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【事件名】英語教科書準拠朗読テープ事件 【年月日】平成3年5月22日 東京地裁 昭和59年(ワ)第6312号 著作権侵害差止等請求事件 判決 原告 東京書籍株式会社 右代表者代表取締役 X 右訴訟代理人弁護士 濱野英夫 右訴訟復代理人弁護士 伊藤真 被告 株式会社グロリアサウンド 右代表者代表取締役 Y 右訴訟代理人弁護士 菊池武 同 松田政行 同 林紀子 右訴訟復代理人弁護士 早稲田祐美子 主文 一 被告は、原告に対し、1350万円及びこれに対する昭和62年8月26日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、これを2分し、その1を原告、その余を被告の各負担とする。 4 この判決は、原告勝訴部分に限り、仮に執行することができる。 事実 第1 当事者の求めた裁判 一 請求の趣旨 1 被告は、原告に対し、2700万円及びこれに対する昭和62年8月26日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 仮執行の宣言 二 請求の趣旨に対する答弁 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 第2 当事者の主張 一 請求の原因 1 原告は、昭和59年2月10日、中学校第1ないし第3学年用の昭和59年版検定済英語教科書「NEW HORIZON English Course REVISED EDITION」(以下「本件教科書」という。)を発行した。 2 被告は、昭和59年2、3月頃から同62年8月25日までの間に、本件教科書の基本文、本文及び新出単語欄等を朗読して録音したテープ(以下「本件テープ」という。)を30万個以上製作して本件教科書を複製し、これらを1個当たり1500円の小売価格で販売した。 3 債権侵害に基づく損害賠償請求 (一)原告は、Aら13名の者と共同して本件教科書を著作し、その著作者の一人として、本件教科書についての共有著作権の持分14分の1を有するが、昭和58年12月16日、本件教科書の原告以外の著作権者である右Aら13名の者との間において、「出版契約書」と題する契約書(以下「本件契約書」という。)をもって、本件教科書を利用した録音テープを原告が独占的に製作販売することができ、また、右Aら13名の著作権者は原告の承諾なしに自ら右録音テープを製作販売することができない旨の契約を締結し(以下本件契約書による契約を「本件契約」という。)、他の著作権者に対し、原告に本件教科書を利用した録音テープを独占的に製作販売させることを内容とする債権(以下「独占的録音テープ製作販売権」という。)を有している。 (二)被告の本件テープの製作販売行為は、原告の有する独占的録音テープ製作販売権を侵害するものである。 (三)被告は、大阪地方裁判所に係属していた訴訟事件等を通じて、原告が独占的録音テープ製作販売権を有し、他の第三者に許諾を与え、許諾料を徴して本件教科書を利用した録音テープを製作販売させていることを熟知しながら、原告及びその他の著作権者の許諾を得ることなく、あえて本件テープを製作し、販売したものであって、被告には、独占的録音テープ製作販売権侵害の故意又は故意に準ずる認識があった。 したがって、被告には、原告の右債権を侵害したことにより、原告が被った損害を賠償すべき責任がある。 (四)本件教科書の内容を朗読して録音したテープを製作販売することに対する原告の許諾料は、そのテープの小売価格の12パーセントであるから、被告の本件テープの製作販売により原告が被った許諾料相当の損害金は、次の計算式のとおり、5400万円となる。 1,500(円)×0.12×300,000(個)=54,000,000(円) そこで、原告は、被告に対し、右損害金の内金として2700万円の支払を求める。 4 著作権侵害に基づく損害賠償請求 仮に右3の独占的録音テープ製作販売権による損害賠償が認められないとしても、原告は、被告に対し、本件教科書について原告が有する共有著作権の持分の14分の1を侵害されたことにより被った損害の賠償を求める。 (一)原告は、Aら13名の者と共同して本件教科書を著作し、その著作者の一人として、本件教科書の共有著作権の持分14分の1を原始的に取得した。すなわち、原告の編集部員は、教科書作成を目的とする原告の編集業務に従事する者として、その職務上、本件教科書の各レッスンの本文について、その一部の原案を執筆し、かつ、すべての編集会議に参加して意見を述べ、修正案を提示するなど各レッスン本文の創作的表現に関与し、更に、本件教科書の各レッスン、基本文及び新出単語等の題材の選択及び配列について創作的に関与した。そして、このようにして作成された本件教科書は、原告と前記Aら13名の者との共同著作物として公表された。したがって、被告は、本件教科書の共同著作者の一人として共有著作権の持分を取得したのである。 (二)仮に原告が著作者でないとしても、原告は、昭和58年12月16日、本件教科書を著作したAら13名の者から、その共有著作権の持分14分の1を譲り受け、同持分を承継取得した。