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【事件名】永禄建設事件
【年月日】平成6年3月30日
 東京地裁 平成3年(ワ)第12736号 損害賠償等請求事件

判決
原告 株式会社サンドケー
右代表者代表取締役 X
右訴訟代理人弁護士 武井伸八
被告 永祿建設株式会社
右代表者代表取締役 Y
右訴訟代理人弁護士 高橋治雄


主文
原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
一 被告は、別紙目録(1)記載の会社案内(以下「被告パンフレット」という。)を出版、配付してはならない。
二 被告は、原告に対し、金127万1000円及びこれに対する平成3年8月13日から支払ずみまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、原告が被告に対し、主位的に原告作成の別紙目録(2)記載の会社案内(以下「原告パンフレット」という。)が編集著作物であるとして、その複製権の侵害に基づき被告パンフレットの出版配付の差止及び損害賠償、予備的に不法行為に基づき損害賠償を求めている事案である。
一 争いのない事実
1 原告は、広告の企画立案、製作、出版物の企画、編集、製作、発行等の業務を目的とする会社であり、被告は、土木建築工事の設計請負施工等の業務を目的とする会社である。
2 被告〈「被告」は「原告」の誤〉は、平成2年1月ころ被告の東京支社を訪れ、その後被告の会社案内製作のための具体的企画案を被告に提示し、同3年2月ころ原告パンフレット(甲1号証のもの)を製作してこれを被告に提出した。
3 被告は、平成3年3月ころ、原告に対しては、被告の会社案内を発注しない旨を通知し、他方で被告パンフレット(乙1号証のもの)を出版配付した。
二 争点に関する当事者の主張
1 原告
(一)編集著作物
 原告パンフレットは、編集著作物である。すなわち、従来の会社案内は、限られたスペースのなかで会社の内容を紹介し、その信頼性、堅実性を主張するものであるため、内容が盛り沢山になり、また、堅実なものになりがちであるところ、原告パンフレットは、あえてゆとりをもたせた構成を考えて、素材の選択配列を行ったものである。例えば、原告パンフレットは、全体的に柔らかなムードをだすためにイメージ写真をふんだんに取入れ、また、紹介記事の文章等は控えめとし、配列については、見開きの左頁に大きめの写真ないしイラストを配置し、右頁には小さめのものを2、3点配置するという従来の会社案内に多いパターンを避け、当該頁の紹介記事を端的に示す写真を各頁に配している。また、企業理念、事業内容、業務内容、東京支社の紹介と明確に頁を分け、かつ、内容が変わる毎にホワイトスペースを設けてゆとりを持たせ、わかりやすく、相手に好い印象を与える会社案内を目指してオリジナリティーを出している。
(二)複製権侵害
 被告は、原告パンフレットに依拠して被告パンフレットを作成したが、被告パンフレットは、次に述べるとおり、素材の選択及び配列において原告パンフレットと同一であり、原告パンフレットを複製したものである。
(1)1頁は、両者とも、中央にイメージものを配し、その余をホワイトスペースとしている。
(2)2頁は、両者とも、右端に社長の写真を載せ、その下に企業理念等を語った社長の挨拶文を掲載し、その余をホワイトスペースとしている。
(3)3、4頁は、両者とも、木の床、白い壁、窓から降りそそぎ床に写る陽の光、インテリアとしての植物の写ったイメージ写真を見開きで大きく取り扱っている。
(4)5ないし10頁は、両者とも、被告の事業分野の紹介であるが、上段約4割のスペースにイメージ写真、その下に横1行のコピー、その更に下に小さな写真ないしイラストを交えた短めの紹介記事を配置し、最下段に事業分野を見出しとして色分けしていれている。
(5)11頁は、両者とも、中央にイメージ写真を配し、その余をホワイトスペースとして残している。原告パンフレットにおける本頁は、各事業分野の紹介から、具体的な商品の紹介にはいることを読者に明確にするために、ポーズを置いたものであるが、被告パンフレットにおいても同様である。
