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【事件名】クラブ「順子」事件
【年月日】平成3年8月7日
 那覇地裁 昭和63年(ワ)第616号 音楽著作権侵害差止等請求事件

判決
原告 社団法人日本音楽著作権協会
右代表者 理事X
右訴訟代理人弁護士 与世田兼稔
被告 Y1
被告 Y2
被告 Y3
右3名訴訟代理人弁護士 中野清光


主文
1 被告Y1及び同Y2は、原告に対し、連帯して、金399万8250円及びこれに対する昭和63年12月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告の被告Y1及び同Y2に対するその余の請求を棄却する。
3 原告の被告Y3に対する請求を棄却する。
4 訴訟費用は、原告に生じた費用の3分の2と被告Y1及び同Y2に生じた費用を被告Y1及び同Y2の負担とし、原告に生じたその余の費用と被告Y3に生じた費用を原告の負担とする。
5 この判決は、原告勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。

事実
第1 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告らは、原告に対し、連帯して、金442万3250円及びこれに対する昭和63年12月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
3 仮執行の宣言
二 被告らの請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者の主張
一 請求原因
1 (当事者)
(一)(1)原告は、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」(昭和14年法律第67号)に基づく許可を受けたわが国唯一の音楽著作権仲介団体であり、内外国の音楽の著作物の著作権者からその著作権ないし支分権(演奏権、録音権、上映権等)の移転を受けるなどしてこれを管理し、国内の放送事業者をはじめレコード、映画、出版、興行、社交場及び有線放送等各種の分野における音楽の著作物の利用を許諾し、音楽の著作物の適法な利用を円滑簡易ならしめるとともに、右許諾の対価として音楽の著作物の利用者から著作物使用料規程に定める使用料を徴収し、これを内外の著作権者に分配することを目的とする社団法人である。
(2)原告は、別添楽曲リスト、同U、同V、同W、同X、同Y、カラオケ楽曲リスト及び同追補(合計8冊)に各記載の音楽著作物(以下「管理著作物」という。)のうち、内国の音楽著作物については、著作権者との著作権信託契約約款により、各著作権者から著作権ないし支分権(演奏権、録音権、上映権等)の移転を受けてこれを管理し、また、外国の音楽の著作物については、わが国の締結した著作権条約に加盟する諸外国の著作権仲介団体との相互管理契約により、演奏、放送及び上映を含む公開演奏を許諾する独占的権利の付与を受けて管理している。
(二)(1)被告Y3は、同Y2の実父であり、また、被告Y2と同Y1は、昭和56年9月16日婚姻した夫婦である。
(2)被告Y3が、昭和59年11月ころ、訴外Aから、那覇市<以下略>所在の「クラブ順子」(以下「クラブ」という。)の店舗を譲り受けた後、被告らにおいて、昭和59年12月1日から平成元年2月28日までの間、これを共同経営し、被告Y3は同クラブの現場運営のほか資金面を、被告Y2及び同Y1はいずれもその現場の運営面を、それぞれ担当していた。
2 (著作権侵害行為)
(一)被告らは、昭和59年12月1日から平成元年2月28日までの間、日曜日を除いた毎日、クラブにおいて、原告の許諾を受けないで、営業時間中ピアノを使用して原告の管理著作物である音楽を反復継続的に生演奏させ、これを来集した不特定多数の客に聞かせ、原告の音楽著作権の内容である演奏権を侵害した。
(二)被告らは、昭和63年6月1日から平成元年2月28日までの間、クラブにおいて、原告の許諾を受けないで、いわゆるカラオケ装置を設置した上、これを稼働させるため原告の管理著作物である伴奏音楽を収録した多数のビデオディスクを常備し、営業時間中これを操作して、オーディオカラオケの再生(上映)による演奏を伴奏として、客又はその従業員に不特定多数の面前にて原告の管理著作物である歌詞付き楽曲を歌唱させ、原告の音楽著作権の内容である演奏権及び上映権を侵害した。
(三)右(一)及び(二)の管理著作物の利用はクラブの営業の不可欠要素であり、被告らには、他人の著作権を侵害することのないように相当の注意義務があり、かつ、管理著作物の利用については原告の使用許諾を受ける義務があるにもかかわらず、これらを怠り継続して原告の著作権の内容である演奏権及び上映権を侵害しているので、故意又は過失がある。
