に、各対応する。
 このように、いずれも、注文に忠実にまとめるならば記述者の如何にかかわらずかくあるべしというものであって、原告表(6)に創造性が認められるものではない。
(2)欄の作成方法、従って分類方法についても、法文を前提とする限り、素直にまとめれば原告表(6)のようになるのであって、創造性は認められず、かつ、仮に若干の創造性が認められるとしても、著作物としての保護に値する程度には至らない。
 すなわち、右配列は同法第4章の条文配列を基準とする。まず、69条が適用区域、協定の主体、協定の内容に関する三つの内容を有することは明白である。次に70条ないし73条がその手続を定めることも明らかである。条文配列上は次に建築協定の変更(74条)がくるが、73条の公告によって成立した協定の効力(75条)をまず記述しようとするのは、理解しやすさを第一義とするとき、当然の発想である。
 協定の変更(74条)、廃止(76条)、一人協定(76条の3)という、いわば例外的な規定を、末尾に条文順にまとめようというのも極めて自然である。
(3)原告表(6)は、前記1(二)(2)の「63年版宅地建物取引主任者合格ノート」(乙6号証の5)及び昭和63年1月14日株式会社住宅新報社発行の「63年版図でみる法令上の制限」(乙11号証の4)記載の表と同じものである。乙11号証の4との対比では、原告表(6)は、協定の内容という項目、また、協定の変更という項目と協定の廃止という項目を設けているが、特に本質的な差異とはなっていない。乙6号証の5との対比では、原告表(6)は、協定の変更という項目を独立させている点が形式的に異なるだけである。したがって、原告表(6)は右先行出版物を模倣、改変したものであり、原告が著作権を取得することはありえない。
7 原告表(7)について
(一)原告の主張
 原告表(7)は、国土利用計画法27条の2に示された監視区域の指定手続について、時系列的に図表化したものである。原告は、同法条について、「引用」によって意味するところの理解が容易でなく、かつ、具体的な指定手続の時系列が初学者にとって明確に理解することが困難であることを考慮して本表を作成している。
 具体的には、右27条の2により準用される規制区域の指定に関する12条2項ないし5項及び10項の規定を検討し、監視区域の指定手続の流れを具体的に理解し、それを初学者がわかり易いように時系列的に並べかえ、かつブロックで表記し、その中に要点のみ簡潔に表示することとし、原告表(7)を作成したのである。
 したがって、原告表(7)が原告の著作物として著作権法上保護されることは明らかである。
(二)被告らの主張
 原告表(7)は、国土利用計画法27条の2に規定された監視区域の指定手続を図表化したものであるが、同法27条の2及び同条が準用する同法12条に記載した行政手続を時系列に従って並べると、@(土地利用審査会、関係市町村長の意見聴取)、A(知事による区域、期間の決定)、B(公告)、C(公告による指定の効力発生)、D(内閣総理大臣への報告、関係市町村長への通知、必要な措置)、E(調査)の順となる。これを図表化しようとすれば、右@ないしEの項目を1列に並べるしか方法がなく、縦書き横書きを別にすれば、誰が試みても同一図表にならざるを得ない。このことは、行政手続規定は、手続の明確さが要求されるために、規定文言が明確かつ覇束性を有し、その解釈も一義的ならざるをえないことに思いを致せば当然のことである。すなわち、原告表(7)は、一義的な解釈以外に方法がない、というよりもむしろ条文そのものを簡略化して表現したにすぎず、表の内容に新規性、創造性が介入する余地はなく、原告表(7)は著作物性がない。
8 原告表(8)について
(一)原告の主張
 原告表(8)は、国土利用計画法23条ないし27条に規定されている土地に関する権利の移転等の届出手続の流れを図表化したものである。
 この数条にわたって規定された手続を、簡潔にかつ手続の時系列的な流れに沿って複雑なブロック図で示すことは、正に精神的労苦を要するところであり、この原告表(8)が原告の著作物として著作権法上保護されることは明白である。
(二)被告らの主張
(1)原告表(8)は、国土利用計画法法23条ないし27条に規定されているところの土地に関する権利の移転等の届出以降の手続の流れを図表化したものであるが、同法23条1項の規定による届出をした者は、届出日から6週間を経過するまでの間、勧告、通知を受けない限り、契約締結ができない(同法23条3項)。したがって、同法23条3項の反対解釈によれば、勧告、通知を受けないで6週間経過すれば契約締結ができることになるのであるから、届出後の流れとしては、
 @ 勧告も通知もなく6週間を経過した場合
 A 通知があった場合
 B 勧告があった場合
の3通りに場合分けができる。そして、@の場合は前記のとおり契約締結が可能であり、Aの場合も同法24条3項により勧告不要の通知がなされるのみなので契約締結が可能であると解釈できる。また、Bの場合には、次のように分かれる。
(a)勧告に従わないときは、同法26条に規定されるように、知事は勧告内容を公表することができる。勧告対象の特定のために公表事項には氏名が含まれることは当然である。また、同条は公表のみを規定しているのであって勧告に従わないで契約を中止しなかった場合の契約の効力について、特に無効とする旨の規定はないから、当該契約の効力は有効と解される。
(b)勧告に従って契約を中止したときは、同法27条の明文規定によって、知事が必要に応じて斡旋その他の措置を講ずる。
 以上の手続の流れを図表化するならば、何人が試みても原告表(8)のようにならざるをえず、後は微細な表現方法の問題である。
 行政手続規定は、その性質上、規定文言及びその解釈が明確性を要求され、原告表(8)は、その明文規定と、そこから当然に導かれる解釈を図表化したものにすぎず、何らの学術性、独創性もない。
 以上により、原告表(8)は、著作権法で保護されるべき著作物性を有しない。
(2)原告表(8)は、前記4(二)(2)記載の「早受かり宅地建物取引主任」(乙9号証の5)の「土地に関する権利の移転等の届出」と題する表と同じものである。したがって、原告表(8)は右先行出版物記載の表を模倣、改変したものであり、原告が著作権を取得することはありえない。
二 被告各表は原告各表を複製したものか。氏名表示権、同一性保持権の侵害があるか。
(原告の主張)
1 被告表(1)は、原告表(1)と比較すると、原告表(1)が届出の要否について○×の記号で示しているのに対し、被告表(1)では必要、不必要の文字で示している点が相違するだけで、他の点は、全て同一である。
2 被告表(2)は、原告表(2)と比較すると、表の項目の見出しにおいて、原告表(2)が「届出の必要な場合」、「届出義務者」としているのに対し、被告表(2)では、「届出事由」、「義務者」としている点が相違するだけで、他の点は全て同一である。
3 被告表(3)は、原告表(3)と比較すると、原告表(3)のB、E、Fが被告表(3)ではそれぞれG、F、Bの番号の位置に配置されていることを除き、全く同一である。
4 被告表(4)は、原告表(4)と比較すると、被告表(4)には原告表(4)にない「原則」との項目が設けられているが本質的ではなく、その余はほとんど同一である。
5 被告表(5)は、木が示されていないこと等を除き、原告表(5)と全く同じ図である。特に、左下の必要性の全くない長方形まで同様に示されている。
6 被告表(6)と原告表(6)は、原告表(6)には協定の主体の欄に「(臨時設備・一時使用を除く)」との記載が存する点を除くと、一字一句同一である。
7 被告表(7)は、原告表(7)と全く同一である。
8 被告表(8)は、原告表(8)と文言に微細な差異は存するが、図表の構成等が全く同一である。
9 右のとおり、被告各表は、これに対応する原告各表と同一あるいはほとんど同一であり、しかも原告各表に依拠して作成されたものであるから、被告各表は、これに対応する原告各表を複製したものである。
 被告表(5)には、原告表(5)中の図示する必要性の全くない左下の長方形までが表示されていることからも依拠の事実は明らかである。
10 被告各表は、原告各表を一部改変したものであり、しかも著作者として原告の名義が表示されていないから、原告が原告各表について有する、同一性保持権、氏名表示権を侵害するものである。