(6)12ないし14頁は、両者とも、被告が施工したマンションのイラストないし写真である。そして、12頁は、両者とも、掲載するイラストの大きさ、並べかたを変えてメリハリを付けており、13、14頁は、両者とも、見開きの中央に大きなイラストないし写真を配置している。
(7)15、16頁は、両者とも被告が施工した建売分譲住宅、ビル建設等の写真である。そして、両者とも、各頁上段には、2頁にまたがる大きめの写真を1枚配している。
(8)17頁は、両者とも、中央にクリーンな感じのするイメージ写真を配し、その余をホワイトスペースのまま残している。本頁は、同頁以降、被告の構成、現況及び沿革の紹介に入ることから、読み手に頭の整理をしてもらい、その後の展開がスムーズにいくように工夫した。
(9)18頁は、両者とも、上段に大文字で企業理念のコピーを入れ、若干の補足説明をそのすぐ左下に入れ、右の記事を囲むような形で東京支社の内外の様子を写した写真を配置し、また、写真は上の方には小さめのものを数枚、下の方には大きめのものを1枚配置している。
(10)19、20頁は、両者とも、システム図やディスクロージャー等をこの見開き2頁にまとめている。
(11)21、22頁は、両者とも、左側に会社概要、右側に沿革、会社組織図をまとめている。
(12)被告パンフレットが原告パンフレットを参考にしたものであることは、従前の被告のパンフレット(乙2号証のもの。以下「被告旧パンフレット」という。)と被告パンフレットとが大きく相違していることから明らかである。
(三)不法行為
 原告は、平成2年1月以降、月1回の割合で被告東京支社を訪れ、被告の東京支社広報宣伝部部長Q(以下「Q」という。)から会社案内についての要望を聞きながら、検討を重ねて原告パンフレットを作成したところ、Qは、同3年2月26日、原告に対し会社案内を発注するための手続として被告社内での最終稟議にかけるとして、原告パンフレットと原告の見積書を預ったうえで、原告パンフレットを訴外株式会社ソフト商品開発研究所(以下「ソフト研究所」という。)等の業者に渡して、これと酷似した被告パンフレットを作成させ、原告に対しては、料金が高いことを理由として発注しないことを告げて、原告パンフレットを返却した。
(四)損害
 原告は、被告の故意又は過失による編集著作権侵害行為又は前記不法行為により、次の損害を被った。
(1)企画料 24万円
(2)デザイン料 72万円
(3)ディレクション料 31万1000円
(4)合計 127万1000円
2 被告
(一)編集著作物について
 原告パンフレットは、会社案内としてはどこにでもあるごく一般的なものであり、独創性はなく、編集著作物には当たらない。原告パンフレットが被告旧パンフレットと比べいろいろな点で相違しているのは、被告旧パンフレットがこの業界では斬新なものであり、原告パンフレットがごく一般的な内容のものであるからである。原告が独創性を主張している点は、無数に存在しているこれまでの会社案内のなかに見られるものであり、原告自身がこれら先人の労作を借用しているにすぎない。
(二)複製について
 被告は、原告を含む数社に会社案内の企画の提案及び見積りを求め、選考の結果、ソフト研究所の企画を採用することになり、同社にその版下製作を発注して、被告パンフレットを印刷したものであるが、原告の提案してきた原告パンフレットをソフト研究所に開示したことはない。
(三)不法行為について
 被告のQは、平成3年にはいり、新たな会社案内を作成することになったため、ソフト研究所、株式会社富士インターナショナル、原告その他に会社案内の企画案と見積書の提示を求め、その際に次の条件を提示した。
(1)被告旧パンフレットは、読んで理解してもらうものであったが、今回の会社案内は、文章を簡潔にして写真を大きく取り扱うことによって視覚に訴える構成にする。
(2)被告旧パンフレットに、果物を使うことによってフレッシュな会社というイメージで統一したが、不動産会社であるから生活空間を強調したイメージ写真でまとめ、全体を統一する。
(3)頁数は24頁とする。
(4)複数社の見積合せのうえ決定する。
