判例全文 | ||
【事件名】装飾窓格子事件 【年月日】平成4年1月24日 東京地裁 平成2年(ワ)第13281号 意匠権確認等請求事件 判決 原告 X 被告 岩崎電工株式会社 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第一 原告の請求 一 被告は、別紙被告製品目録記載の製品を製造し、譲渡し又は貸し渡してはならない。 二 被告は、前項記載の生産のカタログ、パンフレット又は広告用文書を印刷し、又は頒布してはならない。 第二 事案の概要 一 本件は、別紙「図面目録」記載の各図面(本件各図面)を製作した原告が、本件各図面について著作権を主張し、装飾窓格子、フェンス、門扉、手すりなどの建築物の外装用資材である別紙被告製品目録記載の各製品(被告製品)を製造販売等している被告に対し、被告製品はいずれも本件各図面に従って製作されたものであるから、被告の右行為は原告の有する本件各図面の著作権(複製権)を侵害するものであるとして、被告製品の製造等の差止めを求めた事案である。 二 争いのない事案 1 原告は、一級建築士であり、建築設計業務を中心に、建築関係の製品の意匠等の開発を業務として行っており、また、被告は、各種の建築材料の製造販売等を業務としている。 2 原告は、本件各図面を製作した。 3 被告は、被告製品を製造販売し、また被告製品についてのカタログ、パンフレット、広告用文書を印刷し、頒布している。 三 争点 1 本件各図面が著作権法の著作物に該当するか。 2 右1が肯定されるとき、被告は、原告から本件各図面についての著作権を譲り受けたものであるか。 第三 争点に対する判断 争点1について判断する。 一 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。 1 本件各図面の製作に至る経緯等は次のとおりである。 (一)被告は、昭和五〇年ころ、装飾窓格子の製品開発を企図し、訴外株式会社行動デザインセンターにそのデザインを依頼したところ、当時、同センターにアルバイトとして勤務していた原告がそのデザインを担当することとなり、原告は、製品のイメージについての被告担当者の意見、要求を入れるなどして、同年八月ころ、別紙図面目録?一ないし八の各図面を製作した(甲一の一ないし八、同九の四、五、同一八]。 (二)原告は、昭和五二年三月建築設計事務所を開設したが、昭和五三年六月ころ、被告から、アルミ鋳物パネル、フェンス等のデザインの依頼を受けた。このため、原告は、ヨーロッパに取材に赴くなどしてデザインに関する資料を収集し、また被告担当者の「ヨーロッパ調の完全にアンテイークな柄が欲しい。」「植物的な柄を中心として欲しい。」等の要求を満たすようにデザイン案を検討作成した。また原告と被告担当者は、同年一一月ころ、右デザイン案を検討する際、図柄を部分的に切断することは技術的に可能か、顧客のニーズに応じて図柄の一部を別の図柄と組み合わせることは可能か等の、右デザインを製品化した際の技術的な問題についても協議し、更に製品の型枠については、コスト面から木製とすることに決定した(甲一二の一ないし五)。そして、原告は、昭和五四年二月、被告担当者との右のような検討結果に基づき、別紙図柄目録二ないし四、同目録三1、2及び同目録四1、2の各図面を製作した(甲二の一ないし八、同九の四、五、同一八)。 (三)原告は、前記(二)と同様に、被告担当者と協議しながら、昭和五五年四月ころ別紙図面目録五の図面を、同年一〇月ころ同目録六の図面を、昭和六一年六月ころ同目録七1ないし3の各図面を製作した(甲二の九、一〇、同三の一ないし六、同九の四、五)。 2 本件各図面は、いずれも図柄が記載されているだけではなく、詳細な寸法が記入され、また円弧状の図柄部分についてはその半径の数値等も記入されたり、その断面図が記載されたり、製品製造上の指示説明が記載されているものもある等、建築物の外装用資材として使用される装飾窓格子、フェンス、門扉等を大量生産するための原図若しくは設計図として製作されたものである。また、現に被告は、被告製品の模様ないし形状として本件各図面のデザインをそのまま使用し、あるいはそのデザインを縦方向又は横方向に連続的に使用して製品化している。すなわち、別紙被告製品目録―一ないし八の装飾窓格子は別紙図面目録?一ないし八の各図面を原図ないし設計図として、別紙被告製品目録二1ないし4のアルミ鋳物パネル、同目録三1、2の手すり部品及び同目録四1、2のアルミ鋳物フェンスは別紙図面目録二1ないし4、同目録三1、2及び同目録四1、2の各図面を原図ないし設計図として、別紙被告製品目録五のアルミ鋳物手すりは別紙図面目録五の図面を原図ないし設計図として、別紙被告製品目録六の装飾窓格子は別紙図面目録六の図面を原図ないし設計図として、別紙被告製品目録七1ないし3のアルミ鋳物門扉は別紙図面目録七1ないし3の原図を原図ないし設計図としてそれぞれ製作されたものである。そして、被告は、このような被告製品を大量に製造し販売している。(甲一の一ないし八、同二の一ないし一〇、同三の一ないし六、同四の一ないし一九、同五の一ないし九、同九の一ないし七、同一八) 二 右認定の事実によれば、本件各図面は、建築物の外装用資材として使用される被告製品の原図ないし設計図として大量生産に適するような考慮も払われて製作されたものであり、また、現に、本件各図面に基づいて被告製品が大量に製造され、販売されているものであって、本件各図面は産業用に利用されるものとして製作され、現にそのように利用されているものであるから、本件各図面は文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属しないものであり、著作権法にいう著作物に該当しないものというべきである。 三 右のとおり、原告の本訴請求は、本件各図面が著作権法にいう著作物に該当しないから、その余の争点について判断するまでもなく、理由がない。 東京地方裁判所 裁判長裁判官 一宮和夫 裁判官 足立謙三 裁判官 長谷川浩二 被告製品目録 一 1 装飾窓格子 C-二六一 サークル 2 装飾窓格子 C-二六二 ブライト 3 装飾窓格子 D-二〇一 ブーケ 4 装飾窓格子 D-二〇二 グローリー 5 装飾窓格子 D-二〇三 アイビー 6 装飾窓格子 M-二三一 クリスタル 7 装飾窓格子 M-二三二 ビーム 8 装飾窓格子 M-二三三 ムーンライト 二 1 アルミ鋳物パネル AC-五〇一 エジンバラ 2 アルミ鋳物パネル AC-五〇二 パピヨン 3 アルミ鋳物パネル AC-五〇三 ジュピター 4 アルミ鋳物パネル AC-五〇四 ラベンダー 三 1 手すり部品 AC-六〇一 オリオン 2 手すり部品 AC-六〇二 マーキュリー 四 1 アルミ鋳物フェンス AC-七〇一 リオグランデ 2 アルミ鋳物フェンス AC-八〇一 ローゼ 五 アルミ鋳物手すり部品 AC-六〇三 フローレンス 六 装飾窓格子 D-二〇五 テインクル 七 1 アルミ鋳物門扉 G-七五三 スクェアゲート 2 アルミ鋳物門扉 G-七五四 バロンゲート 3 アルミ鋳物門扉 G-七五五 ロワールゲート 図面目録一〜七 省略 |
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