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【事件名】住宅地図入電話帳事件
【年月日】平成3年8月27日
 岡山地裁 昭和60年(ワ)第479号 損害賠償請求事件

判決
原告 X
右訴訟代理人弁護士 石田正也
被告 成羽町商工会
右代表者 会長Y1
右訴訟代理人弁護士 松岡一章
同 河村英紀
被告 サンコー印刷株式会社
右代表者代表取締役 Y2
右訴訟代理人弁護士 高原勝哉
同 松井健二


主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実
第1 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告らは、原告に対し、連帯して、金300万円及びこれに対する昭和60年7月25日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
3 第1項につき仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁(被告ら)
 主文と同旨
第2 当事者の主張
一 請求原因
1 当事者
(一) 原告は、アサヒマップという商号を用いて、住宅地図の作成を業とする者である。
(二) 被告成羽町商工会(以下「被告商工会」という。)は、岡山県川上郡成羽町の商工業者を会員とする商工会である。
(三) 被告サンコー印刷株式会社(以下「被告サンコー印刷」という。)は、オフセットタイプを主とした印刷一般等を目的とする株式会社である。
2 昭和54年版の著作権
(一) 原告は、成羽町商工青年会(以下「商工青年会」という。)から、昭和54年5月30日、成羽町住宅地図入電話帳(以下「昭和54年版」という。)の作成を代金150万円で請け負った。
(二) 原告は、広告原稿、2万5000分の1及び500分の1の各地図、郵便局の集配地図、電話案内簿を資料として、成羽町の集落の現地調査を行ったうえ、地図の作成、広告原稿のデザイン化、電話案内簿の組み替え、デザイン化などを施して、昭和54年版を完成した。
(三) 原告は、被告サンコー印刷に対し、昭和54年版の印刷を注文し、同年8月ころ、商工青年会に昭和54年版を納入し、請負代金を受領した。
(四) 昭和54年版は、原告が、個々の資料に基づき、知識、経験を生かし、素材を選択、配列し、独特の技術に基づき創作したものであるから、著作権法12条1項にいう編集著作物にあたるものである。
 また、住宅地図部分は、原告が成羽町内を調査し、他に真似のできない技術に基づき独創的に描写したものであるから、著作権法10条1項6号にいう地図の著作物にあたる。
(五) 昭和54年版の表紙には、出版元アサヒマップとして、転写、複写を禁じる旨記載されており、著作権法14条により、原告が著作者であることが推定されるものである。
3 著作権侵害
(一) 被告商工会青年部は、昭和57年ころ、成羽町住宅地図入電話帳(以下「昭和57年版」という。)を作成し、成羽町の住民に配布した。
 商工青年会と被告商工会青年部とは、所在地、活動内容及び財政等について何ら実体的な変更なく、単に名称のみが商工青年会から被告商工会青年部に変更されたにすぎず、両者は実質的に同一であって、被告商工会が両者が別人格であると主張することは権利の濫用にあたる。
(二) 被告サンコー印刷は、被告商工会青年部の注文を受けて、昭和57年版を印刷した。
(三) 被告商工会青年部が作成、配布した昭和57年版は、原告の作成した昭和54年版と同一のものであって、住宅地図部分を若干手直ししたものにすぎない。
4 被告らの責任
 被告商工会及び同サンコー印刷は、昭和57年版成羽町の発行が原告の昭和54年版に対する著作権を侵害することを知りながら、あるいは、このことを知らなかったとしても、充分に調査すれば原告の著作権を侵害することになることを知ることができたにもかかわらず、これを怠り、共同して原告の著作権を侵害したものである。
5 損害