三 被告らの行為による原告の損害及び謝罪広告の必要性
1 原告の主張
(一)前記のとおり、被告各表は、それぞれ原告各表の複製物である。被告らは、故意又は過失により、共同して、原告各表について原告が有する著作権(複製権)を侵害した。
(二)(1) 被告らは、被告書籍(1)を1部2800円の価額で合計5000部出版、販売したものであるが、原告が、被告らによる被告各表の被告書籍(1)における使用につき、通常受けるべき使用料の額は、被告らによる同書箱の総販売額の10%に同書籍の総頁数に対する同各表の掲載されている割合を乗じた金額で計算できるから、被告書籍(1)の発行による著作権侵害行為により原告が被った損害は、次のとおり2万0216円である。
 2,800(円/部)×5,000(部)×0.1×8(頁)/554(頁)=20,216円(円未満切捨て)
(2)被告らは、被告書籍(2)を1000部発行し、無償で配布したが、右を前提として損害額を計算すると、原告が、被告らによる被告各表の被告書籍(2)における使用につき、通常受けるべき使用料の額は、被告書籍(2)が有償で頒布されていないため、原告書籍(2)の定価に10%を乗じた金額に、原告書籍(2)の総頁数に対する原告各表(被告書籍(2)において被告各表として複製掲載された原告著作物)の割合及び被告書籍(2)の配布部数を順次乗じた金額で計算すると、被告書籍(2)の発行による著作権侵害行為により原告が被った損害は、次のとおり4074円である。
 2,800(円/部)×0.1×7(頁)/481(頁)×1,000(部)=4074(円)(円未満切捨て)
(三)著作者人格権侵害、信用毀損等による損害
 被告書籍(1)及び(2)においては、被告表(1)ないし(8)が原告の著作物であることを明示しておらず、また、前記二のとおり、被告表(7)を除いて、原告各表の本質的でない部分を勝手に変更しており、原告が原告各表について有する著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)を侵害している。
 原告は、正確であるべき法律に係わる受験講座を営業としながら、原告各書籍及び被告各書籍の内容を知った複数の得意先企業等から、どちらが真の著作者であるかといった精神的に耐えがたい疑問を投げかけられたことがあり、また、原被告らの各書籍を対比して確認する機会を有した読者、利用者及びこれらの者から風評を伝え聞いた原告の顧客層等から、原告各書籍が独自の分析により読者のために分かり易く解説する工夫をしたものではないと、そのオリジナル性、更には原告の基本的な経営方針にまで疑問を懐かれたことがあり、そのため原告の企業としての信用を著しく毀損された。
 右信用毀損が著しいものであることは、原告が、以上のような著作権及び著作者人格権を侵害する被告各書籍が被告学院による原告の顧客に対する売り込み行為に不当に利用された結果、合計8社、原告が講座を担当した最後の年度の売上高合計が8490万円に昇る従来の顧客を被告学院に奪われ、このことによる原告の利益の減少が、右営業による利益率を30パーセントとみても、合計2547万円に及ぶものであることからみても明らかである。
 以上のような被告らの著作権及び著作者人格権侵害行為の態様及びその結果原告に生じた重大な信用毀損を考慮すれば、被告らの右不法行為と相当因果関係を有する損害は金200万円を下ることはない。
 以上によれば、原告は、被告らに対し、前記著作者人格権侵害、信用毀損による損害金として少なくとも金200万円の連帯支払いを求める権利を有しているが、本訴においては、右損害金の内金97万5710円を請求する。
(四)弁護士費用相当の損害
 原告は、被告らに対し、前記不法行為について、本件訴訟を提起せざるを得なかったが、本件訴訟は、事案の内容、性格が複雑かつ困難であり、その提起、追行に特殊の知識を要するものであるから、弁護士にこれを依頼せざるを得ず、原告は、原告訴訟代理人らに対し、本件訴訟の追行を依頼し、右弁護士費用として、少なくとも金150万円を支払うことを約し、平成4年3月31日、原告訴訟代理人らに対し、右金銭を支払った。
 右金銭は、右不法行為と相当因果関係を有する損害であるから、被告らは、原告に対し、右同額の損害を賠償する義務がある。原告は、被告らに対し、本訴において、右150万円の内金100万円を請求する。
(五)右(二)ないし(四)の請求額の合計は200万円となる。
(六)謝罪広告
 前記(三)の著作者人格権の侵害は、同(三)の金銭賠償のみによって回復されないので、被告らによる第1(原告の請求)一に記載した謝罪広告が必要である。
2 被告らの主張
 被告らの行為を違法行為と仮定しても、原告の主張する損害及び因果関係は、被告らの損害賠償責任の根拠とはなりえない。
 すなわち、企業間における競争では、同一の相手方に売り込みが重複するのは通常である。そして、相手方は売り込み側の内容、担当者の人柄等の各種の要素を考慮して取引を決定するものであり、売り込む側は競争相手と自分との優劣を主張することは自由競争の範囲内で当然生ずることである。わが国の経済体制の下では、競争により得意先を奪われたことなどはそもそも法律上の「損害」と観念しうるものではなく、原告の売上げ減自体と被告書籍(1)、(2)の出版とは何ら関係ない。
第4 裁判所の判断
一 争点一(原告各表の著作物性)について
1 法令は、その性質上国民に広く開放され、伝達され、かつ利用されるべき著作物であり、そのため著作権法13条1号においても、憲法その他の法令は著作者の権利の目的とならない旨規定されている。したがって、このような性格を有する法令の全部又は一部をそのまま利用したり単に要約したりして作成されたものは著作物性を取得しないというべきである。このような観点に留意しつつ、以下、原告各表の著作物性、並びにこれが認められる場合に更に被告各表が原告各表の著作権を侵害しているかどうかについて検討する。
2 原告表(1)について
(一)原告表(1)は、別紙対照表の原告表(1)のとおりであり、宅建業法8条2項の規定により、建設省及び都道府県にそれぞれ備えられている宅地建物取引業者名簿に登載しなければならない事項及び右事項のうち変更があった場合に同法9条の規定により建設大臣又は都道府県知事に届け出なければならない事項を一つの表にまとめたもので、その表現は、次のとおりである。(甲7号証の2)
(1)上辺左端付近に「公式35」との記載のある長方形の枠内に全ての記載が収められている。
(2)この枠内には、「1 名簿登載事項と変更の届出が必要な事項」との見出しの下に、宅地建物取引業者名簿への登載事項と変更の届出の要否を示す一覧表が作成されている。
(3)一覧表の左側の「名簿登載事項」欄には、宅建業法8条2項1号ないし7号の規定により宅地建物取引業者名簿に登載しなければならない事項が、上から順に@宅建業法8条2項1号、A同2号、B同3号、C同4号、D同5号、E同6号、F同7号の規定を受けた建設省令である宅地建物取引業法施行規則5条1号、G同2号の順に8項目に分けて記載され、各項目間は横の罫線で区分されている。一覧表の右側の「届出の要否」欄には、宅建業法9条の規定により、変更があった場合建設大臣又は都道府県知事に届け出なければならないとされている同法8条2項2号ないし6号所定の事項に当たる前記AないしEの項目に対応する欄には○(1番上のAに対応する欄には「(必要)」の文字も併記されている。)、@、F、Gの項目に対応する欄には×(1番上の@に対応する欄には「(不要)」の文字も併記されている。)の符号が付されている。
(4)一覧表の下には、同法9条の規定の届出期限についての部分を要約した注意書きの記載がある。
(5)右@、A、D〈「に」が欠落〉ついてはほぼ条文の文言どおりに、B、C、F、Gについては条文を単に要約したものを簡潔な文言で、Eについては、条文に「同法15条1項に規定する者」とある引用部分を簡潔に読み代え、その余はほぼ条文の文言どおりにそれぞれ記載されている。
(二)右認定の事実によれば、原告表(1)は法文の内容を法令記載の順番に従い、引用条文のあるものはその引用を含めて簡潔に要約し、条文のとおりの順に配列したにすぎないものであり、表形式でまとめた点、届出の要否を○、×の符号で表現した点を含めて、誰が作成しても表によってまとめようとする限り同様の表現となるものと思われるから、原告表(1)の表現形式についても表現内容についても著作権法によって保護される著作物としての創作性を認めることができない。