すなわち、原告は、右同日、Aら13名の者と本件契約を締結したが、本件契約書第1条において、本件教科書が原告と編集委員であるAら13名の者との共同著作物であり、本件教科書の著作権が原告及びAら13名の者との共有に属するものとされているから、仮に原告が著作者でないとしても、右条項により、原告は、Aら13名の者から、本件教科書の共有著作権の持分14分の1を譲り受け、同持分を有するに至った。 (三)被告による本件テープの製作販売は、原告の有する本件教科書の共有著作権の14分の1の持分を侵害するものである。 四(1) 著作権法114条1項の規定により、著作権者である原告が受けた損害の額と推定される被告が受けた利益の額は、次のとおり、1億1800万1000円の14分の1の842万8642円である。 本件テープの卸売価格は、1本当たり900円であり、1本当たりの製作費用(生テープ代、ダビング費用及びパッケージ費用等の流動費)は、288円である。また、固定費としての録音製作費は、全体で206万円である。したがって、本件テープ販売による荒利益は、次の計算式のとおり、1億8154万円となる。(900(円)−288(円))×300,000(個)−2,060,000(円)=181,540,000(円) また、右荒利益に占める人件費その他の一般管理費の割合は、35パーセントを上回ることはない。そこで、被告の得た利益は、次の計算式のとおり、1億1800万1000円となり、この金額が、著作権者全員が受けた損害額と推定されることになる。 181,540,000(円)×0.65=118,001,000(円) そして、原告の受けた損害は、右1億1800万1000円の14分の1である842万8642円であり、その計算式(円未満切捨て)は、次のとおりである。 118,001,000(円)÷14=8,428,642(円) (2)仮に右の(1)の主張が認められないとしても、本件教科書の著作権について持分14分の1を有する原告は、その著作権の行使につき通常受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として、その賠償を請求することができるところ、その額は、385万7142円であり、その算定方法は、次のとおりである。 本件教科書の著作権の通常の許諾料は、小売価格の12パーセントであるから、全著作権者が通常受けるべき金銭の額に相当する額は、次の計算式のとおり、5400万円となる。 1,500(円)×0.12×300,000(個)=54,000,000(円) 原告の受けた損害は、右5400万円の14分の1である385万7142円であり、その計算式(円未満切捨て)は、次のとおりである。 54,000,000(円)÷14=3,857,142(円) 5 よって、原告は、被告に対し、損害賠償として、2700万円とこれに対する不法行為の後の日である昭和62年8月26日から支払済みに至るまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 二 請求の原因に対する被告の認否等 1 請求の原因1の事実は認める。 2 同2のうち、被告が本件テープを製作販売したことは認めるが、その余は否認する。 3 同3の事実は否認する。 原告は、著作権の通常使用料相当額を損害であると主張しているが、著作権法114条は、このような損害を請求できる者として、著作権者と著作隣接権者のみを掲げているのであって、著作権の利用を許諾された者が著作権の通常使用料相当額を損害として請求することはできない。 4 同4の事実は否認する。 原告は、本件教科書の内容を利用した録音テープを製作販売していないから、著作権法114条1項の規定により、被告が受けた利益の額を原告が受けた損害の額と推定することはできない。 三 被告の主張 1 本件契約は、次に述べるとおり、無効である。 (一)本件契約は、原告とAら13名の者との間において締結されたものであって、原告と本件教科書の奥付に記載された共同著作者と推定された著作者全員との間において締結されたものでないから、無効である。 (二)本件契約は、本件教科書の著作者が著作者としての諸権能を行使しようとすれば、ことごとく原告の承諾を要することになっているが、これは、著作者の著作権行使の権能を事実上奪うものであって、過酷な財産権行使の制限に当たる。本件契約は、公序良俗に違反し、無効である。 (三)本件契約には、原告に本件教科書の録音テープ等の製作販売権ないしその許諾権を付与した条項があるが、このような条項は、強行法規である著作権法80条3項の規定に違反し、無効である。 2 原告の共有著作権の持分の原始的取得の主張(請求の原因4(一))について (一)著作行為は、取引行為のように外部から認識しうる行為ではなく、著作者のみによる事実行為であって、外部からの認識可能性は極めて低いから、著作権法14条は、著作権の推定を規定したのであって、この推定は、権利自体を推定するのではなく、著作行為という事実を推定するものである。この推定を受ける事実は、特定の日時、特定の著作者、特定の著作行為(書き下ろしか編集か、共同か単独か)についてであって、この特定された事実の存在について反証がある場合には、この推定は、一切効果がなく、権利を行使する側で著作行為の存在を直接立証しなければならない。 (二)本件教科書の奥付の著作者欄には、「A・B・Kほか30名(別記)」と、合計33名の者が著作者であると記載されているが、この記載には、次のような矛盾等がある。 (1)原告は、本件教科書の著作者は14名の者であると主張しており、原告の右主張は、本件教科書の奥付の記載と食い違っている。 (2)Aら13名の編集委員の会議は、36回開催されているのに対し、地方在住のその他の委員を含めた全国会議は、3年間に3回しか開催されていないようである。右の3回の全国会議に出席しただけの者は、著作行為を行った者とはいえないから、本件教科書の奥付の著作者欄に地方在住の委員も含めた33名の編集委員を著作者と表示しているのは、事実に反している。 (3)本件教科書の著作者は、各学年の教科書ごとに考えられるべきであるが、B、L及びEの各編集委員は第1学年用の教科書についてのみ、A、C、H、J、G及びMの各編集委員は第2、第3学年用の教科書についてのみ、著作行為をしているにすぎないと考えられるのに、前の3委員が第2、第3学年用の教科書の著作者として、後の6委員が第1学年用教科書の著作者として、奥付に記載されているのは事実に反する。 このように、本件教科書の奥付は真実に合致しておらず、このことは、一部原告の自認していることであるところ、著作権法14条所定の推定は、表示された者と推定される者とが完全に一致してこそ機能するのであって、部分的な適用は考えられないから、このような奥付の表示は、何ら推定力を有しないものというべきである。したがって、原告が本件教科書の奥付に著作者の一人として記載されているからといって、著作権法14条所定の著作者の推定が働くということはありえない。 (三)本件教科書の奥付には、著作者の一人として、原告の会社名が記載されているが、原告の編集部員は、英語学ないし英語教育の専門家の著作活動の手足となって、その補助的な仕事しか担当していないのであって、執筆の仕事は担当していないから、原告は、著作権法14条の規定により著作者と推定されない。 (四)本件教科書は、昭和56年版の4分の1改訂版であるが、この昭和56年版も、昭和53年版から多くを引き継いでおり、また、昭和53年版も、昭和46年4月10日検定済の昭和47年版ないし昭和49年版と内容的にかなりの部分が重複するのであり、基本的には、最初に発行された昭和41年版を原著作物として、これに単なる修正、増減又は変更がされてきた連続性をもった一つの著作物である。したがって、昭和41年版の後に教科書の作成に関与した者は、単に改訂作業に関与したにとどまるものである。ところで、現行著作権法は、昭和46年1月1日に施行されたが、法人著作に関する同法15条の規定は、付則4条により、右施行前に創作された著作物については適用されないところ、昭和46年4月10日検定済の各版は、作成に要する時間からすると、右施行前に創作されたものであることが明らかであるから、法人著作であるとは考えられず、また、これらと内容的にかなりの部分が重複している昭和53年版も、法人著作ではありえないことになる。 原告は、昭和56年版に突如として原告名を著作者として表示するようになったが、昭和56年版は、全面改訂版ではあっても、テーマや構成上の特徴等を考慮すると、到底昭和53年版を単に素材として利用したものとはいえず、実質は、前記のとおり改訂版にすぎない。このような改訂作業において、原告の編集部員が行ったと考えられる仕事は、改訂方針案や言語教材の配列案の作成程度のものであって、これらは、著作行為の準備作業にすぎない。 (五)著作行為は、著作物を創作する行為であって、この創作性は、著作行為の核をなす概念であって、思想及び感情の表現に創作性のないものは、いかに優れたアイディアが投入されていようと著作物にはならない。ところで、原告の編集部員は、本件教科書の作成に当たり、その表現行為には関与していない。原告は、原告の編集部員が原案の執筆も行っていた旨主張するが、原告の編集部員が執筆したというのは、本件教科書のうちの第3学年用のレッスン6の一部にしかすぎず、しかも、そのほとんどが昭和56年版からの引写しであって、これは、到底執筆とはいえない。結局、原告の編集部員が行っていたのは、編集方針のたたき台を作成したり、法規や学習指導要領に合致するように資料を提出したり、会議において意見を述べたりする等の、英語学や英語教育の専門家の教科書著作行為を補助するために行う仕事にすぎず、これらは、著作物によって表現されるアイディアを指示することにはなるかもしれないが、著作物そのものである表現を行っているものではない。 右のとおり、原告の編集部員は本件教科書の著作行為を行っていないから、原告は、本件教科書の著作者ではない。 3 原告の共有著作権の持分の承継的取得の主張(請求の原因4(二))について 仮に本件契約が有効であるとしても、本件契約書(甲第4号証)をみると、その記載内容は、何人が共同著作者であるかを確認しているにすぎず、共有著作権の持分を譲渡していると解釈することができるようなものではない。同契約は、原告に出版権を設定する趣旨のものであって、同契約から、Aら13名の者の各持分13分の1のうち、それぞれ182分の1ずつを原告に譲渡するという複雑な内容を読み取ることはできない。 