3 (損害)
 原告は、被告らの右侵害行為により、管理著作物の使用許諾の対価として次の徴収できる使用料に相当する得べかりし利益を喪失し、これと同額の損害を被った。
(一)昭和59年12月1日から昭和62年3月31日までの損害(ピアノ演奏分)金175万円
(1)原告は、昭和15年2月29日、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」3条1項の規定に基づき、主務大臣の認可を受けて、「著作物使用料規程」を定め、その後数次変更をしたが、昭和46年4月1日に認可された著作物使用料規程(以下「旧規程」という。)によると、管理著作物による生演奏のうち、軽音楽1曲1回の「演奏会形式による演奏」の使用料は、定員、平均入場料、使用時間によって類別区分された料金表により、別表(1)のとおり定められており、これをキャバレー、クラブ、スナック等の社交場において使用する場合は、右演奏会形式による演奏についての使用料の100分の50の範囲内で使用状況等を参酌して具体的な使用料を決定することとされている。
 そして、原告は、社交場の場合の参酌の方法として、@定員について、500名未満を100名単位で段階的に区分し、客席数に応じて使用料を逓減し、A平均入場料について、入場料金を明示しない場合は、1セット料金(飲食税、サービス料を含む。)又は同相当額に30パーセントを乗じた金額に、テーブルチャージ、席料などがある場合は更にその額を加算した額を平均入場料として使用料を算定する。
(2)被告らの昭和59年12月1日から昭和62年3月31日までの管理著作物の使用状況は、同期間の定員が500名未満、平均入場料が3000円以上3500円未満、客席数が100名未満、管理著作物の1日平均の演奏曲数がのべ25曲、1か月平均の営業日数が25日であり、別表(1)に基づき1か月の使用料を算定すると、別表(2)のとおり金6万2500円であり、これに昭和59年12月1日から昭和62年3月31日までの28か月を乗ずると、金175万円となる。
(二)昭和62年4月1日以降平成元年2月28日までの損害(ピアノ演奏分)金244万3750円
(1)原告は右旧規程を、昭和61年8月13日に変更して所定の認可を受け、昭和62年4月1日より施行したところ(以下「新規程」という。)、この使用料算定方法は、別表(3)を用い、生演奏1曲1回、時間5分以内の単価を基に月額使用料を算定することになった。
(2)被告らの昭和62年4月1日以降平成元年2月28日までのピアノ演奏による管理著作物の使用状況は、客席数が80席未満(60席)、管理著作物の1日平均の演奏曲数がのべ25曲、1か月平均の営業日数が25日であり、別表(3)に基づき1か月の使用料を算定すると、別表(4)のとおり金10万6250円であり、これに昭和62年4月1日以降平成元年2月28日までの23か月を乗ずると、金244万3750円となる。
(三)昭和63年6月1日以降平成元年2月28日までの損害(カラオケ伴奏分)金22万9500円
 被告らの昭和63年6月1日以降平成元年2月28日までのカラオケ伴奏の歌唱による管理著作物の使用状況は、客席数が80席未満(60席)、管理著作物の1日平均の演奏曲数がのべ15曲、1か月平均の営業日数が25日であり、新規程により、別表(3)に基づき1か月の使用料を算定し、別表(5)のとおり減額措置を講じると金2万5500円となり、これに昭和63年6月1日以降平成元年2月28日までの9か月を乗ずると、金22万9500円となる。
(四)したがって、昭和59年12月1日から平成元年2月28日までの本件損害額合計は、別表(6)のとおり、金442万3250円となる。
 よって、原告は、不法行為損害賠償請求権に基づき、被告らに対し、連帯して、金442万3250円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日以後である昭和63年12月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう求める。
二 請求原因に対する被告らの認否及び反論
1(一)請求原因1(一)(1)及び(2)の各事実は不知。
(二)同(二)(1)の事実は認める。同(二)(2)の事実のうち、被告Y3が、昭和59年11月ころ、訴外Aから、クラブの店舗を譲り受けたことは認め、その余は否認する。
 なお、被告Y3が、更に右クラブの店舗を被告Y1に譲渡したところ、同被告が、その所定の営業許可を受けて昭和59年12月末ころから単独で同クラブの個人経営を開始し、平成元年3月1日その営業を廃止したものであって、被告Y1を除く他の被告らは、右クラブの経営に全く関与していない。