 原告は、被告らの著作権侵害により、精神的苦痛を被ったところ、慰謝料としては300万円が相当である。よって、原告は、被告らに対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料300万円及びこれに対する不法行為以後であって訴状送達の日の翌日である昭和60年7月25日から支払い済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
二 請求原因に対する認否(被告ら)
1 請求原因1(一)ないし(三)の各事実は認める。
2(一) 同2(一)の事実は認める。
(二) 同2(二)の事実は否認する。
 昭和54年版は、商工青年会が、自ら、住宅地図部分の区割り、現地調査及び作成、広告、電話帳部分の資料収集、デザイン及び配列などをして原稿を作成したものであって、原告は、住宅地図部分のトレースを行って、被告サンコー印刷に印刷を取り次いだにすぎない。したがって、昭和54年版の著作者は商工青年会である。
(三) 同2(三)の事実は認める。
(四) 同2(四)の事実は否認する。
 昭和54年版は、電話帳部分、広告部分及び住宅地図部分から成るが、電話帳部分は既存の電話番号案内簿をほぼそのまま印刷したにすぎず、広告部分も各広告主から提出された原稿をほぼそのまま印刷したものにすぎない。さらに、住宅地図部分についても、特定街区の街路及び家屋を掲載対象とし、街路に沿って各種の建築物、家屋の位置関係を表示し、名称、居住者名、地番、住居表示を行っているにすぎず、掲載対象は特定されており、配列も特に創作性はない。
 また、昭和54年版は、単に電話帳と住宅地図を合冊して、表紙及びその他の空欄に広告を掲載したものにすぎず、編集物としての創作性を認めることはできない。
 したがって、昭和54年版は、著作権法にいう著作物ということはできない。
(五) 同2(五)のうち、昭和54年版の表紙に出版元アサヒマップとして、転写、複写を禁じる旨記載されていることは認めるが、右のような出版元という表示は、著作者名の表示とはいえない。
3(一) 同3(一)及び(二)のうち、昭和57年版を作成し被告サンコー印刷に印刷を注文したのが、被告商工会青年部であることは否認し、その余の事実は認める。
 商工青年会は、成羽町の商工業に従事する青年を会員として、被告商工会の事業に協力する目的で、昭和44年5月25日に設立された権利能力のない社団であるが、被告商工会とは構成員、代表者等も異なり、独自の会則、財産等を持つ別個の団体であった。被告商工会は、昭和57年5月13日、定款を変更して新たに青年部を設置したが、これにともない、商工青年会は、同月20日、解散したものである。
(二) 同3(三)の事実は否認する。
 昭和57年版は、商工青年会が、新たに現地調査、広告の募集をするなどして原稿を作成したものであって、昭和54年版とは別個の著作物である。
4 同4及び5の各事実は否認する。
第3 証拠
 当事者双方が提出、援用した証拠関係は、本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由
一 請求原因1の各事実は、当事者間に争いがない。
二 請求原因2(昭和54年版の著作権)について
1 昭和54年版の作成の経過について
 証拠(甲第1号証の1、第2号証の1、2、第3及び第4号証、乙イ第5、第14ないし第22号証、第23号証の1、2、第24号証、第25号証の1ないし3、第26ないし第32号証、第33号証の1ないし5及び第34ないし第37号証、乙ロ第1号証、証人【A】、同【B】、同【C】(第1、第2回)、同【D】、同【E】及び同【F】の各証言、原告本人尋問の結果(但し、後記の信用できない部分を除く。)並びに被告サンコー印刷代表者本人尋問の結果によれば、以下の事実を認めることができる。
(一) 商工青年会は、昭和44年5月25日、成羽町の商工業者の後継者を主な会員として、被告商工会の事業に協力することなどを目的として設立された権利能力のない社団であり、独自の会則及び会計を持ち、会長、副会長等の委員、総会及び委員会等の機関を有していた。