4 本件教科書は、次に述べるとおり、自由に利用することができるものである。 (一)義務教育課程において使用される教科書も、著作物の一つではあるが、その目的は、義務教育という国家業務を遂行するのに必要な教育手段たる中心教材を提供するものであって、一般の著作物のように、著作者の思想及び感情を世間に発表することを目的とするものではない。 教科書は、その内容、形式が検定制度によって厳格に規制され(学校教育法21条1項、40条)、一定の地区を単位として採択手続が行われ(義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律10条以下)、いったん採択されると、その後3年間の使用が強制され(同法14条、同法施行令14条1項、学校教育法21条1項、40条)、また、その定価は文部大臣により適正に算定されたうえ、国により買い上げられ、無償で生徒、児童に給与されるものとされている(義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律4条、5条、教科書の発行に関する臨時措置法)。 このような教科書の著作目的及び発行形態の特異性に鑑みるとき、これに著作物として著作権法による保譲を与えるについても、教育目的の達成を阻害することのないよう、その範囲を限定するのが妥当である。 (二)教科書は、義務教育の場において、教育、学習の目的のための中心教材として使用されることを予定して著作される著作物である。したがって、教科書の内容は、そのような教育、学習のための素材として自由に利用することが認められなければならない。教科書は、義務教育における授業のための中心教材となるものではあっても、それのみで授業の目的を達成しうるものではなく、それに付随して多くの補助教材の使用が必要とされるものであり、そのような補助教材の作成に当たっては、教科書の内容が素材として縦横に利用されなければならないから、教科書の内容を教科書以外の形態で教育用ないし学習用教材中に利用することは、自由に認められるべきである。 学校教育法21条1項も、教科書以外の補助教材の必要性を規定しており、また、教育効果の増進のためにも、更に、憲法の定める学問を受ける権利等を保障するためにも、このような補助教材の製作は、著作権者や発行者の独占とせず、万人の自由とするのが相当である。 (三)若しも、教科書の内容を利用する教材の製作が教科書の著作権者や発行者しかできないとなると、教材の質が低下し、また、独占によって教材の価額が上がるという弊害がある。国による教科書の買上げに当たっては、発行者に定価の算定書を提出させて、文部大臣が適正な定価を付する取扱いがされており(教科書の発行に関する臨時措置法11条、同法施行規則18条、20条)、教科書の著作権者や発行者の利益は、それによって十分に償われているから、それ以上の利益を享受させる必要はないのである。 (四)殊に、英語教科書の場合は、英語教育に必要な文字教材と音声教材のうち、教科書は文字教材の役割しか果たしえないから、音声教材は、別に提供されるべきことが当然に予定されているというべきである。 (五)以上によれば、本件テープは、本件教科書の内容を素材として、その適正な発音を示した音声教材であって、本件教科書によって、もともとその製作が予定され、承認された教材というべきであるから、被告の本件テープの製作販売は、適法であり、したがって、本件教科書の著作権を何ら侵害するものではない。 5 本件テープによる本件教科書の内容の利用は、著作権法に定める適法な引用である。すなわち、著作権法32条1項は、公正な慣行に合致し、かつ、正当な範囲内での引用利用を認めているが、ここにいう公正な慣行は、同法1条に定める「文化的所産の公正な利用」の観点から著作権者の意思に関わりなく形成されていくものであって、本件テープのようなヒヤリング・テープの使用も、有益適切な補助教材を求める教育現場の必要性から生み出され、既に慣行となっている。また、本件テープにおける本件教科書の引用の範囲は、主として本文の部分であるから、適正な発音を示すことを目的とする教材としては、正当な範囲内であるというべきである。 6 原告は、昭和54年、本訴被告を被告として、本件教科書と同一性のある版の教科書の著作権に基づいて、録音テープの製作販売の差止等を求めた訴えを大阪地方裁判所に提起しているから、本訴は、二重起訴に当たる。 四 被告の主張に対する原告の反論 1 被告主張2(二)について 共同著作物についての著作権法14条の規定の適用については、著作者名が表示されている者のうちの一部の者について著作者の推定が覆されたとしても、そのことにより、その余の者についての著作者の推定まで覆るものではない。 2 同2(三)について 原告の編集部員は、主としてAら13名の在京の編集委員と共に、編集方針案、題材の配分案を作成したり、討議の場で意見を述べるなどして、教科書の各レッスンの選択、配列等の編集行為を行ったほか、教科書に適した文章に表現するための原案を執筆したり、会議において意見を述べたり、修正案を作成して提出したりするなど本件教科書における言語的表現の創作に参加しているものであり、また、法人著作に関する著作権法15条の要件を満たしているから、原告が本件教科書の共同著作者の一員であることは明らかである。 