(三)原告は、原告表(1)は、宅建業法8条2項と9条から名簿登戴事項と変更の届出を選び出して一つの表にまとめ、それによって両者を一度に、かつ体系的に容易に理解できるようにしたものであり、この構成は原告により工夫されたものであるから著作物性がある旨主張するが、宅建業法8条2項は9条中で引用されており、内容的にも名簿登載事項とその変更の届出で関連していることは自明であり、これらを一つの表にまとめたことに創作性は認められず、また、これを表現した右認定のような一覧表も、表による表現としては典型的な形式であって、創作性は認めることができない。
 また、原告は、原告表(1)には、名簿登載事項の整理に原告の創造がある旨主張するが、前記のとおり、原告表(1)における名簿登載事項欄の記載は、法令の一部をそのまま利用したり単に要約したりしたものであって、創作性を認めることができない。
 更に、原告は、宅建業法9条にかかる変更の届出期間に関する法文を一目でわかるように原告表(1)の欄外に、他の部分と調和がとれるように簡潔にエクスクラメーションマークをもって示しているから著作物性がある旨主張するが、右部分は、一覧表とは別に、同法9条所定の変更の届出についてのまとめである以上、欠くことのできない同条の届出期限についての部分を要約して記載したにすぎず、エクスクラメーションマークを加えたとしても創作性を認めることはできない。
3 原告表(2)について
(一)原告表(2)は、別紙対照表の原告表(2)のとおりであり、宅建業法18条の規定による宅地建物取引主任者の登録を受けている者についての、同法21条の規定による都道府県知事への届出義務の発生事由及び届出義務者を一つの表にまとめたもので、その表現は、次のとおりである。(甲7号証の3)
(1)上辺左端付近に「公式41」との記載がある長方形の枠内に全ての記載が収められている。
(2)この枠内は、「1 死亡等の届出(21)」との表題の下に、都道府県知事への届出義務の発生事由とその事由別の届出義務者を示す一覧表が作成されている。
(3)一覧表の左側の「届出の必要な場合」欄には、宅建業法21条の規定により都道府県知事へ届け出なければならない届出義務の発生事由を、届出義務者である相続人、後見人、保佐人、本人ごとにまとめ、上から順に(ア)相続人が届出義務者となる同法21条1号、(イ)後見人が届出義務者となる同3号に引用する同法18条1項2号の前半部分、(ウ)保佐人が届出義務者となる同号の後半部分、(エ)本人が届出義務者となる同法21条2号に引用する同法18条1項1号、3号ないし5号について(ただし、4号の3が除外されている。)、@1号、A3号、B4号、C4号の2、D5号及び5号の2の順に分類され、一覧表の右側の「届出義務者」欄には、左側の届出義務の発生事由に対応する届出義務者が記載され、(ア)ないし(エ)の各項目間は横の罫線で区分されている。
(4)一覧表の下には、同法21条の規定の届出期限についての部分を要約した注意書きの記載がある。
(5)前記(3)の(ア)ないし(ウ)、(エ)のAについては法文の文言を「死亡」、「禁治産」などの要点を示す言葉で端的に表現し、(エ)の@、B、C、Dについては引用された同法18条の法文の規定の形式が既存の不許可事由を示す表現となっているものを後発的な届出が必要な場合を示す「……となったとき」「……たとき」等の表現とし、かつ単に要約して簡潔な文言にしてそれぞれ記載されている。
 右一覧表の右側の「届出義務者」欄には、届出義務者が条文の文言どおりに、あるいは「後見人又は保佐人」とまとめられているものを「後見人」と「保佐人」に分けたのみで記載されている。
(二)右認定の事実によれば、原告表(2)は、法文の内容を引用条文も踏まえて、法文の字義どおり明らかにしたものであり、またその配列も、複数の事由の、ある本人が届出義務者となる場合を一つの欄にまとめて配列すれば、誰が行っても同じような表現になると思われ、原告表(2)の表現形式についても表現内容についても著作権法によって保護される著作物としての創作性を認めることができない。
(三)原告は、原告表(2)について、宅建業法21条は1号以外は、18条中、1項1号又は3号から5号の2号〈「2号」は「2」の誤?〉までと、18条1項2号を引用するが、両者では届出事由及び届出義務者が異なり、これを説明すると複雑になり、初学者にとって理解が容易でないので、法文とは異なる簡潔な原告表(2)記載の文言による記述により、法文の意味するところを示して表にまとめたものであって、原告の精神的労苦による成果物である旨主張するが、条文のとおりではないものも〈「も」は「の」の誤?〉、要点を示す「死亡」、「禁治産」等の言葉で端的に表現したり、単に要約して簡潔な文言にしたにすぎないもので創作性は認められず、また、一覧表とした点も表による表現としては典型的な形式であって、創作性を認めることができない。
 また、原告は、原告表(2)は、(ア)項目について、届出義務者ごとに枠でくくり、一目で届出の必要な事項と届出義務者がわかるようにしていること、また、21条3号の記載に関しては、一文で示されているところを後見人と保佐人の二つの枠に分け、法概念につき未だ理解の充分でない初学者にわかるように18条2号に示された禁治産者の届出義務は前者、準禁治産者については後者と明示していること、(イ)項目の順序について、21条の号の順ではなく、よりわかり易くするように届出義務者に着目し、相続人、後見人、保佐人、本人の順(すなわち21条、1号、3号、2号の順)としていること、(ウ)21条2号で引用する18条1項又は3号から5号の2は、18条の但書が対象とする1項各号に該当する者が都道府県知事の登録を受けることができないとする不許可事由の形で示されているので、21条届出事由については、18条の不許可事由の記載を若干解釈で補った上、@ないしCの項目にまとめ、それをそれぞれ原告の言葉で簡潔に示していること、(エ)原告表(2)のDは、法18条5号及び5号の2の長い条文を合体させて要約していることから、原告の精神的労苦に基づく独創的な記述であって、著作権法上保護されるべきものである旨主張する。
 しかしながら、右主張の点を考慮しても、宅建業法21条とそこに引用された18条1項各号の条文を単に要約整理して原告表(2)の程度にまとめたことに創作性は認められない。
4 原告表(3)について
(一)原告表(3)は、別紙対照表の原告表(3)のとおりであり、都市計画法15条1項の規定による都市計画の決定権者に関し、各種の都市計画とその決定権者を一つの表にまとめたもので、その表現は、次のとおりである。(甲7号証の5)
(1)原告表(3)は、「1 都市計画の決定権者」との表題、続いて「(1) 決定権者」との表題があり、その下に、「原則・・都道府県知事および市町村(15T)」との記載があって、その下に、各種の都市計画とその決定権者を示す一覧表が作成されている。
(2)一覧表の左側の欄には、都市計画法7条ないし12条の5に規定される都市計画に定められる地域、地区等の中から、@都市計画法7条1項に規定する市街化区域及び市街化調整区域、A同法8条1項1号ないし7号について、(ア)1号に規定する用途地域、(イ)(a)2号ないし6号に規定する特別用途地区、高度地区、高度利用地区、特定街区、防火地域、準防火地域、美観地区、(b)7号に規定する風致地区、B同法12条の4第1項1号に規定する地区計画、C同法11条1項に規定する都市施設、D同法12条1項に規定する市街地開発事業、E同法12条の2第1項に規定する市街地開発事業等予定区域、F同法10条の2第1項に規定する促進区域がこの順に分類されて記載されている。また右一覧表の右側欄には、左側の各種の地域、地区等に対応する決定権者、すなわち、都市計画@の場合は、同法15条1項1号の規定による決定権者、A(ア)の場合は、同項3号を受ける同法施行令9条1項1号の規定による決定権者及び同法15条1項柱書後段の規定による決定権者、A(イ)(a)の場合は、同法15条1項柱書後段の規定による決定権者、(イ)(b)の場合は、同法15条1項3号を受ける同法施行令9条1項2号の規定による決定権者、Bの場合は、同法15条1項柱書後段の規定による決定権者、Cの場合は、同法15条1項3号を受ける同法施行令9条2項の規定による決定権者及び同法15条1項柱書後段の規定による決定権者、Dの場合は、同法15条1項4号の本文の規定による決定権者及び同法15条1項柱書後段の規定による決定権者、Eの場合は、同法15条1項5号の規定による決定権者、Fの場合は、同法15条1項柱書後段の規定による決定権者が記載されている。これら@ないしFの記載はそれぞれ横の罫線で区分され、Aの欄については、左端に「地域地区」との表題欄を設けた上、(ア)、(イ)が横の罫線で区分され、(イ)については、更に、「補助的地域地区」との表題欄を設けた上、(a)、(b)が横の罫線で区分されている。