(二) 昭和53年12月ころ、商工青年会の設立10周年の記念事業として、成羽町の住宅地図入電話帳を発行する話が持ち上がり、翌54年1月19日、商工青年会の役員会で、商工青年会の会員が自ら成羽町住宅地図入電話帳を作成し、印刷については業者に注文することが決定された。原告は、当時、岡山県下の他の商工会の青年部の注文で住宅地図入電話帳をいくつか手がけたことがあったことから、右の役員会で住宅地図入電話帳の作成について説明することになり、当日、商工青年会の役員らに対して、原告の関係した住宅地図入電話帳等を見本として示すなどして、住宅地図入電話帳の作成の方法、これにかかる費用などについて説明した。
(三) 商工青年会は、まず、住宅地図部分の原稿の作成から取りかかることとし、同年2月14日、会員が集まって、成羽町をいくつかの地域に区分し、約15名の会員で各区割り地域を分担して住宅地図の原稿を作成することを決め、これ以降、担当の会員らが、実際に現地を調査した結果及び郵便局から取り寄せた集配図などに基づいて、1週間に2、3度集まっては、住宅地図の原稿作成の作業を行い、同年3月末ころまでには、ほぼ、これを完了した。原告は、右の作業現場を何度か訪れては、住宅地図の区割りの仕方及び原稿作成の要領などについて商工青年会の会員らに助言したようなことはあったが、実際になされた住宅地図の区割り作業は商工青年会の会員らの意見に従って決められたものであり、また、建物の形状、位置関係及び居住者名などについても、担当の会員らの調査等に基づいて確定された。
(四) 次に、商工青年会は、同年3月14日ころから、会員らが、それぞれ分担して、被告商工会の会員宅を訪問して広告の募集を行った。広告の掲載方法については、原告の持参した住宅地図入電話帳を参考にして、ほぼこれと同様に、表紙、裏表紙及びこれらに引き続く数頁は広告のみを掲載し、また、電話帳部分には広告主の電話番号の後に広告を割り入れ、住宅地図部分及び電話帳部分の4辺にも、見開きで縦各3、横各4、合計14の広告枠を配列した。そして、担当の会員が、それぞれの広告枠に広告主の手書きあるいはチラシなどの広告の見本を張り付けるなどして、広告原稿を作成した。また、電話帳部分については、商工青年会が成羽町電話局から入手した50音順の電話番号案内簿をそのまま転載することとし、右の広告を挿入するほか、原告の発行した住宅地図入電話帳と同様に、広告主の氏名及び電話番号を太字で表示することとした。
(五) 商工青年会は、同年4月ころ、原告、被告サンコー印刷及びその他の業者に対して、昭和54年版の発行、印刷の見積りをさせたところ、原告がこれを請け負うことになり、商工青年会は、原告との間で、同年5月30日、同年7月末日までに昭和54年版3000冊を納入すること、昭和54年版の大きさはB4版〈「版」は「判」の誤?〉、頁数は70頁とし、広告主の電話番号及び住居は太文字とすること、原告は商工青年会の提出した原稿を間違いなく基にして、字体等を要領よくまとめて作成すること、代金は150万円とすることなどといった内容の契約書を作成した。そして、そのころ、原告は、被告サンコー印刷に対し、代金97万4540円で昭和54年版の印刷を注文した。
(六) 商工青年会は、原告に対し、同年4月初めころから、順次、できあがった原稿を手渡したが、原告は、原稿の住宅地図部分については、トレース用紙に筆写するにあたって、道路の幅が不揃いに記載されていたのを平行な線に手直しを行ったり、河川部分に斜線を施し中州を書き込んだりするなどして、地図らしい体裁を整えて清書し、また、住宅地図の4辺に欄を設けて、上、下部にはA、B、Cなどのローマ字、右、左部には、1、2、3などのアラビヤ数字の表示をそれぞれ付けて引き易くするなどの下夫を施し、広告部分及び電話帳部分については、原稿の一部に手を加えて印刷に適するよう整えたりするなどしたうえ、被告サンコー印刷に印刷に回した。