3 同2(四)について 本件教科書は、昭和56年版の4分の1改訂版であって、多くの部分において後者の表現を基礎にしている。その点において、両者は、全く別個の著作物というわけではないが、本件教科書には改訂された表現部分がある以上、それが二次的又は数次的著作物に当たるか否かはともかく、本件教科書は、昭和56年版とは区別して、それ自体一個の著作物とみることができる。本件テープは、その表現を複製しているのである。 昭和41年版が発行されて以来、在京委員として著作に新たに参加した者はいても、著作を辞めた者はなく、原告が本件教科書の著作者として主張している者以外には創作に加わった者はいないから、仮に本件教科書が過去の年度版の単なる改訂版にすぎないとしても、著作者の範囲は、原告主張のとおりであるとすることに問題はない。なお、被告は、昭和41年版にまでさかのぼって主張するが、昭和56年版は、新たな指導要領に基づいて全面改訂されたものであるから、このときに新たな著作物が成立したのである。そして、昭和59年版の本件教科書は、右の昭和56年版を4分の1改訂したものであって、その二次的著作物というべきものである。 4 同4について 著作権法は、第2章第3節第5款において著作権の制限について規定し、特に、学校教育に関連した著作物の著作権の制限については、そのうちの33条ないし35条に規定しているところ、これらの条項が規定する著作権の制限は、例示ではなく、限定的なものと理解されているが、右条項の中には教科書の著作権を制限する規定は見当たらないし、その他文字で表現された言語の著作物である教科書を録音の方法により複製する態様での利用を適法ならしめる実定法規は存しない。 5 同5について 著作権法32条1項所定の適法な引用というためには、引用者自身の著作物が存在しなければならず、また、引用者自身の著作物が主であって、引用される著作物が従であるという関係がなければならないが、本件テープは、そのほとんどが本件教科書の言語的表現から構成され、それ以外の言語は右教科書の各部分構成の接頭部等にごく僅か挿入されているにすぎず、本件テープには被告自身の著作物は存在しないものということができるから、適法な引用ということはできない。 被告は、適正は発音を示したことが被告の独自性であるかのように主張しているが、発音は、それによって表現された言語的著作物と全く別個の著作物となるものではない。 第3 証拠関係 本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。 理由 一 原告が、昭和59年2月10日、本件教科書を発行したこと、被告が、本件テープを製作販売したことは、当事者間に争いがない。 二 そこで、原告の債権侵害に基づく損害賠償請求について判断する。 1 本件教科書の著作権者について (一)成立に争いがない甲第1ないし第4号証、第43ないし第45号証、原告が昭和53年に出版した中学校第2学年用の英語教科書であることについて争いがない検乙第1号証、証人Aの証言により真正に成立したものと認められる甲第6、第8号証、証人P1の証言により真正に成立したものと認められる甲第5、第7、第9号証、第40号証の1ないし3、証人A及び同P1弼の各証言並びに弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。 (1)原告は、昭和41年、中学校第1ないし第3学年用の英語教科書を発行し、以来約3年ごとにその改訂版を発行しているが、昭和56年には、新しい学習指導要領が施行されたため、全面的に改訂して昭和56年版を発行し、昭和59年には、その約4分の1を改訂した昭和59年版である本件教科書を発行したものである。 (2)原告は、前記のとおり、新しい学習指導要領の施行に伴い、昭和56年版の発行を企画し、その編集部員に製作を命じた。その著作編集作業は、昭和52年11月から同55年10月にかけて、原告の編集部員のほか、A、B、C、D、E、F、G、H、I、J及びKの11名の編集委員が中心となって行った。右Aら11名の編集委員と原告の編集部員は、第1学年用教科書の本文及び全学年用の練習文法の執筆を担当する第1小委員会、第2及び第3学年用教科書の本文の執筆を担当する第2小委員会に分かれ、討議の対象となる原稿を各自分担して作成し、まず、小委員会でこれら原稿を討議し、更に、全体会議で討議するなどして、最終的な原稿を作成した。このように、当初の原稿には多数の者から手が入れられるため、最終的に完成した文章は、当初のものとは大幅に変更されたものとなっていた。このようなAら11名の編集委員と原告の編集部員との著作編集作業のための会議は合計で約78回開かれた。 右Aら11名の編集委員のほかにも、地方在住の約20名の編集委員が昭和56年版の著作編集作業に関与していたが、その関与の程度は、3回開かれた全国会議でAら11名の編集委員と原告の編集部員とが作成した原稿について意見を述べる程度であって、原稿に手を入れることはなかった。 原告の編集部員は、編集方針案、言語材料配列案等を作成するほか、本文についても当初の原稿を作成したり、討議に加わって意見を述べたり、練習問題その他の原稿を検討したり、更に、内容的に指導要領に沿ったものであるかどうかをチェックする等の作業を行った。 