(3)右一覧表の左側の欄には、「補助的地区地域〈「地域地区」の誤〉」の文言を除いて法文中の文言がほぼそのまま使用されている。右側の欄には、決定権者が、「都道府県知事」、「市町村」又は「知事または市町村」と記載されている。
(二)右認定の事実によれば、原告表(3)は、都市計画法が数か条にわたって定める都市計画で定めるべき区域、地域、地区等の内主要なものを選択し、条文の順序にとらわれず、独自の観点から分類、配列し、これに対応する決定権者を同法と同法施行令の定めの中から拾い上げて、一覧表の形式にまとめて表現したもので、法令の規定内容を出るものではないとはいえ、一定の主題についての複雑な法令の規定内容の骨子をわかりやすく整理要約した点に創作性が認められ、著作権法で保護されるべき著作物であると認められる。
(三)被告らは、原告表(3)は、都市計画法の条文に明記された用語と、それに対する法律上の決定権者を並べたものにすぎず、これを表に記載すれば、誰が行っても原告表(3)と同一になる程度のものであるから著作権の対象として保護されない、また原告表(3)は、先行出版物(乙8号証の3)記載の表と同じものであって、表の体裁が原告表(3)は表全体を線で囲んでいるところが異なるが、内容に影響のない単純な形態の違いにすぎず、右先行出版物記載の表を模倣、改変したものであり、原告が著作権を取得することはあり得ない旨主張する。
 しかしながら、原告表(3)の内容は法令の内容を単に要約したというものではないし、被告らが指摘する先行出版物である乙8号証の3の記載内容と原告表(3)とを対比すると、都市計画法7条ないし12条の5に示されている都市計画の種類の選択、分類、配列が相違していることは明らかであって、誰が作成しても原告表(3)と同一になるものではなく、被告らの主張は、理由がない。
5 原告表(4)について
(一)原告表(4)は、別紙対照表の原告表(4)のとおりであり、都市計画法29条の規定及びこれに関連する規定(同法附則4項、同法施行令19条、20条、同法施行令附則4条の2)により開発行為をしようとする場合に都道府県知事の許可が必要かどうかについて、開発行為の内容と都市計画区域との関係で都道府県知事の許可の要否を一つの表にまとめたものであり、その表現は、次のとおりである。(甲7号証の6)
(1)上辺左端付近に「公式15」との記載のある長方形の枠内に全ての記載が収められている。
(2)この枠内には、横に各種の開発行為を分類して記載し、縦に都市計画区域の関係を分類して記載して、縦横の罫線で区分し、横と縦が交わる欄に都道府県知事の許可の要否を「○」、「×」、「△」の記号で記載するようにした一覧表が作成されている。
(3)右一覧表の横の開発行為の分類では、都市計画法29条1号ないし11号に掲げられている開発行為が、@同1号にいう「その規模が政令で定める規模未満であるもの」が「小規模開発の例外」と、A同2号にいう「農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行なうもの」が「農村〈「村」は「林」の誤?〉漁業用建築物」と、B同3号にいう開発行為が「公益性のあるもの」と、C同4号にいう開発行為が「公的機関の行うもの」と、D同5号ないし11号にいう各種開発行為をまとめたものが「都市計画事業等の施行としてのもの・その他」とそれぞれ表示されて、この順に5項目に分類、配列されている。
(4)縦の都市計画区域の関係の分類では、(ア)「都市計画区域(原則知事の許可必要)」との表題欄を設けた中に、(a)都市計画法29条柱書にいう「市街化区域」、(b)同「市街化調整区域」、(c)同法附則4項にいう「市街化区域及び市街化調整区域に関する都市計画が定められていない都市計画区域」が「未線引区域」と表現されており、次いで、(イ)都市計画区域外の順に分類、配列されている。
(5)右一覧表の下には、○は許可が必要な場合、×は許可がいらない場合、△は一定規模未満にかぎり許可がいらない場合、との意味の説明を記述し、その下に、都市計画区域の種類中のAないしDの表示の説明として、都市計画法29条2号及び同法施行令20条1号、2号の規定を要約した文、同法29条3号の規定を要約した文、同条4号の規定を要約した文、同条5号ないし11号等の規定をまとめて要約した文を、4項目に分けて記載している。
(6)一覧表の横に分類した開発行為の項目名は、法令の内容を簡潔な文言にまとめて表示され、縦に分類した都市計画区域の関係の項目名は、(ア)の項は、法の文言のとおり表示され、(イ)の項は解釈に従って表示されている。
(7)横と縦の交わる欄における都道府県知事の許可の要否について、許否が必要な場合には○、許可が不要な場合には×、一定規模未満にかぎり許可が不要な場合には△との符号を付して表わしており、なお、△の場合には、更に同法施行令により定められている一定規模の具体的な基準をも記載している。
(二)右認定の事実によれば、原告表(4)は、都市計画法の本則と附則、同法施行令の本則と附則にわたって規定された都市計画区域ごとの開発行為についての都道府県知事の許可の要否を一覧表の形式にまとめて表現したもので、基本的に法令の規定内容を出るものではないとはいえ、一定の主題についての複雑な法令の規定内容の骨子をわかりやすく整理要約した点に創作性が認められ、著作権法で保護されるべき著作物であると認められる。
(三)被告らは、都市計画法29条の内容を図表化しようとすれば、項目分けとしては、都市計画区域別の項目分けと許可の不要な開発行為別の項目分けの二つの観点があるのは明白であり、これらの二つの観点から都市計画法29条の内容を図表化すると、都市計画区域別の項目分けとしては区域外をも加えて4個、許可の不要を開発行為別の項目分けとして5個を対置させた表となるのは当然であって、原告表(4)は、このような必然的な条文の解釈をそのまま表にしたにすぎず、特に表の内容に新規性や創造性があるわけではない旨主張する。
 しかしながら、都市計画法29条1号ないし11号を5項目に分けたり、各項目毎の法令の内容を原告表(4)のように表現することは当然のこととは認められず、被告らの右主張は、理由がない。
 また、被告らは、原告表(4)は、先行出版物(乙9号証の3、4)と同じものであって、原告表(4)が許可の必要なケースと不要なケースを一つの表にまとめている点は特に工夫を要するものではなく、したがって、右先行出版物を模倣、改変したものであり、原告が著作権を取得することはありえない旨主張する。
 しかしながら、被告らの指摘する先行出版物である乙9号証の3、4と原告表(4)とを対比すれば、都市計画区域の関係の分類、一覧表による配列の表現形式において相違していることは明らかであって、被告らの右主張は、理由がない。
6 原告表(5)について
(一)原告表(5)は、別紙対照表の原告表(5)のとおりであり、建築基準法53条1項、同法施行令2条1項2号の規定によって定められる建ぺい率を算定するための建築物の建築面積の計算方法の説明図であり、その表現は、次のとおりである。(甲7号証の7)
(1)2階建ての建物の粗略な正面図を上に、その平面図を下に配した説明図である。
(2)正面図には、2階建陸屋根の建物が表わされ、1階中央にひさしのある出入口が1個、その両側に1個ずつの窓が描かれ、2階部分には3個の窓が描かれている。2階部分の左端は1階部分よりせり出しており、そのせり出し部分の左側にバルコニー様のものが突出している。建物の屋上とバルコニー様のものの上の部分には柵が設けられており、バルコニー様のものの部分と出入口の部分は、密度の濃い点描が施されている。建物の左方には、1本の樹木が描かれている。