(七) 商工青年会が被告サンコー印刷の印刷した青刷りを校正した後、同年8月ころ、昭和54年版の印刷が完成し、原告は、商工青年会に対し、これを納品したが、これは青と赤の色刷りが逆になっており、また、電話帳部分の電話番号の配列が一部誤っていたため、印刷をやり直すことになり、同年9月ころ、被告サンコー印刷が、原告を介さずに、昭和54年版を商工青年会に納入した。
(八) 昭和54年版の住宅地図部分は、成羽町を住宅密集地域を中心に29の地域に区割し、各地域をそれぞれ1頁に収め、道路、河川及び建物などを主に対象として、略図的方法により、地名、建物の名称、居住者名及び位置関係を判りやすく表示したものである。
2 昭和54年版の著作物性について
(一) 右に認定した事実関係によれば、昭和54年版は住宅地図部分、電話帳部分及び広告部分から成るところ、まず、右の電話帳部分は、電話局の50音順の電話番号案内簿をそのまま転載し、ただ、その間に広告を挿入し、広告主の氏名及び電話番号を太字で表示したというのにすぎないものであり、右の広告の配列などは機械的になされているものであって、原告の経験に基づく工夫が多少はなされているとしても、とりたてて美的あるいは機能的に独創的な選別あるいは配置が施されているというものではなく、広告入りの電話帳としては極めてありふれたものであって、著作権の対象として保護に値するものということはできない。また、右の広告部分も、表紙、裏表紙及びその後の数頁に広告を適宜に配列し、また、住宅地図部分及び電話帳部分の頁の4辺に広告を配列したというものにすぎず、同様に、著作物としての創作性を認めることはできないものである。さらに、昭和54年版は、住宅地図部分及び電話帳部分を単純に合冊し、これに広告を配列したものにすぎないから、編集物として、素材の選択又は配列に創作性を認めることができるものということはできない。
(二) 次に、昭和54年版の住宅地図部分の著作物性について検討する。一般に、住宅地図は、学術的な地図のように、山、河川及び海岸線などの地形の形態、鉄道、道路及び都市の存在等を一定の縮尺でもって文字及び記号で平面上に正確に表示することを主眠とするものではなく、利用者に対して、建物の位置関係、名称及び居住者名に関する情報を伝達する目的で、実際の地理を忠実に再現することは簡略化し、建物の位置関係の目印となるような道路、河川などを略図的方法で表現し、これに建物を枠取りの方法で記載して、地名、建物の名称及び居住者名を書き入れたものである。したがって、住宅地図は、素材となる建物の位置関係、名称及び居住者名を調査した結果に基づき、これらを適宜に選択、配列し、図面上に正確かつ簡明に表現した点に主に創作性を認めることができ、著作物として著作権の目的となるものと解するのが相当である。右1に認定した事実関係によれば、昭和54年版の住宅地図部分は、一般的な住宅地図と同様の過程及び方法で作成されたものであって、右に述べた理由で著作物性を認めることができるものである。
3 昭和54年版の住宅地図部分の著作者について
(一) ところで、原告は、昭和54年版の表紙には原告の商号であるアサヒマップなる表示が著作者名として記載されているから、著作権法14条により、原告が昭和54年版の著作者と推定される旨主張するので、まず、この点について判断するに、昭和54年版の表紙には、出版元アサヒマップとして、転写、複写を禁じる旨の表示があることは、当事者間に争いがない。しかしながら、右のような出版元なる表示は、著作物の出版ないし発行の主体を指すものであって、著作物を創作した者と著作物を出版ないし発行する者とは概念上も区別されるものであるし、また、実際上も両者は必ずしも一致しないものであるから、右表示は著作者名の通常の方法による表示ということはできず、原告の右主張は理由がない。
(二) そこで、昭和54年版の住宅地図部分を実際に創作した者が原告か否かについて判断する。