2(一)請求原因2(一)の事実は否認する。ただし、被告Y1は、平成元年3月1日にクラブ営業を廃止したが、昭和60年2月14日ころからクラブでピアノ演奏をさせていたところ、昭和62年6月末日ころ、経営合理化のためこれを中止し、昭和63年6月ころからはカラオケ装置を設置して客に歌唱させるようになった。
(二)同(二)の事実のうち、被告Y1において平成元年3月1日にクラブ営業を廃止したが、昭和63年6月ころからカラオケ装置を設置し、同年11月10日ころまでこれを利用して右営業をしていたことは認め、その余は否認する。
 なお、カラオケ装置は、リース物件であり、所有権を有するリース業者は、カラオケビデオディスクを著作権料込みで購入しているから、これを借り受けて客に歌唱させても著作権侵害にはならない。
(三)同(三)の事実は争う。
 なお、被告Y1らは、クラブ経営当初から平成元年3月1日のクラブ営業の廃止まで、本件著作権侵害の事実認識を欠いて右営業をしていたものである。
3 請求原因3冒頭並びに(一)の(1)及び(2)から(4)の各事実はすべて争う。
第3 証拠
 本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由
一 請求原因1(当事者)について
1 請求原因1(一)(1)及び(2)の各事実について判断するに、成立に争いのない甲第17号証及び第27号証、証人B及び同Cの各証言により真正に成立したものと認められる甲第10号証ないし第12号証並びに右各証言、弁論の全趣旨によれば、右各事実を認めることができる。
2 請求原因1(二)(1)の事実並びに同(2)の事実のうち、Y3が、昭和59年11月ころ、訴外Aからクラブの店舗を譲り受けたことは、当事者間に争いがない。
 そこで、その余の請求原因1(二)(2)の事実につき、検討する。
 右当事者間に争いのない事実に加えて、成立に争いのない甲第4号証の1及び2、第15号証の1ないし13、第16号証の1ないし11並びに乙第1号証ないし第3号証、原本の存在及びその成立に争いのない甲第23号証、証人B及び同Cの各証言により真正に成立したものと認められる甲第14号証並びに証人B、同C及び同Dの各証言、被告ら各本人尋問の結果(但し、いずれも後記措信しない各部分を除く。)、弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
 すなわち、
(一)被告Y3は、昭和59年11月ころ、訴外Aから、その貸金債権の担保(譲渡担保)に取っていたクラブの店舗及び右経営権を確定的に譲り受けているが、右同被告の同訴外人に対する貸金の実際の出捐は、夫婦である被告Y2及び同Y1がなしたものであること、
(二)そして、被告Y3は、被告Y2及び同Y1に対し、クラブの店舗及び右経営権を譲り渡したため、右店舗の賃貸借契約の借主名義は、昭和59年12月から被告Y2であり、クラブの業務連絡用の電話名義も同被告名義となっているところ、右賃料の支払は、被告Y1においてこれを行い、また、保健所の同月20日付営業許可証及び沖縄県公安委員会の同月27日付風俗営業許可証は、いずれも被告Y1名義で取られ、従前の訴外Aの営業がそのまま継続されてクラブ営業がなされていること、
(三)被告Y2は、旧姓を用いて、「クラブ順子Y2´」と記載された名刺を使用したり、クラブ代表者として同被告の顔写真が入っているテレホンカードを発行し、また、昭和59年12月からほぼ連日クラブに出勤して、その従業員らから「ママ」と呼ばれ、他方、被告Y1は、ホステスの採用などを担当し、その従業員らから「社長」と呼ばれていたこと、
(四)被告Y3は、風俗営業の経験はなく、訴外Aがクラブを経営していたころから、その従業員らから通称として「会長」と呼ばれていたものの、その後の被告Y2及び同Y1のクラブ営業についても、営業内容を知らないのはもちろんのこと、クラブを訪れることはあまりなく、右営業利益の分配も受けておらず、また、同被告らとは必ずしも良好な関係ではなく、クラブのあった建物が撤去される際の補償金も受領していないこと、
(五)クラブは、昭和59年12月以降は個人経営であって、訴外沖縄レジャー産業株式会社や同オリエンタル商事株式会社の経営ではなく、平成元年3月1日に営業廃止となって以後は、被告Y2において、右クラブを引き継いで別の「ミニクラブ廣廣廣」店を経営していること
 の各事実が認められ、右認定に反する被告ら各本人尋問の結果はいずれも措信できない。