(3)平面図では、2階部分の左側のバルコニー様のものが突出している部分の投影図が、正面図の先端より右へ退いて表わされ、その差の寸法が1メートルと注記されており、また、ひさしの投影図が、点線で描かれた本来の先端部分の位置よりも上方へ退いて表わされ、その差の寸法が1メートルと注記されている。建物の投影図は全体的に密度の濃い点描が施され、中央より右斜め上が白抜きとなってここに横書きで「平面図」との記載がある。
 建物の平面図の左下には、意味不明の小さな横長の長方形が記載され、その左側に、横書きで「敷地面積1000u建築面積500u」との記載がある。
(二)右認定の事実によれば、原告表(5)は、建ぺい率計算の基礎となる建築面積を算定するに当たって注意すべき建築基準法施行令2条1項2号の「建築物……の外壁又はこれに代わる柱の中心線(軒、ひさし、はね出し縁その他これに類するもので当該中心線から水平距離1メートル以上突き出たものである場合においては、その端から水平距離1メートル後退した線)で囲まれた部分の水平投影面積による。」との規定の要点を説明するためにそれなりに工夫創作された略図と認められ、著作権法で保護されるべき著作物と認められる。
(三)被告らは、原告表(5)は、従来から宅建試験の受験指導の書籍で使われていた一般的な図を改変したものにすぎず、それ自体を一個の著作物といいうるだけの創造性を有するものではない旨、原告表(5)は、先行出版物(乙10号証の2)に記載されている「建築面積の算定方法(令2条2号)」と題する2個の表の合体にすぎず、右先行出版物記載の表を模倣、改変したものである旨主張する。
 しかしながら、乙10号証の2に記載されている二つの図と原告表(5)とを対比してみると、前者は、建築基準法施行令2条1項2号中の「(地階で地盤面上1メートル以下にある部分は除く)」との部分及び軒、ひさし等で1メートル以上突き出たものである場合を説明する図と、建築物自体の2階以上の部分がせり出している場合を説明する図とからなるのに対し、後者は一つの図であること、前者では地上3階地下1階の建物と地上3階の建物が描かれているのに対し、後者では2階建ての建物が描かれていること、両者は建物の出入口と窓との位置関係が相違していることなどの相違点があって、後者と前者は類似するものとは認められず、また原告表(5)が従来から宅地建物取引主任者の受験指導の書籍で使われていた一般的な図を改変したものと認定するに足りる証拠もなく、被告らの右主張は、理由がない。
7 原告表(6)について
(一)原告表(6)は、別紙対照表の原告表(6)のとおりであり、建築基準法69条ないし77条に規定された建築協定に関する事項を適用区域、協定の主体、協定の内容、手続、協定の効力、協定の変更、協定の廃止、一人協定の項目に分類して、右各項目につき簡潔に要点を列挙し、一つの表にまとめたものであり、その表現は、次のとおりである。(甲7号証の9)
(1)上辺左端付近に「公式39」との記載のある長方形の枠内に全ての記載が収められている。
(2)この枠内には、まず「建築協定」との見出しがあり、その下に、建築基準法69条ないし77条に規定された建築協定に関する事項を適用区域、協定の主体、協定の内容、手続、協定の効力、協定の変更、協定の廃止、一人協定の項目に分類し、これらを横の罫線で区分し、また、右各項目とその内容を縦の罫線で区分した一覧表が作成されている。
(3)右一覧表の欄外には、同法76条の3第4項の規定をやや簡略化して一人協定についての補注として記載している。
(4)(ア)「適用区域」の項目の右欄には、建築基準法69条の規定を解釈した建築協定の適用されるべき区域を簡潔に記載している、(イ)「協定の主体」の項目の右欄には、同条から協定の主体に関する部分を抽出し、注文に従って「土地の所有者等」や「借地権者」に含まれる者を分類し、これを図表化して記載し、「借地権者」の記載の下には、同条の地上権又は賃借権についての除外事由を要約したものをかっこ書きで記載している。また、「借地権者」の記載の右には、同法70条2項を解釈して借地権の目的となっている土地の所有者の承諾が不要であるとの趣旨を簡潔な文言で記載している、(ウ)「協定の内容」の項目の右欄には、同法69条中の協定の内容に関する部分を抽出し、法文の文言どおり記載している、(エ)「手続」の項目の右欄には、同法70条2項、1項、同法73条1項、2項に規定されている建築協定の認可手続の流れの要旨を簡潔な文言で記載している、(オ)「協定の効力」の項目の右欄には、同法75条に規定されている建築協定の効力について、同条の法文の要点をほぼ文言どおりに記載している、(カ)「協定の変更」の項目の右欄には、同法74条の2項に規定されている建築協定の変更の手続について、同項が準用する同法70条ないし73条の規定による変更手続の流れの要旨を簡潔な文言で記載している、(キ)「協定の廃止」の項目の右欄には、同法76条に規定されている建築協定の廃止の手続の流れの要旨を簡潔な文言で記載している、(ク)「一人協定」の項目の右欄には、同法76条の3第1項の規定を平易な文言に変えて記載している。
(二)右認定の事実によれば、原告表(6)は、建築基準法69条ないし77条に規定された建築協定に関する複雑な法文の内容を、受験対策として必要な項目毎に条文の枠を越えて整理し、簡潔な言葉で言い換え、一覧表にまとめた点において原告の創作が認められ、著作権法で保護されるべき著作物と認められる。
(三)被告らは、欄の作成方法、従って分類方法についても、法文を前提とする限り、素直にまとめれば原告表(6)のようになるのであって、原告表(6)には創造性は認められず、かつ、仮に若干の創造性が認められるとしても、著作物としての保護に値する程度には至らない旨主張する。
 しかしながら、建築基準法69条ないし77条に規定された建築協定に関する事項をまとめれば必然的に原告表(6)のような表現形式及び表現内容になるものではなく、作成者の考え方によって、多種多様の右法条の建築協定に関する事項を分類し、要約し、配列することが可能であると認められるから、被告らの右主張は、理由がない。
8 原告表(7)について
(一)原告表(7)は、別紙対照表の原告表(7)のとおりであり、国土利用計画法27条の2及び関連法令に規定された監視区域の指定手続を時系列的に図表化したものであり、その表現形式は、国土利用計画法27条2に示された監視区域の指定手続きの要点を6個のブロックにまとめ、これを時系列的に上から下へ並べているというもので、その内容は次のとおりである。
(1)第1のブロックでは、同法27条の2第2項に規定されている都道府県知事が監視区域を指定しようとする場合にあらかじめしなければならない意見聴取についての条文を要約して平易な文言で記載している。
(2)第2のブロックでは、同法27条の2第1項に規定されている都道府県知事による期間を定めた監視区域の指定の措置、並びに、同条3項によって準用される同法12条2項、11項に規定される都道府県知事による指定期間の限度と再指定が可能なことを、右各規定の骨子を簡潔な文言でまとめて記載している。
(3)第3のブロックでは、27条の2第3項によって準用される同法12条3項に規定される都道府県知事による公告の措置を、法文を要約して平易な文言で記載している。
(4)第4ブロックでは、27条の2第3項によって準用される同法12条4項に規定される規制区域の指定の効力発生を、法文を要約して平易な文言で記載している。
(5)第5のブロックでは、27条の2第3項によって準用される同法12条5項に規定される都道府県知事による公告後の措置を、法文を要約して平易な文言で記載している。
(6)第6のブロックでは、27条の2第3項によって準用される同法12条10項に規定される都道府県知事による規制区域指定後の調査義務、並びに同法27条の5に規定される都道府県知事の調査権限について、各法文の要点を平易な文言で記載している。
(二)右認定の事実によれば、原告表(7)は、国土利用計画法27条の2、27条の5及び準用される同法12条の規定された監視区域の指定手続及び指定後の調査に関する事項について、準用された条文を合わせて、手続の流れに沿って整理して法文の内容を簡潔に要約し、ブロック化して配列したものであって、創作性が認められ、著作権法により保護される著作物と認められる。