昭和56年版は、昭和53年版には存在しなかった新しい文章表現が大部分を占めており、昭和53年版を受け継いだ表現部分にも、何らかの手直しが加えられている。 (3)本件教科書は昭和56年版と同様、原告がその発行を企画し、その編集部員に製作を命じたものである。そして、その著作編集作業は、右Aら11名のほかにL及びMが加わった13名の編集委員と原告の編集部員とが中心となって、昭和56年2月から昭和58年7月にかけて行われた。本件教科書の著作編集作業のための会議は、合計で約36回開かれ、また、地方委員も加わった全国会議は、3回開かれた。 著作編集作業の方法等は、昭和56年版と同様であった。 なお、Kは、本件教科書においては、他の12名の編集委員に比べ、著作編集作業への関与の度合いは少ないが、第1及び第2小委員会のメンバーで構成する全体会議に出席し、その討議に加わっている。 (4)原告は、前記のとおり、昭和41年から中学校第1ないし第3学年用の英語教科書を発行しているところ、これらの英語教科書作成のために原稿を作成したり、第1及び第2小委員会並びにこれらの全体会議に出席して討議に加わったりするなどしてその著作編集作業に携わった者は、全員が当初から参加していたのではないが、本件教科書の著作編集作業に携わった右Aら13名の編集委員と原告の編集部員のほかにはいない。 (5)右Aら13名の編集委員と原告とは、昭和58年12月16日、本件契約書をもって、本件教科書は右編集委員13名と原告との共同著作物であって、その著作権はこれらの者の共有に属する旨の合意をした。また、本件教科書の奥付に編集委員として記載され全国会議に出席しているその余の地方委員も、右合意内容については異存のないところである。 以上の認定の事実を総合すると、本件教科書は、Aら11名にL及びMらが加わった13名の編集委員と原告との共同著作物であり、その共有著作権の持分は、各14分の1であると認めるのが相当である。 (二)被告は、著作権法14条所定の推定は、表示された者と推定される者とが完全に一致してこそ機能するのであって、部分的な適用は考えられないから、本件教科書の奥付のようにこれらが一致しない表示は、何ら推定力を有しないものというべきであり、したがって、原告が本件教科書の奥付に著作者の一人として記載されているからといって、著作権法14条所定の著作者の推定が働くということはありえない旨主張するが、原告は、本訴において、右推定規定の適用を求めていないのであるから、被告の右主張は、その前提を欠き、採用することができない。 2 本件契約について (一)原告が、昭和58年12月16日、原告以外の著作権者である前記Aら13名の編集委員との間において、本件契約を締結したことは、前認定のとおりであるが、前掲甲第4号証によれば、本件契約書中には、「各編集委員は、甲(注・原告)の承諾なくして、本書と同一の科目に属する教科書、および本書の全部または一部と同一、もしくは、明らかに類似と認められる著作物(同一内容にもとづく教師用指導書、解説書、図鑑、掛図、図表、地図、ワークブック、およびレコード、録音テープ、ビデオテープ、トランスペアレンシーその他の視聴覚教材等を含む)を自ら出版し、または他人をして出版させることはできない。」との条項(第6条)及び「甲(注・原告)は、本書に付随し、または準拠する教師用指導書、解説書、図鑑、掛図、図表、地図、ワークブック、およびレコード、録音テープ、ビデオテープ、トランスペアレンシーその他の視聴覚教材等を本書の編集委員に編集を委嘱して発行し、または自ら編集発行し、もしくは、第三者に編集発行させることができる。」との条項(第10条)があることが認められる。 右認定の事実によると、原告は、Aら13名の本件教科書のその他の著作権者に対し、原告に本件教科書の内容を録音したテープを独占的に製作販売させることを内容とする債権を有しているものということができる。 (二)(1)被告は、本件契約は、原告と本件教科書の奥付に記載され共同著作者と推定された著作者全員との間において締結されたものではないから、無効である旨主張するが、前認定のとおり、原告は、原告以外の著作権者である右Aら13名の編集委員との間において本件契約を締結したものであるから、本件契約が無効であるとする理由はなく、したがって、被告の右主張は、採用することができない。 (2)被告は、本件契約は、著作者の著作権行使の権能を事実上奪うものであって、過酷な財産権行使の制限に当たるから、公序良俗に違反し、無効である旨主張するが、著作権の全部の譲渡ですら認められていることに照らすと(著作権法61条1項)、前認定の本件契約書6条及び第10条に定めるようなことは、著作権者として当然になしうることであることは明らかであり、したがって、被告の右主張も、採用の限りでない。 (3)被告は、本件契約には、原告に本件教科書の録音テープ等の製作販売権ないしその許諾権を付与した条項があるが、このような条項は、強行法規である著作権法80条3項の規定に違反し、無効である旨主張する。そこで審案するに、前掲甲第4号証によれば、本件契約書には、「乙(注・編集委員全員の代表者)は、甲(注・原告)に対し各編集委員の著作権持分につき本書の出版権を設定する。」