 以上の事実によれば、クラブは、遅くとも昭和59年12月1日から、被告Y2が主となってこれを経営しているものの、被告Y1もその夫としてホステス採用人事及び対外交渉等に携わるなどしてその経営に参加し、平成元年3月1日まで共同経営者であったものと推認するのが相当である。
 しかし、被告Y3が、右経営に関与していたものと解するのは相当でなく、結局、本件全証拠によっても、同被告が、クラブを個人営業していたとか、被告Y2及び同Y1とともにクラブの共同経営者であったということは認めることができず、被告Y3に対しては、本件責任追求はできないものといわなければならない。
 もっとも、被告Y2又は同Y1らにおいて、被告Y3がクラブの経営者であるかの如く述べた部分の各記載のある甲第14号証、第15号証の10及び第16号証の10が存するが、前示認定の事実関係を合理的に説明できず、成立に争いのない乙第1号証ないし第3号証並びに被告ら各本人尋問の結果に照らしても、右部分はにわかに採用できない。他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
二 請求原因2(著作権侵害行為)について
1 請求原因2(一)の事実につき判断するに、被告Y1が昭和60年2月14日ころから昭和62年6月末日ころまでクラブでピアノ演奏をさせていたことは、当事者間に争いがない。
 右当事者間に争いがない事実に加えて、成立に争いのない甲第15号証の1ないし13から甲第17号証、いずれも領収証、請求・明細書及び請求書の成立につき当事者間に争いがなく、その余は証人B及び同Cの各証言により真正に成立したものと認められる甲第1号証及び第2号証、証人B及び同Cの各証言により真正に成立したものと認められる甲第10号証ないし第14号証、証人Dの証言及び弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第25号証、証人B、同C及び同Dの各証言、被告ら各本人尋問の結果(但し、いずれも前記措信しない各部分を除く。)、弁論の全趣旨によれば、被告Y2及び同Y1において、昭和59年12月1日から日曜日及び祝祭日を除いた毎日、訴外Aがクラブを経営していたころからの専属ピアニスト訴外Dをそのまま雇用して、昭和62年7月までは同訴外人にクラブでピアノ演奏をさせ、更に引き続き同年8月から少なくとも昭和63年10月31日までは、訴外Eを雇用して、同訴外人にクラブでピアノ演奏をさせたこと、そして、被告Y2及び同Y1は、原告の許諾を受けないで、クラブの営業時間中ピアノを使用して右各専属ピアニストに原告の管理著作物である音楽を反復継続的に生演奏させ、これを来集した不特定多数の客に聞かせ、原告の音楽著作権の内容である演奏権を侵害したことが明らかである。
 しかし、本件全証拠によっても、被告Y2及び同Y1が、昭和63年11月初旬以降平成元年2月28日までに、クラブの営業時間中ピアノを使用して原告の管理著作物である音楽を反復継続的に生演奏させたことを認めるに足りる証拠はなく、この間で被告Y2及び同Y1において原告の音楽著作権の内容である演奏権を侵害したことは認められない。
2 請求原因2(二)の事実のうち、被告Y1において、昭和63年6月ころからカラオケ装置を設置し、一方、平成元年2月28日までクラブ営業をしていたことは当事者間に争いはなく、その余は、成立に争いのない甲第15号証の1ないし13から第17号証、領収証、請求・明細書及び請求書の成立につき当事者間に争いがなく、その余は証人B及び同Cの各証言により真正に成立したものと認められる甲第2号証、証人B及び同Cの各証言により真正に成立したものと認められる甲第12号証ないし第14号証、右各証言、被告ら各本人尋問の結果(但し、いずれも前記措信しない各部分を除く。)、弁論の全趣旨によれば、これを認めることができる。
 なお、被告らは、カラオケ装置は、リース物件であるからこれを借り受けて客に歌唱させても著作権侵害にはならない旨主張するが、本件において、クラブでカラオケ装置を使用してのホステス及び客等の歌唱による管理著作物の利用主体は、被告Y2及び同Y1であるというべきところ、原告が損害賠償を求めている権利は、著作権法上の上演権、演奏権及び上映権であるから、複製権に基づく使用料が支払われているからといって、演奏権等侵害の責任を免れるものではないといわなければならない(最高裁昭和63年3月15日判決、民集第42巻3号199頁)。〈「判例速報」第39号掲載〉
3 請求原因2(三)の事実につき、検討する。