(三)被告らは、国土利用計画法27条の2及び同条が準用する同法12条に記載した行政手続を時系列に従って並べると、@(土地利用審査会、関係市町村長の意見聴取)、A(知事による区域、期間の決定)、B(公告)、C(公告による指定の効力発生)、D(内閣総理大臣への報告、関係市町村長への通知、必要な措置)、E(調査)、の順となる。これを図表化しようとすれば、右@ないしEの項目を1列に並べるしか方法がなく、縦書き横書きを別にすれば、誰が試みても同一図表にならざるを得ない、このことは、行政手続規定は、手続の明確さが要求されるために、規定文言が明確かつ覇束性を有し、その解釈も一義的にならざるをえないことに思いを致せば当然のことであり、原告表(7)は、条文そのものを簡略化して表現したにすぎず、表の内容に新規性、創造性が介入する余地はなく、原告表(7)には著作物性がない旨主張する。
 しかしながら、国土利用計画法27条の2及び同条が準用する同法12条の規定における監視区域の指定手続に関する事項について、どのように選択し、どのように分類し、どのように法文の文言を要約し、どのような形式で配列するか多種多様であり、また、指定後の調査に関する事項をまとめて記載するか否かは考え方の分れる点であり、更に原告表(7)が条文そのものを簡略化して表現したにすぎないものでないことは明らかであるから、被告らの右主張は、理由がない。
9 原告表(8)について
(一)原告表(8)は、別紙対照表の原告表(8)のとおりであり、国土利用計画法23条ないし27条に規定されている土地に関する権利の移転等の届出手続の流れを時系列的に図表化したものであり、その表現形式は、国土利用計画法23条ないし27条に規定されている土地に関する権利の移転等の届出手続の要点をブロック化し、時系列的に関連するブロック間を実線で結び、上から下へ列記しているもので、その内容は次のとおりである。(甲7号証の11)
(1)最上段のブロックでは、同法23条1項に引用される同法15条1項所定の土地売買等の契約を締結しようとする場合に当事者が都道府県知事に届け出なければならない事項中、原告が重要なものとして選択した予定価額と利用目的を具体的に明示して記載し、末尾に法条の数字のみをかっこ書きで示している。
(2)右ブロックに続くブロックでは、同法23条1項に規定される土地売買等の契約を締結しようとする場合の当事者の届出の方法を、法文の要点のみを簡潔な文言で記載し、末尾に適用法条の数字のみをかっこ書きで示している。
(3)右ブロックに続く手続の流れを、右届出に問題のある場合と問題ない場合と都道府県知事が何もしない場合の三つの流れに分けている。
(4)右届出に問題のある場合の流れの冒頭のブロック、このブロックの枠外及び次の二つのブロックでは、同法24条1項、2項に規定される都道府県知事による措置を、法文の骨子のみを簡潔な文言で記載し、末尾に適用法条の数字のみをかっこ書きで示している。
 また右に続く手続の流れを、都道府県知事の勧告に従わない場合と従う場合の二つの流れに分けて、従わない場合の流れのブロックでは、同法26条所定の勧告に従わない場合に都道府県知事のとりうる公表措置と契約の効力について、条文と解釈に基づいて簡潔な文言で記載し、これに適用法条の数字のみをかっこ書きで示している。勧告に従う場合の流れのブロックでは、同法27条所定の勧告に基づいて契約の締結が中止された場合の都道府県知事のとりうる措置の要点のみを簡潔な文言で記載している。
(5)前記届出に問題ない場合の流れのブロックでは、同法24条3項所定の都道府県知事のなすべき通知について、法文の骨子をブロック内とこのブロックの枠外に分けて簡潔な文言で記載し、これに適用法条の数字のみをかっこ書きで示している。
(6)都道府県知事が何もしない場合の流れのブロックでは、同法24条2項、3項、23条3項の解釈から導き出される都道府県知事の不作為により契約締結が可能となる要件を、簡潔な文言で記載している。
(7)右(5)の流れと(6)の流れを一つにまとめて、同法23条3項の解釈から導き出される効果である契約可能になることを、簡潔な文言で記載し、これに適用法条の数字のみをかっこ書きで示している。
(二)右認定の事実によれば、原告表(8)は、国土利用計画法23条ないし27条、15条に規定されている土地に関する権利の移転等の届出手続及びその後の措置について、必ずしも条文の枠にとらわれずに場合分けして整理し、簡潔な文言で要約し、ブロック化して配列したものであって、創作性が認められ、著作権法で保護されるべき著作物と認められる。
(三)被告らは、国土利用計画法23条ないし27条に規定されているところの土地に関する権利の移転等の届出以降の手続の流れを図表化するならば、何人が試みても原告表(8)のようにならざるをえず、後は微細な表現方法の問題であり、行政手続規定は、その性質上、規定文言及びその解釈が明確性を要求され、原告表(8)は、その明文規定と、そこから当然に導かれる解釈を図表化したものにすぎず、何らの学術性、独創性もない旨主張する。
 しかしながら、国土利用計画法23条ないし27条に規定されている土地に関する権利の移転等の届出手続に関する事項について、どのように選択し、どのように分類し、どのように法文の文言を要約し、どのような形式で配列するか多種多様であり、何人が試みても原告表(8)のようにならざるをえないとは認められず、被告らの右主張は、理由がない。
 また、被告らは、原告表(8)は、先行出版物(乙9号証の5)の「土地に関する権利の移転等の届出」と題する表と同じものであり、したがって、右先行出版物記載の表を模倣、改変したものであり、原告が著作権を取得することはありえない旨主張するが、被告らの指摘する先行出版物である乙9号証の5の「土地に関する権利の移転等の届出」と題する表と原告表(8)とを対比すれば両者の形式、表現が相違していることは明らかであるから、被告らの右主張は、理由がない。
10 以上によれば原告表(1)、(2)については著作物とは認められないから、これらについては複製の点について判断するまでもなく、著作権侵害と認めることができない。
二 争点二(被告表(3)ないし(8)はそれぞれ原告表(3)ないし(8)を複製したものか。氏名表示権、同一性保持権の侵害があるか。)について
 被告表(3)ないし(8)は、別紙対照表の被告表(3)ないし(8)のとおりである。
1 原告表(3)と被告表(3)との対比
(一)原告表(3)と被告表(3)とを対比すると、次のとおりの事実が認められる。
 原告表(3)も被告表(3)も、都市計画法15条1項の規定による都市計画の決定権者に関し、各種の都市計画とその決定権者を一つの表にまとめたものである点で共通している。
 原告表(3)は、「1 都市計画の決定権者」との表題、続いて「(1) 決定権者」との表題があり、その下に、「原則・・都道府県知事および市町村(15)T」との記載があって、その下に一覧表が作成されているのに対し、被告表(3)では、上辺左側に横長の小さい長方形を有し右長方形の中に「要点・都市計画の決定権者(1)」との記載のある長方形の枠内に一覧表が作成されている。被告表(3)では、一覧表を大きく左右に分けた左側の最上欄には「都市計画の種類」、右側の最上欄には「決定権者」と項目が記載されているが、原告表(3)にはそのような欄はない。
 都市計画の分類、配列については原告表(3)では前記一4において、@、A(ア)、(イ)(a)、(b)、B、C、D、E、Fとして認定したとおりであるのに対し、被告表(3)では、@及びAまでは原告表(3)と同様であるが、これ以下は、B同法10条の2第1項に規定する促進区域、C同法(平成2年6月29日法律第61号による改正された後のもの)10条の3第1項の規定する遊休土地転換利用促進地区、D同法11条1項に規定する都市施設、E同法12条1項に規定する市街地開発事業、F同法12条の2第1項に規定する市街地開発事業等予定区域、G地区計画との分類で、Cの遊休土地転換利用促進区域が加わっている外、配列も同法の条文の順序どおりの配列となっている。
 また、@の項目は、原告表(3)では、「市街化区域及び市街化調整区域の線引」と記載されているのに対し、被告表(3)では、「市街化区域及び市街化調整区域」と記載されており、要旨が異なっている。