(第2条)との条項があることが認められ、右認定の条項が原告に著作権法にいう出版権を設定するものであるとしても、出版権の制度は、「出版権者は、……その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利を専有する。」(同法80条1項)ものとして、出版権者による独占的な出版を保障しようとするものであって、同法80条3項に、「出版権者は、他人に対し、その出版権の目的である著作物の複製を許諾することができない。」旨規定しているのは、若しも、出版権者が、第三者に対し、右の出版権と同一内容の複製の許諾をすることができるとすれば、その制度の趣旨を没却することになるからであり、したがって、右規定にいう「出版権の目的である著作物の複製」とは、出版権の内容である「著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する」ことをいうものと解される。そうすると、本件契約の条項中、原告に本件契約書の録音テープ等の製作販売権ないしその許諾権を付与した条項は、出版権者である原告が、第三者に対し、出版権の目的である著作物の複製を許諾することができるとするものではなく、同法80条3項の規定に違反するものではないというべきである。もっとも、同法80条3項にいう「複製」の中には録音による複製も含まれるものと解すべきであるとしても、前掲甲第4号証によれば、本件契約書の録音テープ等の製造販売権ないしその許諾権を付与した条項は、本件契約の重要な内容を構成するものであることが認められるから、本件契約の解釈としては、同条項及び前示出版権設定の条項が両立するように解すべきであって、そうすると、前示出版権設定の条項にいう「出版権の設定」とは、むしろ、著作権法にいう出版権の設定ではなく、複製の許諾を意味するものと解するのが相当である。したがって、被告の主張は、採用するに由ないものといわざるをえない。 3 債権侵害の成否について (一)被告が、本件テープを製作販売したことは、前記のとおり、当事者間に争いがない。 (二)前掲甲第4号証、成立に争いがない甲第51号証、被告代表者Yの尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。 (1)原告と被告及び株式会社エミールとの間には、昭和54年以来、被告及び株式会社エミールが原告の昭和53年出版の中学校英語教科書を録音テープ化したことに関する訴訟が大阪地方裁判所に係属していた。原告は、右訴訟において、本件契約書(本訴の甲第4号証)とほぼ同一内容の「出版契約書」を書証として提出し、その副本が本訴被告にも交付されていた。本件契約書と右事件で提出された契約書との相違点は、教科書の版の点だけである。 (2)株式会社エミールは、本訴被告代理人である菊池武及び松田政行らを訴訟代理人として、昭和57年2月4日、原告との間において、右事件について、「エミールは、昭和53年版および昭和56年版ニューホライズン教科書に準拠したヒヤリングテープを許諾なく制作販売したことが、東京書籍ほかの共有著作権を侵害するものであることを認める。」、「東京書籍は、エミールに対し、本和解成立後製作されるエミールのニューホライズン教科書準拠ヒヤリングテープについて、著作権共有者を代表し複製を許諾する。」との条項を含む和解条項をもって和解した。 (3)被告代表者は、原告と株式会社エミールとの右の和解成立後、原告に対し、原告の出版する英語教科書を録音テープ化することの許諾を求めたが、原告に拒絶された。 右認定の事実によれば、被告代表者は、原告が独占的録音テープ製作販売権を有することを認識していたからこそ、原告に対し、録音テープ化することの許諾を求めたものであって、原告が独占的録音テープ製作販売権を有することを認識しながら、あえて本件テープを製作販売したものというべきであるから、被告代表者には、債権侵害の故意があったものと認めるのが相当である。 4(一)被告の主張4について 本件教科書は、義務教育に使用される教科書として、被告が主張するような特殊性を有するとしても、被告も認めているように、教科書も著作物性を有するものというべきであるから、教科書の著作者も、教科書について著作者人格権及び著作権を有するものといわなければならない。そうすると、これらの権利に制限を課するためには、実定法上の根拠を要するものというべきである。ところで、著作権法は、その33条及び34条において、公表された著作物について、学校教育の目的上必要と認められる限度において、補償金の支払等を義務付けて、教科用図書や学校向け放送番組用の教材等に掲載することを認め、また、35条において、学校その他の教育機関において教育を担当する者は、その授業の課程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、著作権者の利益を不当に害さない限り、公表された著作物を複製することを認めている。しかしながら、このように、学校教育の観点から、公表された著作物について種々の著作権の制限に関する規定を設けている同法も、教科書の内容を補助教材として自由に利用することを認めるような著作権の制限に関する規定は設けておらず、また、他の教科書の内容を補助教材として自由に利用することができるとする実定法上の根拠があるとは認められない。