 被告は、複数社からの企画案と見積書が提出されたが、その内容が大同小異であったため、見積金額が低廉で、かつ、従来から被告が会社案内、パンフレットを発注していたソフト研究所に発注することになり、他社には採用しないことを伝えて企画案等を返還した。
三 争点
1 原告パンフレットは、編集著作物か。
2 被告パンフレットは、原告パンフレットの複製か。
3 被告は、原告パンフレットをソフト研究所に渡して、これと酷似したパンフレットを作成させたか。
第3 判断
一 争点1について
 編集物(データベースに該当するものを除く。)で素材の選択又は配列によって創作性を有するものは、編集著作物として保護されるものであり(著作権法12条)、したがって、材料の収集、分類、選別、配列という一連の行為に知的創作性が認められるものであれば、これを編集著作物として保護すべきところ、証拠(甲1)によれば、原告パンフレットは、被告を紹介する会社案内であり、その表紙、1頁、3ないし11頁、17、19頁にふんだんにイメージ写真を配置し、5ないし10頁に被告の事業内容をワンルームマンション、戸建住宅、ファミリーマンション、貸借事業、建設事業、海外事業に分類して紹介し、また、12ないし16頁には被告のこれまでの事業実績を示すマンション、注文建築の写真又はイラストを配列し、更に、18ないし20頁に企業理念、会社の売上高及び資本金の推移等の紹介をし、21、22頁には会社概要、沿革等の詳しい説明をしているものであることが認められ、右事実によれば、原告パンフレットは、これらの写真、イラスト及び記事の選択と配列に知的創作性が認められるものであるから、編集著作物であると認めるのが相当である。
二 争点2について
1 証拠(甲1、乙1)により、原告パンフレットと被告パンフレットとを比較すれば、次のとおりである。
(一)表紙は、原告パンフレットが、右上に「PROFILE」「EIROKU CONSTRUCTION」と記載し、そのほぼ中央に6枚のイメージ写真を配しているのに対し、被告パンフレットはそのほぼ中央に「MULLION PLOFILE永禄建設株式会社 会社案内」との文字が記載されているだけであり、写真やイラスト等が存しない点で相違する。
(二)1頁は、両者とも、中央にイラストを配し、その余をホワイトスペースとするレイアウトにおいて類似しているが、中央のイラストが原告パンフレットではイメージものであるのに対し、被告パンフレットでは被告の銀座ビルを描いたイラストである点で相違している。
(三)2頁は、両者とも、右上側に被告代表者の写真を載せ、その下に企業理念等を語った同代表者の挨拶文を掲載し、その余をホワイトスペースとするレイアウトにおいて類似しているが、被告代表者の写真はそれぞれ別個の写真が使用されており、また、挨拶文の内容も全く異なった表現となっている。
(四)3、4頁は、両者とも、木の床、白い壁及びインテリアとしての植物の写ったイメージ写真を見開きで大きく取り扱っている点においては類似しているが、両者の写真はそれぞれ異なる写真が使用されており、また、同写真と一部重複して印刷されている見出しの位置と内容、記事の内容は、いずれも異なっている。
(五)5ないし10頁は、両者とも、事業分野毎の紹介であるが、上段約4割のスペースにイメージ写真、その下に横1行のコピー、その更に下に小さな写真ないしイラストを交えた短めの紹介記事を配置し、最下段に事業分野の見出しとして色分けをしていれているレイアウトにおいて類似しているが、掲載されている多数の写真及びイラストは一つとして同一のものはなく、また、横1行のコピー及び記事の内容が両者とも全く異なった表現となっており、かつ、事業内容の紹介の順番も、原告パンフレットにおいてはワンルームマンションの紹介から始まっているのに対し、被告パンフレットにおいては、被告の事業の主力がワンルームマンションからファミリーマンションに移行していることを反映して、ファミリーマンションの紹介から始まっている点で相違している。
(六)11頁、17頁は、両者とも、中央にイメージ写真を配し、その余をホワイトスペースとするレイアウトにおいて類似しているが、そこに使用されているものは、相異なる写真である。