 成立に争いのない甲第5号証の1ないし5から第7号証の1及び2並びに第15号証の1ないし13から第17号証、いずれも領収証、請求・明細書及び請求書の成立につき当事者間に争いがなく、その余は証人B及び同Cの各証言により真正に成立したものと認められる甲第1号証及び第2号証、証人B及び同Cの各証言により真正に成立したものと認められる甲第9号証ないし第14号証並びに右各証言、被告Y2及び同Y1、各本人尋問の結果(但し、いずれも前記措信しない各部分を除く。)によれば、管理著作物の利用はクラブの営業の不可欠要素であるが、被告Y2及び同Y1には、他人の著作権を侵害することのないように相当の注意義務があり、かつ、管理著作物の利用については原告の使用許諾を受ける義務があるにもかかわらず、これを怠っており、少なくとも右過失の存することは明らかである。
三 請求原因3(損害)について
 そこで、被告Y2及び同Y1の著作権侵害行為に基づく原告の損害(管理著作物の使用許諾の対価として使用料に相当する得べかりし利益の喪失額)につき検討する。
1 昭和59年12月1日から昭和62年3月31日までの損害(ピアノ演奏分)金175万円
 成立に争いのない甲第15号証の1ないし13及び第16号証の1ないし11、いずれも領収証、請求・明細書及び請求書の成立につき当事者間に争いがなく、その余は証人B及び同Cの各証言により真正に成立したものと認められる甲第1号証及び第2号証、証人B及び同Cの各証言により真正に成立したものと認められる甲第10号証、第11号証の1及び2、第13号証並びに第14号証、右各証言、弁論の全趣旨によれば、請求原因3(一)(1)及び(2)の各事実が認められ、右原告の本件使用料相当の昭和59年12月1日から昭和62年3月31日までの損害額(ピアノ演奏分)の算定は是認することができる。
 したがって、右ピアノ演奏分としての損害額は、金175万円である。
 6万2500円×28か月=175万円
2 昭和62年4月1日以降昭和63年10月31日までの損害(ピアノ演奏分)金201万8750円
 成立に争いのない甲第15号証の1ないし13から第17号証、いずれも領収証、請求・明細書及び請求書の成立につき当事者間に争いがなく、その余はB及び同Cの各証言により真正に成立したものと認められる甲第1号証及び第2号証、証人B及び同Cの各証言により真正に成立したものと認められる甲第12号証ないし第14号証並びに右各証言、弁論の全趣旨によれば、請求原因3(二)(1)の事実並びに同(二)(2)の事実のうち被告Y2及び同Y1の昭和62年4月1日以降昭和63年10月31日までのピアノ演奏による管理著作物の使用状況は、客席数が80席未満(60席)、管理著作物の1日平均の演奏曲数がのべ25曲、1か月平均の営業日数が25日であり、別表(3)に基づき1か月の使用料を算定すると、別表(4)のとおり金10万6250円であることが認められる。
 したがって、前示二1で認定したとおり被告Y2及び同Y1のピアノ演奏による著作権侵害行為は昭和63年10月31日までであるから、右1か月の使用料金10万6250円に、昭和62年4月1日以降昭和63年10月31日までの19か月を乗ずると、金201万8750円となる。
 10万6250円×19か月=201万8750円
3 昭和63年6月1日以降平成元年2月28日までの損害(カラオケ伴奏分)金22万9500円
 成立に争いのない甲第15号証の1ないし13から第17号証、いずれも領収証、請求・明細書及び請求書の成立につき当事者間に争いがなく、その余は証人B及び同Cの各証言により真正に成立したものと認められる甲第1号証及び第2号証、証人B及び同Cの各証言により真正に成立したものと認められる甲第12号証ないし第14号証並びに右各証言、弁論の全趣旨によれば、請求原因3(三)の事実が認められ、右原告のカラオケ伴奏分の本件使用料相当の損害額の算定は是認することができる。
 2万5500円×9か月=22万9500円
4 損害総額
 してみれば、本件損害額合計は、金399万8250円となる。
 175万円+201万8750円+22万9500円=399万8250円
四 結論
 よって、本訴請求は、被告Y1及び同Y2に対し、連帯して、金399万8250円及びこれに対する訴状送達の翌日であることが記録上明らかな昭和63年12月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、被告Y1及び同Y2に対するその余の請求並びに同Y3に対する請求はいずれも失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法89条、92条本文、93条を、仮執行の宣言につき同法196条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

那覇地方裁判所民事第2部
 裁判官 河野清孝
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