したがって、被告の主張は、採用することができない。 (二)被告の主張5について 著作権法32条1項にいう「引用」に当たるというためには、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ、かつ、両著作物の間に、前者が主、後者が従の関係があると認められる場合でなければならないというべきところ、本件テープであることについて当事者間に争いがない検甲第1ないし第3号証の録音内容と前掲甲第1ないし第3号証(本件教科書)とを対比すれば、本件テープの録音内容は、日本語による本件テープの使用方法や朗読個所の説明等のほかは、基本文、本文及び新出単語等本件教科書に記載された内容の朗読、歌唱などであることが認められ、右認定の事実によれば、引用して利用する側の著作物が主、引用されて利用される側の著作物が従の関係にあるとはいえないから、本件テープによる本件教科書の内容の利用は、著作権法に定める適法な引用とは認められない。したがって、被告の主張は、採用の限りでない。 (三)被告の主張6について 前掲甲第51号証及び弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和53年版及び昭和56年版の教科書の著作権等に基づき、これらの内容を朗読録音したカセットテープの製作販売の差止等を求める訴えを大阪地方裁判所に提起したものであって、右訴えは、昭和59年版である本件教科書の著作権等に基づき、その内容を朗読録音したカセットテープの製作販売について損害賠償を求める本訴とは訴訟物を異にすることが明らかであるから、被告の主張は、採用することができない。 5 損害額について (一)被告代表者Yの尋問の結果によれば、本件テープの小売価格は、1500円であることが認められる。 (二)証人P2の証言により真正に成立したものと認められる甲第46号証の1及び証人P2の証言によれば、本件教科書の内容を利用した録音テープの製作販売についての許諾料は、株式会社エミール外1社に対しては、小売価格の12パーセントであるが、他方、右両社は、いずれも原告から本件教科書に基づいて製作した音声テープのマザーテープの提供を受けて販売用の録音テープを製作販売していたことが認められ、また、前認定のとおり、本件テープの録音内容には、基本文、本文及び新出単語等本件教科書に記載された内容の朗読、歌唱などのほかに、日本語による本件テープの使用方法や説明等も含まれており、これらの事実を総合すると、原告から原告の製作したマザーテープの提供を受けていない場合の許諾料相当額は、小売価格の10パーセントと認めるのが相当である。 なお、被告は、著作権法114条は、著作権の通常使用料相当額の損害を請求できる者として、著作権者と著作隣接権者のみを掲げているのであって、著作権の使用を許諾された者が著作権の通常使用料相当額を損害として請求することはできない旨主張するが、原告は、著作権侵害として右法条の適用を求めているものではなく、債権侵害による損害の額として、許諾料相当額を主張しているものであるところ、その主張は、本件における債権侵害による損害の額の主張として相当であると認められる。したがって、被告の右主張は、採用することができない。 (三)証人P3の証言及び被告代表者Yの尋問の結果によると、1県を販売範囲とする販売店が、昭和59年度に、被告の製作した本件テープを約1万個販売したことがあること、本件教科書に基づいた録音テープを販売している株式会社アストロ教育システムにおいては、営業担当者1名当たり年間約3万ないし4万個を販売していること、被告においても少なくとも1名の者が本件テープの販売に当たっていること、被告は、昭和59年から同61年までの間、本件テープを販売していたことを認めることができ、右認定の事実に弁論の全趣旨を総合すると、被告は、本件テープを1年間に少なくとも3万個、右販売期間中に少なくとも9万個を販売したものと認めることができる。原告は、被告は、本件テープを30万個以上製作販売した旨主張し、右証人も、その旨供述するところであるが、右供述は、あくまで右証人の推測の域を出ないものであって、これを裏付けるに足りる的確な証拠はないから、右供述を直ちに採用することは困難である。 (四)以上の事実によると、原告の受けた許諾料相当額の損害の額は、次の計算式のとおり、1350万円となる。 1,500(円)×0.1×90,000(個)=13,500,000(円) 三 以上によれば、原告の本訴請求は、許諾料相当額の損害金1350万円及びこれに対する不法行為の後の日である昭和62年8月26日から支払済みに至るまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これを認容し、その余は、理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法89条及び92条本文、仮執行の宣言について同法196条1項の各規定を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 清水利亮 裁判官 一宮和夫 裁判官 三村量一 |
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