(七)12ないし14頁は、両者とも、被告が施工したマンションのイラストないし写真であるが、一部の例外を除いて、各パンフレットに使用されているイラスト又は写真は異なるものであり、また、その配置も異なっている。
(八)15、16頁は、両者とも被告が施工した建売分譲住宅、ビル建設等の写真であるが、一部の例外を除いて、各パンフレットに使用されている写真又はイラストは異なるものであり、その配置も異なっている。
(九)原告パンフレットにおける18頁から20頁までの被告の企業理念、売上高及び資本金の推移等の説明の頁と被告パンフレットとの同各頁とは、互いに異なる写真が使用されており、また、記事の内容も全く異なった表現となっている。
2 右認定のとおり、原告パンフレットと被告パンフレットとは、かなりの頁において、各頁毎のテーマ、並びに、写真やイラスト及び記事のレイアウトにおける類似性はあるものの、原告パンフレットの表紙及び1頁から11頁までの事業内容の説明等の頁において選択されている写真、イラストと被告パンフレットの同各頁において選択されている写真、イラストとは全く異なるものであり、また、右各頁における記事の内容も全く異なった表現となっていること、更に、原告パンフレットの12頁から16頁までの被告がこれまでに建設してきたマンション、注文建築の写真、イラストにおいても、被告パンフレットの同各頁における写真、イラストとは、例外的なものを除いて異なるものであり、その配列も異なるものであること、更にまた、原告パンフレットにおける18頁から20頁までの被告の企業理念、売上高及び資本金の推移等の説明の頁と被告パンフレットとの〈「と」は不要?〉各頁とは、互いに異なる写真が使用されており、また、記事の内容も全く異なった表現となっていることが認められ、以上の事実によれば、原告パンフレットと被告パンフレットとは、各頁毎のテーマやレイアウトにおける類似性がかなりの頁において認められるものの、その素材である写真、イラスト及び記事については基本的に全く異なる素材を用いているものであることが認められる。そして、編集著作物の保護は、素材の選択及び配列についての抽象的なアイデアを保護するものではなく、編集著作物に具現化された素材の選択及び配列についての具体的な表現を保護するものであることからすると、そもそも素材が全く異なるものについて、編集著作物の著作権が及ぶものと解することはできないものであり、原告が主張しているような素材の配列についてのアイデアの共通性ないしはレイアウトの類似性についてまで編集著作物の保護の範囲を拡大するのは相当ではない。したがって、被告パンフレットを原告パンフレットの複製であると認めることはできない。
三 争点3について
1 証拠(甲7(一部)、乙4、8、9、証人P(一部)、同A)及び後記括弧内の各証拠によれば、次の事実が認められる。
(一)ソフト研究所は、被告の東京支社開設以来、過去5、6年にわたり被告からマンションのパンフレット、新聞、雑誌等の広告、小冊子等の作成の発注を受けてきた実績のある会社である。ソフト研究所は、被告旧パンフレットの作成も請け負ったが、被告旧パンフレットについては、被告の当時の担当者の強い意向を受けて、ソフト研究所作成の当初のラフ案が没になり、やや個性的な内容の会社案内が作成された。Qは、平成2年6月には、近い将来において新たに会社案内を作成することを考えていたため、ソフト研究所の代表者のA及び営業のRと新宿の高層ビルで食事をしたときに、Qの前任者の意向が強く反映されている被告旧パンフレットを廃止して普通の一般的な内容の会社案内を作成する考えがあること及びソフト研究所に対し新しい会社案内の企画書の作成を依頼したい旨の話をし、ソフト研究所は、そのころ、前回没になったラフ案をベースに新たな会社案内の企画案を作成して、被告に提出した(乙5)。
(二)一方、原告の営業担当社員のPは、平成2年1月ころ、飛込みで被告を訪問し、その後もときどき被告を訪れ、新しい会社案内の作成についてQと話をするようになっていた。なお、原告は、平成2年7月ころ会社案内の案をQに提出したこともあったが、右案は、会社のイメージとして女性的で弱いものであったため、Qの気にいるところとはならなかったものであり、また、その後Qの要望を聞いて作成された原告パンフレットともかなり異なるものであった(甲1、6)。