 右2において述べたように、住宅地図の創作性は、主に、建物の位置関係、名称及び居住者名に関する調査資料を図面に正確かつ簡明に表現することに認めることができるところ、右の創作的作業に主体的な役割を果たした者が著作者に該当するということができる。これを本件についてみるに、前記1において認定した事実関係によれば、昭和54年版の住宅地図部分は、商工青年会の会員らが、成羽町をいくつかの地域に区分し、建物の位置関係等を現地調査するなどして、これを原稿に表現したというのであって、原告は、右原稿をトレース紙に筆写し印刷の手配をしたというのにすぎない。したがって、昭和54年版の住宅地図部分の作成について、主体的な創作的作業を実行したのは商工青年会であって、原告は、単に、その補助的な作業をしたのにすぎないというべきである。また、原告が商工青年会の原稿に一部地形の形態などを書き加えたことはあるが、これをもって、原告が商工青年会作成の住宅地図の原稿に新たに独立した創作的表現を付け加えたということはできない。
 なお、住宅地図部分の作成過程について、原告本人は、原告が自らあるいは原告の従業員が、実地に成羽町を調査し、これらの調査に基づいて、住宅地図の原稿を作成した旨供述し、また、甲第17号証によれば、原告が、当時、現地調査と称して成羽町の知り合いを訪れたことがあったことを認めることができる。ところで、甲第3号証の昭和54年版の住宅地図部分をみると、住宅地図の各頁の重複部分について、建物の位置関係、建物の形状及び居住者名が相互に食い違っている部分が数か所あることを認めることができるところ、このような食い違いが生じた原因について、原告本人は、原告の従業員ら数人で現地を調査し相互に調整することなく原稿を作成したためであるとか、あるいは、商工青年会の会員らに住宅地図の原稿に手を入れてもらった際、各頁に食い違いが生じたが、そのまま印刷に回したなどと供述している。しかしながら、もし、原告が住宅地図作成の専門家として自らの調査に基づき原稿を作成したとするならば、建物の位置関係等に関する各頁の表示を調整するのが当然であると考えられ、むしろ、このような不一致が住宅地図にあることは、素人である商工青年会の会員らが個々別々に原稿を作成したとするのが自然であるし、さらに、仮に、原告の供述に従い、原告の作成した原稿に商工青年会の会員らが手を加えたために食い違いが生じたのをそのまま印刷したというのであれば、まさに、住宅地図の住居表示の正確性に関して、原告が全く責任ある役割を果たしていなかったことを自認するものに他ならない。これに加えて、前記1において認定したように、住宅地図の区割りについては商工青年会の会員らの意見に従って決められたことは、原告本人もその供述において認めるところであり、また、原告と商工青年会との間の契約書に商工青年会の提出した原稿に基づいて忠実に印刷するなどといった記載があることを考え併せ、原告の右供述とは反対の趣旨の証人【C】(第2回)、同【D】、同【E】及び同【F】の各証言並びに被告サンコー印刷代表者本人尋問の結果に照らしても、原告の右供述は信用することができず、その他に右供述の事実を認めるに足りる証拠はない。
 また、前記1において認定したように、原告は商工青年会の会員らに対し自らの経験的知識に基づき住宅地図の作成について助言等をしたものであるが、著作物の創作の着想や方法を教示したのにすぎない者は著作者とはいえないのであるから、商工青年会の会員らが、原告の助言等を基にしながらも、自ら主体的に住宅地図部分を作成する作業を行った以上、著作者は商工青年会であって原告ではないことは当然のことといわなければならない。
 以上の次第で、昭和54年版は住宅地図部分についてのみ著作物性を認められるが、右の著作者が原告であると認めることはできないものといわざるを得ない。したがって、原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。
三 よって、訴訟費用の負担につき民訴法89条を適用して、主文のとおり判決する。

岡山地方裁判所第1民事部
 裁判長裁判官 梶本俊明
 裁判官 岩谷憲一
 裁判官 芦高源
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