(二)以上によれば、原告表(3)と被告表(3)は、共に都市計画法15条1項所定の都市計画の決定権者を整理して一覧表にまとめたものであるから、区域、地区、地域等の表現、決定権者が同じになるのは当然であり、その中で全体的な表現形式、都市計画の分類、配列等において右のように相違している以上、被告表(3)は、原告表(3)の複製とは認められない。
2 原告表(4)と被告表(4)との対比
(一)原告表(4)と被告表(4)とを対比すると、次のとおりの事実が認められる。
 原告表(4)も被告表(4)も、都市計画法29条の規定及びこれに関連する規定(同法附則4項、同法施行令19条、20条、同法施行令附則4条の2)により開発行為をしようとする場合に都道府県知事の許可が必要かどうかについて、開発行為の内容と都市計画区域との関係での都道府県知事の許可の要否を一つの表にまとめたものである点で共通している。
 原告表(4)は、前記認定のとおり上辺左端付近に小さな切れ目を有し右切れ目に「公式15」との記載のある長方形の枠内に全ての記載が収められているのに対し、被告表(4)では、上辺左側に横長の小さい長方形を有し右長方形の中に「要点・許可の不要な開発行為」との記載のある長方形の枠内に全ての記載が収められている。
 一覧表の項目の分類についてみると、原告表(4)では、前記認定のとおり縦の都市計画区域の関係の分類の(ア)において「都市計画区域(原則知事の許可必要)」との表題欄を設けているのに対し、被告表(4)では、横の開発行為の分類の冒頭に「原則」欄を設けている点で相違している。
 また、原告表(4)では、その下に、都市計画区域の種類中のAないしDの表示の説明として、都市計画法29条2号及び同法施行令20条1号、2号の規定を要約した文、同法29条3号の規定を要約した文、同条4号の規定を要約した文、同条5号ないし11号等の規定をまとめて要約した文を、4項目に分けて記載しているのに対し、被告表(4)ではこれがない点でも相違している。
 しかし、原告表(4)と被告表(4)の一覧表における記載内容は、都市計画法29条4号の開発行為を、原告表(4)が「公的機関の行うもの」と表現しているのに被告表(4)は「国、都道府県が行うもの」とする外は、同一か極めて類似しており、また原告表(4)も被告表(4)も一覧表の下に、○、×、△の意味の説明を記載している点で共通し、その記載内容も全く同一である。
(二)右(一)認定の事実によれば、原告表(4)と被告表(4)との記載内容は、同一か極めて類似している点もあるが、共に都市計画法29条及び関連する規定に定められた、開発行為の許可の要点を整理して一覧表にまとめたものであるから内容に共通する点があるのは当然であり、その中で、全体的な表現形式、内容について右のような相違がある以上、被告表(4)は原告表(4)の複製とは認められない。
3 原告表(5)と被告表(5)とを対比
(一)原告表(5)と被告表(5)とを対比すると、次のとおりの事実が認められる。
 原告表(5)も被告表(5)も、建築基準法53条1項、同法施行令2条1項2号の規定によって定められる建ぺい率を算定するための建築物の建築面積の計算方法の説明図である。
 原告表(5)も被告表(5)も、2階建ての建物の粗略な正面図を上に、その平面図を下に配したものであり、その表現は、被告表(5)では樹木が描かれていない点、バルコニー様のものの部分と出入口の部分、建物の投影図部分に付された点描の密度がやや粗である点、建物の投影図中に「平面図」の文字がない点、平面図の左下に敷地面積等の文字のない点を除けば、建物の形態、窓の数、形態、位置、説明のための補助線の引き方や注記、平面図の左下の意味不明の小さな横長の長方形が記載されている点まで共通している。
(二)右(一)認定の事実によれば、被告表(5)は、原告表(5)と著作物としての同一性を損なわない程度にまで類似しているものと認められる。
4 原告表(6)と被告表(6)との対比
(一)原告表(6)と被告表(6)とを対比すると、次のとおりの事実が認められる。
 原告表(6)も被告表(6)も、建築基準法69条ないし77条に規定された建築協定に関する事項を適用区域、協定の主体、協定の内容、手続、協定の効力、協定の変更、協定の廃止、一人協定の項目に分類して、右各項目につき簡潔に要点を列挙し、一つの表にまめたものである点で共通している。
 原告表(6)では、前記認定のとおり、上辺左端付近に「公式39」との記載のある長方形の枠内に全ての記載が収められているのに対し、被告表(6)では、上辺左側の横長の小さい長方形を有し右長方形の中に「要点・建築協定のまとめ」との記載のある大きな長方形の枠内に全ての記載が収められている。
 また、原告表(6)では、「建築協定」との見出しがあるのに、被告表(6)にはこれがない。
 一覧表の表現内容は、原告表(6)と被告表(6)は、ほぼ同一であり、わずかに、原告表(6)では、「協定の主体」の右欄中の「借地権者」の記載の下には、建築基準法69条所定の地上権又は賃借権のうち除外される場合を要約して「(臨時設備・一時使用を除く)」と記載しているのに対し、被告表(6)ではこれがない点で相違するのみである。
 一覧表の欄外の記載については、原告表(6)では「一人協定」の項目についての補注を記載しているのみであるのに対し、被告表(6)では、ほぼ同文の一人協定の項目についての補注の外に、「協定の効力」の項目についての補注がある点で相違している。
(二)右認定の事実によれば、原告表(6)と被告表(6)とは前記のような相違点はあるものの、その表現は著作物としての同一性を損なわない程度にまで類似しているものと認められる。
5 原告表(7)と被告表(7)との対比
(一)原告表(7)と被告表(7)とを対比すると、次のとおりの事実が認められる。
 原告表(7)も被告表(7)も、国土利用計画法27条の2及び関連法令に規定された監視区域の指定手続を時系列的に図表化したものである。
 被告表(7)では、上辺左側に横長の小さい長方形を有し右長方形の中に「要点・監視区域の指定」との記載のある大きな長方形の枠内に全ての記載が収められているのに対し、原告表(7)では、これがない点、被告表(7)では、右枠内に、まず、国土利用計画法27条の2第1項に規定される都道府県知事の監視区域の指定の権限を、法文の要点を抜粋して記載しているのに対し、原告表(7)ではこれがない点、被告表(7)では、右枠内の右下に適用法条(国土利用計画法27条の2のみ)を簡潔に記載しているのに対し、原告表(7)ではこれがない点で相違している。
 他方、原告表(7)と被告表(7)中の国土利用計画法27条の2に示された監視区城の指定手続きの要点を6個のブロックにまとめ、これを時系列的に上から下へ並べた部分は、そのような整理の形式が共通しているばかりか、その記載内容まで原告表(7)と一言一句同一である。
(二)右認定の事実によれば、原告表(7)と被告表(7)中の6個のブロックからなる部分は、ほぼ同一であると認められる。
6 原告表(8)と被告表(8)との対比
(一)原告表(8)と被告表(8)とを対比する、と次のとおりの事実が認められる。
 原告表(8)も被告表(8)も、国土利用計画法23条ないし27条に規定されている土地に関する権利の移転等の届出手続の流れを時系列的に図表化したものである点で共通している。
 被告表(7)では、上辺左側に横長の小さい長方形を有し右長方形の中に「要点・届出の手続のまとめ」との記載のある大きな長方形の枠内に全ての記載が収められているのに対し、原告表(8)ではこれがない点、被告表(8)では、時系列的に関連するブロック間を矢印で結んでいるのに対し、原告表(8)では、時系列的に関連するブロック間を実線で結んでいる点、原告表(8)では、ブロック中の記載に、適宜、適用法条の数字を示しているのに対し、被告表(8)ではこれがない点で相違している。
 他方、原告表(8)と被告表(8)は、一つのブロックの中にまとめる事項、手続きの流れの分け方が共通である上、各ブロック内の記載の表現が同一又は著しく類似している。
(二)右認定の事実によれば、原告表(8)と被告表(8)との類似の程度は、同じ国土利用計画法23条ないし27条の規定を図表化したものであることから当然に予想される類似性を遥かに超えて類似しているものと認められる。