(三)Qは、平成3年1、2月ころ、新たな会社案内を作成する腹を固め、ソフト研究所、原告及びその他数社に対し、(1)被告旧パンフレットと異なり、文章を簡潔にして写真を大きく取り扱うことによって視覚に訴える編集にする、(2)被告旧パンフレットの果物のイラストを廃して、ファミリー向け住宅分譲が主体になった会社であることから、生活空間(アットホーム)的な面を強調したイメージ写真でまとめ、全体を統一する、(3)被告旧パンフレットは、投資型ワンルームマンションを主体とした編集内容であったが、事業の多角化により各部門の事業内容を平均して取り扱うことにする、(4)24頁とする、(5)他社との相見積りとする等の基本的な条件を示したうえで、会社案内のラフ案の提示を求めた。
(四)ソフト研究所は、平成3年2月ころ、Qの前記条件を聞いたうえで、会社案内に挿入する文章及び会社案内のラフ案を作成して、被告に提出した(乙7)。なお、Qは、ラフ案の提示に際しては、ソフト研究所等に対し、例えば、1頁には、普通の会社の写真を入れること、3、4頁には、今後ファミリーマンションの販売を行うのでアットホームな感じのイメージ写真をもってくること、5頁以降は、片方の頁を全部写真にしてしまうと頁数が増えるので、1頁毎に写真と文章や見出しを入れること等の具体的な提示を出していた。
 原告も、平成2年7月以降も、Qの会社案内についての具体的な意見や要望を詳しく聞きながら、同3年2月26日に原告パンフレットを作成して、被告に提出した(甲1)。
(五)Qは、社内で各社提出のラフ案を検討した結果、各社のラフ案にあまり大きな差異がなかったこと、見積金額はソフト研究所のものが最も低廉であったこと、ソフト研究所には従前からパンフレットや会社案内の作成を依頼していた実績があったことから、今回の会社案内の作成をソフト研究所に依頼することにし、原告に対しては会社案内の作成を依頼しないことにした。
(六)ソフト研究所は、前記(四)の文章及びラフ案をベースにして、被告パンフレットの版下を作成して、被告に提出し、被告パンフレットが右版下をもとにして印刷された。
2 右1認定の事実によれば、「Qが原告に対し会社案内を発注するための手続として被告社内での最終稟議にかけるとして、原告パンフレットと原告の見積書を預ったうえで、原告パンフレットをソフト研究所等の業者に渡して、これと酷似した被告パンフレットを作成させ、原告に対しては、料金が高いことを理由として発注しないことを告げて、原告パンフレットを返却した」との原告主張事実を認めることはできない。なお、原告パンフレットと被告パンフレットにおいては、各頁毎のテーマの類似性、並びに、写真、イラスト及び記事の各頁のレイアウトにおける類似性があることは前記のとおりであり、この点から、ソフト研究所が原告パンフレットをなんらかの形で参照したうえで被告パンフレットを作成したとの疑念も生じえないではないが、前記認定のとおり、原告パンフレットは、そもそも被告の担当者であるQの意見、要望を色濃く反映して作成されたものであり、また、被告パンフレットも同様にQの意見、要望を色濃く反映し同人の具体的な指示を受けながら作成されたものであることからすれば、ソフト研究所が原告パンフレットを全く参照しないで被告パンフレットを作成したとしても、前記のような点で原告パンフレットと被告パンフレットとが類似してくることもありえないことではなく、更に、原告パンフレットと被告パンフレットは、全体としてみれば、前記のとおり、写真、イラスト及び記事の内容において全く相異なっており、そもそも両者間には編集著作物としての同一性はなく、編集著作権侵害の問題は生じえないものであることも考えあわせると、ソフト研究所の本件の被告パンフレット作成行為については特段の違法性を見出し難く、結局、本件について被告に不法行為を認める余地があると解することも困難であるといわざるをえない。
四 以上によれば、原告請求はいずれも理由がない。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判官 設楽隆一
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