7 訴外Aは、昭和62年5、6月頃から平成2年10月までの間、原告に、その開催する宅建試験の受験指導講座の講師として勤務し、原告書籍(1)の作成にも関わり、また右講座での講義に原告書籍(1)を講義の教材として使用していた。訴外Bは、平成元年から平成2年10月までの間、原告に、その開催する宅建試験の受験指導講座の講師として勤務し、原告書籍(1)を教材として使用していた。AとBは、原告を平成2年10月に退職した後、翌11月から被告学院に勤務し、被告学院の発意に基づき、その名で発行するものとして、平成2年12月から翌年3月頃までの間に、被告表(1)ないし(8)を含む被告書籍(1)の原稿を共同で執筆したが、被告表(1)、(2)を含む部分はAが、被告表(3)ないし(8)を含む部分はBが分担した。少なくともAは、被告表籍(1)の原稿を執筆するに際し、原告書籍(1)を参考にしたことがあった。被告書籍(2)は、被告らにおいて被告書籍(1)中の要点となる部分を抜き出して作成した。(乙14号証、証人Aの証言、弁論の全趣旨)
8 右3ないし6のとおり、被告表(5)は原告表(5)に、被告表(6)は原告表(6)に、被告表(7)中の6個のブロックからなる部分は原告表(7)に、被告表(8)は原告表(8)にそれぞれ同一あるいは極めて類似しているものであるところ、右7のとおり被告書籍(1)の執筆者であるAもBも原告書籍(1)の作成に携わったり、講義の教材として使用して、原告書籍(1)の内容は十分把握しており、被告書籍(1)の執筆の際に原告書籍(1)を参考にしていたものであり、しかも、3認定のとおり、原告表(5)中にある意味不明の長方形が被告表(5)にもあることに照らせば、被告表(5)、被告表(6)、被告表(7)中の6個のブロックからなる部分、被告表(8)は、それぞれ原告表(5)ないし(8)に依拠して、そのまま、あるいは一部改変して作成されたもので、原告表(5)ないし(8)の複製と認められるから、これらの被告表(5)、(6)、(8)及び被告表(7)の前記部分を含む被告書籍(1)、(2)を作成、出版することは原告の原告表(5)ないし(8)についての複製権の侵害にあたる。
 他方、右1、2のとおり、被告表(3)、被告表(4)は、原告表(3)、原告表(4)と共通する点もあるものの相違点があり、原告表(3)、原告表(4)の複製とは認められない。
9 被告表(5)、(6)、(8)及び被告表(7)の前記部分は、原告表(5)、(6)、(8)、(7)を一部改変したものであり、かつ著作者として原告の名称が表示されていないから、被告書籍(1)、(2)を作成、出版することは原告の同一性保持権、氏名表示権の侵害にあたる。
三 争点三(被告らの行為による原告の損害及び謝罪広告の必要性)について
1 前記二7認定のとおり、被告学院は、平成2年10月に原告を退職したA及びBに、退職の2か月後の平成2年12月から、原告書籍(1)と同様の宅建試験の受験者用のテキストである被告書籍(1)の執筆をさせていることに鑑みれば、被告学院は、A及びBが原告に勤務中、宅建試験の受験指導に関与していた経歴を知った上、被告書籍(1)の執筆をさせたものと推認される。
 そうすると、被告学院は、右両名によって短期間に作成された被告書籍(1)の原稿が原告の出版している同種の書籍の著作権を侵害していないかどうか調査し、他人の著作権を侵害しないようにすべき義務があるのにこれを怠ったまま被告書籍(1)を販売し、またその要点を抜き出した被告書籍(2)を無償配布した過失があるものと認められる。
 また、被告出版は、被告学院と代表者を同じくし、営業所も同一場所にあり、かつ、業務においても密接な関連を有しているのである(弁論の全趣旨)から、被告学院の発意の下にでき上がった被告書籍(1)、(2)の原稿を出版しようとする場合、被告学院と同様に、でき上がった被告書籍(1)、(2)の原稿が他人の出版している同種の書籍の著作権を侵害していないかどうか調査し、他人の著作権を侵害しないようにすべき義務があったというべきであるところ、被告出版は、これを怠ったまま被告書籍(1)、(2)を出版したのであるから過失があるものと認められる。
 右被告らの行為は客観的に関連共同するものとして、共同不法行為に当たり、被告学院と被告出版は、連帯して原告の損害を賠償すべき責任を負う。
2 著作権侵害による損害
 被告出版が被告書籍(1)を1部2800円で少なくとも3000部発行したものであることは、当事者間に争いがない。
 原告は、被告出版が被告書籍(1)を5000部発行した旨主張するが、右3000部以上の発行を認めるに足りる証拠はない。
 被告表(6)ないし(8)が掲載された被告書籍(2)は、1000部が被告学院の宅建試験講座の受講者等に無償で配布されたものであることは前記のとおりである。
 原告は、被告らの前記著作権侵害により、著作権行使につき通常受けるべき金銭の額相当の損害を被ったものと認められるところ、被告書籍(1)の定価、総頁数(554頁)、被告書籍(1)、(2)の発行部数に原告表(5)ないし(8)の内容を綜合考慮すれば、原告が被告書籍(1)及び(2)の出版発行による著作権の行使につき通常受けるべき金銭の額は、原告表1面について2万5000円、4面分10万円が相当であるが、原告表(5)ないし(8)についての原告の主張の範囲内で1万1854円(2万0216円÷8×4+4074円÷7×3=1万1854円)と認める。
3 著作者人格権侵害、信用毀損等による損害
 右1及び前記二8認定のとおり、被告らは、原告表(5)ないし(8)に一部改変を加えた被告表(5)ないし(8)を掲載した被告書籍(1)を販売し、被告表(6)ないし(8)を掲載した被告書籍(2)を無償配布して原告の同一性保持権、氏名表示権を侵害したものであるところ、前記認定の被告らの著作権侵害行為の態様及び諸般の事情等を勘案すると、被告らの著作者人格権侵害による損害賠償額は40万円と認めるのが相当である。
 原告は、被告らの行為によって著しい信用毀損を受けた旨主張するが、右事実は本件全証拠によっても認めるに足りない。
4 弁護士費用相当の損害
 原告が本訴の提起及び逐行のために弁護士である原告代理人を選任したことは当裁判所に顕著であるところ、本件事案の内容、当初は被告書籍(1)、(2)の出版、販売の差止請求もされていたところ、被告らにおいて被告書籍(1)の在庫を裁断処分し、被告書籍(2)は在庫がなく、その後発行された版では問題となる被告表が含まれていない等の事情の変化が生じたので右差止請求は取り下げられたことを含む審理の経緯、訴訟の結果その他諸般の事情を考慮すると、原告に生じた弁護士費用のうち30万円は被告らの著作権侵害の不法行為と相当因果関係のある損害として被告に負担させるべきものと認めるのが相当である。
5 右2ないし4の損害額の合計は71万1854円となる。
6 被告らは、被告書籍(1)のみならず被告書籍(1)の第2版に当たる「宅建虎の巻(下)」の1991年度版をも既に発行しておらず、在庫品として残っていた217部は廃棄処分しており、被告書籍(1)の第3版に当たる「宅建虎の巻(下)」の1992年度版以降は、被告表(5)ないし(8)の掲載を止めている。また、被告らは、被告書籍(2)のみならず被告書籍(2)の第2版に当たる「宅建虎の子(下)」の1991年度版をも既に発行しておらず、在庫品も残っていない。被告書籍(2)は、宅建試験の直前対策の資料として被告学院の受講生に無料配布していたものであって、一般に流通していなかった。(以上乙15号証の1ないし12、乙16号証の1ないし11、乙17号証)。以上の事実に前記の被告書籍(1)、(2)の販売ないし頒布数、被告書籍(1)、(2)中において被告表(5)ないし(8)の占める程度を考慮すると、金銭賠償の他に、原告の名誉声望を回復するため原告が請求する謝罪広告が必要であるとは認められない。
四 結論
 以上によれば、原告の本件請求は、被告らに対し各自損害賠償金71万1854円及びこれに対する平成4年3月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由がある。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判長裁判官 西田美昭
 裁判官 櫻林正己
 裁判官 宍戸充は差支えのため署名押印できない。
 裁判長裁判官 西田美昭
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